説明

ラインパウダーとこれを用いた線引き方法並びにラインの消去方法

【課題】線引きに特別な装置や機械を要せず、ラインマーカーを使用でき、しかもラインはくっきりと鮮明に引け、更には消去手段が容易で、跡形も無く消去できるラインパウダーとこれを用いた線引き方法並びにラインの消去方法を提供する。
【解決手段】ラインパウダーは、焼成時に炭酸ナトリウムを1〜5%重量比で混入して焼成して得た珪藻土である。顔料を混合して着色パウダーにできる。このラインパウダーの、水と出会っても固形化し難く、また、ラインマーカーによって簡便に線引きでき、所望の色合いが簡便に得られる特性を利用して、グランドに予め付着性の液体を散布しておき、その上にこのラインパウダーによりラインを引く線引き方法や、更には、予め引かれたラインの上に沿って、付着性の液体を散布し、その上にグランドの地の色とほぼ同一の着色パウダーを用いて線引きするラインの消去方法が好ましい使用方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば学校の運動場やスポーツ用のグランド、更にはゴルフ場や広場などで、標識を描いたり、その競技用のラインを引く場合などに用いられるラインパウダーとこれを用いたラインの線引き方法並びにラインの消去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のラインパウダーは、消石灰や炭酸カルシウムからなる白色の粉末が使用されている。また、その線引き方法としては、一般的に、この消石灰や炭酸カルシウムの白色粉末を線引き器(ラインマーカー)に投入して所定の標識やラインを描くようにしていた。
【特許文献1】特公平7−10971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の従来品は降雨時などは水分を吸収して固形化し、消去が困難になることがあった。
【0004】
一方、天然芝やロングパイル人工芝を採用したグランドでは、そのグランドで行われる競技の種類や種々のイベントなどによって標識の描き方や白線の引き方が異なる。つまり、殊にグランドにはその目的に適合したラインや標識が設けられていることが多く、特に人工芝グランドにおいてはライン部分や標識を白線用人工芝(部分的にパイルそのものを白色にしてなる人工芝)で描いてある。そのため、そのグランドが本来的に備えた使用目的以外で使用する場合、暫定的にその本来の競技用のラインや標識以外のラインを描く必要がある。しかも、その競技やイベントが終了すると直ちにこのラインを消去し、次の競技やイベント用に、元に戻したり更には改めてラインを引き直す必要があった。
【0005】
斯かる場合に、従来品は水と接触すると固形化してしまうので、散水して簡便に消去することができず、その迅速な対応に応え切れない問題点があった。そのため、いったん線引きすると、明確な白線が得られ、逆に使用後には跡形も無く消去できるラインパウダーが求められている。
【0006】
本発明者は、これら従来品の問題点を解決し、併せて近年の以上のような要望を満足させるべく、種々検討を重ねた結果本発明に至った。
すなわち、本発明は従来品の消石灰や炭酸カルシウムに代えて、白色度がこれら従来品に近くしかも固形化することが無い珪藻土を採用し、併せて更に白色度合いを高める意味合いから炭酸ナトリウムを適量添加すると、ほぼ所期の目的を達成できるラインパウダーが得られたので、ここに提案する。
【0007】
したがって、本発明の課題は、線引きに特別な装置や機械を要せず、従来のラインマーカーを使用でき、しかもラインはくっきりと鮮明に引け、更には消去が容易で、跡形も無く消去できるラインパウダーとこれを用いた線引き方法並びにラインの消去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の技術的な課題を解決するために、まず本発明に係るラインパウダーは、焼成時に炭酸ナトリウムを1〜5%重量比で混入して焼成した珪藻土よりなることを要旨としている。
【0009】
上記のような構成によれば、白色度合いを高める炭酸ナトリウムが1〜5%重量比で混入された珪藻土を焼成することで、得られたパウダーは一層白色度合いが高くり、パウダー状で、水と会合しても固形化しない。
【0010】
珪藻土の焼成温度は、600゜C〜1200゜Cの範囲、望ましくは1000゜C〜1200゜Cの範囲である。
【0011】
600゜Cより低い温度であると、望ましい白色度合いが得られない。逆に1200゜Cより高い温度であると、珪藻土の多孔質が溶けてつぶれてしまい、一部は結晶性シリカに変成してしまうので、望ましくない。望ましい白色度合いと結晶性シリカの変成を抑えることができる望ましい範囲は800゜C〜1200゜Cで、融剤焼成珪藻土として得られるパウダーが望ましい。
【0012】
また、炭酸ナトリウム(Na2 CO3 )は、珪藻土の白色度合いを更に高めるとともに粒子を大きくするために添加される。添加される炭酸ナトリウムは、1%重量比〜5%重量比の範囲、望ましくは2%重量比〜4%重量比の範囲である。
【0013】
添加量が1%重量比を下回ると、白色の色合いを高める効果が薄れてしまう。逆に5%重量比以上であると、水分を吸湿しすぎる傾向が見られ、パウダーが固形化される傾向が見られ、また溶融してしまうおそれがあり、併せて経済効率に欠けるので、望ましくない。好ましい白色度合いにし、併せてパウダーの固形化を抑え、更には経済効率から考えると、2%重量比〜4%重量比の範囲が望ましく、特に3%重量比であるときが、経済効率良く、望ましい白色度合いが得られた。
【0014】
この発明において、「ライン」とは、一般的な区画線、そして各競技などにおいて描かれる各種のマーカーや標識の全般を意味するものとして定義する。具体的な例としては、例えば野球場ではファウルライン、バッターボックス、ウェイティングサークル、フットボールやラグビーの競技場ではサイドライン、ハーフライン、ヤードライン、ゴールラインやライン外の装飾用の標識、また、サッカーではセンターライン、タッチライン、ハーフウェーライン、ゴールエリア、ペナルティーアーク、陸上競技場などではコースライン、スタートライン、ゴールライン、投てきサークル、踏切線、助走路ライン、テニスコートではベースライン、センターマーク、サービスライン、サービスサイドライン、ダブルサイドラインなどの区画線や標識、マーカーを言うものとし、便宜的に、以下単にこれらを区画線や標識、更にはマーカーなどを包含して単にラインと称する。また、「線引き」とは区画線のいわゆる線引きを意味することは言うまでもなく、標識やマーカーなどを描くことも含めて線引きと称し、そのように定義する。
【0015】
したがって、この発明は以下の効果を奏する。
この発明に係るラインパウダーは、従来品と違って、水分があっても固形化されない素材である珪藻土を基本的に採用し、これに白色度合いを高める炭酸ナトリウムを添加するものである。したがって、得られたパウダーは、従来のラインマーカーを使用することによって、簡便に線引きができる。また、固形化することがないので、不要になったラインは、水を散布するだけで洗い流せ、簡単に消去できる。更には、白色度が優れるとともに比重(見かけ比重)が小さいことも優れた点である。従来品である炭酸カルシウム製ラインパウダーの見かけ比重は約1.50〜1.80であるのに対して、本発明に係るラインパウダーのそれは0.25〜0.35である。すなわち、本発明に係るラインパウダーは、従来品と比較して遥かに軽量であり、遥かに作業性に優れている。
【0016】
また、以上の構成において本発明に係るラインパウダーは、請求項2に記載のように、顔料が混合されるのが望ましい。
白色以外にも、黄色、緑色更にはアンツーカー色などの必要に応じて望みの着色パウダーを得ることができるからである。つまり、例えば白線の他に、例えば黄色や緑色のラインをとの要望もあるが、斯かる場合にも迅速、簡便に対応できる。或いは、白線用人工芝などの場合には、この芝の上から黄色、緑色或いはアンツーカー色などのパウダーを線引きすることで、着色線引きやもともとあるラインをベースのグランド色と一体化でき、簡便にラインの消去が可能になるからである。
【0017】
着色のために用いられる素材としては、例えば各種の色合いを備えた顔料が採用される。顔料は、有機、無機を問わないが、特に、安全性、経済性を考慮すると黄色の場合は酸化鉄系の顔料が望ましく、緑色としては三価の無機酸化クロムを採用するのが望ましい。その他にも、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物、その他モリブデンレッド、コバルトブルー、マンガンバイオレット、紺青、群青などの無機質顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、モノアゾレッド、パーマネントイエロー、ジスアゾイエローなどのアゾ系顔料、ぺリレンレッドなどのぺリレン系顔料、キナクリドンレッドなどのキナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、メチン、アゾメチン系顔料、ペンズイミダゾロン系顔料、ジオキサジン系顔料などの有機質顔料、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなどの金属粉顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料などの特殊顔料など各種の顔料が採用される。また、環境ホルモン、PRTR、アミン規制等をクリアした顔料の使用が好ましく、例えばネオカラー(商品名:株式会社松井色素化学工業所製)の黄色/オレンジ/緑色顔料などが適している。これらは必要に応じて、1種又は2種以上で使用することができる。
【0018】
この発明のラインパウダーは、水と出会っても固形化しにくく、また、ラインマーカーによって簡便に線引きでき、更には顔料などの着色剤を混入することで、所望の色合いが簡便に得られる性質を備えている。この性質を利用することによって、請求項3に記載のように、グランドに予め付着性を備えた液体を散布しておき、その上に請求項1或いは請求項2記載のラインパウダーによりラインを引くことを特徴とするラインの線引き方法が好ましい使用方法である。
【0019】
予め如露などによって水や粘着剤などの付着性のある液体を散布し、少しグランドや芝の茎葉を湿らせたり、粘着性を持たせたりし、その後ラインマーカーで所定のラインを引いてゆく。予め付着性の液体を散布することによってグランドや芝の茎葉を湿らせたり、これらに付着性を与えるので、ラインパウダーは簡便、かつ的確にグランドや芝の茎葉に付着する。
【0020】
また、この発明のラインパウダーの好ましい使用方法は、請求項4に記載のように、予め引かれたラインの上に付着性を備えた液体を散布しておき、このラインの上にグランドの地の色とほぼ同一である請求項2記載の着色パウダーを線引きすることを特徴とするラインの消去方法である。
【0021】
既存の、例えば白色や緑色ラインの上に沿って、予め水や粘着剤などの付着性のある液体を散布しておく。次いで、グランドと同系色のパウダーをラインマーカーなどを用いて、既存のラインの上から線引きする要領で散布してゆく。散布されるパウダーは地の色と同系の、例えばアンツーカー色や緑色(天然芝や人工芝の場合)、更には土色などであるから、既存の他の色のラインが地の色に着色される。この場合も、予め付着性の液体を散布することでグランドや芝の茎葉を湿らせたり、それらに付着性を与えるので、ラインパウダーは簡便、かつ的確にグランドや芝の茎葉に付着して、その実効を一層高める。
【0022】
グランドの地の色は、近年ではアンツーカー色や緑色が多いが、いずれの場合にも、先にも示した、各種の顔料が採用されることは言うもまでもない。
【0023】
なお、この発明で言う「地の色」とは、必ずしも地面の色を意味しない。例えば、天然芝グランドであれば、地の色は緑色(芝色)であったり、またその地面は土色であり、更にはアンツーカー仕様のグランドあれば、レンガ色であったりする。したがって、この発明で地の色とは、斯かる種々の色を意味するものである。
【0024】
また、以上の記載からも理解されるように、この発明において「グランド」とは、アンツーカー、アスファルト、更にはコンクリートなどの人工の地面を含めて所謂地面の他に、グランドに設けられる人工芝或いは天然芝を包含するものとする。しかし、利用の方法によっては、ラインパウダーを散布する対象が地面であったり芝の茎葉であったりするため、記載の方法としては、便宜上「グランドや芝」と表現している。
【0025】
このように、請求項3に記載されたラインの線引き方法は、予めグランドや芝の茎葉を、例えば水や粘着剤を用いて、付着性を高めて線引きをして、パウダーを簡便、かつ的確にグランドや芝の茎葉に付着させることができるので、特に芝の茎葉ではラインパウダーが地面に落下しにくく、その使用量を大幅に少なくできる。そして、例え少ない使用量であっても、付着性に優れるから、グランドや芝の茎葉に対してより鮮明なラインを線引できる。
【0026】
また、請求項4に記載されたラインの消去方法は、グランドに予め線引きされたライン或いはライン用の人工芝などの上に、このライン或いはライン用の人工芝以外の地の色と同色のラインパウダーで線引きすることによって、簡便に既設のラインの消去が可能になる。
【0027】
尚、上述の付着性の液体は、水或いは粘着性の溶液が採用される。
これは、付着性の溶液を予め散布する事で、ラインパウダーはより良くグランドや芝の茎葉に付着し、ラインパウダーの使用量が少なくても鮮明なラインを引くことができ、好適であるからである。特に、粘着性の溶液を採用すると、ラインパウダーをより良くグラウンドや芝、つまりグラウンドの既設のライン上や芝の茎葉上に付着させることができ、ラインパウダーの使用量を更に少なくでき、また、少なくても鮮明なラインを引くことができ、好適である。
【0028】
そして、この発明のラインパウダーは、先にも説明したように、固形化しない特有の性質を備えている。したがって、上記何れの使用方法においても、線引き更には消去の作業が簡便で、しかも能率よく短時間で行え、その産業利用上の価値は多大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
線引きに特別な装置や機械を要せず、従来のラインマーカーを使用でき、しかもラインはくっきりと鮮明に引け、更には消去が容易で、跡形も無く消去できるようにするという目的を、珪藻土とその色合いを更に白色に近づける炭酸ナトリウムを用いて達成した。
以下、この発明に係るラインパウダーとその利用方法について説明する。
【実施例1】
【0030】
先ず、ラインパウダーを得るには、粉末状の珪藻土に重量比で3%の炭酸ナトリウム(ソーダ灰)を混入する。次いで、これを1200゜Cで焼成し、融剤焼成珪藻土を得た。得られた融剤焼成珪藻土は、白色度合いが、焼成前よりも遥かに高まり、従来の消石灰や炭酸カルシウムからなる白色の粉末と遜色のないラインパウダーが得られた。
【0031】
この白色のラインパウダーを直に地面に散布し、その上から如露で散水したが、固化は見られなかった。更に、引き続き散水すると、水により分散し、土壌内へ浸透し、跡形もなく消失した。
【0032】
また、珪藻土の焼成温度は、種々実験の結果、600゜C〜1200゜Cの範囲、望ましくは1000゜C〜1200゜Cの範囲が良好であることが分かった。
【0033】
600゜Cより低い温度であると、望ましい白色度合いが得られなかった。逆に1200゜Cより高い温度であると、珪藻土の多孔質が溶けてつぶれてしまい、一部は結晶性シリカに変成してしまうので、実用には供し得なかった。望ましい白色度合いと結晶性シリカの変成を抑えることができる望ましい範囲は800゜C〜1200゜Cで、特に1200゜Cで得られたパウダーが最も望ましいことが分かった。
【0034】
次に、白色度合いの出来合いを検討するべく、炭酸ナトリウムの添加量を種々調整して幾つかの試験を行った。試験の判定は、目視によって行った。
その結果、添加量が重量比で1%を下回ると、珪藻土の本来の赤みを帯びた粉末になり、白色の色合いを高める効果が得られなかった。逆に重量比で5%を上回ると、水分を吸湿しすぎる傾向が見られ、パウダーが固形化される傾向が見られ、また溶融してしまうおそれがあり、併せて経済効率に欠ける。つまりは5%よりも多く添加しても、白色度合いが更に改善されることはなく、無為になるので、望ましくない。好ましい白色度合いにし、併せてパウダーの固形化を抑え、更には経済効率から考えると、2%重量比〜4%重量比の範囲が望ましく、特に3%重量比であるときが、経済効率良く、望ましい白色度合いが得られた。
【0035】
また、パウダーの好ましい粒径は15〜50μm、より好ましくは25〜30μmであった。粒径が小さ過ぎると、飛散性が高過ぎて、ラインパウダーとして取り扱い難く、逆に大き過ぎると付着性や水分散性が低下し、鮮明なラインを描けなかったり、描きなおす際の手間が大変になったりする。このような実験結果から、以上のような粒径が望ましいと判断した。
【実施例2】
【0036】
次に、上記の方法で得られた白色のラインパウダーに顔料を添加した着色パウダーについて説明する。
上記の方法で得られた白色のラインパウダーに、無機酸化クロムを適宜加えて、全体の色合いが均一になるように、攪拌機を用いて攪拌し、緑色の着色パウダーを得た。
【0037】
得られた緑色の着色パウダーを、先と同様にラインマーカーに充填して、50mの白色ライン上に沿って線引きした。この際、予め既存の白線用人工芝(ロングパイル用人工芝)の上に軽く散水しラインを湿らせることが肝要である。
【0038】
結果は、既存の白線用人工芝による白色ラインは見事に周囲の人工芝部分と同様の緑色に変わった。
【実施例3】
【0039】
次に、上記のようにして得られたこの白色のラインパウダーを用いた線引き方法について説明する。
上記のようにして得られたこの白色のラインパウダーをラインマーカーに充填し、ロングパイル人工芝の上に線引きした。線引きに当たっては、前以ってライン予定線上に軽く如露で散水し、パイル(芝の茎葉部分)を湿らせておく。50mのラインを引き終わって、従来の消石灰と炭酸カルシウムを用いて線引きした場合の、それぞれのパウダー使用量を比較計測した。
【0040】
結果は、この発明によるラインパウダーは、従来品に比べて約70パーセントの使用量でラインを引き終えた。描かれたラインの鮮明度合いは、目視によるが、従来品と同等、若しくはやや鮮明であった。
【実施例4】
【0041】
次に、実施例2で得られた着色パウダーを用いたラインの消去方法を説明する。
実施例2で得られた緑色のラインパウダーをラインマーカーに充填し、ロングパイル人工芝グランドに描かれた白色ラインの上に線引きした。線引きに当たっては、前以ってライン予定線上に軽く如露で散水し、パイル(芝の茎葉部分)を湿られておく。50mのラインを引き終わって、従来の消石灰と炭酸カルシウムを用いて線引きした場合の、それぞれのパウダー使用量も比較計測した。
【0042】
結果は、この発明による着色ラインパウダーは、従来品に比べて約70パーセントの使用量でラインを引き終えた。描かれたラインはグランドの緑色と渾然一体となり、白色のラインは見事に消去されていた。
【0043】
次に上記実施例3,4で実施された各ラインに、如露で散水し、パウダーを洗い流してみたところ、いずれの場合にも、パウダーは水で流され、地面に浸透して、見事に消去されることが分かった。
【0044】
なお、以上の実施例3,4において、散布した水が流れ落ちてしまいパイルの茎葉が十分に湿らない場合が散見された。これは、実験例に用いたロングパイル人工芝における樹脂製パイル(主にポリエチレン製パイルが多い)に撥水性があるためと思われる。
そこで、斯かる場合には、粘着性の溶液を使用することで、パイル先端部分であっても溶液が止まりやすくなり、ラインパウダーの付着性を一層高めることができた。
水の代わりに採用される粘着性の溶液としては、例えばPVAの2〜5%水溶液が挙げられる。また、このPVA以外にも、粘着性を示す溶液であれば、本発明の所期の目的を逸脱しない範囲でいかようなものでも採用できるが、例えば各種糊剤、CMC、ポリエチレンオキサイドなどを使用できる。しかし、ライン消去のために水溶性であることが望ましいことは言うまでもない。
【0045】
このように、この発明に係るラインパウダーは、従来の炭酸カルシウムや消石灰などと同様に、既存のラインマーカーを使用して線引きが可能である。しかし、付着性に優れているので、従来の炭酸カルシウムや消石灰などに比べて遥かに少ない量で、鮮明なラインが得られる。不要になったラインは水を散布することで、固形化することなく水に分散し、地面や土壌に流下したり、浸透したりして、簡単に跡形もなく消去することができる。更には既設のラインの上に線引きすることにより、既設のラインを消去することができる。
【0046】
また、本発明に係るラインパウダーは、白色度が優れるとともに比重(見かけ比重)が小さいことも優れた点である。従来品である炭酸カルシウム製ラインパウダーの見かけ比重は約1.50〜1.80であるのに対して、本発明に係るラインパウダーのそれは0.25〜0.35である。すなわち、本発明に係るラインパウダーは、従来品と比較して遥かに軽量であり、遥かに作業性に優れることが分かった。
【0047】
この発明のラインパウダーとその利用方法は、ロングパイル用人工芝に適用した場合の実施例を記載しているが、適用される対象は、例えばショートパイル人工芝や天然芝、更には芝を植えていない一般のグランドであっても良いことは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成時に炭酸ナトリウムを1〜5%重量比で混入して焼成した珪藻土よりなるラインパウダー。
【請求項2】
顔料を混合して着色されてなる請求項1記載のラインパウダー。
【請求項3】
グランドに予め付着性を備えた液体を散布しておき、その上に請求項1或いは請求項2記載のラインパウダーによりラインを引くことを特徴とするラインの線引き方法。
【請求項4】
予め引かれたラインの上に付着性を備えた液体を散布しておき、このラインの上にグランドの地の色とほぼ同一である請求項2記載の着色パウダーを線引きすることを特徴とするラインの消去方法。