説明

ラクトバシラス・ロイテリのロイテリン産生機構の制御活性化

細胞培養物の製造の間にグリセロール及び他の物質を添加し、保存及び貯蔵の間に細菌細胞内に産生ロイテリンを維持することによるラクトバシラス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)のロイテリン産生機構の制御活性化方法。特に本発明は、ロイテリンが充填された大量のL.ロイテリ(L.reuteri)の製造と、疾患の予防や治療等の適用、食品の適用等のためのかかる充填細菌の使用とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養物の製造の間にグリセロール及び他の物質を添加し、保存及び貯蔵の間に細菌細胞内に産生ロイテリンを維持することによるラクトバシラス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)のロイテリン産生機構の制御活性化に関する。特に本発明は、ロイテリンが充填された大量のL.ロイテリ(L.reuteri)の製造と、疾患の予防や治療等の適用、食品の適用等のためのかかる充填細菌の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
原核生物の細胞は原始的であると考えられてきたが、中には、細菌細胞内部で原始的な細胞小器官としての役割を果たすと思われる微小区画(MCS)として知られている稀な封入物を含有するものもある。カルボキシソーム(二酸化炭素の固定に関与する)は、約30年間、微生物細胞の中で認識されてきた唯一の微小区画であった。
【0003】
2005年、Todd O.Yeates教授及び彼の同僚は、細菌の微小区画の最初の構造的詳細を明らかにした。細菌の微小区画タンパク質の最初の高解像度の構造は、幾つかのウイルスにおいて認められるものと非常に類似した構成の仕組みを明らかにする。6個の同じタンパク質サブユニットは、共に六量体ユニットを形成し、その六量体ユニットは、シェルのための構成要素を構成する。これらの六量体ユニットは、共に密接にまとまって、小さな細孔のみを含む分子層を形成する。この密接なまとまりは、細孔を通ること以外の、微小区画内への及び微小区画からの分子の移動を制限すると思われる。
【0004】
微生物微小区画特異的タンパク質の相同体のクラスター分析は、かかる封入物が、各種の細菌種における7つもの異なる代謝プロセスに関与し得ることを示唆する(Thomas A.Bobik.2007.Bacterial Microcompartments.Microbe.1:25〜31.)。細菌の微小区画の構成要素は、タンパク質及び糖タンパク質だけである。電子顕微観察(微小区画を観察するために必要)は、かかる微小区画を囲み、それらを生細胞内で唯一の公知のタンパク質系代謝区画にする脂質単層や脂質二重層(真核生物のベシクル内の)を示さない。サルモネラ属(Salmonella)、エシェリキア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、クロストリジウム属(Clostridium)、フゾバクテリウム属(Fusobacterium)、赤痢菌属(Shigella)、リステリア属(Listeria)、及びエルシニア属(Yersinia)を含む細菌の属のメンバーは、それらの微小区画(1)内の1,2−プロパンジオール(1,2−PD)又はエタノールアミンを分解するために必要とされる成分を含有する。微小区画の別の性質は、L.ロイテリの場合は抗微生物性ロイテリンのように、細菌そのものに対して有毒な基質のための容器としての役割を果たすそれらの性能であると考えられる。
【0005】
Bobikによる微小区画シェル遺伝子についてのGenBank探索は、細菌のゲノムの約25%(337の内の85)がシェル遺伝子相同体を含むことを示した。それらの相同体遺伝子を担持する細菌のゲノムのそれらの25%の内のほとんどにおいて、シェル遺伝子は、微小区画関連酵素をコードする他の遺伝子とクラスター形成する。ロイテリン産生のためにコードする遺伝子と、微小区画構造のためにコードする遺伝子とが隣接することが示される。
【0006】
2008年5月、Sriramuluら(Sriramulu DD、Liang M、Hernandez−Romero D、Raux−Deery E、Lunsdorf H、Parsons JB、Warren MJ、Prentice MB:「ラクトバシラス・ロイテリDSM20016は、メタボロソームにおけるコバラミン依存性ジオールデヒドラターゼを産生し、不均化により1,2−プロパンジオールを代謝する」(Lactobacillus reuteri DSM20016 produces cobalamin−dependent diol dehydratase in metabolosomes and metabolizes 1,2−propanediol by disproportionation.)J Bacteriol2008,190(13):4559〜4567.)は、抗微生物剤を産生する生物であるラクトバシラス・ロイテリが、65mMの1,2−プロパンジオール(PD)と少量のグルコースとを含有する改変MRS培地上で増殖させた際に細菌の微小区画(カルボキシソーム又はメタボロソーム)を合成する能力を有するという最初の実証を示した。前記生物は、1,2−PDにより誘導されるコバラミン依存性ジオールデヒドラターゼ酵素を産生した。結合されたコバラミン合成及びpdu(プロパンジオール資化)オペロンは、L.ロイテリDSM20016ゲノム配列内に存在し、全pduオペロンはPCRによりL.ロイテリDSM20016の実験室株から増幅され、これによりプロパンジオール代謝生物中のその存在が確認された。しかし、65mMの1,2−PDと少量のグルコースとを有する改変MRS培地における増殖は、この培地における細菌の非常に低い増殖率のため、工業的設定に適用可能ではない。本明細書における本発明とは異なり、Sriramuluらは、微小区画にロイテリンを充填することを可能にする細胞培養物の製造の間のグリセロールの添加について記載しない。
【0007】
ラクトバシラス・ロイテリは、抗微生物物質3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド(HPA)(ロイテリンとも称される)を産生することが知られている細菌である。ロイテリンの抗菌活性は、例えば米国特許第5,439,678号;第5,458,875号;第5,534,253号;第5,837,238号;及び第5,849,289号に記載されている。ロイテリンは、エシェリキア属、サルモネラ属、赤痢菌属、プロテウス属(Proteus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、クロストリジウム属、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)を含むここまで試験された全ての細菌の属を表す種;並びに更に幾つかの真菌及び他の微生物の増殖を阻害することが可能な低分子量、中性、水溶性の化合物である。グリセロールを外部電子受容体として用いて、しかるに1,3プロパンジオールに変化させる際、ロイテリンが中間物として産生される。この反応は、グルコース等の糖類の発酵につながる際に完了する。
【0008】
ロイテリンの産生は、前記反応を触媒する酵素グリセロール/ジオールデヒドラターゼ;複雑な経路を介して合成されるコバラミン(ビタミンB12)(前記酵素の補因子);前記酵素の再生のために用いられる因子;及び幅100nm超であり、且つポリペプチドにより形成される微小区画構造を含む複雑な機構に依存する。この種のもの全ては、共に、必要な場合、誘導される50超の遺伝子を含む。増殖培地への1,2−PD又はグリセロールの添加は、大量の微小区画構造の産生を初回刺激する。後期段階で細菌培養物にグリセロールを添加することにより、ロイテリンの産生がもたらされる。ロイテリンは、微小区画が前記物質を放出する準備が整うまで、微小区画の中に充填され、貯蔵され、保存される。いかなる増殖や基質(グリセロールを含む)なしで、例えば皮膚上に標準状態のL.ロイテリを塗布する(完全に充填された微小区画なしで)場合、ロイテリンの放出は一般にない。従って、活性化され、且つ本明細書における本発明による微小区画内に保存されるロイテリンを有するL.ロイテリが、ヒトの皮膚等の不毛な環境内において、食品又は他の同様の部位上において、並びにもちろんプロバイオティックスのためのより従来の塗布領域(例えばヒトを含む動物のGI管、GU管、口、鼻)内において、正常且つ急速にロイテリンを放出したことは思いがけないことであった。
【0009】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ざ瘡プロピオンバクテリウム(Propionibacterium acnes)等の皮膚病原菌又は特定の酵母の増殖は、感染創と皮膚系の調節異常とに、或いは皮膚又は粘膜の一層重篤な障害(例えば、湿疹、カンジダ症、皮膚炎、膿痂疹等)につながる可能性がある。これらの病原体に対する治療の多くの手段が知られている。抗生物質又は化学的抗菌剤が、最も従来使用される。それらは、例えば、アルデヒド及び誘導体に基づく組成物である。
【0010】
治療が経口及び/又は局所的抗生物質を含む場合、別の皮膚疾患は酒さであり、これは顔面中部3分の1に影響を及ぼし、一般に紅潮する顔面及び鼻の領域に亘って持続的な発赤を引き起こす。
【0011】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)及び関連のグラム陽性病原菌に起因する感染症は、増大する医学的懸念である。これらとしては、MRSA、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus epidermidis)(MRSE)、メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(methicillin resistant coagulase negative Staphylococci)(MRCNS)が挙げられる。バンコマイシン(糖ペプチド抗生物質)は、現在のところ、これらの感染症を防止するための選択剤である。バンコマイシンの使用の増加に伴い、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)の耐性株の出現は、予想通り事実となった。従って、かかる病原菌(MRSA/VRSA)に対して有効で、同時に望ましくない副作用のない薬剤の必要性が増大している。
【0012】
黄色ブドウ球菌は、最も一般的には鼻孔にコロニーを形成するが、気道、切開した創傷、静脈内カテーテル及び尿管も感染症の可能性のある部位である。健常人は、数週間から長年の範囲の期間、MRSAを無症候性保菌している可能性がある。
【0013】
治療が困難である可能性があり、且つ種々の原因がある皮膚障害の別の一例は、接触性皮膚炎であり、接触性皮膚炎は、外部の刺激/薬剤との皮膚接触により感受性がある被験者において誘発され得る。
【0014】
皮膚障害の治療のためにラクトバシラス属を使用することは、既に本技術分野で公知であり、それは例えば米国特許出願第05/201996号に記載されている。本発明は、ラクトバシラス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)VRI−002株等のプロバイオティクス細菌を含有する調合物を用いた皮膚障害の予防及び/又は治療の分野に関する。投与経路は、好ましくは経口である。
【0015】
バシラス属(Bacillus)等の他の細菌剤は、皮膚又は粘膜上に使用され得る。具体的には、出願WO98/47374において、バシラス属の株は、皮膚の細菌感染症、ウイルス感染症又は真菌感染症の予防を目的とした組成物において使用される。
【0016】
しかし、先行技術に記載されている他の細菌を用いた、局所的又は他の不毛な環境におけるラクトバシラス属による治療による課題は、皮膚又は他の不毛な環境による細菌の短い生存期間である。これは、ロイテリンを分泌するために「スタンバイ」モードになっている充填微小区画を有するL.ロイテリを投与することによって、本明細書における本発明により解決される。従って、L.ロイテリは、死滅する前にロイテリンの分泌を達成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、1.2PD又はグリセロールによりロイテリン産生機構を初回刺激し、その後の細胞培養物の製造プロセスにおいて、保存前の特定の時点で細菌培養物にグリセロールを添加することにより、L.ロイテリのロイテリン産生機構の活性化を制御する方法に関する。また、本発明は、製造プロセスの間のL.ロイテリ細菌の微小区画及びロイテリンの最適な増殖及び産生のための条件を改善するための増殖培地へのビタミンB12、コバルト及びビタミンCの添加にも関する。
【0018】
特に、本発明は、ロイテリンが充填された大量のL.ロイテリ細胞の製造と、例えば疾患の予防及び治療における組成物並びに食品組成物におけるかかる調製された細菌の使用とに関する。更に具体的には、これらの組成物は、皮膚系の病原菌により誘導される障害を予防又は治療する目的のために、例えば局所的にヒトに投与されることを目的とされる。また、これらの組成物は、MRSAの治療のための経鼻適用のためにも使用され得る。本発明は、不毛な環境におけるL.ロイテリ細菌の増殖及び生存の必要性を回避する。
【0019】
この点において、本発明の幾つかの実施態様を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において構成の詳細に限定されるものではなく、以下の説明に記載されるか、若しくは図面に示される成分の配列に限定されるものではないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施態様が可能であり、各種の方法で実行し、実施することが可能である。また、本明細書において用いられる語法及び用語法は、説明の目的のためであって、限定的であるとみなされるべきでないことを理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ビタミンB12(上)又はコバルト(下)を有する又は有さないB12−培地において静止期にまで増殖させた株DSM17938(白色棒)及びMM4−1A(黒色棒)からの上清中のロイテリンレベルの効果を示すグラフである。
【図2】MRS−培地において静止期にまで増殖させた株DSM17938及びMM4−1Aの上清からのレベルの効果を示すグラフである。
【図3a】図3aは、(A、D)コバルト、ビタミンB12無添加、(B、E)50ng/mlのコバルト、(C、F)1μg/mLのビタミンB12による、上清中のロイテリンレベルと、MRSにおいて静止期にまで増殖させた株MM4−1Aの生存率とに対する1,2−PDの添加の効果を示すグラフである。黒色棒は、1,2−PDの無添加を示す。白色棒は、65mMの1,2−PDの添加を示す。灰色棒は、200mMの1,2−PDの添加を示す。生存率を、200mMのグリセロール/水溶液において細胞のインキュベーションの前(0時間)及び後(2時間)に測定した。
【図3b】図3bは、1μg/mLのビタミンB12の添加による、上清中のロイテリンレベルと、B12−培地において静止期にまで増殖させた株DSM17938の生存率とに対する1,2−PDの添加の効果を示すグラフである。黒色棒は、1,2−PDの無添加を示す。白色棒は、65mMの1,2−PDの添加を示す。灰色棒は、200mMの1,2−PDの添加を示す。生存率は、200mMのグリセロール/水溶液において細胞のインキュベーションの前(0時間)及び後(2時間)に測定された。
【図4】透過電子顕微鏡(TEM)を用いたMCSの視覚化である。株DSM17938(A)及びMM4−1A(B)を、MRSにおいて増殖させた。株DSM17938(A)及びMM4−1A(B)を、ビタミンB12(1μg/mL)及び200mMの1,2−PDの添加によりMRSにおいて増殖させた。白色の矢印は、細菌内に形成されたMCSを示す。
【図5a】図5aは、200mMのグリセロール水溶液に45分間曝露した後のMM4−1A細胞の上清中のロイテリンレベルの効果を示す。細菌を、200mMの1,2−PD、200mMのグリセロールの添加又は何も添加しない場合によるB12−培地(50ng/mLのコバルト)において増殖させた。
【図5b】図5bは、200mMのグリセロール水溶液に45分間曝露した後のMM4−1A細胞の上清中のロイテリンレベル(上図)の効果を示す。下図は、200mMのグリセロール水溶液に45分間曝露した後の細胞ペレットに関連するロイテリンレベルの効果を示す。細菌を、MRS(1)、1μg/mLのビタミンB12を添加したMRS(2)、1μg/mLのビタミンB12と200mMの1,2−PDとを添加したMRS(3)、1μg/mLのビタミンB12と200mMのグリセロールとを添加したMRS(4)、1μg/mLのビタミンB12と500mMのグリセロールとを添加したMRSにおいて増殖させた。
【図6】細胞を洗浄し、200mMのグリセロール/水溶液に45分間曝露した後のMM4−1A細胞に関連する検出物質のMAS−NMR顕微鏡図(上)である。細胞を、1μg/mLのビタミンB12と200mMのグリセロールとを添加したMRSにおいて増殖させた。矢印は、3−HPAにおけるアルデヒド基を指す。下の図は、ロイテリン産生に関連する物質を示す。アステリクスで示された物質は、MAS−NMRを用いて検出された。
【図7】スクロースの存在がロイテリン産生を妨げなかったことを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
プロバイオティックスとして使用されるL.ロイテリ培養物は、グリセロールの非存在下で培養され、その後凍結乾燥される。それらの細菌において、ロイテリン産生のために使用される機構は活性化されなかったが、好ましい条件下では、系は、細菌がグリセロールと接触した後30〜60分間活性となる可能性がある。好ましくない条件下では、この活性化は、非常により長い時間がかかる可能性があるか、又は全く起こらない。
【0022】
ロイテリンの急速な産生を伴うL.ロイテリ含有産物が求められるか、又はL.ロイテリの増殖のための条件が好ましくない適用において、L.ロイテリ培養物は、培養物の製造の間のグリセロールの存在により改良され得る。グリセロール(1〜500mM)は、発酵ステップの間に添加され得るか、又はそれは、発酵及び可能な洗浄の後で、凍結乾燥の前の前記ステップの際に凍結保護剤と共に添加され得る。L.ロイテリの微小区画の形成を含むロイテリン産生機構は、発酵の開始時に1.2PD又はグリセロールによりロイテリン産生機構を初回刺激することにより改良され得る。
【0023】
細胞培養産物は幾つかの方法で製造され得るが、その方法としては、以下の3つの異なる方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
L.ロイテリ細胞を含有する凍結乾燥産物により、製造方法の発酵ステップ終了後、凍結乾燥ステップの前にグリセロールをロイテリンに転化させる。この方法で調製された産物は、凍結乾燥細胞と、前記細胞の中及び周囲の両方にロイテリンとを含有する。この製造設計については、凍結乾燥細菌にロイテリンが充填される。
【0025】
1と同様に、しかし、発酵の開始時に1.2PD又はグリセロール並びに可能な場合コバルト又はビタミンB−12により細菌のロイテリン産生機構を初回刺激する。この製造設計については、凍結乾燥細菌に両方のロイテリンが充填され、その凍結乾燥細菌が、ロイテリンを製造して貯蔵する能力により初回刺激される。
【0026】
L.ロイテリ細胞を含有する凍結乾燥産物により、発酵及び可能な洗浄ステップの後、凍結乾燥ステップの前に、37℃で約30〜45分間グリセロールを添加し、次いでロイテリン産生を可能にすることでグリセロールをロイテリンに転化させる。ロイテリンの形成のためのグリセロールの添加は、例えば凍結保護剤と共に行うことが可能である。細菌のロイテリン産生機構は、発酵ステップの開始時に1.2PD又はグリセロールにより初回刺激される。方法2に関連する製造設計3の利点は、方法3が、多くの工業的製造構成における使用により良好に適しており、ロイテリン形成のより良好な制御を可能にすることができるということである。
【0027】
増殖培地への1,2−PD又はグリセロールの添加は、生存率及びMCS形成の両方に影響を及ぼす。プロピオンアルデヒドへの1,2−PDの転化の原因である酵素複合体PduCDEは、ロイテリンへのグリセロールの転化の原因でもあり、それは、細菌が1,2−PDの存在下で増殖する際に形成されるMCSが、細菌がグリセロールと接触し且つロイテリンの更なる代謝のための手段を欠く(即ち、細菌が静止期にあるか、又は水溶液中のグリセロールに曝露される)場合にロイテリンの産生のための工場として働くことも可能であるという可能性を切り開く。MCSにおいて形成されるロイテリンは、MCSがない細胞よりも大きな量の細胞の中で保持される。このことは、即ち凍結乾燥の前にロイテリンを細菌に「充填」することを可能にする。
【0028】
我々は、SriramuluらがDSM20016株について観察したものを、我々のMM4−1A株及びDSM17938株により繰り返した。しかし、65mMの1,2−PD及び少量のグルコースを有する改変MRS−培地における増殖は、この培地における細菌の非常に低い増殖率のため工業的設定に適用可能ではない。我々は、その代わりに、非改変MRS培地に200mMの1,2−PDと1ug/mLのビタミンB12とを添加し、細菌が37℃で24時間の増殖の後で可視のMCSを産生するかを試験した(視覚化のための電子顕微観察を使用する)。MM4−1A株及びDSM17938株の両方は、これらの条件の下でMCSを産生した(図4)。
【0029】
1,2−PDと同様にグリセロールはPduCDEと称される同じ酵素複合体により代謝されるが、従って、1,2−PDについて認められるものと同様に細菌の中でMCSの形成を誘導するためにグリセロールを使用することも可能である。200mMのグリセロール又は1,2−PDのいずれかにおけるMM4−1A株の増殖は、細菌が水溶液中のグリセロールに1時間未満曝露された後、ロイテリン形成及び細菌細胞ペレットへのその会合に達した際に同じように働く細胞を産生する(図5a及び5b)。
【0030】
ペレットの洗浄に加えて(上記(図5b)参照)、我々は、MAS−NMRを用いてロイテリン含有率についての洗浄細胞ペレットの試験をも行った。次いで、MM4−1A株を、B12(1ug/L)と200mMの1,2−PDとが添加されたMRS−培地において静止期にまで増殖させた。増殖後、細菌を、水溶液中の200mMのグリセロールに曝露させ、37℃で1時間インキュベートした。細胞を氷上に保持し、200mMのグリセロールを含有する重水(D2O)において2回洗浄した。最終ステップからのペレット(およそ20μL湿重量)を、グリセロールを有さない20μLのD2Oに溶解し、MAS−NMRを用いてロイテリン含有率について測定した。我々は、この方法を用いてロイテリンの3種の形態の内の2種と、ロイテリン及び1,2−PDからの幾つかの分解産物とを検出することができた(図6a及び6b)。
【0031】
グリセロール及び1,2−PDによる初回刺激は別として、増殖培地への特定の他の物質の添加は、細胞の生存率、MCSの形成、ロイテリンの産生、及び細菌の適合性に影響を及ぼすことを示したが、それらの物質は、例えばビタミンB12、コバルト及びビタミンCである。
【0032】
増殖培地へのビタミンB12又はコバルトの添加がL.ロイテリの適合性に影響を及ぼすことを示すために、ロイテリン産生とL.ロイテリ株DSM17938及びMM4―1Aの適合性とに関して異なる2種の増殖培地(MRS(Oxoid)及びB12アッセイ培地(Fluka))を試験した。これらの2種の増殖培地の間の主要な差は、MRSが酵母抽出物の形態で添加されたビタミンの不確定の組成物を含むのに対して、B12アッセイ培地(以下B12−培地と称する)が全てのビタミンの確定された組成物を有し、細菌が、それが一斉に欠いているB12を除いて適切に機能する必要があることである。これらの2種の培地の間のビタミン組成物の差に関して最も顕著なことは、B12−培地が、おそらくMRSよりも幾らか大きな規模の4g/LのビタミンCから成ることである。
【0033】
我々は、ビタミンB12又はコバルトの添加に関して、ロイテリン、微小区画(MCS)の形成、及び細菌の適合性をモニタするための道具としてB12−培地を使用した。ビタミンB12は、ロイテリンへのグリセロールの変換の原因である酵素複合体PduCDEのための必須成分である。ビタミンB12分子が生物学的機能を有するために、それはコバルトイオンを必要とする。ビタミンB12ではなくコバルトが培地中に存在する場合、cobオペロンの遺伝子がコバルト含有B12分子の形成に必須であるので、cobオペロンの遺伝子が発現する場合にロイテリンが形成され得るだけである。cobオペロンの発現が調節因子PocRを介して上流のpduオペロンの発現につながる可能性がある(Santos F、Vera JL、van der Heijden R、Valdez G、de Vos WM、Sesma F、Hugenholtz J:「ラクトバシラス・ロイテリCRL1098の完全な補酵素B12生合成遺伝子クラスター」(The complete coenzyme B12 biosynthesis gene cluster of Lactobacillus reuteri CRL1098.)Microbiology 2008,154(Pt 1):81〜93;Cheng S、Liu Y、Crowley CS、Yeates TO、Bobik TA:「細菌の微小区画:それらの特性及びパラドックス」(Bacterial microcompartments:their properties and paradoxes.)Bioessays 2008,30(11〜12):1084〜1095)ので、我々は、MRS又はB12−培地へのビタミンB12又はコバルトの添加に関してロイテリン産生及び適合性を試験した。
【0034】
株(DSM17938及びMM4−1A)の両方は、様々な量のビタミンB12又はコバルトのいずれかを有するB12−培地において培養された場合のそれらのロイテリン産生を考慮して、強い影響を受けた(図1)。このことは、直接添加されなければならないか、若しくはコバルトイオンの存在下で細菌により合成されなければならない機能性B12分子なしでロイテリン産生が起こり得ないので、論理的である。
【0035】
B12−培地とは対照的に、MRS培地は、添加された酵母抽出物がビタミンの混合物を含有するので、既に不確定量のビタミンB12を含有する。普通のMRS培地において培養されたMM4−1A及びDSM17938からの測定されたロイテリン産生は、MM4−1AがDSM17938株と同じレベルのロイテリン産生に達しなかった文献においてより以前に報告されたものと一致した(図2)(Spinler JK、Taweechotipatr M、Rognerud CL、Ou CN、Tumwasorn S、Versalovic J:「ヒト誘導プロバイオティックラクトバシラス・ロイテリは、多様な腸内細菌性病原体を標的とする抗菌活性を示す」(Human−derived probiotic Lactobacillus reuteri demonstrate antimicrobial activities targeting diverse enteric bacterial pathogens.)Anaerobe 2008,14(3):166〜171)。B12−培地とは対照的に、MRS培地へのビタミンB12又はコバルトの添加によっては、MM4−1A及びDSM17938からのロイテリン産生の増大に関する決定的結果は得られなかった。
【0036】
しかし、MRS−培地へのビタミンB12の添加は、MM4−1A細菌の適合性に関して1,2−プロパンジオール(1,2−PD)との相乗効果を有する(図3)。ビタミンB12と200mMの1,2−PDとが添加されたMRSにおいて培養された際のMM4−1A株の適合性の増大は、細菌の周囲の培地中の検出可能なロイテリンの減少と相関している(図3)。我々は、この現象が、MRSへのビタミンB12及び1,2−PDの添加が細菌内の微小区画(MCS)の発生を増加させたことによるかもしれないと推測した。MCSの発生の増加により、産生ロイテリンは、細菌が有する形成MCS内に保持された。
【0037】
要約すれば、我々は、通常のMRSへのビタミンB12及び1,2−PDの添加が:
【0038】
MM4−1A及びDSM17938の両方において可視のMCSを発生させる(図4)、ビタミンB12(lug/L)と200mMの1,2−PDとが添加されたMRSにおいて増殖させたMM4−1Aについての産生ロイテリンに対する耐性を増加させる(図3)、−ビタミンB12(1ug/L)と200mMの1,2−PDとが添加されたB12−培地において増殖させたDSM17938についての産生ロイテリンに対する耐性を増加させる(図3b)、ことを示した。
【0039】
また、我々は、この方法で(又は1,2−PDの代わりに添加されたグリセロールが添加により)増殖させたMM4−1A細菌が、細菌細胞体の中ではより大量の、外側ではより少量のロイテリンを保持することをも示した(図5b)。
【0040】
1,2−PDが補充されたMRSへのビタミンB12の添加は、内因的に産生されたロイテリンに耐性を有するMM4−1Aの性能の増大に関する効果を有する。ビタミンB12を有する増殖培地の飽和は、細菌が、1,2−PDの存在下で増殖する際に機能性MCSを形成することを促進する(図3及び3b)。
【0041】
ロイテリンを含有する活性化微小区画を充填した保存L.ロイテリは、各種の組成物、典型的にはクリーム剤、ローション剤、ペースト剤、粉剤、カプセル剤、錠剤、軟膏剤、乳剤、経鼻スプレー等に調合され得る。かかる調合物は、医薬的に許容し得る担体、賦形剤、溶媒又はアジュバントを用いて公知の手段により調製され得る。かかる手法及び成分は、周知であり、標準的なテキスト及びマニュアルに詳細に記載される。
【0042】
本発明による細菌は、例えば黄色ブドウ球菌、化膿連鎖球菌、ざ瘡プロピオンバクテリウム等の皮膚系の病原菌に関連する障害の予防又は治療を目的とする組成物或いは酵母を調製するために使用され得る。これらの皮膚障害は、特にアトピー性皮膚炎ざ瘡、カンジダ症、膿痂疹又は湿疹性二次感染であり得る。また、皮膚障害は、非細菌性の原因のもの、例えば、酒さ、乾癬、熱傷による創傷、褥瘡、及び他の治癒の遅い創傷でもあり得る。本発明による細菌は、皮膚系の病原菌により誘導される障害の治療用組成物の製造のために使用され得る。特に、前記細菌は、MRSAの予防又は治療用組成物の製造のために使用され得る。
【0043】
前述のことは、本発明の原理だけの例証を示すものと考えられる。更に、多くの改変及び変更が当業者にとって容易であるので、示して記載される厳密な構成及び実施に本発明を限定することが望ましくなく、従って、本発明の範囲内にある全ての適切な改変及び同等物を用いることができる。
【0044】
また、本発明は、本明細書に記載される通りの本発明の方法により得られる産物を含む医薬組成物をも提供するものである。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
発酵ステップの間に活性化させたロイテリンを含有する充填微小区画を有する凍結乾燥L.ロイテリ粉剤の製造
発酵培地組成物
一水和デキストロース 60g/L
酵母抽出物KAV 20g/L
ペプトン型PS(ブタ由来) 20g/L
クエン酸水素二アンモニウム 5g/L
酢酸ナトリウム(×3 HO)4.7g/L
リン酸水素二カリウム 2g/L
Tween80 0.5g/L
Silibione(消泡剤) 0.14g/L
硫酸マグネシウム 0.10g/L
硫酸マンガン 0.03g/L
硫酸亜鉛七水和物 0.01g/L
水 十分量
遠心分離培地
ペプトンO−24 Orthana(ブタ由来)
凍結保護剤
ラクトース(ウシ由来) 33%
ゼラチン加水分解物(ウシ由来) 22%
グルタミン酸ナトリウム 22%
マルトデキストリン 11%
アスコルビン酸 11%
【0046】
凍結乾燥ラクトバシラス・ロイテリ粉剤の製造ステップ
ワーキングセルバンクバイアルからの0.6mLの凍結乾燥ラクトバシラス・ロイテリ粉剤を20mLの培地に接種する。撹拌やpH調節を行わず、即ち静的に、37℃でビンの中で18〜20時間発酵を行う。
【0047】
培地の2つの1リットルフラスコに、1リットルにつき9mLの細胞スラリーを接種する。撹拌やpH調節を行わず、即ち静的に、37℃で20〜22時間発酵を行う。
【0048】
ステップno.2からの2つの1リットルの細胞スラリーを、600リットルの容器に接種する。撹拌及びpH調節を行いながら37℃で13時間発酵を行う。発酵の開始時、pHは6.5である。20%の水酸化ナトリウム溶液を用いてpHが5.4未満に低下した際にpH調節を開始する。pH調節をpH5.5に設定する。
【0049】
ステップno.3からの接種による15000リットルの容器の中で第4及び最終発酵ステップを行う。撹拌及びpH調節を行いながら37℃で9〜12時間発酵を行う。発酵の開始時、pHは6.5である。20%の水酸化ナトリウム溶液を用いてpHが5.4未満に低下した際にpH調節を開始する。pH調節をpH5.5に設定する。培養物が静止期に達する直前に、発酵の最終期において100mMのグリセロールを添加する。培養物が、水酸化ナトリウム溶液の添加の減少により認めることができる静止期に達する際、発酵は完了する。発酵の間、10200リットルの培地及び600リットルの接種材料におよそ930リットルの水酸化ナトリウム溶液を添加する。
【0050】
最終発酵からの細胞スラリーを、Alfa Lavalからの連続遠心分離機において10℃で2回分離する。第1の遠心分離の後、細胞スラリーの量をおよそ11730リットルから1200リットルに減少させる。この量を、3000リットルの容器の中で1200リットルのペプトン(ペプトン0−24、Orthana)溶液で洗浄し、再度分離した後、凍結保護剤と混合する。ペプトンによる洗浄ステップは、凍結乾燥方法におけるあらゆる氷点低下を回避するために行う。
【0051】
第2の遠心分離の後、細胞スラリーの量を495リットルに減少させる。この量を156kgの凍結保護剤溶液と混合し、およそ650リットルの細胞スラリーに達する。
【0052】
細胞スラリーを1000リットルの容器にポンピングする。次いで、容器を凍結乾燥設備に輸送する。
【0053】
凍結乾燥設備において、正確に2リットルの細胞スラリーを凍結乾燥器内の各プレート上に注ぐ。凍結乾燥器の最大容量は600リットルであり、全ての過剰の細胞スラリー量を捨てる。
【0054】
ラクトバシラス・ロイテリの細胞スラリーは18%の乾燥物含有率を有し、それを4〜5日間凍結乾燥させる。
【0055】
凍結乾燥プロセスの間、そのプロセスにおける圧力は0.176mbar〜0.42mbarの間である。圧力が0.42mbarに達した際に真空ポンプを開始する。PRT(加圧試験)を用いて、そのプロセスがいつ完了するのかを決定する。PRT又は圧力の上昇が120秒後に0.02mbar未満である場合、そのプロセスを停止する。
【0056】
(実施例2)
発酵ステップの間に初回刺激及び活性化されたロイテリンを含有する充填微小区画を有する凍結乾燥L.ロイテリ粉剤の製造
増殖培地において更なる200mMの1,2−PDとビタミンC(4g/L)とビタミンB12(1ug/mL)とにより初回刺激される以外は実施例1と同様の製造プロセス。
【0057】
(実施例3)
発酵ステップの間に初回刺激され、凍結乾燥ステップの前のロイテリン形成のために活性化されるロイテリンを含有する充填微小区画を有する凍結乾燥L.ロイテリ粉剤の製造。
増殖培地に更なる200mMの1,2−PDとビタミンC(4g/L)とビタミンB12(1ug/mL)とにより初回刺激される以外は実施例1と同様の製造プロセス。しかし、100mMのグリセロールを発酵期において添加しないが、その代わりに細胞スラリーに添加した後、凍結乾燥設備に輸送する。
【0058】
(実施例4)
活性化ロイテリン産生機構によるL.ロイテリを有する軟膏剤の調製
以下の成分から軟膏剤を調製する:
例えば上記の製造法の内のいずれかを用いた活性化ロイテリン産生機構によるL.ロイテリの凍結乾燥粉剤。
生成物(固形脂肪又は蝋により安定する水分を含まない油)のための賦形剤、油、好ましくは植物油、例えばナタネ油やパーム油
固形脂肪、例えば蜜蝋
保存剤及び安定剤、軟膏剤の技術分野で公知のいずれか
【0059】
前記プロセスは、固体部分を溶融し、油(Akomed(登録商標)、AAK)及び他の成分とを混合することを含む。55℃未満の温度でその混合物に凍結乾燥粉剤L.ロイテリを添加する。混合物を、それが固化して軟膏剤が得られるまで撹拌する。
【0060】
軟膏剤をチューブ内に充填し、封止する。得られた軟膏剤は、1グラムの軟膏剤につき約10E+08CFUの調製L.ロイテリ培養物を含有する。
【0061】
(実施例5)
ヒト被験者における酒さの治療
酒さの長期の既往歴を有する女性被験者に、本明細書における本発明により製造された凍結乾燥L.ロイテリ培養物を投与する。被験者には、1日2回、朝及び夜に投与する。その度毎に軟膏剤の薄層を皮膚に塗り込む。
【0062】
2週後、酒さは、その症状の治療のために処方された抗生物質なしで明白に改善する。L.ロイテリ治療を中止すると症状は再発するが、L.ロイテリの標準的な投与により抑制される。
【0063】
(実施例6)
経鼻スプレー製剤
ロイテリン産生のために用いる準備が整っている微小区画構造を充填したL.ロイテリを含む経鼻製剤は、必要に応じて調合器又は他の装置を用いて、投与のための様々な形態、例えばスプレー、滴剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、粉剤又は懸濁液の形態をとることができる。種々の調合器及び送達ビヒクルは本技術分野で公知であり、それらとしては、単回投与アンプル、アトマイザ、ネブライザ、ポンプ、経鼻パッド、経鼻スポンジ、経鼻カプセル等が挙げられる。
【0064】
更に一般的にいえば、前記製剤は、固体、半固体又は液体の形態をとることができる。固体形態の場合、成分を、配合、タンブル混合、凍結乾燥、溶媒蒸発、同時粉砕、噴霧乾燥、及び本技術分野で公知の他の技術により混ぜ合わすことができる。
【0065】
鼻腔内投与に適切な半固形製剤は、油を基剤としたゲル剤又は軟膏剤の形態をとることができる。
【0066】
好ましい一実施態様において、経鼻製剤は液体形態であってよく、その液体形態としては、油溶液、油懸濁液を挙げることができる。液体製剤は、本技術分野で公知の装置を用いて、経鼻スプレーとして、又は経鼻滴剤として投与されるが、その装置としては、液滴式エアゾル剤としての選択量の調合物を送達し得るネブライザが挙げられる。例えば、商業的に入手可能な50μL又は100μLの送達容量を有するスプレーポンプは、例えば、成人サイズ及び小児サイズのスプレー先端部と共にValois(Congers、N.Y.)から入手可能である。
【0067】
液体製剤は、公知の手法により製造され得る。例えば、経鼻投与用製剤は、油脂性基剤、例えばオリーブ油、ラノリン、シリコーン油、グリセリン脂肪酸等の医薬的に許容し得る油において、ロイテリンを充填したL.ロイテリを混合することにより製造され得る。
【0068】
調合、安定性及び/又は生物学的利用能のために必要な賦形剤が製剤中に含まれ得ることはいうまでもない。例示的な賦形剤としては、糖類(グルコース、ソルビトール、マンニトール、スクロース)、取込み促進剤(キトサン)、増粘剤及び安定性促進剤(セルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン等)、緩衝剤、保存剤、及び/又はpHを調整するための酸及び塩基等が挙げられる。
【0069】
具体的な実施例を参照して本発明を記載したが、多くの他の形態で本発明を実施することができることは、当業者に理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバシラス・ロイテリ細胞培養物のロイテリン産生機構の制御活性化方法であって、
ラクトバシラス・ロイテリ細胞培養物を製造するステップ;
製造の間にラクトバシラス・ロイテリ細胞培養物にグリセロールを添加し、それによりロイテリンを産生するステップ;及び
ラクトバシラス・ロイテリの保存及び貯蔵の間にラクトバシラス・ロイテリ細胞培養物の内部で産生ロイテリンを保持するステップを含む上記方法。
【請求項2】
ラクトバシラス・ロイテリを製造するステップが、ラクトバシラス・ロイテリ細胞培養物を発酵させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
発酵させるステップが、発酵プロセスの終了後に約1〜約500mMのグリセロールを添加するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
発酵後に、細胞培養物を洗浄するステップと、細胞培養物を凍結乾燥するステップとを更に含む、請求項2又は請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
発酵プロセスの後に細胞培養物を洗浄するステップが、発酵プロセス及び洗浄プロセスの後、凍結乾燥の前にグリセロールと共に少なくとも1種の凍結保護剤を添加するステップを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
凍結乾燥を、ロイテリン産生が開始した後約30〜45分間行う、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
細胞培養物に少なくとも1種の凍結保護剤を添加するステップを更に含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ラクトバシラス・ロイテリ細胞培養物を発酵させるステップが、発酵ステップの開始時に1,2−プロパンジオール、コバルト、ビタミンB−12、ビタミンC、グリセロール又はそれらの組み合わせの内の少なくとも1つにより細胞培養物を初回刺激するステップを含む、請求項2から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
発酵ステップの開始時にビタミンB−12と1,2−プロパンジオールとを細胞培養物に添加する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
発酵ステップが、発酵ステップの開始時にコバルト又はビタミンB−12の内の少なくとも1つを細胞培養物に添加するステップを含む、請求項2から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
製造プロセスにおいて、発酵ステップの後、凍結乾燥の前に約1〜約500mMのグリセロールを添加する、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
発酵ステップが、発酵ステップの初めに1,2−プロパンジオール又はグリセロールの内の少なくとも1つを添加するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
ラクトバシラス・ロイテリ細胞培養物のロイテリン産生機構の制御活性化方法であって、ラクトバシラス・ロイテリ細胞培養物を製造するステップであって、細胞培養物を製造する前記ステップが:
細胞培養物を発酵させるステップ;
細胞培養物を洗浄するステップ;及び
細胞培養物を凍結乾燥するステップを含む上記ステップと;
ラクトバシラス・ロイテリ細胞培養物に約1〜約500mMのグリセロールを添加し、その後細胞培養物を凍結乾燥し、それによりロイテリンを産生し、それによりラクトバシラス・ロイテリの保存及び貯蔵の間にラクトバシラス・ロイテリ細胞培養物の内部で産生ロイテリンを保持するステップとを含む上記方法。
【請求項14】
発酵ステップの開始時に、1,2−プロパンジオール、コバルト、ビタミンB−12、ビタミンC、グリセロール又はそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを細胞培養に添加するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
発酵ステップの開始時に、ビタミンB−12と1,2−プロパンジオールとを細胞培養物に添加する、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか一項に記載の方法により産生された産物。
【請求項17】
請求項16に記載の産物の投与を含む、皮膚系の病原菌により誘導された障害の予防又は治療方法。
【請求項18】
前記投与が経鼻投与である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
MRSAの予防又は治療のためである、請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
皮膚系の病原菌により誘導された障害の治療用医薬組成物の製造のための請求項16に記載の産物の使用。
【請求項21】
MRSAの予防又は治療用医薬組成物の製造のための請求項16に記載の産物の使用。
【請求項22】
皮膚系の病原菌により誘導された障害の治療に用いるための請求項16に記載の産物。
【請求項23】
MRSAの予防又は治療に用いるための請求項16に記載の産物。
【請求項24】
請求項16に記載の産物を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−522885(P2011−522885A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513457(P2011−513457)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050707
【国際公開番号】WO2009/151391
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(500155578)バイオガイア・エイビー (13)
【氏名又は名称原語表記】Biogaia AB
【Fターム(参考)】