説明

ラケット及びラケットの製造方法

【課題】衝撃に強く操作性に優れたラケット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】グリップと、前記グリップに取り付けられるシャフト20と、前記シャフト20に取り付けられ、環状に形成されるフレームと、前記フレームと一体に成形され、前記フレームを保護する保護部12と、を備えている。これにより、衝撃に強く操作性に優れたラケット及びラケットの製造方法を提供することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラケット及びラケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレームとシャフトとをT型ジョイントを介して接合してなるバドミントンラケットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−65862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばかかるラケットを用いて行うバトミントンにおいて、ラケットが床に接触して破損する恐れがある。また、特に、ダブルス戦を行う場合には、ペアを組んでいる味方プレイヤーのラケットが互いに衝突して破損するおそれがある。
【0005】
ラケットを保護する対策として、ラケットのフレームに別体の保護材を取り付ける場合がある。しかしながら、この別体の保護材は突出した状態でフレームに取り付けられるため、スイング時の空気抵抗が大きくなり、操作性に悪影響を与えてしまう。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、衝撃に強く操作性に優れたラケット及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、
グリップと、前記グリップに取り付けられるシャフトと、前記シャフトに取り付けられ、環状に形成されたフレームと、前記フレームと一体に成形され、前記フレームを保護する保護部と、を備えたラケットである。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態であるバドミントンラケット1の外観図である。
【図2】フレーム10の正面図及び側面図である。
【図3】図3Aは、図2中のA−A断面の一例を示した図である。図3Bは、図2中のA−A断面の他の例を示した図である。
【図4】バドミントンラケット1を用いてシャトルを打った際に発生する音の測定値を表にして示した図である。
【図5】バドミントンラケット1の製造方法を説明するための図である。図5Aは、樹脂シートを示した図である。図5Bは、樹脂シート筒を示した図である。図5Cは、樹脂シート筒を金型に設置した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
===開示の概要===
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0011】
即ち、グリップと、
前記グリップに取り付けられるシャフトと、
前記シャフトに取り付けられ、環状に形成されたフレームと、
前記フレームと一体に成形され、前記フレームを保護する保護部と、
を備えたラケットである。
このようなラケットによれば、スイング時の空気抵抗を小さくしつつ衝撃に強いラケットを形成することができる。
【0012】
また、かかるラケットであって、
前記フレームは、前記保護部が形成される部位において、繊維強化樹脂からなる内層と、保護用樹脂からなる外層と、前記内層と前記外層との間に介在し前記繊維強化樹脂と前記保護用樹脂とを結合させる接着用樹脂からなる中間層と、を有することを特徴とするラケットである。
このようなラケットによれば、繊維強化樹脂と保護用樹脂との密着性を高めることができる。
【0013】
また、かかるラケットであって、
前記保護用樹脂は、100℃以上に加熱して成形することによって軟質化するポリアミド系樹脂であることを特徴とするラケットである。
このようなラケットによれば、繊維強化樹脂と保護用樹脂との密着性をより高めることができる。
【0014】
また、かかるラケットであって、
前記保護部は、前記フレームの上半分及び下半分のうちの上半分のみに形成されることを特徴とするラケットである。
このようなラケットによれば、味方プレイヤーのラケット等と衝突する可能性の高いトップ部分を保護することができる。
【0015】
また、かかるラケットであって、
前記外層は、打面に相当する範囲を覆うように形成されることを特徴とするラケットである。
このようなラケットによれば、フレームの耐衝撃性をより高めることができる。
【0016】
さらに、樹脂シートと保護用樹脂を円筒状にした樹脂シート筒を形成する工程と、
前記樹脂シート筒を環状に屈曲させて両端部を突き合わせた状態で金型に設置した後、加熱及び加圧することによって、前記樹脂シートと前記保護用樹脂を一体に成形したフレームを形成する工程と、
を有することを特徴とするラケットの製造方法である。
このようなラケットによれば、スイング時の空気抵抗を小さくしつつ衝撃に強いラケットを形成することができる。
【0017】
===実施の形態===
<<<ラケットの構成>>>
本発明のラケットを適用したバドミントンラケット1の構成例について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、バドミントンラケット1の外観図である。図2は、バドミントンラケット1の先端部分の正面図及び側面図である。
【0018】
バドミントンラケット1は、図1に示すように、環状に形成されたフレーム10と、フレーム10に一方の端部が取り付けられたシャフト20と、シャフト20の他方の端部に取り付けられたグリップ30とを有している。また、このバドミントンラケット1は、図2に示すように、フレーム10(本体部11)と一体に成形され、該フレーム10を保護する保護部12を有している。なお、本実施の形態に係るバドミントンラケット1は、フレーム10とシャフト20を内蔵されたT型ジョイント14(図5参照)を介して接合することにより構成されている。
【0019】
<フレーム>
次に、フレーム10の構成例について、図2を用いて説明する。
フレーム10は、シャトルを打つための打面を囲んだ枠体であり、環状に形成された本体部11を有している。このフレーム10は、図2に示すように、バドミントンラケット1の先端部分に設けられている。
【0020】
フレーム10は、内側に存在する打面を正面としたときに、該正面に対する内側(つまり環状形状の中心側)の側面に内周部を有しており、このフレームを挟んで内周部と反対側に外周部を有している。
【0021】
内周部及び外周部には、ストリングを挿入する挿入孔が連通して設けられているため、外周部の挿入孔から挿入されたストリングを内周部の挿入孔から取り出すことができる。 この挿入孔は、内周部及び外周部の周方向に沿って複数並んで設けられている(不図示)。ストリングが挿入孔間に張り渡されると、該ストリングがフレーム10の内側で格子状に交わるようになる。このようにして、フレーム10の内側に水平面をなす略楕円形の打面を形成することができる。
【0022】
<本体部>
本体部11は、繊維強化樹脂からなる中空管状体である。本実施形態においては、カーボン繊維を主体としたプリプレグ状のFRP(fiber reinforced plastic)を繊維強化樹脂の一例として用いることによって本体部11を形成している。この本体部11は、後述する保護部12(図2参照)により保護される。
【0023】
<保護部>
保護部12は、保護用樹脂の一例としてのポリアミド系樹脂からなり、金型内で加熱及び加圧されることにより本体部11と一体構造に成形される。
【0024】
本実施形態においては、100℃以上に加熱して成形することによって軟質化するナイロン等のポリアミド系樹脂を用いる。これは、金型内部が100℃以上に加熱されると、本体部11を形成するカーボン繊維を主体としたFRPと保護部12を形成するナイロン樹脂とが融着して一体化することができるためである。
【0025】
このように、本体部11と保護部12とが一体構造になるように成型することにより、フレーム10から保護部12が外側へ突出しないようにすることができる。これにより、スイング時の空気抵抗を小さくすることができる。また、本体部11が保護部12により保護されるので、衝撃に強いラケットを形成することができる。
【0026】
また、保護部12は、図2に示すように、フレーム10の上半分及び下半分のうちの上半分のみに形成されている。具体的には、バドミントンラケット1のセンターラインC.L.から右左方向に各々135mm以内の範囲のみに、保護部12が形成されている。
【0027】
このようにフレーム10の上半分のみに保護部12を設けたのは、成形時に保護部12にシワが発生するのを防ぐためである。詳細には、フレーム10の上半分及び下半分の双方に(つまり全周に)保護部12を設けると、フレーム10の周長が一律に同じ長さではなくラケットの先端部分に向かうほど短くなっているため、成型時に周長が異なる部分等にシワが発生する可能性があるからである。このシワが発生すると、プレー時にこのシワに抵抗などの外力がかかることにより保護部12が本体部11から剥離してしまうためである。また、プレー時(特にダブルス戦)において、バドミントンラケット1の下半分よりも上半分の方が、衝突頻度が高く、より破損し易いので、この部位を積極的に保護するためである。
【0028】
<フレーム10の断面構造>
次に、保護部12が形成される部位におけるフレーム10の断面構造について、図3を用いて説明する。図3Aは、図2中のA−A断面の一例を示した図である。図3Bは、図2中のA−A断面の他の例を示した図である。
【0029】
フレーム10は、図3Aに示すように、保護部12が形成される部位において、内層12aと、中間層12bと、外層12cとを有している。
【0030】
内層12aは、繊維強化樹脂からなる層であり、本体部11に相当する。この繊維強化樹脂として、たとえば、カーボン繊維を主体としたFRPを使用することができる。
【0031】
中間層12bは、内層12aと外層12cとの間に形成され、接着用樹脂からなる層である。この接着用樹脂として、たとえば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、又はフェノール樹脂等を使用することができる。この接着用樹脂は、内層12aを形成する繊維強化樹脂と外層12cを形成する保護用樹脂とを密着させることにより、本体部11と保護部12とを一体化させることができる。
【0032】
一体成型を行うことにより、内層を形成する繊維強化樹脂と外層を形成する保護用樹脂を一体化させることができるが、このように接着用樹脂からなる中間層を設けることにより、繊維強化樹脂層と保護用樹脂層とをより一体化させ易くすることができる。
【0033】
外層12cは、保護用樹脂の一例としてのポリアミド系樹脂からなる層であり、保護部12に相当する。このポリアミド系樹脂として、たとえば、6ナイロン、12ナイロン、66ナイロン等を使用することができる。
【0034】
また、外層12cは、図3Aに示すように、フレーム10の外周部及びこの外周部から内周部に至るまでの範囲(打面に相当する範囲)を覆うように形成されている。すなわち、この保護用樹脂は、フレーム10の外側から内側まで回り込んで本体部11を覆うことで、衝突が起こり易い外周部及びそこから内側に回り込む側面部分(つまり打面に相当する範囲)を保護するバンパーとして機能するため、フレーム10の耐衝撃性をより高めることができる。
【0035】
さらに、外層12cは、フレーム10の外周部に沿って形成された溝13も覆うように形成されている。
【0036】
この溝13には、ストリングを挿入する挿入孔が複数設けられている。ストリングは、挿入孔からフレーム10の外側に出て、他の挿入孔からフレーム10の内側に入るため、このストリングの折り返し部分が、溝13に収まるとともに、張力により溝13に食い込むことになる。
【0037】
そうすると、ストリングの折り返し部分が溝13から外側へ出っ張らないため、スイング時の空気抵抗を少なくすることができるものの、この溝13の挿入孔付近に応力集中が発生することによって溝13の挿入孔が陥没し、ひいてはフレーム10が破損するおそれがある。
【0038】
これに対し、外層12cは溝13も覆うように形成されているため、溝13の挿入孔の陥没を防ぐことができるとともに、フレーム10の破損を防ぐことができる。つまり、FRPは、応力集中に弱いという特性があるが、保護用樹脂により応力を分散させることができるので、FRPの破損を防止できる。
【0039】
以上のことからすれば、図3Bに示すように、フレーム10の外周部に沿って形成された溝13のみに、外層12cを形成することも可能である。このように形成することで、挿入孔付近に発生する応力集中によりフレームの本体部11が破損することを防止できる点で有効となる。
【0040】
<シャフト>
シャフト20は、フレーム10とグリップ30との間に位置し、フレーム10とグリップ30とを連結する部材である。すなわち、シャフト20は、フレーム10及びグリップ30に接合している。本実施形態におけるシャフト20は、カーボン繊維を主体としたプリプレグ状のFRP製の中空管状体であるが、内部は中空である。
【0041】
<グリップ>
グリップ30は、プレイヤーが握り持つ部分であり、バドミントンラケット1の末端部分に位置する。本実施形態におけるグリップ30は、木材を使用しており上記シャフト20を適当量差し込み接着剤で固定されている。また、グリップ30にはテープが巻回され、打撃時の衝撃を吸収することができる。
なお、このバドミントンラケット1の製造方法については追って詳述する。
【0042】
<<<バドミントンラケットの特性>>>
ここで、バドミントンラケットの特性について説明する。
一般に、バドミントンでは、狭いコート内でシャトルを激しく打ち合うため、テニス等と比べると、極めて機敏でかつ高速のスイング動作がプレイヤーに要求される。そのため、軽量化したバドミントンラケットが必要となる。
【0043】
高速スイングを可能にすべく、フレームの肉厚を薄くすることによって軽量化することもできるが、外部からの衝撃に耐えうる強度を維持することが困難となる。特に、バドミントンのコートは狭いため、ダブルス戦を行う場合には、ペアを組んでいる味方プレイヤーのラケットが互いに衝突しやすい状況にある。
【0044】
一方、外部からの衝撃に耐えるべく、バドミントンラケットのフレームに別体の保護材を取り付ける場合がある。しかしながら、この別体の保護材は突出した状態でフレームに取り付けられるため、スイング時の空気抵抗が大きくなり、操作性に悪影響を与えてしまう。
【0045】
このように、バドミントンにおいては、軽量で衝撃に強く操作性の良いバドミントンラケットが必要となる。
【0046】
これに対し、本実施の形態に係るバドミントンラケット1によれば、環状に形成されるフレーム10(本体部11)と、このフレーム10と一体に成形された保護部12と、を有するバドミントンラケット1を用いることにより、フレーム10に別体の保護材を突出した状態で取り付けることがないため、軽量でかつ耐衝撃性を向上させたバドミントンラケットを実現することができるとともに、スイング時の空気抵抗を小さくして操作性に優れたラケットを実現することができる。
【0047】
<スイング時の打撃音>
また、本実施の形態に係るバドミントンラケット1によれば、環状に形成されるフレーム10と、このフレーム10と一体に成形された保護部12と、を備えたバドミントンラケット1であって、かつ、100℃以上に加熱して成形することによって軟質化するナイロン等のポリアミド系樹脂からなる保護部12を、フレーム10の上半分及び下半分のうちの上半分のみに形成したバドミントンラケット1を用いることにより、シャトルを打った際に出る打撃音を大きくすることができる。
【0048】
このようにスイング時の打撃音を大きくすることにより、対戦相手に威圧感を与えることができるとともに、自らも心地よくスイングすることができるようになる。
【0049】
図4は、バドミントンラケットを用いてシャトルを打った際に発生する打撃音を測定し、その測定値を表にして示した図である。上図は、騒音計とFFTアナライザーにより音の大きさ(単位:sone)を5回測定した結果を表にして示した図であり、下図は、その際の音の鋭さ(単位:acum)を表にして示した図である。
【0050】
なお、いずれの測定も一定条件下でスイングマシーンを用いて行ったものである。また、「ナイロンあり」とは、環状に形成される本体部11と一体に成形された保護部12とを有するフレーム10を備えたバドミントンラケット(本発明にかかるバドミントンラケット)を用いて測定を行ったことを意味し、「ナイロンなし」とは、通常のバドミントンラケットを用いて測定を行ったことを意味する。
【0051】
まず、音の大きさについて説明する。図4の上図に示すとおり、本発明にかかるバドミントンラケット(ナイロン有り)の平均値が94.84soneであるのに対し、通常のバドミントンラケット(ナイロン無し)の平均値は92.08soneであることから、これらを比較すると、本発明にかかるバドミントンラケットの方が通常のバドミントンラケットよりも3%大きくなる。
【0052】
次に、音の鋭さについて説明する。図4の下図に示すとおり、本発明にかかるバドミントンラケットの平均値が1.74acumであるのに対し、通常のバドミントンラケットの平均値は1.64acumであることから、これらを比較すると、本発明にかかるバドミントンラケットの方が通常のバドミントンラケットよりも5%鋭くなる(5%高音となる)。
【0053】
このように、本実施の形態に係るバドミントンラケット1によれば、シャトルを打った際に発生する打撃音を大きくすることにより、ラケットの振り抜きが良くなるため、操作性に優れたラケットを実現することが可能となる。
【0054】
以下、軽量で衝撃に強く操作性の良いバドミントンラケット1を実現すべく、このバドミントンラケット1の製造方法を具体的に説明する。
【0055】
<<<ラケットの製造方法>>>
本発明のラケットを適用したバドミントンラケット1の製造方法について、図5を用いて説明する。図5は、バドミントンラケット1の製造方法を示す図である。
バドミントンラケット1の製造方法は、シャフト等製造工程と、樹脂シート筒形成工程と、接合工程と、グリップ等の取付工程とを有している。
【0056】
<シャフト等製造工程>
先ず、カーボン繊維を主体としたプリプレグ状のFRPの樹脂シートを同心状に積層して加熱し、バドミントンラケット1のシャフト20となる中空管状体を予め製造しておく。同様に、グリップ30も予め製造しておく。
【0057】
<樹脂シート筒形成工程>
次いで、図5Aに示すように、カーボン繊維を主体としたプリプレグ状のFRPの樹脂シート(カーボンプリプレグシート)を複数積層する。この際、接着用樹脂シートを介在させた状態で、ポリアミド系樹脂シート(図5Aの黒部分)をカーボンプリプレグシート層の最上層に重ねておく。
【0058】
次いで、図5Bに示すように、積層した図5Aの樹脂シートを円筒状に巻いた樹脂シート筒を形成する。このとき、樹脂シート筒の表面にポリアミド系樹脂シート(図5Aの黒部分)が現れるようにして巻くようにする。
【0059】
<接合工程>
次いで、図5Cに示すように、樹脂シート筒を環状に屈曲させて突き合わせた両端部と、予め製造しておいたシャフト20の端部とを、T型ジョイント14に取り付けた状態で金型に設置する。この際、樹脂シート筒の表面に現れるポリアミド系樹脂の部位(保護部12に相当する部位)が、フレーム10の上半分及び下半分のうちの上半分のみに形成されるように金型に設置しておく。
【0060】
このように樹脂シート筒を金型に設置した後に加熱及び加圧して、本体部11と保護部12とを一体構造に成型するとともに、フレーム10とシャフト20とを接合する。
【0061】
この接合工程では、フレーム10を形成する樹脂シート筒の積層されたカーボンプリプレグシート及びポリアミド系樹脂シートが加熱されて塑性変形するが、その際、樹脂シート筒の積層されたカーボンプリプレグシート及びポリアミド系樹脂シートを外方に押し広げ、カーボンプリプレグシート及びポリアミド系樹脂シートを金型に押圧する。そうすると、塑性変形した樹脂シート筒は、金型に沿った形状に成型されて、表面に凹凸のない滑らかな形状となる。
【0062】
<グリップ等の取付工程>
その後、フレーム10にストリングを張るための複数の挿入孔を形成して塗装し、予め製造しておいたグリップ30を取り付けてバドミントンラケット1が完成される。
【0063】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0064】
<ラケット>
上記の実施形態においては、バドミントンラケットを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、テニスやスカッシュ等のラケットにも適用することができる。
【0065】
なお、上述したように、テニス等はバドミントンほど極めて機敏でかつ高速のスイング動作がプレイヤーに要求されるものではないが、フレームと保護部とを一体成型したラケットを、テニス等にも適用することができることは言うまでもない。
【0066】
<フレーム10の断面構造>
上記の実施形態においては、図3に示すように、保護部12が形成される部位において、内層12aと、中間層12bと、外層12cとを有するフレーム10を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、内層12aと、中間層12bと、外層12cの他に、さらにブタジエン樹脂等の弾性体からなる弾性層を設けても良い。この弾性層を加えることにより、スイングの際に生じる振動を吸収できる点で有効となる。
【0067】
<ラケットのデザイン>
上記の実施形態においては、保護部12として、無地のポリアミド系樹脂シートのみならず、文字、数字、記号、模様、図柄等のデザイン部を予め付したポリアミド系樹脂シート(ナイロンシート)を用いることもできる。
【0068】
従来は、ラケットの製造工程において、成型後にフレームの上からシール等を貼ることにより、バドミントラケットにデザインを施してしていた。このシール等を貼る工程は、ラケットのデザインが複雑になればなるほど、多数のシールを貼る必要があり作業コストが大きくなっていた。つまり、この工程が、ラケット製造コスト増大の大きな要因になっていた。
【0069】
しかしながら、このようにデザイン部を有するナイロンシートを保護部12に用いれば、本体部11との一体成型が完了すると同時にデザイン処理も完成することになるので、製造工程においてその手間(工程)を省くことができるようになる。
【0070】
<その他>
また、上記の実施形態においては、ストリングが張られていない状態のバドミントンラケット1(図1参照)を例として説明したが、本発明にはストリングが張られた状態のラケットも含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 バドミントンラケット、
10 フレーム、11 本体部、12 保護部、
12a 内層、12b 中間層、12c 外層、
13 溝、14 T型ジョイント、
20 シャフト、30 グリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップと、
前記グリップに取り付けられるシャフトと、
前記シャフトに取り付けられ、環状に形成されたフレームと、
前記フレームと一体に成形され、前記フレームを保護する保護部と、
を備えたラケット。
【請求項2】
請求項1に記載のラケットであって、
前記フレームは、前記保護部が形成される部位において、繊維強化樹脂からなる内層と、保護用樹脂からなる外層と、前記内層と前記外層との間に介在し前記繊維強化樹脂と前記保護用樹脂とを結合させる接着用樹脂からなる中間層と、を有することを特徴とするラケット。
【請求項3】
請求項2に記載のラケットであって、
前記保護用樹脂は、100℃以上に加熱して成形することによって軟質化するポリアミド系樹脂であることを特徴とするラケット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のラケットであって、
前記保護部は、前記フレームの上半分及び下半分のうちの上半分のみに形成されることを特徴とするラケット。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載のラケットであって、
前記外層は、打面に相当する範囲を覆うように形成されることを特徴とするラケット。
【請求項6】
樹脂シートと保護用樹脂を円筒状にした樹脂シート筒を形成する工程と、
前記樹脂シート筒を環状に屈曲させて両端部を突き合わせた状態で金型に設置した後、加熱及び加圧することによって、前記樹脂シートと前記保護用樹脂を一体に成形したフレームを形成する工程と、
を有することを特徴とするラケットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−339(P2012−339A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139704(P2010−139704)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(390010917)ヨネックス株式会社 (31)