説明

ラジアルガスエキスパンダ

【課題】本発明は、高圧、高圧力比の条件下に十分対応することが可能な信頼性の高い一軸多段のラジアルガスエキスパンダを提供する。
【解決手段】単一軸からなるロータ軸13上の軸受21a,21b間に2段以上のインペラ動翼14a〜14hを配列してなる2以上のラジアルガスエキスパンダセクション11A,11Bを単一ケーシング10に内蔵した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一軸上にインペラ動翼が多段に配列されてなるラジアルガスエキスパンダ(半径流ガス膨張機)に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスエキスパンダは、プラント側より排出される高圧のガスを吸込み、膨張させてガスの圧力エネルギーを速度エネルギー(機械エネルギー)に変換させることにより動力を回収し、駆動モータ等の動力を低減させる目的に利用されていることは特許文献1等で良く知られている。
【0003】
このガスエキスパンダにおいて、高圧力比をカバー(吸収)するため又は高性能化を図るためにガスエキスパンダを多段に設ける必要がある場合、例えば図4に示すようなギアドタイプ(増速歯車式)のラジアルガスエキスパンダが考えられる(特許文献2参照)。
【0004】
これによれば、ギアケーシング100に軸受101Aを介してエキスパンダホイール軸102が支持されると共に、このエキスパンダホイール軸102と平行な複数本のエキスパンダピニオン軸(インペラ軸)103がギアケーシング100に軸受101Bを介してそれぞれ支持される。図示された一方のエキスパンダピニオン軸103の両端にはA,B及びC,Dの高圧段のエキスパンダ羽根車(インペラ動翼)104が配列されると共に、他方のエキスパンダピニオン軸103の両端にはE及びFの低圧段のエキスパンダ羽根車(インペラ動翼)104が配列される。
【0005】
そして、各段においては、プラント側から排出された高温・高圧のガスが、渦巻きケーシングとして構成された流入ケーシング105と、円板環状空間106に設けられた案内羽根(ノズル翼)107とから、エキスパンダ羽根車104へと吸入されて膨張し、出口円錐ディフューザ108から排出されるようになっている。また、前記ガスを吸込み、膨張させて回収した動力がギアトレインを介してエキスパンダホイール軸102に伝達され、図示しない駆動モータ等の動力が減らされるようになっている。尚、一方のエキスパンダピニオン軸103では、第1段のエキスパンダ羽根車104から出たガスは、戻り環(リターンベンド)109を介して第2段のエキスパンダ羽根車104側に吸入され、2段階に亙ってガスの吸込み、膨張が繰り返されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3457828号公報(第2頁、図6)
【特許文献2】特開平6−193585号公報(第7頁、図24)
【特許文献3】特開平3−168304号公報(第1頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図4に示すようなギアドタイプのラジアルガスエキスパンダにあっては、多段化に伴いエキスパンダピニオン軸(インペラ軸)103の本数増大を招来し、これに伴い複数の高圧シールと高圧ケーシングが必要となる。
【0008】
そのため、高圧、高圧力比の条件下におけるガスリークや軸振動等の機械の信頼性に対する不安要因が多く、信頼性確保が困難であるという問題点があった。
【0009】
尚、図4に示したラジアルガスエキスパンダにおける一方のエキスパンダピニオン軸103の両端にはA,B及びC,Dの高圧2段のラジアルガスエキスパンダがそれぞれ設けられているが、これらはともに軸受101Bの外側に位置したエキスパンダピニオン軸103の自由端側に所謂片持ち式で支持されるため、軸振動が増大することに問題があり、2段が限度で多段化には無理があると共に、高圧、高圧力比の条件下では到底対応することができないという欠点がある。
【0010】
そこで、本発明は、高圧、高圧力比の条件下に十分対応することが可能な信頼性の高い一軸多段のラジアルガスエキスパンダを提供することを目的とする。
【0011】
尚、特許文献3では、ロータにガスエキスパンダを多段に配列した発電装置が開示されているが、これはアキシャルガスエキスパンダ(軸流ガス膨張機)であり、ラジアルガスエキスパンダとは圧力のレベルが異なり、高圧、高圧力比の条件下では到底適用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
斯かる目的を達成するための本発明に係るラジアルガスエキスパンダは、
単一軸上の軸受間に2段以上のインペラ動翼を配列してなるラジアルガスエキスパンダセクションを単一ケーシングに内蔵したことを特徴とする。
【0013】
また、
前記ラジアルガスエキスパンダセクションは、段間を結ぶリターンベンドが形成されたダイアフラムを軸方向に複数連接して設けられると共に、前記リターンベンドには、インペラ動翼のプロフィルに対応したガス流れを生起するノズル翼と、次段入口へのガス流れを効率の良いガス流れにするためのリターンベーンと、がそれぞれ介装されることを特徴とする。
【0014】
また、
前記ラジアルガスエキスパンダセクションは、2セクション以上設けられると共に、各セクション毎にケーシングの吸込ポートに連通するガス入口と吐出ポートに連通するガス出口を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るラジアルガスエキスパンダによれば、多段でも単一軸で済むので、従来のギアドタイプのラジアルガスエキスパンダ等と比較して高圧シールや高圧ケーシングを最少個数にできる。また、単一軸上の軸受間にラジアルガスエキスパンダセクションが設けられるため、複数軸に比べて軸アライメントの考慮が容易であると共に、片持ち式のラジアルガスエキスパンダセクションに比べて軸振動の設計も容易である。加えて、単一ケーシングで済むので、軸中心線位置で簡単にサポートできる。
【0016】
これらの結果、高圧、高圧力比の条件下におけるガスリークや軸振動等の機械の信頼性に対する不安要素は払拭され、より信頼性の高い一軸多段のラジアルガスエキスパンダが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示す一軸多段ラジアルガスエキスパンダの正断面図である。
【図2】図1の吹き出しにおけるA矢視図である。
【図3】図1の吹き出しにおけるB矢視図である。
【図4】従来のギアドタイプのラジアルガスエキスパンダの正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るラジアルガスエキスパンダを実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1は本発明の一実施例を示す一軸多段ラジアルガスエキスパンダの正断面図、図2は図1の吹き出しにおけるA矢視図、図3は図1の吹き出しにおけるB矢視図である。
【0020】
図1に示すように、単一の胴型(筒型)ケーシング10に、ガス流れ方向がロータ軸方向に反対となる2つのラジアルガスエキスパンダセクション11A,11Bが内蔵される。また、胴型ケーシング10には、一方のラジアルガスエキスパンダセクション11Aのガス入口(ポート)12aに連通する吸込ポート10aと他方のラジアルガスエキスパンダセクション11Bのガス入口(ポート)12bに連通する吸込ポート10bが形成されると共に、一方のラジアルガスエキスパンダセクション11Aのガス出口(ポート)12cに連通する吐出ポート10cと他方のラジアルガスエキスパンダセクション11Bのガス出口(ポート)12dに連通する吐出ポート10bが形成される。
【0021】
前記2つのラジアルガスエキスパンダセクション11A,11Bは、胴型ケーシング10の長手方向に抜け出し可能に連接された複数枚(図示例では11枚)のダイアフラム(円板環状の仕切板)15,16a,16b,17a,17b,18a,18b,19a,19b,20a,20bを有し、中央のダイアフラム15とその一側方(図中左方)の5つのダイアフラム16a,17a,18a,19a,20aとで一方のラジアルガスエキスパンダセクション11Aが、また中央のダイアフラム15とその他側方(図中右方)の5つのダイアフラム16b,17b,18b,19b,20bとで他方のラジアルガスエキスパンダセクション11Bが構成されるようになっている。
【0022】
即ち、前記各ダイアフラム15,16a,16b,17a,17b,18a,18b,19a,19b,20a,20bの中央を単一軸からなるロータ軸13が貫通し、このロータ軸13の両端部は2つのラジアルガスエキスパンダセクション11A,11Bにおける各々の端板でもある2つのダイアフラム20a,20bに軸受21a,21bを介して回転可能に支持されている。また、各軸受21a,21bの内側に位置したダイアフラム20a,20bの内周部にはドライガスシール22a,22bが収装される。
【0023】
そして、前記ロータ軸13上には、一方のラジアルガスエキスパンダセクション11A用の複数段(図示例では4段)のインペラ動翼14a〜14dと、他方のラジアルガスエキスパンダセクション11B用の複数段(図示例では4段)のインペラ動翼14e〜14hが、互いに向きを反対にして配列されている。
【0024】
また、中央のダイアフラム15とその両側に位置するダイアフラム16a,16bとの接触面間に、前述した吸込ポート10a,10bにそれぞれ連通するガス入口12a,12bが形成されると共に、前述した端板でもある2つのダイアフラム20a,20bとそれらに隣接するダイアフラム19a,19bとの接触面間に、前述した吐出ポート10c,10dにそれぞれ連通するガス出口12c,12dが形成される。
【0025】
各ラジアルガスエキスパンダセクション11A,11Bにおける中間のダイアフラム17a,18a,19a及び17b,18b,19bには、図2及び図3にも示すように、段間を結ぶ断面U字状のリターンベンド(中間流路)23が形成され、これらのリターンベンド23には、インペラ動翼14b〜14d及び14f〜14hのプロフィルに対応したガス流れを生起する複数枚(図示例では17枚)のノズル翼24と次段入口へのガス流れを効率の良いガス流れにするための複数枚(図示例では17枚)のリターンベーン24とがそれぞれ介装される。勿論、前述したガス入口12a,12bにもインペラ動翼14a,14eのプロフィルに対応したガス流れを生起するノズル翼24が介装される。
【0026】
このように構成されるため、本ラジアルガスエキスパンダでは、例えばプラント側より排出された高温・高圧のガスが単一ケーシング10の吸込ポート10a,10bに供給されると、各ラジアルガスエキスパンダセクション11A,11Bにおいては、各々4段からなるインペラ動翼14a〜14d及び14e〜14hにより4段階に亙ってガスの吸込み、膨張を繰り返して動力を回収し、ロータ軸13を駆動する駆動モータ等の動力を低減させる。本実施例では、2つのラジアルガスエキスパンダセクション11A,11Bを有しているので、その合計した分の動力低減効果が得られる。
【0027】
そして、本実施例では、多段(厳密には8段)でもロータ軸13は単一軸で済むため、従来のギアドタイプのラジアルガスエキスパンダ等と比較してドライガスシール22a,22bは最少個数の2個で済むと共に、ケーシング10は簡単にサポート可能な単一ケーシングで済む。
【0028】
また、単一のロータ軸13上の軸受22a,22b間に2つのラジアルガスエキスパンダセクション11A,11Bが設けられるため、複数軸に比べて軸アライメントの考慮が容易であると共に、片持ち式のラジアルガスエキスパンダセクションに比べて軸振動の設計も容易である。
【0029】
また、2つのラジアルガスエキスパンダセクション11A,11Bは、段間を結ぶリターンベント23等が形成された複数のダイアフラムダイアフラム15,16a,16b,17a,17b,18a,18b,19a,19b,20a,20bを軸方向に複数連接して設けられるので、単一ケーシング10内に堅固にかつ容易に組み付けられる。
【0030】
また、2つのラジアルガスエキスパンダセクション11A,11Bは、ガスの流れ方向が反対方向になっているので、互いの圧力を相殺することができ、ロータ軸13に作用するスラストのバランスが良好となる。
【0031】
また、2つのラジアルガスエキスパンダセクション11A,11Bは、各セクション毎に単一ケーシング10の吸込ポート10a,10bに連通するガス入口12a,12bと吐出ポート10c,10dに連通するガス出口12c,12dを有するので、セクション数の変更が容易である。
【0032】
これらの結果、高圧、高圧力比の条件下におけるガスリークや軸振動等の機械の信頼性に対する不安要素は払拭され、より信頼性の高い一軸多段のラジアルガスエキスパンダが実現される。
【0033】
尚、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲でラジアルガスエキスパンダセクションのセクション数変更、ラジアルガスエキスパンダの段数変更等各種変更が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係るラジアルガスエキスパンダは、プラント側より排出される高圧のガスを吸込み、膨張させて動力を回収し、膨張により低温となった排出ガスを再熱クーラに利用するプラント等に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 単一ケーシング
10a,10b 吸込ポート
10c,10d 吐出ポート
11A,11B ラジアルガスエキスパンダセクション
12a,12b ガス入口
13 ロータ軸
14a〜14h インペラ動翼
15 中央のダイアフラム
16a,16b,17a,17b,18a,18b,19a,19b 中間のダイアフラム
20a,20b 端板でもあるダイアフラム
21a,21b 軸受
22a,22b ドライガスシール
23 リターンベンド(中間流路)
24 ノズル翼
25 リターンベーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一軸上の軸受間に2段以上のインペラ動翼を配列してなるラジアルガスエキスパンダセクションを単一ケーシングに内蔵したことを特徴とするラジアルガスエキスパンダ。
【請求項2】
前記ラジアルガスエキスパンダセクションは、段間を結ぶリターンベンドが形成されたダイアフラムを軸方向に複数連接して設けられると共に、前記リターンベンドには、インペラ動翼のプロフィルに対応したガス流れを生起するノズル翼と、次段入口へのガス流れを効率の良いガス流れにするためのリターンベーンと、がそれぞれ介装されることを特徴とする請求項1記載のラジアルガスエキスパンダ。
【請求項3】
前記ラジアルガスエキスパンダセクションは、2セクション以上設けられると共に、各セクション毎に前記単一ケーシングの吸込ポートに連通するガス入口と吐出ポートに連通するガス出口を有することを特徴とする請求項1又は2記載のラジアルガスエキスパンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−43070(P2011−43070A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189670(P2009−189670)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(310010564)三菱重工コンプレッサ株式会社 (45)