説明

ラジアントチューブ

【課題】より有効にチューブの変形を防止してラジアントチューブの寿命向上を図る。
【解決手段】横方向に延在する直管部2を備えるラジアントチューブ1である。上記直管部2の少なくとも一部の直管部分2aの外周における下部位置に第1補強リブ10Aを取り付け、その第1補強リブ10Aは、ラジアントチューブ1の材質よりも熱膨張係数が小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジアントチューブに関する。特に、金属帯の連続焼鈍処理ラインにおける連続焼鈍炉に設けられるラジアントチューブに好適な発明であり、熱変形によるチューブ変形防止に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
金属帯の連続焼鈍炉では、酸化防止の観点から不活性ガス雰囲気で金属帯の加熱を行うために、ラジアントチューブが使用されている。そして、このラジアントチューブは、高温状態(例えば800〜1000℃)で使用される。このため、チューブの自重及び熱負荷によるクリープ現象が発生して経時的に変形する。また、上記熱変形と共に、チューブの温度分布が不均一になると、発生する熱応力との相乗効果によって、チューブに亀裂が入るおそれがある。このような理由から、ラジアントチューブは短寿命となる傾向にある。
【0003】
また、近年はハイテン材等の焼鈍条件などのように、更に高温で焼鈍を行うことが要求される場合もある。このことは、上記クリーブ現象を促進し、寿命が更に短くなる原因となる。
これに対し、例えば特許文献1に記載の技術では、チューブ径を大径化することでチューブの曲げ強度を高めることが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、チューブ外周面全面を覆うように筒状剛性部材を設けることで、熱変形を抑えることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−19252号公報
【特許文献2】特開2000−171012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のようにチューブを大径化する場合、同一肉厚のチューブを想定しても、チューブ質量が重くなるため、効果が小さい若しくは効果が無くなるという課題がある。逆に、チューブの薄肉を図ると、チューブの強度が低下するという課題がある。
一方、特許文献2に記載のように、チューブ外周面全面を覆うように筒状剛性部材を設ける場合も、チューブに筒状剛性部材の質量が付加されることとなる。このため、ラジアントチューブの直管部の向きを横向に配置した場合には、筒状剛性部材の質量分だけ、熱変形に対する補強効果が小さいという課題がある。
【0007】
ここで、W型のラジアントチューブにおける直管部を水平に配置する場合、例えば金属帯の連続加熱炉等においては、曲管部位置でラジアントチューブを炉体に支持させている。
本発明は、上記のような点に着目したもので、より効率良くチューブの変形を防止してラジアントチューブの寿命向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、横方向に延在する直管部を備えるラジアントチューブであって、
上記直管部の少なくとも一部の直管部分の外周における下部位置に第1の補強リブを取り付け、その第1の補強リブは、ラジアントチューブの材質よりも熱膨張係数が小さいことを特徴とするものである。
【0009】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、直管部周方向における第1の補強リブの取り付け範囲を、直管部周方向全周の1/72以上1/12以下に設定したことを特徴とするものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、上記直管部の少なくとも一部の直管部分の外周における上部に第2の補強リブを取り付け、その第2の補強リブは、ラジアントチューブの材質よりも熱膨張係数が小さいことを特徴とするものである。
【0010】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した構成に対し、直管部周方向における第2の補強リブの取り付け範囲を、直管部周方向全周の1/72以上1/12以下に設定したことを特徴とするものである。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項3又は請求項4に記載した構成に対し、 第1の補強リブは、第2の補強リブよりも剛性が高いことを特徴とするものである。
【0011】
次に、請求項6に記載した発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した構成に対し、複数の直管部が上下方向に配列し、隣り合う直管部が曲管で接続されたラジアントチューブであって、バーナに一番近い直管部に対して、上記補強リブを設けることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、周方向における補強リブの取り付け位置等を限定することで、チューブに掛かる質量の増加を抑えつつ、下方へのチューブの曲げ強度を向上させることが出来る。この結果、より有効にチューブの変形を防止してラジアントチューブの寿命向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に基づく実施形態に係るラジアントチューブの構成を示す側面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】補強リブを設けない場合の下方への変形を示す模式図である。
【図4】ラジアントチューブと搬送される金属帯との関係を示す図である。
【図5】実施例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、金属帯の連続焼鈍炉に設けられるラジアントチューブを例にして説明する。
(構成)
本実施形態のラジアントチューブ1は、図1に示すように、所謂W型のラジアントチューブ1であって、4本の直管部2と、隣り合う直管部2を連結する3本の曲管3とから構成されることで、1つの燃焼ガス流路を形成する。また、上記ラジアントチューブ1の一方の開口端部にバーナ4が連結する。本実施形態では、上側の開口端部にバーナ4が連結する場合を例示する。
【0015】
ここで、4本の直管部2を区別する場合には、バーナ4に近い側から第1直管部2a、第2直管部2b、第3直管部2c、第4直管部2dと呼ぶこととする。
上記ラジアントチューブ1は、図1に示すように、左右方向端部である、開口端部及び曲管3の位置で炉体5に支持されている。
ここで、本実施形態の連続加熱炉は、ルーパー機構などによって、図4のように、加熱する金属帯6を上下に搬送し、当該金属帯6が上方及び下方に移動するときに、上記ラジアントチューブ1からの放射熱で加熱する場合とする。
【0016】
このため、上記ラジアントチューブ1は、複数の直管部2は、それぞれ横方向に延在すると共に上下に配列した状態で配置されている。そして、その直管部2の配列方向に沿って、加熱する金属帯6が移動する。
【0017】
(補強リブについて)
上記4本の直管部2のうち、第1直管部2aが一番熱負荷を受け、自重及び熱影響によるクリープ現象によって変形しやすい。図3に、第1直管部2aがクリープによって変形した場合の変形例を示す。第2及び第3直管部2b、2cにも変形が発生するが、第1直管部2aの変形に伴う変形が大きい。
【0018】
このため、本実施形態では、第1直管部2aに本発明の補強リブを取り付ける場合を例に説明する。もっとも、他の直管部2b〜2d、例えば第2直管部2bについても本発明の補強リブを取り付けても良い。
すなわち、本実施形態では、図1及び図2に示すように、第1直管部2aの下部及び上部にそれぞれ第1の補強リブを構成する第1補強リブ10A、及び第2の補強リブ11を個別に設ける。
【0019】
直管部2の周方向における第1補強リブ10Aの取り付け範囲は、直管部2の中心Pの鉛直下方位置を含み、直管部2の周方向全周の1/72以上1/12以下に設定する。すなわち、直管部2が断面円形の場合には、直管部2の中心Pに対し周方向角度αが5度以上30度以下の範囲に位置するように、第1補強リブ10Aを配置する。なお、直管部2の周方向は、補強リブ10A、10B、11の幅方向に対応する。
【0020】
第1補強リブ10Aの長手方向については、図1のように、少なくともラジアントチューブ1の左右の取り付け点間の中央位置を含み、その左右の取り付け点間の距離Lの1/3以上から第1の直管部2の長さと同等の長さの範囲内に設定する。
本実施形態では、図1に示すように、第1補強リブ10Aの長さを、第1直管部2aの長さ相当に設定した場合を例示している。
【0021】
さらに、第1補強リブ10Aの上に第1補強リブ10Bを固定して、第1の補強リブの剛性を高めている。本実施形態において、この第1補強リブ10Bも第1の補強リブの一部を構成する。
第1補強リブ10Bの長さも、上記距離Lの1/3以上から第1の直管部2の長さと同等の長さの範囲内に設定する。本実施形態では、第1補強リブ10Bの長さは、上記距離Lの1/3とした。
【0022】
また、直管部2の周方向における第2の補強リブ11の取り付け範囲は、直管部2の中心Pの鉛直上方位置を含み、直管部2の周方向全周の1/72以上1/12以下に設定する。直管部2が断面円形の場合には、直管部2の中心Pに対し周方向角度βが5度以上30度以下の範囲に位置するように、第2の補強リブ11を配置する。
【0023】
第2の補強リブ11の長手方向については、少なくともラジアントチューブ1の左右の取り付け点の中央位置を含み、その左右の取り付け点間の距離の1/3以上から第1の直管部2の長さと同等の長さの範囲内とする。
【0024】
本実施形態では、図1に示すように、第2の補強リブ11の長さを、第1直管部2aの長さ相当に設定した場合を例示している。
本実施形態では、第1補強リブ10Bを設けることで、第1の補強リブは第2の補強リブ11よりも剛性が高くなっている。
ここで、第1補強リブ10Aと第2の補強リブ11の、各幅(直管部2の周方向での長さ)及び長さは異なっていても良い。
【0025】
また、上記補強リブ10A、10B、11の材料には、耐熱の材料であって、ラジアントチューブ1を構成する材質よりも熱膨張係数が小さい(例えば5〜15%程度)材料を採用する。また、第補強リブ10A、10B、11の固定は、例えば溶接にて行えば良い。
【0026】
(作用効果など)
上記ラジアントチューブ1は、図1のように、左右位置が炉体5に取り付けられることで炉体5に対し両持ち支持状態になっている。このため、2つの取り付け点の間に位置する直管部2分が、その自重や熱負荷によって、図3のように下方に撓みやすくなっている。特に、バーナ4に連結されている第1直管部2aは、受ける熱負荷が一番大きく、クリープ現象によって一番変形しやすい。
【0027】
これに対し、本実施形態では、第1直管部2aに対して上述のように補強リブ10A、10B、11を設けることで、直管部2の断面2次モーメント及び断面係数が増加して曲げ強度が向上する。このとき、第1直管部2aの下部及び上部、つまり抑制したい変形方向にしか補強リブ10A、10B、11を設けないことで、第1直管部2aに補強リブ10A、10B、11から付加される質量を小さく抑えながら、曲げ強度を上げることが可能となる。
【0028】
これによって、ラジアントチューブ1の下方への変形を抑えて、ラジアントチューブ1の寿命向上を図ることが可能となる。
更に、補強リブ10A、10B、11の熱膨張係数が、ラジアントチューブ1の熱膨張係数よりも小さい。このため、ラジアントチューブ1の加熱時に、熱膨張の差によって、第1直管部2aに対して上向きの力を発生して、熱影響による第1直管部2aの下方への変形を更に抑えることが出来る。
【0029】
なお、左右に振れながら上下方向に搬送される金属帯6と対向する部分に、図4のように、補強リブ10A、10B、11が配置されないので、補強リブ10A、10B、11を設けても、その分、金属帯6との干渉に対する余裕代を小さくすることがない。
以上の作用によって、熱影響による変形するチューブを拘束することで、チューブの変形を抑え、また、曲げによる亀裂等を防止して、チューブの寿命向上を図ることが出来る。
【0030】
ここで、上記第1の補強リブの一部を構成する第1補強リブ10Bを設けなくても良い。さらに、第2の補強リブ11を省略しても良い。この場合でも、補強効果は若干下がるものの、同様な効果を奏する。
【0031】
また、上記実施形態では、第1補強リブ10Aに対し第1補強リブ10Bを設けることで、第1の補強リブの剛性を、第2の補強リブ11の剛性よりも高くなるように設定した。ただし、第1の補強リブの剛性を第2の補強リブ11の剛性よりも高く設定する方法はこれに限定されない。例えば、第1補強リブ10Aの厚みを第2の補強リブ11よりも厚くしたり、第1補強リブ10Aを構成する材質として、第2の補強リブ11を構成する材質よりも剛性が高い材質を採用したりして対応しても良い。
【実施例1】
【0032】
ラジアントチューブ1の材質としてSCH13Aを使用した。補強リブ10A、10B、11の材料として、SCH13Aよりも熱膨張係数が小さいSCH15を使用した。
ここで、長さ3000mmにおいて、25℃から950℃に加熱すると、SCH13Aの熱伸び量は52.7mmで、SCH15の熱伸び量は48.8mmであった。すなわち、SCH13Aに対しSCH15は熱伸び量が約10%低いことを確認した。
【0033】
そして、直径200mm、厚み10mmのラジアントチューブ1の第1直管部2aに対して、条件を変えて補強リブを設けた場合における安全率Sfを出してみた。
なお、上記ラジアントチューブ1の両持ち状態の取り付け点間の距離Lを3000mmに設定した。
上記補強リブ10A、10B、11の条件及び結果を、図5に示す。
【0034】
ここで、図5中、ケース1は、補強部材を設けない場合であり、ケース9は、第1直管部2aの全周を円筒状の補強部材20で覆う場合の比較例である。また、ケース5は、第1補強リブ10Aを設けた場合であるが、取り付ける周方向角度αが30度を超える場合の比較例である。
一方、ケース2〜4は、本発明に基づき第1補強リブ10Aだけを設けた場合の実施例であり、ケース6〜8は、本発明に基づき第1補強リブ10Aと共に第1補強リブ10Bおよび/または第2の補強リブ11も設けた場合の実施例である。
【0035】
なお、ケース9の場合の補強部材20の厚みは、チューブの肉厚と等しい10mmとし、また。本実施例の補強リブ10A、10B、11の厚みは、チューブの肉厚の3倍である30mmとした。
上記図5から分かるように、比較例であるケース9に対し、ケース2〜4のように、第1補強リブ10Aを設けただけでも、安全率Sfが有意に高くなっていることを確認した。
【0036】
このとき、リブ幅15mmは、周方向角度の8.5度に相当し、リブ幅30mmは周方向角度の34度に相当する。
比較例であるケース5は、ケース9に比べて安全率Sfは高くなるが、周方向角度αが30度を超えることで、周方向角度αが30度以下の場合に比べて、安全率Sfが低くなる。なお、図示していないが、周方向角度αが30度に相当する幅の第1補強リブ10Aを設けた場合、ケース5に比べて安全率Sfが高いことを確認している。
【0037】
また、図示していないが、周方向角度αが周方向角度の5度に相当する幅の第1補強リブ10Aを設けた場合、ケース5に比べて安全率Sfが高いことを確認している。
以上の事から、本発明では、第1補強リブ10Aの幅を規定する周方向角度αの範囲を5度以上30度以下に相当する範囲としている。後述の第2の補強リブ11についても同様なことが言えることから、第2の補強リブ11の幅を規定する周方向角度βの範囲も5度以上30度以下としている。
【0038】
さらに、ケース6,8に示すように、第1補強リブ10Aと共に第2の補強リブ11を設けることで、更に、安全率Sfが高くなった。
また、ケース7のように、第2の補強リブ11を設けない場合でも、第1補強リブ10Aに加えて第1補強リブ10Bを設けて第1の補強リブの厚みを厚くすることで、当該第1の補強リブの剛性を高くすれば、より安全率Sfが向上することも確認した。
【0039】
ここで、ケース9に比べて、第1補強リブ10A及び第2の補強リブ11の厚みを3倍に設定しているが、第1補強リブ10A及び第2の補強リブ11の幅を共に30度以下としている。すなわち、第1補強リブ10A及び第2の補強リブ11の幅を合わせても、最大、周方向の1/3しか覆うことがない。すなわち、ケース9の補強部材の質量よりも多くなることが無い。
【0040】
このような観点からも、第2の補強リブ11の周方向角度βを30度以下としている。
【符号の説明】
【0041】
1 ラジアントチューブ
2 直管部
2a 第1直管部
4 バーナ
5 炉体
6 金属帯
10A、10B 第1補強リブ(第1の補強リブ)
11 第2の補強リブ
α 周方向角度
β 周方向角度
L ラジアントチューブの取り付け間の距離
P ラジアントチューブの断面の中心
Sf 安全率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に延在する直管部を備えるラジアントチューブであって、
上記直管部の少なくとも一部の直管部分の外周における下部位置に第1の補強リブを取り付け、その第1の補強リブは、ラジアントチューブの材質よりも熱膨張係数が小さいことを特徴とするラジアントチューブ。
【請求項2】
直管部周方向における第1の補強リブの取り付け範囲を、直管部周方向全周の1/72以上1/12以下に設定したことを特徴とする請求項1に記載したラジアントチューブ。
【請求項3】
上記直管部の少なくとも一部の直管部分の外周における上部に第2の補強リブを取り付け、その第2の補強リブは、ラジアントチューブの材質よりも熱膨張係数が小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載したラジアントチューブ。
【請求項4】
直管部周方向における第2の補強リブの取り付け範囲を、直管部周方向全周の1/72以上1/12以下に設定したことを特徴とする請求項3に記載したラジアントチューブ。
【請求項5】
第1の補強リブは、第2の補強リブよりも剛性が高いことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載したラジアントチューブ。
【請求項6】
複数の直管部が上下方向に配列し、隣り合う直管部が曲管で接続されたラジアントチューブであって、
バーナに一番近い直管部に対して、上記補強リブを設けることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載したラジアントチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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