説明

ラダーフィン試験装置

【課題】 ラダーフィンの試験ごとの試験モデルの新たな製作や、作り替えの必要をなくすことができるようにする。
【解決手段】 舵板3の左右の側面の所要個所に軸受部材8を取り付け、各軸受部材8に、左右のラダーフィン4の基端部に突設した回転軸9を回転自在に取り付ける。各軸受部材8には、回転軸9の回転を解除可能に固定することで対応するラダーフィン4の角度姿勢を固定するためのフィン角度固定装置10を備える。フィン角度固定装置10を解除した状態でのラダーフィン4の角度姿勢の調整と、フィン角度固定装置10によりラダーフィン4の角度姿勢を固定した状態での性能試験とを順次行うことで、様々な角度姿勢のラダーフィン4が推進性能に与える効果を計測して、最適なフィン迎角を見出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶のプロペラ後方の舵に設けるラダーフィンの性能試験を行うために用いるラダーフィン試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶の推進性能の向上化を図ることにより省エネルギー化できるようにするための手法の1つとして、図4(イ)(ロ)(ハ)に示す如く、プロペラ1の後方に配されている舵2において、舵板(直立主翼)3の左右両側面に、左右水平方向に突出するラダーフィン(水平補助翼)4を設けることが従来提案されている。かかる構成とすれば、プロペラ1の回転により生じる後流は、回転流を含んだ螺旋状の流れになっていることから、この回転成分5によって生じる斜流6が上記ラダーフィン4に流入するときに該ラダーフィン4が発生する揚力7中の軸方向成分(前進成分)を、新たな推力として舵2の舵板3によって得られる推力に加えることにより、プロペラ1の推進流中の回転のエネルギを、より有効に前進方向のエネルギに変換することができるようにしてある。
【0003】
更に、図示してないが、プロペラ後流の回転成分5により生じる斜流6中でラダーフィン4により発生させる揚力をより大きくするために、上記ラダーフィン4を、上記斜流の流れに適合するようにエアロフォイル(翼型)とすることも提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、上記ラダーフィン4は、流れの中で揚力を発生させる翼の役割を果たすものであるため、流れに対する角度や、配置が重要になる。しかし、ラダーフィン4の設置個所となる舵2の舵板3の左右両側へ流入する流れは、設置対象となる船舶の船体形状や、プロペラ1の形状、プロペラ1と舵2の位置関係等に応じて様々に変化することから、この舵2の舵板3の左右両側へ流入する流れの条件に応じて、上記ラダーフィン4の取付角度であるフィン迎角や、取付位置の仕様が変化する。
【0005】
そのために、上記ラダーフィン4を実船に採用する場合は、通常、予め、舵2にラダーフィン4を固定した試験モデルを製作して、舵単独での試験や、模型船の自航試験による性能評価を行うことで、ラダーフィン4の最適なフィン迎角や、取付位置を見出すようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−16995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記したように、従来は、舵2にラダーフィン4を固定した試験モデルを用いてラダーフィン4の性能評価試験を行うようにしていたため、最適なフィン迎角や取付位置を見出すために、ラダーフィン4のフィン迎角を変更して試験を行う場合や、舵板3に対する取付位置を変更して試験を行う場合は、その都度試験モデルを新たに製作したり、作り替える必要があり、ラダーフィン4の試験を実施するために多くの手間を要し、そのため、試験効率が悪いというのが実状である。
【0008】
そこで、本発明は、ラダーフィンの試験効率の向上化を図ることができるラダーフィン試験装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、舵の左右の側面におけるラダーフィンの設置を望む個所に軸受部材をそれぞれ取り付けると共に、該左右の各軸受部材に、それぞれラダーフィンを回転軸を介して回転自在に取り付け、更に、上記各軸受部材に、上記回転軸を介してラダーフィンを任意の角度姿勢で固定できるようにするフィン角度固定装置を備えた構成とする。
【0010】
又、請求項2に対応して、舵の左右の側面におけるラダーフィンの設置を望む領域に、複数の軸受部材取付穴を所要の配列で設け、ラダーフィンの基端部に回転軸を介して回転自在に取り付けた軸受部材を、上記舵の左右の側面に設けた複数の取付穴のうちの任意の取付穴に取り外し可能に装着できるようにすると共に、上記各軸受部材に、上記回転軸を介してラダーフィンを任意の角度姿勢で固定できるようにするフィン角度固定装置を備えてなる構成とする。
【0011】
更に、上記各構成において、ラダーフィンの回転軸に、周方向の一方向に突出する指針部を備えた指示部材を取り付けると共に、対応する軸受部材における外部に露出する面、又は、舵の側面に、角度目盛りを設けて、上記指針部と上記角度目盛りとでフィン迎角を表示できるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のラダーフィン試験装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)舵の左右の側面におけるラダーフィンの設置を望む個所に軸受部材をそれぞれ取り付けると共に、該左右の各軸受部材に、それぞれラダーフィンを回転軸を介して回転自在に取り付け、更に、上記各軸受部材に、上記回転軸を介してラダーフィンを任意の角度姿勢で固定できるようにするフィン角度固定装置を備えた構成としてあるので、左右の各ラダーフィンを所要の角度姿勢に調整してフィン角度固定装置により固定した状態で性能評価試験を行うことで、該角度姿勢の左右のラダーフィンが推進性能に与える効果を計測できるようになる。これにより、試験モデルを新たに製作したり、作り替えることなく、左右のラダーフィンを様々な角度姿勢に設定した状態とするときに推進性能向上に及ぼす効果を調べるための試験を行うことが可能になる。よって、ラダーフィンの最適なフィン迎角を見出すための試験の実施に要する手間を大幅に削減できて、試験効率を大幅に高めることができる。
(2)又、ラダーフィンの角度姿勢を任意に変えられるようにしてあるフィン角度固定装置を有する軸受部材を舵に取り付けるようにしてあるため、舵に比して小さいラダーフィンの角度姿勢を固定する機構を容易に構築できる。
(3)舵の左右の側面におけるラダーフィンの設置を望む領域に、複数の軸受部材取付穴を所要の配列で設け、ラダーフィンの基端部に回転軸を介して回転自在に取り付けた軸受部材を、上記舵の左右の側面に設けた複数の取付穴のうちの任意の取付穴に取り外し可能に装着できるようにすると共に、上記各軸受部材に、上記回転軸を介してラダーフィンを任意の角度姿勢で固定できるようにするフィン角度固定装置を備えてなる構成としてあることにより、試験モデルを新たに製作したり、作り替えることなく、左右のラダーフィンを、舵の左右で前後方向や上下方向に移動させることができるため、左右のラダーフィンについて、最適なフィン迎角に加えて、最適な取付位置を見出すための試験の実施に要する手間を大幅に削減できて、試験効率を大幅に高めることが可能になる。
(4)ラダーフィンの回転軸に、周方向の一方向に突出する指針部を備えた指示部材を取り付けると共に、対応する軸受部材における外部に露出する面、又は、舵の側面に、角度目盛りを設けて、上記指針部と上記角度目盛りとでフィン迎角を表示できるようにした構成とすることにより、ラダーフィンのフィン迎角を容易に検知できるため、上記ラダーフィンの角度姿勢の調整作業を容易なものとすることができて、ラダーフィンの試験を実施するための手間を更に削減する効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1(イ)(ロ)は本発明のラダーフィン試験装置の実施の一形態を示すもので、図4(イ)(ロ)(ハ)に示したものと同様に、プロペラ(図示せず)の後方に設ける舵2の舵板3の左右の側面におけるラダーフィン設置予定個所に、軸受部材取付穴11を設けて、該各取付穴11に軸受部材8をそれぞれ嵌着させて固定し、該各軸受部材8に、各ラダーフィン4の基端部に突設した回転軸9をそれぞれ回転自在に軸支させて取り付けて、舵板3の左右両側にラダーフィン4を取り付けるようにする。更に、上記各軸受部材8に、上記回転軸9を任意の角度で固定してラダーフィン4の角度姿勢を任意に固定することができるようにするフィン角度固定装置10を備えてなる構成とする。
【0015】
詳述すると、上記軸受部材8は、中央部に回転軸9を回転自在に支持できるように筒形形状としてあり、舵板3の左右の側面に穿設した取付穴11に、軸心方向の一端部側を挿入して固定するようにしてある。
【0016】
更に、上記軸受部材8は、上記舵板3の両側面の取付穴11に一端部側から挿入して嵌着させたときに、軸心方向他端部が舵板3の左右の側面より所要寸法突出するようにしてあり、該舵板3表面より突出する軸受部材8の軸心方向他端部に、たとえば、該軸受部材8の上端部より周壁を径方向に貫通させて設けたねじ孔12と、該ねじ孔12に螺着させた止めねじ13とからなるフィン角度固定装置10を設けた構成としてある。
【0017】
以上の構成としてある本発明のラダーフィン試験装置を使用する場合は、先ず、舵板3の左右両側面の取付穴11に取り付けて支持させたラダーフィン4の回転軸9を、上記左右の各軸受部材8のねじ孔12に螺着させてある止めねじ13を緩めた状態で自在に回転させて、上記舵板3に対して左右の各ラダーフィン4を或る角度姿勢に調整する。次いで、上記左右の各軸受部材8のねじ孔12に止めねじ13をそれぞれ締め込むことにより、軸受部材8の内部に位置している部分の回転軸9の外周を止めねじ13で押し付けることで、回転軸9の回転を固定させる。これにより、上記左右のラダーフィン4は上記調整された角度姿勢で固定されるようになる。
【0018】
したがって、その後、上記舵板3に対する左右のラダーフィン4の角度姿勢が固定された状態の舵2を用いて、舵2単独での試験や、該舵2を取り付けた模型船での自航試験等の性能評価試験を行うことで、上記所要の角度姿勢としてあるラダーフィン4による推進性能向上効果を調べる。
【0019】
上記所要の角度姿勢としてあるラダーフィン4による推進性能向上効果を調べた後は、上記左右の各軸受部材8に設けてあるねじ孔12に螺着させてある止めねじ13を緩めると、回転軸9の固定が解消されるため、左右のラダーフィン4の角度姿勢を再び自在に調整することができるようになる。
【0020】
よって、以後は、上記したと同様に、上記各止めねじ13を緩めた状態で左右の各ラダーフィン4を所望する角度姿勢に調整する作業と、止めねじ13を締め込むことで上記左右の各ラダーフィン4を所望する角度姿勢に調整した状態で舵板3に固定した状態の舵2を用いての性能評価試験を行う作業とを順次繰り返すことにより、上記左右の各ラダーフィン4を、それぞれ様々な角度姿勢に設定した場合について、該左右のラダーフィン4が推進性能に与える効果が計測されるようになる。なお、上記左右のラダーフィン4の角度姿勢の変更は、左右一緒に行ってもよいし、片方ずつ角度姿勢を変化させた場合について推進性能に与える効果を測るようにしてもよい。
【0021】
このように本発明のラダーフィン試験装置によれば、試験モデルを新たに製作したり、作り替えることなく、左右のラダーフィン4を様々な角度姿勢とする場合について、該左右のラダーフィン4が推進性能向上に及ぼす効果を調べるための試験を行うことが可能になる。よって、ラダーフィン4の最適なフィン迎角を見出すための試験の実施に要する手間を大幅に削減できて、試験効率を大幅に高めることができる。
【0022】
又、ラダーフィン4の角度姿勢を調整して固定するためのフィン角度固定装置10を、舵板3に取り付ける軸受部材8側に設けてあるため、舵板3に比して小さいラダーフィン4の角度姿勢を固定する機構を容易に構築できる。
【0023】
次に、図2(イ)(ロ)は本発明の実施の他の形態として、図1(イ)(ロ)に示したラダーフィン試験装置の応用例を示すもので、図1(イ)(ロ)に示したと同様の構成において、各ラダーフィン4の回転軸9の長手方向における所要個所、すなわち、軸受部材8の外側に位置する部分に、周方向の1個所に外方へ所要寸法突出する指針部15を有する指示部材14を固定して取り付け、更に、上記軸受部材8の舵板3の表面に突出する端面における所要位置の外周縁部に、上記指針部15の位置を読み取るようにする角度目盛り16を設けた構成とする。
【0024】
その他の構成は図1(イ)(ロ)に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0025】
本実施の形態によれば、図2(ロ)に示す如く、上記ラダーフィン4を水平状態にしたときに軸受部材8の端面における上部の外周縁部に角度目盛り16があり、且つ指示部材14の指針部15が角度目盛り16の中心位置を指しているようにしてある状態では、ラダーフィン4が水平状態のときには、該ラダーフィン4の回転軸9に取り付けた指示部材14の指針部15が、上記軸受部材8の軸心方向他端面に設けてある角度目盛り16の原点を指すようになることから、上記角度目盛り16上における上記指針部15が指す位置を基に、上記ラダーフィン4の角度姿勢が何度のフィン迎角になっているかを容易に検知できるようになる。このため、上記ラダーフィン4の角度姿勢の調整作業を容易なものとすることができて、ラダーフィン4の試験を実施するための手間を更に削減する効果が期待できる。
【0026】
次いで、図3(イ)(ロ)は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、舵板3に取り付ける左右の各ラダーフィン4の角度姿勢を変更可能とすることに加えて、舵板3に対する左右のラダーフィン4の設置位置をも変更できるようにしたもので、以下のようにしてある。
【0027】
すなわち、舵板3の左右の両側面におけるラダーフィンの設置が想定される所要範囲の領域に、図1(イ)(ロ)に示した軸受部材8取付用の取付穴11と同様の取付穴11を、前後方向及び上下方向に所要の配列で、たとえば、前後方向に3つずつ並ぶ取付穴11を、上下3段に配列して設ける。更に、上記舵板3の両側面における各取付穴11の周縁部の所要個所には、ボルト孔17を設けて、後述する軸受部材8の取付部材18を、ボルト19を介して着脱可能に連結できるようにしてある。
【0028】
一方、上記ラダーフィン4は、基端部に図1(イ)(ロ)に示したと同様の回転軸9を突設すると共に、該回転軸9に、図1(イ)(ロ)に示したと同様の軸受部材8を回転自在に取り付ける。
【0029】
更に、上記軸受部材8には、軸心方向中間部の外周に、鍔状に張り出す取付部材18を設ける。これにより、該軸受部材8を、上記舵板3の側面に設けてある取付穴11のうちの任意の取付穴11に挿入した状態にて、取付部材18の所要個所を、上記舵板3の側面における各取付穴11の周縁部に設けてあるボルト孔17にボルト19を介して取り外し可能に連結することで、上記取付穴11に、上記軸受部材8を介してラダーフィン4を装着することができるようにしてある。
【0030】
更に又、上記軸受部材8には、図1(イ)(ロ)に示したと同様の周壁に設けたねじ孔12と、該ねじ孔12に螺着させた止めねじ13とからなるフィン角度固定装置10を備えてなる構成とする。20は上記軸受部材8を挿入した取付穴11以外の取付穴11を塞ぐための栓部材である。その他、図1(イ)(ロ)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0031】
以上の構成としてある本実施の形態のラダーフィン試験装置を用いる場合は、先ず、舵板3の左右の各側面に上下方向及び前後方向に配列してそれぞれ設けてある取付穴11のうちの1つの取付穴11を選択して、該取付穴11に、ラダーフィン4の回転軸9に取り付けてある軸受部材8を挿入して、その取付部材18を、該軸受部材8を挿入した取付穴11の周縁部に設けてあるボルト孔17にボルト19を介して連結すると、上記舵板3の側面における上記軸受部材8を挿入した取付穴11の側方位置に、ラダーフィン4が設置されるようになる。
【0032】
なお、この際、舵板3に対する左右のラダーフィン4の設置位置は、左右対称又は左右非対称のいずれであってもよい。
【0033】
次いで、上記軸受部材8を挿入した取付穴11以外の残りの取付穴11に、栓部材20 を挿入して、該各取付穴11を塞ぐ。なお、上記軸受部材8の所要の取付穴11への挿入以前に、軸受部材8の挿入対象以外の取付穴11に予め栓部材20を挿入しておくようにしてもよい。
【0034】
以上の操作を行うと、上記舵板3の左右の側面の所要位置に配設された軸受部材8に、左右の各ラダーフィン4の基端部に突設した回転軸9がそれぞれ回転自在に保持され、更に、上記各軸受部材8には、止めねじ13によって対応するラダーフィン4の角度姿勢を固定するためのフィン角度固定装置10が備えられている状態となる。
【0035】
したがって、その後は、図1(イ)(ロ)の実施の形態のラダーフィン試験装置の使用手順と同様に、上記止めねじ13を緩めた状態で左右の各ラダーフィン4を所望する角度姿勢に調整する作業と、止めねじ13を締め込むことで上記左右の各ラダーフィン4を所望する角度姿勢に調整した状態で舵板3に固定した状態の舵2を用いて性能評価試験を行う作業とを順次繰り返すことにより、上記舵板3の左右の側面の所要位置にそれぞれ配設された左右の各ラダーフィン4を、様々な角度姿勢に設定した場合について、該左右のラダーフィン4が推進性能に与える効果を計測できる。
【0036】
上記のようにして、舵板3の左右に設けた取付穴11のうちの或る取付穴11の側方位置にラダーフィン4が配設された状態について、左右の各ラダーフィン4の角度姿勢の変化に応じて推進性能に与える効果を計測した後は、舵板3の左右の側面に設けてある取付穴11のうちの或る取付穴11に装着してある軸受部材8を、別の取付穴11に付け替えると、舵板3の左右でラダーフィン4の配置が前後方向や上下方向に変化させられる。なお、この際、左右いずれか一方のラダーフィン4の配置のみを変化させるようにしてもよい。
【0037】
よって、その後、上記舵板3の左右でラダーフィン4の配置が変更されるごとに、上記と同様の手順によって、左右の各ラダーフィン4の角度姿勢の変化に応じて推進性能に与える効果を計測する操作を繰り返すと、左右のラダーフィン4の舵板3の左右での前後方向及び上下方向の配置と、角度姿勢が推進性能に与える効果を計測できるようになる。
【0038】
したがって、本実施の形態によれば、試験モデルを新たに製作したり、作り替えることなく、左右のラダーフィン4を、舵板3の左右で前後方向や上下方向に移動させることができることから、左右のラダーフィン4について、最適なフィン迎角に加えて、最適な取付位置を見出すための試験の実施に要する手間を大幅に削減できて、試験効率を大幅に高めることが可能になる。
【0039】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、舵板3やラダーフィン4は図示した以外の形状のものを用いるようにしてもよく、又、舵板3のサイズに対するラダーフィン4のサイズの比は適宜変更してもよい。
【0040】
軸受部材8は、フィン角度固定装置10の止めねじ13を軸心方向他端部側から斜めにねじ込むことができるようにしてあれば、舵板3に設けた取付穴11に軸心方向の全長に亘り挿入して、軸受部材8の軸心方向他端面が舵板3の表面と一致した状態で取り付けるようにしてもよい。又、軸受部材8は、円筒形状のものを図示したが、円筒形状に限られるものではない。
【0041】
フィン角度固定装置10は、ラダーフィン4と干渉しない位置から軸受部材8に設けたねじ孔12に止めねじ13をねじ込むことができるようにしてあれば、軸受部材8の周方向のいずれの方向に設けるようにしてもよい。更に、軸受部材8に回転自在に保持させてあるラダーフィン4の回転軸9の固定と、固定解除とを自在に切り替えることができるようにしてあれば、軸受部材8の周壁に設けたねじ孔12と止めねじ13からなる構成以外のいかなる形式のフィン角度固定装置10を用いるようにしてもよい。
【0042】
図2(イ)(ロ)の実施の形態において、ラダーフィン4の回転軸9に取り付けた指示部材14の指針部15によって該ラダーフィン4のフィン迎角を指すことができるようにしてあれば、角度目盛り16は、軸受部材8にて外部に露出している軸心方向他端部の外周面に設けるようにしたり、舵板3の側面に設けるようにしてもよい。この場合は、角度目盛り16を設けた個所に応じて上記指針部15の長さ寸法や形状を適宜変更すればよい。更に、上記指針部15により角度目盛り16を指すことでラダーフィン4のフィン迎角を表示させる構成を、図3(イ)(ロ)の実施の形態に適用してもよい。
【0043】
図3(イ)(ロ)の実施の形態において、舵板3の左右の側面に設ける取付穴11の数、前後方向や上下方向の配列数、配列間隔、配置は、舵板3の左右の側面にて、ラダーフィンの設置が想定される領域の形状、範囲等に応じて適宜変更してよい。
【0044】
又、任意の取付穴11に、ラダーフィン4の回転軸9に回転自在に取り付けてある軸受部材8を挿入した状態で取り外し可能に固定できるようにしてあれば、該取付穴11に対する上記軸受部材8の固定手段は、軸受部材8の外周に設けた鍔状の取付部材18を、舵板3の側面に設けてあるボルト孔17にボルト19により連結する形式以外のいかなる形式の固定手段を採用してもよい。
【0045】
更に、図3(イ)(ロ)の実施の形態において、異なるフィン形状のラダーフィン4に回転軸9と軸受部材8を取り付けたものや、ラダーフィン4の基端部に、回転軸9を該ラダーフィン4の長手方向に対し上面側や下面側に所要角度傾けて設けて、該回転軸9に軸受部材8を取り付けたものを予め用意しておくようにして、前記した如きラダーフィン4のフィン迎角(角度姿勢)と取付位置の変化による推進性能への影響を試験することに加えて、ラダーフィン4の形状の変化や、ラダーフィン4の左右水平方向からの取付角度の変化が推進性能に与える影響も試験できるようにしてもよい。
【0046】
プロペラ後流中に図示しないラダーホーンが配置される形式の舵2について、上記ラダーホーンの左右両側面に設けるラダーフィン4が推進性能に与える効果を測る試験にも適用してよい。
【0047】
更に、舵2に角度変更可能に取り付けることが要求される付加物であれば、ラダーフィン以外の付加物の試験にも応用できること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のラダーフィン試験装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は概略斜視図、(ロ)はA−A方向矢視拡大図である。
【図2】本発明の実施の他の形態を示すもので、(イ)は図1(ロ)に対応する図、(ロ)は(イ)のB−B方向矢視拡大図である。
【図3】本発明の実施の更に他の形態を示すもので、(イ)は概略側面図、(ロ)は(イ)のC−C方向矢視拡大図である。
【図4】従来提案されているラダーフィンの一例の概略を示すもので、(イ)は舵を後方より見た図、(ロ)は舵の右側面図、(ハ)は舵の左側面図である。
【符号の説明】
【0049】
2 舵
4 ラダーフィン
8 軸受部材
9 回転軸
10 フィン角度固定装置
11 軸受部材取付穴
12 ねじ穴(フィン角度固定装置)
13 止めねじ(フィン角度固定装置)
14 指示部材
15 指針部
16 角度目盛り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舵の左右の側面におけるラダーフィンの設置を望む個所に軸受部材をそれぞれ取り付けると共に、該左右の各軸受部材に、それぞれラダーフィンを回転軸を介して回転自在に取り付け、更に、上記各軸受部材に、上記回転軸を介してラダーフィンを任意の角度姿勢で固定できるようにするフィン角度固定装置を備えた構成を有することを特徴とするラダーフィン試験装置。
【請求項2】
舵の左右の側面におけるラダーフィンの設置を望む領域に、複数の軸受部材取付穴を所要の配列で設け、ラダーフィンの基端部に回転軸を介して回転自在に取り付けた軸受部材を、上記舵の左右の側面に設けた複数の取付穴のうちの任意の取付穴に取り外し可能に装着できるようにすると共に、上記各軸受部材に、上記回転軸を介してラダーフィンを任意の角度姿勢で固定できるようにするフィン角度固定装置を備えてなる構成を有することを特徴とするラダーフィン試験装置。
【請求項3】
ラダーフィンの回転軸に、周方向の一方向に突出する指針部を備えた指示部材を取り付けると共に、対応する軸受部材における外部に露出する面、又は、舵の側面に、角度目盛りを設けて、上記指針部と上記角度目盛りとでフィン迎角を表示できるようにした請求項1又は2記載のラダーフィン試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−132331(P2009−132331A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311385(P2007−311385)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)