説明

ラチェット摺接部材及びシャッター用ロック装置

【課題】組付の作業性に優れかつバリとラチェットギヤとの摺接異音の発生を防ぐことが可能なラチェット摺接部材及びシャッター用ロック装置を提供する。
【解決手段】本発明のシャッター用ロック装置20が有するラチェット摺接部材80は、ラチェットレバー30の外縁部に宛われる中央板部83の両側から第1及び第2の弾性対向片81,82を曲げ起こした構造になっているので、第1及び第2の弾性対向片81,82のうちバリが突出していない側の面を対向させることができ、バリによる摺接異音の発生を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラチェットレバーに支持されてラチェットギヤの側面に摺接可能に押し付けられ、一方向に回転するラチェットギヤとの摩擦によってラチェットレバーをラチェットギヤに係止可能なラチェット有効位置に付勢すると共に、他方向に回転するラチェットギヤとの摩擦によってラチェットレバーをラチェットギヤに係止不能なラチェット無効位置に付勢するための板金製のラチェット摺接部材及びそのラチェット摺接部材を備えたシャッター用ロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図12には、従来のこの種のラチェット摺接部材5が示されている。このラチェット摺接部材5は、ラチェットギヤ8を挟持可能な第1及び第2の弾性対向片1,2を備えている。図13に示すように、第1弾性対向片1は、取付ベース板3の一外縁部の中央から突出している。一方、第2弾性対向片2は、1対の脚部2B,2Bを備えたアーチ構造部をなし、それら脚部2B,2Bの先端が1対の中央板部4A,4Aを介して取付ベース板3の一外縁部における両端部に接続されている。そして、取付ベース板3と中央板部4Aと第2弾性対向片2とがクランク形状になるように屈曲している。また、第1及び第2の弾性対向片1,2からはラチェットギヤ8に向かって1対の摺接突部1A,2Aが突出し、これら摺接突部1A,2Aの先端がラチェットギヤ8に摺接するようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−242292号公報(段落[0045],[0046],図6〜図8参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のラチェット摺接部材5では、ラチェットレバー9の回動半径方向で1対の摺接突部1A,2Aがずれた配置となっているため、それら1対の摺接突部1A,2Aの間にラチェットギヤ8を押し込むことができなかった。このため、第1及び第2の弾性対向片1,2を予め押し広げた状態に保持して、そこにラチェットギヤ8を挿入する必要があり、組み付けの作業性が悪かった。また、上記したラチェット摺接部材5では、第1及び第2の弾性対向片1,2の何れか一方がプレスの打ち抜き方向の前側を向きく一方、他方がプレスの打ち抜き方向の後側を向きく構成になっているので、プレスによるバリが第1及び第2の弾性対向片1,2の何れか一方からラチェットギヤ8に向かって突出することになり、バリとラチェットギヤ8との摺接異音が発生し得た。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、組付の作業性に優れかつバリとラチェットギヤとの摺接異音の発生を防ぐことが可能なラチェット摺接部材及びシャッター用ロック装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るラチェット摺接部材は、ラチェットレバーに支持されてラチェットギヤの側面に摺接可能に押し付けられ、一方向に回転するラチェットギヤとの摩擦によってラチェットレバーをラチェットギヤに係止可能なラチェット有効位置に付勢すると共に、他方向に回転するラチェットギヤとの摩擦によってラチェットレバーをラチェットギヤに係止不能なラチェット無効位置に付勢するための板金製のラチェット摺接部材であって、ラチェットレバーのうちラチェットギヤ側を向いた外縁部に宛われる中央板部と、中央板部の両側部から曲げ起こされて対向配置され、間にラチェットギヤを挟持可能な1対の弾性対向片と、1対の弾性対向片における互いに対向する位置から互いに接近する側に突出し、先端部がラチェットギヤに当接する1対の摺接突部と、1対の弾性対向片における互いに対向する位置に設けられて、摺接突部の先端部に向かうに従って徐々に互いに接近するように傾斜した1対のガイド傾斜部とを備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のラチェット摺接部材において、ガイド傾斜部は、各摺接突部の先端部に対して中央板部と弾性対向片との間の折り曲げ線の方向の両側に配置されたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のラチェット摺接部材において、一方の弾性対向片を、中央板部との間の折り曲げ線の方向に1対の脚部を備えたアーチ構造とし、ラチェット摺接部材を構成する板金のうち1対の脚部に挟まれた部分と中央板部の中間部とに亘る部分を、他方の弾性対向片の基端部から面一になって延びた取付片とし、その取付片の先端に貫通形成した取付孔をラチェットレバーの回動支軸シャフトに挿通して取り付け可能としたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明に係るシャッター用ロック装置は、シャッターカーテンの巻取シャフトと共に回転するラチェットギヤと、ラチェットギヤの回転軸と平行な第1回動軸回りに回動し、シャッターカーテンが閉じられる閉方向のラチェットギヤの回転を許容する一方、その逆の開方向の回転を禁止するようにラチェットギヤに係止して、シャッターカーテンをロックするラチェットレバーと、そのロックを解除操作するためのロック解除操作部とを備えたシャッター用ロック装置において、請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載のラチェット摺接部材をラチェットレバーに支持して設けて、開方向に回転するラチェットギヤとラチェット摺接部材との摩擦によって、ラチェットレバーをラチェットギヤに係止可能なラチェット有効位置に付勢する正の付勢力を発生させると共に、閉方向に回転するラチェットギヤとラチェット摺接部材との摩擦によって、ラチェットレバーをラチェットギヤに係止不能なラチェット無効位置に付勢する負の付勢力を発生させるように構成し、ロック解除操作部の操作により、第1回動軸と平行な第2回動軸回りの待機位置からロック解除位置へと回動して、ラチェットレバーをラチェット有効位置からラチェット無効位置へと移動すると共に、そのラチェットレバーが受ける正の付勢力を、第2回転軸の回動半径方向の先端面で受け止めてラチェットレバーと共に第1と第2の回動軸の間で突っ張り状態になり、ラチェットレバーをラチェット無効位置に保持可能な解除保持レバーと、解除保持レバーを待機位置に付勢すると共に、突っ張り状態のラチェットレバーが負の付勢力を受けて解除保持レバーから離間することを許容する待機位置付勢手段とを備えたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載のシャッター用ロック装置において、巻取シャフトは、内側を支持シャフトに回転可能に支持され、ラチェットギヤは、支持シャフトが挿通可能であり、ラチェットレバーと共にハウジングに収容されると共に、ハウジングの一端面には、ラチェットレバーを回転可能に支持するカバーが備えられ、カバーに、支持シャフトが貫通したシャフト挿通孔と、シャフト挿通孔の開口縁からハウジングの外側に曲げ起こされかつ支持シャフトを間に挟んで対向した1対の固定片とを設け、支持シャフトと1対の固定片とに串刺し状態に貫通させたボルトをナット又は一方の固定片に形成された雌螺子孔に締め付けて支持シャフトにハウジングを固定可能とし、各固定片のうちカバーの本体部分との間の屈曲部における折り曲げ線方向の中間部に肉抜き孔を形成したところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明に係るラチェット摺接部材の製造方法は、ラチェットレバーに支持されてラチェットギヤの側面に摺接可能に押し付けられ、一方向に回転するラチェットギヤとの摩擦によってラチェットレバーをラチェットギヤに係止可能なラチェット有効位置に付勢すると共に、他方向に回転するラチェットギヤとの摩擦によってラチェットレバーをラチェットギヤに係止不能なラチェット無効位置に付勢するための板金製のラチェット摺接部材の製造方法において、ラチェットレバーのうちラチェットギヤ側を向いた外縁部に宛われる中央板部と、中央板部の両側部から突出して間にラチェットギヤを挟持可能な1対の弾性対向片と、1対の弾性対向片における互いに対向する位置から互いに接近する側に突出し、先端部がラチェットギヤに当接する1対の摺接突部と、1対の弾性対向片における互いに対向する位置に設けられて、摺接突部の先端部に向かうに従って徐々に互いに接近するように傾斜した1対のガイド傾斜部とを備えた構造としておき、中央板部と1対の弾性対向片とを同一面に連続させた状態に板金から打ち抜いた後、その打ち抜き工程で1対の弾性対向片の外縁部に発生し得るバリが、互いに反対向きに突出した状態になるように1対の摺接突部を中央板部から曲げ起こすところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1の発明]
請求項1のラチェット摺接部材は、ラチェットレバーの外縁部に宛われる中央板部の両側から1対の弾性対向片を曲げ起こして対向配置した構造になっているので、1対の弾性対向片のうちバリが突出していない側の面を互いに対向させることができ、バリとラチェットギヤとの摺接異音の発生を防ぐことができる。また、1対の弾性対向片には、それらに突出形成された1対の摺接突部の先端部に向かうに従って徐々に互いに接近するように傾斜した1対のガイド傾斜部が備えられているので、1対のガイド傾斜部の間にラチェットギヤを押し込んで1対の弾性対向片を押し広げることができる。即ち、従来のように弾性対向片同士の間を予め押し広げた状態に保持しておく必要がなくなり、組み付け作業を効率よく行うことができる。
【0013】
なお、このラチェット摺接部材をラチェットレバーに取り付けると、ラチェットギヤが一方向に回転したときに、そのラチェットギヤとラチェット摺接部材との摺接によって、ラチェットレバーがラチェットギヤに係止不能なラチェット無効位置に付勢される。これにより、ラチェットギヤを一方向に回転している間は、ラチェットレバーがラチェットギヤに接触しなくなり、任意の回転位置までラチェットギヤを静かに一方向に回転させることができる。一方、ラチェットギヤを他方向に回転させると、そのラチェットギヤとラチェット摺接部材との摺接によって、ラチェットレバーがラチェットギヤに係止可能なラチェット有効位置に付勢される。これにより、任意の位置でラチェットギヤをロックすることができる。
【0014】
[請求項2の発明]
請求項2のラチェット摺接部材の構成によれば、中央板部と弾性対向片との間の折り曲げ線の方向に沿った一方側と他方側の何れの任意の方向から1対のガイド傾斜部の間にラチェットギヤを押し込むことができる。
【0015】
[請求項3の発明]
請求項3のラチェット摺接部材の構成によれば、ラチェットレバーの回動支軸シャフトにラチェット摺接部材の取付片における取付孔に挿通すると、ラチェットレバーの外縁部に中央板部が宛われた状態になり、ラチェット摺接部材がラチェットレバーに一体回転可能に取り付けられる。
【0016】
[請求項4の発明]
請求項4のシャッター用ロック装置では、シャッターカーテンが閉操作されてラチェットギヤが閉方向のトルクを受けると、そのラチェットギヤとラチェット摺接部材との摩擦によって、ラチェットレバーがラチェットギヤに係止不能なラチェット無効位置に付勢される。これにより、シャッターカーテンを閉操作している間は、ラチェットレバーがラチェットギヤに係止することなくなり、任意の位置までシャッターカーテンを閉めることができる。また、シャッターカーテンを閉操作している間は、ラチェットレバーとラチェットギヤとが接触しないので、静粛性に優れたものとすることができる。
【0017】
一方、シャッターカーテンの閉操作を止め、巻取シャフトがシャッターカーテンを巻き取る方向に付勢又は操作されてラチェットギヤが開方向のトルクを受けると、そのラチェットギヤとラチェット摺接部材との摩擦によって、ラチェットレバーがラチェットギヤに係止可能なラチェット有効位置に付勢される。これにより、シャッターカーテンを閉操作している間は、ラチェットレバーがラチェットギヤに係止することがなくなり、任意の位置までシャッターカーテンを閉めることができ、その閉操作を止めると、ラチェットレバーがラチェットギヤに係止し、任意の位置でシャッターカーテンを開かないようにロックすることができる。
【0018】
そのロックを解除してシャッターカーテンを開く場合には、ロック解除操作部の操作すればよい。すると、ロック解除操作部を一度操作するとその過程で、解除保持レバーが、待機位置からロック解除位置へと回動して、ラチェットレバーをラチェット有効位置からラチェット無効位置へと移動させる。
【0019】
ここで、ラチェットレバーは、解除保持レバーによってラチェット無効位置まで移動されたときには、その解除保持レバーとの干渉領域から外れた最端のラチェット無効位置まで移動する。そして、シャッターカーテンが開操作されると、それに伴って開方向に開方向に回動するラチェットギヤとラチェット摺接部材との摩擦により、ラチェットレバーが、最端のラチェット無効位置からラチェット有効位置寄り中間のラチェット無効位置へと移動する。すると、そのラチェットレバーが、解除保持レバーの回動半径方向の先端面に当接し、第1と第2の回動軸の間でラチェットレバーと解除保持レバーとが突っ張り状態になる。これにより、ラチェットレバーが中間のラチェット無効位置に保持され、ロック解除操作部の操作を止めてもロック解除状態が維持される。
【0020】
このように本発明によれば、ロック解除操作部を一度操作するだけでロック解除状態が維持されるので、ロック解除操作部によるロック解除操作を行い続ける必要がなくなる。また、巻取シャフトがシャッターカーテンを巻き取る方向に付勢されている場合には、ロック解除操作を一度行いさえすれば、巻取シャフトに付与された付勢力のみで、シャッターカーテンを開くことができる。また、ロック解除状態を解消するには、シャッターカーテンを閉操作すればよい。すると、そのシャッターカーテンの閉操作に伴って閉方向に回動するラチェットギヤとラチェット摺接部材との摩擦により、ラチェットレバーが中間のラチェット無効位置から最端のラチェット無効位置へと移動し、解除保持レバーから離間する。そして、待機位置付勢手段の付勢により解除保持レバーが待機位置に戻る。従って、本発明のシャッター用ロック装置によれば、任意の位置までシャッターカーテンを閉めて開かないようにロックすることが可能であると共に、そのロックを解除してシャッターカーテンの開操作を行う一連の操作における操作性を向上させることができる。
【0021】
[請求項5の発明]
請求項5のシャッター用ロック装置は、ラチェットギヤとラチェットレバーを収容したハウジングの一端面に、ラチェットレバーを回転可能に支持するカバーを備えている。そして、シャッターカーテンの巻取シャフトを回転可能に支持する支持シャフトが、カバーのシャフト挿通孔に挿通され、カバーのうちシャフト挿通孔の開口縁から曲げ起こされた1対の固定片と支持シャフトとに串刺し状態に貫通させたボルトをナット又は一方の固定片に形成された雌螺子孔に締め付けることで支持シャフトにハウジングが固定される。ここで、前記したボルトとナット又は雌螺子孔との締め付けにより固定片は変形し得るが、本発明では、各固定片のうちカバーの本体部分との間の屈曲部における折り曲げ線方向の中間部に肉抜き孔を形成したので、固定片と共にカバーの本体部分まで変形することが防がれる。これにより、カバーによるラチェットレバーの支持が安定する。
【0022】
[請求項6の発明]
請求項6の製造方法で製造したラチェット摺接部材は、1対の弾性対向片のうちバリが突出していない側の面が互いに対向する構造となるので、バリとラチェットギヤとの摺接異音の発生を防ぐことができる。また、1対の弾性対向片には、それらに突出形成された1対の摺接突部の先端部に向かうに従って徐々に互いに接近するように傾斜した1対のガイド傾斜部が形成されるので、1対のガイド傾斜部の間にラチェットギヤを押し込んで1対の弾性対向片を押し広げることができる。即ち、従来のように弾性対向片同士の間を予め押し広げた状態に保持しておく必要がなくなり、組み付け作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るシャッター装置の斜視図
【図2】シャッター装置の斜視図
【図3】シャッター装置の分解斜視図
【図4】シャッター用ロック装置の後側斜視図
【図5】シャッター用ロック装置の前側斜視図
【図6】シャッター用ロック装置の蓋体を外した状態の斜視図
【図7】シャッターカーテンを閉操作中のシャッター用ロック装置の側面図
【図8】ラチェットレバー、ラチェットギヤ及びラチェット摺接部材の斜視図
【図9】ラチェット摺接部材の斜視図
【図10】ラチェット摺接部材の展開部材の平面図
【図11】シャッターカーテンを閉操作中のシャッター用ロック装置の側面図
【図12】従来のシャッター用ロック装置の斜視図
【図13】従来のラチェット摺接部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。図1に示した本実施形態に係るシャッター装置10は、例えば、住宅の窓(図示せず)の上縁部に取り付けられるものであって、シャッターカーテン15を巻き取るための巻取シャフト12を支持シャフト11にて回転可能に支持した構造になっている。
【0025】
図3に示すように、巻取シャフト12は、円筒ドラム12Dの両端部(図3には、円筒ドラム12Dの一端部のみが示されている)の内側に円盤13を嵌合してなる。円盤13の周面の所定箇所には螺子孔13Aが形成され、その螺子孔13Aに対応させて円筒ドラム12Dには螺子挿通孔12Aが貫通形成されている。そして、螺子挿通孔12Aに挿通した螺子N1(図1参照)を円盤13の螺子孔13Aに締め付けて、円筒ドラム12Dと円盤13とが一体回転可能に固定されている。
【0026】
図3に示すように、円盤13の軸中心にはセンター孔13Cが貫通形成され、円盤13の端面のうちセンター孔13Cの周りを均等分した複数位置(例えば、8箇所)には、複数の螺子孔13Bが形成されている。また、巻取シャフト12の一端側の円盤13には、結合リング14が固定されている。その結合リング14は、円板状のリング本体14Hの内周縁から複数の連結突片14Aを直角曲して張り出した構造になっている。また、リング本体14Hには、周方向で均等分した複数位置(例えば、4箇所)に複数の取付孔14Bが形成されている。そして、リング本体14Hを円盤13の端面に重ねかつ連結突片14Aを円盤13と反対側に突出させた状態にして、取付孔14Bを通した螺子を円盤13の螺子孔13Bに締め付けて結合リング14が円盤13に一体回転可能に固定されている。
【0027】
支持シャフト11は、円筒パイプ構造をなし、巻取シャフト12の両端のセンター孔13C(詳細には、円盤13のセンター孔13C)を貫通して巻取シャフト12の両端面より両横方向に延びている。そして、支持シャフト11の両端部が図示しない取付ベースに回転不能にそれぞれ固定され、それら取付ベースが住居の壁面に固定されている。また、支持シャフト11の外周面と巻取シャフト12におけるセンター孔13Cの内周面との間には、軸受11B(例えば、ベアリング、摺動メタル)が嵌合されている。
【0028】
また、巻取シャフト12の内部には、図示しないトーションコイルバネが支持シャフト11に巻回して設けられており、このトーションコイルバネは一端が円盤13の螺子孔13Bに図示しないネジを介して固定され、他端が支持シャフト11にネジ等で固定されている。これにより、巻取シャフト12は、シャッターカーテン15を巻き取る方向に付勢されている。
【0029】
図1に示すように、シャッターカーテン15は、複数の帯状金属板を連結してなる公知なキャタピラ構造になっている。また、シャッターカーテン15の横幅は、巻取シャフト12の軸長より大きくなっている。そして、シャッターカーテン15の巻回長方向の一端部を巻取シャフト12の外周面に宛がい、巻取シャフト12の両端面からシャッターカーテン15が両横方向に張り出した状態にして、シャッターカーテン15が巻取シャフト12に螺子止めされている。具体的には、前記した円盤13の周面の螺子孔13Aに締め付けられる螺子N1を、シャッターカーテン15の一端部に備えた螺子挿通孔(図示せず)にも挿通して、円筒ドラム12Dとシャッターカーテン15とが円盤13の螺子孔13Aに共締めされている。
【0030】
また、シャッター装置10が取り付けられる住宅の窓の両側縁部には、図示しないシャッターレールがそれぞれ備えられている。そして、シャッターカーテン15のうち巻取シャフト12から下方に延びた部分の両側部が、それらシャッターレールに係合した状態に維持され、シャッターカーテン15の下端部を下方に手動で引くことにより、巻取シャフト12の回転を伴いながらシャッターカーテン15が巻取シャフト12から引き出される。
【0031】
シャッター装置10には、シャッターカーテン15を窓の上下方向における任意の位置まで閉めて、そこから上方に開かないようにロックするためのシャッター用ロック装置20が備えられている。
【0032】
図3に示すように、シャッター用ロック装置20は、偏平円盤状のハウジング21を備えている。図4に示すように、ハウジング21の軸中心には、シャフト挿通孔21Aが貫通形成され、その内側に支持シャフト11が遊嵌状態に挿通されている。
【0033】
ハウジング21は、支持シャフト11と直交した方向を向いた前側端面21Fに前面蓋23を螺子で固定した状態に備える一方、その前側端面21Fと反対側の後側端面21Rに後面蓋60(本発明の「カバー」に相当する)を螺子で固定した状態に備えている。そして、前側端面21Fが巻取シャフト12の一端面に対向配置されている。また、シャッター用ロック装置20全体の外径でもあるハウジング21の外径は、巻取シャフト12の外径より若干小さくなっている。そして、シャッターカーテン15が巻取シャフト12に巻き取られて円筒状になった場合には、その円筒状のシャッターカーテン15の内側に配置される。
【0034】
後面蓋60のうちシャフト挿通孔21Aを間に挟んだ開口縁の対向位置からは1対の固定片22,22が後方に曲げ起こされている。これら両固定片22,22は、先細り形状になっている。また、各固定片22,22のうち後面蓋60の本体部分との間の屈曲部における折り曲げ線方向の中間部には、それぞれ肉抜き孔22Cが形成されている。さらに、一方の固定片22の先端寄り位置には、ボルト挿通孔22Bが貫通成形される一方、他方の固定片22の先端寄り位置にはボルト挿通孔22Bの同軸線上に雌螺子孔22Aが貫通形成されている。そして、支持シャフト11を径方向で貫通した取付孔(図示せず)とボルト挿通孔22B及び雌螺子孔22Aとを同一直線上に配置した状態で、ボルト挿通孔22B側から挿通したボルトN3を雌螺子孔22Aに締め付けて、ハウジング21が支持シャフト11に固定されている。なお、ボルトN3の締め付けにより固定片22,22は変形し得るが、本実施形態では、各固定片22のうち後面蓋60の本体部分との間の屈曲部に肉抜き孔を形成したことで、固定片22と共に後面蓋60の本体部分まで変形することが防がれる。これにより、後述する後面蓋60によるラチェットレバー30(図6参照)の支持が安定する。
【0035】
図5に示すように、ハウジング21の前面蓋23は、中心部にシャフト挿通孔21Aより径が大きな前面孔23Aを有している。そして、その前面孔23Aを介して次述するラチェットギヤ26に備えた複数の突片連結孔26Bが巻取シャフト12の一端面に臨んでいる。
【0036】
図6には、ハウジング21の本体から前面蓋23を外した状態が示されている。同図に示すように、ハウジング21の内部にはラチェットギヤ26がシャフト挿通孔21A(図4参照)と同軸上に配置されている。ラチェットギヤ26は円板状をなし、中心にシャフト挿通孔26Aを有している。また、ラチェットギヤ26のうちシャフト挿通孔26Aの周りには、長方形の複数の突片連結孔26Bが均等配置されている。そして、巻取シャフト12の一端部に備えた結合リング14における複数の連結突片14Aが、前面蓋23の前面孔23Aを介して、ラチェットギヤ26の複数の突片連結孔26Bに差し込まれ、これによりラチェットギヤ26が巻取シャフト12と一体回転可能に連結されている。以下、シャッターカーテン15を閉じるときに巻取シャフト12と共にラチェットギヤ26が回転する方向を「閉方向」といい、シャッターカーテン15を開くときに巻取シャフト12と共にラチェットギヤ26が回転する方向を「開方向」という。
【0037】
ラチェットギヤ26の外周面には、複数の係止歯26Tが突出している。これら各係止歯26Tは、ラチェットギヤ26を開方向へ回動したときに回動方向の前側に向かって突出するように傾斜している。より詳細には、係止歯26Tのうちラチェットギヤ26を開方向へ回動したときに前側を向く歯面は、後述するラチェットレバー30の回動軸である第1回動支持シャフト31を中心とした円弧形状の係止面26Kになっている。一方、係止歯26Tのうちラチェットギヤ26を開方向へ回動したときに後側を向く歯面は、係止歯26Tの先端に向かうに従って、隣の係止歯26Tから離れるように傾斜した摺接面26Sになっている。なお、ラチェットギヤ26のうち係止歯26Tを含む外縁部は、前面蓋23によって覆われている(図5参照)。
【0038】
ラチェットギヤ26のシャフト挿通孔26Aにおける縁部には、複数の係止凹部26Cが形成されている。そして、それら係止凹部26Cに、連結スリーブ24の先端に備えた複数の円弧突壁24Aが係合している。その連結スリーブ24は、ハウジング21内に配置される長さをなし、その軸方向の中間部には、図示しないリング状の連動ギヤが一体形成されている。なお、その連動ギヤは、ラチェットギヤ26とハウジング21の後端壁との間に配置されている。
【0039】
連結スリーブ24の内側には、センターパイプ24Pが備えられ、そのセンターパイプ24Pはハウジング21の後端壁に一体形成されている。そして、センターパイプ24Pの内側が前記したシャフト挿通孔21Aになっていて、そこに支持シャフト11(図2参照)が挿通されている。
【0040】
図2に示すように、ハウジング21の後側端面21Rには、回転式ダンパー29が取り付けられている。そして、ハウジング21に形成された貫通孔21B(図4参照)を通して回転式ダンパー29の図示しない回転軸に固定されたギヤが連動ギヤに噛合している。そして、この回転式ダンパー29が、ラチェットギヤ26の回転速度の増加に伴って増加する回転抵抗をラチェットギヤ26に付与して、シャッターカーテン15の急激な上昇を規制している。
【0041】
図5に示すように、ハウジング21の側壁21Sとラチェットギヤ26との間には、第1回動支持シャフト31と第2回動支持シャフト41とが設けられている。第1回動支持シャフト31は、両端部をハウジング21の前面蓋23と後面蓋60とに支持され、第2回動支持シャフト41は、一端部をハウジング21の前面蓋23に支持されると共に、他端部をハウジング21の本体部に支持されている。そして、第1回動支持シャフト31及び第2回動支持シャフト41は、ラチェットギヤ26の回転軸と平行に延び、例えば、ラチェットギヤ26の回転中心周りに45度程度、離れた位置に配置されている。
【0042】
本実施形態では、第1回動支持シャフト31の中心軸が、本発明に係る「第1回動軸」に相当し、第2回動支持シャフト41の中心軸が、本発明に係る「第2回動軸」に相当する。そして、本発明に係るラチェットレバー30が、第1回動支持シャフト31を中心に回動可能に設けられる一方、本発明に係る解除保持レバー40が、第2回動支持シャフト41を中心に回動可能に設けられている。
【0043】
ラチェットレバー30は、第1回動支持シャフト31から第2回動支持シャフト41側に向かって延びている。また、ラチェットレバー30の基端部には、第2回動支持シャフト41から離れる側に突出した基端突部35が備えられている。
【0044】
ラチェットレバー30のうち第2回動支持シャフト41側の先端寄り位置からは、ラチェットギヤ26に向かって係止爪32が突出している。係止爪32は、隣り合った係止歯26T,26Tの間の凹部形状に対応した略三角形になっていて、ラチェットレバー30の回動半径に対して傾斜した斜面32Sを第1回動支持シャフト31側に備える一方、第1回動支持シャフト31を中心とした円弧形状の係止面32Kを第1回動支持シャフト31から離れた側に備えている。そして、係止爪32が係止歯26Tに押し付けられるように付勢された状態で、ラチェットギヤ26が開方向の回転トルクを受けたときに、係止爪32の係止面32Kが何れかの係止歯26Tの係止面26Kに当接してラチェットレバー30がラチェットギヤ26に係止し、ラチェットギヤ26の回転を禁止する。これにより、シャッターカーテン15が開かないようにロックされる。また、図7に示すように、係止爪32が係止歯26Tから離れた状態になると、ラチェットレバー30はラチェットギヤ26に係止できなくなり、ラチェットギヤ26の回転が許容される。
【0045】
ラチェットレバー30を、ラチェットギヤ26に係止可能なラチェット有効位置に向けて付勢するために、ラチェットレバー30には、本発明に係るラチェット摺接部材80が一体回動可能に固定されている。ラチェット摺接部材80は、図8(B)に示すように、ラチェットレバー30のうちラチェットギヤ26側を向いた外縁部に宛われる中央板部83と、中央板部83の両側から曲げ起こされて対向配置され、間にラチェットギヤ26を挟持している第1及び第2の弾性対向片81,82と、第1の弾性対向片81から延設された取付片84とを備えている。また、図9(A)に示すように、第1と第2の弾性対向片81,82のうち互いに対向する位置には、互いに接近する側に隆起した1対の摺接突部91,92が設けられている。
【0046】
詳細には、ラチェット摺接部材80は、板金をプレスで打ち抜きかつ折り曲げてなり、その折り曲げられる前の状態では、図10に示された略長円形の展開部材85になっている。展開部材85には、長軸方向の中央部から一端側に亘ってU字形スリット86が形成されている。そのU字形スリット86の湾曲部分は展開部材85の長軸方向の一端部に配置され、U字形スリット86の内側領域R4が片持ち梁状に切り離されて前記した取付片84(図9(A)参照)になる。また、U字形スリット86の外側のU字形状部分における1対の脚部のうち先端寄り位置の第1の折り曲げ線L1とそれより基端側にずれた第2の折り曲げ線L2との間の矩形領域R3が前記した中央板部83(図9(A)参照)になる。そして、矩形領域R3の両側の領域R1,R2が対向するように、第1と第2の折り曲げ線L1,L2で展開部材85が直角曲げされて、第1と第2の弾性対向片81,82(図9(A)参照)が形成される。また、取付片84の先端部には円形の取付孔87が貫通形成されると共に、取付片84の基端部には取付片84の幅方向に延びた上長形の抜き孔88が形成されている。
【0047】
また、展開部材85が第1と第2の折り曲げ線L1,L2で展開部材85が折り曲げられる前に、展開部材85のうち第1の弾性対向片81になる領域R1における矩形領域R3から離れた端部中央には、台形状の摺接突部91がプレス成形されると共に、第2の弾性対向片82になる領域R2における矩形領域R3から離れた端部中央にも、台形状の摺接突部92がプレス成形される。ここで、展開部材85が、板金の母材から図10の紙面における裏側から表側に向かって打ち抜かれたすると、その打ち抜きによるバリが展開部材85の縁部から図10の紙面における裏側に向かって突出した状態になる。これに対し、摺接突部91,92は、共にバリと反対側に突出するように隆起している。
【0048】
また、図9(B)に示すように、一方の摺接突部92は、第2の弾性対向片82における湾曲部分の中央全体を第2の弾性対向片82の本体部分から押し出して先端面92Aとし、その両側部分を傾斜させてガイド傾斜部92B,92Bとした構造になっている。また、図9(A)に示すように、他方の摺接突部91は、一方の摺接突部92の先端面92Aと対向する領域を含む範囲で、第1の弾性対向片81の一部を本体部分から押し出して先端面91Aとし、その先端面91Aの縁部と第1の弾性対向片81の本体部分との間を傾斜させてガイド傾斜部91Bとした構造になっている。
【0049】
ラチェット摺接部材80は、図8(B)に示すように、ラチェットレバー30の第1回動支持シャフト31における大径部分を取付孔87に挿通して、取付片84をラチェットレバー30の側面に当接させかつ、中央板部83がラチェットレバー30におけるラチェットギヤ26側の外縁部に宛がわれた状態に組み付けられている。これにより、ラチェット摺接部材80とラチェットレバー30とが一体回動可能な状態になっている。また、ラチェット摺接部材80の第1及び第2の弾性対向片81,82の間にラチェットギヤ26が押し込まれることで、第1及び第2の弾性対向片81,82のガイド傾斜部91B,92Bとラチェットギヤ26とが摺接し、第1及び第2の弾性対向片81,82が押し広げられて1対の摺接突部91,92の間にラチェットギヤ26が配置されている。
【0050】
そして、ラチェットギヤ26が開方向に回転したときに、ラチェット摺接部材80とラチェットギヤ26の側面との摩擦によってラチェットレバー30がラチェット有効位置に付勢される。このとき、ラチェットレバー30が受ける付勢力が、本発明に係る「正の付勢力」に相当する。また、ラチェットギヤ26が閉方向に回転したときには、ラチェット摺接部材80とラチェットギヤ26の側面との摩擦によって、ラチェットレバー30はラチェットギヤ26に係止不能なラチェット無効位置に付勢される。このとき、ラチェットレバー30が受ける付勢力が、本発明に係る「負の付勢力」に相当する。
【0051】
図6に示すように、ラチェットレバー30のうち係止爪32より第2回動支持シャフト41側に突出した先端位置には、ハウジング21の後側端面21R側に向けて略円柱状の回動干渉部33が突出している。
【0052】
解除保持レバー40は、ラチェットギヤ26より後側端面21R側に配置され、図11に示すように、第2回動支持シャフト41から第1回動支持シャフト31側に張り出した作用回動片42とその第1回動支持シャフト31と反対側に張り出した連結回動片43とを備えたシーソー構造になっている。また、解除保持レバー40とハウジング21との間には、トーションコイルバネ46(本発明の「待機位置付勢手段」に相当する)が設けられ、そのトーションコイルバネ46の弾発力によって、解除保持レバー40がその可動範囲のうち、作用回動片42の先端部がラチェットギヤ26の回動中心に最も接近した待機位置(図11で示した位置)に付勢されている。
【0053】
作用回動片42の先端部の可動領域の一部と、回動干渉部33の可動領域の一部とは重複している。ここで、作用回動片42の先端部の可動領域と、回動干渉部33の可動領域との重複部分を「干渉領域」と呼ぶと、解除保持レバー40が待機位置(図11で示した位置)に配置された状態で、作用回動片42の先端部は、干渉領域よりラチェットギヤ26の回転中心側に外れた位置に配置される。そして、解除保持レバー40が回動可能範囲のうち待機位置と反対側のロック解除位置(図11から時計回り方向に移動した位置)まで回動する間に、作用回動片42の先端部における回動方向の前側を向いた跳上当接面45が、回動干渉部33をラチェットギヤ26から離れる方向に押圧して、その回動干渉部33が干渉領域の外に配置された最端のラチェット無効位置までラチェットレバー30を回動させる。
【0054】
作用回動片42の先端には、作用回動片42の回動半径方向を向き、中央が若干窪んだ先端突当面44が備えられている。その先端突当面44は、解除保持レバー40がロック解除位置に位置した状態で干渉領域内に配置される。そして、ラチェットレバー30が、開方向に回動するラチェットギヤ26から回動干渉部33を介して正の付勢力を受けることで、最端のラチェット無効位置からラチェット有効位置寄りの中間のラチェット無効位置へと移動したときに、先端突当面44がラチェット摺接部材80に当接し(図示せず)、第1と第2の回動支持シャフト31,41の間で、ラチェットレバー30と解除保持レバー40とが突っ張り状態に保持される。これにより、ラチェットレバー30がラチェット無効位置に保持され、ロック解除状態が維持される。
【0055】
図2に示すように、ハウジング21の後側端面21Rには、連結回動片43の可動領域と対向する部分に操作孔21Wが形成されている。この操作孔21Wは、支持シャフト11に接離する方向に長い長方形になっている。また、ハウジング21の後側端面21Rのうち操作孔21Wの一長辺に沿った開口側縁からは、支持突片50が後方に突出し、その支持突片50に中継レバー51が傾動可能に支持されている。
【0056】
中継レバー51は、板金をクランク状に屈曲してなり、その屈曲部分より一端側の第1回動片51Aが支持突片50に重ねられた状態でビス51Jにて回動可能に取り付けられている。そして、第1回動片51Aの先端が操作孔21Wの長手方向に往復動する。また、中継レバー51のうち屈曲部分より他端側の第2回動片51Bは、支持シャフト11を避けるようにハウジング21の後側端面21Rにおける外縁側に配置され、その第2回動片51Bの先端部には、ワイヤー53が連結されている。そのワイヤー53の先端は、シャッター装置10が取り付けられた窓の室内に設けた図示しないロック解除操作部に連結されている。また、第2回動片51Bのうち屈曲部分寄りの基端部には、フック51Yが形成されている。これに対応させて、ハウジング21の後側端面21Rにもフック51Xが形成され、これらフック51X,51Yの間に引張コイルバネ52が架け渡されている。これにより、中継レバー51は、第2回動片51Bがハウジング21の後側端面21Rに接近する方向に付勢され、第1回動片51Aの先端部が、操作孔21Wのうち支持シャフト11から離れた側の端部に位置した原点位置に中継レバー51が配置されている。そして、ロック解除操作部の操作により、第2回動片51Bを後側端面21Rから離す側にワイヤー53が引っ張られると、第2回動片51Bの先端部が支持シャフト11側の端部に移動して、その過程で第1回動片51Aの先端部が解除保持レバー40の連結回動片43を押圧する。これにより、解除保持レバー40が待機位置からロック解除位置へと回動する。
【0057】
本実施形態のシャッター用ロック装置20の構成に関する説明は以上である。次に、シャッター用ロック装置20の作用効果について説明する。本実施形態のシャッター用ロック装置20では、シャッターカーテン15が閉操作されてラチェットギヤ26が閉方向のトルクを受けると、そのラチェットギヤ26とラチェット摺接部材80との摺接の摩擦によって、ラチェット摺接部材80と一体回動可能なラチェットレバー30が、ラチェットギヤ26に係止不能なラチェット無効位置に付勢される。これにより、図11に示すように、シャッターカーテン15を閉操作している間は、ラチェットレバー30がラチェットギヤ26から離間して係止することがなくなり、任意の位置までシャッターカーテン15を閉めることができる。更に、シャッターカーテン15を閉操作している間は、ラチェットレバー30とラチェットギヤ26とが接触しないので、静粛性に優れたものとすることができる。
【0058】
一方、シャッターカーテン15の閉操作を止めることに伴い、シャッターカーテン15を巻き取る方向に付勢された巻取シャフト12によりラチェットギヤ26が開方向のトルクを受けると、そのラチェットギヤ26とラチェット摺接部材80との摺接の摩擦によって、ラチェットレバー30がラチェットギヤ26に係止可能なラチェット有効位置に付勢される。これにより、図6に示すように、ラチェットレバー30がラチェットギヤ26に係止し、任意の位置でシャッターカーテン15を開かないようにロックすることができる。そのロックを解除してシャッターカーテン15を開く場合には、室内にある図示しないロック解除操作部を引く。このとき、ロック解除操作部を一度操作するとその過程で、解除保持レバー40が、待機位置(図11に示した位置)からロック解除位置(図11から時計回り方向に移動した位置)へと回動して、ラチェットレバー30をラチェット有効位置からラチェット無効位置へと移動させる。これにより、シャッターカーテン15を開くことができるようになる。
【0059】
ここで、ラチェットレバー30は、解除保持レバー40によってラチェット無効位置まで移動されたときには、その解除保持レバー40との干渉領域から外れた最端のラチェット無効位置まで移動する。そして、シャッターカーテン15が開操作されると、それに伴って開方向に回動するラチェットギヤ26とラチェット摺接部材80との摩擦により、ラチェットレバー30が、最端のラチェット無効位置からラチェット有効位置寄り中間のラチェット無効位置へと移動する。すると、そのラチェットレバー30の回動干渉部33が、ロック解除位置に配置されている解除保持レバー40の先端突当面44に当接し(図示せず)、第1と第2の回動支持シャフト31,41の間で、ラチェットレバー30と解除保持レバー40とが突っ張り状態に保持される。これにより、ラチェットレバー30がラチェット無効位置に保持され、ロック解除状態が維持されるので、シャッターカーテン15を自動的に巻き取ることができる。つまり、シャッターカーテン15を自動的に開放することができる。
【0060】
即ち、ロック解除操作部を一度操作するだけでロック解除状態が維持されるので、ロック解除操作部によるロック解除操作を行い続ける必要がなくなる。つまり、ロック解除操作を一度行いさえすれば、巻取シャフト12に付与された付勢力のみでシャッターカーテン15を開くことができる。また、ロック解除状態を解消するには、シャッターカーテン15を閉操作すれだけでよい。すると、そのシャッターカーテン15の閉操作に伴って閉方向に回動するラチェットギヤ26とラチェット摺接部材80との摩擦により、ラチェットレバー30が中間のラチェット無効位置から最端のラチェット無効位置へと移動し、解除保持レバー40から離間する。そして、トーションコイルバネ46の付勢により解除保持レバー40が待機位置に戻る。
【0061】
このように、本実施形態のシャッター装置10及びシャッター用ロック装置20によれば、任意の位置までシャッターカーテン15を閉めて開かないようにロックすることが可能であると共に、そのロックを解除してシャッターカーテン15の開操作を行う一連の操作における操作性を向上させることができる。また、ロック解除状態を維持可能でありながら、シャッターカーテン15を閉じる操作に伴ってロック解除状態が解消されるので、シャッターカーテン15を閉操作してからロックを掛け忘れるような事態を防ぐことができる。更には、回転式ダンパー29がシャッターカーテン15の移動速度を抑えるので、シャッターカーテン15が全開位置に急停止して過大な騒音を発生させる事態を防ぐことができる。その上、全開位置に向けての中間での操作音も小さく抑えることができる。
【0062】
しかも、本実施形態のシャッター用ロック装置20は、ラチェットギヤ26、ラチェットレバー30等を環状構造のハウジング21内に収容して備えたユニット構造になっているので、シャッターカーテン15の巻取シャフト12と支持シャフト11との間に容易に連結することができる。即ち、ハウジング21を支持シャフト11の外側に挿通していき、巻取シャフト12の一端面の凹凸係合部と、ハウジング21の前面孔を介して露出したラチェットギヤ26のギヤ側凹凸係合部とが凹凸係合した位置で、ハウジング21と支持シャフトとを固定すれば、シャッター用ロック装置20が巻取シャフト12と支持シャフトとの間に連結される。
【0063】
その上、シャッター用ロック装置20は、巻回されたシャッターカーテン15の内側のスペースに収容されるので、そのスペースを有効利用することができる。これにより、シャッター装置10を横方向にコンパクトな構成にすることができる。
【0064】
また、本実施形態のシャッター用ロック装置20が有するラチェット摺接部材80は、ラチェットレバー30の外縁部に宛われる中央板部83の両側から第1及び第2の弾性対向片81,82を曲げ起こして対向配置した構造になっているので、第1及び第2の弾性対向片81,82のうちバリが突出していない側の面が互いに対向するように配置することができ、バリとラチェットギヤ26との摺接異音の発生を防ぐことができる。また、第1及び第2の弾性対向片81,82には、それらに突出形成された1対の摺接突部91,92の先端部に向かうに従って徐々に互いに接近するように傾斜した1対のガイド傾斜部91B,92Bが備えられているので、1対のガイド傾斜部91B,92Bの間にラチェットギヤ26を押し込んで第1及び第2の弾性対向片81,82を押し広げることができる。即ち、従来のように弾性対向片同士の間を予め押し広げた状態に保持しておく必要がなくなり、組み付け作業を効率よく行うことができる。
【0065】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0066】
(1)前記実施形態のラチェット摺接部材80は、例えば、ラチェットレバー30の外縁部に1対の雌螺子孔を形成すると共に、ラチェット摺接部材80の中央板部83に1対の螺子挿通孔を形成して、それら螺子挿通孔に挿通した螺子にてラチェット摺接部材80をラチェットレバー30に固定してもよい。
【0067】
(2)本発明に係るラチェット摺接部材は、上記したシャッター用ロック装置20以外のラチェット機構(例えば、ワイヤー巻き取り機のラチェット機構)のラチェットレバーに取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 シャッター装置
11 支持シャフト
12 巻取シャフト
15 シャッターカーテン
20 シャッター用ロック装置
21 ハウジング
22 固定片
26 ラチェットギヤ
26B 突片連結孔
29 回転式ダンパー
30 ラチェットレバー
31 第1回動支持シャフト
40 解除保持レバー
46 トーションコイルバネ(待機位置付勢手段)
52 引張コイルバネ
60 後面蓋(カバー)
80 ラチェット摺接部材
81 第1の弾性対向片
82 第2の弾性対向片
83 中央板部
84 取付片
87 取付孔
91,92 摺接突部
91B,92B ガイド傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラチェットレバーに支持されてラチェットギヤの側面に摺接可能に押し付けられ、一方向に回転する前記ラチェットギヤとの摩擦によって前記ラチェットレバーを前記ラチェットギヤに係止可能なラチェット有効位置に付勢すると共に、他方向に回転する前記ラチェットギヤとの摩擦によって前記ラチェットレバーを前記ラチェットギヤに係止不能なラチェット無効位置に付勢するための板金製のラチェット摺接部材であって、
前記ラチェットレバーのうち前記ラチェットギヤ側を向いた外縁部に宛われる中央板部と、
前記中央板部の両側部から曲げ起こされて対向配置され、間に前記ラチェットギヤを挟持可能な1対の弾性対向片と、
前記1対の弾性対向片における互いに対向する位置から互いに接近する側に突出し、先端部が前記ラチェットギヤに当接する1対の摺接突部と、
前記1対の弾性対向片における互いに対向する位置に設けられて、前記摺接突部の先端部に向かうに従って徐々に互いに接近するように傾斜した1対のガイド傾斜部とを備えたことを特徴とするラチェット摺接部材。
【請求項2】
前記ガイド傾斜部は、各前記摺接突部の先端部に対して前記中央板部と前記弾性対向片との間の折り曲げ線の方向の両側に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のラチェット摺接部材。
【請求項3】
一方の前記弾性対向片を、前記中央板部との間の折り曲げ線の方向に1対の脚部を備えたアーチ構造とし、前記ラチェット摺接部材を構成する板金のうち前記1対の脚部に挟まれた部分と前記中央板部の中間部とに亘る部分を、他方の前記弾性対向片の基端部から面一になって延びた取付片とし、その取付片の先端に貫通形成した取付孔を前記ラチェットレバーの回動支軸シャフトに挿通して取り付け可能としたことを特徴とする請求項2に記載のラチェット摺接部材。
【請求項4】
シャッターカーテンの巻取シャフトと共に回転するラチェットギヤと、前記ラチェットギヤの回転軸と平行な第1回動軸回りに回動し、前記シャッターカーテンが閉じられる閉方向の前記ラチェットギヤの回転を許容する一方、その逆の開方向の回転を禁止するように前記ラチェットギヤに係止して、前記シャッターカーテンをロックするラチェットレバーと、そのロックを解除操作するためのロック解除操作部とを備えたシャッター用ロック装置において、
前記請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載のラチェット摺接部材を前記ラチェットレバーに支持して設けて、前記開方向に回転する前記ラチェットギヤと前記ラチェット摺接部材との摩擦によって、前記ラチェットレバーを前記ラチェットギヤに係止可能なラチェット有効位置に付勢する正の付勢力を発生させると共に、前記閉方向に回転する前記ラチェットギヤと前記ラチェット摺接部材との摩擦によって、前記ラチェットレバーを前記ラチェットギヤに係止不能な前記ラチェット無効位置に付勢する負の付勢力を発生させるように構成し、
前記ロック解除操作部の操作により、前記第1回動軸と平行な第2回動軸回りの待機位置からロック解除位置へと回動して、前記ラチェットレバーを前記ラチェット有効位置から前記ラチェット無効位置へと移動すると共に、そのラチェットレバーが受ける前記正の付勢力を、前記第2回転軸の回動半径方向の先端面で受け止めて前記ラチェットレバーと共に前記第1と第2の回動軸の間で突っ張り状態になり、前記ラチェットレバーを前記ラチェット無効位置に保持可能な解除保持レバーと、
前記解除保持レバーを前記待機位置に付勢すると共に、前記突っ張り状態の前記ラチェットレバーが前記負の付勢力を受けて前記解除保持レバーから離間することを許容する待機位置付勢手段とを備えたことを特徴とするシャッター用ロック装置。
【請求項5】
前記巻取シャフトは、内側を支持シャフトに回転可能に支持され、
前記ラチェットギヤは、前記支持シャフトが挿通可能であり、前記ラチェットレバーと共にハウジングに収容されると共に、前記ハウジングの一端面には、前記ラチェットレバーを回転可能に支持するカバーが備えられ、
前記カバーに、前記支持シャフトが貫通したシャフト挿通孔と、前記シャフト挿通孔の開口縁から前記ハウジングの外側に曲げ起こされかつ前記支持シャフトを間に挟んで対向した1対の固定片とを設け、前記支持シャフトと前記1対の固定片とに串刺し状態に貫通させたボルトをナット又は一方の前記固定片に形成された雌螺子孔に締め付けて前記支持シャフトに前記ハウジングを固定可能とし、
各前記固定片のうち前記カバーの本体部分との間の屈曲部における折り曲げ線方向の中間部に肉抜き孔を形成したことを特徴とする請求項4に記載のシャッター用ロック装置。
【請求項6】
ラチェットレバーに支持されてラチェットギヤの側面に摺接可能に押し付けられ、一方向に回転する前記ラチェットギヤとの摩擦によって前記ラチェットレバーを前記ラチェットギヤに係止可能なラチェット有効位置に付勢すると共に、他方向に回転する前記ラチェットギヤとの摩擦によって前記ラチェットレバーを前記ラチェットギヤに係止不能なラチェット無効位置に付勢するための板金製のラチェット摺接部材の製造方法において、
前記ラチェットレバーのうち前記ラチェットギヤ側を向いた外縁部に宛われる中央板部と、
前記中央板部の両側部から突出して間に前記ラチェットギヤを挟持可能な1対の弾性対向片と、
前記1対の弾性対向片における互いに対向する位置から互いに接近する側に突出し、先端部が前記ラチェットギヤに当接する1対の摺接突部と、
前記1対の弾性対向片における互いに対向する位置に設けられて、前記摺接突部の先端部に向かうに従って徐々に互いに接近するように傾斜した1対のガイド傾斜部とを備えた構造としておき、
前記中央板部と前記1対の弾性対向片とを同一面に連続させた状態に板金から打ち抜いた後、その打ち抜き工程で前記1対の弾性対向片の外縁部に発生し得るバリが、互いに反対向きに突出した状態になるように前記1対の摺接突部を前記中央板部から曲げ起こすことを特徴とするラチェット摺接部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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