説明

ラッチ装置

【課題】過酷な環境下でも作動不良を生じないようにして、品質向上と用途拡大を図る。
【解決手段】ハウジング2と突当部32及びカム溝5を有し、ハウジング2内に配置されてばね部材45に抗し移動される摺動体30と、爪39及びピン38cを有し、摺動体30に枢支されて爪39が該摺動体内から突出してストライカーを係止する係止位置と該摺動体内にほぼ退避した解除位置とに切り換えられる係合爪37と、ピン部材6とを備え、摺動体30がストライカー62を介し押圧されて移動されると、カム溝5及びピン部材6を介し移動後の位置に保たれ、かつ係合爪37が係止解除位置から係止位置に切り換えられるラッチ装置において、ハウジング2がピン38cに当接して係合爪37を係止位置から係止解除位置に切り換えるリブ28と共に、摺動体30の移動によりピン38cと当接して係合爪37を係止解除位置から係止位置に切り換えるテーパー面47を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1部材(例えば、箱状基体)に第2部材(例えば、蓋等の可動体)を着脱可能に係止するようなときに用いられるラッチ装置のうち、特に最初の押し操作により被係脱部材であるストライカーを係止し、次の押し操作によりストライカーを係止解除するプッシュ・プッシュ係止機構(これはプッシュロック・プッシュオープン機構と称されることもある、以下、同じ)からなるラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は特許文献1に開示されているラッチ装置を示している。同図のラッチ装置は、一端側を開口したハウジング2と、ストライカー2と当接する突当部32及びカム溝5を有し、ハウジング2内に配置されてばね部材45の付勢力に抗して移動される摺動体30と、先端側の爪39及び基端側のピン38cを有し、摺動体30に回転可能に枢支されている係合爪37と、カム溝5に沿ってトレースするピン部材6とを備えている。ここで、係合爪37は、摺動体30の対応部に対し上下中間より下側に設けられた軸部37aを嵌合した状態で枢支されていて、摺動体30の位置移動により、同(a)のごとく摺動体30内にほぼ退避した係止解除位置と、同(b)のごとく爪39を摺動体30内から突出してストライカー62を押さえる係止位置とに切り換えられる。係止解除位置では、摺動体30がばね部材45の付勢力でハウジング2の入口側に移動されると共に、係合爪37がハウジング2内に設けられたリブ28にピン38cを乗り上げることでその状態を保つ。係止位置では、摺動体30がストライカー62の押し力によりばね部材45の付勢力に抗して奥側に移動され、該移動後の位置にカム溝5及びピン部材6の係合を介し維持されると共に、係合爪37がピン38cをリブ28の張出部から低くなった部分に移動し、かつ傾動して爪39を摺動体30内から突出する。換言すると、以上のラッチ装置は、係合爪37が摺動体30に対するストライカー62の押し力により係止解除位置から係止位置に切り換えられ、摺動体30に対するストライカー62の次の押し力により係止解除する、いわゆるプッシュ・プッシュ係止機構からなる。このような構造は特許文献2のラッチ装置でも同様である。
【0003】
【特許文献1】特開2004−137725号公報
【特許文献2】特開2001−262915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したようなラッチ装置は、最初の押し操作により係止し、次の押し操作により係止解除するため使い勝手に優れ、色々な装置や設備などに利用されている。そして、用途によっては、例えば、超低温と言うような過酷な環境下での使用において次のような作動不良を生じる虞があることが分かった。すなわち、その作動不良は、摺動体30が図8(a)の初期位置から(b)の押し込め方向へ移動されても、係合爪37が設計通りに回転して係止状態に切り換えられず、摺動体30内に収まっている係止解除状態に維持されるという現象である。この現象は、例えば、係合爪37の枢支部(軸部37aと軸穴)が超低温におかれると摺動抵抗を増大し、回転し難くなることが発生要因の一つである。そこで、本発明の目的は、以上のような不具合を解消し、過酷な環境下での使用においても作動不良を生じないようにして、品質向上と用途拡大を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するため請求項1〜3の各発明は、ストライカーを一端開口より挿入可能なハウジングと、前記ストライカーと当接する突当部及びカム溝を有し、前記ハウジング内に配置されてばね部材の付勢力に抗して移動される摺動体と、先端側の爪及び基端側のピンを有し、前記摺動体に回転可能に枢支されて前記爪が該摺動体内から突出して前記ストライカーを係止する係止位置と該摺動体内にほぼ退避した係止解除位置とに切り換えられる係合爪と、前記カム溝に沿ってトレースするピン部材とを備え、前記摺動体が前記ストライカーを介し押圧されて前記ばね部材の付勢力に抗し移動されると、前記カム溝及びピン部材を介しその移動後の位置に保たれ、かつ前記係合爪が係止解除位置から係止位置に切り換えられるプッシュ・プッシュ係止機構からなるラッチ装置を対象とし、次のような構成を工夫したものである。
・請求項1の発明では、前記ハウジングが、前記ピンに当接して前記係合爪を係止位置から係止解除位置に切り換えるリブと共に、前記摺動体の移動により前記ピンと当接して前記係合爪を係止解除位置から係止位置に切り換えるテーパー面を有している構成である。
・請求項2の発明では、前記ハウジングが、前記ピンに当接して前記係合爪を係止位置から係止解除位置に切り換えるリブと共に、該リブの延長部と対向して突出されて前記摺動体の移動により前記ピンと当接して前記係合爪を係止解除位置から係止位置に切り換える凸状カムを有している構成である。
・請求項3の発明では、前記ハウジングが、前記ピンに当接して前記係合爪を係止位置から係止解除位置に切り換えるリブと共に、前記ピンと嵌合して前記摺動体の移動により前記ピンを案内して前記係合爪を係止解除位置から係止位置に切り換えるガイド溝を有している構成である。
【0006】
以上の各発明において、請求項1では係合爪側ピンと当接して係合爪を係止解除位置から係止位置に切換可能にするテーパー面により、請求項2では係合爪側ピンと当接して係合爪を係止解除位置から係止位置に切換可能にする凸状カムにより、請求項3では係合爪側ピンと嵌合して該ピンの動きを案内して係合爪を係止解除位置から係止位置に切換可能にするガイド溝により、課題に説明したような過酷な環境下において発生していた作動不良を機械的に確実に解消できるようにする。
【発明の効果】
【0007】
・請求項1の発明は、係合爪側のピンに対応してハウジング側にテーパー面を付設するだけで、課題に挙げた過酷な環境下での作動不良を確実に解消でき、それにより品質向上及び用途拡大を達成できる。
・請求項2の発明は、係合爪側のピンに対応してハウジング側に凸状カムを付設するだけで、請求項1と同様に作動不良を確実に解消でき、それにより品質向上及び用途拡大を達成できる。
・請求項3の発明は、係合爪側のピンに対応してハウジング側にガイド溝を付設するだけで、請求項1と同様に作動不良を確実に解消でき、それにより品質向上及び用途拡大を達成できる。
・請求項4の発明は、前記係合爪がピンを両側の外面に形成していると共に、ハウジングが前記両ピンに対応して請求項1のテーパー面、請求項2の凸状カム、請求項3のガイド溝をそれぞれ対に形成していることから、例えば、装置が大型になっても安定した作動切換を維持できるようにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1〜図5は第1実施例のラッチ装置を示し、図6は第2実施例のラッチ装置を示し、図7は第3実施例のラッチ装置を示している。各実施例のラッチ装置は、ハウジングに設けられるテーパー面、凸状カム、ガイド溝を除いて共通している。このため、以下の説明では、第1実施例のラッチ装置及び組立とその作動を詳述した後、第2実施例の変更点と、第3実施例の変更点について説明する。
【0009】
(第1実施例)図1はラッチ装置を係合爪の係止位置で示し、同(a)は上面図、同(b)は(a)のA−A線に沿って断面した図、同(c)は(a)のB方向から見た正面図、同(d)は下面図である。図2はラッチ装置の模式作動図であり、同(a)は係合爪の係止解除位置で、同(b)は係合爪の係止位置で示している。図3は図1(d)のC−C線に沿って断面したハウジング側のテーパー面と係合爪との関係を示す模式作動図である。図4(a)はラッチ装置をGセンサの作動時の状態で示し、図4(b)はストライカーを係止解除する際の切換作動を示す模式作動図である。図5はラッチ装置の部材同士の関係を示す概略分解図である。なお、各図において、図8のラッチ装置と同じか類似する部材及び部位に同一符号を付している。
【0010】
図1〜図5に示されるラッチ装置1は、ストライカー62を一端開口より挿入可能なハウジング2と、摺動体30に係合爪37を枢支したラッチ部材3と、一端側を支点として上下動する応動体4と、ラッチ部材3をハウジング2の一端開口側へ付勢するばね部材45と、該応動体40を付勢する付勢部材46とを備えている。そして、ラッチ装置1は、例えば、図2(a)のごとく箱状基体60に取り付けられ、可動体61に設けられているストライカー62を係脱する。つまり、ラッチ装置1は、例えば、可動体61が閉位置方向へ付勢されている態様において、可動体61が付勢力に抗して閉位置方向へ押されるとストライカー62を介し係止され、更に同方向へ押して手を離すと係止解除されるプッシュ・プッシュ係止機構からなる。
【0011】
ここで、応動体4及び付勢部材46は、ラッチ装置1が振動を受け易いような仕様に採用されて、ラッチ部材3が振動等により誤作動を生じないようにするGセンサと称されているものであるが、省略されることもある。ラッチ装置1の用途は、上記した文献1,2と同じであり、箱状基体に対し蓋等の可動体61を着脱可能に係止するようなときに用いられるが、ラッチ装置1を可動体側に取り付けて、箱状基体側に設けられているストライカーを係脱する態様であってもよい。各部材の細部は以下の通りである。
【0012】
ハウジング2は、図1と図5のごとく内部が前後壁20,21と、両側壁22と、底壁23とで概略区画されて、一端側つまり上側を開口した筒形となっている。このうち、前壁20には、左右中間に位置してラッチ部材3(摺動体30)の摺動範囲を規制するガイド溝20aと、内面両側に突設されてラッチ部材3(係合爪37)を係止解除方向へ回動可能にするリブ28とが設けられている。リブ28は、図2のごとく最も高くなった平坦状張出部分と、該張出部分の上下部に接続されて次第に低くなっている傾斜部分とからなる。なお、符号20bは該リブ28を形成するための肉逃げ用凹部である。後壁21の内面には、規制用縦リブ29がピン部材6のU形に対応して対に突設されている。縦リブ29は、底壁23から上下中間位置付近まで延び、又、下側が一段大きく張り出した状態に設けられて、ピン部材6のU形両側部6bを両側壁22の対応内側面との間に位置規制する。両側壁22には、スリットで区画されて上側を外へ張り出している取付用弾性係止爪27が設けられている。両側壁22の内面には、上下方向に延びている凹部22b及びガイド凹部22cがそれぞれ対向して設けられている。
【0013】
また、ハウジング2は、筒形上外周が一段張り出していると共に、下側にあって前壁20側に開口しかつ両側壁22の一部25aを欠如した状態で区画形成された応動体用の小枠部25を有している。そして、底壁23は、欠如された一部25aが段差となっていると共に、一部25aの上側が型抜き用小穴24aを介してハウジング内に連通されている。このため、底壁23は、その2箇所の小穴24aと、後両側に貫通された略L形のピン挿通穴24bと、両ピン挿通穴24bの間に小スリットを介し区画形成された弾性挟持片23a,23bと、各ピン挿通穴24bと前記小スリットの間に形成されているピン受け部などが設けられている。ピン挿通穴24bは、ピン部材6の線径よりも若干大きな穴幅からなり、略U形のピン部材6をこの穴からハウジング1内へ挿入可能にする。そして、弾性挟持片23a,23bにはピン部材6が揺動可能に枢支される。すなわち、このピン部材6は、U形中間部6aと、U形両側部6bと、各両側部6bの自由端側を内側に折り曲げた先端6cとからなる。
【0014】
前記した小枠部25の両側には軸穴25bが設けられている。小枠部25の内側は、前から奥側がハウジング内に連通しており、底面に設けられて付勢部材46を位置決めするばね受け用凹所と、枠内の上面を区画しかつハウジング内に支持軸26aを突設している壁26とを有している。また、欠如された一部25aの上側は、図3のごとくハウジング2内に穴24aを介して連通されていると共に、穴24aを区画している側面にテーパー面47が設けられている。テーパー面47は、本発明の要部であり、下向きに傾斜した傾斜部として形成されている。すなわち、このテーパー面47は、ハウジング内の略前後中間より少し前側から前壁20側に向かって下向き傾斜となっていて、ラッチ部材3を構成している係合爪37が摺動体30と共に下移動するとき、係合爪37のピン38cをテーパー面47に当接することで軸部37aを支点として前側から後側へ機械的に回転ないしは傾倒可能にする。
【0015】
また、小枠部25には、応動体4が揺動可能に配置されると共に、該応動体4の下側凹所と前記ばね受け用凹所との間に付勢部材46が配置される。なお、応動体4は、小ブロック状であり、小枠部25の内側上面に当接する突き当て部41と、摺動体30の対応下面に当接する突出受け部42と、軸穴25bに嵌合する両側の軸部43と、下面側のばね受け用凹所などを一体に有している。
【0016】
ラッチ部材3は摺動体30及び係合爪37から構成されている。摺動体30は、本体31の背面側に突当部32を有している。すなわち、本体31は、上辺33a及び両側辺33bで概略コ形枠状に形成され、又、上辺33aと両側辺33bで開口33を区画形成している。下側には、各側辺33bに貫通され軸穴33dが設けられていると共に、各側辺33の間に筒部34が付設されている。筒部34は、筒内が上記した支持軸26a及びばね部材45の上側を遊嵌可能な孔であり、又、上記したガイド溝20aと嵌合される突起34bを有している。突当部32は、ストライカー62が当接する水平壁部と、該水平壁部の左右中間から下へ延びている縦壁部とからなる。前記水平壁部は、両側が本体31より少し外へ突出しており、ハウジング2のガイド凹部22cに嵌合された状態で摺動される。前記縦壁部は両側にハート形のカム溝5を有している。前記両側のカム溝5は、ほぼ同形であり、前記縦壁部の略中央部に突設している凸状カム島35と、前記縦壁部の下両側に張り出している翼片部36a等により区画形成されている。溝形状は、下側から右上側へ延びる誘導溝5aと、誘導溝5aの上側に位置して左右に別れている係止用誘導溝5b及び解除用誘導溝5dと、誘導溝5b,5dの間の下側に位置した凹状係止溝5cと、誘導溝5dから下側へ延びる復帰溝5eなどからなり、又、各溝5a〜5eの溝底面が略平面となっている。
【0017】
これに対し、係合爪37は、本体38及び爪39からなり、爪39を開口33内に位置した状態で、全体が本体31の上辺33a及び両側辺33bの間に配置される。本体38は、上部38aが爪39を突設し、下部38bが中間部を欠如している。上部38aは、本体31のコ形枠状内に配置されると、爪39が開口33に入る。下部38bは、上部38aから延びた2本の片状となっており、各下部38bの外面にあって、上下中間に設けられた軸部37aと、下端に設けられた凸部38cとを有している。両下部38bの間には、前記した筒部34内に入る突片部37bが設けられている。
【0018】
(組立)以上の各部材は、例えば、次のような要領で組み付けられる。まず、係合爪37が摺動体30に取り付けられる。この作業では、図5の状態から軸部37aを側辺33bから軸穴33dに押し込める。すると、係合爪37は、軸部37aを支点として、所定範囲だけ回動可能に枢支され、爪39が図2(a)のごとく開口33内に収まった係止解除状態と、図2(b)のごとく開口33内から突出されてストライカー62の凸部又は爪を上から押さえる係止状態とに回動切換可能となる。また、応動体4は、小枠部25に対し付勢部材46と共に枠内からハウジング内に配置され、かつ、両側の軸部43が対応する軸穴25bに嵌合枢支した状態で上下揺動可能に組み付けられる。
【0019】
次に、以上の係合爪37付きの摺動体30、つまりラッチ部材3はハウジング2内に組み付けられる。この作業では、予め、ばね部材45を支持軸26aに軸装し、ピン部材6を底壁23に揺動可能に保持した状態にしてそれぞれハウジング2内に配置しておくことが好ましい。ピン部材6は、両側の先端6cを各ピン挿通穴24bからハウジング内に挿入してから、U形中間部6aを弾性挟持片23a,23b側に強制的に移動することにより、弾性挟持片23bと弾性挟持片23aとの間に挟持される。この挟持状態では、ピン部材6がハウジング2内に起立保持され、両側部6bの上側が両側内面に揺動可能に圧接され、又、U形両側部6bが規制用縦リブ29と対応内側面との間に位置規制されている。そして、ラッチ部材3は、ハウジング2内に押し入れられると、突起34bがガイド溝20aに落ち込んで嵌合されたときに、ハウジング2に対し抜け止めされて組み付けられる。なお、ラッチ部材3の押し込み過程では、ばね部材45の上側が筒部34内に入り、係合爪37の突片部37bに当接する。又、ピン部材6の両先端6cが対応するカム溝5の溝入口(復帰溝5eより下側へ延びる溝)に入る。
【0020】
(作動1)以上のようにして、組立られたラッチ装置1は、上から見たときに、係合爪37の爪39が目視不能な状態、つまり係止解除状態となっている。なお、使用態様としては、例えば、可動体61のストライカー62に対応して箱状基体60の適位置に弾性係止爪27等を介し取り付けられる。取付状態において、ラッチ装置1は、図2(a)のごとくラッチ部材3がばね部材45により付勢移動(この移動は突起34bがガイド溝20aの上端面に当たることで規制される)され、又、爪39が開口33内に入る方向へ回動(この回動はピン38cがリブ28の最も高くなった箇所に乗り上げることで行われる)されている。この状態は「ラッチ部材3の係止解除位置」である。そして、ラッチ部材3は、ストライカー62によりばね部材45の付勢力に抗して図2(a)の矢印方向へ押されると、係合爪37が軸部37aを支点として回動され、ストライカー62の先端を抜け止めする。又、ラッチ部材3は前記押し力を解放することにより、図2(b)の係止位置で係止される。すなわち、ピン部材6の各先端6cは、摺動体30及び係合爪37の下移動により上記した誘導溝5aから係止用誘導溝5bに入り、ラッチ部材3に対する押圧力を解放したときに、係止溝5cに係止される。この係止により、可動体61は閉位置に保持(ロック)される。
【0021】
以上の係止状態から図2(a)の解除状態に再び切り換えるときは、図4(b)のごとくラッチ部材3をストライカー62を介し再び押し、該押し力を解放する(押した手を離す)。すると、各先端6cは、上記した係止溝5cから解除用誘導溝5d、復帰溝5eを経て再び誘導溝5aから溝入口に戻り、同時に、ラッチ部材3(摺動体30と係合爪37)が当初の解除位置に切り換えられる。なお、ラッチ装置1では、図4(a)に示したように、使用状態において、上下方向などの振動荷重を受けると、ラッチ部材3があたかも図4(b)のように下向きに押圧された状態となり、誤作動により係止解除される虞がある。この構造では、そのような誤作動を次のような作動により防ぐことができる。すなわち、この構造では、振動荷重を受けると、応動体4が付勢部材46の付勢力に抗して軸部43を支点として一方向(この例では反時計回り)へ回動され、該回動に伴って突出受け部42の位置を変更し、該突出受け部42に摺動体30の側辺33b下端面を受け止めることで、摺動体30の下移動が阻止される。この結果、ピン6の先端6cが係止溝5cから解除用誘導溝5dに摺動して、係止溝5cから不用意に係止解除されないようにする。
【0022】
(作動2)ところで、従来のラッチ装置では、寒冷地等の過酷な環境下で用いられると、課題に挙げたように係合爪37が枢支部(軸部37aと軸穴33dとの嵌合)を支点として回転し難くなって正常な係止作動、つまり係止解除状態から係止状態に切り換えられなくなる虞があった。しかし、この構造では、ラッチ部材3がストライカー62により図2(a)の矢印方向へ押されると、摺動体30の下移動に伴って、係合爪37がテーパー面47から受ける反力で軸部37aを支点として係止位置方向へ機械的に回転される。換言すると、係合爪37は、図3に模式化したごとく、下移動によってピン38cがハウジング2側の下向きに傾斜したテーパー面47に当接し、該テーパー面47のガイド作用(テーパー面47から受ける反力)により略起立した状態から、軸部37aを支点として斜めに回転されて係止位置に強制的に切り換えられる。従って、この構造では、用途が過酷な環境下という仕様であっても誤作動や作動不良を生じないため、用途拡大と信頼性を向上できる。
【0023】
(第2実施例)図6のラッチ装置は前記テーパー面47に代わるものとして、凸状カム48をハウジング2に形成した例であり、同(a)はハウジング2と係合爪37との関係を模式的に示し、同(b)はラッチ部材3が係止解除状態からストライカー62により矢印方向に押圧された初期段階を示している。すなわち、この構造では、ハウジング2が両側壁22の各内面に突設した凸形カム48を有している。このカム48は、各側壁22の内面のうち、壁26の近くで、上記した前壁20の内面に突設されたリブ28のうち平坦状張出部分の下部に接続されて次第に低くなっている傾斜部分に対向し、かつ所定間隔を保っている。形状は、厚さを持った略三角形であり、ラッチ部材3の下移動により係合爪37のピン38cが最初に当接する側を角部の一方側の傾斜面48aとし、係合爪37が係止位置で無理抜き方向に荷重を受けたときにピン38cが逃げる側を角部の他方側の傾斜面48bとした配置である。換言すると、このカム48は、側壁22に突設されて前壁20側に向かって三角形の角部(頂部)を配置していて、ラッチ部材3を構成している係合爪37が摺動体30と共にハウジング奥側へ移動するとき、係合爪37のピン38cを三角形の傾斜面48aに当接することで軸部37aを支点として機械的に回転ないしは傾倒可能にする。従って、この構造でも、実施例1と同様に、用途が過酷な環境下という仕様であっても誤作動や作動不良を生じないため、用途拡大と信頼性を向上できる。
【0024】
(第3実施例)図7のラッチ装置は前記テーパー面47や凸形カム48に代わるものとして、ガイド溝49をハウジング2に形成した例であり、同(a)はハウジング2と係合爪37との関係を模式的に示し、同(b)はラッチ部材3が係止解除状態からストライカー62により矢印方向に押圧された初期段階を示している。すなわち、この構造では、ハウジング2が両側壁22の内面にガイド溝49を対向して形成している。ガイド溝49は、各側壁22のうち、壁26の近くで、上記した前壁20の内面に突設されたリブ28のうち平坦状張出部分から下側の傾斜部分、更にその延長部と略対向している。溝形状は、例えば、上側が前壁20から大きく離れ、中間部がそれよりも前壁20に接近したような設定である。一方、係合爪37のピン38cは、ガイド溝49に嵌合されるピン部分38dを延長形成している。そして、このガイド溝49は、ラッチ部材3を構成している係合爪37が摺動体30と共にハウジング奥側へ移動するとき、係合爪37のピン部分38dを溝に沿って強制的に位置移動することで軸部37aを支点として機械的に回転ないしは傾倒可能にする。従って、この構造でも、実施例1や2と同様に、用途が過酷な環境下という仕様であっても誤作動や作動不良を生じないため、用途拡大と信頼性を向上できる。
【0025】
なお、以上の各実施例は本発明を何ら制約するものではない。本発明のラッチ装置は請求項1〜3で特定される要件を備えておればよく、各細部は必要に応じて種々変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】発明の第1実施例のラッチ装置を係止状態で示す構成図である。
【図2】上記ラッチ装置を係止解除及び係止状態で示す作動図である。
【図3】上記ラッチ装置の要部作動を模式的に示す説明用参考図である。
【図4】上記ラッチ装置をGセンサの作動時と係止解除用操作時の状態で示す作動図である。
【図5】上記ラッチ装置の部材同士の関係を示す概略分解構成図である。
【図6】発明の第2実施例のラッチ装置を示す要部構成及び作動図である。
【図7】発明の第3実施例のラッチ装置を示す要部構成及び作動図である。
【図8】従来のラッチ装置例を係止解除位置及び係止位置で示す作動図である。
【符号の説明】
【0027】
1…ラッチ装置(プッシュ・プッシュ係止機構)
2…ハウジング(20,21は前後壁、22は両側壁、23は底壁)
3…ラッチ部材
4…応動体
5…カム溝
6…ピン部材
28…リブ
30…摺動体(33は開口、33dは軸穴)
37…係合爪(37aは軸部、38cはピン、38dはピン部分、39は爪)
45…ばね部材
46…付勢部材
47…テーパー面
48…凸形カム
49…ガイド溝
60…箱状基体
61…可動体(62はストライカー)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカーを一端開口より挿入可能なハウジングと、前記ストライカーと当接する突当部及びカム溝を有し、前記ハウジング内に配置されてばね部材の付勢力に抗して移動される摺動体と、先端側の爪及び基端側のピンを有し、前記摺動体に回転可能に枢支されて前記爪が該摺動体内から突出して前記ストライカーを係止する係止位置と該摺動体内にほぼ退避した係止解除位置とに切り換えられる係合爪と、前記カム溝に沿ってトレースするピン部材とを備え、前記摺動体が前記ストライカーを介し押圧されて前記ばね部材の付勢力に抗し移動されると、前記カム溝及びピン部材を介しその移動後の位置に保たれ、かつ前記係合爪が係止解除位置から係止位置に切り換えられるプッシュ・プッシュ係止機構からなるラッチ装置において、
前記ハウジングが、前記ピンに当接して前記係合爪を係止位置から係止解除位置に切り換えるリブと共に、前記摺動体の移動により前記ピンと当接して前記係合爪を係止解除位置から係止位置に切り換えるテーパー面を有していることを特徴とするラッチ装置。
【請求項2】
ストライカーを一端開口より挿入可能なハウジングと、前記ストライカーと当接する突当部及びカム溝を有し、前記ハウジング内に配置されてばね部材の付勢力に抗して移動される摺動体と、先端側の爪及び基端側のピンを有し、前記摺動体に回転可能に枢支されて前記爪が該摺動体内から突出して前記ストライカーを係止する係止位置と該摺動体内にほぼ退避した係止解除位置とに切り換えられる係合爪と、前記カム溝に沿ってトレースするピン部材とを備え、前記摺動体が前記ストライカーを介し押圧されて前記ばね部材の付勢力に抗し移動されると、前記カム溝及びピン部材を介しその移動後の位置に保たれ、かつ前記係合爪が係止解除位置から係止位置に切り換えられるプッシュ・プッシュ係止機構からなるラッチ装置において、
前記ハウジングが、前記ピンに当接して前記係合爪を係止位置から係止解除位置に切り換えるリブと共に、該リブの延長部と対向して突出されて前記摺動体の移動により前記ピンと当接して前記係合爪を係止解除位置から係止位置に切り換える凸状カムを有していることを特徴とするラッチ装置。
【請求項3】
ストライカーを一端開口より挿入可能なハウジングと、前記ストライカーと当接する突当部及びカム溝を有し、前記ハウジング内に配置されてばね部材の付勢力に抗して移動される摺動体と、先端側の爪及び基端側のピンを有し、前記摺動体に回転可能に枢支されて前記爪が該摺動体内から突出して前記ストライカーを係止する係止位置と該摺動体内にほぼ退避した係止解除位置とに切り換えられる係合爪と、前記カム溝に沿ってトレースするピン部材とを備え、前記摺動体が前記ストライカーを介し押圧されて前記ばね部材の付勢力に抗し移動されると、前記カム溝及びピン部材を介しその移動後の位置に保たれ、かつ前記係合爪が係止解除位置から係止位置に切り換えられるプッシュ・プッシュ係止機構からなるラッチ装置において、
前記ハウジングが、前記ピンに当接して前記係合爪を係止位置から係止解除位置に切り換えるリブと共に、前記ピンと嵌合して前記摺動体の移動により前記ピンを案内して前記係合爪を係止解除位置から係止位置に切り換えるガイド溝を有していることを特徴とするラッチ装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載のラッチ装置において、前記係合爪が前記ピンを両側の外面に形成していると共に、前記ハウジングが前記両側のピンに対応して請求項1の前記テーパー面、請求項2の前記凸状カム、請求項3の前記ガイド溝をそれぞれ対に形成していることを特徴とするラッチ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−22543(P2006−22543A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201050(P2004−201050)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)