説明

ラッチ装置

【課題】 趣味性及び意外性を付与し、しかも操作感にも優れたラッチ装置を提供する。
【解決手段】 ハンドル3を通常の位置に、錠箱4をハンドル3の上方又は下方に夫々配設し、一方、上記ハンドルの回動軸、及び錠箱のリトラクタ軸に夫々同じ長さの駆動アーム7、及び従動アーム15を装着し、他方、ハンドル3及び錠箱4に関し扉1の自由側端縁の反対側に、扉の自由側端縁2に平行な連結杆16を上下方向に移動可能に案内し、上記駆動アーム7及び従動アーム16の自由端を、これら駆動アーム及び従動アームが相互に平行になる位置関係で、上記連結杆16の上下端部に夫々リンク結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は扉のラッチ装置に係り、特に、趣味性及び意外性に優れ、しかも操作感にも優れたラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1の図3に示された従来のラッチ装置の一例においては、ラッチヘッド11を備え、外方(図3において左方)に付勢されたラッチ杆を、リトラクタ軸14の付番しない方形孔に挿通された作動軸(図示しない)の両端に装着されたハンドルを回動させることにより、リトラクタ16を時計方向に回し、その先端によりラッチ杆を錠箱内に引っ込ませてラッチ装置を解除する。
【0003】
なお、特許文献1は所謂自動施錠型のラッチ装置を示すものであるから施錠レバー9を備えているが、通常のラッチ装置においてはこの施錠レバー9は設けられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−018658号公報
【特許文献2】特開2004−324305
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した構成のラッチ装置は、ラッチヘッド11とハンドルとがほぼ同じ高さにあり、従来見慣れたものである。
そして、ラッチ装置として機能に欠けるところは無く、従来から広く慣用されている。
【0006】
この発明は、従来のラッチ装置を機能的に改善しようとするものではなく、ラッチ装置に趣味性及び意外性を付与し、しかも操作感にも優れたラッチ装置を提供しようとするものである。
【0007】
なお、ここで趣味性とは、「このラッチ装置は目新しくて操作が面白い」という感興を誘う性質を言うものとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、斜面を形成したラッチヘッドを外端に装着すると共に、このラッチヘッドが錠箱の外方に突出する方向に付勢されたラッチ杆、及びこのラッチ杆を錠箱内方に引っ込ませるリトラクタを備えた錠箱と、扉面に平行な平面内で、回動軸を中心にして回動可能に支承されたハンドルとを、ハンドルを扉の自由側端縁に沿う上下方向において通常の位置に、錠箱をハンドルの上方又は下方においてハンドルと間隔を保つ位置に夫々配設し、一方、上記ハンドルの回動軸、及び錠箱のリトラクタ軸に夫々同じ長さの駆動アーム、及び従動アームを装着し、他方、ハンドル及び錠箱に関し扉の自由側端縁の反対側に、扉の自由側端縁に平行な連結杆を上下方向に移動可能に案内し、上記駆動アーム及び従動アームの自由端を、これら駆動アーム及び従動アームが相互に平行になる位置関係で、上記連結杆の上下端部に夫々リンク結合したことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、斜面を形成したラッチヘッドを外端に装着すると共に、このラッチヘッドが錠箱の外方に突出する方向に付勢されたラッチ杆、及びこのラッチ杆を錠箱内方に引っ込ませるリトラクタを備えた錠箱と、扉面に平行な平面内で、回動軸を中心にして回動可能に支承されたハンドルとを、ハンドルを扉の自由側端縁に沿う上下方向において通常の位置に、錠箱をハンドルの上方又は下方においてハンドルと間隔を保つ位置に夫々配設し、一方、上記ハンドルの回動軸、及び錠箱のリトラクタ軸に夫々同じ長さの駆動アーム、及び従動アームを装着し、他方、ハンドル及び錠箱に関し扉の自由側端縁の反対側に、扉の自由側端縁に平行な連結杆を上下方向に移動可能に案内し、上記駆動アーム及び従動アームの自由端を、これら駆動アーム及び従動アームが相互に平行になる位置関係で、上記連結杆の上下端部に夫々リンク結合し、更に、上記連結杆の内側に、鉛直線に沿って複数の支軸を設け、各支軸に、扉面に平行な支持片の中央部を扉面に平行な平面内で回動可能に支承すると共に、各支持片の内側に上下方向に延在するバランス杆を配設し、上記支持片の内方の自由端をこのバランス杆に、外方の自由端を上記連結杆に、夫々他の支持片と平行な関係位置を保つようにリンク結合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成されたこの発明によるラッチ装置は、請求項1に記載された発明も、また、請求項2に記載された発明も、通常の高さにあるハンドルを操作することにより、そのハンドルの上方又は下方における錠箱のラッチが外れるので、ラッチ装置に趣味性及び意外性が付与される、という所期の効果を奏することは明らかである。
【0011】
また、請求項1に記載された発明においては、ハンドルの操作力が連結杆を介して錠箱のリトラクタに伝達されるので、連結杆がハンドルに対し慣性抵抗となり、ハンドルの操作感が向上する。
【0012】
それは、大きな車は走行の安定性が大きいのと同じ理由で、一旦機構が動き始めると摩擦抵抗の変動に対しハンドルは安定した回動を続けるし、回動の終端においては慣性エネルギーがリトラクタの回動力に変換されて軽くラッチが外れるからである。
【0013】
更にまた、請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の発明に加えてバランス杆が慣性抵抗の増大に寄与すると共に、連結杆の上下両方向の移動に対する重力の影響を軽減するので、ハンドルの操作感が更に向上する、等種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるラッチ装置を装着した扉の正面図。
【図2】ハンドル軸箱の拡大一部側面図。
【図3】駆動アームの平面図。
【図4】駆動アームの側面図。
【図5】本発明によるラッチ装置の要部を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ハンドルと錠箱とを上下方向に間隔を保たせて配設すると共に、ハンドルと錠箱とを連結杆、或いは連結杆とバランス杆をこれらが慣性抵抗となるように連結したので、ラッチ装置に趣味性及び意外性が付与されると共に、ハンドルの操作性が向上した。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
なお、ここでは請求項2に記載の発明による実施例を説明する。それは、請求項2に記載の発明は請求項1に記載の発明の利用発明だからである。
【0017】
図1において符号1は扉の外面または内面を示し、この扉1の自由側端縁部2のほぼ中央部にはハンドル3が、下端部には錠箱4が、夫々装着されている。
【0018】
なお、上記ハンドル3及び錠箱4は、夫々その構造は周知であるし、また、錠箱4は特許文献1の図面に記載されているから、更に詳細な説明は省略する。
【0019】
上記ハンドル3は、図2に示すようなハンドル軸箱5を介して、扉1の自由側端縁部2に装着されている。
【0020】
また、上記ハンドル軸箱5には、断面方形孔を同軸に形成したハンドル軸受6が回動自在に支承されており、この方形孔に挿通された図示しないハンドル軸の両端にハンドルが装着されている。
【0021】
なお、従来のハンドル軸と同様に、上記ハンドル軸受6には図示しないハンドルばねの弾力によって時計方向、或いは反時計方向に付勢されている。
【0022】
更にまた、上記ハンドル軸には図3及び図4に示すような駆動アーム7が装着されている。
【0023】
上記駆動アーム6は、その一端部に形成された小判型の連結孔8に、ハンドル軸に形成された同形の異形断面部を嵌め合わせることにより、回り止めを施された状態でハンドル軸に一体的に結合されている。
【0024】
そして、駆動アームの連結孔8の両側に、連結孔8を挟むようにして一対の円弧状の案内孔9、9が開口しており、この案内孔にストッパー11(図2参照)を遊動可能に係合させることにより駆動アーム7の回動範囲を制限している。
【0025】
また、駆動アームの自由端部にはローラー12が装着されており、このローラー12は後述する連結杆16(図5参照)の上端部にリンク結合されている。
【0026】
なお、ここでリンク結合とは、リンクとリンクとを滑節を介して回動可能に連結することをいうものとする。
【0027】
また、図示の実施例では、図5に示すように、フロント板13のハンドル軸箱5と同じ高さにある部分に飾り板14が装着されているが、この飾り板14は本願発明の必須の構成ではない。
【0028】
一方、図5に示すように、扉の下方における錠箱4の付番しないリトラクタ軸(前記特許文献1におけるリトラクタ軸14参照)にも同様にして従動アーム15が装着されている。
【0029】
なお、この従動アーム15の自由端は、上記駆動アーム7と同様に、また、駆動アーム7と相互に平行な位置関係を保って、連結杆16の下端部にリンク結合されている。
【0030】
上記連結杆16は、例えば図5に示すように、剛性を増大させるために断面L字形に折り曲げた細長い板材で、上下方向に延在しており、ハンドル3及び錠箱4に関しフロント板13とは反対側の領域において上下方向に移動可能に案内されている。
【0031】
そのため、連結杆16の上下方向における3か所に縦長の長穴17、17が形成されていて、各長穴7に、基板18に埴設されたガイドピン19を摺動可能に係合させることにより、連結杆16が上下方向に移動可能に案内されている。
【0032】
上記駆動アーム7と従動アーム15とは、相互に平行な位置関係を保ってその自由端のローラー12(図8参照)を連結杆16の横向きU字形の付番しない切欠に係合させている。
【0033】
なお、ローラー12は、駆動又は従動アーム7(15)の回動に伴って少し左右に移動するので、上記したようにU字形の切欠に係合させて駆動又は従動アーム7(15)と連結杆16との抉りを防止している。
【0034】
なお、上記のようにローラー12とU字形の切欠とは相互に回動するとともに相対的に滑る係合であるが、この係合も上記滑節に含めるものとする。
【0035】
上記したように、駆動及び従動アーム7、15及び連結杆16は一種の平行四辺形リンクを形成するので、例えば反時計方向に付勢されて図示しないストッパーにより水平な角度位置を保っているハンドル3(図1参照)を時計方向に回動させれば、そのハンドルの回動は連結杆16を介して従動アーム15に伝達されてこれを時計方向に回動させ、リトラクタ16(特許文献1の図3参照)を時計方向に回し、その先端によりラッチ杆を錠箱内に引っ込ませてラッチ装置を解除する。
【0036】
他方、図5に示すように、連結杆16の右側、すなわち連結杆16の内側には上下一対で紙面に垂直な支軸21、21が埴設されており、各支軸には、揺動片22の中央部が回動可能に支承されている。
【0037】
また、支軸21、21の更に内側には上下方向に延在するバランス杆23が配設されている。
【0038】
そして、上記各揺動片22の内端(右端)はバランス杆23に、外端は連結杆16に夫々リンク結合されている。
【0039】
なお、上記揺動片22、22とバランス杆23とは平行四辺形リンクを構成するように、各部材の形状、寸法及び関係角度を適切に設定するのが望ましい。
【0040】
また、揺動片22、22と連結杆も平行四辺形リンクを構成するのが望ましいが、前記したように連結杆16は左右に移動できないように拘束されているので、揺動片22の外端は連結杆16に形成された水平な係合孔に係合することにより抉りを防止する構造となっているが、前記したように、揺動片の外端と連結杆16に形成された付番しない水平孔との係合も滑節に含めるものとする。
【0041】
上記のように構成された請求項2に記載の発明の一実施例によるラッチ装置は、例えばハンドル3を時計方向に回動させると、連結杆16が下降すると共に、バランス杆23が反対方向の上方に移動する。
【0042】
そのため、連結杆16を下降させようとする力の一部がバランス杆を持ち上げるので、単に連結杆の重量が増大した場合と比較して連結杆がガタンと落ちることがない。
【0043】
すなわち、重力の悪影響を排除する態様でハンドルの慣性抵抗のみを増大させることができ、前記発明の効果の項に記載したように、ハンドルの操作感を向上させることができる。
【実施例2】
【0044】
なお、上記した説明では錠箱4をハンドル3の下方に設置するものとしたが、これはハンドル3の上方に設置しても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
1 扉
2 自由側端縁
3 ハンドル
4 錠箱
5 ハンドル軸箱
6 ハンドル軸受
7 駆動アーム
8 連結孔
9 案内孔
11 ストッパー
12 ローラー
14 飾り板
15 従動アーム
16 連結杆
17 長穴
18 基板
19 ガイドピン
21 支軸
22 揺動片
23 バランス杆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜面を形成したラッチヘッドを外端に装着すると共に、このラッチヘッドが錠箱の外方に突出する方向に付勢されたラッチ杆、及びこのラッチ杆を錠箱内方に引っ込ませるリトラクタを備えた錠箱と、扉面に平行な平面内で、回動軸を中心にして回動可能に支承されたハンドルとを、ハンドルを扉の自由側端縁に沿う上下方向において通常の位置に、錠箱をハンドルの上方又は下方においてハンドルと間隔を保つ位置に夫々配設し、一方、上記ハンドルの回動軸、及び錠箱のリトラクタ軸に夫々同じ長さの駆動アーム、及び従動アームを装着し、他方、ハンドル及び錠箱に関し扉の自由側端縁の反対側に、扉の自由側端縁に平行な連結杆を上下方向に移動可能に案内し、上記駆動アーム及び従動アームの自由端を、これら駆動アーム及び従動アームが相互に平行になる位置関係で、上記連結杆の上下端部に夫々リンク結合したことを特徴とするラッチ装置。
【請求項2】
斜面を形成したラッチヘッドを外端に装着すると共に、このラッチヘッドが錠箱の外方に突出する方向に付勢されたラッチ杆、及びこのラッチ杆を錠箱内方に引っ込ませるリトラクタを備えた錠箱と、扉面に平行な平面内で、回動軸を中心にして回動可能に支承されたハンドルとを、ハンドルを扉の自由側端縁に沿う上下方向において通常の位置に、錠箱をハンドルの上方又は下方においてハンドルと間隔を保つ位置に夫々配設し、一方、上記ハンドルの回動軸、及び錠箱のリトラクタ軸に夫々同じ長さの駆動アーム、及び従動アームを装着し、他方、ハンドル及び錠箱に関し扉の自由側端縁の反対側に、扉の自由側端縁に平行な連結杆を上下方向に移動可能に案内し、上記駆動アーム及び従動アームの自由端を、これら駆動アーム及び従動アームが相互に平行になる位置関係で、上記連結杆の上下端部に夫々リンク結合し、更に、上記連結杆の内側に、鉛直線に沿って複数の支軸を設け、各支軸に、扉面に平行な支持片の中央部を扉面に平行な平面内で回動可能に支承すると共に、各支持片の内側に上下方向に延在するバランス杆を配設し、上記支持片の内方の自由端をこのバランス杆に、外方の自由端を上記連結杆に、夫々他の支持片と平行な関係位置を保つようにリンク結合したことを特徴とするラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−132168(P2012−132168A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283480(P2010−283480)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)