説明

ラップフィルム用収納箱

【課題】食品包装用ラップフィルムの収納箱において、ラップフィルムの切断を最初から最後まで金属製切断刃並のスムーズさで達成可能な非金属製切断刃が付設されたラップフィルム用収納箱の提供。
【解決手段】切断刃に配置する各刃山を特定形状とし、切断刃長さ方向中央部には高さが低い小刃山を配置し、その両端部には小刃山よりも大きい大刃山を配置し、且つ小刃山と大刃山の間には刃山高さの切り替えをスムーズにするため、大刃山側に配置されるほど順次高さが大きくなっていく数個の切り替え刃山を配置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用のラップフィルムを巻回した巻筒体の収納箱に関する。特に、金属製切断刃に劣らないフィルム切断能力を有する非金属製切断刃が付設されたラップフィルム用収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
ラップフィルムは、巻芯に巻回された巻筒体が柱状形の箱に収納されており、使用時に必要量を引き出して切断するようになっている。
従来からこの種の収納箱には金属製の切断刃が多く採用されている。金属製切断刃はラップフィルムの切断能力(カット抵抗、耐久性など)に大きな問題は無いが、収納箱を廃棄したりリサイクルしたりする時の分別作業が面倒である。
この問題を回避するため、紙やプラスチック製の非金属製切断刃が提案されているが、それらの切断能力は金属製切断刃と比較して劣るものであった。
ラップフィルムの切断能力を向上させる手段として、例えば、フィルム切断用具の歯列端部の歯を他の歯よりも鋭利に形成することが開示されている(特許文献1参照)。別の例では、カッターの長さ方向における両端部近傍の部分において、各歯の突出方向が夫々外向きとなる方向に傾斜、及び/又は各歯の突出高さを他の部分よりも高く形成させることが開示されている(特許文献2参照)。更に別の例では、鋸状切断刃の先端部の弧を、長さ方向の両端部では0.05mm以上、0.15mm以下のアール、中央部では0.15mmよりも大きく、0.3mm以下のアールを有する円弧又はその近似楕円弧に形成させることが開示されている(特許文献3参照)。
【0003】
しかし、特許文献1で開示された切断用具では、ラップフィルムの切断開始部となる切断用具の歯列端部の歯が密に並ぶので、これを非金属製切断刃に適用した場合、切断開始時にラップフィルムに接触する歯列数が多くなって応力分散し、切断するために大きな力を要する。
特許文献2で開示されたカッターでは、両端部近傍の部分において、各歯の突出方向が夫々外向きとなる方向に傾斜、及び/又は各歯の突出高さが他の部分よりも高くなっているので、これを非金属製切断刃に適用した場合、ラップフィルムの切断開始は外向きの歯が食い込むためにスムーズであるが、切断終了部では逆に歯が食い込み難くなるので抵抗が大きくなり、両端部近傍の歯が他の部分よりも急に高くなると、ラップフィルムの切断時にその切り替わり部分で引っ掛かりが生じ、全体的にスムーズに切断できない。
【0004】
特許文献3に開示された切断刃では、切断開始部の先端部アールは小さくなっているので、切断開始はある程度スムーズであるが、切断刃中央部の先端部アールが大きく設定されているので、これを非金属製切断刃に適用した場合、切断途中の抵抗が大きい。
更に、上記した従来の切断刃では、切断した後に収納箱側に残るラップフィルムの切断端部が略三角形状となるため、特に延伸加工されたラップフィルムの場合、次の引き出しを行うためにフィルムの先端を摘み上げた時に、その切断端部のいずれかの頂点を起点として意図しない方向にフィルムが裂ける現象が発生する。
【特許文献1】実開昭55−173445号公報
【特許文献2】実開平3−26719号公報
【特許文献3】実開平4−115125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、非金属製切断刃を用いた収納箱でも、ラップフィルムの切断抵抗が金属製切断刃を用いた収納箱並に小さく、最初から最後までスムーズに切断でき、意図しない方向にフィルムが裂けにくい刃山形状を有する非金属製切断刃を備えるラップフィルム用収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、非金属製切断刃を備えた収納箱でラップフィルムを最初から最後までスムーズに切断させるためには、切断開始部となる切断刃両端部にはラップフィルムへの食い込み性が良好な大刃山を、切断途中の中央部には相対的に曲げ強度が高くなる小刃山を採用し、これらの切り替えを緩やかに設計することが最適であることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)柱状形の収納箱と収納箱の収納室に収納した巻回フィルムからなり、巻回フィルムからラップフィルムの必要量を引き出し、引き出したフィルムを収納箱に取り付けた長尺状の非金属製切断刃で切断して用いるラップフィルムの収納箱において、非金属製鋸刃の切断部は、刃山の高さが異なる小刃山と大刃山、及び切り替え刃山とで構成され、小刃山は、非金属製切断刃の長さ方向の中央部に配置され、大刃山は、非金属製切断刃の長さ方向の両端部に配置され、切り替え刃山は、小刃山から大刃山に切り替わる部分に高さが順次高くなるように配置されており、且つ各刃山の谷底部を結ぶ仮想線Sと非金属製切断刃が取り付けられた収納箱の稜線部との距離Lが0.50mm以上1.50mm以下であることを特徴とするラップフィルム用収納箱。
(2)非金属製切断刃の厚みは0.15mm以上0.30mm以下、曲げこわさが0.5N・cm以上であることを特徴とする(1)に記載のラップフィルム用収納箱。
(3)各刃山の先端角度αは40°以上50°以下であり、先端部の半径R1は30μm以上70μm以下であり、根元の湾曲部の半径R2は100μm以上であり、隣接する刃山間のピッチは1.00mm以上2.00mm以下であることを特徴とする(1)に記載のラップフィルム用収納箱。
(4)小刃山は、高さH1が0.40mm以上0.60mm以下であって、非金属製切断刃の中央部に、刃の全長の40%以上89%以下の長さに配置され、大刃山は、高さH2が0.70mm以上1.10mm以下であって、非金属製切断刃の両端部に各々、刃の全長の5%以上29.5%以下の長さに配置され、且つ切り替え刃山は、隣接する小刃山K1と大刃山K2との間で、小刃山の両端に各々、刃の全長の0.5%以上の長さに配置されていることを特徴とする(1)に記載のラップフィルム用収納箱。
(5)切り替え刃山に隣接する小刃山K1と大刃山K2の頂点を結ぶ仮想線Tと、小刃山K1及び大刃山K2の谷底部の中点を結ぶ仮想線S1とのなす角度βが10°以下であり、切り替え刃山の頂点は前記仮想線Tを越えない高さの位置にあることを特徴とする(1)に記載のラップフィルム用収納箱。
【発明の効果】
【0007】
本発明のラップフィルム用収納箱は、切断刃の素材に非金属を用いているので廃棄やリサイクルが容易であり、切断刃全体の刃山形状を最適化することによって従来の非金属製切断刃に見られる切断能力の低下を回避し、金属製切断刃並の切断能力が得られる効果を有する。
更に切断した後に収納箱側に残るラップフィルムの切断端部が緩やかな円弧状又は、台形状となるため、特に延伸加工されたラップフィルムの場合、次の引き出しを行うためにフィルム端部を摘み上げた時に、意図しない方向にフィルムが裂ける現象を防止する効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について、好ましい実施態様を中心に、具体的に説明する。
図1は、本発明のラップフィルム用収納箱10における掩蓋片3の先端部に非金属製切断刃Kの各刃先部分が僅かに突出した状態で付設された一例を示す図である。図2は、図1に示した非金属製切断刃の小刃山と大刃山の切り替わり部分を示す拡大図である。
図1において、1は前板、2は底板、4は巻き戻り防止手段、Uは収納箱の稜線部、Fはラップフィルムを表す。図2において、K1は切り替え刃山に隣接する小刃山、H1は小刃山の高さ、K2は切り替え刃山に隣接する大刃山、H2は大刃山の高さ、R1は各刃山先端部の半径、R2は各刃山根元の半径、Sは各刃山の谷底部を結ぶ仮想線、S1は前記小刃山K1と大刃山K2の谷底部の中点(K1m及びK2m)を結ぶ仮想線、Tは前記小刃山K1と大刃山K2の頂点を結ぶ仮想線、αは各刃山の先端角度、βは仮想線S1とTのなす角度、Lは収納箱の稜線部Uから仮想線Sまでの距離を表す。尚、図1の場合は掩蓋片3の先端部が稜線部となるが、切断刃が付設される位置によっては、前板1の先端部や前板1と底板2の折曲げ部が稜線部となる場合がある。
【0009】
本発明のラップフィルム用収納箱において、各刃山の谷底部を結ぶ仮想線Sと収納箱の稜線部Uとの距離Lは0.50mm以上1.50mm以下であることが好ましい。距離Lが0.50mm未満では切断刃谷底部と収納箱の稜線部が近接するため、ラップフィルムの切断時にこの稜線部が干渉して切断能力(カット抵抗)が低下する場合があり、1.50mmを超えると、稜線部からの各刃山の突出が大きくなるので、切断刃全体の相対的な曲げ強度が低下してラップフィルムの切断能力(カット抵抗、耐久性)が低下する場合がある。
本発明のラップフィルム用収納箱において、非金属性切断刃の厚みは0.15mm以上0.30mm以下が好ましく、曲げこわさは、JIS P 8125に規定される方法で0.5N・cm以上が好ましい。厚みが0.15mm未満ではラップフィルムの切断時に刃山が湾曲して切断能力(カット抵抗、耐久性)が低下する場合があり、厚みが0.30mmを超えると切断刃の厚み方向に応力が分散するために切断能力(カット抵抗)が低下する場合がある。曲げこわさが0.5N・cm未満の場合は、ラップフィルムの切断時に刃山が湾曲して切断能力(カット抵抗、耐久性)が低下する場合がある。曲げこわさの上限値は限定されないが、高過ぎる場合は雄型と雌型を用いた金型での切断刃の打ち抜き加工時に刃こぼれ等を発生する場合があるので、採用する素材の性質等によって適宜最適な値を選定する。概ね2.0N・cm以下が好ましい。
【0010】
本発明のラップフィルム用収納箱に取り付ける非金属製鋸刃に存在する3種類の刃山形状について、共通する好ましい範囲を述べる。各刃山先端角度αは、40°以上50°以下が好ましく、先端部の半径R1は、30μm以上70μm以下が好ましい。各刃山間のピッチは1.00mm以上2.00mm以下が好ましく、各刃山の根元の湾曲部の半径R2は100μm以上が好ましい。
各刃山の先端角度が40°未満の場合は、刃山が針状に近くなるので、ラップフィルムの切断時に十分な耐久性を維持しにくい場合があり、50°を超えるとラップフィルムへの食い込み性が低下する場合がある。先端部の半径が30μm未満の場合は、金型による大量安定生産性が低くなる場合があり、70μmを超えるとラップフィルムへの食い込み性が低下し、切断能力(カット抵抗)が低下する場合がある。
【0011】
各刃山間のピッチが1.00mm未満の場合は、ラップフィルムの切断時に接触する刃山数が多く密になるため、応力が分散して切断能力(カット抵抗、耐久性)が低下する場合があり、2.00mmを超えると、逆に刃山が疎になり過ぎるため切断のスムーズさが失われる場合がある。刃山の根元の湾曲部の半径R2が100μm未満の場合は、ラップフィルムを切断した切断端部に微小な亀裂が発生しやすく、特に延伸加工されたラップフィルムの場合、その亀裂を起点として意図しない方向にラップフィルムが裂ける場合がある。半径R2が100μm以上である場合は、切断能力等に問題が無いので、R2の上限値は限定されず、刃山の高さやピッチ等を考慮して適宜決定する。概ね300μm以下が好ましい。
【0012】
次に、各刃山ごとに好ましい範囲について述べる。
本発明のラップフィルム用収納箱において、非金属性切断刃に存在する小刃山の高さH1は0.40mm以上0.60mm以下が好ましい。小刃山は切断刃の長さ方向全体に対して中央部に配置され、その長さは、切断刃の全長の40%以上89%以下が好ましい。小刃山の高さが0.40mm未満の場合は、金型による大量安定生産性が低くなりやすく、ラップフィルムへの食い込み性が低下する場合がある。小刃山の高さH1が0.60mmを超えると、小刃山の相対的な曲げ強度が低下する傾向にあるので、切断能力(耐久性)が低下する場合がある。小刃山の長さが全長の40%未満では、相対的な曲げ強度が低い大刃山が多くなるため、全体的な切断能力(耐久性)が低下する場合があり、89%を超えると、切断開始時にラップフィルムへの食い込み性が低下し、切断能力(カット抵抗)が低下する場合がる。
【0013】
小刃山と比較して相対的な曲げ強度が低下する大刃山を切断刃両端部に配置させる理由は、ラップフィルムの切断時、最も力を要する切断開始時に、ラップフィルムへの刃山先端の食い込み性を付与するためである。そのため、大刃山の高さH2は0.70mm以上1.10mm以下が好ましい。大刃山の長さは、切断刃の両端部に各々、切断刃全長の5%以上29.5%以下が好ましい。大刃山の高さが0.70mm未満では、ラップフィルムの切断開始時に刃山への食い込み性が低下する場合があり、1.10mmを超えると相対的な曲げ強度が低下するため、切断開始時に刃山が湾曲して刃山への食い込み性が低下する場合がある。大刃山の長さが切断刃の長さ方向の両端部に各々5%未満の場合には、切断開始時にラップフィルムへの食い込み性が低下し、切断能力(カット抵抗)が低下する場合があり、29.5%を超えると、相対的な曲げ強度が低い大刃山が多くなることにより全体的な切断能力(耐久性)が低下する場合がある。
【0014】
本発明のラップフィルム用収納箱において、非金属性切断刃の切り替え刃山に隣接する小刃山K1と大刃山K2の頂点を結ぶ仮想線Tと、小刃山K1の谷底部の中点K1m、大刃山K2の谷底部の中点K2mを結ぶ仮想線S1とのなす角度βは10°以下が好ましい。切り替え刃山の頂点は、小刃山側から大刃山側に向かって順次高くなっており、上記仮想線Tを越えない高さの位置にあることが好ましく、その配置は小刃山K1と大刃山K2の間に各々0.5%以上であることが好ましい。角度βが10°を超える場合、切り替え刃山の頂点が仮想線Tを越える場合、配置が0.5%未満である場合は、ラップフィルムの切断時に該当する切り替え刃山近傍で引っ掛かり(切断抵抗)が発生しやすく、切断のスムーズさが低下する場合がある。
【0015】
上記の好ましい範囲にある非金属製切断刃を備える本発明のラップフィルム用収納箱においては、特に小刃山部分の谷底部形状が緩やかな円弧又は台形状になるので、切断されたラップフィルムも同じような切断端部となる。したがって、従来の切断刃による応力集中しやすい略三角形状の切断端部と比較して、切断端部の強度が大きいため、意図しない方向にラップフィルムが裂けるという問題が一層効果的に防止できる。
本発明のラップフィルム用収納箱に用いる非金属性切断刃において、各刃山角度や刃山先端部の半径やピッチ等は位置によって適宜変更してもよいが、切断のスムーズさを考慮すると、一定値にしておくことが好ましい。但し、切断刃中央部10〜40%程度の範囲に含まれる小刃山の先端部の半径R1を本発明の範囲内で他の小刃山の先端部の半径よりも大きく設計して、各種ハンドリング時(ラップフィルムの引き出しや取り出し等)の安全性を向上させてもよい。
【0016】
本発明のラップフィルム用収納箱において、非金属性切断刃を構成する素材には、プラスチック、紙等、公知の材料を用いればよく、限定されないが、曲げこわさと耐久性を考慮すると二軸延伸したプラスチックが好ましい。更に、廃棄時のことを考慮すると、燃焼熱が比較的低く、ダイオキシン等の発生が無いポリエステル系プラスチック、例えば、ポリ乳酸やポリエチレンテレフタレートが好ましい。素材の強度を向上させるため、食品衛生性や金型による切断刃加工性等に影響が無い範囲で、プラスチックの場合は公知の強化剤(酸化チタン、カーボンファイバーなど)を添加したり、紙の場合は樹脂含浸等(アクリル樹脂など)を実施してもよい。
【0017】
本発明のラップフィルム用収納箱において、非金属性切断刃の長さをラップフィルムの幅よりも短くしてもよい。この場合、切断開始時にラップフィルムの端部近傍付近が切断刃の最端部へ確実に引っ掛かり、切断開始時にラップフィルムが滑ることなく、スムーズに切断できる利点がある。切断刃の長さを短くする場合は、ラップフィルムの幅に対して両端部を各々3mm〜10mm程度短くさせることが好ましい。
本発明のラップフィルム用収納箱の素材は限定されないが、坪量400〜700g/m程度の一般的なコートボール紙が好ましい。収納箱の強度が上がると切断能力も向上するので、強度的に優れるF−フルート、G−フルート等の薄物段ボールを用いてもよい。収納箱の大きさは、収納するラップフィルムの幅、巻長及び芯体の大きさ等により適宜選択できる。ハンドリングの利便性の観点から、長さは100〜500mmが好ましく、高さと奥行きは共に一辺が41〜51mmの正方形に近い形状のものが好ましい。
【0018】
本発明のラップフィルム用収納箱に非金属製切断刃を付設する方法としては、公知のコールドグルー法、感圧接着剤法、超音波接着法(高周波シール法)等が用いられる。特に、非金属製切断刃の素材に熱可塑性樹脂を用いて超音波接着を行う場合は、超音波ホーン先端部を一般的な3mm幅の1本筋状から約1mm幅の2本筋状(超音波ホーン先端部の幅自体は従来品と同じ3mm)、又は超音波ホーン先端部の長さ方向に適宜溝部を付与して超音波ホーン先端部の面積を従来の1/2〜2/3程度に変更すると、超音波出力が集中して素材表面の一部を確実に溶解させることができるので、糊剤やラミネート材等を用いなくても切断刃を収納箱の所定面に接着させることが可能であり、経済的である。付設位置は、前板1と底板2の折曲げ部(底板表面)、又は前板1の先端部(表、又は裏面)、又は掩蓋片3の先端部(裏面)等、適宜選択すればよいが、掩蓋片3の先端部(裏面)が好ましい。
【0019】
本発明のラップフィルム用収納箱において、掩蓋片3の先端部(裏面)に非金属製切断刃を付設した場合は、切断刃両端部各々の10〜25%を、収納箱の蓋体が閉じた状態で、底板2側に緩やかに傾斜させて切断開始時のラップフィルムの食い込み性を更に向上させてもよい。この場合の傾斜量としては、大刃山最端部の刃山頂点と小刃山中央部の刃山頂点との底板側方向の高さの差が2〜7mm程度となることが好ましく、各刃山は鉛直下向きに形成させることが好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
表1の実施例1の欄に示した切断刃形状となるような金型を作成し、ポリ乳酸からなる厚み0.19mmのシート(三井化学(株)製LACEA(登録商標)シートOF−190)を上記金型で304mm(長さ)×8mm(幅)となるように打ち抜き、図1に示したような収納室が約310mm(長さ)×43mm(奥行き)×43mm(高さ)である収納箱の掩蓋片裏面の先端部に付設した。
切断刃の付設にはコールドグルー法を採用した。収納室内には約307mm(長さ)×37mm(外径)の紙製芯体に約20m(長さ)巻回された約300mm(幅)のポリ塩化ビニリデン製フィルム(厚み約10.8μm)を収納した。このサンプルを100箱用意し、100人のモニターに以下の参考例1で示すサンプルと共に手渡し、交互にフィルムの切断を行った後、以下に示す評価尺度での評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0021】
[実施例2〜5、比較例1〜5、参考例1]
切断刃の素材や形状を表1に示した形状とした以外は実施例1と同様な操作を実施した。但し、参考例1で示したブリキ製切断刃が収納箱に付設される場合は、コールドグルー法ではなく、ブリキ製切断刃で一般的なカシメ固定法を採用した。また、実施例4の素材には一般的な非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を、実施例5の素材にはバルカナイズドファイバー(東洋ファイバー(株)製PK−92LW)を採用した。
【0022】
[評価尺度]
(1)切断抵抗
参考例1との対比で、該当サンプルの切断途中に引っ掛かりを感じたか、及び/又は切断全体を通して大きな抵抗が感じられたか否かを回答してもらった。切断途中に引っ掛かりを感じたか、又は/及び切断全体を通して大きな抵抗が感じられたと回答した人が、100人のうち5人未満の場合は○、5人以上10人未満の場合は△、10人以上の場合は×の評価とした。
(2)耐久性
参考例1との対比で、該当サンプルのラップフィルム20mを全てカットした後(1回当たり約30cmの引き出しで1箱当たり60回前後のカット回数)、刃山の変形具合を確認した。刃山の変形数が10山未満且つ連続した3山が変形していないモニターが、100人のうち5人未満の場合は○、5人以上10人未満の場合は△、10人以上の場合は×の評価とした。
(3)ハンドリング時の裂け
参考例1との対比で、該当サンプルのハンドリング時(ラップ先端を摘んで引き出す時)にラップが意図しない方向に裂けたか否かを回答してもらった。ラップが裂けたと回答した人が、100人のうち5人未満の場合は○、5人以上10人未満の場合は△、10人以上の場合は×の評価とした。
(4)総合評価
上記(1)〜(3)の評価で、全てが○又は○が2個且つ△1個であるものを合格として○の評価とし、1項目でも×又は△が2個以上の評価があるものを不合格として×の評価とした。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
表1と表2より、実施例1〜5で示したような本発明の範囲内にあるラップフィルム用収納箱は、本発明の範囲外である比較例1〜5で示したような構成を持つ収納箱と比較して、切断途中での引っ掛かり(切断途中の停止、又は大きな抵抗、切断開始時の滑りなど)、切断刃の変形、ハンドリング時のラップの裂け等が改善されていることが判る。更に、本発明の範囲内でも特に好ましい構成である実施例1と2の収納箱では、上記の不都合が更に問題ないレベルにまで改善されていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のラップフィルム用収納箱は、食品包装用のラップフィルムを巻回した巻筒体の収納箱の分野で好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のラップフィルム用収納箱の斜視図である。
【図2】本発明のラップフィルム用収納箱における小刃山と大刃山の切り替わり部分を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0028】
1 前板
2 底板
3 掩蓋片
4 巻き戻り防止手段
10 ラップフィルム収納箱
F ラップフィルム
K 切断刃
K1 切り替え刃山に隣接する小刃山
K2 切り替え刃山に隣接する大刃山
H1 小刃山の高さ
H2 大刃山の高さ
R1 各刃山先端部の半径
R2 各刃山根元湾曲部の半径
S 各刃山谷底部を結ぶ仮想線
S1 小刃山K1の谷底部の中点K1mと大刃山K2の谷底部の中点K2mを結ぶ仮想線
T 小刃山K1と大刃山K2の頂点を結ぶ仮想線
U 収納箱の稜線部
α 各刃山の先端角度
β 仮想線S1と仮想線Tのなす角度
L 収納箱の稜線部Uから仮想線Sまでの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状形の収納箱と収納箱の収納室に収納した巻回フィルムからなり、巻回フィルムからラップフィルムの必要量を引き出し、引き出したフィルムを収納箱に取り付けた長尺状の非金属製切断刃で切断して用いるラップフィルムの収納箱において、非金属製鋸刃の切断部は、刃山の高さが異なる小刃山と大刃山、及び切り替え刃山とで構成され、小刃山は、非金属製切断刃の長さ方向の中央部に配置され、大刃山は、非金属製切断刃の長さ方向の両端部に配置され、切り替え刃山は、小刃山から大刃山に切り替わる部分に高さが順次高くなるように配置されており、且つ各刃山の谷底部を結ぶ仮想線Sと非金属製切断刃が取り付けられた収納箱の稜線部との距離Lが0.50mm以上1.50mm以下であることを特徴とするラップフィルム用収納箱。
【請求項2】
非金属製切断刃の厚みは0.15mm以上0.30mm以下、曲げこわさが0.5N・cm以上であることを特徴とする請求項1記載のラップフィルム用収納箱。
【請求項3】
各刃山の先端角度αは40°以上50°以下であり、先端部の半径R1は30μm以上70μm以下であり、根元の湾曲部の半径R2は100μm以上であり、隣接する刃山間のピッチは1.00mm以上2.00mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のラップフィルム用収納箱。
【請求項4】
小刃山は、高さH1が0.40mm以上0.60mm以下であって、非金属製切断刃の中央部に、刃の全長の40%以上89%以下の長さに配置され、大刃山は、高さH2が0.70mm以上1.10mm以下であって、非金属製切断刃の両端部に各々、刃の全長の5%以上29.5%以下の長さに配置され、且つ切り替え刃山は、隣接する小刃山K1と大刃山K2との間で、小刃山の両端に各々、刃の全長の0.5%以上の長さに配置されていることを特徴とする請求項1に記載のラップフィルム用収納箱。
【請求項5】
切り替え刃山に隣接する小刃山K1と大刃山K2の頂点を結ぶ仮想線Tと、小刃山K1及び大刃山K2の谷底部の中点を結ぶ仮想線S1とのなす角度βが10°以下であり、切り替え刃山の頂点は前記仮想線Tを越えない高さの位置にあることを特徴とする請求項1に記載のラップフィルム用収納箱。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−188285(P2006−188285A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349047(P2005−349047)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(303046266)旭化成ライフ&リビング株式会社 (64)
【Fターム(参考)】