ラベル・インデペンデント光学リーダの多波長基準マイクロプレート
ラベル・インデペンデント光学リーダの多波長基準マイクロプレートが開示されている。マイクロプレートは、複数の基準ウエルを支持する支持プレートを含む。少なくとも1つの基準ウエルは、光源の波長バンド内で2つ以上の異なる基準共鳴波長をそれぞれ反射する2つ以上の共鳴導波路グレーティング(RWG)セクションが配された多波長基準ウエルとして構成されている。マイクロプレートを製造及び使用する方法もまた開示されている。
【発明の詳細な説明】
【先の米国出願の利益の主張】
【0001】
本願は、2009年11月2日に出願の米国仮出願第61/257,061号の利益を主張する。
【関連した同時係属出願に対するクロスリファレンス】
【0002】
共有されて譲渡された、「ラベル・インデペンデント光学リーダのマルチグレーティング・バイオセンサ」と題された米国同時係属出願第61/257058号(本願と同時に出願)。
【技術分野】
【0003】
本発明は、ラベル・インデペンデント光学リーダに関し、特にこの種のリーダのための多波長マイクロプレートに関する。
【背景技術】
【0004】
ラベル・インデペンデント(LID)光学リーダは、例えば、タンパク質のような目標分子に結合している薬を検出するために使われる。ある種のLID光学リーダは、共鳴導波路グレーティング(RWG)バイオセンサ・アレイのRWGバイオセンサの表面の屈折率の変化を測定する。個々のRWGバイオセンサは、マイクロプレートのそれぞれのウエルに位置する。ブロードバンド光源からのブロードバンド光がRWGバイオセンサの各々に向けられる。RWGバイオセンサに共鳴する波長の光だけが強く反射される。この反射された光は集められてスペクトル分析され、屈折率変化、従ってRWGバイオセンサに結合する生体分子を表す共鳴波長が決定される。
【0005】
RWGバイオセンサの屈折率に対するスプリアス変化および他のシステム効果は、共鳴波長測定値の精度を減ずることがある。従って、基準マイクロプレートは、概して824nm(ナノメートル)ないしは844nmである光学リーダの動作スペクトル・バンド幅λFWHMの範囲内の共鳴波長を生じる標準化されたRWGとともに使われることがある。しかし、ブロードバンド光源は、現在の基準マイクロプレートによって検出されない変動(ノイズ)を有する場合がある。
【発明の概要】
【0006】
本開示の態様は、波長バンドを有する光源を有するLID光学リーダの多波長基準マイクロプレートである。当該マイクロプレートは、複数の基準ウエルを支持する支持プレートを含む。少なくとも1つの基準ウエルは、当該光源波長バンド内で2つ以上の異なる基準共鳴波長をそれぞれ反射する2つ以上のRWGセクションがその中に配された多波長基準ウエルとして構成されている。
【0007】
本開示の他の態様は、波長バンドを有する光源を有するLID光学リーダの多波長基準マイクロプレートである。当該マイクロプレートは、複数の多波長基準ウエルを操作可能に支持する支持プレートを含む。当該複数の多波長基準ウエルの各々は、その中に配された、それぞれ2つ以上の基準共鳴波長を有する2つ以上のRWGセクションを含むRWGバイオセンサを有する。マイクロプレートはまた、少なくとも部分的に各々の多波長基準ウエルを満たす充填材料を含む。当該充填材料は、光源波長バンド内の約1.3などの水の屈折率と同様の屈折率を有する。
【0008】
本開示の他の態様は、基準ウエルを有する基準マイクロプレートを使用してLID光学リーダ・システムの複数の基準共鳴波長を測定する方法である。当該方法は、少なくとも一つの基準ウエルに、各々が異なる基準共鳴波長を有する2つ以上のRWGセクションを設けることを含む。当該方法はまた、当該2つ以上のRWGセクションの各々に照射して、それらからの各反射光を生成することを含む。当該方法は、さらに、その反射光をスペクトル分析して、当該2つ以上の基準共鳴波長を測定することを含む。
【0009】
本開示のこれらの、また他の態様は以下に記載の明細書、特許請求の範囲および添付図面を参照することにより説明される。
【0010】
本開示のより完全な理解は、添付の図面を参照しつつ、以下の詳細な説明を参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本開示の多波長基準マイクロプレートの用途に適した光学リーダ・システムの一例の一般化された模式図である。
【図2】マイクロプレート・ホルダによって保持されるマイクロプレートの領域又は「ウエル」内に操作可能な状態で支持されるRWGバイオセンサ・アレイの例を示す図である。
【図3】RWGバイオセンサを横切る位置(mm)に対する共鳴波長λR(nm)のプロット例である。
【図4】波長に対応する分光計ピクセル位置に対するピーク振幅(光子カウント数)を示し、共鳴波長がどのようにシフトするかについて示すプロットである。
【図5】線形ポラライザにより測定した、典型的なスーパールミナスダイオード(SLD)の波長(mm)に対する強度(dB)のプロットであり、偏光された場合にフリンジ(リプル)を有する典型的SLDのスペクトル・バンド幅λFWHMを示す図である。
【図6】図5のSLDスペクトル・プロットにおけるフリンジのシフトに基づいた数値モデリングを用いて算出した、時間(分)の関数としての共鳴波長λRのプロットである。
【図7A−7C】多波長基準マイクロプレートの一例の多波長基準ウエル各々のクローズアップ平面図である。ここで、多波長基準ウエルの各々は、異なる共鳴波長反射率を有する複数のRWGセクションを含む基準RWGバイオセンサを有する。
【図8A−8B】共通基板上に複数のRWGを配置することによって多波長基準RWGバイオセンサを形成する方法の例を示す図である。
【図9A−9C】図7A−7Cと同様の、多波長基準ウエルの実施例を示す図であり、ここで、基準RWGバイオセンサは、連続したRWGセクションを有する。
【図10A−10C】マスクベースの方法を用いたRWGセクションを形成する第1の方法を示す図である。
【図11A−11D】異なるRWGセクションを規定する異なる導波路厚を形成する多層コーティングを用い、連続したRWGセクションを形成する第2の方法を示す斜視図および断面図を含む図である。
【図12A−12B】多波長基準マイクロプレートの多波長基準ウエルの例の断面図であり、図12Bは、疑似水(water mimic)で満たされた多波長基準ウエルを示している。
【図13】図3と同様の図であり、mセットの多波長基準ウエルを有する多波長基準マイクロプレートの例を示し、挿入図A〜Cは異なるセットの多波長基準ウエルの異なる構成例を示している。
【図14】図6と同様のプロットであり、SLD光源の模式的な波長スペクトルを示し、図13に示すようなマルチ基準マイクロプレートの異なる3セットの多波長基準ウエルに関連する異なる基準共鳴波長λRR(破線)とともに示している。
【図15A】従来技術の基準マイクロプレート(破線)および本開示の多波長基準マイクロプレート(実線)について、安定したブロードバンド光源を有する光学リーダ・システム例の測定による基準ウエル番号に対する波長ノイズ(ピコメートル)の変化をプロットした図である。
【図15B】光学リーダ・システムが不安定なブロードバンド光源を用いている点を除いて図15Aと同じプロットであり、多波長基準マイクロプレート(実線)がどのように光源の変化を検出するか、一方従来技術の基準マイクロプレート(破線)は検出しないことを説明する図である。
【発明の詳細な説明】
【0012】
本開示の実施例について以下に説明され、添付の図面に実施例について例示されている。
【0013】
図1は、光学リーダ・システム(「システム」)100の一例の一般化されたブロック102にインターロゲートするように用いられ、例えば、生物学的物質104がRWGバイオセンサ上に存在するか否かを決定する。挿入図は、RWGバイオセンサ102の例のクローズアップ図である。以下に紹介され、詳細に説明されるように、システム100は、本開示の多波長基準マイクロプレート170Rと組合されて使用されるのに適している。
【0014】
図2は、複数のウエル175が中に形成された表面173を有する支持プレート171からなるマイクロプレート170の例の平面図である。一例の支持プレート171は、例えば、本明細書に引用例として援用する米国特許出願公開2007/0211245に記載されているように、上部プレートおよび下部プレート(図示せず)からなる2部構造を有する。
【0015】
図2のマイクロプレート170は、RWGバイオセンサ102がアレイ102Aに配置され、操作可能な状態でウエル175内に支持される構成を例示している。実際の生物学的サンプルを含む「サンプル」マイクロプレート170Sについて、各々のウエル175は、「サンプル領域」175Sおよび「基準領域」175Rを含む。各々のウエル領域は、一般にλRと称される共鳴波長を有している。サンプルRWGバイオセンサ102Sのサンプル又は「信号」共鳴波長はλRSと表され、基準RWGバイオセンサ102Rの基準共鳴波長はλRRと表される。生物学的サンプルが基準領域175Rに付着しないことは重要である。従って、ウエル175内の基準領域は変更され、又は隣接するウエル(「基準」ウエル175R)が図2に示すように用いられる。基準マイクロプレート170R上のRWGバイオセンサ102は「基準RWGバイオセンサ102R」と称される。
【0016】
例示的なRWGバイオセンサ・アレイ102Aは、2mm角のRWGバイオセンサ102に対し4.5mmのピッチを有し、各列に16のRWGバイオセンサ、各行に24のRWGバイオセンサを含む。実施例において、システム100のマイクロプレート170の配置、アライメント又はその両者のため、基準印428を用いることができる。また、マイクロプレート170を保持するマイクロプレート・ホルダ174が示されている。多くの異なるタイプのプレート・ホルダをマイクロプレート・ホルダ174として用いることができる。ここで再び、マイクロプレート170は、システム100を校正又はトラブルシュートするための基準マイクロプレート170R、又は実際のサンプル・マイクロプレート170Sであってもよい。
【0017】
図1を再び参照すると、システム100は光120を生成する光源106を含む。光源106は、ランプ、レーザー、ダイオード、フィルタ、減衰器、及び同様な装置、又はこれらの組合せの一つ以上を含むことができる。例として光源106は、下記に詳細に説明するスーパールミネッセントダイオード(SLD)などの広帯域の光源を含む。光源106からの光120は、結合装置126(例えば、サーキュレータ、光スイッチ、ファイバースプリッタ、または同様の装置)によって光学システム130に向けられる。光学システム130は、関連する光軸A1を有し、光120を、RWGバイオセンサ102において光スポット135を形成する入射光ビーム134Iに変換する(挿入図Bを参照)。光ビーム134I(従って、光スポット135)は、走査光学システム130のスキャン動作又はマイクロプレート・ホルダ174によるマイクロプレート170の移動によってRWGバイオセンサ102にわたって走査される。
【0018】
入射光ビーム134Iは、RWGバイオセンサ102から反射され、反射光ビーム134Rを形成する。反射光ビーム134Rは光システム130によって受け取られ、そこからの光136(以下、「導波光信号」)は結合装置126によって、反射光ビームのスペクトルを表す電気信号S140を生成する分光器ユニット140に向けられる。実施例において、次に、プロセッサ・ユニット(「プロセッサ」)152及びメモリ・ユニット(「メモリ」)154を有するコントローラ150は、電気信号S140を受信し、RWGバイオセンサ102上の位置(そして、おそらく時間)の関数である生のスペクトルデータをメモリに格納する。その後、プロセッサ152は、その内部又はメモリ152に格納された指示に基づいて生のスペクトルデータを分析する。
【0019】
その結果は、図3に示すような共鳴波長(λR)データの空間マップであり、それは、多くの異なる走査のセンサ全体にわたるスキャン・スポットの位置の関数としての算出共鳴波長重心(セントロイド)を示している。共鳴波長λRの変化は、化学的又は生物学的反応が特定のRWGバイオセンサ102に生じたか否か示している。実施例において、コントローラ150は、例えばスペクトル・プロット、共鳴波長プロット及び他の測定結果など、及びシステム状況および性能パラメータなどの測定情報を表示する表示装置156を含み、又は表示装置156に操作可能な状態で接続されている。実施例において、スペクトルは直ちに処理され、共鳴波長(例えば、測定されたスペクトルのそれぞれの重心として算出される)のみがメモリ154に保存されるようにすることがにできる。
【0020】
一例のRWGバイオセンサ102は、入射光ビーム134Iおよび反射光ビーム134Rの導波路結合特性に影響を及ぼすセンサ表面103での屈折率の変化を利用して、RWGバイオセンサ上の生物学的物質104(例えば、細胞、分子、タンパク質、薬、化合物、核酸、ペプチド、炭水化物)のラベルフリー検知を可能にする。生物学的物質104は、RWGバイオセンサ表面103上に付着したバルク流体内に位置し、この生物学的物質の存在がRWGバイオセンサ表面での屈折率を変える。
【0021】
生物学的物質104を検出するために、RWGバイオセンサ102が入射光ビーム134Iによってプローブされ、反射光ビーム134Rは分光器ユニット140で受け取られる。コントローラ150は、生物学的物質104の存在によるRWGバイオセンサの屈折率変化(例えば、100万につき1)があるかどうかを決定するように構成されている(例えば、プロセッサ152がプログラムされている)。実施例において、例えば、RWGバイオセンサの表面103は特定の相補的な生物学的物質104の表面付着のみを許す生化学合成物(図示せず)で覆われていることができ、それによってRWGバイオセンサ102は非常に敏感であり、特異的であるようにされている。このような方法で、システム100およびRWGバイオセンサ102を、多種多様な生物学的物質104を検出するのに用いることができる。同様に、RWGバイオセンサ102は、RWGバイオセンサ表面103に固定化されたセル(細胞)の動き又は変化を検出するのに用いることができる。例えば、セルがRWGバイオセンサに対して動いたとき、又は物質を取り入れ、または放出するときに屈折率変化が起こる。
【0022】
複数のRWGバイオセンサ102がアレイ102Aとして操作可能な状態で支持される場合、それらは高いスループットの薬または化学品のスクリーニング研究を可能にするのに用いることができる。走査光学リーダ・システムを使用する生物学的物質104(または生体分子結合イベント)の検出についてのより詳細な議論については、米国特許出願第11/027,547号が参照される。他の光学リーダ・システムは、米国特許第7,424,187号及び米国特許出願公開第2006/0205058号及び2007/0202543号に記載されている。
【0023】
RWGバイオセンサ102に生じる生化学的又は細胞アッセイ(分析評価)イベントの測定に最も一般的に使用される技術はスペクトルのインターロゲーションである。スペクトル・インターロゲーションは、多波長またはブロードバンド・ビーム光(入射光ビーム134I)をRWGバイオセンサ102に照射し、反射光(反射光ビーム134R)を集め、反射スペクトルを分光器ユニット140で分析することを必要とする。
【0024】
一例の分光器ユニット140からの例示的な反射スペクトルが図4に示されている。ここで、「ピーク振幅」は、分光器のアナログ−ディジタル(A/D)コンバータによって定まる光子のカウント数である。共鳴は約10ピクセルによってカバーされ、波長範囲は約824nmから840nmである。化学結合がRWGバイオセンサ表面103で起こるとき、矢印によって示されるように、僅かに共鳴波長がシフトし、そのようなシフトは分光器ユニット140によって検出される。
【0025】
[光源ノイズ]
上記したように、システム100の例において、光源106はSLDのようなブロードバンド光源を使用する。図5は、典型的なSLDの線形ポラライザを経た波長(nm)対強度(dB)のプロットであり、典型的なSLD波形(スペクトル)を例示しており、偏光されたときにフリンジ(リプル)202を有している。フリンジ202は、約1.27nmの周期を有する。光源の実際のフリンジ周期は、その設計および使用するポラライザに応じて変化する。信号の共鳴波長λRSおよび基準共鳴波長λRRの位置の例が図5に示され、概して数nm離れている。光源106は、半値全幅λFWHMのスペクトルバンドを有する。
【0026】
時間の経過によりフリンジ202がシフトする場合、導波路共鳴波長のパワー・レベルは変化し、LID検出システムからもたらされる信号共鳴波長λRSはシフトする。図6は、シフトするフリンジ202に基づく数値的モデリングを用いて算出された、時間(分)の関数としての信号共鳴波長λRSのプロットである。図6のプロットは、シフトするフリンジがどのように時間の経過に対する信号共鳴波長λRSの変動を生じさせるかについて示している。信号及び基準共鳴波長λRS及びλRRは異なった影響を受けるので、測定結果にさらなるノイズが付加され、おそらくいかなる生体分子の結合信号もマスキングされる。
【0027】
結果的に、本開示の基準マイクロプレート170Rは、SLDベースの光源106の安定性を検証するように構成された「多波長基準マイクロプレート」である。多波長基準マイクロプレート170Rは、サンプル・マイクロプレート170Sに近いか、SLD光源のフリンジ周期の1/2に合致する、又はその両者の複数の波長を提供する少なくとも一つ、好ましくは複数の多波長基準ウエル175Rを有する。多波長基準マイクロプレート170Rは、光源106の動作波長スペクトルバンド幅λFWHMの範囲内で複数の波長をサンプリングし、光学リーダ・システムのノイズ性能をより正確に測定又は評価する能力を提供する。実施例において、多波長マイクロプレート170Rの基準ウエル175Rの全ては多波長基準ウエルであり、他の実施例においては、多波長マイクロプレートは一つ以上の、しかし全てではない多波長基準ウエルを含む。
【0028】
図7Aないし7Cは、多波長基準マイクロプレート170Rの例の多波長基準ウエル175Rのそれぞれのクローズアップ平面図である。多波長基準ウエル175Rの各々は、異なる基準共鳴波長λRRnを有する複数(n≧2)のRWGセクションSnを含む基準RWGバイオセンサ102Rを有する。図7Aないし7Cは、それぞれ異なる基準共鳴波長λRR1,λRR2,,λRR3,λRR4を有する2つ、3つ、4つのRWGセクションSn(S1、S2、S3およびS4と表示された)を有する多波長基準ウエル175Rをそれぞれ示している。所与の基準RWGバイオセンサ102Rにおいて用いられるRWGセクションSnの数nは、光源106の波長スペクトルバンド幅λFWHMを適切にサンプリングするのにいくつの基準共鳴波長λRRnが必要かに依存する。一例としてRWGセクションSnが離間している場合について示されており、それによって、どのRWGグレーティングセクションが入射ビーム134Iによってインターロゲートされているかの識別に用いられるエッジSEを提供する。実施例において、RWGセクションSnは、光スポット135の大きさ(直径)と同等の距離又はより大きい間隔をおいて離間している。例えば、光スポット135が100μmの直径を有する場合、隣接したRWGセクションSn間の間隔は、例えば200μmである。
【0029】
実施例において、RWGセクションSnは、個別に異なるグレーティング周期、従って異なる基準共鳴波長λRRnを有するように形成されている。図8A及び8Bに示すように、個別のRWGセクションSnは、支持基板210の上面212上に配置され、マルチセグメント基準RWGバイオセンサ102Rを形成している。マルチセグメント基準RWGバイオセンサ102Rはウエル175内に配置され、多波長基準ウエル175Rを形成している。
【0030】
図9A乃至9Cは図7A乃至7Cと同様の図であり、多波長基準ウエル175Rの実施例を示し、基準RWGバイオセンサ102Rは連続した(contiguous)RWGセクションSnを有している。1例において、例えば、連続したグレーティングセクションSnは、標準的なフォトリソグラフィ技術を用いて同時に形成される。ここで図10A乃至10Cを参照すると、異なるグレーティング周期を有する複数の領域232を有する単一のマスクが光240で照射され、基板234の感光性の表面233上にグレーティング242の連続セクションSnが形成される。連続したグレーティングセクションSnは、図示のため、僅かに分離して示されている。感光性表面233は、例えば、フォトレジストの層を含むことができる。このマスク露光に続いて、基板表面233上のRWGセクションSnの全体にわたり単一のコーティング246が施され、断面図の図10Cに示される、破線によって区画された3つの連続したRWGセクションS1、S2およびS3を有する基準RWGバイオセンサ102Rが形成される。なお、コーティング246は下部のグレーティング242と実質的に等写形状(コンフォーマル)である。
【0031】
図11A乃至11Dは、グレーティング厚さを変える複数のコーティングを用いた連続したRWGセクションSnの他の形成方法の例を示している。図11Aを参照すると、周期P0および基準共鳴波長λRR0のグレーティング242を有する基板234を有する初期のRWGバイオセンサ102Rが提供される。次に、図11Bを参照すると、図11Aの基準RWGバイオセンサ102Rは導波路周期P0を実質的に変えること無しに導波路厚を増やすように設計されている第1のコーティング261で覆われ、従って基準共鳴波長λRR0は光源のスペクトルバンド幅λFWHM内の波長λRR1にシフトされる。実施例において、周期P0は基準共鳴波長λRR0がすでに光源のスペクトルバンド幅λFWHMの範囲内であるように選択されてもよい。
【0032】
次に、図11Cを参照すると、第1のコーティング261の一部が局所的にグレーティング厚を変え、光源のスペクトルバンド幅λFWHM内の基準共鳴波長λRR2を反射するように設計された第2のコーティング262によって覆われてもよい。
【0033】
次に、図11Dを参照すると、第2のコーティング262の一部が局所的にグレーティング厚を変え、光源のスペクトルバンド幅λFWHM内の基準共鳴波長λRR3を反射するように設計された第3のコーティング263によって覆われてもよい。このプロセスにより、全てが光源のスペクトルバンド幅λFWHM内のそれぞれ基準共鳴波長λRR1、λRR2、λRR3を有する3つのRWGセクションS1、S2およびS3を有するマルチ・セグメント基準RWGバイオセンサ102Rの形成がなされる。従って、このようにして2つ以上のRWGセクションSnを形成することができる。図11Cないし11Dの断面図は多重コーティングされた部分でとられている。
【0034】
グレーティング周期P0は数百ナノメートルのオーダーであり、コーティングによる厚さの増加は5nmないし10nmのオーダーである点に留意せよ。僅かなデューティ・サイクルの変化があっても周期P0はコーティングの追加によって変化せず、マルチ・セグメント基準RWGバイオセンサ102Rの性能への影響は無視できる。
【0035】
実施例において、層261、262及び263は周知の選択的なマスク・ベースの堆積技術を用いて適用することができる。実施例において、コーティング261、262及び263はニオビア(niobia)からなっていてもよい。
【0036】
図12A及び12Bは、多波長基準マイクロプレート170Rの多波長基準ウエル175Rの例の断面図である。多波長基準ウエル175Rは、底部302、内部304及び開いた上部306を含む。図12Aは、ウエル底部302に配置された基準RWGバイオセンサ102Rを示し、内部304は空気で充填されている。
【0037】
サンプル・マイクロプレート170Sは水で満たされることになるそのサンプル175Sを有するので、多波長基準ウエル175Rもまた水、又は光源のスペクトルバンド幅λFWHM内において実質的に同じ屈折率(例えば、約1.3)を有する水に疑似的な材料で充填されなければならない。蒸留水を用いて多波長基準ウエル175Rを満たすことを選択できるが、水は時間の経過に伴ってRWGバイオセンサを劣化させる(例えば、層剥離)ので一般的には好ましくない。また、蒸留水は蒸発し、また基準マイクロプレート170Rが慎重に取り扱われない場合、あるいはウエルが封止されていない場合、基準ウエル175Rからこぼれることがある。
【0038】
図12Bを参照すると、1の実施例において、多波長基準ウエル175Rは、水と同様の熱特性及び屈折率を有する充填材料310で少なくとも部分的に充填されている(そして、ある実施例においては、完全に充填されている)。例示的な充填材料310は、室温において固体で、容易に環境による変動を受けない。実施例において、例えば充填材料310は、エラストマ、光エポキシまたはそれらの組合せからなる。基準マイクロプレートにおけるエラストマの使用については、上述した米国特許出願公開第2007/0211245号において述べられている。
【0039】
多波長基準ウエル175Rを充填するのに適切なエラストマ充填材料310の例は、Sylgard-184の商標名の下で販売されているエラストマで、ダウ・コーニング社(Dow Corning Corporation, Midland, Michigan)から入手可能である。Sylgard-184エラストマは、以下の表1に示される特性/特徴を有する。
【0040】
【表1】
Sylgard-184(商標)エラストマの性質および特性が実質的に同じである周知の又は今後開発される充填材材料310のいかなるものも本開示の発明に適用するのに適切である。充填材料310は、ポジティブディスプレイスメント方式のピペットを使用した手動で又は自動化された充填方法によって多波長基準ウエル175Rの内部306に加えられる。次に多波長基準マイクロプレート170Rは室温で、ほぼ2日間硬化され、その後、多波長基準ウエル175R内のエラストマ充填材料310は充分に硬化され、使用できる状態になる。
【0041】
図13は図3と同様の図で、mセット350(例えば、350-1、350-2、・・・、350-m)の多波長基準ウエル175Rを有する多波長基準マイクロプレート170Rの例を示す。多波長基準ウエル175Rの異なるセット350はそれぞれ、異なる基準共鳴波長λRR、すなわちセット350-1にはλRR1A,λRR1B,・・・、セット350-2にはλRR2A,λRR2B,・・・、セット350-3にはλRRmA,λRRmB,・・・を有するマルチ・セグメント基準RWGバイオセンサを含む。
【0042】
例として3つの異なる多波長基準ウエル・セット350-1、350-2および350-3を有する多波長基準マイクロプレート170Rを検討する。第1のセット350-1は、基準波長λRR1A=825nm及びλRR2A=830nm(挿入図Aを参照)を反射するように構成された2つのセクションS1及びS2を有するマルチ・セグメント基準RWGバイオセンサ102Rを有する多波長基準ウエル175R1を含む。第2のセット350-2は、基準波長λRR2A=834.5nm及びλRR2B=837nm(挿入図Bを参照)を反射するように構成された2つのセクションS1及びS2を有するマルチ・セグメント基準RWGグレーティング102Rを有する多波長基準ウエル175R2を含む。第3のセット350-3は、基準波長λRR3A=840nm、λRR3B=842nm及びλRR3C=844nm(挿入図Cを参照)を反射するように構成された3つのセクションS1、S2及びS3を有するマルチ・セグメント基準RWGグレーティング102Rを有する多波長基準ウエル175R3を含む。
【0043】
その結果、ブロードバンド光源のスペクトルバンド幅λFWHM内の複数の波長における波長情報を提供する多波長基準マイクロプレート170Rが得られる。図14は図6と同様のプロットであり、SLD光源106の模式的な波長スペクトル例を示す。図14のプロットは、図13の基準マイクロプレート170Rの例における異なる基準ウエル175Rによって反射された7つの異なる基準波長λRRを示している。基準ウエル・セット350の数mは、必要な又は要望の波長範囲を満たすように選択することができる。
【0044】
図15Aは、安定なブロードバンド光源106を有する光学リーダ・システム100の例によって測定された、基準ウエル番号に対する波長ノイズ(ピコメートル)の変化のプロットである。「ノイズ」は、測定基準共鳴波長λRRに対する測定信号共鳴波長λRSの差である。標準の(従来技術)基準マイクロプレートが用いられ(破線)、また、本開示の多波長基準マイクロプレート170Rが用いられた(実線)。安定した光源106の場合、この2つのタイプのマイクロプレートは、波長ノイズの変化に関し、本質的に同じ安定した測定値を与える。
【0045】
図15Bは、光学リーダ・システムにおいて不安定なブロードバンド光源106が用いられたことを除いては、図15Aと同様のプロットである。図15Bのプロットは、従来技術の基準マイクロプレートが実質的に波長ノイズの変化を示さないことを明らかにし、本開示の多波長基準マイクロプレート170Rは、予想されるように、(偏光)光源出力スペクトルの変化による波長ノイズの有意な変化を示している。このように、従来技術の基準マイクロプレートは、光学リーダ・システムに測定値ノイズを生じさせる光源106のスペクトルの変化を検出することができない。
【0046】
多波長基準マイクロプレート170Rはエンドユーザによって使用され、分析評価(アッセイ)を行う前にシステム性能を確実にし、またはアッセイ時におけるリーダ制御として使用することができる。多波長基準マイクロプレート170Rは、従来技術の基準マイクロプレートよりもより現実的な顧客アッセイのシミュレーションを提供する。また、多波長基準プレート170Rは、単一の基準マイクロプレートに光学リーダ・システムの多波長(及び、フルスペクトルまで)の検証を提供することによってフィールドサポートの労力を単純化する点に留意すべきである。現在、フィールドサポート作業者が光学リーダの光スペクトルを完全に評価することが必要とされる場合、彼等は複数のマイクロプレートおよび追加の計測設備(ノッチフィルタ、その他)を携行しなければならない。
【0047】
添付の特許請求の範囲に規定される本願発明の範囲から逸脱することなく、本願明細書に記載されている好適な実施例に対してさまざまな改変をなすことができるのは当業者にとって明らかであろう。このように、本開示は添付の特許請求の範囲及びその均等の範囲内の改変及び変更をその範囲に含む。
【先の米国出願の利益の主張】
【0001】
本願は、2009年11月2日に出願の米国仮出願第61/257,061号の利益を主張する。
【関連した同時係属出願に対するクロスリファレンス】
【0002】
共有されて譲渡された、「ラベル・インデペンデント光学リーダのマルチグレーティング・バイオセンサ」と題された米国同時係属出願第61/257058号(本願と同時に出願)。
【技術分野】
【0003】
本発明は、ラベル・インデペンデント光学リーダに関し、特にこの種のリーダのための多波長マイクロプレートに関する。
【背景技術】
【0004】
ラベル・インデペンデント(LID)光学リーダは、例えば、タンパク質のような目標分子に結合している薬を検出するために使われる。ある種のLID光学リーダは、共鳴導波路グレーティング(RWG)バイオセンサ・アレイのRWGバイオセンサの表面の屈折率の変化を測定する。個々のRWGバイオセンサは、マイクロプレートのそれぞれのウエルに位置する。ブロードバンド光源からのブロードバンド光がRWGバイオセンサの各々に向けられる。RWGバイオセンサに共鳴する波長の光だけが強く反射される。この反射された光は集められてスペクトル分析され、屈折率変化、従ってRWGバイオセンサに結合する生体分子を表す共鳴波長が決定される。
【0005】
RWGバイオセンサの屈折率に対するスプリアス変化および他のシステム効果は、共鳴波長測定値の精度を減ずることがある。従って、基準マイクロプレートは、概して824nm(ナノメートル)ないしは844nmである光学リーダの動作スペクトル・バンド幅λFWHMの範囲内の共鳴波長を生じる標準化されたRWGとともに使われることがある。しかし、ブロードバンド光源は、現在の基準マイクロプレートによって検出されない変動(ノイズ)を有する場合がある。
【発明の概要】
【0006】
本開示の態様は、波長バンドを有する光源を有するLID光学リーダの多波長基準マイクロプレートである。当該マイクロプレートは、複数の基準ウエルを支持する支持プレートを含む。少なくとも1つの基準ウエルは、当該光源波長バンド内で2つ以上の異なる基準共鳴波長をそれぞれ反射する2つ以上のRWGセクションがその中に配された多波長基準ウエルとして構成されている。
【0007】
本開示の他の態様は、波長バンドを有する光源を有するLID光学リーダの多波長基準マイクロプレートである。当該マイクロプレートは、複数の多波長基準ウエルを操作可能に支持する支持プレートを含む。当該複数の多波長基準ウエルの各々は、その中に配された、それぞれ2つ以上の基準共鳴波長を有する2つ以上のRWGセクションを含むRWGバイオセンサを有する。マイクロプレートはまた、少なくとも部分的に各々の多波長基準ウエルを満たす充填材料を含む。当該充填材料は、光源波長バンド内の約1.3などの水の屈折率と同様の屈折率を有する。
【0008】
本開示の他の態様は、基準ウエルを有する基準マイクロプレートを使用してLID光学リーダ・システムの複数の基準共鳴波長を測定する方法である。当該方法は、少なくとも一つの基準ウエルに、各々が異なる基準共鳴波長を有する2つ以上のRWGセクションを設けることを含む。当該方法はまた、当該2つ以上のRWGセクションの各々に照射して、それらからの各反射光を生成することを含む。当該方法は、さらに、その反射光をスペクトル分析して、当該2つ以上の基準共鳴波長を測定することを含む。
【0009】
本開示のこれらの、また他の態様は以下に記載の明細書、特許請求の範囲および添付図面を参照することにより説明される。
【0010】
本開示のより完全な理解は、添付の図面を参照しつつ、以下の詳細な説明を参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本開示の多波長基準マイクロプレートの用途に適した光学リーダ・システムの一例の一般化された模式図である。
【図2】マイクロプレート・ホルダによって保持されるマイクロプレートの領域又は「ウエル」内に操作可能な状態で支持されるRWGバイオセンサ・アレイの例を示す図である。
【図3】RWGバイオセンサを横切る位置(mm)に対する共鳴波長λR(nm)のプロット例である。
【図4】波長に対応する分光計ピクセル位置に対するピーク振幅(光子カウント数)を示し、共鳴波長がどのようにシフトするかについて示すプロットである。
【図5】線形ポラライザにより測定した、典型的なスーパールミナスダイオード(SLD)の波長(mm)に対する強度(dB)のプロットであり、偏光された場合にフリンジ(リプル)を有する典型的SLDのスペクトル・バンド幅λFWHMを示す図である。
【図6】図5のSLDスペクトル・プロットにおけるフリンジのシフトに基づいた数値モデリングを用いて算出した、時間(分)の関数としての共鳴波長λRのプロットである。
【図7A−7C】多波長基準マイクロプレートの一例の多波長基準ウエル各々のクローズアップ平面図である。ここで、多波長基準ウエルの各々は、異なる共鳴波長反射率を有する複数のRWGセクションを含む基準RWGバイオセンサを有する。
【図8A−8B】共通基板上に複数のRWGを配置することによって多波長基準RWGバイオセンサを形成する方法の例を示す図である。
【図9A−9C】図7A−7Cと同様の、多波長基準ウエルの実施例を示す図であり、ここで、基準RWGバイオセンサは、連続したRWGセクションを有する。
【図10A−10C】マスクベースの方法を用いたRWGセクションを形成する第1の方法を示す図である。
【図11A−11D】異なるRWGセクションを規定する異なる導波路厚を形成する多層コーティングを用い、連続したRWGセクションを形成する第2の方法を示す斜視図および断面図を含む図である。
【図12A−12B】多波長基準マイクロプレートの多波長基準ウエルの例の断面図であり、図12Bは、疑似水(water mimic)で満たされた多波長基準ウエルを示している。
【図13】図3と同様の図であり、mセットの多波長基準ウエルを有する多波長基準マイクロプレートの例を示し、挿入図A〜Cは異なるセットの多波長基準ウエルの異なる構成例を示している。
【図14】図6と同様のプロットであり、SLD光源の模式的な波長スペクトルを示し、図13に示すようなマルチ基準マイクロプレートの異なる3セットの多波長基準ウエルに関連する異なる基準共鳴波長λRR(破線)とともに示している。
【図15A】従来技術の基準マイクロプレート(破線)および本開示の多波長基準マイクロプレート(実線)について、安定したブロードバンド光源を有する光学リーダ・システム例の測定による基準ウエル番号に対する波長ノイズ(ピコメートル)の変化をプロットした図である。
【図15B】光学リーダ・システムが不安定なブロードバンド光源を用いている点を除いて図15Aと同じプロットであり、多波長基準マイクロプレート(実線)がどのように光源の変化を検出するか、一方従来技術の基準マイクロプレート(破線)は検出しないことを説明する図である。
【発明の詳細な説明】
【0012】
本開示の実施例について以下に説明され、添付の図面に実施例について例示されている。
【0013】
図1は、光学リーダ・システム(「システム」)100の一例の一般化されたブロック102にインターロゲートするように用いられ、例えば、生物学的物質104がRWGバイオセンサ上に存在するか否かを決定する。挿入図は、RWGバイオセンサ102の例のクローズアップ図である。以下に紹介され、詳細に説明されるように、システム100は、本開示の多波長基準マイクロプレート170Rと組合されて使用されるのに適している。
【0014】
図2は、複数のウエル175が中に形成された表面173を有する支持プレート171からなるマイクロプレート170の例の平面図である。一例の支持プレート171は、例えば、本明細書に引用例として援用する米国特許出願公開2007/0211245に記載されているように、上部プレートおよび下部プレート(図示せず)からなる2部構造を有する。
【0015】
図2のマイクロプレート170は、RWGバイオセンサ102がアレイ102Aに配置され、操作可能な状態でウエル175内に支持される構成を例示している。実際の生物学的サンプルを含む「サンプル」マイクロプレート170Sについて、各々のウエル175は、「サンプル領域」175Sおよび「基準領域」175Rを含む。各々のウエル領域は、一般にλRと称される共鳴波長を有している。サンプルRWGバイオセンサ102Sのサンプル又は「信号」共鳴波長はλRSと表され、基準RWGバイオセンサ102Rの基準共鳴波長はλRRと表される。生物学的サンプルが基準領域175Rに付着しないことは重要である。従って、ウエル175内の基準領域は変更され、又は隣接するウエル(「基準」ウエル175R)が図2に示すように用いられる。基準マイクロプレート170R上のRWGバイオセンサ102は「基準RWGバイオセンサ102R」と称される。
【0016】
例示的なRWGバイオセンサ・アレイ102Aは、2mm角のRWGバイオセンサ102に対し4.5mmのピッチを有し、各列に16のRWGバイオセンサ、各行に24のRWGバイオセンサを含む。実施例において、システム100のマイクロプレート170の配置、アライメント又はその両者のため、基準印428を用いることができる。また、マイクロプレート170を保持するマイクロプレート・ホルダ174が示されている。多くの異なるタイプのプレート・ホルダをマイクロプレート・ホルダ174として用いることができる。ここで再び、マイクロプレート170は、システム100を校正又はトラブルシュートするための基準マイクロプレート170R、又は実際のサンプル・マイクロプレート170Sであってもよい。
【0017】
図1を再び参照すると、システム100は光120を生成する光源106を含む。光源106は、ランプ、レーザー、ダイオード、フィルタ、減衰器、及び同様な装置、又はこれらの組合せの一つ以上を含むことができる。例として光源106は、下記に詳細に説明するスーパールミネッセントダイオード(SLD)などの広帯域の光源を含む。光源106からの光120は、結合装置126(例えば、サーキュレータ、光スイッチ、ファイバースプリッタ、または同様の装置)によって光学システム130に向けられる。光学システム130は、関連する光軸A1を有し、光120を、RWGバイオセンサ102において光スポット135を形成する入射光ビーム134Iに変換する(挿入図Bを参照)。光ビーム134I(従って、光スポット135)は、走査光学システム130のスキャン動作又はマイクロプレート・ホルダ174によるマイクロプレート170の移動によってRWGバイオセンサ102にわたって走査される。
【0018】
入射光ビーム134Iは、RWGバイオセンサ102から反射され、反射光ビーム134Rを形成する。反射光ビーム134Rは光システム130によって受け取られ、そこからの光136(以下、「導波光信号」)は結合装置126によって、反射光ビームのスペクトルを表す電気信号S140を生成する分光器ユニット140に向けられる。実施例において、次に、プロセッサ・ユニット(「プロセッサ」)152及びメモリ・ユニット(「メモリ」)154を有するコントローラ150は、電気信号S140を受信し、RWGバイオセンサ102上の位置(そして、おそらく時間)の関数である生のスペクトルデータをメモリに格納する。その後、プロセッサ152は、その内部又はメモリ152に格納された指示に基づいて生のスペクトルデータを分析する。
【0019】
その結果は、図3に示すような共鳴波長(λR)データの空間マップであり、それは、多くの異なる走査のセンサ全体にわたるスキャン・スポットの位置の関数としての算出共鳴波長重心(セントロイド)を示している。共鳴波長λRの変化は、化学的又は生物学的反応が特定のRWGバイオセンサ102に生じたか否か示している。実施例において、コントローラ150は、例えばスペクトル・プロット、共鳴波長プロット及び他の測定結果など、及びシステム状況および性能パラメータなどの測定情報を表示する表示装置156を含み、又は表示装置156に操作可能な状態で接続されている。実施例において、スペクトルは直ちに処理され、共鳴波長(例えば、測定されたスペクトルのそれぞれの重心として算出される)のみがメモリ154に保存されるようにすることがにできる。
【0020】
一例のRWGバイオセンサ102は、入射光ビーム134Iおよび反射光ビーム134Rの導波路結合特性に影響を及ぼすセンサ表面103での屈折率の変化を利用して、RWGバイオセンサ上の生物学的物質104(例えば、細胞、分子、タンパク質、薬、化合物、核酸、ペプチド、炭水化物)のラベルフリー検知を可能にする。生物学的物質104は、RWGバイオセンサ表面103上に付着したバルク流体内に位置し、この生物学的物質の存在がRWGバイオセンサ表面での屈折率を変える。
【0021】
生物学的物質104を検出するために、RWGバイオセンサ102が入射光ビーム134Iによってプローブされ、反射光ビーム134Rは分光器ユニット140で受け取られる。コントローラ150は、生物学的物質104の存在によるRWGバイオセンサの屈折率変化(例えば、100万につき1)があるかどうかを決定するように構成されている(例えば、プロセッサ152がプログラムされている)。実施例において、例えば、RWGバイオセンサの表面103は特定の相補的な生物学的物質104の表面付着のみを許す生化学合成物(図示せず)で覆われていることができ、それによってRWGバイオセンサ102は非常に敏感であり、特異的であるようにされている。このような方法で、システム100およびRWGバイオセンサ102を、多種多様な生物学的物質104を検出するのに用いることができる。同様に、RWGバイオセンサ102は、RWGバイオセンサ表面103に固定化されたセル(細胞)の動き又は変化を検出するのに用いることができる。例えば、セルがRWGバイオセンサに対して動いたとき、又は物質を取り入れ、または放出するときに屈折率変化が起こる。
【0022】
複数のRWGバイオセンサ102がアレイ102Aとして操作可能な状態で支持される場合、それらは高いスループットの薬または化学品のスクリーニング研究を可能にするのに用いることができる。走査光学リーダ・システムを使用する生物学的物質104(または生体分子結合イベント)の検出についてのより詳細な議論については、米国特許出願第11/027,547号が参照される。他の光学リーダ・システムは、米国特許第7,424,187号及び米国特許出願公開第2006/0205058号及び2007/0202543号に記載されている。
【0023】
RWGバイオセンサ102に生じる生化学的又は細胞アッセイ(分析評価)イベントの測定に最も一般的に使用される技術はスペクトルのインターロゲーションである。スペクトル・インターロゲーションは、多波長またはブロードバンド・ビーム光(入射光ビーム134I)をRWGバイオセンサ102に照射し、反射光(反射光ビーム134R)を集め、反射スペクトルを分光器ユニット140で分析することを必要とする。
【0024】
一例の分光器ユニット140からの例示的な反射スペクトルが図4に示されている。ここで、「ピーク振幅」は、分光器のアナログ−ディジタル(A/D)コンバータによって定まる光子のカウント数である。共鳴は約10ピクセルによってカバーされ、波長範囲は約824nmから840nmである。化学結合がRWGバイオセンサ表面103で起こるとき、矢印によって示されるように、僅かに共鳴波長がシフトし、そのようなシフトは分光器ユニット140によって検出される。
【0025】
[光源ノイズ]
上記したように、システム100の例において、光源106はSLDのようなブロードバンド光源を使用する。図5は、典型的なSLDの線形ポラライザを経た波長(nm)対強度(dB)のプロットであり、典型的なSLD波形(スペクトル)を例示しており、偏光されたときにフリンジ(リプル)202を有している。フリンジ202は、約1.27nmの周期を有する。光源の実際のフリンジ周期は、その設計および使用するポラライザに応じて変化する。信号の共鳴波長λRSおよび基準共鳴波長λRRの位置の例が図5に示され、概して数nm離れている。光源106は、半値全幅λFWHMのスペクトルバンドを有する。
【0026】
時間の経過によりフリンジ202がシフトする場合、導波路共鳴波長のパワー・レベルは変化し、LID検出システムからもたらされる信号共鳴波長λRSはシフトする。図6は、シフトするフリンジ202に基づく数値的モデリングを用いて算出された、時間(分)の関数としての信号共鳴波長λRSのプロットである。図6のプロットは、シフトするフリンジがどのように時間の経過に対する信号共鳴波長λRSの変動を生じさせるかについて示している。信号及び基準共鳴波長λRS及びλRRは異なった影響を受けるので、測定結果にさらなるノイズが付加され、おそらくいかなる生体分子の結合信号もマスキングされる。
【0027】
結果的に、本開示の基準マイクロプレート170Rは、SLDベースの光源106の安定性を検証するように構成された「多波長基準マイクロプレート」である。多波長基準マイクロプレート170Rは、サンプル・マイクロプレート170Sに近いか、SLD光源のフリンジ周期の1/2に合致する、又はその両者の複数の波長を提供する少なくとも一つ、好ましくは複数の多波長基準ウエル175Rを有する。多波長基準マイクロプレート170Rは、光源106の動作波長スペクトルバンド幅λFWHMの範囲内で複数の波長をサンプリングし、光学リーダ・システムのノイズ性能をより正確に測定又は評価する能力を提供する。実施例において、多波長マイクロプレート170Rの基準ウエル175Rの全ては多波長基準ウエルであり、他の実施例においては、多波長マイクロプレートは一つ以上の、しかし全てではない多波長基準ウエルを含む。
【0028】
図7Aないし7Cは、多波長基準マイクロプレート170Rの例の多波長基準ウエル175Rのそれぞれのクローズアップ平面図である。多波長基準ウエル175Rの各々は、異なる基準共鳴波長λRRnを有する複数(n≧2)のRWGセクションSnを含む基準RWGバイオセンサ102Rを有する。図7Aないし7Cは、それぞれ異なる基準共鳴波長λRR1,λRR2,,λRR3,λRR4を有する2つ、3つ、4つのRWGセクションSn(S1、S2、S3およびS4と表示された)を有する多波長基準ウエル175Rをそれぞれ示している。所与の基準RWGバイオセンサ102Rにおいて用いられるRWGセクションSnの数nは、光源106の波長スペクトルバンド幅λFWHMを適切にサンプリングするのにいくつの基準共鳴波長λRRnが必要かに依存する。一例としてRWGセクションSnが離間している場合について示されており、それによって、どのRWGグレーティングセクションが入射ビーム134Iによってインターロゲートされているかの識別に用いられるエッジSEを提供する。実施例において、RWGセクションSnは、光スポット135の大きさ(直径)と同等の距離又はより大きい間隔をおいて離間している。例えば、光スポット135が100μmの直径を有する場合、隣接したRWGセクションSn間の間隔は、例えば200μmである。
【0029】
実施例において、RWGセクションSnは、個別に異なるグレーティング周期、従って異なる基準共鳴波長λRRnを有するように形成されている。図8A及び8Bに示すように、個別のRWGセクションSnは、支持基板210の上面212上に配置され、マルチセグメント基準RWGバイオセンサ102Rを形成している。マルチセグメント基準RWGバイオセンサ102Rはウエル175内に配置され、多波長基準ウエル175Rを形成している。
【0030】
図9A乃至9Cは図7A乃至7Cと同様の図であり、多波長基準ウエル175Rの実施例を示し、基準RWGバイオセンサ102Rは連続した(contiguous)RWGセクションSnを有している。1例において、例えば、連続したグレーティングセクションSnは、標準的なフォトリソグラフィ技術を用いて同時に形成される。ここで図10A乃至10Cを参照すると、異なるグレーティング周期を有する複数の領域232を有する単一のマスクが光240で照射され、基板234の感光性の表面233上にグレーティング242の連続セクションSnが形成される。連続したグレーティングセクションSnは、図示のため、僅かに分離して示されている。感光性表面233は、例えば、フォトレジストの層を含むことができる。このマスク露光に続いて、基板表面233上のRWGセクションSnの全体にわたり単一のコーティング246が施され、断面図の図10Cに示される、破線によって区画された3つの連続したRWGセクションS1、S2およびS3を有する基準RWGバイオセンサ102Rが形成される。なお、コーティング246は下部のグレーティング242と実質的に等写形状(コンフォーマル)である。
【0031】
図11A乃至11Dは、グレーティング厚さを変える複数のコーティングを用いた連続したRWGセクションSnの他の形成方法の例を示している。図11Aを参照すると、周期P0および基準共鳴波長λRR0のグレーティング242を有する基板234を有する初期のRWGバイオセンサ102Rが提供される。次に、図11Bを参照すると、図11Aの基準RWGバイオセンサ102Rは導波路周期P0を実質的に変えること無しに導波路厚を増やすように設計されている第1のコーティング261で覆われ、従って基準共鳴波長λRR0は光源のスペクトルバンド幅λFWHM内の波長λRR1にシフトされる。実施例において、周期P0は基準共鳴波長λRR0がすでに光源のスペクトルバンド幅λFWHMの範囲内であるように選択されてもよい。
【0032】
次に、図11Cを参照すると、第1のコーティング261の一部が局所的にグレーティング厚を変え、光源のスペクトルバンド幅λFWHM内の基準共鳴波長λRR2を反射するように設計された第2のコーティング262によって覆われてもよい。
【0033】
次に、図11Dを参照すると、第2のコーティング262の一部が局所的にグレーティング厚を変え、光源のスペクトルバンド幅λFWHM内の基準共鳴波長λRR3を反射するように設計された第3のコーティング263によって覆われてもよい。このプロセスにより、全てが光源のスペクトルバンド幅λFWHM内のそれぞれ基準共鳴波長λRR1、λRR2、λRR3を有する3つのRWGセクションS1、S2およびS3を有するマルチ・セグメント基準RWGバイオセンサ102Rの形成がなされる。従って、このようにして2つ以上のRWGセクションSnを形成することができる。図11Cないし11Dの断面図は多重コーティングされた部分でとられている。
【0034】
グレーティング周期P0は数百ナノメートルのオーダーであり、コーティングによる厚さの増加は5nmないし10nmのオーダーである点に留意せよ。僅かなデューティ・サイクルの変化があっても周期P0はコーティングの追加によって変化せず、マルチ・セグメント基準RWGバイオセンサ102Rの性能への影響は無視できる。
【0035】
実施例において、層261、262及び263は周知の選択的なマスク・ベースの堆積技術を用いて適用することができる。実施例において、コーティング261、262及び263はニオビア(niobia)からなっていてもよい。
【0036】
図12A及び12Bは、多波長基準マイクロプレート170Rの多波長基準ウエル175Rの例の断面図である。多波長基準ウエル175Rは、底部302、内部304及び開いた上部306を含む。図12Aは、ウエル底部302に配置された基準RWGバイオセンサ102Rを示し、内部304は空気で充填されている。
【0037】
サンプル・マイクロプレート170Sは水で満たされることになるそのサンプル175Sを有するので、多波長基準ウエル175Rもまた水、又は光源のスペクトルバンド幅λFWHM内において実質的に同じ屈折率(例えば、約1.3)を有する水に疑似的な材料で充填されなければならない。蒸留水を用いて多波長基準ウエル175Rを満たすことを選択できるが、水は時間の経過に伴ってRWGバイオセンサを劣化させる(例えば、層剥離)ので一般的には好ましくない。また、蒸留水は蒸発し、また基準マイクロプレート170Rが慎重に取り扱われない場合、あるいはウエルが封止されていない場合、基準ウエル175Rからこぼれることがある。
【0038】
図12Bを参照すると、1の実施例において、多波長基準ウエル175Rは、水と同様の熱特性及び屈折率を有する充填材料310で少なくとも部分的に充填されている(そして、ある実施例においては、完全に充填されている)。例示的な充填材料310は、室温において固体で、容易に環境による変動を受けない。実施例において、例えば充填材料310は、エラストマ、光エポキシまたはそれらの組合せからなる。基準マイクロプレートにおけるエラストマの使用については、上述した米国特許出願公開第2007/0211245号において述べられている。
【0039】
多波長基準ウエル175Rを充填するのに適切なエラストマ充填材料310の例は、Sylgard-184の商標名の下で販売されているエラストマで、ダウ・コーニング社(Dow Corning Corporation, Midland, Michigan)から入手可能である。Sylgard-184エラストマは、以下の表1に示される特性/特徴を有する。
【0040】
【表1】
Sylgard-184(商標)エラストマの性質および特性が実質的に同じである周知の又は今後開発される充填材材料310のいかなるものも本開示の発明に適用するのに適切である。充填材料310は、ポジティブディスプレイスメント方式のピペットを使用した手動で又は自動化された充填方法によって多波長基準ウエル175Rの内部306に加えられる。次に多波長基準マイクロプレート170Rは室温で、ほぼ2日間硬化され、その後、多波長基準ウエル175R内のエラストマ充填材料310は充分に硬化され、使用できる状態になる。
【0041】
図13は図3と同様の図で、mセット350(例えば、350-1、350-2、・・・、350-m)の多波長基準ウエル175Rを有する多波長基準マイクロプレート170Rの例を示す。多波長基準ウエル175Rの異なるセット350はそれぞれ、異なる基準共鳴波長λRR、すなわちセット350-1にはλRR1A,λRR1B,・・・、セット350-2にはλRR2A,λRR2B,・・・、セット350-3にはλRRmA,λRRmB,・・・を有するマルチ・セグメント基準RWGバイオセンサを含む。
【0042】
例として3つの異なる多波長基準ウエル・セット350-1、350-2および350-3を有する多波長基準マイクロプレート170Rを検討する。第1のセット350-1は、基準波長λRR1A=825nm及びλRR2A=830nm(挿入図Aを参照)を反射するように構成された2つのセクションS1及びS2を有するマルチ・セグメント基準RWGバイオセンサ102Rを有する多波長基準ウエル175R1を含む。第2のセット350-2は、基準波長λRR2A=834.5nm及びλRR2B=837nm(挿入図Bを参照)を反射するように構成された2つのセクションS1及びS2を有するマルチ・セグメント基準RWGグレーティング102Rを有する多波長基準ウエル175R2を含む。第3のセット350-3は、基準波長λRR3A=840nm、λRR3B=842nm及びλRR3C=844nm(挿入図Cを参照)を反射するように構成された3つのセクションS1、S2及びS3を有するマルチ・セグメント基準RWGグレーティング102Rを有する多波長基準ウエル175R3を含む。
【0043】
その結果、ブロードバンド光源のスペクトルバンド幅λFWHM内の複数の波長における波長情報を提供する多波長基準マイクロプレート170Rが得られる。図14は図6と同様のプロットであり、SLD光源106の模式的な波長スペクトル例を示す。図14のプロットは、図13の基準マイクロプレート170Rの例における異なる基準ウエル175Rによって反射された7つの異なる基準波長λRRを示している。基準ウエル・セット350の数mは、必要な又は要望の波長範囲を満たすように選択することができる。
【0044】
図15Aは、安定なブロードバンド光源106を有する光学リーダ・システム100の例によって測定された、基準ウエル番号に対する波長ノイズ(ピコメートル)の変化のプロットである。「ノイズ」は、測定基準共鳴波長λRRに対する測定信号共鳴波長λRSの差である。標準の(従来技術)基準マイクロプレートが用いられ(破線)、また、本開示の多波長基準マイクロプレート170Rが用いられた(実線)。安定した光源106の場合、この2つのタイプのマイクロプレートは、波長ノイズの変化に関し、本質的に同じ安定した測定値を与える。
【0045】
図15Bは、光学リーダ・システムにおいて不安定なブロードバンド光源106が用いられたことを除いては、図15Aと同様のプロットである。図15Bのプロットは、従来技術の基準マイクロプレートが実質的に波長ノイズの変化を示さないことを明らかにし、本開示の多波長基準マイクロプレート170Rは、予想されるように、(偏光)光源出力スペクトルの変化による波長ノイズの有意な変化を示している。このように、従来技術の基準マイクロプレートは、光学リーダ・システムに測定値ノイズを生じさせる光源106のスペクトルの変化を検出することができない。
【0046】
多波長基準マイクロプレート170Rはエンドユーザによって使用され、分析評価(アッセイ)を行う前にシステム性能を確実にし、またはアッセイ時におけるリーダ制御として使用することができる。多波長基準マイクロプレート170Rは、従来技術の基準マイクロプレートよりもより現実的な顧客アッセイのシミュレーションを提供する。また、多波長基準プレート170Rは、単一の基準マイクロプレートに光学リーダ・システムの多波長(及び、フルスペクトルまで)の検証を提供することによってフィールドサポートの労力を単純化する点に留意すべきである。現在、フィールドサポート作業者が光学リーダの光スペクトルを完全に評価することが必要とされる場合、彼等は複数のマイクロプレートおよび追加の計測設備(ノッチフィルタ、その他)を携行しなければならない。
【0047】
添付の特許請求の範囲に規定される本願発明の範囲から逸脱することなく、本願明細書に記載されている好適な実施例に対してさまざまな改変をなすことができるのは当業者にとって明らかであろう。このように、本開示は添付の特許請求の範囲及びその均等の範囲内の改変及び変更をその範囲に含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長バンドを有する光源を有するラベル・インデペンデント光学リーダ用の多波長基準マイクロプレートであって、
複数の基準ウエルを支持する支持プレート、を有し、
少なくとも1つの前記基準ウエルは、前記光源の前記波長バンド内の2つ以上の異なる基準共鳴波長をそれぞれ反射する2つ以上の共鳴導波路グレーティング(RWG)セクションがその中に配された多波長基準ウエルとして構成されていることを特徴とするマイクロプレート。
【請求項2】
前記基準ウエルの全ては多波長基準ウエルとして構成されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロプレート。
【請求項3】
前記2つ以上のRWGセクションは連続していることを特徴とする請求項1記載のマイクロプレート。
【請求項4】
前記2つ以上のRWGセクションは互いに間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロプレート。
【請求項5】
前記2つ以上のRWGセクションは共通基板上に配置されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロプレート。
【請求項6】
前記2つ以上のRWGセクションは、それぞれが2つ以上の異なる基準共鳴波長をそれぞれ規定する2つ以上のグレーティングをそれぞれ規定する2つ以上の異なる厚さのコーティングを有することを特徴とする請求項1記載のマイクロプレート。
【請求項7】
前記マイクロプレートは2セット以上の多波長基準ウエルを含み、前記多波長基準ウエルは各々のセット内に前記2つ以上と同じ前記基準共鳴波長を有し、異なるセットは異なる2つ以上の基準共鳴波長を有することを特徴とする請求項1記載のマイクロプレート。
【請求項8】
前記多波長基準ウエルの各々は、前記光源波長バンド内において約1.3の屈折率を有する充填材料で充填されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロプレート。
【請求項9】
前記充填材料は、エラストマ、光エポキシまたはそれらの組合せからなることを特徴とする請求項8記載のマイクロプレート。
【請求項10】
波長バンドを有する光源を有するラベル・インデペンデント光学リーダ用の多波長基準マイクロプレートであって、
それぞれ2つ以上の基準共鳴波長を有する2つ以上のRWGセクションを含む基準共鳴導波路グレーティング(RWG)バイオセンサがそれぞれ配された複数の多波長基準ウエルを支持する支持プレートと、
少なくとも部分的に前記多波長基準ウエルの各々を充填する充填材料であって、前記光源波長バンド内において約1.3の屈折率を有する前記充填材料と、を有することを特徴とする多波長基準マイクロプレート。
【請求項11】
前記充填材料は、エラストマ、光エポキシまたはそれらの組合せからなることを特徴とする請求項10記載の多波長基準マイクロプレート。
【請求項12】
前記2つ以上のRWGセクションは連続していることを特徴とする請求項10記載の多波長基準マイクロプレート。
【請求項13】
前記2つ以上のRWGセクションは互いに間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項10記載の多波長基準マイクロプレート。
【請求項14】
前記2つ以上のRWGセクションはそれぞれ異なる厚さのコーティングを有することを特徴とする請求項10記載の多波長基準マイクロプレート。
【請求項15】
ラベル・インデペンデント光学リーダ・システムにおいて基準ウエルを有する基準マイクロプレートを使用して複数の基準共鳴波長を測定する方法であって、
少なくとも一つの基準ウエル内に、それぞれ異なる基準共鳴波長を有する2つ以上の共鳴導波路グレーティング(RWG)セクションを設けるステップと、
前記2つ以上のRWGセクションに照射してそれぞれの反射光を生成するステップと、
前記それぞれの反射光をスペクトル分析して前記2つ以上の基準共鳴波長を測定するステップと、を有することを特徴とする方法。
【請求項16】
前記2つ以上のRWGセクションは連続していることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記2つ以上のRWGセクションは間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記2つ以上のRWGセクションは共通基板上の分離セクションであることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記光源波長バンド内において約1.3の屈折率を有する充填材料で前記少なくとも一つの基準ウエルを充填するステップをさらに有し、前記充填材料は、エラストマ、光エポキシまたはそれらの組合せからなることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項20】
単一のグレーティングに単一のグレーティング周期を設け、異なるセクションに異なるコーティング厚さを設けて前記2つ以上のRWGセクションに2つ以上のグレーティング周期を形成することによって前記2つ以上のRWGセクションを画定するステップをさらに有することを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項1】
波長バンドを有する光源を有するラベル・インデペンデント光学リーダ用の多波長基準マイクロプレートであって、
複数の基準ウエルを支持する支持プレート、を有し、
少なくとも1つの前記基準ウエルは、前記光源の前記波長バンド内の2つ以上の異なる基準共鳴波長をそれぞれ反射する2つ以上の共鳴導波路グレーティング(RWG)セクションがその中に配された多波長基準ウエルとして構成されていることを特徴とするマイクロプレート。
【請求項2】
前記基準ウエルの全ては多波長基準ウエルとして構成されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロプレート。
【請求項3】
前記2つ以上のRWGセクションは連続していることを特徴とする請求項1記載のマイクロプレート。
【請求項4】
前記2つ以上のRWGセクションは互いに間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロプレート。
【請求項5】
前記2つ以上のRWGセクションは共通基板上に配置されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロプレート。
【請求項6】
前記2つ以上のRWGセクションは、それぞれが2つ以上の異なる基準共鳴波長をそれぞれ規定する2つ以上のグレーティングをそれぞれ規定する2つ以上の異なる厚さのコーティングを有することを特徴とする請求項1記載のマイクロプレート。
【請求項7】
前記マイクロプレートは2セット以上の多波長基準ウエルを含み、前記多波長基準ウエルは各々のセット内に前記2つ以上と同じ前記基準共鳴波長を有し、異なるセットは異なる2つ以上の基準共鳴波長を有することを特徴とする請求項1記載のマイクロプレート。
【請求項8】
前記多波長基準ウエルの各々は、前記光源波長バンド内において約1.3の屈折率を有する充填材料で充填されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロプレート。
【請求項9】
前記充填材料は、エラストマ、光エポキシまたはそれらの組合せからなることを特徴とする請求項8記載のマイクロプレート。
【請求項10】
波長バンドを有する光源を有するラベル・インデペンデント光学リーダ用の多波長基準マイクロプレートであって、
それぞれ2つ以上の基準共鳴波長を有する2つ以上のRWGセクションを含む基準共鳴導波路グレーティング(RWG)バイオセンサがそれぞれ配された複数の多波長基準ウエルを支持する支持プレートと、
少なくとも部分的に前記多波長基準ウエルの各々を充填する充填材料であって、前記光源波長バンド内において約1.3の屈折率を有する前記充填材料と、を有することを特徴とする多波長基準マイクロプレート。
【請求項11】
前記充填材料は、エラストマ、光エポキシまたはそれらの組合せからなることを特徴とする請求項10記載の多波長基準マイクロプレート。
【請求項12】
前記2つ以上のRWGセクションは連続していることを特徴とする請求項10記載の多波長基準マイクロプレート。
【請求項13】
前記2つ以上のRWGセクションは互いに間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項10記載の多波長基準マイクロプレート。
【請求項14】
前記2つ以上のRWGセクションはそれぞれ異なる厚さのコーティングを有することを特徴とする請求項10記載の多波長基準マイクロプレート。
【請求項15】
ラベル・インデペンデント光学リーダ・システムにおいて基準ウエルを有する基準マイクロプレートを使用して複数の基準共鳴波長を測定する方法であって、
少なくとも一つの基準ウエル内に、それぞれ異なる基準共鳴波長を有する2つ以上の共鳴導波路グレーティング(RWG)セクションを設けるステップと、
前記2つ以上のRWGセクションに照射してそれぞれの反射光を生成するステップと、
前記それぞれの反射光をスペクトル分析して前記2つ以上の基準共鳴波長を測定するステップと、を有することを特徴とする方法。
【請求項16】
前記2つ以上のRWGセクションは連続していることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記2つ以上のRWGセクションは間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記2つ以上のRWGセクションは共通基板上の分離セクションであることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記光源波長バンド内において約1.3の屈折率を有する充填材料で前記少なくとも一つの基準ウエルを充填するステップをさらに有し、前記充填材料は、エラストマ、光エポキシまたはそれらの組合せからなることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項20】
単一のグレーティングに単一のグレーティング周期を設け、異なるセクションに異なるコーティング厚さを設けて前記2つ以上のRWGセクションに2つ以上のグレーティング周期を形成することによって前記2つ以上のRWGセクションを画定するステップをさらに有することを特徴とする請求項15記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A−8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A−8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【公表番号】特表2013−509596(P2013−509596A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537163(P2012−537163)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/054949
【国際公開番号】WO2011/053902
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/054949
【国際公開番号】WO2011/053902
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
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