説明

ラマン増幅器、ラマン増幅システム、及び、ラマン増幅方法

【課題】製造するために要するコストを低減することが可能なラマン増幅器を提供すること。
【解決手段】ラマン増幅器1Dは、伝送路用光ファイバ2に接続された増幅用光ファイバ11と、励起光を発する半導体レーザ12と、を備える。加えて、ラマン増幅器1Dは、半導体レーザ12により発せられた励起光を、増幅用光ファイバ11、及び、伝送路用光ファイバ2の両方に入射させることにより、増幅用光ファイバ11、及び、伝送路用光ファイバ2の両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって上記光信号を増幅するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を伝送する光ファイバへ入射させる励起光を発するラマン増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
伝送路用光ファイバを介して光信号を伝送する光通信システムが知られている。この種の光通信システムは、励起光を伝送路用光ファイバに入射させることにより、ラマン散乱(光ファイバ内の分子振動と励起光との間の相互作用により励起光と異なる波長を有する光が散乱される現象)に基づく誘導放出によって光信号を増幅する。このとき、ラマン散乱に基づく誘導放出によって、励起光が有する波長よりも長い波長域にて、光信号が増幅される。
【0003】
例えば、石英ガラス製の光ファイバを用いた場合、励起光が有する波長よりも約100nm(13THz)だけ長い波長域にて光信号を増幅することができる。従って、励起光が有する波長を適切に選択することにより、任意の波長域にて光信号を増幅することができる。
【0004】
この種の光通信システムに含まれるラマン増幅器の一つとして、特許文献1に記載のラマン増幅器は、伝送路用光ファイバに接続された増幅用光ファイバと、励起光を発する第1の半導体レーザ(レーザ・ダイオード)と、励起光を発する第2の半導体レーザと、を備える。
【0005】
ラマン増幅器は、第1の半導体レーザが発した励起光を伝送路用光ファイバに入射させるとともに、第2の半導体レーザが発した励起光を増幅用光ファイバに入射させるように構成されている。これによれば、伝送路用光ファイバに入射される励起光のパワーを過大にすることなく、光信号のパワーを十分に大きくする(十分な大きさに増幅する)ことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−74344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記ラマン増幅器においては、第1の半導体レーザ及び第2の半導体レーザからなる2つの半導体レーザを組み込むことによりラマン増幅器を製造する必要がある。このため、ラマン増幅器を製造するために要するコストが過大であるという問題があった。
【0008】
このため、本発明の目的は、上述した課題である「製造するために要するコストが過大であること」を解決することが可能なラマン増幅器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため本発明の一形態であるラマン増幅器は、光信号を伝送する伝送路用光ファイバに接続されたラマン増幅器である。
【0010】
更に、このラマン増幅器は、
上記伝送路用光ファイバに接続された増幅用光ファイバと、
励起光を発する半導体レーザと、
を備え、
上記半導体レーザにより発せられた励起光を、上記増幅用光ファイバ、及び、上記伝送路用光ファイバの両方に入射させることにより、当該増幅用光ファイバ、及び、当該伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって上記光信号を増幅するように構成される。
【0011】
また、本発明の他の形態であるラマン増幅システムは、
光信号を伝送する伝送路用光ファイバと、第1のラマン増幅器と、第2のラマン増幅器と、を含むシステムである。
【0012】
更に、上記第1のラマン増幅器は、
上記光信号の伝送方向における下流側にて上記伝送路用光ファイバに接続された第1の増幅用光ファイバと、
励起光を発する第1の半導体レーザと、
を備えるとともに、
上記第1の半導体レーザにより発せられた励起光を、上記光信号の伝送方向における上流へ向けて、上記第1の増幅用光ファイバに入射させ、且つ、当該励起光を上記伝送路用光ファイバへ入射させることにより、当該第1の増幅用光ファイバ、及び、当該伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって上記光信号を増幅するように構成される。
【0013】
加えて、上記第2のラマン増幅器は、
上記光信号の伝送方向における上流側にて上記伝送路用光ファイバに接続された第2の増幅用光ファイバと、
励起光を発する第2の半導体レーザと、
を備えるとともに、
上記第2の半導体レーザにより発せられた励起光を、上記光信号の伝送方向における下流へ向けて、上記第2の増幅用光ファイバに入射させ、且つ、当該励起光を上記伝送路用光ファイバへ入射させることにより、当該第2の増幅用光ファイバ、及び、当該伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって上記光信号を増幅するように構成される。
【0014】
また、本発明の他の形態であるラマン増幅方法は、
光信号を伝送する伝送路用光ファイバに接続されたラマン増幅器に適用され、
半導体レーザが励起光を発し、
上記半導体レーザにより発せられた励起光が、上記伝送路用光ファイバに接続された増幅用光ファイバ、及び、当該伝送路用光ファイバの両方に入射し、
上記増幅用光ファイバ、及び、上記伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって上記光信号を増幅する方法である。
【0015】
また、本発明の他の形態であるラマン増幅方法は、
光信号を伝送する伝送路用光ファイバと、
上記光信号の伝送方向における下流側にて上記伝送路用光ファイバに接続された第1の増幅用光ファイバを備える第1のラマン増幅器と、
上記光信号の伝送方向における上流側にて上記伝送路用光ファイバに接続された第2の増幅用光ファイバを備える第2のラマン増幅器と、
を含むラマン増幅システムに適用され、
第1の半導体レーザが励起光を発し、
上記第1の半導体レーザにより発せられた励起光が、上記光信号の伝送方向における上流へ向けて、上記第1の増幅用光ファイバに入射し、
上記第1の半導体レーザにより発せられた励起光が、上記伝送路用光ファイバへ入射し、
上記第1の増幅用光ファイバ、及び、上記伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって上記光信号を増幅し、
第2の半導体レーザが励起光を発し、
上記第2の半導体レーザにより発せられた励起光が、上記光信号の伝送方向における下流へ向けて、上記第2の増幅用光ファイバに入射し、
上記第2の半導体レーザにより発せられた励起光が、上記伝送路用光ファイバへ入射し、
上記第2の増幅用光ファイバ、及び、上記伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって上記光信号を増幅する方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のように構成されることにより、製造するために要するコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るラマン増幅器の概略構成を表す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るラマン増幅器の概略構成を表す図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るラマン増幅システムの概略構成を表す図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係るラマン増幅器の概略構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る、ラマン増幅器、ラマン増幅システム、及び、ラマン増幅方法、の各実施形態について図1〜図4を参照しながら説明する。
【0019】
<第1実施形態>
(構成)
図1に示したように、第1実施形態に係るラマン増幅器1は、ラマン散乱に基づく誘導放出によって光信号を増幅する増幅器である。ラマン増幅器1は、光信号を伝送する伝送路用光ファイバ2に接続される。
【0020】
なお、光信号の帯域は、Oバンド、Eバンド、Sバンド、Cバンド、及び、Lバンドのうちのいずれか1つからなる単一帯域であってもよいし、複数を併せた帯域(複合帯域)であってもよい。
【0021】
本例では、ラマン増幅器1は、伝送路用光ファイバ2により伝送される光信号を中継(転送)する光中継装置内に配設される。なお、ラマン増幅器1は、伝送路用光ファイバ2により伝送される光信号を受信する光受信装置内に配設されていてもよい。
【0022】
ラマン増幅器1は、増幅用光ファイバ11と、半導体レーザ12と、受光素子13と、分岐カプラ14と、WDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラ15と、光信号入力ポート16と、を備える。
【0023】
増幅用光ファイバ11は、伝送路用光ファイバ2が伝送する光信号の伝送方向(矢印A1)における下流側にて伝送路用光ファイバ2に接続されている。具体的には、増幅用光ファイバ11は、増幅用光ファイバ11の端部に設けられた光信号入力ポート16と、伝送路用光ファイバ2の端部に設けられたコネクタ21と、が接続されることにより、伝送路用光ファイバ2に接続されている。
【0024】
このような構成により、伝送路用光ファイバ2により伝送された光信号は、増幅用光ファイバ11の、光信号入力ポート16と逆側の端部に設けられた光信号出力ポート17から出力される。
【0025】
増幅用光ファイバ11は、後述する励起光(半導体レーザ12により発せられた励起光)が入射されている状態において、シングルモードファイバ(SMF;Single Mode Fiber)よりも光信号を大きく増幅する光ファイバである。
【0026】
本例では、増幅用光ファイバ11は、分散補償ファイバ(DCF;Dispersion Compensating Fiber)である。なお、増幅用光ファイバ11は、TW−RS(TrueWave(登録商標) Reduced Slope Fiber)、E−LEAF(Enhanced Large Effective Area Fiber)、又は、分散シフトファイバ(DSF;Dispersion Shifted Fiber)であってもよい。
【0027】
半導体レーザ12は、半導体の再結合発光を利用して、励起光としてのレーザを発する。半導体レーザ12は、レーザ・ダイオード、又は、ダイオード・レーザとも呼ばれる。
受光素子13は、半導体レーザ12により発せられた励起光を受光することにより、励起光のパワーを検出する素子(本例では、フォト・ディテクタ)である。
【0028】
ラマン増幅器1は、受光素子13により検出された励起光のパワーに基づいて、半導体レーザ12へ供給する電力の大きさを制御することにより、半導体レーザ12が発する励起光のパワーを制御する。
【0029】
分岐カプラ14は、半導体レーザ12により発せられた励起光を分岐する。これにより、半導体レーザ12により発せられた励起光は、受光素子13へ入射する(矢印B3)とともに、WDMカプラ15へ入射する(矢印B2)。
【0030】
WDMカプラ15は、増幅用光ファイバ11に配設されている。WDMカプラ15は、入射された励起光を、伝送路用光ファイバ2が伝送する光信号の伝送方向(矢印A1)と逆方向(矢印B2)へ(即ち、伝送方向における上流へ向けて)、増幅用光ファイバ11に入射させる。
【0031】
増幅用光ファイバ11は、励起光が入射されている状態において、伝送中の光信号を、ラマン散乱に基づく誘導放出によって増幅する。更に、増幅用光ファイバ11は、入射された励起光を伝送路用光ファイバ2へ伝送する。これにより、励起光は、伝送路用光ファイバ2に入射される。
【0032】
伝送路用光ファイバ2は、励起光が入射されている状態において、伝送中の光信号を、ラマン散乱に基づく誘導放出によって増幅する。
【0033】
このような構成によれば、増幅用光ファイバ11、及び、伝送路用光ファイバ2の両方にてラマン散乱に基づく誘導放出が生じる。これにより、増幅用光ファイバ11、及び、伝送路用光ファイバ2の両方にて光信号が増幅される。
【0034】
以上、説明したように、本発明の第1実施形態に係るラマン増幅器1によれば、伝送路用光ファイバ2に入射される励起光のパワーを過大にすることなく、光信号のパワーを十分に大きくする(十分な大きさに増幅する)ことができる。即ち、ラマン増幅器1が受信する光信号のパワーを十分な大きさに増幅することができる。
【0035】
更に、第1実施形態に係るラマン増幅器1においては、1つの半導体レーザ12のみが用いられる。従って、2つの半導体レーザを設けたラマン増幅器と比較して、ラマン増幅器1を製造するために要するコストを低減することができる。
【0036】
また、利得波長特性に最も影響を与える励起光強度が強い部位でのファイバが一意に決定していることにより、利得波長特性の変動を比較的抑えることが可能である。
【0037】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るラマン増幅器について説明する。第2実施形態に係るシラマン増幅器は、上記第1実施形態に係るラマン増幅器に対して、光信号の伝送方向における上流側にて伝送路用光ファイバに接続されている点において相違している。従って、以下、かかる相違点を中心として説明する。
【0038】
第2実施形態に係るラマン増幅器1Aは、第1実施形態に係るラマン増幅器1と同様の構成を有する。
本例では、ラマン増幅器1Aは、光信号を受信し、受信した光信号を伝送路用光ファイバ2へ出力する光中継装置内に配設される。なお、ラマン増幅器1Aは、光信号を生成し、生成した光信号を伝送路用光ファイバ2へ出力する光送信装置内に配設されていてもよい。
【0039】
増幅用光ファイバ11は、伝送路用光ファイバ2が伝送する光信号の伝送方向(矢印C1)における上流側にて伝送路用光ファイバ2に接続されている。具体的には、増幅用光ファイバ11は、増幅用光ファイバ11の端部に設けられた光信号入力ポート16と、伝送路用光ファイバ2の端部に設けられたコネクタ21と、が接続されることにより、伝送路用光ファイバ2に接続されている。
【0040】
このような構成により、増幅用光ファイバ11の、光信号入力ポート16と逆側の端部に設けられた光信号出力ポート17を介してラマン増幅器1Aに入力された光信号は、光信号入力ポート16から伝送路用光ファイバ2へ出力される。
【0041】
WDMカプラ15は、増幅用光ファイバ11に配設されている。WDMカプラ15は、入射された励起光を、伝送路用光ファイバ2が伝送する光信号の伝送方向(矢印C1)と同方向(矢印B2)へ(即ち、伝送方向における下流へ向けて)、増幅用光ファイバ11に入射させる。
【0042】
増幅用光ファイバ11は、励起光が入射されている状態において、伝送中の光信号を、ラマン散乱に基づく誘導放出によって増幅する。更に、増幅用光ファイバ11は、入射された励起光を伝送路用光ファイバ2へ伝送する。これにより、励起光は、伝送路用光ファイバ2に入射される。
【0043】
伝送路用光ファイバ2は、励起光が入射されている状態において、伝送中の光信号を、ラマン散乱に基づく誘導放出によって増幅する。
【0044】
このような構成によれば、増幅用光ファイバ11、及び、伝送路用光ファイバ2の両方にてラマン散乱に基づく誘導放出が生じる。これにより、増幅用光ファイバ11、及び、伝送路用光ファイバ2の両方にて光信号が増幅される。
【0045】
以上、説明したように、本発明の第2実施形態に係るラマン増幅器1Aによれば、伝送路用光ファイバ2に入射される励起光のパワーを過大にすることなく、光信号のパワーを十分に大きくする(十分な大きさに増幅する)ことができる。即ち、ラマン増幅器1Aが送信(出力)する光信号のパワーを十分な大きさに増幅することができる。
【0046】
更に、第2実施形態に係るラマン増幅器1Aにおいては、1つの半導体レーザ12のみが用いられる。従って、2つの半導体レーザを設けたラマン増幅器と比較して、ラマン増幅器1Aを製造するために要するコストを低減することができる。
【0047】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るラマン増幅システムについて説明する。
図3に示したように、第3実施形態に係るラマン増幅システム100は、第2実施形態に係るラマン増幅器1Aと同様の構成を有する第1のラマン増幅器1Bと、第1実施形態に係るラマン増幅器1と同様の構成を有する第2のラマン増幅器1Cと、伝送路用光ファイバ2と、を含む。
【0048】
伝送路用光ファイバ2の、伝送路用光ファイバ2が伝送する光信号の伝送方向(矢印D1)における上流側の端部には、コネクタ21が設けられている。コネクタ21は、第1のラマン増幅器1Bの光信号入力ポート16に接続されている。
【0049】
伝送路用光ファイバ2の、光信号の伝送方向(矢印D1)における下流側の端部には、コネクタ22が設けられている。コネクタ22は、第2のラマン増幅器1Cの光信号入力ポート16に接続されている。
【0050】
このような構成によれば、第1のラマン増幅器1Bの増幅用光ファイバ11、第2のラマン増幅器1Cの増幅用光ファイバ11、及び、伝送路用光ファイバ2のすべてにてラマン散乱に基づく誘導放出が生じる。これにより、第1のラマン増幅器1Bの増幅用光ファイバ11、第2のラマン増幅器1Cの増幅用光ファイバ11、及び、伝送路用光ファイバ2のすべてにて光信号が増幅される。
【0051】
以上、説明したように、本発明の第3実施形態に係るラマン増幅システム100によれば、伝送路用光ファイバ2に入射される励起光のパワーを過大にすることなく、光信号のパワーを十分に大きくする(十分な大きさに増幅する)ことができる。即ち、第2のラマン増幅器1Cが受信する光信号のパワーを十分な大きさに増幅することができる。
【0052】
更に、第3実施形態に係る各ラマン増幅器1B,1Cにおいては、1つの半導体レーザ12のみが用いられる。従って、2つの半導体レーザを設けたラマン増幅器と比較して、各ラマン増幅器1B,1Cを製造するために要するコストを低減することができる。
【0053】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係るラマン増幅器について図4を参照しながら説明する。
第4実施形態に係るラマン増幅器1Dは、光信号を伝送する伝送路用光ファイバ2に接続されたラマン増幅器である。
【0054】
更に、このラマン増幅器1Dは、
伝送路用光ファイバ2に接続された増幅用光ファイバ11と、
励起光を発する半導体レーザ12と、
を備える。
【0055】
加えて、ラマン増幅器1Dは、
半導体レーザ12により発せられた励起光を、増幅用光ファイバ11、及び、伝送路用光ファイバ2の両方に入射させることにより、増幅用光ファイバ11、及び、伝送路用光ファイバ2の両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって上記光信号を増幅するように構成される。
【0056】
これによれば、増幅用光ファイバ11、及び、伝送路用光ファイバ2の両方にてラマン散乱に基づく誘導放出が生じる。これにより、伝送路用光ファイバ2に入射される励起光のパワーを過大にすることなく、光信号のパワーを十分に大きくする(十分な大きさに増幅する)ことができる。更に、ラマン増幅器1Dにおいては、1つの半導体レーザ12が用いられる。従って、2つの半導体レーザを設けたラマン増幅器と比較して、ラマン増幅器1Dを製造するために要するコストを低減することができる。
【0057】
以上、上記実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成及び詳細に、本願発明の範囲内において当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0058】
また、上記実施形態の他の変形例として、上述した実施形態及び変形例の任意の組み合わせが採用されてもよい。
【0059】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のように記載され得るが、以下には限られない。
【0060】
(付記1)
光信号を伝送する伝送路用光ファイバに接続されたラマン増幅器であって、
前記伝送路用光ファイバに接続された増幅用光ファイバと、
励起光を発する半導体レーザと、
を備え、
前記半導体レーザにより発せられた励起光を、前記増幅用光ファイバ、及び、前記伝送路用光ファイバの両方に入射させることにより、当該増幅用光ファイバ、及び、当該伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって前記光信号を増幅するように構成されたラマン増幅器。
【0061】
これによれば、増幅用光ファイバ、及び、伝送路用光ファイバの両方にてラマン散乱に基づく誘導放出が生じる。これにより、伝送路用光ファイバに入射される励起光のパワーを過大にすることなく、光信号のパワーを十分に大きくする(十分な大きさに増幅する)ことができる。更に、上記ラマン増幅器においては、1つの半導体レーザが用いられる。従って、2つの半導体レーザを設けたラマン増幅器と比較して、ラマン増幅器を製造するために要するコストを低減することができる。
【0062】
(付記2)
付記1に記載のラマン増幅器であって、
前記増幅用光ファイバは、前記光信号の伝送方向における下流側にて前記伝送路用光ファイバに接続され、
前記ラマン増幅器は、前記半導体レーザにより発せられた励起光を、前記光信号の伝送方向における上流へ向けて、前記増幅用光ファイバに入射させるように構成されたラマン増幅器。
【0063】
これによれば、ラマン増幅器が受信する光信号のパワーを十分な大きさに増幅することができる。
【0064】
(付記3)
付記1に記載のラマン増幅器であって、
前記増幅用光ファイバは、前記光信号の伝送方向における上流側にて前記伝送路用光ファイバに接続され、
前記ラマン増幅器は、前記半導体レーザにより発せられた励起光を、前記光信号の伝送方向における下流へ向けて、前記増幅用光ファイバに入射させるように構成されたラマン増幅器。
【0065】
これによれば、ラマン増幅器が送信する光信号のパワーを十分な大きさに増幅することができる。
【0066】
(付記4)
付記1乃至付記3のいずれか一項に記載のラマン増幅器であって、
前記増幅用光ファイバは、前記励起光が入射されている状態において、シングルモードファイバ(SMF;Single Mode Fiber)よりも前記光信号を大きく増幅する光ファイバであるラマン増幅器。
【0067】
(付記5)
付記1乃至付記4のいずれか一項に記載のラマン増幅器であって、
前記増幅用光ファイバは、TW−RS(TrueWave(登録商標) Reduced Slope Fiber)、E−LEAF(Enhanced Large Effective Area Fiber)、分散シフトファイバ(DSF;Dispersion Shifted Fiber)、又は、分散補償ファイバ(DCF;Dispersion Compensating Fiber)であるラマン増幅器。
【0068】
(付記6)
光信号を伝送する伝送路用光ファイバと、
第1のラマン増幅器と、
第2のラマン増幅器と、
を含むラマン増幅システムであって、
前記第1のラマン増幅器は、
前記光信号の伝送方向における下流側にて前記伝送路用光ファイバに接続された第1の増幅用光ファイバと、
励起光を発する第1の半導体レーザと、
を備えるとともに、
前記第1の半導体レーザにより発せられた励起光を、前記光信号の伝送方向における上流へ向けて、前記第1の増幅用光ファイバに入射させ、且つ、当該励起光を前記伝送路用光ファイバへ入射させることにより、当該第1の増幅用光ファイバ、及び、当該伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって前記光信号を増幅するように構成され、
前記第2のラマン増幅器は、
前記光信号の伝送方向における上流側にて前記伝送路用光ファイバに接続された第2の増幅用光ファイバと、
励起光を発する第2の半導体レーザと、
を備えるとともに、
前記第2の半導体レーザにより発せられた励起光を、前記光信号の伝送方向における下流へ向けて、前記第2の増幅用光ファイバに入射させ、且つ、当該励起光を前記伝送路用光ファイバへ入射させることにより、当該第2の増幅用光ファイバ、及び、当該伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって前記光信号を増幅するように構成されたラマン増幅システム。
【0069】
(付記7)
光信号を伝送する伝送路用光ファイバに接続されたラマン増幅器に適用され、
半導体レーザが励起光を発し、
前記半導体レーザにより発せられた励起光が、前記伝送路用光ファイバに接続された増幅用光ファイバ、及び、当該伝送路用光ファイバの両方に入射し、
前記増幅用光ファイバ、及び、前記伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって前記光信号を増幅する、ラマン増幅方法。
【0070】
(付記8)
付記7に記載のラマン増幅方法であって、
前記増幅用光ファイバは、前記光信号の伝送方向における下流側にて前記伝送路用光ファイバに接続され、
前記半導体レーザにより発せられた励起光が、前記光信号の伝送方向における上流へ向けて前記増幅用光ファイバに入射するように構成されたラマン増幅方法。
【0071】
(付記9)
付記7に記載のラマン増幅方法であって、
前記増幅用光ファイバは、前記光信号の伝送方向における上流側にて前記伝送路用光ファイバに接続され、
前記半導体レーザにより発せられた励起光が、前記光信号の伝送方向における下流へ向けて、前記増幅用光ファイバに入射するように構成されたラマン増幅方法。
【0072】
(付記10)
光信号を伝送する伝送路用光ファイバと、
前記光信号の伝送方向における下流側にて前記伝送路用光ファイバに接続された第1の増幅用光ファイバを備える第1のラマン増幅器と、
前記光信号の伝送方向における上流側にて前記伝送路用光ファイバに接続された第2の増幅用光ファイバを備える第2のラマン増幅器と、
を含むラマン増幅システムに適用され、
第1の半導体レーザが励起光を発し、
前記第1の半導体レーザにより発せられた励起光が、前記光信号の伝送方向における上流へ向けて、前記第1の増幅用光ファイバに入射し、
前記第1の半導体レーザにより発せられた励起光が、前記伝送路用光ファイバへ入射し、
前記第1の増幅用光ファイバ、及び、前記伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって前記光信号を増幅し、
第2の半導体レーザが励起光を発し、
前記第2の半導体レーザにより発せられた励起光が、前記光信号の伝送方向における下流へ向けて、前記第2の増幅用光ファイバに入射し、
前記第2の半導体レーザにより発せられた励起光が、前記伝送路用光ファイバへ入射し、
前記第2の増幅用光ファイバ、及び、前記伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって前記光信号を増幅する、ラマン増幅方法。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、光信号を伝送する光ファイバへ入射させる励起光を発するラマン増幅器等に適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 ラマン増幅器
1A ラマン増幅器
1B 第1のラマン増幅器
1C 第2のラマン増幅器
1D ラマン増幅器
2 伝送路用光ファイバ
11 増幅用光ファイバ
12 半導体レーザ
13 受光素子
14 分岐カプラ
15 WDMカプラ
16 光信号入力ポート
17 光信号出力ポート
21 コネクタ
22 コネクタ
100 ラマン増幅システム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を伝送する伝送路用光ファイバに接続されたラマン増幅器であって、
前記伝送路用光ファイバに接続された増幅用光ファイバと、
励起光を発する半導体レーザと、
を備え、
前記半導体レーザにより発せられた励起光を、前記増幅用光ファイバ、及び、前記伝送路用光ファイバの両方に入射させることにより、当該増幅用光ファイバ、及び、当該伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって前記光信号を増幅するように構成されたラマン増幅器。
【請求項2】
請求項1に記載のラマン増幅器であって、
前記増幅用光ファイバは、前記光信号の伝送方向における下流側にて前記伝送路用光ファイバに接続され、
前記ラマン増幅器は、前記半導体レーザにより発せられた励起光を、前記光信号の伝送方向における上流へ向けて、前記増幅用光ファイバに入射させるように構成されたラマン増幅器。
【請求項3】
請求項1に記載のラマン増幅器であって、
前記増幅用光ファイバは、前記光信号の伝送方向における上流側にて前記伝送路用光ファイバに接続され、
前記ラマン増幅器は、前記半導体レーザにより発せられた励起光を、前記光信号の伝送方向における下流へ向けて、前記増幅用光ファイバに入射させるように構成されたラマン増幅器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のラマン増幅器であって、
前記増幅用光ファイバは、前記励起光が入射されている状態において、シングルモードファイバ(SMF;Single Mode Fiber)よりも前記光信号を大きく増幅する光ファイバであるラマン増幅器。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のラマン増幅器であって、
前記増幅用光ファイバは、TW−RS(TrueWave(登録商標) Reduced Slope Fiber)、E−LEAF(Enhanced Large Effective Area Fiber)、分散シフトファイバ(DSF;Dispersion Shifted Fiber)、又は、分散補償ファイバ(DCF;Dispersion Compensating Fiber)であるラマン増幅器。
【請求項6】
光信号を伝送する伝送路用光ファイバと、
第1のラマン増幅器と、
第2のラマン増幅器と、
を含むラマン増幅システムであって、
前記第1のラマン増幅器は、
前記光信号の伝送方向における下流側にて前記伝送路用光ファイバに接続された第1の増幅用光ファイバと、
励起光を発する第1の半導体レーザと、
を備えるとともに、
前記第1の半導体レーザにより発せられた励起光を、前記光信号の伝送方向における上流へ向けて、前記第1の増幅用光ファイバに入射させ、且つ、当該励起光を前記伝送路用光ファイバへ入射させることにより、当該第1の増幅用光ファイバ、及び、当該伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって前記光信号を増幅するように構成され、
前記第2のラマン増幅器は、
前記光信号の伝送方向における上流側にて前記伝送路用光ファイバに接続された第2の増幅用光ファイバと、
励起光を発する第2の半導体レーザと、
を備えるとともに、
前記第2の半導体レーザにより発せられた励起光を、前記光信号の伝送方向における下流へ向けて、前記第2の増幅用光ファイバに入射させ、且つ、当該励起光を前記伝送路用光ファイバへ入射させることにより、当該第2の増幅用光ファイバ、及び、当該伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって前記光信号を増幅するように構成されたラマン増幅システム。
【請求項7】
光信号を伝送する伝送路用光ファイバに接続されたラマン増幅器に適用され、
半導体レーザが励起光を発し、
前記半導体レーザにより発せられた励起光が、前記伝送路用光ファイバに接続された増幅用光ファイバ、及び、当該伝送路用光ファイバの両方に入射し、
前記増幅用光ファイバ、及び、前記伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって前記光信号を増幅する、ラマン増幅方法。
【請求項8】
請求項7に記載のラマン増幅方法であって、
前記増幅用光ファイバは、前記光信号の伝送方向における下流側にて前記伝送路用光ファイバに接続され、
前記半導体レーザにより発せられた励起光が、前記光信号の伝送方向における上流へ向けて前記増幅用光ファイバに入射するように構成されたラマン増幅方法。
【請求項9】
請求項7に記載のラマン増幅方法であって、
前記増幅用光ファイバは、前記光信号の伝送方向における上流側にて前記伝送路用光ファイバに接続され、
前記半導体レーザにより発せられた励起光が、前記光信号の伝送方向における下流へ向けて、前記増幅用光ファイバに入射するように構成されたラマン増幅方法。
【請求項10】
光信号を伝送する伝送路用光ファイバと、
前記光信号の伝送方向における下流側にて前記伝送路用光ファイバに接続された第1の増幅用光ファイバを備える第1のラマン増幅器と、
前記光信号の伝送方向における上流側にて前記伝送路用光ファイバに接続された第2の増幅用光ファイバを備える第2のラマン増幅器と、
を含むラマン増幅システムに適用され、
第1の半導体レーザが励起光を発し、
前記第1の半導体レーザにより発せられた励起光が、前記光信号の伝送方向における上流へ向けて、前記第1の増幅用光ファイバに入射し、
前記第1の半導体レーザにより発せられた励起光が、前記伝送路用光ファイバへ入射し、
前記第1の増幅用光ファイバ、及び、前記伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって前記光信号を増幅し、
第2の半導体レーザが励起光を発し、
前記第2の半導体レーザにより発せられた励起光が、前記光信号の伝送方向における下流へ向けて、前記第2の増幅用光ファイバに入射し、
前記第2の半導体レーザにより発せられた励起光が、前記伝送路用光ファイバへ入射し、
前記第2の増幅用光ファイバ、及び、前記伝送路用光ファイバの両方にて、ラマン散乱に基づく誘導放出によって前記光信号を増幅する、ラマン増幅方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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