説明

ラミネート型酸化性ガスインジケーター及び酸化性ガス検知方法

【課題】薄型で使用前の管理・保管が比較的容易な酸化性ガスインジケーターを提供する。
【解決手段】変色性シート及び透明性シートを含む積層体であって、(1)変色性シート及び透明性シートは、変色性シートが透明性シートに挟持されるような状態で積層されており、(2)変色性シートは、透明性シートによって外気との接触が遮断されている、(3)変色性シートは、酸化性ガスに接触することにより変色する変色層が繊維質基材上の一部又は全部に形成されてなるものである、ことを特徴とするラミネート型酸化性ガスインジケーターに係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なラミネート型酸化性ガスインジケーター及び酸化性ガス検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンガスをはじめとして酸化性ガスの検知は、さまざまな分野で利用されている。例えば、酸化性ガス(例えばオゾンガス)で被処理物の滅菌等を行う場合、被処理物が滅菌処理済みであるかどうかを確認するための方法としてガス検知インジケーターを用いる方法がある。すなわち、ガス検知インジケーターを被処理物又は滅菌装置に設け、その変色状態を調べることにより、被処理物が酸化性ガスに曝露されたことを確認することができる。
【0003】
ガス検知インジケーターとしては、特に小型インジケーターを用いる検知方法がその簡便性、経済性等という点で脚光を浴びている。例えば、ガスインジケーター本体を略板状に形成するとともにその内部に検知すべき特定ガスを導入する通路を形成し、その通路の内壁には通路に沿って特定ガスと反応して変色する指示薬層を貼り付け、インジケーター本体に特定ガスが直ちに接することができる所定の面積の開口部を形成するとともにその開口部に指示薬層を設けたことを特徴とする高感度型ガスインジケーター等が知られている(特許文献1、特許文献2)。また例えば、容器中に変色性ガス検知材料が装填されたガス検知装置であり、容器の開口部から底面部にかけてガス通路用空間を有し、開口部と平行な容器断面積が開口部から底面部にわたって次第に小さくなる容器形状を有するガス検知装置が知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平8−122318号公報
【特許文献2】特開平7−49342号公報
【特許文献3】特開2000−303617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のインジケーターでは、装置が比較的大型であり、さらに小型化・薄型化する必要がある。また、従来品は、使用する前に変色することがないように厳重に管理・保管しなければならず、この点においても改善の余地がある。
【0005】
従って、本発明の主な目的は、薄型で使用前の管理・保管が比較的容易な酸化性ガスインジケーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の従来技術の問題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の構造からなるインジケーターが上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記のラミネート型酸化性ガスインジケーター及び酸化性ガス検知方法に係る。
1. 変色性シート及び透明性シートを含む積層体であって、
(1)変色性シート及び透明性シートは、変色性シートが透明性シートに挟持されるような状態で積層されており、
(2)変色性シートは、透明性シートによって外気との接触が遮断され、
(3)変色性シートは、酸化性ガスに接触することにより変色する変色層が繊維質基材上の一部又は全部に形成されてなるものである、
ことを特徴とするラミネート型酸化性ガスインジケーター。
2. 変色性シート及び透明性シートとの間にスペーサーが配置されている、前記項1に記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
3. 前記スペーサーが、変色層と透明性シートとの間において、変色層の長さ方向にわたり配置されている、前記項2に記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
4. 変色層、透明性シート及びスペーサーにより、酸化性ガスの通路が形成されている、前記項2又は3に記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
5. 変色層が、アントラキノン系染料、アゾ系染料、オキサジン系染料、チアジン系染料、メチン系染料及びトリアリールメタン系染料の少なくとも1種を含むインキ組成物により形成されている、前記項1〜5のいずれかに記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
6. インキ組成物が、さらに界面活性剤、増量剤及びバインダーの少なくとも1種を含む、前記項5に記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
7. 変色性シートが長方形である、前記項1〜6のいずれかに記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
8. 変色層が繊維質基材上に複数形成されている、前記項1〜7のいずれかに記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
9. 変色性シート及び/又は透明性シート上に、変色層の変色領域に応じたCT値(酸化性ガス濃度×曝露時間)が表記されている、前記項1〜8のいずれかに記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
10. 前記項1〜9のいずれかに記載のラミネート型酸化性ガスインジケーターを用いて酸化性ガスを検知する方法であって、
(1)ラミネート型酸化性ガスインジケーターの端部を切って変色性シート断面を酸化性ガス雰囲気下に曝露させる工程、
(2)変色性シートの変色状態を確認する工程
を含む酸化性ガスの検知方法。
11. 前記項1〜9のいずれかに記載のラミネート型酸化性ガスインジケーターを用いて酸化性ガスによるCT値を測定する方法であって、
(1)ラミネート型酸化性ガスインジケーターの端部を切って変色性シート断面を酸化性ガス雰囲気下に曝露させる工程、
(2)変色性シートの変色状態を確認する工程、
(3)予め用意したCT値と変色状態との関係からCT値を求める工程、
を含む酸化性ガスの検知方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のラミネート型酸化性ガスインジケーターによれば、変色性シートと透明性シートとの積層体から構成されているので、小型かつ薄型のインジケーターを提供することができる。特に、厚みは3mm以下(特に0.5〜2mm)というこれまでには存在しなかった薄型インジケーターを提供することも可能となる。
【0009】
また、本発明インジケーターは、使用前は変色性シートが透明性シートにより密封された状態におかれるため、保管を容易かつ確実に行うことができる。従来のインジケーターのように保管中に変色するということはない。
【0010】
さらに、本発明インジケーターでは、変色性シートと透明性シートとの密着度合、隙間の大きさ等を調整することにより、さまざまな濃度の酸化性ガスの検知に用いることができる。特に100〜1000ppmという高濃度の酸化性ガスの検知にも有用である。また、CT値としては、通常1万〜30万ppm・minという比較的大きな領域についての検知も可能である。
【0011】
本発明では、変色層と透明性シートとの間にスペーサーを介在させること(場合によっては製造時に介在させたスペーサーを使用時に取り外すこと)により酸化性ガスの通路を形成することができる。これにより、インジケーターの奥のほうまでより確実に酸化性ガスを流通させることができる結果、変色幅を大きくして感度をいっそう高めることが可能となる。
【0012】
本発明のラミネート型酸化性ガスインジケーターは、医療分野、食品分野、精密機器分野、生活衛生分野、電化製品分野等の用途に幅広く使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1.ラミネート型酸化性ガスインジケーター
本発明のラミネート型酸化性ガスインジケーターは、変色性シート及び透明性シートを含む積層体であって、
(1)変色性シート及び透明性シートは、変色性シートが透明性シートに挟持されるような状態で積層されており、
(2)変色性シートは、透明性シートによって外気との接触が遮断され、
(3)変色性シートは、酸化性ガスに接触することにより変色する変色層が繊維質基材上の一部又は全部に形成されてなるものである、
ことを特徴とする。
【0014】
本発明のラミネート型酸化性ガスインジケーターを図面に基づいて説明する。図1には、本発明インジケーターの一例の平面図を示す。また、そのA−A’断面を図2に示す。
【0015】
図2にも示すように、変色性シート1は、透明性シート2、2に挟まれるような状態で積層されている。すなわち、透明性シートは、変色性シートよりも大きな面積を有しており、変色性シートの周辺領域では透明性シートどうし(密着しろ)が積層・密着された状態になっている。図2では、透明性シートどうしの境界線3が存在しているが、熱融着等により一体的に成形されていても良い。このように、変色性シートの周辺領域では透明性シートが密着されていることにより、変色性シートは外気との接触が遮断された状態となる。これによって、使用前の変色を効果的に防止することができる。
【0016】
本発明は、上記(1)〜(3)の特徴を有する限りは、図1の構造に限定されない。例えば、図7に示すように、2つの円盤状透明性シート2で円盤状変色シート(図示せず)を挟持したものであっても良い。この場合は、変色層まで貫通する穴をX部分に開けることにより、変色層を酸化性ガスに晒すことができる。この場合は、Xから同心円状に変色が起こる。
【0017】
変色性シートと透明性シートとは密着(接着)されていても良いし、密着していなくても良い。また、変色性シートと透明性シートとの間に隙間があっても良いし、隙間がなくても良い。隙間には、例えば透明性シートその他の樹脂シートを棒状、短冊状等に加工したもの、木質材料等を棒状に加工したもの等をスペーサーとして介在させても良い。スペーサーを介在させることにより、酸化性ガスの通路を形成することができる。図4には、スペーサーを配置した場合の断面図を示す。図4では、スペーサー4は、変色層3の上に配置される。このとき、図5に示すように、透明性シート2が隅部5まで完全に追従しないように設計すれば、効率的に通路5を形成することができる。
【0018】
スペーサーを用いる場合、特に、変色層と透明性シートとの間において、変色層の長さ方向にわたりスペーサーが配置されていることが好ましい。図6では、スペーサー4は、変色層3の長さとほぼ同じ長さに設計されている。
【0019】
本発明インジケーターの使用時において、スペーサーは付けたままで使用しても良いし、またスペーサーを取り外した上で使用しても良い。スペーサーを取り外した場合は、より大きな通路を形成することができる。スペーサーの取り外しは、使用時にラミネート型酸化性ガスインジケーターの端部を切って変色性シート断面を酸化性ガス雰囲気下に曝露させる工程において、当該断面から引き抜けば良い。
【0020】
変色性シートと透明性シートとの間に隙間(空間)を設ける場合、両者間の距離は通常1mm以下(特に0〜1mm)とすれば良い。
【0021】
なお、本発明では、変色性シートと透明性シートとの間に隙間(空間)がない場合であっても、酸化性ガスは繊維質基材の中を透過するので、所望の検知効果を得ることができる。
【0022】
変色性シートと透明性シートとの密着の有無は、検知する酸化性ガスの濃度、CT値(酸化性ガス濃度×酸化性ガスの曝露時間)等により適宜設計すれば良い。密着性を必要とする場合は、熱融着性の透明性シート等を用いれば良い。
【0023】
透明性シート(フィルム)は、透明でラミネートできる材料であれば限定されない。例えば、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル系樹脂等の透明性樹脂を好適に用いることができる。
【0024】
変色性シートは、酸化性ガスにより変色する変色層が繊維質基材上に形成されてなるものである。
【0025】
繊維質基材は、変色層を支持できるものであれば良く、例えば紙類(ケント紙、普通紙、画用紙、和紙、上質紙等)、不織布、織物等を挙げることができる。
【0026】
変色層としては、酸化性ガスに接触することにより変色(消色、退色等も含む。)するものであれば限定的でないが、特にアントラキノン系染料、アゾ系染料、オキサジン系染料、チアジン系染料、メチン系染料及びトリアリールメタン系染料の少なくとも1種(変色性染料)を含むインキ組成物により形成されていることが好ましい。
【0027】
アントラキノン系染料は、アントラキノンを基本骨格とし、第一アミノ基及び第二アミノ基の少なくとも1種のアミノ基を有する限りは特に制限されず、公知のアントラキノン系分散染料等も使用できる。上記アミノ基は、2以上有していても良く、これらは同種又は互いに異なっても良い。このようなアントラキノン系染料としては、例えば1,4−ジアミノアントラキノン(C.I.Disperse Violet 1)、1−アミノ−4−ヒドロキシ−2−メトキシアントラキノン(C.I.Disperse Red 4)、1−アミノ−4−メチルアミノアントラキノン(C.I.Disperse Violet 4)、1,4−ジアミノ−2−メトキシアントラキノン(C.I.Disperse Red 11)、1−アミノ−2−メチルアントラキノン(C.I.DisperseOrange 11)、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノン(C.I.Disperse Red15)、1,4,5,8−テトラアミノアントラキノン(C.I.Disperse Blue 1)、1,4−ジアミノ−5−ニトロアントラキノン(C.I.Disperse Violet 8)等を挙げることができる(カッコ内は染料番号)。その他にも C.I.Solvent Blue14、C.I.Solvent Blue 63、C.I.Solvent Violet 13、C.I.Solvent Violet 14、C.I.Solvent Red 52、C.I.Solvent Red 114、C.I.Vat Blue 21、C.I.Vat Blue 30、C.I.Vat Violet 15、C.I.Vat Violet 17、C.I.Vat Red 19、C.I.Vat Red 28、C.I.Acid Blue 23、C.I.Acid Blue 80、C.I.Acid Violet 43、C.I.Acid Violet48、C.I.Acid Red 81、C.I.Acid Red 83、C.I.Reactive Blue 4、C.I.ReactiveBlue 19、C.I.Disperse Blue 7 等として知られている染料も使用することができる。これらのアントラキノン系染料は、単独で又は2種以上併用することができる。これらアントラキノン系染料の中でも、C.I Disperse Blue 7、C.I Disperse Violet 1 等が好ましい。また、本発明では、これらのアントラキノン系染料の種類(分子構造等)を変えることによって、オゾンの検知感度の制御を行うこともできる。
【0028】
アゾ系染料は、発色団としてアゾ基−N=N−を有するものであれば限定されない。例えば、モノアゾ染料、ポリアゾ染料、金属錯塩アゾ染料、スチルベンアゾ染料、チアゾールアゾ染料等が挙げられる。より具体的に染料番号で表記すれば、C.I.Disperse Red 13、C.I.Disperse Red 52、C.I.Disperse Violet 24、C.I.Disperse Blue、44、C.I.Disperse Red 58、C.I.Disperse Red 88、C.I.Disperse Yellow 23、C.I.Disperse Orange 1、C.I.Disperse Orange 5、C.I.Solvent Red 1、 C.I.Solvent Red 3、 C.I.Solvent Red 23等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0029】
メチン系染料としては、メチン基を有する染料であれば良い。従って、本発明において、ポリメチン系染料、シアニン系染料等もメチン系染料に包含される。これらは、公知又は市販のメチン系染料から適宜採用することができる。具体的には、C.I.Basic Red 12、C.I.Basic Red 13、C.I.Basic Red 14、C.I.Basic Red 15、C.I.Basic Red 27、C.I.Basic Red 35、C.I.Basic Red 36、C.I.Basic Red 37、C.I.Basic Red 45、C.I.Basic Red 48、C.I.Basic Yellow 11、C.I.Basic Yellow 12、C.I.Basic Yellow 13、C.I.Basic Yellow 14、C.I.Basic Yellow 21、C.I.Basic Yellow 22、C.I.Basic Yellow 23、C.I.Basic Yellow 24、C.I.Basic Violet 7、C.I.Basic Violet 15、C.I.Basic Violet 16、C.I.Basic Violet 20、C.I.Basic Violet 21、C.I.Basic Violet 39、C.I.Basic Blue 62、C.I.Basic Blue 63等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0030】
トリアリールメタン系染料は限定的でなく、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、C.I.Basic Blue 1、C.I.Basic Blue 26、C.I.Basic Blue 5、C.I.Basic Blue 8、C.I.Basic Green 1、C.I.Basic Red 9、C.I.Basic Violet 12、C.I.Basic Violet 14、C.I.Basic Violet 3、C.I.Solvent Green 15、C.I.Solvent Violet 8等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。これらトリアリールメタン系染料の中でも、C.I.Solvent Violet 8、C.I.Basic Green 1、C.I.Basic Red 9、C.I.Basic Blue 1等を好適に用いることができる。
【0031】
チアジン系染料は特に限定されることなく、公知又は市販のものから選ぶことができる。例えば、C.I.Basic Blue 9、C.I.Basic Blue 25、C.I.Basic Blue 24、C.I.Basic Blue 17、C.I.Basic Green 5、C.I.Solvent Blue 8等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。これらチアジン系染料の中でも、C.I.Basic Blue 9等を好適に用いることができる。
【0032】
オキサジン系染料は、下記式(I)〜(III)の少なくとも1つのオキサジン環を有するものであれば特に限定されない。例えば、オキサジン環を1つ有するモノオキサジン系染料、オキサジン環を2つ有するジオキサジン系染料等も包含される。
【0033】
【化1】

【0034】
また、本発明では、助色団として少なくとも1つの置換又は未置換のアミノ基を有する塩基性染料、置換基としてさらにOH基、COOH基等を有するクロム媒染染料等のいずれも使用することができる。
【0035】
これらのオキサジン系染料は、1種又は2種以上で使用することができる。これらは、公知又は市販のものを使用することができる。染料番号で言えば、特に C.I. Basic Blue 3、C.I. Basic Blue 12、C.I. Basic Blue 6、C.I. Basic Blue 10、C.I. Basic Blue 96 等のオキサジン系染料を用いることが望ましい。さらに、C.I. Basic Blue 3 等がより望ましい。
【0036】
本発明では、これら変色性染料の含有量は限定的ではないが、一般的にはインキ組成物中0.1〜10重量%程度、特に1〜5重量%とすることが好ましい。
【0037】
また、本発明では、必要に応じてインキ組成物中に4級アンモニウム塩型のカチオン系界面活性剤をさらに含有することがより好ましい。
【0038】
上記4級アンモニウム塩型のカチオン系界面活性剤(以下単に「カチオン系界面活性剤」ともいう)としては、特に制限されず、通常はアルキルアンモニウム塩を用いることができ、これは市販品も使用できる。また、これらは1種又は2種以上で使用することができる。本発明では、これらカチオン系界面活性剤を前記アントラキノン系染料と併用することによって、より優れたオゾン検知感度を得ることができる。
【0039】
これらカチオン系界面活性剤の中でも、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等が好ましい。具体的には、塩化ヤシアルキルトリメチルアンモニウム、塩化牛脂アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウム等が挙げられ、特に塩化ラウリルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0040】
カチオン系界面活性剤の含有量は、一般的にはインキ組成物中0.1〜5重量%程度、特に0.1〜2重量%とすることが好ましい。
【0041】
本発明のインキでは、必要に応じて樹脂系バインダー、増量剤、溶剤等の公知のインキに用いられている成分を適宜配合することができる。
【0042】
樹脂系バインダーとしては、基材の種類等に応じて適宜選択すれば良く、例えば筆記用、印刷用等のインキ組成物に用いられている公知の樹脂成分をそのまま採用できる。具体的には、例えばマレイン酸樹脂、アミド樹脂、ケトン樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等を挙げることができる。
【0043】
樹脂系バインダーの含有量は、一般的にはインキ組成物中1〜35重量%程度、特に5〜20重量%とすることが好ましい。
【0044】
増量剤としては、特に制限されず、例えばベントナイト、活性白土、酸化アルミニウム、シリカゲル等を挙げることができる。その他にも公知の体質顔料として知られている材料を用いることができる。この中でも、多孔質のものが好ましく、特にシリカゲルがより好ましい。このような増量剤を添加することにより、主として検知感度を高めることができる。
【0045】
増量剤の含有量は、一般的にはインキ組成物中1〜20重量%程度、特に5〜15重量%とすることが好ましい。
【0046】
本発明で使用できる溶剤としては、通常、印刷用、筆記用等のインキ組成物に用いられる溶剤であればいずれも使用できる。例えば、アルコール系、エステル系、エーテル系、ケトン系、炭化水素系等の各種溶剤が使用でき、使用する染料、樹脂系バインダーの溶解性等に応じて適宜選択すれば良い。
【0047】
これら各成分は、同時に又は順次に配合し、ホモジナイザー、デゾルバー等の公知の攪拌機を用いて均一に混合すれば良い。例えば、まず溶剤にアントラキノン系染料、カチオン系界面活性剤、樹脂系バインダー、増量剤等を順に配合し、混合・攪拌すれば良い。
【0048】
変色層の形状、形成パターン、大きさ等は用途、使用目的、対象とする酸化性ガスの種類等に応じて適宜決定することができる。
【0049】
形状としては、例えば図1に示すような長方形を好適に採用することができる。具体的には短辺5〜15mm程度で長辺50〜100mmの長方形が例示できる。長辺は、測定するCT値により適宜変更することができる。長方形とすることにより、図1のようにインジケーター端部を長辺に対して垂直に切断することにより、開口部(A−A’断面)を形成し、その開口部から長辺方向に酸化性ガスを侵入させることが可能になる。
【0050】
変色層の形成パターンは、図1のように繊維質基材の全面に変色層を形成することも可能であるが、その他にも複数の孤立した変色層を形成しても良い。例えば、図3に示すようにスポット状に複数の変色層を繊維質基材1上に形成することができる。この場合は、開口部から近い順に円形状の変色層1aから変色層1dを形成すれば良い。これらの変色層間の間隔は等間隔でも良いし、徐々に間隔が小さく又は大きくなるように形成しても良い。
【0051】
本発明のラミネート型酸化性ガスインジケーターの対象とする酸化性ガスは、特に限定的でなく、例えばオゾンガス、過酸化水素ガス、エチレンオキサイドガス、窒素酸化物ガス、硫黄酸化物ガス等に好適に用いることができる。また、適用対象となる酸化性ガスの濃度は、酸化性ガスの種類等にもよるが、一般的には0.1〜500ppm程度、好ましくは500〜3000ppmである。測定可能なCT値(酸化性ガス濃度×曝露時間)の範囲としては、通常1万〜30万ppm・min程度が好ましい。
【0052】
2.酸化性ガス検知方法
本発明は、前記ラミネート型酸化性ガスインジケーターを用いて酸化性ガスを検知する方法であって、(1)ラミネート型酸化性ガスインジケーターの端部を切って変色性シート断面を酸化性ガス雰囲気下に曝露させる工程、(2)変色性シートの変色状態を確認する工程を含む酸化性ガスの検知方法(第1方法)を包含する。
【0053】
また、本発明は、前記ラミネート型酸化性ガスインジケーターを用いて酸化性ガスによるCT値を測定する方法であって、(1)ラミネート型酸化性ガスインジケーターの端部を切って変色性シート断面を酸化性ガス雰囲気下に曝露させる工程、(2)変色性シートの変色状態を確認する工程、(3)予め用意したCT値と変色状態との関係からCT値を求める工程を含む酸化性ガスの検知方法(第2方法)を包含する。
【0054】
第1方法及び第2方法ともに、ラミネート型酸化性ガスインジケーターの端部を切って変色性シート断面を酸化性ガス雰囲気下に曝露させる。すなわち、使用する際にインジケーターの端部を切断し、変色性シート断面が酸化性ガスに触れるような状態にすることにより酸化性ガスの検知を行うことが可能になる。例えば、カッターナイフ、はさみ等で図1のA−A’を切り取ることにより、酸化性ガスがインジケーター(図1の右側部分をインジケーターとして使用)に侵入する開口部を設ける。
【0055】
第1方法では、酸化性ガスの検知を行うことができる。酸化性ガス雰囲気に置かれたインジケーターでは、酸化性ガスが開口部から侵入しはじめることにより、その変色層の開口部に近い部分から徐々に変色する。その変色の有無を調べることにより酸化性ガスの検知を行うことができる。
【0056】
また、第2方法では定量的測定も行うことができる。変色度合い(領域)は、CT値の増加に伴って開口部から徐々に拡がる。このため、予めCT値と変色領域との関係を調べておくことにより、実際に酸化性ガスを検知している際の変色領域を見ることによりCT値の定量的な測定も可能になる。
【0057】
3.ラミネート型酸化性ガスインジケーターの製造方法
本発明のインジケーターの製造方法は特に限定されない。例えば、1)繊維質基材上に変色層を形成することにより変色性シートを作製する工程(変色性シート作製工程)、2)変色性シートよりも大きな面積を有する2枚の透明性シート間に変色性シートを挟むようにして積層する工程(積層工程)、3)透明性シートどうしが積層される部分を密着する工程(密着工程)を含む方法により好適に製造することができる。
【0058】
変色性シート作製工程では、繊維質基材上に変色層を形成することにより変色性シートを作製する。変色層の形成は、変色性インキ組成物による塗膜を形成することにより行うことができる。塗膜形成の方法は、例えば印刷(スクリーン印刷等)のよる方法のほか、刷毛塗り、スプレー、ローラー等による塗布方法であっても良い。この場合、変色層は、繊維質基材上の全面に形成しても良いし、あるいは一部に形成しても良い。
【0059】
積層工程では、変色性シートよりも大きな面積を有する2枚の透明性シート間に変色性シートを挟むようにして積層する。例えば、図1に示すように、透明性シートどうしが直接積層される領域(密着しろ)を確保できるように配置すれば良い。
【0060】
密着工程は、透明性シートどうしが積層される部分を接着する。接着方法は、特に限定されず、例えば熱融着による方法、接着剤による方法等を採用することができる。
【実施例】
【0061】
本発明を下記の実施例により具体的に説明する。ただし、本発明は 実施例の内容に限定されない。
【0062】
実施例1
図1に示すようなラミネート型インジケーターを作製した。表1に示す成分を均一に混合し、インキを調製した。得られたインキをケント紙(サイズ:約10mm×約50mm)の片面全面にスクリーン印刷することにより、ケント紙上に変色層(印刷層)が形成されてなる積層体1を作製した。この積層体を2枚のOHPシート2(無色透明、密着性なし)(サイズ:約25mm×約65mm)で挟み込み、ラミネートすることにより印刷シートを密封することにより、ラミネート型インジケーターを得た。得られたインジケーターの厚みは約400μmであった。
【0063】
【表1】

【0064】
表1の各成分の内容は以下のとおりである。
【0065】
C.I.b.red 13:メチン系染料
ブチルセロソルブ:溶剤
マイクロリスグリーンG−A:非変色色素、チバスペシャリティケミカル製
ジョンクリル690:ジョンソンポリマー製、スチレンアクリル酸樹脂
硝化綿HIG1/2:ダイセル化学製、ニトロセルロース
アエロジルR−972:シリカゲル、日本アエロジル製
試験例1
実施例で得られたインジケーターを用いてCT値(オゾン濃度×曝露時間)を測定した。
【0066】
図1の破線部分(A−A’)をカッターナイフで切り、少なくとも積層体の断面が外気に触れるようにした後、直ちにオゾン濃度1000ppmのオゾンガス雰囲気にオゾンインジケーターを配置した。積層体上の変色層は、オゾンガスに触れることにより紫色から緑色に変色した。そのCT値と変色部分(破線部分からの距離)を測定した。その結果を表2に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
表2の結果より、CT値の増大に伴って破線からの距離が長くなっていることがわかる。これにより、印刷シートに予め目盛を付けておけば、CT値を定量的に読み取れることがわかる。
【0069】
実施例2
インジケーター製造時において、変色層と透明性シートとの間に樹脂製角材(2mm×2mm×50mm)を介在させたほかは、実施例1と同様にしてインジケーターを作製した。
【0070】
実施例3
インジケーター製造時において、変色層と透明性シートとの間に樹脂製角材(0.8mm×0.8mm×50mm)を介在させたほかは、実施例1と同様にしてインジケーターを作製した。
【0071】
試験例2
実施例1〜3で得られたインジケーターのオゾンガスによる変色速度を調べた。測定方法は、試験例1と同様とした。その結果を表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
表3からも明らかなように、一定のCT値(10000〜50000ppm・min)の範囲では、実施例3が最も変色速度が速く、実施例1が最も遅かった。このように、スペーサーの大きさ等を変えることによって変色速度を自由に制御できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施例で作製したラミネート型インジケーターの平面図を示す。
【図2】実施例で作製したラミネート型インジケーターの断面図を示す。
【図3】本発明のラミネート型インジケーターの他の実施形態(平面図)を示す。
【図4】スペーサーを配置したラミネート型インジケーターの断面図を示す。
【図5】スペーサー、変色層及び透明性シートにより酸化性ガスの通路が形成された状態を示す。
【図6】スペーサーを配置したラミネート型インジケーターの平面図を示す。
【図7】本発明の円盤状ラミネート型インジケーターの実施形態(平面図)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変色性シート及び透明性シートを含む積層体であって、
(1)変色性シート及び透明性シートは、変色性シートが透明性シートに挟持されるような状態で積層されており、
(2)変色性シートは、透明性シートによって外気との接触が遮断され、
(3)変色性シートは、酸化性ガスに接触することにより変色する変色層が繊維質基材上の一部又は全部に形成されてなるものである、
ことを特徴とするラミネート型酸化性ガスインジケーター。
【請求項2】
変色性シート及び透明性シートとの間にスペーサーが配置されている、請求項1に記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
【請求項3】
前記スペーサーが、変色層と透明性シートとの間において、変色層の長さ方向にわたり配置されている、請求項2に記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
【請求項4】
変色層、透明性シート及びスペーサーにより、酸化性ガスの通路が形成されている、請求項2又は3に記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
【請求項5】
変色層が、アントラキノン系染料、アゾ系染料、オキサジン系染料、チアジン系染料、メチン系染料及びトリアリールメタン系染料の少なくとも1種を含むインキ組成物により形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
【請求項6】
インキ組成物が、さらに界面活性剤、増量剤及びバインダーの少なくとも1種を含む、請求項5に記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
【請求項7】
変色性シートが長方形である、請求項1〜6のいずれかに記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
【請求項8】
変色層が繊維質基材上に複数形成されている、請求項1〜7のいずれかに記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
【請求項9】
変色性シート及び/又は透明性シート上に、変色層の変色領域に応じたCT値(酸化性ガス濃度×曝露時間)が表記されている、請求項1〜8のいずれかに記載のラミネート型酸化性ガスインジケーター。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のラミネート型酸化性ガスインジケーターを用いて酸化性ガスを検知する方法であって、
(1)ラミネート型酸化性ガスインジケーターの端部を切って変色性シート断面を酸化性ガス雰囲気下に曝露させる工程、
(2)変色性シートの変色状態を確認する工程
を含む酸化性ガスの検知方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載のラミネート型酸化性ガスインジケーターを用いて酸化性ガスによるCT値を測定する方法であって、
(1)ラミネート型酸化性ガスインジケーターの端部を切って変色性シート断面を酸化性ガス雰囲気下に曝露させる工程、
(2)変色性シートの変色状態を確認する工程、
(3)予め用意したCT値と変色状態との関係からCT値を求める工程、
を含む酸化性ガスの検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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