説明

ラミネート型電池の加圧装置

【課題】ラミネート型電池の下部に位置する熱融着部に生じる座屈を防止し得る装置を提供する。
【解決手段】 その平面が鉛直方向に沿って配置された隣り合う2つのスペーサ板(13)の間にラミネート型電池(1)を収納し、スペーサ板(13)とラミネート型電池(1)の発電要素部分とを当接させて加圧するラミネート型電池(1)の加圧装置(11)であって、収納されたラミネート型電池(1)の下部に位置する熱融着部(3a)の下端と当接することによりラミネート型電池(1)を支持する支持手段(17)と、熱融着部(3a)を弾性変形することにより固定する固定手段(18)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はラミネート型電池の加圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2枚の基板を貼り合わせて構成されるセルをスペーサ板間で加圧し、セルに設けられた液晶注入口より液晶を注入し、注入口に接着剤を塗布して硬化させる液晶パネルの製造方法であって、互いに連結されたスペーサ板間にセルを挿入して複数のセルを同時に加圧するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−146520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この液晶パネルの製造方法をラミネート型電池のスクリーニングにそのまま適用することはできない。すなわち、ラミネート型電池の外周に形成される熱融着部は、2枚のラミネートフィルムを熱融着させただけものであるため、やわらかい。このため、従来技術を用いて鉛直方向に位置させた隣り合う2つのスペーサ板間にラミネート型電池を鉛直方向に収納して固定する際、ラミネート型電池の下部に位置する熱融着部に座屈が生じて鉛直方向の位置ズレが起こる恐れがある。鉛直方向の位置ズレが起こると、加圧した状態でのラミネート型電池の電圧を正確に計測することができない。
【0005】
そこで本発明は、ラミネート型電池の下部に位置する熱融着部に生じる座屈を防止し得る装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のラミネート型電池の加圧装置は、その平面が鉛直方向に沿って配置された隣り合う2つのスペーサ板の間にラミネート型電池を収納し、スペーサ板とラミネート型電池の発電要素部分とを当接させて加圧するラミネート型電池の加圧装置を前提とする。そして、収納されたラミネート型電池の下部に位置する熱融着部の下端と当接することによりラミネート型電池を支持する支持手段と、前記熱融着部を弾性変形することにより固定する固定手段とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ラミネート型電池の下部に位置する熱融着部を弾性変形することにより固定することから、熱融着部に座屈が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態の加圧装置に用いられるラミネート型電池の概略図である。
【図2】第1実施形態の加圧装置の概略正面図である。
【図3】図2(A)の一部拡大正面図である。
【図4】図3の膨出部の拡大正面図である。
【図5】図2(B)の一部拡大正面図である。
【図6】図5の膨出部の拡大正面図である。
【図7】スペーサ板のスライド機構を説明するための概略図である。
【図8】フィルムの概略図である。
【図9】第2実施形態の加圧装置の一部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張している箇所があり、その箇所においては実際の比率と異なっている。
【0010】
(第1実施形態)
まず、本実施形態の加圧装置11に用いられるリチウムイオン二次電池1について説明する。図1はリチウムイオン二次電池1の概略図である。このうち、図1(A)はリチウムイオン二次電池1の概略斜視図、図1(B)は図1(A)のB−B線断面図である。
【0011】
図1(A)、(B)に示すように、リチウムイオン二次電池1は、実際に充放電反応が進行する略薄板状の発電要素2が、電池外装材であるラミネートフィルム3の内部に封止された構造を有する。詳しくは、高分子−金属複合ラミネートフィルムを電池外装材として用いて、その周辺部を熱融着にて接合することにより、発電要素2を収納し密封した構成を有している。ここで高分子−金属複合ラミネートフィルムとしては、金属フィルムを高分子フィルム(樹脂フィルム)でサンドイッチした三層構造のものが一般的である。
【0012】
こうした積層型の電池1は、缶型電池と区分けするために「ラミネート型電池」といわれる。缶型電池は、市販されている単1電池や単3電池のように堅い円筒状の外枠の中に2つの各電極が巻き込んで収納されているものである。一方、ラミネート型電池とは、略薄板状の発電要素2の周辺部を熱融着にて接合することにより、発電要素を密封したものをいう。以下では、リチウムイオン二次電池1を、「ラミネート型電池」ともいう。
【0013】
発電要素2は、薄板状の正極集電体4aの両面に正極活物質層4bを配置した正極4と、電解質層5と、薄板状の負極集電体6aの両面に負極活物質層6bを配置した負極6とを積層した構成を有している。具体的には、1つの正極活物質層4bとこれに隣接する負極活物質層6bとが、電解質層5を介して対向するようにして、正極4、電解質層5、負極6をこの順に積層している。
【0014】
これにより、隣接する正極4、電解質層5及び負極6は、一つの単電池層7(単電池)を構成する。従って、本実施形態のラミネート型電池1は、単電池層7を積層することで、電気的に並列接続された構成を有するともいえる。また、単電池層7の外周には、隣接する正極集電体4bと負極集電体6bとの間を絶縁するためのシール部(絶縁層)を設けてもよい。発電要素2の両最外層に位置する最外層正極集電体4aには、いずれも片面のみに正極活物質層4bを配置している。なお、図1(B)とは正極及び負極の配置を逆にすることで、発電要素2の両最外層に最外層負極集電体が位置するようにし、該最外層負極集電体の片側のみに負極活物質層を配置するようにしてもよい。
【0015】
正極集電体4a及び負極集電体6aには、各電極(正極及び負極)と導通する強電タブ8、9を取り付け、ラミネートフィルム3の端部に挟まれるようにラミネートフィルム3の外部に導出させている。強電タブ8、9は、必要に応じて負極端子リード(図示せず)及び正極端子リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体4a及び負極集電体6bに超音波溶接や抵抗溶接により取り付けもよい。
【0016】
なお、リチウムイオン二次電池の他の形態としては、集電体の一方の面に正極活物質層を、他方の面に負極活物質層を形成している双極型電極を、電解質層を介して積層した双極型二次電池が挙げられる。上記の電池1とこの双極型二次電池とは、双方の電池内の電気的な接続状態(電極構造)が異なることを除いては、基本的には同様である。
【0017】
このような構成のラミネート型電池1を製造した次の工程は充電工程である。充電工程で、複数のラミネート型電池1は、一方の強電タブ8にプラスの端子が、他方の強電タブ9にマイナスの端子が接続され、充電器により所望の電圧となるまで充電される。
【0018】
充電終了したラミネート型電池1に対しては、エージングの行程を行う。エージングの工程は、ラミネート側電池1を一定温度で一定時間放置することによって電池性能を安定させる工程と、電池内部に金属異物(コンタミネーション)があるか否かを検出(診断)するスクリーニングの工程とに分かれる。
【0019】
スクリーニングの工程が必要となる理由は次の通りである。正極活物質層4bと負極活物質層6bとの間には両者を絶縁するためのセパレータ(図示せず)を設けている。セパレータは多孔質状であり、このセパレータに電解質を含ませている。この場合に、電池製造工程において金属異物が正極活物質層4bに紛れ込むことがある。この金属異物は電池充電後にプラスの電荷を有する金属イオンとなって負極活物質層6bの側にゆっくりと移動し、上記のセパレータを突き破って正極活物質と負極活物質とをショートさせる事態が生じる。こうなると、ラミネート型電池1は、所望の電圧を発生することができない。そこで、ラミネート型電池1の内部に金属異物が紛れ込んでいるか否かを検出(診断)するスクリーニングが必要となるのである。
【0020】
金属異物によって正極活物質と負極活物質とがショートしたか否かは一対の強電タブ8、9間の電圧をモニターすればわかる。すなわち、充電終了後に一定時間が経過しても、ラミネート型電池1の発生する電圧の低下の程度が、予想される電圧低下の程度より大きく変化しなければ、金属異物は混入していないと診断することができる。この反対に、充電終了後に一定時間が経過したときの電圧の低下の程度が、予想される電圧低下の程度を超えて大きく変化していれば、金属異物が混入していたと診断することができる。
【0021】
スクリーニングは、鉛直方向に位置させた隣り合う2つのスペーサ板の間に鉛直方向にラミネート型電池1を収納し、全体を水平方向の両側から加圧することによって行っている。この場合、各ラミネート型電池1は、その発電要素部分に左右方向の両側から作用する面圧が、出来る限り均一な状態で保持される必要がある。発電要素部分に左右方向の両側から作用する面圧が均一でないと、充電後の電圧を正確に計測することができないためである。要は、ラミネート型電池1の発電要素部分において面圧が相対的に低い部分では、電極間の隙間が大きくなり、それが抵抗となり所望の電圧を発生することができなくなるのである。ここで、ラミネート型電池1の「発電要素部分」とは、図5に示したように、ラミネート型電池1のうち左右の両面が平行となっている部分のことである。
【0022】
各ラミネート型電池1の発電要素部分に左右方向の両側から作用する面圧を均一にするには、複数のラミネート型電池1における発電要素部分の位置が、水平方向に並んでいる複数のラミネート型電池1の間で鉛直方向にずれないようにすることである。例えば、水平方向に隣り合って並んでいる2枚のラミネート型電池1の発電要素部分に鉛直方向の位置ずれがあると、2枚のラミネート型電池1の発電要素部分が重なりあう部分にしか面圧は加わらない。よって、水平方向に並んでいる複数の各ラミネート型電池1の間の正確な鉛直方向の位置決めが重要である。
【0023】
ここで、2枚の基板を貼り合わせて構成されるセルをスペーサ板間で加圧し、セルに設けられた液晶注入口より液晶を注入し、注入口に接着剤を塗布して硬化させる液晶パネルの製造方法であって、互いに連結されたスペーサ板間にセルを挿入して複数のセルを同時に加圧する従来方法がある。
【0024】
しかしながら、この液晶パネルの製造方法をラミネート型電池1のスクリーニングにそのまま適用することはできない。ラミネート型電池1の周囲に形成される熱融着部3aは、2枚のラミネートフィルム3を熱融着させただけものであるため、手で簡単に曲げられるほどやわらかい。このため、従来技術を用いて鉛直方向に位置させた隣り合う2つのスペーサ板間にラミネート型電池1を鉛直方向に収納して固定する際、ラミネート型電池1の下部に位置する熱融着部3aに、自重に伴う座屈が生じて鉛直方向の位置ズレが起こる恐れがある。水平方向に並んでいる複数のラミネート型電池1の間に鉛直方向の位置ズレが起こると、上記のように発電要素部分に左右方向の両側から作用する面圧を均一にすることができず、ラミネート型電池1の発生する電圧を正確に計測することができない。
【0025】
そこで本発明は、鉛直方向に位置させた隣り合う2つのスペーサ板の間に鉛直方向に収納された複数のラミネート型電池1を同時に加圧する際に、ラミネート型電池1の下部に位置する熱融着部3aと当接することによりラミネート型電池1を支持する支持手段と、熱融着部3aが支持手段と当接する箇所で当該熱融着部3aを固定する固定手段とを含むようにする。以下、具体的に説明する。
【0026】
図2は、ラミネート型電池1の加圧装置11の概略正面図である。ただし、ハウジング12の前壁を取り去った状態で示している。このうち、図2(A)は6枚のラミネート型電池1をスペーサ板13の間に収納した状態を、図2(B)は6枚のラミネート型電池1をスペーサ板13の間に挟んで、水平方向の両側から加圧している状態を示している。また、図3は図2(A)の一部拡大正面図、図4は図3の膨出部18の拡大正面図である。図5は図2(B)の一部拡大正面図、図6は図5の膨出部18の拡大正面図である。
【0027】
なお、図2では、簡単のため7枚のスペーサ板13の間に6枚のラミネート型電池1を挟んで加圧する場合を示しているが、スペーサ板13やラミネート型電池1の枚数がこれらの枚数に限定されるものでない。
【0028】
ラミネート型電池1の加圧装置11は、無蓋箱状のハウジング12、スペーサ板13、可撓性を有する帯状部材としての連結フィルム17及び膨出部18からなる。
【0029】
図2には、ハウジング12の左壁12a、右壁12b、底壁12cが見えている。ハウジング12内には、水平方向(図2で左右方向)に平板状のスペーサ板13を鉛直方向に7枚配置している。7枚のスペーサ板13の形状は同一である。スペーサ板13は、ラミネート型電池1の発電要素2部分に水平方向の両側から面圧を作用させるためのものである。
【0030】
スペーサ板13の底面13dがハウジング12の底壁12cを引きずることがないように、7枚の各スペーサ板13には、水平方向に摺動可能なスライド機構を備えている。スライド機構は、スペーサ板13に設けられるガイド孔と、このガイド孔を貫通するガイドからなる。すなわち、図7に示したように各スペーサ板13の下部において水平方向に離れた位置に2つのガイド孔13e、13fを設け、この2つのガイド孔13e、13fにそれぞれ棒状のガイド14、15を貫通させている。7枚すべてのスペーサ板13を貫通させた後に2つの棒状のガイド14、15の両端をハウジング12の左壁12aと右壁12bに固定することで、7枚のスペーサ板13は水平方向に摺動可能となる。この結果、スペーサ板13の底面13dは、ハウジング12の底壁12cと接触しない。軽量化のため、スペーサ板13の材質は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートのような樹脂であることが好ましい。
【0031】
鉛直方向に収納されることによって、ラミネート型電池1の下部には熱融着部3aが位置することになる。このラミネート型電池1の下部に位置する熱融着部3aと当接することによりラミネート型電池1を支持する支持手段として、支持フィルム17を備える。
【0032】
支持フィルム17は、図8(A)、(B)に示したように、1つのフィルム16から形成する。フィルム16の材質は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートのような樹脂であることが好ましい。フィルム16の幅は、スペーサ板13の幅に合わせて選択する。フィルム16には、図8(A)のように第1貼り付け部17a、第2貼り付け部17b、膨出部形成部17c、17d、第3貼り付け部17eの順に折り目をつけ、これを繰り返す。このうち、膨出部形成部17c、17dには、図8(B)のように発泡ウレタンを塗布することにより中高(中央が周囲より高くなっている)の膨出部18(固定手段)を一対形成する。膨出部18は、ラミネート型電池1の下部に位置する熱融着部3aが支持フィルム17と当接する箇所で当該熱融着部3aを固定する固定手段として機能するものである。なお、図8(A)はフィルム16の平面図、図8(B)はフィルム16の側面図である。
【0033】
このように折り目をつけると共に、一対の膨出部18を形成したフィルム16を図3、図4に示したようにスペーサ板13の外周面に接着剤を用いて貼り付けていく。すなわち、フィルム16の第1貼り付け部17aを最左端に位置するスペーサ板13の上面13aに、フィルム16の第2貼り付け部17bを最左端に位置するスペーサ板13の右側面13bに、フィルム16の第3貼り付け部17eを右隣のスペーサ板13の左側面13cに貼り付ける。後は、同様にして、フィルム16の第1貼り付け部17a、第2貼り付け部17b、第3貼り付け部17eをスペーサ板13の上面13a、右側面13b、右隣のスペーサ板13の左側面13cに貼り付けていく。フィルム16を7枚のスペーサ板13に貼り付けることで、支持フィルム17を形成する。なお、図3、図4においては、見やすくするため、連結フィルム7とスペーサ板13との間をわずかに離して示している。
【0034】
このようにして、支持フィルム17は、7枚のスペーサ板13の間を連結すると共に、垂れ下がる部位(膨出部形成部17c、17d)でラミネート型電池1の下部に位置する熱融着部3aと当接することによりラミネート型電池1を支持することとなる。
【0035】
ここでは、7枚のスペーサ板13を加圧装置11に摺動可能に取り付けた後に、フィルム16を7枚のスペーサ板13の外周面に貼り付けていく場合で説明したが、先にフィルム16を7枚のスペーサ板13の外周面に貼り付け、その後にスペーサ板13を加圧装置11に摺動可能に取り付けるようにしてもかまわない。
【0036】
図2(A)において最右端のスペーサ板13には、この最右端のスペーサ板13の右側面13bの面積とほぼ同じかそれよりも少し大きな面積を有する加圧用の平板21を鉛直方向に位置させている。この平板21には外周に雄ネジを切ったロッド22の一端(図2で左端)が固定されている。ハウジング12の右壁12bにはロッド22外周の雄ネジと螺合する雌ネジが設けられている。このため、ロッド22の他端(図2で右端)に設けたハンドル(図示しない)を時計方向にあるいは反時計方向に回すことで、平板21を水平方向(図2で左右方向)に移動させることができるようになっている。なお、平板21は水平方向に直線運動をするだけで、ロッド22の回転は伝わらないようになっている。
【0037】
次に、このラミネート型電池1の加圧装置11を用いたラミネート型電池1のスクリーニング方法について説明する。
【0038】
7枚のラミネート型電池1を加圧装置11にセットする前には、図2(A)に示したように、最左端に位置するスペーサ板13をハウジング12の左壁12aに当接させた状態でロッド22の他端(図2で右端)に設けたハンドルを一方向に回す。これによって、平板21を図2(A)でハウジング12の右壁12bの近くまで移動させる。また、最右端に位置するスペーサ板13を右方に移動させて平板21に当接させる。すると、支持フィルム17のうち垂れ下がる部位(膨出部形成部17c、17d)が水平方向(図2(A)で左右)に開くことにより、7枚のスペーサ板13がほぼ等間隔で開く。言い換えると、隣り合う2つのスペーサ板13の間にラミネート型電池1を収容するスペースが確保される。
【0039】
このようにしてスペースを確保した状態の隣り合う2つのスペーサ板13の間に、上方から7枚のラミネート型電池1を鉛直方向にして順次収納していく。このとき、ラミネート型電池1の下部に位置する熱融着部3aは、図3、図4のように隣り合う2つの膨出部18の間に位置するようにする。このようにして、ラミネート型電池1の下部に位置する熱融着部3aは支持フィルム7と当接して支持され、図2(A)に示した状態となる。
【0040】
この場合、ラミネート型電池1には、図1(A)に示したように、一対の強電タブ8、9が露出している側と露出していない側とがあるので、一対の強電タブ8、9が露出している側を水平方向に配置して、強電タブ8、9が露出していない側を下方または上方として収納する。この場合、一方の強電タブ8が図2(A)、(B)において全て紙面手前に突出するようにすることが好ましい。このとき、他方の強電タブ9は全て図2(A)、(B)において紙面裏側に突出する。
【0041】
隣り合う2つのスペーサ板13の間の空いたスペースに7枚のラミネート型電池1を収納する作業は人力で行う。あるいは機械で行わせるようにすることもできる。
【0042】
ロッド22の他端(図2で右端)に設けたハンドルを今度は逆方向に回転させて、平板21を図2(A)、(B)で左方に移動させ、ラミネート型電池1の発電要素部分とスペーサ板13との間のスペース(隙間)を図5、図6のようになくし、さらに予め定めた面圧が加わった状態に保持する。
【0043】
このとき、ラミネート型電池下部の熱融着部3aの左右に位置する一対の膨出部18は、図5、図6に示したように、膨出部形成部17c、17dからの力を受けて、最下部に位置する熱融着部3aを左右の両側から押さえつつ弾性変形して上方へと膨らむ。つまり、ラミネート型電池1の発電要素部分とスペーサ板13との間のスペースがなくなるほど、一対の膨出部18と最下部にある熱融着部3aとの接触面積が広がり、この両側から接触面積を広げる一対の膨出部18によって、最下部にある熱融着部3aそのものは人の手で曲げられるほど柔らかくても、最下部にある熱融着部3aに座屈が生じることを避けることができている。なお、図5、図6においても、見やすくするため、支持フィルム7とスペーサ板13との間をわずかに離して示している。実際にも離れているわけではない。
【0044】
最下部にある熱融着部3aに座屈が生じることを避けることができると、水平方向に並んでいる7枚のラミネート型電池1の間で発電要素部分を鉛直方向の同じ位置に位置決めすることが可能となり、各ラミネート型電池1の間で左右方向の両側から作用する面圧を均一にすることができる。
【0045】
ラミネート型電池1の発電要素部分に予め定めた面圧を加えた状態にした後には、各ラミネート型電池1が発生する電圧を計測する。すなわち、図2(B)において紙面手前に突出する強電タブ8の全てにプラス端子を、紙面裏側に突出する強電タブ9の全てにマイナス端子を接続し、6枚の各ラミネート型電池1の電圧を個別に計測する。電圧は、ラミネート型電池1にプラス、マイナスの端子を接続した時点で計測し、その後、所定の放置期間が経過した後に再度計測する。そして、各ラミネート型電池1について、再度計測した電圧と、初回に計測した電圧との差を計算し、この差が閾値以上あるラミネート型電池1については電圧低下の程度が、予想される電圧低下より大きい、つまり金属異物が混入していたと判断する。差が閾値以未満であるラミネート型電池1については電圧低下の程度が、予想される電圧低下以下である、つまり金属異物は混入していないと判断する。上記発電要素部分に加える面圧は電池1内部の最も弱い部品によって定まる。放置期間は実験により定める。
【0046】
これでスクリーニングの工程が終了する。次には、ロッド22の他端(図2で右端)に設けたハンドルをもう一度、一方向に回転させて、平板21を図2(A)に示したようにハウジング12の右壁12bの近くまで移動させる。また、最右端に位置するスペーサ板13を右方に移動させて平板21に当接させることで、ラミネート型電池1とスペーサ板13との間にスペース(隙間)を生じさせる。スクリーニングを終了したラミネート型電池1を全て、加圧装置11の外に取り出す。上記のように、金属異物が混入していたと判断されたラミネート型電池1はその後の工程(例えば電気特性検査)に乗せない。
【0047】
次には、まだスクリーニングを行っていない他のラミネート型電池1についてスクリーニングを行うため、上記を繰り返す。
【0048】
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
【0049】
本実施形態によれば、その平面が鉛直方向に沿って配置された隣り合う2つのスペーサ板13の間にラミネート型電池1を収納し、スペーサ板13とラミネート型電池1の発電要素部分とを当接させて加圧するラミネート型電池1の加圧装置11であって、収納されたラミネート型電池1の下部に位置する熱融着部3aの下端と当接させることによりラミネート型電池1を支持する支持手段(支持フィルム17)と、熱融着部3aを弾性変形することにより固定する固定手段(膨出部18)とを有するので、鉛直方向にしたラミネート型電池1の最下部に位置する熱融着部3aに座屈が生じることを防止できる。
【0050】
本実施形態によれば、ラミネート型電池1の下部に位置する熱融着部3aが支持手段(支持フィルム17)と当接する箇所で両側から膨出部18で挟むようにして当該熱融着部3aを固定するので、ラミネート型電池1を加圧装置11にセットする際に、ラミネート型電池1の加圧装置11への挿入性が向上し、ラミネート型電池1の鉛直方向の位置決め精度を向上できる。
【0051】
本実施形態によれば、支持手段は可撓性を有する帯状部材である支持フィルム17であり、複数のスペーサ板13の間を連結すると共に、垂れ下がる部位でラミネート型電池1の下部に位置する熱融着部3aと当接することによりラミネート型電池1を支持するので、ラミネート型電池1を加圧装置11から取り出す際に、スペーサ板13が等間隔に開く。これによって、ラミネート型電池1の加圧装置11からの取り出し性を向上できる。一方、ラミネート型電池1を加圧装置11にセットする際にも、スペーサ板13の間に適正なスペースが確保されることから、ラミネート型電池1の加圧装置11へのセット性を向上できる。
【0052】
本実施形態によれば、支持フィルム17のうち垂れ下がる部位(膨出部形成部17c、17d)は空中にあるので、スペーサ板13とラミネート型電池1との間のスペースをなくして加圧しようとするときに、ラミネート型電池1の最下部に位置する熱融着部3aが水平方向に引きずられることがないので、鉛直方向の正確な位置決めを行うことができる。
【0053】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態の加圧装置11の一部拡大正面図である。このうち、図9(A)はラミネート型電池1をスペーサ板13の間に収納した状態を、図9(B)はラミネート型電池1をスペーサ板13の間に挟んで加圧している状態を示している。、図9(A)は第1実施形態の図3と、図9(B)は第1実施形態の図5と置き換わるものである。第1実施形態と同一部分には同一番号を付している。
【0054】
第2実施形態は、フィルム16に対して折り目をつけるだけで、図9(A)のようにフィルム16の一部をスペーサ板13に接着剤を用いて接着することはしていないものである。なお、膨出部18は示していないが、第1実施形態と同じに設けていることはいうまでもない。
【0055】
実施形態では、可撓性を有する帯状部材として、樹脂製の支持フィルム17を挙げたが、これに限定されるものでない。
【符号の説明】
【0056】
1 ラミネート型電池
11 加圧装置
12 ハウジング
13 スペーサ板
17 支持フィルム(支持手段)
18 膨出部(固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その平面が鉛直方向に沿って配置された隣り合う2つのスペーサ板の間にラミネート型電池を収納し、
スペーサ板とラミネート型電池の発電要素部分とを当接させて加圧するラミネート型電池の加圧装置であって、
前記収納されたラミネート型電池の下部に位置する熱融着部の下端と当接することによりラミネート型電池を支持する支持手段と、
前記熱融着部を弾性変形することにより固定する固定手段と
を有することを特徴とするラミネート型電池の加圧装置。
【請求項2】
前記熱融着部が前記支持手段と当接する箇所で両側から膨出部で挟むようにして当該熱融着部を固定することを特徴とする請求項1に記載のラミネート型電池の加圧装置。
【請求項3】
前記支持手段は可撓性を有する帯状部材であり、
複数の前記スペーサ板間を連結すると共に、垂れ下がる部位で前記熱融着部と当接することによりラミネート型電池を支持することを特徴とする請求項1または2に記載のラミネート型電池の加圧装置。
【請求項4】
前記垂れ下がる部位は空中にあることを特徴とする請求項3に記載のラミネート型電池の加圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−3950(P2012−3950A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138054(P2010−138054)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】