説明

ランキンサイクルシステム

【課題】冷媒に含まれる鉄系不純物を捕捉することができるランキンサイクルを提供する。
【解決手段】ランキンサイクルシステム(10)は、内燃機関(50)を冷却する冷媒を作動流体として駆動されるタービン(80)より上流側の冷媒通路(20)内に配置された電磁石(150)と、電磁石への通電および通電停止を行う通電制御手段(120,140)と、を備えることを特徴とするものである。ランキンサイクルシステムによれば、通電時には電磁石によって冷媒に含まれる鉄系不純物が電磁石に付着する。それにより、冷媒に含まれる鉄系不純物を捕捉することができる。また、通電停止時には、電磁石に付着した鉄系不純物の磁性が無くなることから、鉄系不純物を電磁石から容易に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランキンサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の廃熱を回収するシステムとして、ランキンサイクルシステムが知られている。例えば特許文献1には、内燃機関によって加熱された冷媒を過熱器で過熱後にタービンに導くランキンサイクルシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−248703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のランキンサイクルシステムにおいて、冷媒に鉄錆等の鉄系不純物が含まれるおそれがある。特に、内燃機関に鋳鉄等の鉄系素材が用いられている場合には、冷媒に鉄系不純物が含まれる可能性が高い。鉄系不純物を含んだ冷媒がタービンに流入した場合、タービンを傷つけたり、磨耗等を発生させたりして、タービンの性能を低下させるおそれがある。
【0005】
本発明は、冷媒に含まれる鉄系不純物を捕捉することができるランキンサイクルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るランキンサイクルシステムは、内燃機関を冷却する冷媒を作動流体として駆動されるタービンより上流側の冷媒通路内に配置された電磁石と、前記電磁石への通電および通電停止を行う通電制御手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係るランキンサイクルシステムによれば、通電時には電磁石によって冷媒に含まれる鉄系不純物が電磁石に付着する。それにより、冷媒に含まれる鉄系不純物を捕捉することができる。また、通電停止時には、電磁石に付着した鉄系不純物の磁性が無くなることから、鉄系不純物を電磁石から容易に除去することができる。
【0008】
上記構成において、前記通電制御手段は、前記内燃機関の始動スイッチがOFFにされてから所定時間経過後まで前記電磁石への通電を行ってもよい。
【0009】
この構成によれば、内燃機関の始動スイッチがOFFにされてから所定時間経過するまで、冷媒に含まれる鉄系不純物を捕捉することができる。それにより、冷媒通路内の冷媒の流れが無くなるまで、冷媒に含まれる鉄系不純物を捕捉することができる。その結果、鉄系不純物を含んだ冷媒がタービンに流入することを抑制することができる。
【0010】
上記構成は、前記通電時に前記電磁石に付着した鉄系不純物を前記通電停止後に回収する回収手段を備えていてもよい。
【0011】
この構成によれば、通電停止後に鉄系不純物を回収することができる。
【0012】
上記構成において、前記電磁石は、前記通電時には鉄系不純物が付着し、前記通電停止後には付着した前記鉄系不純物を重力作用によって剥落させる斜面を有していてもよい。
【0013】
この構成によれば、通電停止後に電磁石に付着した鉄系不純物を重力作用を利用して電磁石から除去することができる。
【0014】
上記構成において、前記電磁石は、前記電磁石より上流側の前記冷媒を整流させて下流側に通過させる整流構造を有していてもよい。
【0015】
この構成によれば、蒸気および水の混合状態の冷媒から蒸気および水を分離させやすくすることができる。
【0016】
上記構成は、前記電磁石を振動させる加振手段を備えていてもよい。
【0017】
この構成によれば、加振手段によって電磁石を振動させることによって、電磁石に付着した鉄系不純物が電磁石から除去され易くなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、冷媒に含まれる鉄系不純物を捕捉することができるランキンサイクルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1に係るランキンサイクルシステムの構成を示す模式図である。
【図2】図2(a)は、実施例1に係る電磁石装着部近傍の模式図である。図2(b)は、電磁石装着部をA方向から見た模式図である。
【図3】図3は、実施例1の変形例1に係る電磁石装着部近傍の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1に係るランキンサイクルシステム10について説明する。図1は、ランキンサイクルシステム10の構成を示す模式図である。ランキンサイクルシステム10は、冷媒が流動するための冷媒通路20と、冷媒タンク30と、ポンプ40と、内燃機関50と、気液分離器60と、過熱器70と、タービン80と、凝縮器90と、回収器100と、バッテリ110と、通電切替器120と、ECU140と、を備える。冷媒タンク30、ポンプ40、内燃機関50、気液分離器60、過熱器70、タービン80および凝縮器90は、冷媒通路20に介装されている。それにより、冷媒は、これらの構成部材を通過する。
【0022】
冷媒通路20は、タービン80より上流側の通路途中に電磁石装着部22を有している。電磁石装着部22には、電磁石150(電磁石150は、後述する図2(a)において図示されている)が装着されている。本実施例においては、電磁石装着部22は、内燃機関50と気液分離器60との間の冷媒通路20に配置されている。電磁石装着部22の詳細は、後述する。
【0023】
冷媒タンク30は、冷媒を貯留するタンクである。本実施例において、冷媒は、内燃機関50を冷却する機能およびランキンサイクルシステム10の作動流体としての機能を有する。冷媒としては、これらの機能を有するものであれば特に限定されない。
【0024】
ポンプ40は、冷媒タンク30内の冷媒を内燃機関50内に形成された冷媒通路20の入口へ供給するポンプである。本実施例においては、ポンプ40は内燃機関50の運転開始とともに始動し、内燃機関50の運転停止とともに停止する。ポンプ40としては、例えばウォータポンプ等が用いられる。
【0025】
内燃機関50内において、冷媒通路20は、例えばシリンダ周囲に形成されている。ポンプ40から吐出された冷媒は、内燃機関50内の冷媒通路20を流動する。冷媒は、内燃機関50内の冷媒通路20を流動する間に内燃機関50の熱を吸熱して沸騰し、沸騰気化熱によって内燃機関50を冷却する。内燃機関50内の冷媒通路20を流動した冷媒は、蒸気と水との混合状態になる。
【0026】
気液分離器60は、内燃機関50内の冷媒通路20を流動した冷媒を蒸気と液体とに分離する。なお、本実施例においては、内燃機関50と気液分離器60との間の冷媒通路20が、電磁石装着部22を有している。よって、気液分離器60は、電磁石装着部22の電磁石150を通過した冷媒を蒸気と液体とに分離する。気液分離器60によって分離された蒸気は、過熱器70に流入する。気液分離器60によって分離された水は、ポンプ40に流入して、再び内燃機関50内の冷媒通路20に供給される。
【0027】
過熱器70は、気液分離器60を通過した蒸気を過熱蒸気にする。本実施例において、過熱器70は、気液分離器60を経由した蒸気を内燃機関50の廃熱(例えば、排気ガスの熱)を利用して過熱蒸気にする。
【0028】
タービン80は、過熱器70を通過した過熱蒸気によって駆動される。すなわち、タービン80は、内燃機関50を冷却する冷媒を作動流体として駆動される。タービン80には、例えば発電機が接続されている。この場合、内燃機関50の廃熱を回収することができる。
【0029】
凝縮器90は、タービン80を通過した過熱蒸気を凝縮して液体状態の冷媒に戻す装置である。凝縮器90によって凝縮された冷媒は、冷媒タンク30に貯留される。凝縮器90としては、例えばラジエータ等が用いられる。
【0030】
回収器100は、電磁石装着部22の近傍に配置されている。本実施例において、回収器100は、電磁石装着部22が有する電磁石150に付着した鉄系不純物を、電磁石150への通電停止後に回収するための容器である。回収器100の詳細は、後述する。
【0031】
バッテリ110は、通電切替器120を介して電磁石150に電気的に接続されている。通電切替器120は、ECU140からの指示を受けて、電磁石150への通電および通電停止を行う。通電切替器120としては、例えば、ECU140によって作動が制御されるスイッチ等を用いることができる。
【0032】
ECU140は、CPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータである。本実施例においてECU140は、内燃機関50の始動スイッチ130からの信号に基づいて、通電切替器120を制御する。始動スイッチ130は、内燃機関50を始動させるためのスイッチである。例えば、運転者によって始動スイッチ130がONにされた場合、ECU140は、電磁石150への通電が行われるように通電切替器120を制御する。例えば、運転者によって始動スイッチ130がOFFにされてから所定時間経過した場合、ECU140は、電磁石150への通電停止が行われるように通電切替器120を制御する。すなわち、通電切替器120およびECU140は、電磁石150への通電および通電停止を行う通電制御手段として機能する。なお、所定時間としては、特に限定されないが、例えば冷媒通路20内の冷媒の流れが無くなるまでの時間を採用することができる。
【0033】
図2(a)は、電磁石装着部22近傍の模式図である。図2(b)は、電磁石装着部22をA方向から見た模式図である。本実施例において、電磁石装着部22の電磁石150は、電磁石150より上流側の冷媒を整流させて下流側に通過させる整流構造を有している。整流構造としては、冷媒を整流することができる構造であれば、特に限定されない。本実施例においては、電磁石装着部22内には、板形状を有する電磁石150が所定間隔を有して複数配置されている。電磁石装着部22より上流側の冷媒は、隣接する電磁石150間を通過する。この場合、冷媒は、電磁石装着部22を通過することによって整流される。
【0034】
また、電磁石150は、電磁石装着部22より上流の冷媒通路20内の冷媒流動方向に対して傾斜して配置されている。この場合、電磁石150の通電が行われた場合、冷媒に含まれる鉄系不純物は、主として斜面152に付着する。電磁石150の通電が停止された場合、斜面152に付着していた鉄系不純物は、磁性を失う。その結果、鉄系不純物は、重力作用を受けて斜面152から剥落する。斜面152から剥落した鉄系不純物は、回収器100に回収される。すなわち、電磁石150は、通電時には鉄系不純物が付着し、通電停止後には付着した鉄系不純物を重力作用によって剥落させる斜面152を有している。また、回収器100は、電磁石150に付着した鉄系不純物を、電磁石150への通電停止後に回収する回収手段として機能する。なお、電磁石150の傾斜の向きは特に限定されない。
【0035】
本実施例に係るランキンサイクルシステム10によれば、ECU140が電磁石150への通電が行われるように通電切替器120を制御することによって、冷媒に含まれる鉄系不純物を電磁石150が捕捉することができる。それにより、鉄系不純物を含んだ冷媒がタービンに流入することに伴うタービンの性能低下が抑制される。また、鉄系不純物が冷媒通路20内に堆積することが抑制される。
【0036】
また、ECU140が電磁石150への通電停止が行われるように通電切替器120を制御することによって、電磁石150に付着した鉄系不純物の磁性が無くなる。それにより、鉄系不純物を電磁石150から容易に除去することができる。
【0037】
なお、本実施例において、ECU140は、始動スイッチ130がOFFにされてから所定時間経過後まで電磁石150への通電が行われるように通電切替器120を制御するが、これに限られない。例えばECU140は、始動スイッチ130がOFFにされるまでの間、電磁石150への通電が行われるように通電切替器120を制御してもよい。ただし、始動スイッチ130がOFFにされてから所定時間経過後まで電磁石150への通電が行われる場合には、冷媒通路20内の冷媒の流れが無くなるまで、冷媒に含まれる鉄系不純物を捕捉することができる。その結果、鉄系不純物を含んだ冷媒がタービン80に流入することを抑制することができる。
【0038】
なお、本実施例において電磁石150は整流構造を有しているが、これに限られない。電磁石150は、整流構造を有していなくてもよい。しかしながら、電磁石150が整流構造を有することによって、蒸気および水の混合状態の冷媒から蒸気および水を分離させやすくすることができる。その結果、気液分離器60の負担を軽減することができる。
【0039】
また、本実施例において電磁石150は、通電時には鉄系不純物が付着し、通電停止後には付着した鉄系不純物を重力作用によって剥落させる斜面152を有しているがこれに限られない。例えば、電磁石150は、電磁石装着部22内に水平に配置されていてもよい。しかしながら、電磁石150が斜面152を有することにより、通電停止後に電磁石150に付着した鉄系不純物を重力作用を利用して電磁石150から除去することができる。その結果、鉄系不純物の電磁石150からの除去を容易に行うことができる。
【0040】
また、本実施例においてランキンサイクルシステム10は回収器100を備えているが、これに限られない。ランキンサイクルシステム10は回収器100を備えていなくてもよい。しなしながら、ランキンサイクルシステム10が回収器100を備えることによって、通電停止後において鉄系不純物を回収することができる。その結果、次回の通電時に冷媒通路20内に鉄系不純物が再混入することを抑制することができる。
【0041】
なお、回収器100は、ランキンサイクルシステム10から脱着可能な構成を有していることが好ましい。この場合、回収器100に回収された鉄系不純物を廃棄することが容易になるからである。また、回収器100のメンテナンスが容易になるからである。
【0042】
(変形例1)
ランキンサイクルシステム10は、電磁石150を振動させる加振器160(加振手段)を備えていてもよい。図3は、本変形例に係る電磁石装着部22近傍の模式図である。本実施例において、加振器160は、電磁石装着部22に配置されている。この場合、加振器160は、ECU140の指示を受けて振動する。それにより、電磁石装着部22および電磁石150は振動する。加振器160としては、特に限定されないが、例えば偏心モータを有することによって振動する加振器等を用いることができる。ECU140は、例えば始動スイッチ130がOFFにされた場合に、電磁石150が振動するように加振器160を制御する。加振器160が電磁石150を振動させることによって、電磁石150に付着した鉄系不純物が電磁石150から除去され易くなる。
【0043】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 ランキンサイクルシステム
20 冷媒通路
22 電磁石装着部
50 内燃機関
60 気液分離器
70 過熱器
80 タービン
100 回収器
120 通電切替器
130 始動スイッチ
140 ECU
150 電磁石
152 斜面
160 加振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を冷却する冷媒を作動流体として駆動されるタービンより上流側の冷媒通路内に配置された電磁石と、
前記電磁石への通電および通電停止を行う通電制御手段と、を備えることを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項2】
前記通電制御手段は、前記内燃機関の始動スイッチがOFFにされてから所定時間経過後まで前記電磁石への通電を行う請求項1記載のランキンサイクルシステム。
【請求項3】
前記通電時に前記電磁石に付着した鉄系不純物を前記通電停止後に回収する回収手段を備える請求項1または2に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項4】
前記電磁石は、前記通電時には鉄系不純物が付着し、前記通電停止後には付着した前記鉄系不純物を重力作用によって剥落させる斜面を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項5】
前記電磁石は、前記電磁石より上流側の前記冷媒を整流させて下流側に通過させる整流構造を有している請求項1〜4のいずれか1項に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項6】
前記電磁石を振動させる加振手段を備える請求項1〜5のいずれか1項に記載のランキンサイクルシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−285895(P2010−285895A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138625(P2009−138625)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)