説明

ランダム充填要素及びこれを含むカラム

鞍形ランダム充填要素は、横方向に間隔を空けたアーチ形サイド部材と、内部容積を形成するためにサイド部材からおよびその間に伸びる複数の内側および外側リブ要素と備える。少なくとも1つのより低いリブ要素は、サイド部材から伸びて、少なくとも部分的に内部容積内に配置され、その結果、充填要素の表面領域の少なくともの約20%が内部容積内に配置される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2006年10月10日に出願された、仮出願番号60/828,900の35U.S.C§119(e)に基づく優先権の利益を主張し、その開示の全部は、この参照番号によって特にここに組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概して、化学プロセスと、物質移動リアクタ及びカラムに使われる物質移動装置、特に、そのような化学リアクタ及びカラムに使われるランダム充填要素に関するものである。また、本発明は、そのようなランダム充填要素を作製し、かつ使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ランダムあるいはダンプト(dumped)充填要素は、通常、典型的な例では、液体流である下方流動流体と、典型的な例では、気体流や蒸気流あるいは他の液体流である上方上昇流体の間の物質移動表面を提供するために、気−液、あるいは、液−液接触塔あるいはカラムにおいて用いられる。ランダム充填要素は、様々な化学プロセスや処理プロセス、例えば、調整、除去、分留、吸収、分離、洗浄、抽出、あるいは、他の化学、熱交換、または、処理タイププロセスにおいて使われてもよい。概して、分離ランダム充填要素は、特定の幾何学的形状を持ち、所定の物質移動表面領域の性能を最大にするよう設計される。ランダム充填要素は、概して、任意に配向された充填床において、カラムシェル内に、投入され、あるいはランダムに充填されるので、個々のランダム充填要素は、充填床内で多数の輪番配向をとる時、高い物質移動効率と良好な水分容量を持つのが望ましいからである。
【0004】
先行技術のランダム充填要素には、様々な形態や物質が存在する。通常は、ランダム充填要素は、金属、セラミックタイプの材料、プラスチック、ガラス等によって構成される。一般的に、ランダム充填要素は、円筒形、アーチ形、または「鞍形」であり、あるいはその他、例えば、球形やドーナツ形等の非アーチ形をとる。先行技術のランダム充填要素の不利益の一つは、しばしば、要素の性能が、充填床内の要素を通る流動体の流れの方向に対してその形状および配向に高く依存している事である。例えば、ポールリングは、複数個のすきま壁と、内部の舌片あるいは突起を持つ、公知の円柱形充填要素である。その縦軸に沿って見ると、ポールリングには、物質移動の非常に小さな表面領域しか存在しないが、その縦軸方向に垂直に見ると、その要素には非常に大きな表面領域が存在する。この違いのため、蒸気/液体あるいは、液体/液体接触のために利用可能な表面領域は、要素の配向によって変化し、究極的には、要素の性能に影響を及ぼす。それに加えて、ポールリングの縦軸に垂直な方向の大きな表面領域は、流れの方向が下向きの場合、間近に隣接したリングを通って流れる流動体を「遮蔽したり」、妨げたりする傾向がある点で、不利である。
【0005】
その全容積を通して表面領域のより一様な分布を持つランダム充填要素は、米国特許第5,112,536号(ここでは、536特許という)において開示されている。その中で開示されている鞍形ランダム充填要素は、内部容積を決める交互に並んだアーチ形内外リブ要素を含む。536特許に開示された充填要素は、先行技術の他のランダム充填要素を超える改善を与えるが、それは、その性能を妨げ得る制限も含んでいる。例えば、536特許に開示された充填要素の湾曲は、内側リブ要素を、同一曲面に同時に近接して配置し、それによって、要素を通り過ぎる流動体流の流路を制限させている。それに加えて、536特許の充填要素のリブは、概して、中央で縦方向に整列されるため、流動体流に出くわした最初のリブ要素は、通常は、それに続くリブ要素と流動体との接触を遮断する。この遮断効果は、要素の物質および/または熱の移動のための効果的表面領域を減少することで、物質移動の効率を減少させることができる。その上、536特許は、1つ以上のリブ要素の切断と、不連続端部の内部容積への曲げ入れの可能性とを開示しているが、536特許のランダム充填要素の表面領域の大半は、内部容積の外側に残っている。
【0006】
他の種類のランダム充填要素が、米国特許第5,882,772号に開示されている。その特許では、複数の個々のストリップが備えられ、各々のストリップが、平面状外側のウェブアタッチメント領域間に概略正弦曲線状に伸びている。同様なランダム充填要素が、米国特許第5,543,088号において開示されており、そこでは複数のストリップが平面状のエンドアタッチメント領域間に伸びている。これらの両発明について、個々のストリップは、それらの中間点に沿って一緒に接続されており、これによって、ストリップが一緒に押し込まれ、気体の通路が妨げられる領域を提供する。加えて、充填要素は、平面状外側のウェブやアタッチメント領域の変形に耐えうるのに十分な厚さと強さの材料から作られなければならない。ランダム充填要素は、比較的薄いゲージ材料を用いて変形に耐える形状を持つのが望ましい。
【0007】
こうして、充填床内で多数の異なる輪番配向位置にあるとき、高い物質移動効率と良好な水分容量とを維持することがランダム充填要素には必要となる。有利にも、充填要素は、ほとんどまたは全く廃棄材料を出すことなく容易に製造されるべきであり、上述の変形タイプに、より容易に耐える形状を有すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,112,536号
【特許文献2】米国特許第5,882,772号
【特許文献3】米国特許第5,543,088号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一形態において、本発明は、充填要素に出会う流動体の流れの方向に関係して、複数の輪番配向に配置された時、概略均一の開流量を備える鞍形ランダム充填要素を提供する。本発明の鞍形要素は、放射状に直立したフランジを含む、横方向に間隔を空け、縦に伸ばされた一対のアーチ形サイド部材を備える。このサイド部材は、本発明の充填要素の縦軸を協同して定義する。加えて、充填要素は、充填要素内の内部容積を協同して定義するために、サイド部材からサイド部材の間に延びる複数の内側および外側アーチ形リブ要素を含む。この内側および/または外側リブ要素は、充填要素の縦軸に、整列されても良いし、あるいは、その縦軸から交互にずらされていても良い。外側リブ要素は、内側の幅と同じか、またはその2倍までか、あるいは2倍以上の幅を持つことができる。内側および外側リブ要素の総数は、約3〜約20の範囲でも良い。リブ要素の説明の中の「アーチ形」という文言の使用は、湾曲した形状を持つリブ要素、および“V”形を持つような複数の直線から形成されるリブ要素、あるいは、曲線と直線の組み合わせから形成されるリブ要素を包含することが意図される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の鞍形ランダム充填要素もまた、内側および外側リブ要素より高さの低い、連続した内側および/または外側リブ要素の間に縦方向に配置される少なくとも1つのリブ要素を有する。そのより低いリブ要素は、少なくとも1つのドリップ点を有し、少なくとも部分的には充填要素の内部容積に配置される。これより低いリブ要素は、少なくとも部分的には連続であって、または、少なくとも1つのリブ要素は、それによって各々が自由端を持つ2つのより短いリブセグメントを形成するために、不連続とされてもよい。リブセグメントは、例えば、半径的に反対方向に曲げられ、あるいは、同じ半径方向に曲げられるように、独立して配置され得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、ランダム充填要素の総表面領域の少なくとも約20%が内部容積内に定義される。先行技術のランダム充填要素と比較すると、本発明の要素の形状と構造は、充填要素がリアクタまたはカラムの充填床内における複数の異なる輪番配向に位置を占める時に、より均一な表面領域の分布、より制限されていない流動体流路を提供することにより、物質移動効率を増加させる。
【0012】
他の実施形態において、本発明は、物質移動床、およびこれを含むリアクタあるいはカラムを指向するものであり、それらでは、上述の複数のランダム充填要素は、流動体流間の物質および/または熱移動が起こるゾーンを提供するため、概略ランダム配向で配置される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
明細書の一部を形成し、明細書と一緒に読まれるべきであり、同じ参照数字が様々な図面において同じ部品を示すように用いられている図面において、
【図1】図1は、本発明のランダム充填要素の一実施形態の側面図である。
【図2】図2は、図1に示されるランダム充填要素の平面図であり、図1に示されるものよりわずかに拡大されたスケールで示される。
【図3−13】図3〜図13は、図1及び図2に示されるランダム充填要素の様々な斜視図である。
【図4−26】図14〜図26は、本発明に従って構成されたランダム充填要素の他の実施形態の様々な斜視図である。
【図27】図27は、本発明のランダム充填要素から形成される充填床を含むカラムあるいはリアクタの部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで詳細に図面、最初に図1〜図13を参照して、本発明に係る概略鞍形ランダム充填要素の一実施形態が、概して参照番号10番によって表される。充填要素10は、一部トーラス形に形成されたアーチ形体11から構成される。アーチ形体11は、トーラスの体積の5〜50%あるいは10〜25%の範囲で表すことができる。
【0015】
充填要素10は、横方向に間隔を空けて、長手方向に延在し、略平行な、一対のアーチ形サイド部材12および14を有する。サイド部材12および14は、付加的なものであるが、好ましくは、半径方向に直立したフランジ要素16および18を有し、それによって、充填要素10のアーチ形体11の水平端方向に、充填要素10の表面に沿って液体を導く働きをする2つのトラフ20および22を形成する。サイド部材12および14と、フランジ16および18とのアーチ形状は、変形に耐性のある形状を与え、先行技術のランダム充填要素と比較して、より安価で、より軽量なゲージ材料の使用が可能となる。フランジ要素16および18に加えて、あるいは、代替として、サイド部材12および14は、エンボス加工、正弦曲線形、または他の波形への成形、あるいは他の方法によって強化されても良い。
【0016】
また、ランダム充填要素10は、概して、参照番号24および26でそれぞれ指定される複数の内側および外側アーチ形リブ要素も含む。リブ要素24および26は、概して、充填要素10のアーチ形体の長さに沿って、サイド部材12と14とから、かつその間に延在する。リブ要素24および26の反対側の端部は、サイド部材12と14と、それぞれ一体であるか、あるいは接続されている。ここで用いられているように、「外側リブ要素」という文言は、充填要素のアーチ形体11の半径の軌跡から概して外側に離れる方向へ延在するリブ要素を示す。ここで用いられているように、「内側リブ要素」という文言は、充填要素のアーチ形体11の半径の軌跡に向かって概して内側方向へ延在するリブ要素を示す。内側リブ要素24および/または外側リブ要素26の各々は、充填要素10のアーチ形体11の半径に沿って、それぞれ、概して外側および/または内側に延在しても良い。これに代わって、いくつか、あるいは全ての内側リブ要素24および/または外側リブ要素26は半径を交差する角度で延在しても良い。矢印27aと27bとは、それぞれ、概して、図1における充填要素10に関して、半径内側方向と半径外側方向とを指定する。内側リブ要素24および外側リブ要素26の総数は、概して、約3から約20、あるいは、5から17の範囲にすることができる。4つの内側リブ要素24および5つの外側リブ要素26は、充填要素10の図示された実施形態の中に存在する。
【0017】
図1〜図13に示されるように、内側アーチ形リブ要素24および外側アーチ形リブ要素26は、アーチ形体11内においてサイド部材12および14の間、上側および下側に概略アーチ形の内部容積28を定義する。蒸気および/または液体流路のための内部容積へのアクセス可能性の度合いは、内側アーチ形リブ要素24および外側アーチ形リブ要素26の大きさ、形、および配向によって、ある程度促進にすることができる。一実施形態において、内側アーチ形リブ要素24および外側アーチ形リブ要素26は、それぞれ、概して半径方向に延在しており、基本的には同じ高さである。
【0018】
リブ要素24と26とは、中心縦方向に整列され得るし、あるいは、図2に最も良く図示されている通り、好ましくは、アーチ形体の中心縦軸30から、交互にずらされ得る。このずれは、中央に整列されたリブ要素によって生み出される流動体接触面よりも、むしろ気体/液体接触点を生み出す。これに加えて、このずれは、連続的に中央に整列されたリブ要素による遮蔽効果を最小化することによって、充填要素10のアーチ形体11の内部容積28を通る縦方向流動体流路を開くのに役立つ。さらに、縦方向のずれは、1つのランダム充填要素の1つ以上のリブの、ランダム充填床において他のランダム要素の1つ以上のリブ要素内に入り込み始める傾向、しばしば、「ネスティング」と呼ばれる出来事を減少させることができる。ネスティングは、物質移動効率を減少させ、充填床内での液体と気体のチャネリングを促進することができる。
【0019】
各内側リブ要素24および各外側リブ要素26の幅は、特定の用途において、所望の性能のため個々に選択されても良い。例えば、外側リブ要素26の幅は、概略、内側リブ要素24の幅と同じか、または、2倍までか、あるいは2倍超であっても良い。充填要素10のアーチ形体の湾曲のため、内側アーチ形リブ要素24は、図1において最も良く示されるように、半径方向内側に伸ばされているので、互いにより近くに位置決めされている。それゆえに、より狭い内側アーチ形リブ要素24は、矢印27bによって示される半径外側方向において、充填要素10を流れる流動体流によって経験される流路制限を最小化することができる。図1において最も良く示され得る通り、アーチ形体11の端部から遠くに配置された内側リブ要素24は、より開放された空間が内側リブ要素24間に与えられるため、より端部近くに配置された内側リブ要素24よりもより小さな幅を有することができる。これに加えて、あるいは、その代わりに、隣接する内側リブ要素24間の空間をより広く与えるために、内側リブ要素24の数は、減らされ得る、および/または、内側リブ要素は半径方向から外側に曲げられ得る。
【0020】
例えば、内側アーチ形リブ要素24の幅は、単独で、約1mm超、約1.5mm超、あるいは、2mm超であり得る。外側アーチ形リブ要素26の幅は、過剰に広いリブ要素の外側あるいは下流側において発生する停滞した低物質移動ウェークゾーンの生成を避けるために、単独で、約5mm未満、約4.5mm未満、あるいは4mm未満であり得る。これらのウェークゾーンは、概して、ランダム充填要素10の物質移動効率を減少させる点で、望ましくない。
【0021】
充填要素10は、これに加えて、内側リブ要素24および外側リブ要素26より低い高さの1つ以上のより低いリブ要素32を含む。より低いリブ要素32は、交互に連続した内側リブ要素24および外側リブ要素26の間に、縦方向に配置され、かつ、一実施形態では、サイド部材12および14にその反対側の端部で接続される。もう一つの実施形態では、1つ以上のより低いリブ要素32の一端あるいは両端は、サイド部材12および14よりはむしろ、隣接するリブ要素32、24、あるいは26に接続されていても良い。より低いリブ要素32は、充填要素10の容積の間中、物質移動表面をより均一に分布するため、充填要素10のアーチ形体11の内部容積28に少なくとも部分的に設置される。概して、ランダム充填要素10の総表面領域の少なくとも約20%、少なくとも約40%、あるいは少なくとも50%は、概略、充填要素10のアーチ形体11の内部容積28内に位置する。図示された実施形態において、ランダム充填要素10の総表面積のおおよそ38%は、内部容積28内に位置する。
【0022】
より低いリブ要素32は、個々に、連続し、不連続であり、あるいは、任意に組み合わされ、そして、何らかの方法で曲げられ、あるいは成形されても良い。一実施形態において、1つ以上のより低いリブ要素は、例えば、内アーチ形空間28の中にドリップ点を有する1つ以上のピークやトラフを持つ正弦波の形に連続して曲げられても良い。ここで述べられているように、「ドリップ点」という文言は、そこから液体が落ちるあるいは滴下するいかなる連続、または不連続なエッジあるいは点を言う。ドリップ点は、そこから落ちる液体に小液滴を形成させ、そしてそれは、強化された蒸気接触を促進し、それによって物質移動効率を増加させる。
【0023】
もう一つの実施形態において、1つ以上のより低いリブ要素32は、切断され、かつ不連続にされ、それによって充填要素10の内部容積26内に個々に配向されてもよい2つのリブセグメント34aおよび34bを形成しても良い。1つの実施例として、リブセグメント34aと34bとは、実質的に、正弦波の形のままでも良いが、間隔の開いたドリップ点を形成するようにオフセットされた自由端を備えていても良い。もう一つの実施例は、リブセグメント34aと34bとは、リブセグメント間を通る半径面について見た時、お互いが鏡像を形成するように、両方とも同じ半径方向に曲げられても良い。
【0024】
より低いリブ要素32の幅は、同じ半径方向に伸びた内側リブ要素24および外側リブ要素26の幅と同じでも良いし、違っていても良い。図示された充填要素10において、各々のより低いリブ要素32は、アーチ形体11の端部から内側に配置された2つの内側リブ要素24とおおよそ同じの幅を持つ。
【0025】
充填要素10の縦方向の長さに沿った、内側リブ要素24および外側リブ要素26、ならびに、より低いリブ要素32の数および配置は、特定の用途に合わせて変えることができる。好ましくは、リブ要素24、26、および32は、それらの各端部を除いて、それらの全長に沿って、隣接するリブ要素24、26、および32から間隔を空けて離れてとどまり、その結果、充填要素10が、充填要素10を通る所望の流動体流を塞ぐ機会を減らすより開いた構造を有する。一つの充填要素10のリブセグメント34aと34bとが、他の充填要素10のリブ要素24、26、32、34aまたは34bに引っかかる機会を減らすために、通常は、リブセグメント34aと34bとが、充填要素10の縦方向端部のいずれにも配置されていないことが望ましい。こうして、リブセグメント34aと34bとは、充填要素10の端部に配置されたリブ要素24、26、あるいは32によって遮られるように、充填要素の縦方向端部の内側に配置されることが好ましい。
【0026】
充填要素10の図示された実施形態において、各々のより低いリブ要素32は、一対の内側リブ要素24および外側リブ要素26の間に配置される。もちろん、外側リブ要素26のペアの間にも、内側リブ要素24のペアの間にも、リブ要素32、内側リブ要素24、および外側リブ要素26のどんなペアの組み合わせの間にも、より低いリブ要素32のそれぞれを個々に配置することができる。充填要素10の図示された実施形態において、内側リブ要素24は、交互性のある内側リブ要素24および外側リブ要素26の間に配置され、充填要素10の端部にあり、4つのより低いリブ要素32は、同じ長さのリブセグメント34aと34bとを形成する働きをする中央に配置された2つのより低いリブ要素32を有する。様々なリブ要素24、26、32、34a、および34bの数と配置は、特定の用途に合わせて変えることができる。
【0027】
本発明の充填要素のもう一つの実施形態は、図14〜図26において示されており、参照番号110によって広く指定されている。充填要素110は、充填要素10に類似し、接頭語「1」が前に置かれた同じ参照番号は、類似の要素を指定するために使われる。
【0028】
充填要素110は、一部がトーラスの形状に形成されたアーチ形体111を含む。アーチ形体111は、トーラスの容量のほぼ15%を規定する。充填要素110は、アーチ形体111の縦方向端部に液体を導くトラフ120と122とを形成する、フランジ要素116と118とをそれぞれ含む湾曲したサイド部材112と114とを有する。
【0029】
内側アーチ形リブ要素124は、アーチ形体111の両縦方向端部に配置され、外側アーチ形リブ要素126は、サイド部材112と114とに沿って中間点に配置される。内側リブ要素124は、概略、矢印127aによって表わされる半径内側方向に伸び、外側リブ要素126は、矢印127bによって表わされる半径外側方向に伸びている。内側リブ要素124および外側リブ要素126は共に、中心縦軸130を持つ、概略アーチ形内部容積128を定義する。
【0030】
4つのより低いリブ要素132は、内側リブ要素124および外側リブ要素126の隣接するペアの間に配置される。最内部にある2つのより低いリブ要素132のそれぞれは、不連続であり、かつリブセグメント134aと134bとを形成する。リブセグメント134aおよび134bと、リブ要素124、126および132とは、充填要素10において対応する要素に関して前述したように、構成され、配置され、配向され得る。図示された実施形態において、ランダム充填要素110の総表面領域のおおよそ36%は、内部容積128内に設置される。好ましくは、リブ要素124、126、および132は、それらの各端部を除いて、それらの全長に沿って、隣接するリブ要素124、126、および132から間隔を空けて離れてとどまり、その結果、充填要素110が、充填要素110を通る所望の流動体流を塞ぐ機会を減らすより開いた構造を有する。
【0031】
本発明のランダム充填要素10と110とは、例えば、セラミック、プラスチック、あるいは金属を含む様々な物質で作られても良い。ランダム充填要素10と110とは、加工硬化によって、少なくとも要素表面の一部をテクスチャリングし、少なくとも要素の一部の一側面、あるいは両側面にディンプルを持つ要素表面をエンボス加工することによって、および/または、充填要素110に関して示される様々なリブ要素124、126、および130に対して湾曲した断面をエンボス加工することによって、強化しても良い。湾曲した断面は、トラフ120、および122に沿った流動体の流れを分裂させ、充填要素110の端部へ流れるのを許容するよりはむしろ、リブ要素124、126、および132の方へ再び方向を変えさせる働きを持つ構造を備えるように、サイド部材112、および114へ十分遠く伸びているのが好ましい。ディンプル、あるいは他の流れ分裂構造は、同じ目的を達成するため、トラフ120、122に配置され得る。同じ構造も、また充填要素10に関連して使われても良い。
【0032】
ランダム充填要素10と110とは、様々な技術によって製造されても良い。一実施形態において、本発明のランダム充填要素は、参照番号によって本願に組み込まれた米国特許5,112,536号において述べられる手順によって製造されても良く、ここでは、充填要素が、各々、1つの平らな材料シートによって形成され、サイド部材と共にある内側および外側、より低いリブ要素が、実質的には、シート状材料の総表面領域を含む。
【0033】
図27によると、複数のランダム充填要素10と110とは、リアクタにおいて、および/または、蒸気/液体、あるいは液体/液体接触塔36において、物質、および/または熱移動表面領域を提供するために使われ得る。ランダム充填要素10、および/または110は、充填床38を形成するために、カラムあるいはリアクタ36の適切な支持体へ投入されても良いし、カラムあるいはリアクタ36への配置前に、概略ランダム配向に充填床形成において前もって配置しておいても良い。前述の本発明の充填要素の形状および構成は、オープンで、容易にアクセス可能な流動体流路を生成し、多数の角度から見た時、比較的均一な表面領域分布を提供し、概略配向と独立した要素性能をもたらす。
【0034】
以下の実施例は、本発明のランダム充填要素の配向に独立した性能を例示するものであるが、どの場合も発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0035】
物質移動係数は、比較要素1:米国特許第4,303,599号に例示されたタイプの鞍形ランダム充填要素、比較要素2:米国特許第5,882,772号に例示されたタイプの鞍形ランダム充填要素、そして、本願発明の要素3:図1〜図13に例示された充填要素10、の3つの異なるランダム充填要素に対して計算された。
【0036】
各々の充填要素の物質移動係数は、以下のテーブル1でA〜Iにラベルが付された10の異なる充填配向の各々に対して計算された。AからIの配向は、3つのデカルト軸の各々の基準位置から、0°、45°、90°に配置された要素に対応する。各々の充填要素に対して物質移動係数の範囲は、A〜Iの各々の位置の中の、物質移動係数の最大から最小を減じたものによって決定された。各々の充填要素の平均物質移動係数は、A〜I各々の配向に対して計算された個々の物質移動係数を平均化することで決定された。
【0037】
概して、より高い物質移動係数は、より高い物質移動効率を持つ要素を示し、狭い物質移動係数範囲は、配向の変化に伴う要素の性能のばらつきが少ないことを示す。比較要素1および2、ならびに本願発明の要素3の配向A〜Iの物質移動効率、物質移動係数範囲、および物質移動効率平均は、テーブル1に示される。
【0038】
【表1】

【0039】
テーブル1で示されるように、本願発明の要素3は、比較要素1および2より、低い物質移動係数範囲と、各配向に対するより高い物質移動係数と、より高い平均物質移動係数を有する。それゆえ、本願発明の要素3は、比較要素1および2より効率的かつ低い配向に特有の性能を持つ。
【実施例2】
【0040】
本願発明の要素(図14〜図26において示される充填要素110)の性能と4種類の商用のランダム充填要素の性能とを比較する試験を行った。軽質炭化水素の混合物が全還流によって蒸留された。タワーは、大気圧より十分高い圧力、これはこれらの混合物が工業的に処理される条件の極めて典型的なものあって、充填要素がしばしば使われる条件の典型的なもの、で稼働された。そのタワーの直径と床の深さは、工業的に関連あるデータが生み出されるのに十分なほど大きいものであった。充填床の上下からサンプリングされた液体は、充填効率を計測するために分析された。圧力降下がいかなる不可的な熱入力に伴って極めて急激に増大し、かつ床の頂点からエントレインメントが重大となる(効率の損失)まで熱入力を増大させることによって、充填の最大容量は、決定された。比較試験の結果は、テーブル2に示される。
【0041】
【表2】

【0042】
テスト結果は、本願発明の要素が、比較充填要素と比べ、より小さい相対的な固有の表面領域を用いて、同一の、あるいはより高い相対容量および/またはより高い相対効率を達成したことを実証している。こうして、本願発明の要素は、より小さい相対的な固有の表面領域を用いて、好ましい相対容量と相対効率との両方を達成した。
【0043】
上記から、この発明は、以上説明する、構造に固有の他の利点と共に、その結果および目的の全てを達成するのに良く適合する一例である。
【0044】
ある特徴およびサブコンビネーションは有用であり、他の特徴およびサブコンビネーションを参照することなく使用されても良いことが分かる。これは、特許請求の範囲によって意図されるものであり、特許請求の範囲内にある。
【0045】
あらゆる可能な実施形態は、本発明の範囲から離れること無しに、本発明から作られてもよいので、ここで説明された、あるいは添付図面で示された全ての事項が、例示されたように、かつ、限定を受けないように解釈されるべきであることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した縦軸を協同して定義する、横方向に間隔を空け、縦方向に延在する、一対のアーチ形サイド部材と、
内部容積内を協同して定義するために、前記サイド部材から、その間に延在する複数の、反対方向に延在するアーチ形内側および外側リブ要素と、
前記内側および外側アーチ形リブ要素間に縦方向に配置され、前記内部容積に少なくとも部分的に配置される少なくとも1つのより低いリブ要素とを有し、
前記鞍形ランダム充填要素の総表面領域の少なくとも約20%が前記内部容積内で定義される鞍形ランダム充填要素。
【請求項2】
前記内側および外側リブ要素の総数が、約3〜約20の範囲である請求項1に記載の充填要素。
【請求項3】
前記内側および外側リブ要素の総数が、5である請求項2に記載の充填要素。
【請求項4】
複数の前記より低いリブ要素を含み、前記より低いリブ要素の少なくとも1つが、不連続であり、それによって第1および第2のリブセグメントを創造する請求項1に記載の充填要素。
【請求項5】
前記第1および第2のリブセグメントが、半径的に反対方向に曲げられている請求項4に記載の充填要素。
【請求項6】
前記第1および第のリブセグメントが、同一半径方向に曲げられている請求項4に記載の充填要素。
【請求項7】
前記充填要素が、トーラスの容積の約5〜約50%を表す請求項1に記載の充填要素。
【請求項8】
前記充填要素が、トーラスの容積の約10〜約25%を表す請求項1に記載の充填要素。
【請求項9】
前記外側および/または内側リブ要素が、前記縦軸から概して交互にずらされている請求項1に記載の充填要素。
【請求項10】
前記外側リブ要素の少なくとも1つの幅が、前記内側リブ要素の少なくとも1つの幅と、同じか、または、その2倍まで、あるいはその2倍以上である請求項1に記載の充填要素。
【請求項11】
前記外側リブ要素の幅が、約5mmより小さく、かつ/または前記内側リブ要素の幅が、約1mmより大きい請求項1に記載の充填要素。
【請求項12】
前記より低いリブ要素の少なくとも1つが、少なくとも部分的に連続である請求項1に記載の充填要素。
【請求項13】
少なくとも前記充填要素の前記総表面領域の一部が、テクスチャ加工されている請求項1に記載の充填要素。
【請求項14】
前記内側および外側リブ要素の少なくともいくつかが、カップ型断面を有する請求項1に記載の充填要素。
【請求項15】
前記充填要素が、金属で形成されている請求項1に記載の充填要素。
【請求項16】
前記充填要素が、プラスチックで形成されている請求項1に記載の充填要素。
【請求項17】
前記サイド部材の一方または両方から、前記内側および外側リブ要素、ならびに前記より低いリブ要素の少なくとも1つへ流動体流を向かわせるために、前記サイド部材の一方あるいは両方を配置する構造を含む請求項1に記載の充填要素。
【請求項18】
複数の請求項1に記載の充填要素を有する充填床を含むカラムあるいはリアクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2010−505622(P2010−505622A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532502(P2009−532502)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/080279
【国際公開番号】WO2008/067031
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(506164844)コッホ−グリッチ, エルピー (2)
【Fターム(参考)】