説明

ランダム化配列を含むプライマー及び特異的プライマーを用いる核酸の等温増幅並びにその使用

等温条件下で核酸を増幅して増幅核酸配列を生成させるための方法及びキットが提供される。かかる方法及びキットは、核酸鋳型、DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、ランダム化配列を含むプライマー、及び特異的プライマーを用意する段階、並びに核酸鋳型を増幅する段階を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に等温の鎖置換型核酸増幅のための方法及びキットに関する。詳しくは、本方法はランダムプライマー及び特異的プライマーの混合物を用いる核酸の等温増幅に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、数分子の出発核酸鋳型からでも核酸を増幅するために各種の技法が使用されている。これらには、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、自己持続性配列複製(SSR)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、多重置換増幅(MDA)及びローリングサークル増幅(RCA)がある。
【0003】
核酸増幅技法は、検体検出、センシング、法医学及び診断用途、ゲノム配列決定、全ゲノム増幅などのために使用される核酸ベースアッセイにおいてしばしば採用される。かかる用途は、しばしば高い特異性、感度、精度及び頑強性を有する増幅技法を要求する。核酸の増幅は、出発鋳型核酸が微小量でした利用できない場合に特に重要である。しかし、核酸増幅のために現在利用できる技法の大部分は、不要の/誤った増幅生成物を生じる非特異的増幅反応によって生み出される高いバックグラウンド信号に悩まされている。
【0004】
生物学的試料からの核酸増幅及び分析は、増幅のために等温条件を使用すれば高い精度及び容易性で達成できる。熱サイクリング方法(例えば、PCR)に対する等温増幅方法の主な利点は、熱サイクラーの必要性を回避することにより、最小の計装で実施できることである。等温増幅用の計装では制御加熱ブロック又は水浴が使用でき、これは該技法を一層利用しやすく、簡便でかつ経済的にする。その上、ローリングサークル増幅、全ゲノム増幅又はループ媒介等温増幅(LAMP)のような等温増幅技法の多くは、標的核酸の予備精製なしに、標的核酸を含む祖生物学的材料に対して直接に実施できる。しかし、全ゲノム増幅のようなある種の特定用途では、現行の増幅方法を使用した場合、興味の対象である若干の特定遺伝子座が増幅中に失われることがある。したがって、鋳型核酸中に存在するすべての所要配列を保存するように設計された一層良好な等温増幅方法を開発する必要性が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
米国特許出願公開第2009/0203085号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施形態の1以上は、核酸の効率的な増幅のための方法及びキットを提供する。若干の実施形態では、等温条件下で特異的プライマー及びランダム化配列プライマーを含むプライマーを使用する核酸増幅方法が提供される。
【0007】
一実施形態では、核酸増幅のための方法が提供される。本方法は、核酸鋳型、DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、ランダム化配列を含むプライマー、及び特異的プライマーを用意する段階を含んでいる。本方法はまた、等温条件下で核酸鋳型を増幅して増幅核酸配列を生成させる段階を含んでいる。
【0008】
核酸増幅のための方法の別の実施形態では、本方法は、核酸鋳型、DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、ランダム化配列を含むプライマー、及び特異的プライマーを用意する段階を含んでいる。本方法はまた、等温条件下で核酸鋳型を増幅して表面に結合した増幅核酸配列を生成させる段階を含んでいる。
【0009】
別の実施形態では、核酸増幅のためのキットが提供される。本キットは、Phi29DNAポリメラーゼ、ランダム化配列を含む1以上のプライマー、及び1以上の特異的プライマー
を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読んだ場合に一層よく理解されよう。添付の図面中では、図面全体を通じて類似の部分は同一の符号で示されている。
【図1】図1は、ローリングサークル増幅反応及びビーズに結合した特異的プライマーによる増幅デオキシリボ核酸(DNA)の捕獲、並びに捕獲DNAのさらなる増幅を示す模式図である。
【図2】図2は、ビーズ上における等温ローリングサークルDNA増幅反応の模式図であって、ランダムプライマーを用いて1つのビーズから別のビーズにDNAを移行させることを示している。
【図3】図3は、ビーズに結合したDNAと表面に結合したプライマーとのハイブリダイゼーション及び表面に結合したプライマーのさらなる伸長によってDNAのコピーを表面上に捕獲することを示す図である。
【図4A】図4Aは、増幅DNA及び捕獲DNAでコートされた単一ビーズの画像である。
【図4B】図4Bは、増幅DNAのいかなるコーティングも有しない単一ビーズを示している。
【図5】図5は、ビーズに結合した特異的プライマーによって捕獲された増幅pUC18DNAのEcoRI制限消化生成物(レーン2)を陰性及び陽性対照(レーン3及び4)と比較して示すアガロースゲルの画像である。
【図6】図6は、様々な条件下でビーズに結合した特異的プライマーによって捕獲された増幅DNAのEcoRI制限消化生成物を示すアガロースゲルの画像である。
【図7】図7は、ビーズ上に捕獲された増幅DNA(配列番号2)の配列決定データのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
単一分子DNA増幅又は全ゲノム増幅を伴う核酸ベースアッセイは、高い収率、高い忠実度、及び配列カバレージに関するわずかな偏りを有する極めて効率的な核酸増幅方法を要求する。ランダム化配列を含むプライマーを使用するローリングサークル増幅(RCA)又は多重置換増幅(MDA)のような等温核酸増幅反応は、かかる用途のためには温度依存性の核酸増幅反応(例えば、PCR)より好適である。
【0012】
本発明の1以上の実施形態は、核酸の効率的な等温増幅のための方法及びキットに向けられている。若干の実施形態では、本方法は、2種のプライマー(ランダム化配列を含む1種のプライマー及び特異的プライマー)を使用する核酸鋳型のインビトロ増幅を含んでいる。若干の実施形態では、本発明は、ヌクレオチド類似体を含むランダム化配列を含むプライマーを特異的プライマーと共に使用する核酸鋳型のインビトロ増幅を含んでいる。本方法は、幾分かは核酸増幅反応の効率を高める。本方法はさらに、基材又は捕獲剤(capturing agent又はcapture agent)に結合した特異的プライマーを用いて増幅核酸配列を捕獲することを含んでいる。
【0013】
特許請求される発明の主題を一層明確で簡潔に記載しかつ指摘するため、以下の説明及び添付の特許請求の範囲中で使用される特定の用語に関して以下に定義を示す。明細書全体を通じ、特定の用語の例示は非限定的な例と見なすべきである。
【0014】
“a”、“an”及び“the”を伴う単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。本明細書及び特許請求の範囲の全体を通じて使用される概略表現用語は、それが関係する基本機能の変化を生じることなしに変動することが許容される任意の数量表現を修飾するために適用できる。したがって、「約」のような用語で修飾された値は、明記された厳密な値に限定すべきでない。場合によっては、概略表現用語は値を測定するための計器の精度に対応することがある。同様に、「含まない(free)」という語句はある用語と組み合わせて使用することができるが、これは修飾された用語を含まないと見なされる限りは実質的でない数又は微小な量を含み得る。必要な場合には範囲が示されているが、これらの範囲はその中に入るすべての部分範囲を包含する。
【0015】
本明細書で使用する「ヌクレオシド」という用語は、核酸塩基(ヌクレオ塩基)が糖部分に結合したグリコシルアミン化合物をいう。核酸塩基は天然ヌクレオ塩基又は修飾/合成ヌクレオ塩基であり得る。核酸塩基は、特に限定されないが、プリン塩基(例えば、アデニン又はグアニン)、ピリミジン(例えば、シトシン、ウラシル又はチミン)或いはデアザプリン塩基を包含し得る。核酸塩基は、ペントース(例えば、リボース又はデオキシリボース)糖部分の1’位又は同等の位置に結合し得る。糖部分は、特に限定されないが、天然糖、糖代替物(例えば、炭素環式部分又は非環式部分)、置換糖或いは修飾糖(例えば、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチド中にあるような二環式フラノース単位)を包含し得る。ヌクレオシドは、糖部分の2’−ヒドロキシル体、2’−デオキシ体又は2’,3’−ジデオキシ体を含み得る。
【0016】
本明細書で使用する「ヌクレオチド」又は「ヌクレオチド塩基」という用語は、ヌクレオシドリン酸エステルをいう。この用語は、特に限定されないが、天然ヌクレオチド、合成ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド又は代用置換部分(例えば、イノシン)を包含する。ヌクレオシドリン酸エステルは、ヌクレオシド一リン酸、ヌクレオシド二リン酸又はヌクレオシド三リン酸であり得る。ヌクレオシドリン酸エステル中の糖部分はリボースのようなペントース糖であり得ると共に、リン酸エステル化部位はヌクレオシドのペントース糖のC−5位に結合したヒドロキシル基に対応し得る。ヌクレオチドは、特に限定されないが、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)又はリボヌクレオシド三リン酸(NTP)であり得る。ヌクレオチドは、表1に示すように、アルファベット文字(文字表記)を用いて表すことができる。例えば、Aはアデノシン(即ち、ヌクレオ塩基アデニンを含むヌクレオチド)を表し、Cはシトシンを表し、Gはグアノシンを表し、Tはチミジンを表す。WはA又はT/Uを表し、SはG又はCを表す。Nはランダムヌクレオチドを表す(即ち、NはA、C、G又はT/Uのいずれかであり得る)。文字表記の前に付けたプラス(+)記号は、その文字によって表されるヌクレオチドがLNAヌクレオチドであることを意味する。例えば、+AはアデノシンLNAヌクレオチドを表し、+Nはロックドランダムヌクレオチド(ランダムLNAヌクレオチド)を表す。文字表記の前に付けた星印(*)記号は、その文字によって表されるヌクレオチドがホスホロチオエート修飾ヌクレオチドであることを意味する。例えば、*Nはホスホロチオエート修飾ランダムヌクレオチドを表す。
【0017】
【表1】

本明細書で使用する「ヌクレオチド類似体」という用語は、天然に存在するヌクレオチドと構造的に類似した化合物(類似体)をいう。ヌクレオチド類似体は、改変されたホスフェート骨格、糖部分、ヌクレオ塩基又はこれらの組合せを有し得る。一般に、改変されたヌクレオ塩基を有するヌクレオチド類似体は、とりわけ異なる塩基対合及び塩基スタッキング特性を与える。改変されたホスフェート−糖骨格を有するヌクレオチド類似体(例えば、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA))は、二次構造形成のような鎖特性を変化させることが多い。
【0018】
本明細書で使用する「LNA(ロックド核酸)ヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの糖部分がリボ核酸(RNA)を模倣する糖コンフォメーションでロックされた二環式フラノース単位を含むヌクレオチド類似体をいう。デオキシリボヌクレオチド(又はリボヌクレオチド)からLNAヌクレオチドへの構造変化は、化学的に見れば限られていて、2’位及び4’位の炭素原子間に追加の結合(例えば、2’−C,4’−C−オキシメチレン結合)が導入されることである。LNAヌクレオチド中におけるフラノースの2’位及び4’位は、O−メチレン(例えば、オキシ−LNA:2’−O,4’−O−メチレン−β−D−リボフラノシルヌクレオチド)、S−メチレン(チオ−LNA)、NH−メチレン部分(アミノ−LNA)などで結合することができる。かかる結合は、フラノース環のコンフォメーション自由度を制限する。LNAオリゴヌクレオチドは、相補的一本鎖RNA及び相補的一本鎖又は二本鎖DNAに対して向上したハイブリダイゼーション親和性を示す。LNAオリゴヌクレオチドはA型の(RNA様)デュプレックスコンフォメーションを誘導し得る。
【0019】
本明細書で使用する「オリゴヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチド又はその誘導体のオリゴマーをいう。本明細書で使用する「核酸」という用語は、ヌクレオチド又はその誘導体のポリマーをいう。本明細書で使用する「配列」という用語は、オリゴヌクレオチド又は核酸のヌクレオチド配列をいう。本明細書全体を通して、オリゴヌクレオチド/核酸を文字の配列で表す場合には必ず、ヌクレオチドは左から右へ5’→3’の順序で示す。例えば、文字配列(W)x(N)y(S)z(ここで、x=2、y=3、z=1である。)で表記されるオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド配列WWNNNS(ここで、Wは5’末端ヌクレオチドであり、Sは3’末端ヌクレオチドである。)を表す。オリゴヌクレオチド/核酸は、DNA、RNA又はその類似体(例えば、ホスホロチオエート類似体)であり得る。オリゴヌクレオチド又は核酸はまた、修飾された塩基及び/又は骨格(例えば、修飾ホスフェート結合又は修飾糖部分)を含み得る。核酸に安定性及び/又は他の利点を与える合成骨格の非限定的な例には、ホスホロチオエート結合、ペプチド核酸、ロックド核酸、キシロース核酸及びこれらの類似体がある。
【0020】
本明細書で使用される「プライマー」又は「プライマー配列」という用語は、標的核酸配列(例えば、増幅すべきDNA鋳型)にハイブリダイズして核酸合成反応をプライムする短い線状オリゴヌクレオチドをいう。プライマーはRNAオリゴヌクレオチド、DNAオリゴヌクレオチド又はキメラ配列であり得る。プライマーは天然、合成又は修飾ヌクレオチドを含み得る。プライマーの長さの上限及び下限は、いずれも経験的に決定される。プライマー長さに関する下限は、核酸増幅反応条件下における標的核酸とのハイブリダイゼーション後に安定なデュプレックスを形成するために必要な最小の長さである。(通常3〜4ヌクレオチド長未満の)非常に短いプライムは、かかるハイブリダイゼーション条件下で標的核酸と熱力学的に安定なデュプレックスを形成しない。上限は、しばしば、標的核酸中の予め決定された核酸配列と異なる領域でのデュプレックス形成を有する可能性によって決定される。一般に、好適なプライマー長さは約4〜約40ヌクレオチド長の範囲内にある。
【0021】
本明細書で使用する「ランダム化配列を含むプライマー」という用語は、所定位置が可能なヌクレオチド又はその類似体のいずれかからなり得るようにしてオリゴヌクレオチド配列中の任意の所定位置のヌクレオチドをランダム化すること(完全ランダム化)によって生成されるプライマー配列の混合物をいう。一例では、プライマーは「ランダムプライマー」又は「完全ランダムプライマー」又は「キメラランダムプライマー」であり得る。かくして、ランダムプライマーは、配列内におけるヌクレオチドのあらゆる可能な組合せからなるオリゴヌクレオチド配列のランダム混合物である。例えば、六量体ランダムプライマーは配列NNNNNN又は(N)6によって表すことができる。六量体ランダムDNAプライマーは、4種のDNAヌクレオチド(A、C、G及びT)のあらゆる可能な六量体組合せからなり、46(4096)のユニーク六量体DNAオリゴヌクレオチド配列を含むランダム混合物を生じる。ランダムプライマーは、標的核酸の配列が未知である場合、核酸合成反応をプライムするため効果的に使用できる。
【0022】
本明細書で使用する「部分拘束プライマー」とは、オリゴヌクレオチド配列の若干のヌクレオチドを完全にランダム化する(即ち、かかるヌクレオチドはA、T/U、C、G又はこれらの類似体のいずれかであり得る。)と共に、若干の他のヌクレオチドの完全ランダム化を制限すること(即ち、ある位置のヌクレオチドのランダム化は可能な組合せ(A、T/U、C、G又はこれらの類似体)より程度が低い。)によって生成されるプライマー配列の混合物をいう。例えば、WNNNNNによって表される部分拘束DNA六量体プライマーは、混合物中のすべての配列の5’末端ヌクレオチドがA又はTであるプライマー配列の混合物を表す。ここで5’末端ヌクレオチドは、完全にランダムなDNAプライマー(NNNNNN)の最大4種の可能な組合せ(A、T、G又はC)とは対照的に、2種の可能な組合せ(A又はT)に拘束されている。部分拘束プライマーの好適なプライマー長さは、約4〜約40ヌクレオチドの範囲内にあり得る。完全ランダムプライマーは完全にランダム化された配列を含むことができ、例えば、十二量体完全ランダムプライマーは配列NNNNNNNNNNNN又は(N)12によって表すことができる。キメラランダムプライマーは、特異的配列と共にランダム化配列を含み得る。例えば、十二量体キメラランダムプライマーは配列WWWWNNNNNNNNによって表すことができる。5’末端の4つのヌクレオチドは、3’末端の完全にランダムなDNAプライマーの最大4種の可能な組合せ(A、T、G又はC)とは対照的に、2種の可能な組合せ(A又はT)に拘束されている。
【0023】
本明細書で使用する「プラスミド」という用語は、染色体核酸から独立した染色体外核酸をいう。プラスミドDNAは、細胞内において染色体核酸(染色体DNA)とは無関係に複製することができる。プラスミドDNAは、多くは環状の二本鎖である。
【0024】
本明細書で使用する「増幅」、「核酸増幅」又は「増幅する」という用語は、核酸鋳型の複数のコピーの生成、又は核酸鋳型に対して相補的な複製の核酸配列コピーの生成をいう。
【0025】
本明細書で使用する「標的核酸」という用語は、核酸増幅反応で増幅することが所望される核酸をいう。例えば、標的核酸は核酸鋳型からなる。
【0026】
本明細書で使用する「DNAポリメラーゼ」という用語は、核酸鎖を鋳型として用いてDNA鎖を新規に合成する酵素をいう。DNAポリメラーゼはDNA合成用の鋳型として既存のDNA又はRNAを使用し、それが読み取る鋳型鎖に沿ってのデオキシリボヌクレオチドの重合を触媒する。新たに合成されるDNA鎖は、鋳型鎖に対して相補的である。DNAポリメラーゼは、新たに形成される鎖の3’−ヒドロキシル末端のみに遊離ヌクレオチドを付加し得る。それは、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)から成長するオリゴヌクレオチド鎖の3’−ヒドロキシル基にヌクレオシド一リン酸を転移させることによってオリゴヌクレオチドを合成する。これは、5’→3’方向への新しい鎖の伸長をもたらす。DNAポリメラーゼは予め存在する3’−OH基にのみヌクレオシドを付加し得るので、DNA合成反応を開始させるためには、DNAポリメラーゼは最初のヌクレオシドを付加し得るプライマーを必要とする。好適なプライマーはRNA又はDNAのオリゴヌクレオチドからなる。DNAポリメラーゼは、天然に存在するDNAポリメラーゼ又は上述した活性を有する天然酵素の変異体であり得る。例えば、それは鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性が欠如したDNAポリメラーゼ、逆転写酵素活性を有するDNAポリメラーゼ、又はエキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを包含し得る。
【0027】
本明細書で使用する「鎖置換型核酸ポリメラーゼ」という用語は、その核酸合成活性とは別に鎖置換活性を有する核酸ポリメラーゼをいう。即ち、鎖置換型核酸ポリメラーゼは、鋳型鎖にアニールされた相補鎖を置換しながら、核酸鋳型鎖の配列に基づいて(即ち、鋳型鎖を読み取って)核酸合成を継続し得る。
【0028】
本明細書で使用する「相補的」という用語は、第1の核酸/オリゴヌクレオチド配列を第2の核酸/オリゴヌクレオチド配列に対して記述するために使用される場合、第1の核酸/オリゴヌクレオチド配列を含むポリヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドが、第2の核酸/オリゴヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオシドと特定のハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズできること(例えば、デュプレックス構造を形成できること)をいう。ハイブリダイゼーションは、ヌクレオチド(相補的ヌクレオチド)の塩基対合によって起こる。ヌクレオチドの塩基対合は、
ワトソン−クリック塩基対合、非ワトソン−クリック塩基対合、又は非天然/修飾ヌクレオチドによって形成される塩基対合を介して起こり得る。
【0029】
本明細書で使用する「高度に厳密なハイブリダイゼーション条件」という用語は、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション事象に対し、核酸増幅反応のために使用し得る条件によって与えられる厳密性より高い厳密性を付与する条件をいう。高度に厳密なハイブリダイゼーション条件は、得られたハイブリダイズドデュプレックス中にミスマッチ塩基を含み得るオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション事象を防止するために所望されることがある。例えば、高度に厳密なハイブリダイゼーション条件は、核酸増幅反応において、反応温度を上昇させ、塩濃度を低下させ、又は緩衝液中にグリセロール又はエチレングリコールのような変性剤を含めることによって達成できる。核酸増幅反応は、時には約75mMの塩濃度で実施される。それとは対照的に、核酸増幅反応を15mMの塩濃度で実施すれば、それは高度に厳密なハイブリダイゼーション条件を与え得る。高度に厳密なハイブリダイゼーション条件は、反応温度を30℃の典型的な反応温度より高く上昇させることにより、インビトロ等温核酸増幅反応において使用できる。例えば、等温核酸増幅反応は約35〜約45℃で実施できる。
【0030】
本明細書で使用する「ローリングサークル増幅(RCA)」という用語は、ローリングサークル機構によって環状核酸鋳型(例えば、一本鎖DNA環)を増幅する核酸増幅反応をいう。ローリングサークル増幅反応は、プライマーを環状の(多くは一本鎖の)核酸鋳型にハイブリダイズすることで開始させ得る。次いで、核酸ポリメラーゼが、環状核酸鋳型の回りで絶えず前進しながら核酸鋳型の配列を何度も繰り返して複製すること(ローリングサークル機構)により、環状核酸鋳型にハイブリダイズしたプライマーを伸長させる。ローリングサークル増幅は、通例、環状核酸鋳型配列のタンデム反復単位を含むコンカテマーを生成する。ローリングサークル増幅は、線形の増幅動力学を示す線形RCA(LRCA)(例えば、単一の特異的プライマーを用いるRCA)であってもよいし、或いは指数関数的な増幅動力学を示す指数関数的RCA(ERCA)であってもよい。ローリングサークル増幅はまた、多重プライマー(多重プライムドローリングサークル増幅又はMPRCA)を用いて実施して高度枝分れコンカテマーを導くこともできる。例えば、二重プライムドRCAでは、一方のプライムがLRCAのように環状核酸鋳型に対して相補的であり得るのに対し、他方はRCA生成物のタンデム反復単位核酸配列に対して相補的であり得る。その結果、二重プライムドRCAは、両プライマーが関与する多重ハイブリダイゼーション、プライマー伸長及び鎖置換事象の分枝カスケードを特徴とする、指数関数的(幾何学的)増幅動力学をもった連鎖反応として進行し得る。これはしばしば、コンカテマー性二本鎖核酸増幅生成物の分離した集合を生成する。ローリングサークル増幅は、Phi29DNAポリメラーゼのような適当な核酸ポリメラーゼを使用しながら、等温条件下においてインビトロで実施できる。
【0031】
本明細書で使用する「多重置換増幅」(MDA)という用語は、増幅が変性核酸に対するプライマーのアニーリング及びそれに続く鎖置換型核酸合成を含む核酸増幅方法をいう。核酸が鎖置換によって置換されるので、次第に増加する数のプライミング事象が起こり、高度枝分れ核酸構造のネットワークを形成する。MDAは、少量のゲノムDNA試料から配列偏りの限られた高分子量DNAを生成するための全ゲノム増幅にとって極めて有用である。Phi29DNAポリメラーゼ又はBst DNAポリメラーゼの大きいフラグメントのような鎖置換型核酸ポリメラーゼが、多重置換増幅において使用できる。MDAはしばしば等温反応条件下で実施され、かかる反応では配列偏りの限られた増幅を達成するためにランダムプライマーが使用される。
【0032】
本明細書で使用する「反応混合物」という用語は、化学分析又は生物学的アッセイを実施するために使用される試薬又は試薬溶液の組合せをいう。
【0033】
1以上の実施形態は、ランダム化配列を含むプライマー及び特異的プライマーを用いる等温核酸増幅反応のための方法及びキットに向けられている。これらの増幅方法は、現在使用されている増幅技法より信頼性が高く、したがって標的核酸が少量でしか利用できない希少配列の増幅(例えば、野生型配列集団内の希少突然変異配列の検出)又は全ゲノム増幅反応のような用途のために一層適している。
【0034】
本発明の1以上の実施形態は、鋳型核酸配列を増幅するためにランダム化配列を含むプライマー及び特異的プライマーを用いる等温増幅反応を含んでいる。1以上の実施形態はまた、等温増幅反応中に特異的プライマーを用いて増幅核酸配列を捕獲することも含んでいる。ランダム化配列を含むプライマー及び特異的プライマーは、増幅、捕獲及びそれに続く捕獲核酸配列の増幅を同時に行うため、共に同一の反応混合物中に存在している。特異的プライマーは基材に結合されていてよい。本方法の1以上の例は、核酸でコートされた基材を生成させるために使用できる。
【0035】
1以上の実施形態では、ランダム化配列を含むプライマーは1以上の修飾核酸塩基を含み得る。かかるプライマーが使用される場合、鋳型核酸配列に対する効率的なハイブリダイゼーションによって増幅反応を開始させるため、高い塩又は低い温度条件が通例要求される。1以上の方法で使用される、プライマー中に存在する修飾核酸塩基は、(ランダム化配列を含む)プライマーの融解温度(Tm)を高めることができる。
【0036】
若干の実施形態では、ランダム化配列を含むプライマーは部分拘束プライマーである。部分拘束プライマーの好適な長さは約4〜約10ヌクレオチドの範囲内にあり得る。様々なプライマー長さを有する部分拘束プライマーの組合せも使用できる。ランダム化配列を含むプライマー(例えば、部分拘束プライマー)は修飾核酸塩基を含むことができ、これらはプライマーのTmを高める。ランダムプライマー及び特異的プライマーによって増幅し、続いて同一条件下で同一反応混合物中に存在する特異的プライマーによって捕獲することを使用すれば、増幅の効率をさらに高めることができる。
【0037】
核酸は、核酸鋳型をDNAポリメラーゼ及びデオキシリボヌクレオシド三リン酸に接触させ、核酸増幅のために適した条件下で反応混合物をインキュベートすることによって増幅される。核酸鋳型の増幅は等温条件下で実施できる。若干の実施形態では、核酸鋳型をRCA法による等温核酸増幅を用いて増幅される。
【0038】
1以上の実施形態では、ランダム化配列を含むプライマーは、完全にランダムなDNAプライマー(NNNNNN)を含み得る。1以上の他の実施形態では、プライマーは、オリゴヌクレオチド配列のヌクレオチドの一部がランダム化された部分拘束プライマー(WWWNNN)を含み得る。1以上の実施形態では、プライマーは5’末端に特異的配列を含みかつ3’末端にランダム配列を含み得る。
【0039】
上述の通り、ランダムプライマーの好適な長さは4〜10ヌクレオチド長の範囲内にあり得る。若干の実施形態では、ランダムプライマーの長さは5〜6ヌクレオチドである。部分拘束プライマーを含む若干の実施形態では、該プライマーは約5〜約7ヌクレオチド長である。短いランダムプライマーの1つの潜在的な欠点は、ランダム化配列を含む短いプライマーは低い融解温度を有することである。短いランダムプライマーに修飾核酸塩基を導入することで、プライマーの融解温度を高めることができる。好適な修飾核酸塩基は、特に限定されないが、ロックド核酸塩基、ペプチド核酸塩基又はリボ核酸塩基を包含し得る。
【0040】
若干の実施形態では、ランダム化配列を含むプライマーは部分拘束プライマーであり得る。部分拘束プライマーは、適当な位置に、天然のヌクレオチドより高い相補的特異性を有する核酸類似体(例えば、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチド)を含んでいる。部分拘束プライマー中におけるヌクレオチド類似体の位置は、それが核酸増幅反応条件下で鋳型核酸配列中に存在する相補的配列と特異的にハイブリダイズするように選択すればよい。LNAヌクレオチドを含む部分拘束プライマーを核酸増幅反応のために使用する場合、増幅反応はより厳密なハイブリダイゼーション条件下で実施できる。より厳密な条件は、DNAポリメラーゼにとって有益であり得る。増幅条件はより高い温度(例えば、等温核酸増幅用の30℃より高い温度)で実施できるが、上限は反応で使用されるDNAポリメラーゼが非機能的になる温度である。それはまた、通常使用される塩濃度(例えば、約75μMの塩濃度)より低い塩濃度(例えば、約10〜約25μMの塩濃度)でも実施できる。高い相補的特異性のため、LNAヌクレオチドを含む部分拘束プライマーの標的核酸に対するハイブリダイゼーションは、高度に厳密なハイブリダイゼーション条件による実質的な影響を受けないであろう。したがって、所望の標的核酸の増幅も実質的な影響を受けないであろう。
【0041】
効率的なハイブリダイゼーションによってDNA増幅を開始させるため、短いランダムプライマーは通例高い塩条件又は低い温度条件を要求するので、ハイブリダイゼーションのための厳密な条件は重要である。しかし、前記条件は、一本鎖増幅生成物のDNAが特異的プライマーに正確にハイブリダイズするためには適さない。特異的プライマーは、一般に長いことが所望され、したがってハイブリダイゼーションのための正確な特異性を得るために高度に厳密なハイブリダイゼーション条件を要求する。この場合には、拘束ランダムプライマーを修飾ヌクレオチドと共に使用することが、高度に厳密な条件下で増幅を行うための解決策であり得る。拘束ランダムプライマーのTmは高いので、高度に厳密な条件下でも、ランダム化配列を含むプライマーは鋳型DNAにハイブリダイズして増幅反応を行うことができる。
【0042】
部分拘束プライマーは、オリゴヌクレオチド配列の1以上のヌクレオチドを完全にランダム化する(即ち、かかるヌクレオチド塩基はA、T/U、C、G又はこれらの類似体のいずれかであり得る。)と共に、若干の他のヌクレオチドの完全ランダム化を制限すること(即ち、ある位置のヌクレオチドのランダム化は4つの可能な組合せ(A、T/U、C又はG)より程度が低い。)によって生成できる。若干の実施形態では、部分拘束プライマー中の2つのヌクレオチドのランダム化が制限される。若干の実施形態では、部分拘束プライマー中の3以上のヌクレオチド(例えば、3つ、4つ又は5つのヌクレオチド)のランダム化が制限される。ランダム化の程度は、増幅反応要件及び反応条件に基づいて経験的に決定し得る。
【0043】
若干の実施形態では、部分拘束プライマーは適当な位置にヌクレオチド類似体を含み得る。若干の実施形態では、天然ヌクレオチドより高い相補的特異性を有するヌクレオチド類似体が使用できる。部分拘束プライマー中に組み込むことができる好適な核酸類似体の非限定的な例には、ペプチド核酸(PNA)、2’−フルオロN3−P5’−ホスホラミデート、1’,5’−アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、リボ核酸(RNA)及びロックド核酸(LNA)ヌクレオチドがある。ヌクレオチド類似体の高い相補的特異性のため、ヌクレオチド類似体を含む部分拘束プライマーを用いる核酸増幅反応は、より厳密な条件下で実施できる(例えば、高い温度又は低い塩濃度で実施できる)。ヌクレオチド類似体を有する部分拘束プライマーは、標的に対する高い相補的特異性を有している(例えば、部分拘束プライマーがヌクレオチド類似体を含む場合、標的核酸−プライマー複合体のTmは高くなり得る。)。かかるプライマーは高い温度/低い塩濃度でも標的核酸にハイブリダイズするので、所望の標的核酸増幅は厳密なハイブリダイゼーション条件下でも実質的な影響を受けない。
【0044】
若干の実施形態では、部分拘束プライマーは適当な位置にLNAヌクレオチドを含んでいる。好適なLNAヌクレオチドには、特に限定されないが、オキシ−LNA(2’−O,4’−C−メチレン−β−D−リボフラノシルヌクレオチド)、チオ−LNA(2’−S,4’−C−メチレン−β−D−リボフラノシルヌクレオチド)及びアミノ−LNA(2’−NH,4’−C−メチレン−β−D−リボフラノシルヌクレオチド)ヌクレオチドがある。LNAヌクレオチドは、部分拘束プライマー配列の5’末端の近くに位置し得る。若干の実施形態では、部分拘束プライマーは2つのLNAヌクレオチドを含んでいる。例えば、部分拘束プライマーは5’末端位置にLNAヌクレオチドを有すると共に、5’末端位置に隣接した位置にもLNAヌクレオチドを有し得る。他の実施形態では、部分拘束プライマーの5’末端ヌクレオチドが天然ヌクレオチドであり得る一方、5’末端ヌクレオチドに隣接した次の2つのヌクレオチドはLNAヌクレオチドであり得る。ポリメラーゼ効率は、LNAヌクレオチドがプライマーの3’末端から1つ又は2つの塩基(最後の塩基又は最後から2番目の塩基)内に位置する場合より、LNAヌクレオチドがプライマーの3’末端から1つ又は2つの塩基を超えた領域内に位置する場合の方が良好である。
【0045】
1以上の実施形態では、反応混合物中に存在する特異的プライマーも反応に参加する。増幅反応で使用される特異的プライマーは、例えば、10〜20ヌクレオチド配列又は15〜20ヌクレオチド配列のような長いプライマーである。長い特異的プライマーの融解温度は一般に高く、これらは若干の実施形態ではより厳密な条件(例えば、低い塩条件及び高い温度条件)でのみハイブリダイズし得る。反応混合物にプライマーを添加する順序は重要でない。なぜなら、増幅反応は特異的プライマー及びランダム化配列を含むプライマーの両方の存在下で開始するからである。同一反応中に両プライマーが存在することの1つの利点は、鋳型核酸配列中に存在する様々な遺伝子座の同時増幅である。若干の実施形態では、特異的プライマーは特定の遺伝子座(例えば、鋳型中に存在し得る5つの遺伝子座中の遺伝子座2)に対して高い特異性を有し得る。ランダム化配列を含むプライマー及び特異性プライマーによる同時増幅は、(ランダム化配列を含むプライマーによる)5つの遺伝子座のすべてを有する増幅核酸配列及び(特異的プライマーによる)遺伝子座2のみを有する増幅核酸配列を生じ得る。若干の実施形態では、ランダム化配列を含むプライマーは、特異的プライマーによって増幅し得る一部の遺伝子座の増幅を効率的に支持できないことがある。例えば、ランダム化配列を含むプライマーは遺伝子座2、3及び4を増幅できないが、特異的プライマーはこれらの遺伝子座を増幅できる。その結果、遺伝子座2、3及び4の高い発現と共に遺伝子座1及び5を含む増幅核酸配列の集団が得られる。かかる実施形態では、鋳型核酸配列中に存在する特定の遺伝子座が失われる率は減少する。1以上の実施形態ではまた、ランダム化プライマー及び特異的プライマーの両方を使用することで様々な遺伝子座の増幅率及び発現率が高まる。
【0046】
本方法の1以上の例は、第1の特異的プライマー、第2の特異的プライマー、第3の特異的プライマー及び第4の特異的プライマーを含む複数の特異的プライマーを用意する段階を含んでいる。一実施形態では、鋳型DNAは遺伝子座1、2、3及び4のような複数の遺伝子座を含んでいる。第1、第2、第3及び第4の特異的プライマーは、鋳型DNA上に存在する遺伝子座1、2、3及び4にそれぞれハイブリダイズし、遺伝子座1、2、3及び4を増幅して第1、第2、第3及び第4の増幅核酸配列を生成する。したがって、ランダムプライマーの使用は増幅中における各遺伝子座の増幅不足の可能性を減少させる。
【0047】
ランダムプライマー及び基材に結合した(例えば、ビーズ1に結合した)特異的プライマーの両方を用いる増幅方法の一例を図1に示す。この増幅反応は、Phi29DNAポリメラーゼの存在下で鋳型としての環状DNA及びランダムプライマーを用いるローリングサークル増幅を表している。ビーズ1に結合した特異的プライマーは増幅DNAにハイブリダイズし、続いて特異的プライマーの末端から伸長する。
【0048】
Phi29DNAポリメラーゼを用いる鋳型DNAのランダムプライムド増幅により、鎖置換一本鎖DNAが創製される。一本鎖DNAは追加のプライマーにハイブリダイズし得るが、これは反応物中に存在する特異的プライマーである。この場合、かかるプライマーは(図1に模式的に示されているように)基材に結合している。本方法は、第1の基材(図1に示されているようなビーズ1)に結合した特異的プライマーとハイブリダイズして第1の基材に結合した核酸配列を生成させることで増幅核酸配列を捕獲する段階を含んでいる。本方法はさらに、第1の基材に結合した(ビーズ1に結合した)核酸配列を鋳型として用いて特異的プライマーのハイブリダイゼーション部位から核酸配列を伸長させる段階を含んでいる。
【0049】
本方法のもう1つの例はさらに、ランダム化配列を含むプライマーによって第1の基材に結合した核酸配列(図2に示されるようなビーズ1に結合した核酸)を増幅して第2の増幅核酸配列を生成させる段階を含んでいる。かかる増幅の結果、第2の増幅核酸配列が生じる。本方法はさらに、(図2に模式的に示されるように)第2の増幅核酸を第2の基材(図2に示されるようなビーズ2)に結合した特異的プライマーとハイブリダイズすることで、第2の核酸配列を第2の基材(ビーズ2)によって捕獲する段階を含んでいる。本明細書中に「第1の増幅核酸配列」として記載される増幅核酸配列は、第1の基材に結合した(ビーズ1に結合した)特異的プライマーに結合しており、ランダムプライマーによってさらに増幅して「第2の増幅核酸配列」を生成させ、これを図2に模式的に示されるように第2の基材(ビーズ2)に結合した特異的プライマーによって捕獲することができる。第2の増幅核酸配列をハイブリダイゼーション後に第2の基材に結合した特異的プライマーによってさらに増幅することで、第3の増幅核酸配列を生成させることができる。したがって、第1の基材に結合した一本鎖核酸配列はランダムプライマーによって増幅され、第2の基材に結合した特異的プライマーによって捕獲され、第2の基材に移行される。
【0050】
一例では、図3に模式的に示されるように、第1の基材(例えばビーズ)(16)に結合した増幅核酸配列(18)を第2の基材(22)に結合した特異的プライマー(20)によって捕獲した後、前記プライマーの末端から核酸配列が伸長する結果、第2の基材に結合した二本鎖核酸配列(24)を生じる。
【0051】
かかる増幅反応は、温度サイクリング反応と異なって等温反応である。使用できる好適な等温核酸増幅反応の非限定的な例は、特に限定されないが、ローリングサークル増幅(RCA)及び多重置換増幅(MDA)を含んでいる。本方法は、例えば、環状核酸鋳型又は線状核酸鋳型の増幅において使用できる。本方法は、増幅すべき核酸鋳型の量が微小な場合でも効果的に使用できる。本方法は、例えば、全ゲノム増幅又は単一の核酸増幅反応において有用であり得る。
【0052】
等温核酸増幅方法の非限定的な例には、LCR、自己持続性配列複製(SSR)、NASBA、LAMP、Qb複製による増幅などがある。若干の実施形態では、核酸鋳型はSDAを用いて増幅される。若干の実施形態では、核酸鋳型はMDAを用いて増幅される。一実施形態では、核酸鋳型はRCA法を用いて増幅される。RCAはLRCAとして使用することもできるし、或いはERCAとして使用してもよい。別の実施形態では、核酸鋳型を増幅するためにMPRCAが使用される。
【0053】
増幅のために使用される核酸ポリメラーゼは、プルーフリーディング又は非プルーフリーディング核酸ポリメラーゼであり得る。若干の実施形態では、使用される核酸ポリメラーゼは鎖置換型核酸ポリメラーゼである。核酸ポリメラーゼは、高温性又は中温性核酸ポリメラーゼであり得る。使用に適したDNAポリメラーゼの例には、特に限定されないが、Phi29DNAポリメラーゼ、高忠実度融合DNAポリメラーゼ(例えば、処理性向上ドメインを有するPyrococcus様酵素、New England Biolabs社、米国マサチューセッツ州)、Pyrococcus furiosus由来のPfu DNAポリメラーゼ(Strategene社、ラヨラ、米国カリフォルニア州)、Bacillus stearothermophilus由来のBst DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社、米国マサチューセッツ州)、T7 DNAポリメラーゼのSequenase(商標)変異体、エキソ(−)VentR(商標)DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社、米国マサチューセッツ州)、E.coliのDNAポリメラーゼI由来のクレノウフラグメント、T7 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、Pyrococcus種GB−D由来のDNAポリメラーゼ(New England Biolabs社、米国マサチューセッツ州)、及びThermococcus litoralis由来のDNAポリメラーゼ(New England Biolabs社、米国マサチューセッツ州)がある。
【0054】
若干の実施形態では、本方法は、高忠実度塩基取込みのための条件下で核酸鋳型を増幅するために高処理性の鎖置換型ポリメラーゼを使用できる。高忠実度DNAポリメラーゼとは、適当な条件下で、商業的に使用される熱安定性PCRポリメラーゼ(例えば、Vent DNAポリメラーゼ又はT7 DNAポリメラーゼ)に関連する誤取込み率(約1.5×10-5〜約5.7×10-5)以下の誤取込み率を有するDNAポリメラーゼをいう。誤取込み事象を最小にするため、増幅反応混合物中に追加の酵素を含めることもできる。例えば、ポリメラーゼ反応中又は反応後にポリメラーゼ忠実度を向上させるため、タンパク質媒介エラー修正酵素(例えば、MutS)を添加することができる。
【0055】
若干の実施形態では、増幅反応は増幅後に一本鎖の増幅DNAを生成するDNAポリメラーゼを使用する。かかるDNAポリメラーゼは鎖置換型DNA合成を行うことができる。かかるポリメラーゼは、一本鎖DNAを創製し、続いて新しい鎖を合成して二本鎖DNAを生成することができる。一実施形態では、プライマーが鋳型核酸に結合した後、DNAポリメラーゼは3’→5’方向への核酸重合を開始し、それと同時にブロッキング鎖を5’→3’方向に置換することでそれを排除する。
【0056】
若干の実施形態では、DNA鋳型を増幅するためにPhi29DNAポリメラーゼ又はPhi29様ポリメラーゼが使用できる。若干の実施形態では、Phi29DNAポリメラーゼと別のDNAポリメラーゼとの組合せが使用できる。
【0057】
核酸鋳型は一本鎖核酸鋳型であってよく、或いは二本鎖核酸鋳型であってよい。それは、環状核酸鋳型、ニックド核酸鋳型又は線状核酸鋳型であってよい。核酸鋳型はDNA及び/又はRNA鋳型或いはDNA−RNAキメラ鋳型を含み得る。若干の実施形態では、核酸鋳型はDNA鋳型であり得る。DNA鋳型はcDNA又はゲノムDNAであり得る。環状核酸鋳型は、合成鋳型(例えば、酵素/化学反応によって環状化した線状又はニックドDNA)或いはプラスミドDNAであり得る。核酸鋳型は合成核酸又は天然核酸であり得る。それはまた、修飾ヌクレオチドを含み得る。一実施形態では、核酸鋳型は環状DNA鋳型である。
【0058】
鋳型DNAは、例えば、患者又はドナーから採集できる。一実施形態では、鋳型DNAを患者から採集し、続いてDNAを増幅し、次いで配列決定及び分析のため基材上に捕獲剤する。増幅DNAは、特定の遺伝子座、単一ヌクレオチド多形性(SNP)又は制限フラグメント長多形性(RFLP)の検出のために使用される。鋳型DNAは、例えば、毛根、赤血球、上皮細胞、唾液又は病理学的検体から回収でき、増幅DNAは法医学的分析又は分子診断に付すことができる。
る。
【0059】
核酸鋳型は組換え部位を含むことができる。組換え部位は、組換えのために有利な核酸配列を含んでいる。一実施形態では、核酸鋳型は組換え部位を含むように操作することができ、操作された核酸鋳型を増幅することで、組換え部位を含む増幅核酸が生成される。核酸鋳型の操作は、当技術分野で公知の遺伝子工学又は分子生物学技法(例えば、特に限定されないが、クローニング)のいずれかによって達成できる。若干の実施形態では、組換え部位は部位特異的な組換え部位であり得る。部位特異的な組換え部位とは、特異的組換えタンパク質によって認識される特異的配列を含む組換え部位をいう。
【0060】
核酸増幅反応を実施するのに適した溶液中で核酸鋳型を増幅することで、増幅核酸を生成させることができる。若干の実施形態では、ローリングサークル増幅によって環状DNA鋳型を増幅することができる。若干の他の実施形態では、多重置換核酸増幅を用いて線状DNA鋳型を増幅することができる。
【0061】
核酸増幅反応で使用される試薬の各々は、汚染核酸配列を除去するための前処理することができる。試薬の前処理は、特に限定されないが、紫外線の存在下でインキュベートすることを含み得る。試薬はまた、例えば、ヌクレアーゼ及びその補助因子(例えば、金属イオン)の存在下で試薬をインキュベートすることによっても除染できる。好適なヌクレアーゼには、特に限定されないが、エキソヌクレアーゼI又はエキソヌクレアーゼIIIのようなエキソヌクレアーゼがある。DNA増幅反応で使用できるプルーフリーディングDNAポリメラーゼは、例えば、二価基金属イオン(例えば、マグネシウム又はマンガン)と共にインキュベートすることによって除染できる。核酸鋳型増幅で使用される遊離ヌクレオチドは、特に限定されないが、天然ヌクレアーゼ(例えば、dATP、dGTP、dCTP又はdTTP)或いはその修飾類似体がある。緩衝剤、塩などの他の成分を添加することもできる。
【0062】
DNA鋳型増幅後、増幅DNAの少なくともある部分と相同な、基材に結合した特異的プライマーを使用することで増幅DNAを捕獲できる。基材に結合した特異的プライマーは、例えば、基材に結合した増幅DNAをハイブリダイゼーション生成することで増幅核酸配列を捕獲し得る。さらに、同一の反応物において、基材に結合したプライマーを続くDNA増幅反応でDNAポリメラーゼによってさらに伸長させることにより、追加量のDNAを創製するし得る。
【0063】
若干の実施形態では、特異的プライマーは基材又は捕獲剤に結合することができる。基材は第1の基材、第2の基材、第3の基材などであり得る。基材は、例えばビーズであり得る。基材の材料は、例えば、例えば、ポリマー、ガラス及び金属から選択できる。一実施形態では、基材の材料はポリマーである。捕獲剤は親和性タグであり得る。特異的プライマーは、各種の相互作用によって基材又は捕獲剤に結合できる。例えば、特異的プライマーは、核酸ハイブリダイゼーション、共有結合、静電相互作用、ファンデルワールス相互作用、疎水的相互作用又はこれらの組合せによって捕獲剤に結合できる。例えば、特異的プライマーは、ポリマーで作られた基材に共有結合することができる。DNA増幅反応後、増幅DNAは例えばポリマーで作られた基材によって捕獲できる。増幅反応は様々な特異的プライマーを含むことができ、これらの各々を異なるタイプの捕獲剤に結合できる。一連の特異的プライマーを第1の基材、第2の基材、第3の基材などに結合することもできる。第1、第2又は第3の基材は、例えば、ビーズ、試験管、マルチウェルプレート、スライド又はエッペンドルフからなり得る。
【0064】
上述の通り、核酸鋳型の増幅コピーは捕獲ビーズに結合することができる。非限定的な例として、これらの結合は、ビーズの表面に結合された化学基又はオリゴヌクレオチドによって媒介されてもよい。核酸鋳型の増幅コピーは、当技術分野で知られる任意適宜のやり方で、捕獲ビーズ又は他の適当な表面のような固体支持体に結合できる。例えば、核酸鋳型の増幅コピーはハイブリダイゼーションによって基材に結合した特異的プライマーに結合できる。
【0065】
特異的プライマーは、直接に又はリンカーを介して、基材(又は第1の基材)或いは捕獲剤に結合できる。リンカーを介して基材に結合された特異的プライマーは、特異的プライマーに対して相補的な配列を有する核酸の増幅のために使用できる。第1の基材はビーズ及び表面から選択される。捕獲剤は親和性タグ及びポリマーから選択される。1つの非限定的な実施形態では、リンカーはアクリルアミド、デキストラン又はポリエチレングリコール(PEG)のようなポリマーであり得る。1以上の実施形態では、リンカーの一方の末端は、特異的プライマーと共有結合を形成して固定化される反応基(例えば、アミド基)を含み得る。特異的プライマーは、共有結合(例えば、キレート化)によってDNA捕獲剤(例えば、親和性タグ)に結合できる。親和性タグは、特に限定されないが、ヒスチジン(Hisタグ)又はビオチンからなり得る。
【0066】
例えば、増幅核酸は親和性タグに結合された特異的プライマーにより捕獲されて、親和性タグに結合された増幅核酸配列を生成できる。次に、親和性タグに結合された増幅核酸配列を続いて特異的タグ用の適当な基材で捕獲できる。例えば、ビオチニル化特異的プライマーによって捕獲された増幅核酸は、さらにビオチン−ストレプトアビジン複合体の形成によってストレプトアビジンビーズで捕獲できる。親和性タグは、これらが核酸ハイブリダイゼーションを含まない方法を用いて捕獲できるように選択すればよい。例えば、親和性タグは共有結合、静電相互作用、ファンデルワールス相互作用、疎水的相互作用又はこれらの組合せによって捕獲できる。親和性タグは、例えば、増幅反応からの様々な種類の増幅核酸を精製するために使用できる。
【0067】
ビーズは任意適宜のサイズを有することができ、特に限定されないが、無機物、天然ポリマー及び合成ポリマーから選択される材料で作製できる。これらの材料の具体例には、特に限定されないが、セルロース、セルロース誘導体、アクリル樹脂、ガラス、シリカゲル、ポリスチレン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ビニル及びアクリルアミドのコポリマー、ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン、デキストラン、ポリアクリルアミド、架橋デキストラン(例えば、Sephadex(商標))、アガロースゲル(例えば、Sepharose(商標))及び当技術分野で公知の他の固相支持体がある。例えば、捕獲ビーズは約1〜400μmの直径を有し得る。
【0068】
1以上の実施形態では、ビーズに対する特異的プライマーの共有化学結合は、標準的なカップリング剤を使用することで達成できる。例えば、水溶性カルボジイミドを使用することで、ホスホアミデート結合を介して特異的プライマー配列の5’−ホスフェートをアミンでコートされた捕獲ビーズに結合することができる。オリゴヌクレオチドをビーズに結合するために使用できる他の結合化学には、特に限定されないが、N−ヒドロキシスクシンアミド(NHS)及びその誘導体がある。
【0069】
1以上の実施形態では、捕獲ビーズのような捕獲剤は、核酸鋳型の一部及びこの鋳型の増幅コピーを認識又は相補する複数の特異的プライマーを有するように設計できる。例えば、鋳型のクローン増幅を達成するためには、1つのユニーク核酸種をいずれか1つの捕獲剤ビーズに結合すればよい。1以上の増幅方法を用いてDNAでコートされたビーズを生成することができるが、これは例えば細菌コロニー中に見出されるプラスミドを模倣するために使用できる。かかる方法はまた、例えば様々なDNA配列のアレイを生成するためにも使用でき、これはDNA配列決定又はDNA検出のような下流での目的に使用できる。
【0070】
一実施形態では、増幅はエマルジョン中で実施できる。鋳型は、乳化前又はエマルジョンの形成後にビーズに捕獲できる。別の実施形態では、表面に結合された特異的プライマーをエマルジョン液滴中のビーズ上に配置することで、様々なDNAでコートされたビーズを作製できる。例えば、各液滴が興味の対象である単一のDNA分子を単独で又は他のDNA分子に加えて含み得るエマルジョンを創製することができる。各ビーズが各エマルジョン液滴中に存在するならば、増幅生成物のDNAを有するビーズを捕獲後に続いて洗浄することで未結合DNAを除去できる。次いで、洗浄済みのビーズを追加の増幅反応のために使用できる。個々のDNA分子が最初にエマルジョン液滴中に分離されていれば、増幅核酸を有する洗浄済みのビーズは「DNAライブラリー」を創製するために使用できる。集団からの個々のビーズを単離し、続いてビーズに結合したDNAを増幅することで、溶液中に「DNAクローン」を創製できる。ビーズに結合した増幅DNAは、多くの様々なタイプの分析(例えば、タンパク質発現又はクローニング)のために使用できる。ビーズはまた、「DNAアレイ」を創製するためにも使用できる。表面に結合させ得るビーズの単層を創製することで、各ビーズが生成物DNAに結合した非オーバーラッピング性ランダム化ビーズアレイが生成し得る。
【0071】
エマルジョン中のビーズはまた、鎖置換型合成による追加のDNA増幅のための鋳型として使用し、ハイブリダイゼーションによって生成物を捕獲することができる。エマルジョンは、増幅溶液にビーズを添加した後に生成できる。結合した核酸鋳型を有し又は有しない捕獲剤(例えば、捕獲ビーズ)は、熱安定性の水中油型エマルジョン中に懸濁できる。ビーズを含むが核酸を含まない微小液滴、又は核酸を含むがビーズを含まない微小液滴、或いは核酸もビーズも含まない微小液滴が存在し得る。2以上の核酸コピーを含む微小液滴も存在し得る。エマルジョン又は微小液滴は、特に限定されないが、アジュバント法、向流法、十字流法、回転ドラム法及び膜法を含む任意適宜の方法で形成できる。
【0072】
エマルジョン中のビーズを化学的又は熱的変性条件下で処理することで、一本鎖DNAを有するビーズを生成することができる。一本鎖DNAは、増幅反応中に一本鎖生成物にハイブリダイズした結合プライマーが伸長することで創製される。増幅核酸を有するビーズは、一本鎖DNAを要求する下流での方法(例えば、ハイブリダイゼーションによる配列決定、連結による配列決定、又は合成による配列決定)のために使用できる。
【0073】
核酸を増幅するためのキットの若干の実施形態では、本キットはPhi29DNAポリメラーゼ、ランダム化配列を含む1以上のプライマー、及び特異的プライマーを含んでいる。特異的プライマーは、基材又は捕獲剤に結合することができる。本キットはさらに、核酸増幅において有用な、当技術分野で公知の他の試薬を含み得る。本キットはまた、核酸ポリメラーゼ及び部分拘束プライマーを含み得る。核酸ポリメラーゼ及び部分拘束プライマーは、単一の容器内にパッケージしてもよいし、或いは別々の容器内にパッケージしてもよい。
【0074】
一実施形態では、キットはPhi29DNAポリメラーゼ及び部分拘束プライマーを含んでいる。キット中の部分拘束プライマーは、LNAヌクレオチドのようなヌクレオチド類似体を含み得る。若干の実施形態では、部分拘束プライマーはDNA−LNAキメラプライマー(例えば、エキソヌクレアーゼ耐性プライマー)である。キット中のこのようなエキソヌクレアーゼ耐性プライマーは、ヌクレオチド間に1以上のホスホロチオエート結合を含み得る。
【0075】
キットはさらに、核酸増幅反応を実施するために必要な試薬又は試薬溶液を含み得る。それはさらに、キット中に含まれる特定の成分、又は核酸増幅反応におけるその使用方法、或いはその両方を詳述した取扱説明書を含み得る。
【実施例】
【0076】
実施例1.増幅前の反応混合物の除染
核酸増幅反応のために使用した試薬及び試薬溶液は、汚染核酸を除去するため、使用に先立って無核酸フード内で除染した。Phi29DNAポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼI、エキソヌクレアーゼIII及びSSBタンパク質のような試薬は、50mM Tris−HCl(pH7.2)、200mM NaCl、10mM DTT、1mM EDTA、0.01%(v/v)Tween−20及び50%(v/v)グリセロール中に貯蔵した。プライマー及びヌクレオチド(dNTP)を含むプライマー−ヌクレオチド溶液(プライマー−ヌクレオチド混合物)は、プライマー−ヌクレオチド混合物をエキソヌクレアーゼI、エキソヌクレアーゼIII及び一本鎖DNA結合タンパク質(SSBタンパク質)と共にインキュベートすることで除染した。DNAポリメラーゼを含む酵素混合物は、二価陽イオン(例えば、Mg2+)の存在下でエキソヌクレアーゼと共にインキュベートすることで除染した。いずれの標的核酸増幅反応も、除染した酵素混合物及びプライマー−ヌクレオチド混合物を用いて実施した。
【0077】
表2に示すように、200ngのPhi29DNAポリメラーゼを含む酵素混合物を、15mM KCl、20mM MgCl2、0.01%(v/v)Tween−20及び1mMトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む50mM HEPES緩衝液(pH=8.0)中で0.1単位のエキソヌクレアーゼIIIと共にインキュベートした。インキュベーションは30℃で約60分間又は4℃で12時間実施した。次いで、インキュベートした酵素混合物を氷浴に移し、エキソヌクレアーゼIIIの不活性化なしにそのままDNA増幅反応で使用した。この少量のエキソヌクレアーゼIIIは、最終の増幅反応物を完了直後に処理してエキソヌクレアーゼを不活性化すれば、増幅反応に実質的な効果を及ぼさなかった。
【0078】
プライマー−ヌクレオチド混合物を除染するため、それを表2に示すようなエキソヌクレアーゼI、エキソヌクレアーゼIII及びSSBタンパク質の組合せと共にインキュベートした。インキュベーションは、15mM KCl、20mM MgCl2、0.01%(v/v)Tween−20及び1mM TCEPを含む50mM HEPES緩衝液(pH=8.0)(総容量は5μL)中において37℃で約60分間実施した。本実施例では、適当な一本鎖結合タンパク質としてE.ColiのSSBタンパク質を使用した。プライマー−ヌクレオチド混合物の除染後、プライマー−ヌクレオチド混合物を85℃で約15分間インキュベートし、続いて95℃で約5〜約10分間インキュベートすることで、エキソヌクレアーゼを熱的に不活性化した。
【0079】
【表2】

実施例2.無鋳型対照増幅
鋳型DNAを添加せずにDNA増幅反応を実施すること(無鋳型対照(NTC)増幅)で、核酸増幅反応中における非特異的増幅反応を評価した。かかる反応では、完全にランダムなプライマー又はLNAヌクレオチドを含む部分拘束プライマーを使用した。これらのプライマーはいずれも、配列の3’末端に近いヌクレオチド間にホスホロチオエート結合を有するエキソヌクレアーゼ耐性プライマーであった。
【0080】
標的DNA鋳型を添加しない(NTC)DNA増幅反応からの増幅生成物は、非特異的増幅反応(偽増幅又はバックグラウンド増幅)に由来する。非特異的増幅は、汚染DNA分子の増幅、又はビーズに結合した特異的プライマーによって捕獲されたバックグラウンドDNA分子の増幅に原因し得る。汚染DNAに由来する非特異的増幅反応を回避するため、実施例1に記載した方法を用いて、増幅反応に使用するすべての試薬又は試薬溶液(酵素混合物及びプライマー−ヌクレオチド)を除染して汚染DNAを除去した。
【0081】
非特異的DNA増幅反応を評価するため、DNA鋳型を添加せずに除染したプライマー−ヌクレオチド混合物及び除染した酵素混合物を30℃で約400分間インキュベートすることでDNA増幅反応を実施した。増幅反応混合物は、40μMのプライマー(ランダムプライマー又は配列W+W+NN*S(式中、WはA又はT/Uを表し、SはG又はCを表し、Nはランダムヌクレオチドを表し(即ち、NはA、C、G又はT/Uのいずれかであり得る)、文字表記の前に付けたプラス(+)記号はその文字によって表されるヌクレオチドがLNAヌクレオチドであることを意味し、文字表記の前に付けた星印(*)記号はその文字によって表されるヌクレオチドがホスホロチオエート修飾ヌクレオチドであることを意味する。)の部分拘束プライマー)、400μMのdNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTPの各々の等量混合物)及び200ngのPhi29DNAポリメラーゼ(反応物10μL当たり200ng)からなっていた。反応混合物は、15mM KCl、20mM MgCl2、0.01%(v/v)Tween−20及び1mM TCEPを含む50mM HEPES緩衝液(pH=8.0)中でインキュベートした。
【0082】
実施例3.増幅反応
核酸増幅反応のため、プライマー−ヌクレオチド混合物及び酵素混合物を除染後に鋳型核酸と共に混合して増幅反応物を創製し、次いでこれを約30℃でインキュベートした。等温増幅反応は、Phi29DNAポリメラーゼの存在下、かつランダムプライマー、ビーズに結合した特異的プライマー及びpUC18プラスミドDNAの存在下で実施した。
【0083】
DNA増幅反応を評価するため、除染プライマー−ヌクレオチド混合物及び除染酵素混合物をpUC18プラスミドDNA鋳型と共に30℃で約400分間インキュベートすることでDNA増幅反応を実施した。増幅反応混合物は、40μMのプライマー(ランダムプライマー又は配列W+WNN*S(式中、WはA又はT/Uを表し、SはG又はCを表し、Nはランダムヌクレオチドを表し(即ち、NはA、C、G又はT/Uのいずれかであり得る)、文字表記の前に付けたプラス(+)記号はその文字によって表されるヌクレオチドがLNAヌクレオチドであることを意味し、文字表記の前に付けた星印(*)記号はその文字によって表されるヌクレオチドがホスホロチオエート修飾ヌクレオチドであることを意味する。)の部分拘束プライマー)、1μLの特異的プライマーをコンジュゲートしたビーズ(1マイクロリットル当たり約70000個のビーズであって、特異的プライマーはビーズに共有結合している。)、400μMのdNTP(各400μMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP)、1pgのpUC18プラスミドDNA、及び200ngのPhi29DNAポリメラーゼ(反応物10μL当たり200ng)からなっていた。反応混合物は、15mM KCl、20mM MgCl2、0.01%(v/v)Tween−20及び1mM TCEPを含む50mM HEPES緩衝液(pH=8.0)中でインキュベートした。
【0084】
実施例4.捕獲ビーズ合成
特異的プライマーがビーズに結合したDNA捕獲ビーズを次のようにして合成する。DNA捕獲ビーズを合成するため、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)で活性化したSepharose(NHS HP SpinTrap(商標)、GE Healthcare社、ピスカタウェイ、米国ニュージャージー州)ビーズを使用した。次いで、製品文献(GE Healthcare NHS HP SpinTrap(商標)Protocol)に記載されたプロトコルを用いてビーズをオリゴヌクレオチドで官能化した。(増幅すべき鋳型である)pUC18プラスミドDNAの一本鎖の断片に対して相補的な−40ユニバーサル捕獲プライマーの5’末端に結合したアミン標識HEG(ヘキサエチレングリセロール)リンカー(5’−アミン−3 HEGスペーサー/5AmMC6/GTTTTCCCAGTCACGACGTTG**A−3’(配列番号1))をIDT Technologies社(コーラルビル、米国アイオワ州)から商業的に入手した。ここで、5AmMC6は、第一アミン基がヘキサエチレングリコールリンカーによってオリゴヌクレオチドの5’末端に結合されていることを表す。捕獲プライマーをTE緩衝液(pH8.0)に溶解して1mMの最終濃度を得た。3ピコモルのプライマーを各1μLのビーズに結合したが、1μLのプライマーをコンジュゲートしたビーズの充填スラリーは50000〜70000の個体ビーズを含み、ビーズは約30マイクロメートルの直径を有している。結合反応が100%完結した場合、これは60000個のビーズに結合した約3ピコモルのプライマー、即ちビーズ当たり1.5×108のプライマーを生じるであろう。
【0085】
実施例5:ビーズ上における増幅DNAの捕獲
捕獲ビーズは、それに結合した1以上の特異的プライマー配列を含んでいる。DNA捕獲ビーズ(ビーズ−スペーサー−配列番号1又はビーズ−スペーサー−配列番号2)を使用することで、次のようにして増幅DNA分子を捕獲した。反応中にビーズが懸濁状態に保たれることを保証するため、回転器プラットホーム上において除染プライマー−ヌクレオチド混合物及び除染酵素混合物をpUC18プラスミドDNA鋳型と共に30℃で約400分間インキュベートすることでDNA増幅反応を実施した。増幅反応混合物は、40μMのプライマー(配列W+WNN*S(式中、WはA又はT/Uを表し、SはG又はCを表し、Nはランダムヌクレオチドを表し(即ち、NはA、C、G又はT/Uのいずれかであり得る)、文字表記の前に付けたプラス(+)記号はその文字によって表されるヌクレオチドがLNAヌクレオチドであることを意味し、文字表記の前に付けた星印(*)記号はその文字によって表されるヌクレオチドがホスホロチオエート修飾ヌクレオチドであることを意味する。)の部分拘束プライマー)、3μLの特異的プライマー(1マイクロリットル当たり約70000個のビーズであって、特異的プライマーはビーズに共有結合している。)、400μMのdNTP(各400μMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP)、2ngのpUC18プラスミドDNA、及び200ngのPhi29DNAポリメラーゼ(反応物10μL当たり200ng)からなっていた。インキュベーションは、15mM KCl、20mM MgCl2、0.01%(v/v)Tween−20及び1mM TCEPを含む50mM HEPES緩衝液(pH=8.0)中で実施した。反応後、ビーズを沈降させた。未結合のDNA増幅生成物を含む反応上清を反応管から除去し、後の分析のために保存した。次いで、残ったビーズペレット200μLのTEで洗浄した。これは、TEを添加し、渦動によって短時間かきまぜ、マイクロフュージを用いて短時間遠心することで行った。この工程からのTE上清を除去し、洗浄工程をさらに2回繰り返した。洗浄済みのペレットを97μLのTE中に懸濁した。上述した増幅反応からのTE洗浄捕獲ビーズ15μlをペトリ皿に移した。ビーズスラリーを沈降させ、個々のビーズをマイクロマニピュレーションによって単離した。
【0086】
ランダム化プライマー及び特異的プライマー捕獲ビーズを用いてpUC18DNAを増幅した結果、ビーズに結合したDNAが得られた。結合した特異的プライマーでコートされた単一ビーズ上に存在する捕獲DNAの増幅は、図4Aに示すように増幅DNAで完全にコートされたビーズを生成した。図4Bは多くのかかるビーズを含む混合物から単離された同じビーズを示しており、かかる混合物から個々のビーズを単離できることを証明している。
【0087】
実施例6.制限消化
NTCからの増幅生成物及びpUC18プラスミドDNAからの増幅生成物を、上述のようにして特異的ビーズでコートされたビーズ上に捕獲した。ビーズをTEで3回洗浄し、次いでEcoRI制限消化に付した。(陽性対照としての)pUC18DNAを別途に制限消化に付した。DNAを消化するため、10単位のEcoRI、1μLの10×酵素緩衝液、1μLのTE洗浄ビーズ及び7μLの水を添加して10μLの総反応容量とし、反応混合物を水浴中において37℃で1時間インキュベートした。
【0088】
制限消化生成物をアガロースゲル上にロードすることで、図5に示すように、消化生成物の分子量を標準分子量マーカー(レーン1)に対して分析した。増幅pUC18DNAをビーズによって捕獲し、続いてEcoRI制限消化に付し、消化生成物を(図5に示すように)アガロースゲルのレーン2上にロードした。精製pUC18プラスミドDNAをEcoRIによって消化し、対照としてレーン4上にロードした。これらは、純粋なpUC18の制限消化生成物DNA及び制限消化後の増幅ビーズ結合pUC18DNAに関して同じ分子量を示している。NTC増幅DNAの制限消化生成物をレーン3にロードしたが、レーン3はビーズによって捕獲されたバックグラウンド増幅生成物の不存在を示している。これは、上述した方法を用いれば、バックグラウンド増幅なしに標的DNAの増幅及び捕獲が同時に行われることを実証している。
【0089】
実施例7:1つのビーズから別のビーズへのDNA移行
DNA増幅、捕獲、及び1つのビーズから別のビーズへのDNAを評価するため、以下の方法を実施した。管内において除染プライマー−ヌクレオチド混合物及び除染酵素混合物をプライマーでコートした捕獲ビーズ及びpUC18プラスミドDNA鋳型と共に30℃で約400分間インキュベートすることで、DNA増幅反応を開始した。増幅反応混合物は上述したものと同じであった。増幅DNAは管内に存在するビーズ上に捕獲した。
【0090】
上述したようにして、捕獲DNAを有する5つの個別に単離したビーズをそれぞれ別の反応管に移した。各管から過剰のTEを除去し、10μLの増幅反応混合物を各ビーズに添加した。増幅反応混合物は、40μMのプライマー(配列+W+WNN*S(式中、WはA又はT/Uを表し、SはG又はCを表し、Nはランダムヌクレオチドを表し(即ち、NはA、C、G又はT/Uのいずれかであり得る)、文字表記の前に付けたプラス(+)記号はその文字によって表されるヌクレオチドがLNAヌクレオチドであることを意味し、文字表記の前に付けた星印(*)記号はその文字によって表されるヌクレオチドがホスホロチオエート修飾ヌクレオチドであることを意味する。)の部分拘束プライマー)、400μMのdNTP(各400μMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP)、及び200ngのPhi29DNAポリメラーゼ(反応物10μL当たり200ng)からなっていた。インキュベーションは、15mM KCl、20mM MgCl2、0.01%(v/v)Tween−20及び1mM TCEPを含む50mM HEPES緩衝液(pH=8.0)中で実施した。個々のビーズ上に捕獲されたDNAの増幅後、1μLの増幅反応混合物上清を除去し、管内にビーズを残した。ビーズに結合したDNA制限酵素EcoRIによって消化した。図6のレーン2、4、6、8及び10に示されるように、異なる管に関するEcoRI消化生成物をアガロースゲル上にロードした(5つの個別ビーズが単離され、それに結合したDNAが増幅された)。他方、図6のレーン3、5、7、9及び11に示されるように、消化なしの同じ試料をアガロースゲルにロードした。各レーンには、pUC18からの2.7KB増幅生成物がはっきりと認められる。これは、増幅反応に添加された各々の個別ビーズが初期増幅反応中に実際にpUC18増幅生成物を捕獲したことを実証している。これは、本方法がDNAを増幅しかつ捕獲するためにいかに使用できるかを示す非限定的な例をなしている。
【0091】
別の反応では、捕獲された増幅DNAを有する1つのビーズが、新鮮な増幅反応混合物を追加の特異的プライマーでコートしたビーズと共に既に含む管に移された。増幅反応混合物は、40μMのプライマー(配列+W+WNN*S(式中、WはA又はT/Uを表し、SはG又はCを表し、Nはランダムヌクレオチドを表し(即ち、NはA、C、G又はT/Uのいずれかであり得る)、文字表記の前に付けたプラス(+)記号はその文字によって表されるヌクレオチドがLNAヌクレオチドであることを意味し、文字表記の前に付けた星印(*)記号はその文字によって表されるヌクレオチドがホスホロチオエート修飾ヌクレオチドであることを意味する。)の部分拘束プライマー)、400μMのdNTP(各400μMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP)、及び200ngのPhi29DNAポリメラーゼ(反応物10μL当たり200ng)からなっていた。インキュベーションは、15mM KCl、20mM MgCl2、0.01%(v/v)Tween−20及び1mM TCEPを含む50mM HEPES緩衝液(pH=8.0)中で実施した。ここで増幅反応物は、上述したように以前の増幅反応管から移された、単一ビーズ上に捕獲されたDNAを含んでいた。単一ビーズからの増幅DNAをこの反応でさらに増幅し、反応中に他のビーズに移行させた。追加のビーズ上に捕獲された増幅DNAを上述したようにTEで3回洗浄し、続いてEcoRIによる制限消化に付した。得られた洗浄ビーズ1μLを取り出し、実施例6に記載したようにしてEcoRIで消化した。EcoRI消化生成物を図6のレーン12に示されるようにアガロースゲルにロードし、また未消化生成物をレーン13上にロードした。上記の実施例は、第1の増幅反応で最初に増幅されかつビーズ上に捕獲されたDNAが、続いて次の増幅反応で単一ビーズから離れて増幅され、新しい捕獲ビーズの集団上に捕獲されたことを明確に実証している。この実施例では、pUC18でコートされた単一のビーズを本方法で使用することで、約150000個のpUC18でコートされた追加ビーズが創製された。この実証例は、本方法がDNAを1つの位置又は表面から別の位置又は表面に移行させるためにいかに使用できるかを示す非限定的な例である。
【0092】
実施例8:配列分析
上述したビーズが増幅鋳型を含むことのさらなる実証例として、ビーズからDNA配列情報を得た。実施例5に関して上述したようにして、増幅DNAをビーズ上に捕獲した。増幅及び捕獲後、TEで洗浄したビーズをDNA配列決定反応用の鋳型として使用することで、ビーズが表面に結合した増幅DNAを含むことを実証した。得られた洗浄ビーズ1μL(50000個のビーズ)を取り出し、3.2ピコモル(1μL)のM13逆配列決定プライマー、4μLのBig Dye DNA配列決定プレミックス、2μLの配列決定緩衝液及び12μLの水の混合物を前記ビーズに添加した。DNAを製造業者の推奨条件に従ってサイクル配列決定し、配列決定生成物を沈殿によって精製し、ABI 3730x1配列決定機(Applied Biosystem社)上で分解した。配列決定データ(配列番号2)を図7に示す。これらのビーズから得られた配列は、約200ngのpUC18鋳型DNAを用いて通常得られるものと同等なシグナル強度を有していた。これは、各ビーズが約10ピコグラムの結合増幅pUC18DNAを有し得ることを表している。得られた配列はpUC18 DNAから得られる配列と正確なマッチを示し、ビーズに結合したDNAが増幅pUC18 DNAであることを表している。
【0093】
以上、本明細書中には本発明の若干の特徴のみを例示し説明してきたが、当業者には数多くの修正及び変更が想起されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は本発明の真の技術思想に含まれるこのような修正及び変更のすべてを包含することを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸の増幅方法であって、
核酸鋳型、DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、ランダム化配列を含むプライマー、及び特異的プライマーを用意する段階、並びに
等温条件下で核酸鋳型を増幅して増幅核酸配列を生成させる段階
を含んでなる方法。
【請求項2】
ランダムプライマーが1以上の修飾核酸塩基を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
修飾核酸塩基がランダム化配列を含むプライマーの融解温度を高める、請求項2記載の方法。
【請求項4】
修飾核酸塩基がロックド核酸塩基、ペプチド核酸塩基及びリボ核酸塩基から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
特異的プライマーが第1の基材に結合されている、請求項1記載の方法。
【請求項6】
第1の基材がビーズ、試験管、マルチウェルプレート及びスライドから選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
第1の基材の材料がポリマー、ガラス及び金属から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項8】
さらに、増幅核酸配列を特異的プライマーとハイブリダイズして第1の基材に結合した核酸配列を生成させることで増幅核酸配列を捕獲する段階を含む、請求項5記載の方法。
【請求項9】
さらに、第1の基材に結合した核酸配列を鋳型として用いて特異的プライマーのハイブリダイゼーション部位から核酸配列を伸長させる段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
さらに、ランダム化配列を含むプライマーによって第1の基材に結合した核酸配列を増幅して第2の増幅核酸配列を生成させる段階を含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
さらに、第2の増幅核酸を第2の基材に結合した特異的プライマーとハイブリダイズすることで、第2の核酸配列を第2の基材によって捕獲する段階を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
特異的プライマーが捕獲剤に結合されている、請求項1記載の方法。
【請求項13】
捕獲剤が親和性タグを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
増幅がエマルジョン中で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
増幅がローリングサークル増幅又は多重置換増幅を含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
増幅核酸配列がタンデム反復核酸配列である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
核酸鋳型が環状核酸である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
核酸鋳型が組換え部位を含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
核酸鋳型がDNAである、請求項1記載の方法。
【請求項20】
DNAポリメラーゼがPhi29DNAポリメラーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項21】
ランダムプライマーが5以上のヌクレオチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
核酸を増幅するためのキットであって、
Phi29DNAポリメラーゼ、
ランダム化配列を含む1以上のプライマー、及び
1以上の特異的プライマー
を含んでなるキット。
【請求項23】
特異的プライマーが基材又は捕獲剤に結合されている、請求項23記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−518598(P2013−518598A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552146(P2012−552146)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2011/023996
【国際公開番号】WO2011/142861
【国際公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】