説明

ランプの石英ガラスのエンベロープ内に埋め込まれている導体を有するランプ

ランプの光源を囲んでいる石英ガラスのエンベロープ1を有するランプであって、電気導体8が、例えば、電極ロッドであり、エンベロープ1の前記石英ガラス材料内に少なくとも部分的に埋め込まれている、ランプが、記載されている。前記導体の一部の表面の少なくとも一部は、この表面にブラシ状構造を形成している突起15を備えている。突起15は、好ましくは、10μmと35μmとの間の平均長を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプの光源を囲んでいる石英ガラスのエンベロープを有する当該ランプであって、電気導体が前記エンベロープの前記石英ガラス材料内に少なくとも部分的に埋め込まれている、ランプに関する。前記電気導体とは、電極ロッドであっても良いが、例えば、調理用の又は産業上の加熱用途のための高出力ハロゲンランプのような、白熱ランプに電力を供給するロッド形部のような、前記ランプの前記エンベロープの石英ガラス材料内に埋め込まれている他の導電性部材であっても良い。
【背景技術】
【0002】
この種類のランプは、米国特許第2001/0005117A号に開示されている。この刊行物は、ランプの放電空間を囲んでいる石英ガラスのエンベロープを有する高圧放電ランプを記載している。このランプは、2つの封止されている部分を備えており、前記石英ガラスのエンベロープの2つの端部の各々に1つの封止されている部分が設けられている。2つの電極ロッドの端部が前記放電空間内に突き出ており、各電極ロッドの一部は、2つの電極ロッドが互いに対して同軸上に位置される仕方で、前記エンベロープの封止されている部分に埋め込まれている。前記2つの電極ロッドの他方の端部は、電流を前記電極ロッドに供給するための伝導性モリブデン箔要素の端部に接続に接続されており、前記モリブデン箔要素も、前記ランプの前記石英ガラスのエンベロープの前記封止されている部分に埋め込まれている。前記モリブデン箔要素の他方の端部は、前記ランプの前記石英ガラスのエンベロープの外側に延在している導出ワイヤに接続されている。
【0003】
前記2つの電極ロッドは、このエンベロープの両端において同軸上において位置決めされるだけでなく、互いに対して平行に、かつ、互いから幾分か離間されて位置決めされることができ、これらは、前記ランプの前記石英ガラスのエンベロープの同じ前記封止されている部分に埋め込まれている。当該ランプは、キセノンメタルハライドランプ、特にHIDランプ(高輝度放電ランプ)のような何らかの電気放電ランプ、又はハロゲンランプのような石英ガラスのエンベロープを有する何らかの他のランプであっても良い。当該ランプは、ランプ及びリフレクタを有するユニットの一体型の部分であっても良い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなランプは、自身の一部が前記ランプの前記エンベロープの前記封止されている部分に埋め込まれている導体材料と前記エンベロープの前記石英ガラス材料との熱膨張係数の差を呈している。このような膨張係数の差は、特にランアップ段階における、使用の際に、前記ランプの材料内に高い応力を生じ、前記高い応力は、前記ランプの前記エンベロープのクラッキング又は破裂による初期のランプの故障を生じ得る。前記ランプの前記電極ロッドの周りにコイルを設ける又は前記電極ロッドの周りを箔で包むというような、前記膨張係数の差の結果としての石英ガラス内のクラックを回避するための幾つかの手段が、知られている。これらの手段の不利な点は、これらの手段の殆どが、前記ランプの付加的な部分を必要としており、比較的高い付加的な費用となることである。
【0005】
本発明の目的は、電気導体が前記ランプの前記エンベロープの前記石英ガラス材料内に少なくとも部分的に埋め込まれている、ランプを提供し、従って、少なくとも減少が所望されている所定の場所における前記ランプの前記エンベロープの前記石英ガラス材料内のクラックのリスクを減少することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、この導体の部分の表面の少なくとも一部は、突起を備えており、当該突起は、前記表面におけるブラシ状構造(即ち前記導体の材料の一部が外側に延在しており、前記突起を形成している構造)を形成している。前記突起は、自身の断面の平均寸法よりも遥かに長い長さを有することができる。前記表面の一部は、剛毛質又はブラシ状の外観を有しており、前記突起は、ブラシの毛又はスパイクのように、前記導体の表面から立ち上がっている。経験によって、このような埋め込まれている前記導体の前記表面のブラシ状構造は、特に導体が速く加熱された場合に、囲んでいる石英ガラス材料内の応力及びクラックの生成を、防止する又は少なくとも減少することが分かっている。
【0007】
このことは、以下の説明に基づくものである。前記導体の前記表面の前記ブラシ状構造は、前記石英ガラス材料内に埋め込まれた場合、ある程度まで平らにされるが、このブラシの毛の間に、熱くなった場合に前記導体の材料の付加的な膨張を収容するための多少の小さい空間が設けられる。前記導体の材料と前記石英ガラス材料との間の直接的な接触が存在し、この結果、前記導体は、自身の熱を石英ガラス管に伝導することができる。従って、前記導体が熱くなることは、囲んでいる前記石英ガラスが同時に熱くなることを生じ、この結果、前記導体と前記囲んでいる石英ガラスとの間の膨張の差が、減少される。
【0008】
好適実施例において、前記突起は、10μmと35μmとの間、好ましくは15μmと25μmとの間の平均長を有しており、前記ブラシ状構造の材料密度は、好ましくは、20%と80%との間であり、この材料密度において、前記ブラシ状構造は、同じ材料の固体構造のものよりも大幅に高い機械的可撓性及び変形可能性を有する。
【0009】
好適実施例において、前記導体の表面の一部は、1つ以上の窪みを備えており、前記突起は、前記窪みの縁に位置されている。この窪みは、前記導体の表面内のピットであっても良いが、前記導体の一部の表面における1つ以上の溝であることが好ましい。この場合、前記導体の表面は、前記導体の材料が前記窪みから取り除かれると共に、前記窪みの縁における前記ブラシ状構造の毛状突起内に再整形されているような仕方で、扱われることができる。
【0010】
好適実施例において、前記導体の表面における前記ブラシ状構造は、25μmよりも小さい幅の1つ以上の区域内に延在しており、前記区域は、前記窪みの縁に沿って延在していることができる。前記区域又は複数の区域は、前記導体の周りのらせん状の帯であっても良く、前記導体の前記表面に短い帯を有していても良く、又は異なる形状を持つ領域であっても良い。
【0011】
前記導体の表面の一部は、好ましくは、レーザービームによって処理され、これにより、前記導体の材料が局所的に取り除かれると共に、前記導体の前記表面における突起を形成する。前記導体の表面をパルス状レーザービームによって処理することにより、前記導体の材料は、前記レーザーに晒された後に動き去り、少なくとも、この材料の一部が前記導体の表面における突起を形成することが分かっている。
【0012】
好適実施例において、前記導体の材料は、タングステン、タングステン合金、又はドープされたタングステンである。他の好適な実施例において、前記導体の材料は、純粋な、ドープされた又は合金にされている質のMo、Ta、Re、Inのような、耐熱性材料の群からのタングステン以外の金属である。このような材料は、ランプにおいてしばしば使用されており、前記ランプエンベロープの前記石英ガラス材料内に埋め込まれ、このような材料における前記ブラシ状構造は、レーザービームによる簡単で速い操作において作られることができる。
【0013】
前記導体は、前記エンベロープの前記石英ガラス材料内に部分的に埋め込まれている電極ロッドであるのが好ましく、前記ランプは、好ましくは、前記電極ロッドが前記石英ガラスのエンベロープの前記封止されている部分内に埋め込まれている、高圧ガス放電ランプである。このようなランプにおいて、前記電極ロッドは、前記ランプがオンに切り換えられた場合に速く加熱され、特に、乗り物のキセノンランプの場合、余分の電力が、短期間で高い光強度に達するために前記ランプに供給される。この場合、前記電極ロッドの温度は、非常に速く上昇する。このようなランプにおいて、クラックは、前記電極ロッドの前記表面の前記ブラシ状構造によって防止されることができると共に、前記電極ロッドの膨張のための幾らかの空間が設けられる。このブラシ状構造は、前記電極ロッドから、囲んでいる前記石英ガラスへの比較的速い熱の輸送を保証する。
【0014】
本発明は、前記ランプの光源を囲っている石英ガラスのエンベロープを有するランプであって、電気導体が、前記エンベロープの石英ガラス材料内に少なくとも部分的に埋め込まれており、この導体の一部の前記表面の少なくとも一部は、レーザービームによって処理されており、これにより前記導体の材料が局所的に取り除かれると共に、前記導体の表面における突起を形成している、ランプの製造の方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ガス放電ランプを示している。
【図2】当該ランプの一部の模式的な断面図である。
【図3】当該電気ロッドのブラシ状表面を示している。
【図4】当該電極ロッドの表面の模式的な断面図である。
【図5】他の電極ロッドのブラシ状表面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のこれら及び他の見地は、以下に記載されている実施例を参照して明らかになり、説明されるであろう。
【0017】
添付図面は、模式的表現のものであり、図は、本発明に関連する一部のみを示している。
【0018】
図1は、石英ガラスのエンベロープ1を持つガス放電ランプを示している。エンベロープ1は、例えば、水銀、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化スカンジウム、キセノン及び/又は他のガスによって充填されているガス放電空間2を収容している。エンベロープ1は、透明な外側エンベロープ3によって囲まれている。
【0019】
前記ランプのエンベロープ1は、2つの封止されている部分4、5をエンベロープ1の両端に備えている。各封止されている部分4、5は、エンベロープ1の石英ガラス材料内に埋め込まれているモリブデン箔部材6、7を有する。各モリブデン箔部材6、7は、電極ロッド8、9の端部に接続されており、各電極ロッド8、9の他方の端部は、ガス放電空間2内に突き出ている。電極ロッド8、9は、少なくとも自身の表面に、添加剤(例えば、ThO)を有し得ているタングステンからできている。
【0020】
2つのモリブデン箔要素6、7の各々は、それぞれ、導出ワイヤ10、11にも接続されており、導出ワイヤ10、11は、エンベロープ1の石英ガラス材料の外側に突き出ており、この結果、これらは、電力を供給するための手段に接続されることができる。電力は、モリブデン箔要素6、7を介して電極ロッド8、9に供給される。
【0021】
当該ランプは、前記ランプをランプホルダに接続するための口金12を備えている。前記ランプの口金12は、前記ランプホルダ内の対応する接触要素に接続されるべき接触要素(図示略)を備えており、この結果、電力が、これらの接触要素を介して前記ランプの前記ランプホルダから供給されることができる。導出ワイヤ10は、前記接触要素の一方に接続されており、他方の前記接触要素は、導出ワイヤ11に電力を供給するために電流ガイドロッド13に接続されている。
【0022】
図2は、当該ランプの、図1における円17よって示されている部分についての模式的な断面の拡大図である。前記ランプのエンベロープ1の石英ガラス材料の封止されている部分4は、電極ロッド8の端部に接続されているモリブデン箔部材6を有している。電極ロッド8の他方の端部は、当該ランプのエンベロープ1のガス放電空間2内に突き出ている。
【0023】
円柱状の電極ロッド8の一部が、当該ランプの石英ガラスのエンベロープ1の封止されている部分4内に埋め込まれている。電極ロッド8のこの部分の表面は、逆向きの斜線によって図2内に示されているらせん状の溝14を備えている。突起が、溝14の2つの縁に沿って設けられており、この結果、電極ロッド8の前記表面におけるブラシ状構造が得られている。
【0024】
図3は、電極ロッド8の一部を示しており、電極ロッド8の表面の前記ブラシ状構造が示されている。前記ブラシ状構造は、電極ロッド8の材料の毛状突起15を有しており、前記突起は、電極ロッド8の円筒表面におけるらせん状の溝14の縁に位置されている。
【0025】
前記ブラシ状構造は、溝14の脇に、25μmよりも小さい幅の区域内に延在しており、典型的には、15μm乃至25μm高さであり、樹状、繊維質及び/又は円錐形状のものである。前記区域内の突起15は、20%と80%との間の平均材料密度を有しており、前記樹状、繊維質又は円錐形状ものは、100%に近い材料密度を有している。突起15は、とても高い断面積比を有しているので、これらの機械的可撓性及び変形可能性は、同じ寸法の固体構造のものよりも著しく高い。
【0026】
図3に示されているブラシ状構造は、ロッド8の表面上に向けられているレーザービームによる操作によって作られ、電極ロッド8は、自身の軸の周りに回転しており、この結果、らせん状の溝14が得られる。このようにして、電極ロッド8の材料は、局所的に取り除かれ、図3に示されている前記ブラシ状構造の毛状突起15を形成する。
【0027】
図4は、溝14及び突起15を模式的に示している。この例において、溝14は、約25μmの幅Aと、約75μmの深さCを有している。溝14間の距離Bは、約100μmであり、突起15は、約20μmの長さD(即ち高さ)を有している。
【0028】
図5は、円柱状電極ロッド8を示しており、円柱状電極ロッド8の表面はパルス状レーザービームによって処理されており、この結果、ピット18が電極ロッド8の前記表面内に作られ、突起15がピット18の縁に位置されている。この操作は、Qスイッチ ナノ秒YAGレーザー− IR 1064mによって実施される。このパルス長は、約16ナノ秒であり、パルス周波数は33Hzである。平均パワーは、9.6W(12Wシステムの80%)である。前記ピットは、約25μmの寸法を有している。操作中、電極ロッド8は、1000rpmの速度で回転している。更に、ガス流(空気又はアルゴン)が、微量の酸素(traces of oxygen)可能にするために供給される。酸素は、所望の前記ブラシ状構造を得るための反応の一部であるからである。
【0029】
電極ロッド8の前記表面の前記ブラシ状構造により、電極ロッド8と、前記ランプのエンベロープ1の封止されている部分4の前記石英ガラス材料との間に幾分かの空間が設けられ、この結果、電極ロッド8は、前記石英ガラス材料よりも僅かに更に膨張することができる。更に、前記ブラシ状構造により、電極ロッド8の材料と、前記ランプのエンベロープ1の封止されている部分4の前記石英ガラス材料との間に良好な熱伝導接触が設けられる。このようにして、前記石英ガラス内のクラックの発生のリスクが、かなり減少される。
【0030】
上述したランプの実施例は、単に、本発明によるガス放電ランプの例である。前記導体の埋め込まれている部分の一部の部分のみが前記ブラシ状構造を備えている実施例、又は前記導出ワイヤの表面の一部が前記ブラシ状構造を備えている実施例のような、多くの他の実施例が、実現可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプの光源を囲んでいる石英ガラスのエンベロープを有する前記ランプであって、電気導体が前記エンベロープの前記石英ガラスの材料内に少なくとも部分的に埋め込まれているランプにおいて、少なくとも前記電気導体の一部の表面の一部が、前記表面にブラシ状構造を形成している突起を備えていることを特徴とする、ランプ。
【請求項2】
前記突起が10μmと35μmとの間の平均長を有していることを特徴とする、請求項1に記載のランプ。
【請求項3】
前記ブラシ状構造における材料密度は、20%と80%との間の範囲であり、この材料密度において、前記ブラシ状構造は、同じ材料の固体構造のものよりも大幅に高い機械的可撓性及び変形可能性を持っていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のランプ。
【請求項4】
前記導体の表面の一部は、窪みを備えており、前記突起は、前記導体の一部の前記表面における1つ以上の溝である前記窪みの縁に位置されていることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載のランプ。
【請求項5】
前記導体の表面における前記ブラシ状構造は、25μmよりも小さい幅の区域内に延在していることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載のランプ。
【請求項6】
前記導体の表面の前記突起はレーザービームによって処理されており、前記レーザービームによって、前記導体の材料は局所的に取り除かれていると共に前記導体の表面に前記突起を形成していることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか一項に記載のランプ。
【請求項7】
前記導体の材料はタングステン、タングステン合金又はドープされたタングステンであることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載のランプ。
【請求項8】
前記導体の材料は、純粋な、ドープされている又は合金にされている質におけるMo、Ta、Re、Inのような耐熱性材料の群からのタングステン以外の金属であることを特徴とする、請求項1乃至7の何れか一項に記載のランプ。
【請求項9】
前記導体は、前記エンベロープの前記石英ガラス材料内に部分的に埋め込まれている電極ロッドであることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか一項に記載のランプ。
【請求項10】
前記ランプは高圧ガス放電ランプであって、前記電極ロッドは前記石英ガラスのエンベロープの封止されている部分に埋め込まれていることを特徴とする、請求項9に記載のランプ。
【請求項11】
ランプの光源を囲っている石英ガラスのエンベロープを有する前記ランプであって、電気導体が、前記エンベロープの前記石英ガラス材料内に少なくとも部分的に埋め込まれている、前記ランプを製造する方法であって、前記導体の一部の前記表面の少なくとも一部が、レーザービームによって処理されており、前記レーザービームによって、前記導体は局所的に取り除かれていると共に前記導体の表面に前記突起を形成していることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−503949(P2010−503949A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527269(P2009−527269)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053606
【国際公開番号】WO2008/032247
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】