説明

ランプの製造方法及びランプの製造装置

【課題】製造コストの増加抑制等を図ることのできるランプの製造方法及びランプの製造装置を提供する。
【解決手段】直管形のガラス管11をU字状に曲げた後、当該ガラス管11において並行して延在する一対の直管部11aの一方をクランク状に曲げる。そして、当該クランク状に曲げられた側からガラス管11内に水銀合金部材31を投入する。ガラス管11内を排気し、封入ガスを導入した後、ガラス管11内の水銀合金部材31を加熱することにより、水銀を放出させる。その後、ガラス管11を封止するとともに、クランク状に曲げられた部位を含む被切除部13を切除することにより、冷陰極蛍光灯が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極蛍光灯に代表されるランプを製造するためのランプの製造方法及びランプの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶表示装置等のバックライト用光源として、冷陰極蛍光灯(又は冷陰極放電灯;CCFL)が一般的に使用される。
【0003】
かかる冷陰極蛍光灯は、例えば、次のようにして製造される。まず、直管形のガラス管の内壁面の所定部位に蛍光体層を形成し、そのうち、長手方向に沿った2カ所に縮径部をそれぞれ形成する。次に、ガラス管のうち一方の端部にマウント(電極)を封止する。マウントは、電極部、該電極部から延びるリード線及びリード線の基端部側に設けられたガラス製のビードからなる。そして、かかるマウントをガラス管端部の所定の位置に仮止めした上で、ガラス管と前記ビードとを相互に溶着させる。続いて、他方の端部から別のマウント及び水銀合金部材を挿入し、一方の縮径部に別のマウントを仮止めしておき、さらに他方の縮径部(他方の端部側に位置する縮径部)に水銀合金部材を位置決めする。その後、ガラス管内を一旦排気し、封入ガスを導入し、さらに加熱によりガラス管内に水銀蒸気を放出する。そして、前記仮止めされていた別のマウントを封止する。より詳しくは、ガラス管を所定位置に位置決めした状態で、別のマウントの仮止めされている縮径部外周を加熱して相互に溶着し、その後、不要部位、つまり、水銀合金部材の存在する部位を切除する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
近年では、液晶表示装置等の製造コストの削減を図るため、ガラス管をU字状に曲げてU字形の冷陰極蛍光灯を製造する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。U字形とすることで、液晶表示装置等に使用する冷陰極蛍光灯の本数、ひいてはインバータの台数等を半減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−254364号公報
【特許文献2】特開2008−47318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、U字形の冷陰極蛍光灯は、そのU字状湾曲部の曲率が製品の仕様毎に大きく異なる。つまり、並行する一対の直管部の間隔や両開口端部の間隔が異なる。そのため、図9に示すように、所定の製品仕様に対応して予めU字状に曲げられたガラス管90を排気機91に接続する排気工程等においては、ガラス管90の両開口端部90a,90bの間隔と、これらが挿し込まれる排気機91の各排気ヘッド91a,91bの間隔とが大きくずれてしまう場合がある。製品の仕様の違いに起因するこれらのズレは、製造誤差により生じ得るガラス管90の反りを矯正する等して対処できる程度の微妙なズレではない。従って、これに対処するためには、ガラス管90が接続される排気機91側において、各排気ヘッド91a,91bの間隔を調整するためのスライド機構93等を設けなければならず、製造装置の構成の複雑化や製造コストを増加させる原因となっていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、製造コストの増加抑制等を図ることのできるランプの製造方法及びランプの製造装置を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0009】
手段1.U字形のランプを製造するためのランプの製造方法であって、
直管形のガラス管をU字状に曲げるU字曲げ工程と、
前記U字状に曲げられたガラス管において並行して延在する一対の直管部のうちの少なくとも一方をクランク状に曲げるクランク曲げ工程と、
前記ガラス管内に水銀合金を投入する水銀合金投入工程と、
前記ガラス管内を排気し、封入ガスを導入する排気・導入工程と、
前記ガラス管内の水銀合金を加熱することにより、水銀を放出する水銀放出工程と、
前記ガラス管を封止するとともに、少なくとも前記クランク状に曲げられた部位を切断する封止工程とを備えたことを特徴とするランプの製造方法。
【0010】
尚、「クランク状」とは、「直管部の長手方向の2箇所を屈曲させることにより、当該両屈曲部よりも、ガラス管の開口端部側に位置する直管状の第1部位と、U字状湾曲部側に位置する直管状の第2部位とが、直管部の管軸方向に直交する方向に対し、少なくとも直管部の直径以上にずれている状態」を指す。
【0011】
上記手段1によれば、U字形のガラス管の少なくとも一方の直管部をクランク状に曲げることにより、当該ガラス管の両開口端部の間隔を調整することが可能となる。これにより、U字状湾曲部の曲率が異なる様々な仕様のU字形ランプの製造過程において、ガラス管の両開口端部の間隔を一定にすることができる。従って、排気・導入工程で使用される排気機の排気ヘッドの挿込口の間隔を、ガラス管の各開口端部の位置に合わせて、製品仕様毎に変更する必要がない。つまり、製造装置側の設計変更や、排気ヘッドの間隔を調整するためのスライド機構等を設ける必要がない。結果として、製造装置を複雑化することなく、多様な製品仕様に対応して同一の製造装置を共通して使用することができ、製造コストの増加抑制を図ることができる。
【0012】
また、排気機の排気ヘッドの挿込口には、気密保持を図るため、通常、弾性材料よりなるシール部材が設けられている。このため、排気ヘッドの挿込口の間隔と、ガラス管の両開口端部の間隔とにズレがあると、シール部材にエア圧がかかった際、ガラス管に余計な負荷がかかることが懸念される。この点、本手段によれば、U字曲げ工程を行った後、さらにクランク曲げ工程を行うことで、ガラス管の両開口端部の間隔を規定の間隔に精度よく調整することが可能となるため、このような不具合を低減することができる。
【0013】
手段2.前記クランク曲げ工程により、前記一対の直管部の両開口端部がより近接した状態となるようにすることを特徴とする手段1に記載のランプの製造方法。
【0014】
上記手段2によれば、ガラス管の両開口端部の間隔を、クランク曲げ工程前の間隔よりも、より近接した状態とすることができる。その結果、ガラス管の各開口端部に対応してそれぞれ必要であった2つの排気ヘッドの機能を1つの排気ヘッドに集約させ、ひいてはガラス管の各開口端部に対応してそれぞれ必要であったシール部材を1つにまとめることも可能となる。結果として、製造装置の簡素化を図るとともに、製造コストの増加抑制を図ることができる。
【0015】
なお、クランク曲げ工程においては、ガラス管の管軸が略同一平面に含まれた状態となるように、当該平面に沿って直管部を屈曲させることが、ガラス管の両開口端部の間隔を効率よく調整する上ではより好ましい(以下の手段3においても同様)。
【0016】
手段3.前記クランク曲げ工程により、前記一対の直管部の両開口端部がより離間した状態となるようにすることを特徴とする手段1に記載のランプの製造方法。
【0017】
上記手段3によれば、ガラス管の両開口端部の間隔を、クランク曲げ工程前の間隔よりも、より離間した状態とすることができる。
【0018】
U字形のガラス管の場合、直管形のものとは異なり、両開口端部が同一方向に向き比較的近接した位置関係にある。そのため、U字状湾曲部の曲率が比較的大きい場合、すなわち両開口端部の間隔が比較的狭い場合、ガラス管の両開口端部に対しそれぞれ排気ヘッドを接続する構成の排気機に対しては、当該排気機がスライド機構等を備えていたとしても、各開口端部を各排気ヘッドへ接続できないおそれがある。製造装置の設計変更を行うにしても、2つの排気ヘッドを近接して設けるには限界がある。この点、本手段によれば、排気機の困難な設計変更を行う必要もない。結果として、製造装置の簡素化を図るとともに、製造コストの増加抑制を図ることができる。
【0019】
また、水銀放出工程においては、ガラス管を加熱炉に入れて水銀合金を加熱することにより、ガラス管全体に水銀を拡散させることとなる。しかしながら、通常のU字形ガラス管のままでは、ガラス管の両開口端部とも加熱炉に入ってしまうため、両端部間に温度差が生じず、拡散しづらくなるおそれがある。この点、本手段を利用すれば、ガラス管の一端側から比較的離れた他端側位置に水銀合金を係止させることも可能となる。かかる場合、ガラス管の一端側を加熱炉から外に出した状態で、他端側の水銀合金を係止した部位のみを加熱炉に入れて加熱することができるため、ガラス管全体に水銀を拡散させやすくなる。
【0020】
手段4.前記水銀合金投入工程においては、
前記クランク状に曲げた側の直管部の開口端部から、前記水銀合金を投入することを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のランプの製造方法。
【0021】
近年では、製造コスト削減のため、ガラス管をU字形とするとともに、ガラス管の長さが長くなる傾向にある。ガラス管の長さが長くなると、強度確保のため、ガラス管の直径を太くせざるを得ない。この太さから従来同様に水銀合金を係止可能な程度までガラス管を縮径することは非常に困難である。つまり、水銀合金を係止させることが困難となるおそれがある。
【0022】
この点、上記手段4によれば、クランク状に曲げた部分、つまり2箇所の屈曲部のうち開口端部側の屈曲部において、水銀合金を係止することが可能となる。結果として、水銀合金を係止するために、ガラス管に縮径部を形成する工程等を省略することができる。ガラス管をクランク状に曲げる加工は、ガラス管に縮径部を形成する加工よりも比較的容易に行うことができるため、製造方法の簡素化を図ることができる。
【0023】
上記効果をより確実なものとするためには、2箇所の屈曲部のうち少なくとも開口端部側の屈曲部を直角又は鋭角に屈曲させることがより好ましい。このようにすれば、比較的長さの短い水銀合金でもより確実に係止させることができる。
【0024】
加えて、ガラス管の径を細める縮径部が形成されない又は縮径部の数が減ることで、排気・導入工程におけるガス交換効率を高めることができる。さらに、ガラス管の移送時など製造過程の取り扱いにおいて、縮径部への応力集中がなくなる又は減るため、ガラス管の破損を低減させることができる。
【0025】
手段5.U字形のランプを製造するためのランプの製造装置であって、
直管形のガラス管をU字状に曲げるU字曲げ手段と、
前記U字状に曲げられたガラス管において並行して延在する一対の直管部のうちの少なくとも一方をクランク状に曲げるクランク曲げ手段と、
前記ガラス管内に水銀合金を投入する水銀合金投入手段と、
前記ガラス管内を排気し、封入ガスを導入する排気・導入手段と、
前記ガラス管内の水銀合金を加熱することにより、水銀を放出する水銀放出手段と、
前記ガラス管を封止するとともに、少なくとも前記クランク状に曲げられた部位を切断する封止手段とを備えたことを特徴とするランプの製造装置。
【0026】
上記手段5によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏される。
【0027】
手段6.前記クランク曲げ手段は、前記一対の直管部の両開口端部がより近接した状態となるようにすることを特徴とする手段5に記載のランプの製造装置。
【0028】
上記手段6によれば、上記手段2と同様の作用効果が奏される。
【0029】
手段7.前記クランク曲げ手段は、前記一対の直管部の両開口端部がより離間した状態となるようにすることを特徴とする手段5に記載のランプの製造装置。
【0030】
上記手段7によれば、上記手段3と同様の作用効果が奏される。
【0031】
手段8.前記水銀合金投入手段は、
前記クランク状に曲げた側の直管部の開口端部から、前記水銀合金を投入することを特徴とする手段5乃至7のいずれかに記載のランプの製造装置。
【0032】
上記手段8によれば、上記手段4と同様の作用効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】冷陰極蛍光灯を示す断面図である。
【図2】冷陰極蛍光灯の製造装置を示す概略構成図である。
【図3】(a)〜(d)は、一実施形態における冷陰極蛍光灯の製造工程を模式的に示すガラス管等の断面図である。
【図4】(a)〜(d)は、図3に続く、一実施形態における冷陰極蛍光灯の製造工程を模式的に示すガラス管等の断面図である。
【図5】(a)〜(d)は、図4に続く、一実施形態における冷陰極蛍光灯の製造工程を模式的に示すガラス管等の断面図である。
【図6】排気・封入ガス充填手段の概略構成を示す断面図である。
【図7】別の実施形態に係るクランク状に曲げられたガラス管を示す断面図である。
【図8】(a),(b)は、別の実施形態に係るクランク状に曲げられたガラス管を示す断面図である。
【図9】従来の冷陰極蛍光灯の製造工程を模式的に示すガラス管等の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0035】
図1に示すように、本実施形態におけるランプを構成する冷陰極蛍光灯1は、ガラスよりなるU字形のバルブ2と、バルブ2の両端において封止状態で設けられた電極としての第1ビードマウント3(以下、単に「第1マウント」と称する)及び第2ビードマウント4(以下、単に「第2マウント」と称する)とを備えている。バルブ2の内壁面には、蛍光体層5が設けられているとともに、バルブ2内部には水銀蒸気が存在している。前記両マウント3,4は、電極部7、該電極部7から延びるリード線8、及び、該リード線8の基端部側に設けられたガラス製のビード部9からなる。
【0036】
なお、同図では、便宜上、バルブ2の長さが比較的短く示されているが、実際には、かなり細長いものである。例えば、本実施形態におけるバルブ2は、その外径が3.0mmから6.5mm程度に、肉厚が0.2mmから0.5mm程度に、バルブ2の長さが900mmから2000mm程度に構成されている。また、U字曲げ幅W1が38mm程度に設定されている。もちろん、上記数値範囲を逸脱したものであってもよい。
【0037】
かかる冷陰極蛍光灯1は、次に記す製造装置51が用いられることにより製造される。図2に示すように、製造装置51は、塗布手段52、焼成手段53を具備している。塗布手段52は、後述するように直管形のガラス管11(図3(a)参照)の内壁面の所定部位に蛍光塗料を塗布する機能を有する。また、焼成手段53は、塗布された蛍光塗料をベーキング(加熱)することで蛍光体層5を形成する機能を有する。
【0038】
製造装置51は、U字曲げ手段54を具備している。U字曲げ手段54は、加熱・軟化手段として図示しない一対のバーナーを備えている。そして、当該バーナーにて所定位置を加熱軟化させることで、直管形のガラス管11をU字状に曲げる機能を有する。
【0039】
製造装置51は、第1仮止め手段55を具備しており、該第1仮止め手段55には、第1マウント供給手段55aが備えられている。第1仮止め手段55は、第1マウント供給手段55aから案内されてくる第1マウント3を、ガラス管11の一端側からガラス管11内部に挿通させるとともに、第1マウント3を仮止めする機能を有する。第1仮止め手段55は、第1マウント供給手段55a以外にも、図示は省略するが、加熱・軟化手段を構成する一対のバーナーと、押圧手段を構成する一対のピンチとを備えている。バーナーは、ガラス管11のうち、第1マウント3に対応する部位の相対する2箇所を外部から加熱し、軟化させる。また、ピンチは、ガラス管11の前記軟化した部位を相対する2方から押圧することで、第1マウント3のビード部9を仮止めする。
【0040】
製造装置51はまた、第2仮止め手段56を具備している。該第2仮止め手段56には、第2マウント供給手段56aが備えられている。第2仮止め手段56は、第1仮止め手段55と同様、第2マウント供給手段56aから案内されてくる第2マウント4を、ガラス管11の他端側からガラス管11内部に挿通させるとともに、第2マウント4をガラス管11の他端部に仮止めする機能を有する。
【0041】
製造装置51は、クランク曲げ手段57を具備している。クランク曲げ手段57は、ガラス管11の端部を把持する把持手段としてのチャック58と、加熱・軟化手段としての一対のバーナー59とを備えている(図4(a)等参照)。そして、バーナー59にて所定位置を加熱軟化させることで、ガラス管11のうち並行して延在する一対の直管部11a(図3(b)等参照)のうちの少なくとも一方をクランク状に曲げる機能を有する。
【0042】
製造装置51は、水銀合金投入手段61を具備している。この水銀合金投入手段61は、搬送されてくるガラス管11の開口端部11c(図3(b)等参照)から、水銀合金部材31(図4(d)等参照)を投入する機能を有する。
【0043】
製造装置51は、排気・導入手段としての排気・封入ガス充填手段62を具備している。
【0044】
排気・封入ガス充填手段62は、図6に示すように、ガラス管11の両端部11cが接続される排気ヘッド90を備えている。排気ヘッド90は、円筒形状のカバー部材91内に、ゴムからなるシール部材92と、これを挟むように配置されたスペーサ93,94とを収容した状態で、これらをキャップ95により固定している。
【0045】
シール部材92及びスペーサ93,94には、排気系流路95又は封入系流路96に連通する貫通孔97,98が形成されている。貫通孔97,98には、ガラス管11の両端部11cが挿入される。
【0046】
封入系流路96には、洗浄ガスを導入するための洗浄ガス流路96aと、封入ガスを導入するための封入ガス流路96bと、ガラス管11内のエア等を吸引排気するための排気流路96cとが接続されている。洗浄ガス流路96a及び封入ガス流路96bの他端側は、図示しない洗浄ガスボンベ及び封入ガスボンベに接続されている。排気流路96c及び排気系流路95の他端側は、図示しない真空ポンプにそれぞれ接続されている。また、各流路途中には、当該流路を開閉するための図示しない開閉弁が設けられている。
【0047】
上記構成の下、排気・封入ガス充填手段62は、ガラス管11内を一旦排気状態とし、その後、ガラス管11内に封入ガス(例えばアルゴンガス、アルゴン+ネオンガス等)を導入する機能を有する。
【0048】
排気・封入ガス充填手段62には、封着手段63が付設されている。該封着手段63は、排気・封入ガス充填手段62における封入ガス導入後、ガラス管11の両端部をチップオフ(切除)し、両端部を封着する機能を有する。
【0049】
製造装置51は、水銀放出手段としての蒸発手段64を具備している。この蒸発手段64は、加熱用のボンバータ64a(図5(b)参照)を備えており、該ボンバータ64aにて水銀合金部材31近傍のガラス管11外周、ひいては水銀合金部材31を加熱し、ガラス管11内に水銀蒸気を放出せしめる機能を有する。
【0050】
製造装置51は、最終的な封止を行う封止手段65を具備している。該封止手段65には、切断手段66が付設されている。封止手段65は、一対のバーナー65a,65b(図5(c)参照)を具備し、仮止めされている第1マウント3及び第2マウント4に対応する部位を封止する機能を有する。切断手段66は、前記封止の後、クランク状に曲げられた部位を含む被切除部13(図5(d)参照)を切除する機能を有する。
【0051】
次に、上記のように構成されてなる製造装置51を用いて、冷陰極蛍光灯1を製造するに際しての詳細について説明する。まず上述した塗布手段52、焼成手段53により、図3(a)に示すように、直管形のガラス管11の内壁面の所定部位に蛍光体層5を形成する。
【0052】
次に、ガラス管11は、U字曲げ手段54へと案内される。ここで、図3(b)に示すように、バーナーにて所定位置を加熱軟化させ、直管形のガラス管11をU字状に湾曲させる。この工程が本実施形態におけるU字曲げ工程に相当する。これにより、ガラス管11は、並行して延在する一対の直管部11aと、これらを連結するU字状湾曲部11bとを備えたU字形の構成となる。本実施形態では、ガラス管11のうち、バルブ2に対応する部位(蛍光体層5にほぼ対応する範囲)を便宜上、バルブ部12と称し、これを除く両直管部11aの開口端部11c側の部位を便宜上、被切除部13と称することとする。
【0053】
次に、ガラス管11は、第1仮止め手段55へと案内される。図3(c)に示すように、第1仮止め手段55では、ガラス管11のバルブ部12の一端部に対し第1マウント3が仮止めされる。より詳しくは、ガラス管11のうち、位置決めされた第1マウント3に対応する部分を外周からバーナーで加熱し軟化させる。ガラス管11の軟化した部位を一対のピンチにて外部から押圧する。これにより、第1マウント3のビード部9とガラス管11とが部分的に溶着し合うこととなり、第1マウント3の仮止めが完了する。
【0054】
次に、ガラス管11は、第2仮止め手段56へと案内される。第2仮止め手段56では、図3(d)に示すように、上記第1マウント3の仮止め方法と同様の方法により、ガラス管11のバルブ部12の他端部に対し第2マウント4が仮止めされる。
【0055】
なお、ガラス管11内の第1マウント3及び第2マウント4の仮止め部分には、エアやアルゴンガス等が通過可能な程度に十分な隙間が形成されている。
【0056】
続いて、U字形のガラス管11は、その向きを上下反転されて移送され、クランク曲げ手段57へ案内される。クランク曲げ手段57では、一方の被切除部13の長手方向(管軸方向)2箇所を屈曲させ、当該被切除部13をクランク状に曲げる加工が行われる。この工程が本実施形態におけるクランク曲げ工程に相当する。
【0057】
より詳しくは、図4(a)に示すように、ガラス管11は、直管部11aの管軸方向(長手方向)が鉛直方向に沿うように一対のチャック58により開口端部11c近傍が保持される。続いて、図示しない位置調整手段により位置合わせした後、開口端部11c側の屈曲部となる第1屈曲部13a(図4(c)参照)に相当する部位を外周からバーナー59で加熱し軟化させる。そして、図4(b)に示すように、ガラス管11の軟化した部位から開口端部11c側を他方の被切除部13から離間する方向に屈曲させる。これは、屈曲させる被切除部13と、他方の被切除部13と接触させないためである。続いて、位置調整手段により位置合わせした後、バルブ部12側の屈曲部となる第2屈曲部13b(図4(c)参照)に相当する部位を外周からバーナー59で加熱し軟化させる。そして、図4(c)に示すように、ガラス管11の軟化した部位から開口端部11c側を他方の被切除部13へ近接する方向に屈曲させる。なお、図示は省略するが、各屈曲工程の後には、クーリングブロー等により各屈曲部13a,13bを冷却硬化させる。
【0058】
上記工程を経ることにより、図4(c)に示すように、ガラス管11の一方の被切除部13は、両屈曲部13a,13bよりも、開口端部11c側に位置する直管状の第1部位13cと、バルブ部12側に位置する直管状の第2部位13dとが、被切除部13の管軸方向(図4の上下方向)に直交する方向(図4の左右方向)に対し、被切除部13の直径以上にずれた状態となる。これにより、ガラス管11の両開口端部11cの間隔W2がU字曲げ幅W1よりも短くなる。また、本実施形態では、各屈曲部13a,13bにおける屈曲角αが鈍角である105度に設定されている。
【0059】
引き続き、ガラス管11は、水銀合金投入手段61へと案内される。そして、図4(d)に示すように、クランク状に曲げられた側の開口端部11cから水銀合金部材31が投入される。この工程が本実施形態における水銀合金投入工程に相当する。本実施形態では、水銀合金部材31は、被切除部13の内径よりも小さく、かつ、第1屈曲部13aを曲がりきれない長さを有している。このため、前記投入により、水銀合金部材31は、第1屈曲部13aより下には落下せず、ここに係止された状態となる。水銀合金部材31としては、例えばセラミックス製、或いは金属製の筒体内に、水銀蒸気を放出可能な水銀合金を封入したものが好適に用いられる。
【0060】
このように水銀合金部材31が投入されたガラス管11は、排気・封入ガス充填手段62へと案内される。そして、図5(a)に示すように、ガラス管11の両開口端部11cが、排気ヘッド90の貫通孔97,98内にそれぞれ挿入されると、図示しないエア注入孔を介してシール部材92内の中空部に高圧エアが注入される。その結果、シール部材92とガラス管11との間がシールされる。
【0061】
この状態で、ガラス管11が外側から加熱されながら、そのガラス管11内の空気や不純ガスが、ガラス管11の両端部から同時に吸引排気される。そして、排気系流路95側から吸引排気を続け、他方の封入系流路96側を排気流路96cから洗浄ガス流路96aに切り換え、ガラス管11内の洗浄ガスを一方へ流すことにより、バルブ内の不純ガスを短時間かつ確実に除去する。次いで、ガラス管11内の空気などが抜かれた後、排気系流路95側が閉じられて他方の封入系流路96(封入ガス流路96b)から微量の水銀とともに封入ガス(例えばアルゴンガス、アルゴン−ネオンガス等)がガラス管11内に導入される。この工程が本実施形態における排気・導入工程に相当する。なお、封入ガス導入後、排気ヘッド90は取外されるが、本実施形態では、封入ガスとして空気よりも比重の大きいアルゴンガス等が採用されているため、ガラス管11の両開口端部11cから封入ガスが抜けたりすることが起こりにくい。
【0062】
封入ガス導入後、ガラス管11は、封着手段63へと案内され、そこで、ガラス管11の両端部をチップオフ(切除)される。
【0063】
次に、ガラス管11は、蒸発手段64へと案内される。該蒸発手段64では、図5(b)に示すように、ボンバータ64aにて水銀合金部材31に対応する部位(第1屈曲部13a)のガラス管11外周が加熱される。該加熱により、水銀合金部材31からガラス管11内に水銀蒸気が放出させられる。なお、本例では、被切除部13の端部をチップオフした後に加熱処理を施すこととしているが、排気ヘッド90に装着したままの状態で加熱処理を施すこととしてもよい。そして、この加熱処理により、水銀蒸気が放出され、バルブ部12内に流入する。この工程が本実施形態における水銀放出工程に相当する。
【0064】
次に、ガラス管11は、最終的な封止手段65へと案内される。封止手段65では、図5(c),(d)に示すように、ガラス管11の両端部にて仮止めされていた第1マウント3及び第2マウント4が封止される。より詳しくは、第1マウント3及び第2マウント4の外周がそれぞれ一対のバーナー65a,65bで加熱される。これにより、ビード部9及びガラス管11が相互に溶着され、前記切断手段66において、図5(d)に示すように、前記封止された封着部を残して、被切除部13が切除される。この工程が本実施形態における封止工程に相当する。このように、一連の工程を経ることによって、前記冷陰極蛍光灯1が得られるのである。
【0065】
以上詳述したように、本実施形態によれば、U字形のガラス管11の一方の直管部11aをクランク状に曲げることにより、当該ガラス管11の両開口端部11cの間隔W2を調整することが可能となる。これにより、U字状湾曲部11bの曲率(U字曲げ幅W1)が異なる様々な仕様のU字形の冷陰極蛍光灯1の製造過程において、ガラス管11の両開口端部11cの間隔W2を一定にすることができる。従って、排気・導入工程で使用される排気・封入ガス充填手段62の排気ヘッド90の貫通孔97,98の間隔を、ガラス管11の各開口端部11cの位置に合わせて、製品仕様毎に変更する必要がない。つまり、製造装置51側の設計変更や、排気ヘッド90の間隔を調整するためのスライド機構等を設ける必要がない。結果として、製造装置51を複雑化することなく、多様な製品仕様に対応して同一の製造装置51を共通して使用することができ、製造コストの増加抑制を図ることができる。
【0066】
また、本実施形態では、ガラス管11の両開口端部11cの間隔W2がU字曲げ幅W1よりも短くなるように、直管部11aをクランク状に曲げている。これにより、従来では、ガラス管11の各開口端部11cに対応してそれぞれ必要であった2つの排気ヘッドの機能を本実施形態のように1つの排気ヘッド90に集約させ、ひいてはガラス管11の各開口端部11cに対応してそれぞれ必要であったシール部材をシール部材92のように1つにまとめることが可能となる。結果として、製造装置51の簡素化を図るとともに、製造コストの増加抑制を図ることができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、水銀合金投入工程において、クランク状に曲げた側の開口端部11cから水銀合金部材31を投入し、当該水銀合金部材31を第1屈曲部13aにて係止させる構成となっている。結果として、水銀合金部材31を係止するために、別途、ガラス管11に縮径部を形成する工程等を省略することができる。ガラス管11をクランク状に曲げる加工は、本実施形態のように比較的直径の太いガラス管11であっても、ガラス管11に縮径部を形成する加工よりも比較的容易に行うことができるため、製造方法の簡素化を図ることができる。加えて、ガラス管11の径を細める箇所が減ることで、排気・導入工程におけるガス交換効率を高めることができるとともに、ガラス管11の移送時などにおける応力集中箇所を減らし、ガラス管11が破損するおそれを低減させることができる。
【0068】
尚、上述した実施形態の記載内容に限定されることなく、例えば次のように実施してもよい。
【0069】
(a)上記実施形態では、本発明を、冷陰極蛍光灯1を製造するため製造方法及び製造装置51に具体化しているが、他のランプを製造する場合に具体化してもよい。また、封入ガスとして、上記アルゴンガス以外にも、窒素ガス等を用いてもよい。
【0070】
(b)上記実施形態では、ガラス管11の両開口端部11cの間隔W2がU字曲げ幅W1よりも短くなるように、直管部11aをクランク状に曲げている。これに限らず、例えば、図7に示すように、ガラス管11の両開口端部11cの間隔W2がU字曲げ幅W1よりも広くなるように、直管部11aをクランク状に曲げる構成としてもよい。
【0071】
仮にU字状湾曲部11bの曲率が比較的大きい場合、すなわちU字曲げ幅W1が比較的狭い場合には、ガラス管11の各開口端部11cに対応して、排気ヘッド90の各貫通孔97,98を個々に独立して設けることが困難となることも想定される。つまり、ガラス管11の両端部を個別にシールすることが困難となる場合がある。この点、ガラス管11の両開口端部11cの間隔W2を広げる上記構成とすれば、排気ヘッド90に困難な設計変更を行う必要もない。結果として、製造装置の簡素化を図るとともに、製造コストの増加抑制を図ることができる。勿論、ガラス管11の各開口端部11cに対応して個別に排気ヘッドを備えた構成においても同様の効果が奏される。
【0072】
また、ガラス管11の両開口端部11aをより離間した状態とすることにより、水銀放出工程においては、水銀合金部材31を加熱蒸発させるボンバータ64aからガラス管11の他端側をU字曲げ幅W1よりも離間させることができる。これにより、ガラス管11の両端部間に温度差が生じやすくなり、バルブ部12全体に水銀を拡散させやすくなる。
【0073】
(c)上記実施形態では、ガラス管11の各屈曲部13a,13bの屈曲角αが鈍角(105度)に設定されている。屈曲角αはこれに限定されるものではない。例えば、図8(a)に示すように、各屈曲部13a,13bの屈曲角αが直角になるように設定してもよいし、図8(b)に示すように、各屈曲部13a,13bの屈曲角αが鋭角になるように設定してもよい。このようにすれば、比較的長さの短い水銀合金部材31でもより確実に係止させることができる。結果として、様々な径を有する種々のガラス管に対応できるよう水銀合金部材31を比較的小径化して、汎用性を高めることができる。
【0074】
(d)上記実施形態では、水銀合金部材31を第1屈曲部13aにて係止させる構成となっているが、これに限らず、例えば、縮径部を別に形成して当該縮径部に水銀合金部材31を係止する構成としてもよい。かかる場合、当該縮径部は、第1屈曲部13aよりも開口端部11c側に形成してもよいし、第2屈曲部13bよりもバルブ部12側に形成してもよし、両屈曲部13a,13b間に形成してもよい。
【0075】
(e)上記実施形態におけるクランク曲げ工程においては、U字形のガラス管11の管軸が略同一平面(図4等の紙面)に含まれた状態となるように、当該平面に沿って直管部11aを屈曲させている。これに限らず、例えば製造装置51の構成によっては、U字形のガラス管11の管軸が含まれる略同一平面から第1屈曲部13aが外れた位置(例えば図4等の紙面奥側)となるように、クランク状に屈曲させる構成としてもよい。
【0076】
(f)上記実施形態では、U字形のガラス管11の一方の直管部11aをクランク状に曲げる構成となっているが、これに限らず、両方の直管部11aをクランク状に曲げる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…冷陰極蛍光灯、2…バルブ、11…ガラス管、11a…直管部、11b…U字状湾曲部、11c…開口端部、12…バルブ部、13…被切除部、13a…第1屈曲部、13b…第2屈曲部、13c…第1部位、13d…第2部位、31…水銀合金部材、51…製造装置、54…U字曲げ手段、57…クランク曲げ手段、61…水銀合金投入手段、62…排気・封入ガス充填手段、63…封着手段、64…蒸発手段、65…封止手段、66…切断手段、90…排気ヘッド、92…シール部材、W1…U字曲げ幅、W2…ガラス管の両開口端部の間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字形のランプを製造するためのランプの製造方法であって、
直管形のガラス管をU字状に曲げるU字曲げ工程と、
前記U字状に曲げられたガラス管において並行して延在する一対の直管部のうちの少なくとも一方をクランク状に曲げるクランク曲げ工程と、
前記ガラス管内に水銀合金を投入する水銀合金投入工程と、
前記ガラス管内を排気し、封入ガスを導入する排気・導入工程と、
前記ガラス管内の水銀合金を加熱することにより、水銀を放出する水銀放出工程と、
前記ガラス管を封止するとともに、少なくとも前記クランク状に曲げられた部位を切断する封止工程とを備えたことを特徴とするランプの製造方法。
【請求項2】
前記クランク曲げ工程により、前記一対の直管部の両開口端部がより近接した状態となるようにすることを特徴とする請求項1に記載のランプの製造方法。
【請求項3】
前記クランク曲げ工程により、前記一対の直管部の両開口端部がより離間した状態となるようにすることを特徴とする請求項1に記載のランプの製造方法。
【請求項4】
前記水銀合金投入工程においては、
前記クランク状に曲げた側の直管部の開口端部から、前記水銀合金を投入することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のランプの製造方法。
【請求項5】
U字形のランプを製造するためのランプの製造装置であって、
直管形のガラス管をU字状に曲げるU字曲げ手段と、
前記U字状に曲げられたガラス管において並行して延在する一対の直管部のうちの少なくとも一方をクランク状に曲げるクランク曲げ手段と、
前記ガラス管内に水銀合金を投入する水銀合金投入手段と、
前記ガラス管内を排気し、封入ガスを導入する排気・導入手段と、
前記ガラス管内の水銀合金を加熱することにより、水銀を放出する水銀放出手段と、
前記ガラス管を封止するとともに、少なくとも前記クランク状に曲げられた部位を切断する封止手段とを備えたことを特徴とするランプの製造装置。
【請求項6】
前記クランク曲げ手段は、前記一対の直管部の両開口端部がより近接した状態となるようにすることを特徴とする請求項5に記載のランプの製造装置。
【請求項7】
前記クランク曲げ手段は、前記一対の直管部の両開口端部がより離間した状態となるようにすることを特徴とする請求項5に記載のランプの製造装置。
【請求項8】
前記水銀合金投入手段は、
前記クランク状に曲げた側の直管部の開口端部から、前記水銀合金を投入することを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載のランプの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−257814(P2010−257814A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107587(P2009−107587)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】