説明

ランプボディおよび車両用灯具

【課題】灯室内に生じた水滴によるランプの制御回路の故障を防止する。
【解決手段】ランプボディ12は、ハイビームランプ14、ロービームランプ16およびターンシグナルランプ18を収容する。ランプボディ12は、底面部12bと、底面部12bに設けられた、各ランプから延びるワイヤハーネスを底面部12bの下方に配置されるECU20に通すための穴部12と、穴部12の周囲が底面部12bよりも高くなるように形成された嵩上げ部24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に用いられるランプボディに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前面側が開口したランプボディと、該ランプボディの前面開口部を覆うカバーとで構成される灯室内にロービームランプ、ハイビームランプなどが組み込まれた車両用灯具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
カバーは、例えばポリカーボネート樹脂を用いて形成され、ランプボディは、例えばポリプロピレン樹脂を用いて形成される。車両用灯具は高い防水性が要求されることから、カバーとランプボディは熱溶着工法、ホットメルト工法、接着剤工法等により組み付け固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−220433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、外部から灯室内への水の侵入を防ぐことができたとしても、結露により灯室内に水滴が発生する可能性がある。また、溶着部にクラックが発生し、該クラックを通って外部から灯室内に水が侵入する可能性もある。この灯室内に生じた水滴がワイヤハーネスやランプボディの内壁を伝わってロービームランプやハイビームランプの点消灯を制御する制御回路に流れ込んだ場合、制御回路が故障するおそれがある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、灯室内に生じた水滴によるランプの制御回路の故障を防止できるランプボディ、および該ランプボディを用いた車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のランプボディは、灯具ユニットを収容するランプボディであって、底面部と、底面部に設けられた穴部であって、灯具ユニットから延びるワイヤハーネスを底面部の下方に配置される灯具ユニットの制御回路に通すための穴部と、穴部の周囲が底面部よりも高くなるように形成された嵩上げ部とを備える。
【0008】
この態様によると、穴部の周囲に嵩上げ部を形成することにより、底面部に水がたまった場合でも制御回路に水が流れ込む事態が回避され、制御回路の故障を防止できる。
【0009】
穴部の上方に設けられた、当該ランプボディの内壁を伝わって落下する水滴を穴部の外側に導く防水壁をさらに備えてもよい。防水壁は、穴部の少なくとも一部を覆うように形成されてもよい。このように防水壁を設けることにより、制御回路に水が流れ込む事態が回避され、制御回路の故障を防止できる。
【0010】
穴部の外側においてワイヤハーネスをクランプするクランプ部をさらに備え、ワイヤハーネスは、クランプ部から離れるにつれて上方に向かうようクランプされてもよい。これにより、ワイヤハーネスを伝わって落下してきた水滴はクランプ部より先に進むことができず、制御回路の故障を防止できる。
【0011】
本発明の別の態様は、上述のランプボディを用いた車両用灯具である。上述のランプボディを用いて車両用灯具を構成することにより、灯室内で発生した水による故障の少ない車両用灯具を実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、灯室内に生じた水滴によるランプの制御回路の故障を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用灯具の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用灯具の概略斜視図である。
【0016】
本実施形態に係る車両用灯具10は、ランプボディ12とカバー(図示せず)とにより構成される灯室内に、ハイビームランプ14、ロービームランプ16およびターンシグナルランプ18が収容されたコンビネーションヘッドランプである。
【0017】
図1に示すように、ランプボディ12は、前面の開口する容器状に形成されている。ランプボディ12は、側面部12aと、底面部12bとを備える。ランプボディは、例えばポリプロピレン樹脂を用いて形成されてよい。ランプボディ12の前面開口部の周縁部12cと、例えばポリカーボネート樹脂製のカバー(図示せず)の周縁部とが接合固定されることにより、車両用灯具10の灯室30が画成される。ランプボディ12とカバーの接合方法については特に限定されず、例えば熱溶着法やホットメルト法を用いることができる。
【0018】
ハイビームランプ14、ロービームランプ16およびターンシグナルランプ18は、ランプボディ12の側面部12aに取付固定されている。本実施形態において、ハイビームランプ14、ロービームランプ16およびターンシグナルランプ18は、車幅方向に並設されている。
【0019】
本実施形態において、ハイビームランプ14およびロービームランプ16は、プロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されている。また、ターンシグナルランプ18は、リフレクタ型の灯具ユニットとして構成されている。灯具ユニットの種類は特に限定されない。
【0020】
ハイビームランプ14、ロービームランプ16およびターンシグナルランプ18は、ランプボディ12の外部(ランプボディ12の下方)に設けられたECU(Electronic Control Unit)20により点消灯が制御される。ハイビームランプ14、ロービームランプ16およびターンシグナルランプ18は、それぞれ、ハイビームランプ用ワイヤハーネス15、ロービームランプ用ワイヤハーネス17およびターンシグナルランプ用ワイヤハーネス19によりECU20と接続されている。
【0021】
図1に示すように、ランプボディ12の底面部12bには、ハイビームランプ14、ロービームランプ16およびターンシグナルランプ18から延びるハイビームランプ用ワイヤハーネス15、ロービームランプ用ワイヤハーネス17およびターンシグナルランプ用ワイヤハーネス19をECU20に通すための穴部22が設けられている。本実施形態において、穴部22の直下にはECU20が位置している。
【0022】
本実施形態において、穴部22の周囲には嵩上げ部24が形成されている。この嵩上げ部24は、穴部22の周囲が底面部12bよりも高くなるように形成されている。嵩上げ部24の底面部12bに対する高さは、例えば1〜10mm程度であってよい。穴部22の周囲に嵩上げ部24を形成することにより、底面部12bに水がたまった場合でも、ECU20に水が流れ込む事態が回避され、ECU20の故障を防止できる。
【0023】
また本実施形態においては、穴部22の上方に防水壁26が設けられている。この防水壁26は、ランプボディ12の内壁を伝わって落下する水滴を穴部22の外側に導く。防水壁26は、側面部12aから穴部22の一部を覆うように延設されている。防水壁26は、中心部から両端部にかけて下方に向かってテーパ状に傾斜している。このように防水壁26テーパ状の傾斜面とすることにより、ランプボディ12の内壁を伝わって落下する水滴を効果的に穴部22の外側に導くことができる。その結果、ECU20に水が流れ込む事態が回避され、ECU20の故障を防止できる。
【0024】
さらに、本実施形態に係る車両用灯具10は、ワイヤハーネスをクランプするためのクランプ部を備える。具体的には、図1に示すように、ハイビームランプ用ワイヤハーネス15を引っ掛けてクランプするためのハイビームランプ用クランプ部32と、ロービームランプ用ワイヤハーネス17を引っ掛けてクランプするためのロービームランプ用クランプ部34と、ターンシグナルランプ用ワイヤハーネス19を引っ掛けてクランプするためのターンシグナルランプ用クランプ部36とを備える。
【0025】
ハイビームランプ用クランプ部32、ロービームランプ用クランプ部34およびターンシグナルランプ用クランプ部36は、ランプボディ12の側面部12aから延びるピン状又はリブ状部材である。これらのクランプ部は、穴部22の外側に位置するように形成されている。言い換えると、クランプ部は、穴部22にかからないように側面部12aから延設されている。
【0026】
図1に示すように、ハイビームランプ用クランプ部32、ロービームランプ用クランプ部34およびターンシグナルランプ用クランプ部36により穴部22の外側でクランプされたハイビームランプ用ワイヤハーネス15、ロービームランプ用ワイヤハーネス17およびターンシグナルランプ用ワイヤハーネス19は、クランプ部から離れるにつれて一旦上方に向かい、その後下方に向かって穴部22を通過する。このように、穴部22の外側でワイヤハーネスをクランプした後、ワイヤハーネスを一旦上方に向かわせることにより、ワイヤハーネスを伝わって落下してきた水滴は、クランプ部より先に進むことができない。その結果、水滴がワイヤハーネスを伝わってECU20に流れ込む事態が回避され、ECU20の故障を防止できる。
【0027】
なお、各ワイヤハーネスに関し、クランプの回数は1回でなくてもよく、複数回のクランプが行われてもよい。また、クランプ後にワイヤハーネスが上方に向かう回数は1回でなくてもよく、複数回上方に向かうようワイヤハーネスをクランプしてもよい。
【0028】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0029】
10 車両用灯具、 12 ランプボディ、 14 ハイビームランプ、 15 ハイビームランプ用ワイヤハーネス、 16 ロービームランプ、 17 ロービームランプ用ワイヤハーネス、 18 ターンシグナルランプ、 19 ターンシグナルランプ用ワイヤハーネス、 20 ECU、 22 穴部、 24 嵩上げ部、 26 防水壁、 32 ハイビームランプ用クランプ部、 34 ロービームランプ用クランプ部、 36 ターンシグナルランプ用クランプ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯具ユニットを収容するランプボディであって、
底面部と、
前記底面部に設けられた穴部であって、前記灯具ユニットから延びるワイヤハーネスを前記底面部の下方に配置される前記灯具ユニットの制御回路に通すための穴部と、
前記穴部の周囲が前記底面部よりも高くなるように形成された嵩上げ部と、
を備えることを特徴とするランプボディ。
【請求項2】
前記穴部の上方に設けられた、当該ランプボディの内壁を伝わって落下する水滴を前記穴部の外側に導く防水壁をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のランプボディ。
【請求項3】
前記防水壁は、前記穴部の少なくとも一部を覆うように形成されることを特徴とする請求項2に記載のランプボディ。
【請求項4】
前記穴部の外側において前記ワイヤハーネスをクランプするクランプ部をさらに備え、
前記ワイヤハーネスは、前記クランプ部から離れるにつれて上方に向かうようクランプされることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のランプボディ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のランプボディを用いた車両用灯具。

【図1】
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