リアクトルおよびその製造方法
【課題】磁気特性をより精度良く設定することが出来ると共に、よりコスト効率良く製造することの出来る、新規な構造のリアクトル、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】コイル12が巻回される環状コア14を、コア分割体32とギャップ板34とをシアノアクリレート系接着剤で相互に接着して熱可塑性樹脂38でインサート成形して一体化したコアモールド部材24bを含んで形成した。
【解決手段】コイル12が巻回される環状コア14を、コア分割体32とギャップ板34とをシアノアクリレート系接着剤で相互に接着して熱可塑性樹脂38でインサート成形して一体化したコアモールド部材24bを含んで形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車などの車両に搭載される車載用DC−DCコンバータといった電力変換装置の構成部品に利用されるリアクトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への意識の高まりから、ハイブリッド自動車(Hybrid Vehicle)や電気自動車(Electric Vehicle)等のように、従来のエンジンに加えて、或いは代えて、動力源として電気モータを利用した自動車が増加しつつある。これらの自動車には、直流電源からの電圧を電気モータの駆動電圧に昇圧するために、リアクトルが搭載されている。
【0003】
リアクトルは、例えば特開2008−263062号公報(特許文献1)や特開2010−245457号公報(特許文献2)等に記載されているように、環状コアにコイルが巻回された構造を備えている。リアクトルにはスイッチング回路が組み合わされており、コイルへの通電のON−OFFを繰り返すことにより、逆起電力を利用して高電圧を取り出す。
【0004】
ところで、環状コアは、リアクトルのインダクタンスを所望の値にするために、磁性材料からなる複数のコア分割体の間に、非磁性材料からなるギャップ板を介在させることにより、磁路中にギャップが設けられている。リアクトルのインダクタンスはギャップ距離で規定されることから、ギャップ距離は、高精度に設定される必要がある。
【0005】
しかし、特許文献1や特許文献2にも記載されているように、従来のリアクトルは、コア分割体とギャップ板が、熱硬化性接着剤で接着固定されていた。熱硬化性接着剤は粘度が大きいことから、コア分割体とギャップ板の間に厚みの大きな接着層を形成してしまう。それ故、実質的なギャップ距離が接着層で変化されてしまうと共に、接着層の厚みを高精度に管理することは困難であることから、インダクタンスを所望の値に精度良く設定することが困難になる場合があった。また、接着層の厚みのばらつきにより寸法誤差を生じて、リアクトルの組立が困難になるおそれがあった。
【0006】
さらに、熱硬化性接着剤を熱硬化させるまで、コア分割体とギャップ板を接着固定用治具で保持しておく必要があると共に、接着剤を熱硬化槽内で熱硬化させるのに時間を要した。それ故、大量に生産するには、接着固定用治具および熱硬化槽を数多く用意する必要があって、設備費用や生産に要するスペースの大型化、延いてはリアクトルの製造コストの増加を招くという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−263062号公報
【特許文献2】特開2010−245457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、磁気特性をより精度良く設定することが出来ると共に、よりコスト効率良く製造することの出来る、新規な構造のリアクトル、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
リアクトルに関する本発明の第一の態様は、複数のコア分割体の間にギャップ板が介在された環状コアにコイルが巻回されているリアクトルにおいて、前記環状コアが、前記コア分割体と前記ギャップ板とがシアノアクリレート系接着剤で相互に接着されて熱可塑性樹脂でインサート成形されて一体化されたコアモールド部材を含んで形成されていることを、特徴とする。
【0010】
本発明に従う構造とされたリアクトルにおいては、環状コアを構成するコア分割体とギャップ板が、シアノアクリレート系の瞬間接着剤で相互に接着される。瞬間接着剤は粘度が小さいことから、コア分割体の表面とギャップ板の表面の間の微小隙間に入り込むことが可能であり、実質的に接着層を形成することなく、コア分割体とギャップ板を相互に接着することが出来る。これにより、接着層の層厚を管理することが不要となり、環状コアにおけるギャップ距離を精度良く設定することが出来る。その結果、リアクトルの磁気特性をより精度良く設定することが出来る。また、コア分割体とギャップ板の間に接着層が実質的に存しないことから、環状コアの寸法精度を向上することが出来て、組み立ての容易性やコイル等の各部材の位置決め精度を向上することもできる。
【0011】
さらに、瞬間接着剤を用いることにより、コア分割体とギャップ板を常温環境下で瞬時に接着することが出来る。その結果、熱硬化性接着剤を用いる場合のように、熱硬化槽等の設備を要したり、熱硬化に時間を要したりすることもなく、接着作業を極めて容易且つ迅速に行うことが可能であり、製造コストの低減を図ることが出来る。
【0012】
そして、相互に接着されたコア分割体とギャップ板がインサート成形されて、熱可塑性樹脂で一体化されたコアモールド部材とされている。これにより、複数のコア分割体とギャップ板の積層構造体を一体として取り扱うことが可能であり、環状コアの組立作業を容易に行うことが出来る。更に、コア分割体とギャップ板が樹脂で覆われることから、コア分割体とギャップ板の剛性や耐久性を確保することが出来る。また、樹脂で覆われることによって、コア分割体とギャップ板を積層状態で安定的に固定することが出来る。即ち、本発明におけるシアノアクリレート系接着剤は、コア分割体とギャップ板のインサート成形が完了するまでの仮固定力が得られれば足り、インサート成形完了後には必ずしも接着力が維持されている必要はない。
【0013】
リアクトルに関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記環状コアは、前記コイルが巻回される一対の内側コアと、それら内側コアの両端部を相互に連結する一対の外側コアとを含んで構成されており、前記一対の内側コアのそれぞれが、前記コアモールド部材で形成されているものである。
【0014】
本態様によれば、コイルが巻回される内側コアを構成するコア分割体とギャップ板を、コアモールド部材として一体的に取り扱うことが出来る。これにより、リアクトルの組立時において、内側コアのコイルへの挿通作業を容易に行うことが出来る。また、コイルが巻回される内側コアにおいて、コア分割体とギャップ板が樹脂で覆われることから、該樹脂によってコア分割体とコイルとを絶縁するボビンを構成することが出来る。その結果、部品点数を削減出来ると共に、ボビンの組み付け作業を不要とすることが出来る。
【0015】
リアクトルに関する本発明の第三の態様は、前記第二の態様に記載のものにおいて、前記一対の内側コアの一方と、前記外側コアを前記内側コアに対して位置決めするサイドボビンとが一体化されて前記コアモールド部材が形成されており、互いに同形状とされた一対の該コアモールド部材を用いて前記環状コアが形成されているものである。
【0016】
本態様によれば、外側コアを内側コアに対して位置決めするサイドボビンも、内側コアを構成するコア分割体とギャップ板を覆う熱可塑性樹脂によって、コアモールド部材に一体形成される。これにより、更なる部品点数の削減と、組み立て作業の効率化を図ることが出来る。また、一対のコアモールド部材が互いに同形状の同一部品とされていることから、コア分割体とギャップ板をインサート成形する成形型が1種類で足り、金型費の削減を図ることが出来ると共に、部品管理の手間を軽減することも出来る。
【0017】
リアクトルに関する本発明の第四の態様は、前記第三の態様に記載のものにおいて、前記一対の内側コアの一方と、前記サイドボビンと、該サイドボビンで位置決めされる前記外側コアとが一体化されて前記コアモールド部材が形成されているものである。
【0018】
本態様によれば、内側コアに加えて、外側コアもコアモールド部材として一体化されている。これにより、一対のコアモールド部材による2点の部品のみで環状コアを形成することが出来て、更なる部品点数の削減を図ることが出来ると共に、組み立て作業の効率化を図ることが出来る。また、内側コアと外側コアが樹脂で覆われることから、内側コアと外側コアとの相互の固定力をより安定的に確保することも出来る。
【0019】
リアクトルに関する本発明の第五の態様は、前記第二の態様に記載のものにおいて、前記一対の外側コアの一方と前記一対の内側コアが一体化されて前記コアモールド部材が形成されていると共に、該コアモールド部材と前記一対の外側コアの他方とによって前記環状コアが形成されているものである。
【0020】
本態様によれば、コアモールド部材が、一方の外側コアに一対の内側コアが連結されたU字形状とされる。これにより、コイルを一対の内側コアに一度に挿通することが出来て、リアクトルの組立作業性をより向上することが出来る。
【0021】
リアクトルの製造方法に関する本発明は、複数のコア分割体の間にギャップ板が介在された環状コアにコイルが巻回されているリアクトルの製造方法において、前記コア分割体と前記ギャップ板とを、シアノアクリレート系接着剤で相互に接着して熱可塑性樹脂でインサート成形して一体化したコアモールド部材を形成して、該コアモールド部材を用いて前記環状コアを形成することを、特徴とする。
【0022】
本発明に従うリアクトルの製造方法によれば、シアノアクリレート系の瞬間接着剤を用いることによって、コア分割体とギャップ板を、実質的に接着層を形成すること無しに積層状態で固定することが出来る。これにより、接着層の厚みを管理することが不要とされて、環状コアにおけるギャップ距離を精度良く設定することが出来る。その結果、リアクトルの磁気特性をより精度良く設定することが出来る。また、環状コアの寸法精度が向上されることから、組み立て容易性やコイル等の各部材の位置決め精度を向上することも出来る。
【0023】
また、瞬間接着剤を用いることにより、コア分割体とギャップ板を常温環境下で速やかに接着することが出来る。これにより、熱硬化性接着剤を用いる場合のように、熱硬化槽等の設備を要したり、熱硬化に時間を要したりすることもなく、接着作業を極めて容易且つ迅速に行うことが可能であり、リアクトルの製造コストの低減を図ることが出来る。そして、コア分割体とギャップ板を熱可塑性樹脂でインサート成形することにより、コア分割体とギャップ板との固定力を樹脂で担保することが出来る。従って、本発明におけるシアノアクリレート系接着剤による接着作業は、コア分割体とギャップ板のインサート成形が完了するまでの仮固定力が得られるものであれば足り、インサート成形完了後には必ずしも接着力が維持されている必要はない。
【0024】
そして、コア分割体とギャップ板を熱可塑性樹脂でインサート成形したコアモールド部材を形成することにより、コア分割体とギャップ板を、積層状態で一体品として取り扱うことが出来る。これにより、環状コアの組み立てを容易に行うことが出来る。
【発明の効果】
【0025】
本発明に従う構造とされたリアクトルおよびその製造方法によれば、コア分割体とギャップ板を、実質的に接着層を介することなく積層状態で固定することが出来る。これにより、環状コアにおけるギャップ距離をより精度良く設定することが出来て、リアクトルの磁気特性をより精度良く設定することが出来る。また、熱硬化槽のような設備や熱硬化処理も不要となることから、よりコスト効率良くリアクトルを製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一の実施形態としてのリアクトルの上面図。
【図2】図1におけるII−II断面図。
【図3】図1に示したリアクトルの分解斜視図。
【図4】コア分割体とギャップ板の接着状態を説明するための断面拡大説明図。
【図5】図1に示したコアモールド部材の上面図。
【図6】本発明の第二の実施形態としてのリアクトルの上面図。
【図7】図6におけるVII−VII断面図。
【図8】図6に示したリアクトルの分解斜視図。
【図9】本発明の第三の実施形態としてのリアクトルの上面図。
【図10】図9におけるX−X断面図。
【図11】図9に示したリアクトルの分解斜視図。
【図12】本発明の第四の実施形態としてのリアクトルの分解上面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
先ず、図1〜図3に、本発明の第一の実施形態としてのリアクトル10を示す。リアクトル10は、コイル12と、コイル12が巻回される環状コア14を含んで構成されている。なお、以下の説明では、リアクトル10を設置したときの設置側(図2中、下側)を下側、その対向側(図2中、上側)を上側として説明する。
【0029】
コイル12は、接合部の無い1本の連続する巻線16を螺旋状に巻回してなる一対のコイル素子18a,18bと、両コイル素子18a,18bを連結するコイル連結部20とを有している。各コイル素子18a,18bは、互いに同一の巻数で、軸方向から見た形状(端面形状)が略矩形状である。これら両コイル素子18a,18bは、各軸方向が平行するように横並びに並列されており、コイル12の他端側(図3では紙面奥側)において巻線16の一部がU字状に屈曲されてコイル連結部20が形成されている。この構成により、両コイル素子18a,18bの巻回方向は同一となっている。
【0030】
巻線16は、銅やアルミニウムといった導電性材料からなる導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を有する被覆線が好適である。ここでは、導体が銅製の平角線からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線を利用している。絶縁被覆の厚さは、20μm以上100μm以下が好ましく、厚いほどピンホールを低減できて電気絶縁性を高められる。両コイル素子18a,18bは、上記被覆平角線をエッジワイズ巻きにして、中空の角筒状に形成されている。巻線16は、導体が平角線からなるもの以外に、断面が円形状、楕円形状、多角形状などの種々の形状のものを利用できる。平角線は、断面が円形状の丸線を用いた場合よりも占積率が高いコイルを形成し易い。なお、各コイル素子を別々の巻線により作製し、各コイル素子を形成する巻線の端部を溶接などにより接合して一体のコイルとした形態とすることができる。
【0031】
コイル12を形成する巻線16の両端部22a,22bは、コイル12の一端側(図3において紙面手前側)においてターン形成部分から適宜引き延ばされて上方に引き出される。引き出された巻線16の両端部22a,22bは、絶縁被覆が剥がされて露出された導体部分に、導電材料からなる図示しない端子金具が接続される。この端子金具を介して、コイル12に電力供給を行う電源などの図示しない外部装置が接続される。
【0032】
環状コア14は、各コイル素子18a,18bがそれぞれ巻回される一対の内側コア24a,24bと、コイル12が配置されず、コイル12から露出されている一対の外側コア26a,26bとを有する。ここでは、各内側コア24a,24bはそれぞれ略直方体状であり、各外側コア26a,26bはそれぞれ、斜辺が湾曲された一対の台形状面を有する角柱状体である。環状コア14は、離間して互いに略平行に配置される内側コア24a,24bを挟むように外側コア26a,26bが配置されており、各内側コア24a,24bにおける両端部の端面28,28が外側コア26a,26bの内端面30,30と接触されることにより、内側コア24a,24bの同じ側に位置する端面28,28が外側コア26a,26bでそれぞれ相互に連結されて環状に形成される。これら内側コア24a,24b及び外側コア26a,26bにより、環状コア14は、コイル12を励磁したときに、閉磁路を形成する。
【0033】
内側コア24a,24bおよび外側コア26a,26bは、それぞれ、互いに同一の部材とされていることから、特に区別する必要の無い場合には、内側コア24、外側コア26として説明する。図2に示したように、内側コア24は、磁性材料からなる略直方体形状のコア片であるコア分割体32と、代表的には非磁性材料からなる板状のギャップ板34とを交互に積層して構成された積層体である。一方、外側コア26は、磁性材料からなるコア片である。各コア片は、磁性粉末を用いた成形体や、絶縁被膜を有する磁性薄板(例えば、電磁鋼板)を複数積層した積層体が利用できる。
【0034】
上記成形体は、例えば、Fe,Co,Niといった鉄族金属、Fe−Si,Fe−Ni,Fe−Al,Fe−Co,Fe−Cr,Fe−Si−AlなどのFe基合金、希土類金属やアモルファス磁性体といった軟磁性材料からなる粉末を用いた圧粉成形体、上記粉末をプレス成形後に焼結した焼結体、上記粉末と樹脂との混合体を射出成形や注型成型などした成形硬化体が挙げられる。その他、コア片は、金属酸化物の焼結体であるフェライトコアなどが挙げられる。成形体は、種々の立体形状の磁性コアを容易に形成することができる。
【0035】
圧粉成形体は、上記軟磁性材料からなる粉末の表面に絶縁被膜を有するものを好適に利用することができ、この場合、当該粉末を成形後、上記絶縁被膜の耐熱温度以下で焼成することにより得られる。絶縁被膜は、代表的には、シリコーン樹脂やリン酸塩からなるものが挙げられる。
【0036】
内側コア24のコア分割体32の材質と外側コア26の材質とを異ならせた形態とすることができる。例えば、内側コア24のコア分割体32を上記圧粉成形体や上記積層体とし、外側コア26を上記成形硬化体とすると、内側コア24の飽和磁束密度を外側コア26よりも高め易い。ここでは、コア分割体32および外側コア26は、鉄や鋼などの鉄を含有する軟磁性粉末の圧粉成形体としている。
【0037】
ギャップ板34は、積層方向視でコア分割体32と略等しい大きさとされて、インダクタンスの調整のためにコア分割体32間に設けられる隙間に配置される板状材であり、アルミナやガラスエポキシ樹脂、不飽和ポリエステルなど、上記コア分割体32よりも透磁率が低い材料、代表的には非磁性材料により構成される。
【0038】
内側コア24において、複数のコア分割体32とギャップ板34が交互に積層されており、コア分割体32,32の間にギャップ板34が介在されている。図4に示すように、コア分割体32とギャップ板34は、接着剤36で相互に接着されている。接着剤36は、瞬間接着剤として用いられるシアノアクリレート系接着剤である。接着剤36がコア分割体32の表面37とギャップ板34の表面39との微小な隙間に入り込むことによって、コア分割体32とギャップ板34が相互に接着される。
【0039】
そして、図2にも示したように、積層されたコア分割体32とギャップ板34が熱可塑性樹脂38でインサート成形されることにより、積層方向(図2中、左右方向)の略全長および全周に亘って熱可塑性樹脂38で被覆されている。これにより、複数のコア分割体32とギャップ板34が、熱可塑性樹脂38で相互に固定されて一体化されてコアモールド部材が形成されており、本実施形態においては、内側コア24a,24bが、コアモールド部材で形成されている。なお、図5にも示すように、内側コア24の両端部40a,40bにはギャップ板34,34が配設されており、熱可塑性樹脂38から僅かに外方に突出されている。また、内側コア24の両端部40a,40bは、後述するサイドボビン44a,44bの筒状部46,46への挿し込みと位置決めのために、肉厚がやや小さくされている。更に、熱可塑性樹脂38の外周面上には、必要に応じて、内側コア24の長手方向(図5中、左右方向)に延びる突条部42が適宜に形成されており、コイル12との接触面積を小さくして挿通が容易となるようにされている。
【0040】
熱可塑性樹脂38としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)などの絶縁性材料が利用できる。
【0041】
コア分割体32やギャップ板34の個数は、リアクトル10が所望のインダクタンスとなるように適宜選択することができる。また、コア分割体32、外側コア26やギャップ板34の形状は適宜選択することができる。更に、図2から明らかなように、環状コア14では、外側コア26a,26bが内側コア24a,24bよりも下方に突出されている。これにより、コイル12における下面と外側コア26a,26bの下面が略面一となるようにされている。
【0042】
内側コア24a,24bと外側コア26aの間、内側コア24a,24bと外側コア26bの間には、それぞれ、サイドボビン44a,44bが設けられて、内側コア24に対して外側コア26を位置決めすると共に、コイル12と環状コア14との絶縁性が高められている。サイドボビン44a,44bは互いに同形状を有する同一の部材とされている。サイドボビン44は、内側コア24a,24bの一方の端部40a(又は40b)に外挿されて、内側コア24の外周に配置される一対の筒状部46,46と、コイル12の端面(コイル素子のターンが環状に見える面)に当接される枠状部48が一体形成されている。
【0043】
枠状部48は平板状で、各内側コア24a,24bがそれぞれ挿通される一対の開口部50,50を有しており、開口部50,50から筒状部46,46が突出されている。また、枠状部48において、筒状部46,46の間には、コイル素子18a,18bの間に挿入されて、両コイル素子18a,18bを非接触に保持する仕切壁部52が形成されている。更に、枠状部48の上端面には、コイル連結部20が載置可能とされて、コイル連結部20と外側コア26との間を絶縁するフランジ状部54が形成されている。枠状部48の構成材料には、内側コア24a,24bの熱可塑性樹脂38と同様の絶縁性材料が利用できる。
【0044】
このようなリアクトル10は、例えば、本発明に従う以下の製造方法により、好適に製造することが出来る。先ず、コアモールド部材としての内側コア24を2つ形成する。具体的には、所要の個数のコア分割体32とギャップ板34を交互に積層して、これらコア分割体32とギャップ板34との接触面間に、シアノアクリレート系の瞬間接着剤である接着剤36を浸み込ませることにより、コア分割体32とギャップ板34を積層状態で接着する。なお、コア分割体32とギャップ板34を積層する際には、必要に応じて、適当な治具が用いられることが好ましい。
【0045】
次に、接着剤36で固定されたコア分割体32とギャップ板34の積層体をインサート品として成形型内にセットして、熱可塑性樹脂材料を充填硬化する。これにより、コア分割体32とギャップ板34を熱可塑性樹脂38で一体化して、コアモールド部材としての内側コア24を形成する。同様の作業を繰り返すことにより、同一構造の2つの内側コア24a,24bを形成する。
【0046】
そして、得られた内側コア24a,24bを各コイル素子18a,18bに挿入する。次に、内側コア24a,24bそれぞれの両端部40a,40bにサイドボビン44a,44bの筒状部46,46を外挿すると共に筒状部46,46をコイル素子18a,18bに挿入して、サイドボビン44a,44bに外側コア26a,26bを必要に応じて接着や嵌着等して配置することによって、環状コア14をコイル12の巻回状態で形成して、リアクトル10を製造することが出来る。内側コア24の端面28は、枠状部48の開口部50から露出されて、外側コア26の内端面30に接触する。なお、内側コア24a,24bをサイドボビン44a,44bの一方に組み付けた状態で、コイル素子18a,18bに挿入する等しても良い。
【0047】
本実施形態に従う構造とされたリアクトル10およびその製造方法においては、環状コア14を構成する複数のコア分割体32とギャップ板34が、シアノアクリレート系の瞬間接着剤である接着剤36で積層状態に固定される。これにより、コア分割体32とギャップ板34を、接着層を実質的に介在することなく積層することが出来る。その結果、接着層の厚みを管理することが不要とされて、環状コア14におけるギャップ距離をより精度良く設定することが可能となり、リアクトル10の磁気特性をより精度良く設定することが出来る。そして、接着剤36として瞬間接着剤を用いることにより、コア分割体32とギャップ板34を常温環境下で瞬時に接着することが出来る。これにより、熱硬化性接着剤を用いる場合のように、熱硬化槽等の設備を要したり、熱硬化処理に時間を要したりすることが無く、接着作業を簡易な設備で速やかに行うことが可能であり、リアクトル10の製造コストを低減することが出来る。
【0048】
そして、接着剤36で積層されたコア分割体32とギャップ板34が、熱可塑性樹脂38にインサート成形されることにより、コアモールド部材としての内側コア24が形成されている。これにより、熱可塑性樹脂38でコア分割体32とギャップ板34を固定して積層状態を安定的に保持することが出来る。更に、複数のコア分割体32とギャップ板34を一体的に取り扱うことが出来、リアクトル10の組立作業の効率化を図ることが出来る。
【0049】
さらに、環状コア14を構成する一対の内側コア24a,24bが、互いに同一の部材とされている。これにより、一対の内側コア24a,24bを単一の成形型で成形することが出来て、金型費を削減することが出来る。また、熱可塑性樹脂38によってコア分割体32とギャップ板34を覆うボビンを構成出来ることから、部品点数を削減することが出来ると共に、ボビンの組み付け作業を不要とすることが出来る。
【0050】
次に、図6〜図8に、本発明の第二の実施形態としてのリアクトル60を示す。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と同様の構造とされた部材および部位には、図中に前記第一の実施形態と同一の符号を付することにより、その説明を適宜に省略する。
【0051】
本実施形態におけるリアクトル60は、内側コア24a,24bのそれぞれに、サイドボビン44a,44bの一方が一体形成されることにより、コアモールド部材62a,62bが形成されている。これにより、サイドボビン44aに一方の内側コア24aが一体的に連結されている一方、サイドボビン44aに他方の内側コア24bが一体的に連結されている。即ち、コアモールド部材62a,62bは、互いに同形状を有する同一の部材とされている。このようなコアモールド部材62a,62bは、接着剤36で接着したコア分割体32とギャップ板34の積層体をインサート成型する成形型に、サイドボビン44に対応する成形キャビティを設けて、コア分割体32とギャップ板34の積層体のインサート成形時に該積層体を被覆する熱可塑性樹脂38でサイドボビン44を一体的に併せて形成することによって成形することが出来る。そして、一方のコアモールド部材62aの内側コア24aを一方のコイル素子18aに挿通する一方、他方のコアモールド部材62bの内側コア24bを他方のコイル素子18bに挿通して、両内側コア24a,24bを相手方のサイドボビン44b、44aの筒状部46,46に挿し込むと共に、両サイドボビン44a,44bに外側コア26a,26bをそれぞれ組み付けることによって、環状コア14を形成することが出来る。
【0052】
このような構造とされたリアクトル60によれば、コアモールド部材62a,62bにおいて内側コア24にサイドボビン44が一体形成されていることから、部品点数をより削減することが出来ると共に、組立作業の効率をより向上することが出来る。また、本実施形態においても、一対のコアモールド部材62a,62bが互いに同一部材とされていることから、1つの成形型で安価に製造することが出来る。
【0053】
次に、図9〜図11に、本発明の第三の実施形態としてのリアクトル70を示す。リアクトル70は、内側コア24a,24bのそれぞれに、サイドボビン44a,44bの一方に加えて、該サイドボビン44a又は44bに組み付けられる外側コア26a,26bの一方が一体形成されることにより、コアモールド部材72a,72bが形成されている。これにより、コア分割体32とギャップ板34の積層体と共に、外側コア26が熱可塑性樹脂38で覆われて一体的に連結されている。その結果、コアモールド部材72a,72bは、互いに同形状を有する同一の部材とされている。このようなコアモールド部材72a,72bは、成形型にサイドボビン44に対応する成形キャビティを設けると共に、接着剤36で接着したコア分割体32とギャップ板34の積層体と併せて外側コア26を成形型内にセットして熱可塑性樹脂38でインサート成形することによって形成することが出来る。そして、一方のコアモールド部材72aの内側コア24aを一方のコイル素子18aに挿通する一方、他方のコアモールド部材72bの内側コア24bを他方のコイル素子18bに挿通して、両内側コア24a,24bを相手方のサイドボビン44b、44aの筒状部46,46に挿し込むことにより、環状コア14を形成することが出来る。
【0054】
このような構造とされたリアクトル70によれば、コアモールド部材72a,72bにおいて、内側コア24とサイドボビン44に加えて、外側コア26も一体形成されている。これにより、一対のコアモールド部材72a,72bのみで環状コア14を形成することが出来て、更なる部品点数の削減と、組立作業の効率化を図ることが出来る。また、内側コア24と共に、外側コア26も熱可塑性樹脂38で覆われて相互に固定されることから、内側コア24と外側コア26との相互の固定力をより安定的に確保することが出来る。
【0055】
次に、図12に、本発明の第四の実施形態としてのリアクトル80を示す。リアクトル80は、外側コア26aに、一対の内側コア24a,24bとサイドボビン44aが一体形成されることにより、コアモールド部材82が形成されている。これにより、コアモールド部材82は、外側コア26aから一対の内側コア24a,24bが突出するU字形状を有している。このようなコアモールド部材82は、成形型にサイドボビン44aに対応する成形キャビティを設けると共に、接着剤36で接着したコア分割体32とギャップ板34の積層体の一対と外側コア26aを成形型内にセットして熱可塑性樹脂38でインサート成形することによって形成することが出来る。一方、外側コア26bには、インサート成形によりサイドボビン44bが一体形成されている。そして、コアモールド部材82の内側コア24a,24bをコイル素子18a,18bにそれぞれ挿通すると共に、サイドボビン44bの筒状部46,46にそれぞれ挿し込むことによって、コアモールド部材82と外側コア26bで環状コア14を形成することが出来る。
【0056】
このような構造とされたリアクトル80によれば、コアモールド部材82に一対の内側コア24a,24bが一体的に設けられている。従って、一対の内側コア24a,24bをコイル素子18a,18bに同時に挿通することが出来て、組立作業をより効率良く行なうことが出来る。
【0057】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、コアモールド部材の表面の具体的形状は適宜に変更可能であって、前記実施形態における突条部42は必ずしも必要ではない。また、前述のように、コア分割体およびギャップ板の形状は矩形に限定されるものではなく、円形や多角形状も採用可能であり、コアモールド部材の断面形状も、コア分割体およびギャップ板の形状に対応して、各種の形状が採用可能である。
【0058】
また、前記第四の実施形態(図12参照)において、一対の内側コア24a,24bとサイドボビン44aの一体成形品やサイドボビン44bを先に成形し、別途外側コア26a,26bをそれぞれ取り付けるようにしても良い。これにより、成形の容易性を確保しつつ、一対の内側コア24a,24bをコイル素子18a,18bに同時に挿通する利点を享受することが出来る。
【符号の説明】
【0059】
10,60,70,80:リアクトル、12:コイル、14:環状コア、24a,b:内側コア(コアモールド部材)、26a,b:外側コア、28:端面(内側コア)、32:コア分割体、34:ギャップ板、36:接着剤(シアノアクリレート系接着剤)、38:熱可塑性樹脂、44a,b:サイドボビン、62,72,82:コアモールド部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車などの車両に搭載される車載用DC−DCコンバータといった電力変換装置の構成部品に利用されるリアクトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への意識の高まりから、ハイブリッド自動車(Hybrid Vehicle)や電気自動車(Electric Vehicle)等のように、従来のエンジンに加えて、或いは代えて、動力源として電気モータを利用した自動車が増加しつつある。これらの自動車には、直流電源からの電圧を電気モータの駆動電圧に昇圧するために、リアクトルが搭載されている。
【0003】
リアクトルは、例えば特開2008−263062号公報(特許文献1)や特開2010−245457号公報(特許文献2)等に記載されているように、環状コアにコイルが巻回された構造を備えている。リアクトルにはスイッチング回路が組み合わされており、コイルへの通電のON−OFFを繰り返すことにより、逆起電力を利用して高電圧を取り出す。
【0004】
ところで、環状コアは、リアクトルのインダクタンスを所望の値にするために、磁性材料からなる複数のコア分割体の間に、非磁性材料からなるギャップ板を介在させることにより、磁路中にギャップが設けられている。リアクトルのインダクタンスはギャップ距離で規定されることから、ギャップ距離は、高精度に設定される必要がある。
【0005】
しかし、特許文献1や特許文献2にも記載されているように、従来のリアクトルは、コア分割体とギャップ板が、熱硬化性接着剤で接着固定されていた。熱硬化性接着剤は粘度が大きいことから、コア分割体とギャップ板の間に厚みの大きな接着層を形成してしまう。それ故、実質的なギャップ距離が接着層で変化されてしまうと共に、接着層の厚みを高精度に管理することは困難であることから、インダクタンスを所望の値に精度良く設定することが困難になる場合があった。また、接着層の厚みのばらつきにより寸法誤差を生じて、リアクトルの組立が困難になるおそれがあった。
【0006】
さらに、熱硬化性接着剤を熱硬化させるまで、コア分割体とギャップ板を接着固定用治具で保持しておく必要があると共に、接着剤を熱硬化槽内で熱硬化させるのに時間を要した。それ故、大量に生産するには、接着固定用治具および熱硬化槽を数多く用意する必要があって、設備費用や生産に要するスペースの大型化、延いてはリアクトルの製造コストの増加を招くという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−263062号公報
【特許文献2】特開2010−245457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、磁気特性をより精度良く設定することが出来ると共に、よりコスト効率良く製造することの出来る、新規な構造のリアクトル、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
リアクトルに関する本発明の第一の態様は、複数のコア分割体の間にギャップ板が介在された環状コアにコイルが巻回されているリアクトルにおいて、前記環状コアが、前記コア分割体と前記ギャップ板とがシアノアクリレート系接着剤で相互に接着されて熱可塑性樹脂でインサート成形されて一体化されたコアモールド部材を含んで形成されていることを、特徴とする。
【0010】
本発明に従う構造とされたリアクトルにおいては、環状コアを構成するコア分割体とギャップ板が、シアノアクリレート系の瞬間接着剤で相互に接着される。瞬間接着剤は粘度が小さいことから、コア分割体の表面とギャップ板の表面の間の微小隙間に入り込むことが可能であり、実質的に接着層を形成することなく、コア分割体とギャップ板を相互に接着することが出来る。これにより、接着層の層厚を管理することが不要となり、環状コアにおけるギャップ距離を精度良く設定することが出来る。その結果、リアクトルの磁気特性をより精度良く設定することが出来る。また、コア分割体とギャップ板の間に接着層が実質的に存しないことから、環状コアの寸法精度を向上することが出来て、組み立ての容易性やコイル等の各部材の位置決め精度を向上することもできる。
【0011】
さらに、瞬間接着剤を用いることにより、コア分割体とギャップ板を常温環境下で瞬時に接着することが出来る。その結果、熱硬化性接着剤を用いる場合のように、熱硬化槽等の設備を要したり、熱硬化に時間を要したりすることもなく、接着作業を極めて容易且つ迅速に行うことが可能であり、製造コストの低減を図ることが出来る。
【0012】
そして、相互に接着されたコア分割体とギャップ板がインサート成形されて、熱可塑性樹脂で一体化されたコアモールド部材とされている。これにより、複数のコア分割体とギャップ板の積層構造体を一体として取り扱うことが可能であり、環状コアの組立作業を容易に行うことが出来る。更に、コア分割体とギャップ板が樹脂で覆われることから、コア分割体とギャップ板の剛性や耐久性を確保することが出来る。また、樹脂で覆われることによって、コア分割体とギャップ板を積層状態で安定的に固定することが出来る。即ち、本発明におけるシアノアクリレート系接着剤は、コア分割体とギャップ板のインサート成形が完了するまでの仮固定力が得られれば足り、インサート成形完了後には必ずしも接着力が維持されている必要はない。
【0013】
リアクトルに関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記環状コアは、前記コイルが巻回される一対の内側コアと、それら内側コアの両端部を相互に連結する一対の外側コアとを含んで構成されており、前記一対の内側コアのそれぞれが、前記コアモールド部材で形成されているものである。
【0014】
本態様によれば、コイルが巻回される内側コアを構成するコア分割体とギャップ板を、コアモールド部材として一体的に取り扱うことが出来る。これにより、リアクトルの組立時において、内側コアのコイルへの挿通作業を容易に行うことが出来る。また、コイルが巻回される内側コアにおいて、コア分割体とギャップ板が樹脂で覆われることから、該樹脂によってコア分割体とコイルとを絶縁するボビンを構成することが出来る。その結果、部品点数を削減出来ると共に、ボビンの組み付け作業を不要とすることが出来る。
【0015】
リアクトルに関する本発明の第三の態様は、前記第二の態様に記載のものにおいて、前記一対の内側コアの一方と、前記外側コアを前記内側コアに対して位置決めするサイドボビンとが一体化されて前記コアモールド部材が形成されており、互いに同形状とされた一対の該コアモールド部材を用いて前記環状コアが形成されているものである。
【0016】
本態様によれば、外側コアを内側コアに対して位置決めするサイドボビンも、内側コアを構成するコア分割体とギャップ板を覆う熱可塑性樹脂によって、コアモールド部材に一体形成される。これにより、更なる部品点数の削減と、組み立て作業の効率化を図ることが出来る。また、一対のコアモールド部材が互いに同形状の同一部品とされていることから、コア分割体とギャップ板をインサート成形する成形型が1種類で足り、金型費の削減を図ることが出来ると共に、部品管理の手間を軽減することも出来る。
【0017】
リアクトルに関する本発明の第四の態様は、前記第三の態様に記載のものにおいて、前記一対の内側コアの一方と、前記サイドボビンと、該サイドボビンで位置決めされる前記外側コアとが一体化されて前記コアモールド部材が形成されているものである。
【0018】
本態様によれば、内側コアに加えて、外側コアもコアモールド部材として一体化されている。これにより、一対のコアモールド部材による2点の部品のみで環状コアを形成することが出来て、更なる部品点数の削減を図ることが出来ると共に、組み立て作業の効率化を図ることが出来る。また、内側コアと外側コアが樹脂で覆われることから、内側コアと外側コアとの相互の固定力をより安定的に確保することも出来る。
【0019】
リアクトルに関する本発明の第五の態様は、前記第二の態様に記載のものにおいて、前記一対の外側コアの一方と前記一対の内側コアが一体化されて前記コアモールド部材が形成されていると共に、該コアモールド部材と前記一対の外側コアの他方とによって前記環状コアが形成されているものである。
【0020】
本態様によれば、コアモールド部材が、一方の外側コアに一対の内側コアが連結されたU字形状とされる。これにより、コイルを一対の内側コアに一度に挿通することが出来て、リアクトルの組立作業性をより向上することが出来る。
【0021】
リアクトルの製造方法に関する本発明は、複数のコア分割体の間にギャップ板が介在された環状コアにコイルが巻回されているリアクトルの製造方法において、前記コア分割体と前記ギャップ板とを、シアノアクリレート系接着剤で相互に接着して熱可塑性樹脂でインサート成形して一体化したコアモールド部材を形成して、該コアモールド部材を用いて前記環状コアを形成することを、特徴とする。
【0022】
本発明に従うリアクトルの製造方法によれば、シアノアクリレート系の瞬間接着剤を用いることによって、コア分割体とギャップ板を、実質的に接着層を形成すること無しに積層状態で固定することが出来る。これにより、接着層の厚みを管理することが不要とされて、環状コアにおけるギャップ距離を精度良く設定することが出来る。その結果、リアクトルの磁気特性をより精度良く設定することが出来る。また、環状コアの寸法精度が向上されることから、組み立て容易性やコイル等の各部材の位置決め精度を向上することも出来る。
【0023】
また、瞬間接着剤を用いることにより、コア分割体とギャップ板を常温環境下で速やかに接着することが出来る。これにより、熱硬化性接着剤を用いる場合のように、熱硬化槽等の設備を要したり、熱硬化に時間を要したりすることもなく、接着作業を極めて容易且つ迅速に行うことが可能であり、リアクトルの製造コストの低減を図ることが出来る。そして、コア分割体とギャップ板を熱可塑性樹脂でインサート成形することにより、コア分割体とギャップ板との固定力を樹脂で担保することが出来る。従って、本発明におけるシアノアクリレート系接着剤による接着作業は、コア分割体とギャップ板のインサート成形が完了するまでの仮固定力が得られるものであれば足り、インサート成形完了後には必ずしも接着力が維持されている必要はない。
【0024】
そして、コア分割体とギャップ板を熱可塑性樹脂でインサート成形したコアモールド部材を形成することにより、コア分割体とギャップ板を、積層状態で一体品として取り扱うことが出来る。これにより、環状コアの組み立てを容易に行うことが出来る。
【発明の効果】
【0025】
本発明に従う構造とされたリアクトルおよびその製造方法によれば、コア分割体とギャップ板を、実質的に接着層を介することなく積層状態で固定することが出来る。これにより、環状コアにおけるギャップ距離をより精度良く設定することが出来て、リアクトルの磁気特性をより精度良く設定することが出来る。また、熱硬化槽のような設備や熱硬化処理も不要となることから、よりコスト効率良くリアクトルを製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一の実施形態としてのリアクトルの上面図。
【図2】図1におけるII−II断面図。
【図3】図1に示したリアクトルの分解斜視図。
【図4】コア分割体とギャップ板の接着状態を説明するための断面拡大説明図。
【図5】図1に示したコアモールド部材の上面図。
【図6】本発明の第二の実施形態としてのリアクトルの上面図。
【図7】図6におけるVII−VII断面図。
【図8】図6に示したリアクトルの分解斜視図。
【図9】本発明の第三の実施形態としてのリアクトルの上面図。
【図10】図9におけるX−X断面図。
【図11】図9に示したリアクトルの分解斜視図。
【図12】本発明の第四の実施形態としてのリアクトルの分解上面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
先ず、図1〜図3に、本発明の第一の実施形態としてのリアクトル10を示す。リアクトル10は、コイル12と、コイル12が巻回される環状コア14を含んで構成されている。なお、以下の説明では、リアクトル10を設置したときの設置側(図2中、下側)を下側、その対向側(図2中、上側)を上側として説明する。
【0029】
コイル12は、接合部の無い1本の連続する巻線16を螺旋状に巻回してなる一対のコイル素子18a,18bと、両コイル素子18a,18bを連結するコイル連結部20とを有している。各コイル素子18a,18bは、互いに同一の巻数で、軸方向から見た形状(端面形状)が略矩形状である。これら両コイル素子18a,18bは、各軸方向が平行するように横並びに並列されており、コイル12の他端側(図3では紙面奥側)において巻線16の一部がU字状に屈曲されてコイル連結部20が形成されている。この構成により、両コイル素子18a,18bの巻回方向は同一となっている。
【0030】
巻線16は、銅やアルミニウムといった導電性材料からなる導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を有する被覆線が好適である。ここでは、導体が銅製の平角線からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線を利用している。絶縁被覆の厚さは、20μm以上100μm以下が好ましく、厚いほどピンホールを低減できて電気絶縁性を高められる。両コイル素子18a,18bは、上記被覆平角線をエッジワイズ巻きにして、中空の角筒状に形成されている。巻線16は、導体が平角線からなるもの以外に、断面が円形状、楕円形状、多角形状などの種々の形状のものを利用できる。平角線は、断面が円形状の丸線を用いた場合よりも占積率が高いコイルを形成し易い。なお、各コイル素子を別々の巻線により作製し、各コイル素子を形成する巻線の端部を溶接などにより接合して一体のコイルとした形態とすることができる。
【0031】
コイル12を形成する巻線16の両端部22a,22bは、コイル12の一端側(図3において紙面手前側)においてターン形成部分から適宜引き延ばされて上方に引き出される。引き出された巻線16の両端部22a,22bは、絶縁被覆が剥がされて露出された導体部分に、導電材料からなる図示しない端子金具が接続される。この端子金具を介して、コイル12に電力供給を行う電源などの図示しない外部装置が接続される。
【0032】
環状コア14は、各コイル素子18a,18bがそれぞれ巻回される一対の内側コア24a,24bと、コイル12が配置されず、コイル12から露出されている一対の外側コア26a,26bとを有する。ここでは、各内側コア24a,24bはそれぞれ略直方体状であり、各外側コア26a,26bはそれぞれ、斜辺が湾曲された一対の台形状面を有する角柱状体である。環状コア14は、離間して互いに略平行に配置される内側コア24a,24bを挟むように外側コア26a,26bが配置されており、各内側コア24a,24bにおける両端部の端面28,28が外側コア26a,26bの内端面30,30と接触されることにより、内側コア24a,24bの同じ側に位置する端面28,28が外側コア26a,26bでそれぞれ相互に連結されて環状に形成される。これら内側コア24a,24b及び外側コア26a,26bにより、環状コア14は、コイル12を励磁したときに、閉磁路を形成する。
【0033】
内側コア24a,24bおよび外側コア26a,26bは、それぞれ、互いに同一の部材とされていることから、特に区別する必要の無い場合には、内側コア24、外側コア26として説明する。図2に示したように、内側コア24は、磁性材料からなる略直方体形状のコア片であるコア分割体32と、代表的には非磁性材料からなる板状のギャップ板34とを交互に積層して構成された積層体である。一方、外側コア26は、磁性材料からなるコア片である。各コア片は、磁性粉末を用いた成形体や、絶縁被膜を有する磁性薄板(例えば、電磁鋼板)を複数積層した積層体が利用できる。
【0034】
上記成形体は、例えば、Fe,Co,Niといった鉄族金属、Fe−Si,Fe−Ni,Fe−Al,Fe−Co,Fe−Cr,Fe−Si−AlなどのFe基合金、希土類金属やアモルファス磁性体といった軟磁性材料からなる粉末を用いた圧粉成形体、上記粉末をプレス成形後に焼結した焼結体、上記粉末と樹脂との混合体を射出成形や注型成型などした成形硬化体が挙げられる。その他、コア片は、金属酸化物の焼結体であるフェライトコアなどが挙げられる。成形体は、種々の立体形状の磁性コアを容易に形成することができる。
【0035】
圧粉成形体は、上記軟磁性材料からなる粉末の表面に絶縁被膜を有するものを好適に利用することができ、この場合、当該粉末を成形後、上記絶縁被膜の耐熱温度以下で焼成することにより得られる。絶縁被膜は、代表的には、シリコーン樹脂やリン酸塩からなるものが挙げられる。
【0036】
内側コア24のコア分割体32の材質と外側コア26の材質とを異ならせた形態とすることができる。例えば、内側コア24のコア分割体32を上記圧粉成形体や上記積層体とし、外側コア26を上記成形硬化体とすると、内側コア24の飽和磁束密度を外側コア26よりも高め易い。ここでは、コア分割体32および外側コア26は、鉄や鋼などの鉄を含有する軟磁性粉末の圧粉成形体としている。
【0037】
ギャップ板34は、積層方向視でコア分割体32と略等しい大きさとされて、インダクタンスの調整のためにコア分割体32間に設けられる隙間に配置される板状材であり、アルミナやガラスエポキシ樹脂、不飽和ポリエステルなど、上記コア分割体32よりも透磁率が低い材料、代表的には非磁性材料により構成される。
【0038】
内側コア24において、複数のコア分割体32とギャップ板34が交互に積層されており、コア分割体32,32の間にギャップ板34が介在されている。図4に示すように、コア分割体32とギャップ板34は、接着剤36で相互に接着されている。接着剤36は、瞬間接着剤として用いられるシアノアクリレート系接着剤である。接着剤36がコア分割体32の表面37とギャップ板34の表面39との微小な隙間に入り込むことによって、コア分割体32とギャップ板34が相互に接着される。
【0039】
そして、図2にも示したように、積層されたコア分割体32とギャップ板34が熱可塑性樹脂38でインサート成形されることにより、積層方向(図2中、左右方向)の略全長および全周に亘って熱可塑性樹脂38で被覆されている。これにより、複数のコア分割体32とギャップ板34が、熱可塑性樹脂38で相互に固定されて一体化されてコアモールド部材が形成されており、本実施形態においては、内側コア24a,24bが、コアモールド部材で形成されている。なお、図5にも示すように、内側コア24の両端部40a,40bにはギャップ板34,34が配設されており、熱可塑性樹脂38から僅かに外方に突出されている。また、内側コア24の両端部40a,40bは、後述するサイドボビン44a,44bの筒状部46,46への挿し込みと位置決めのために、肉厚がやや小さくされている。更に、熱可塑性樹脂38の外周面上には、必要に応じて、内側コア24の長手方向(図5中、左右方向)に延びる突条部42が適宜に形成されており、コイル12との接触面積を小さくして挿通が容易となるようにされている。
【0040】
熱可塑性樹脂38としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)などの絶縁性材料が利用できる。
【0041】
コア分割体32やギャップ板34の個数は、リアクトル10が所望のインダクタンスとなるように適宜選択することができる。また、コア分割体32、外側コア26やギャップ板34の形状は適宜選択することができる。更に、図2から明らかなように、環状コア14では、外側コア26a,26bが内側コア24a,24bよりも下方に突出されている。これにより、コイル12における下面と外側コア26a,26bの下面が略面一となるようにされている。
【0042】
内側コア24a,24bと外側コア26aの間、内側コア24a,24bと外側コア26bの間には、それぞれ、サイドボビン44a,44bが設けられて、内側コア24に対して外側コア26を位置決めすると共に、コイル12と環状コア14との絶縁性が高められている。サイドボビン44a,44bは互いに同形状を有する同一の部材とされている。サイドボビン44は、内側コア24a,24bの一方の端部40a(又は40b)に外挿されて、内側コア24の外周に配置される一対の筒状部46,46と、コイル12の端面(コイル素子のターンが環状に見える面)に当接される枠状部48が一体形成されている。
【0043】
枠状部48は平板状で、各内側コア24a,24bがそれぞれ挿通される一対の開口部50,50を有しており、開口部50,50から筒状部46,46が突出されている。また、枠状部48において、筒状部46,46の間には、コイル素子18a,18bの間に挿入されて、両コイル素子18a,18bを非接触に保持する仕切壁部52が形成されている。更に、枠状部48の上端面には、コイル連結部20が載置可能とされて、コイル連結部20と外側コア26との間を絶縁するフランジ状部54が形成されている。枠状部48の構成材料には、内側コア24a,24bの熱可塑性樹脂38と同様の絶縁性材料が利用できる。
【0044】
このようなリアクトル10は、例えば、本発明に従う以下の製造方法により、好適に製造することが出来る。先ず、コアモールド部材としての内側コア24を2つ形成する。具体的には、所要の個数のコア分割体32とギャップ板34を交互に積層して、これらコア分割体32とギャップ板34との接触面間に、シアノアクリレート系の瞬間接着剤である接着剤36を浸み込ませることにより、コア分割体32とギャップ板34を積層状態で接着する。なお、コア分割体32とギャップ板34を積層する際には、必要に応じて、適当な治具が用いられることが好ましい。
【0045】
次に、接着剤36で固定されたコア分割体32とギャップ板34の積層体をインサート品として成形型内にセットして、熱可塑性樹脂材料を充填硬化する。これにより、コア分割体32とギャップ板34を熱可塑性樹脂38で一体化して、コアモールド部材としての内側コア24を形成する。同様の作業を繰り返すことにより、同一構造の2つの内側コア24a,24bを形成する。
【0046】
そして、得られた内側コア24a,24bを各コイル素子18a,18bに挿入する。次に、内側コア24a,24bそれぞれの両端部40a,40bにサイドボビン44a,44bの筒状部46,46を外挿すると共に筒状部46,46をコイル素子18a,18bに挿入して、サイドボビン44a,44bに外側コア26a,26bを必要に応じて接着や嵌着等して配置することによって、環状コア14をコイル12の巻回状態で形成して、リアクトル10を製造することが出来る。内側コア24の端面28は、枠状部48の開口部50から露出されて、外側コア26の内端面30に接触する。なお、内側コア24a,24bをサイドボビン44a,44bの一方に組み付けた状態で、コイル素子18a,18bに挿入する等しても良い。
【0047】
本実施形態に従う構造とされたリアクトル10およびその製造方法においては、環状コア14を構成する複数のコア分割体32とギャップ板34が、シアノアクリレート系の瞬間接着剤である接着剤36で積層状態に固定される。これにより、コア分割体32とギャップ板34を、接着層を実質的に介在することなく積層することが出来る。その結果、接着層の厚みを管理することが不要とされて、環状コア14におけるギャップ距離をより精度良く設定することが可能となり、リアクトル10の磁気特性をより精度良く設定することが出来る。そして、接着剤36として瞬間接着剤を用いることにより、コア分割体32とギャップ板34を常温環境下で瞬時に接着することが出来る。これにより、熱硬化性接着剤を用いる場合のように、熱硬化槽等の設備を要したり、熱硬化処理に時間を要したりすることが無く、接着作業を簡易な設備で速やかに行うことが可能であり、リアクトル10の製造コストを低減することが出来る。
【0048】
そして、接着剤36で積層されたコア分割体32とギャップ板34が、熱可塑性樹脂38にインサート成形されることにより、コアモールド部材としての内側コア24が形成されている。これにより、熱可塑性樹脂38でコア分割体32とギャップ板34を固定して積層状態を安定的に保持することが出来る。更に、複数のコア分割体32とギャップ板34を一体的に取り扱うことが出来、リアクトル10の組立作業の効率化を図ることが出来る。
【0049】
さらに、環状コア14を構成する一対の内側コア24a,24bが、互いに同一の部材とされている。これにより、一対の内側コア24a,24bを単一の成形型で成形することが出来て、金型費を削減することが出来る。また、熱可塑性樹脂38によってコア分割体32とギャップ板34を覆うボビンを構成出来ることから、部品点数を削減することが出来ると共に、ボビンの組み付け作業を不要とすることが出来る。
【0050】
次に、図6〜図8に、本発明の第二の実施形態としてのリアクトル60を示す。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と同様の構造とされた部材および部位には、図中に前記第一の実施形態と同一の符号を付することにより、その説明を適宜に省略する。
【0051】
本実施形態におけるリアクトル60は、内側コア24a,24bのそれぞれに、サイドボビン44a,44bの一方が一体形成されることにより、コアモールド部材62a,62bが形成されている。これにより、サイドボビン44aに一方の内側コア24aが一体的に連結されている一方、サイドボビン44aに他方の内側コア24bが一体的に連結されている。即ち、コアモールド部材62a,62bは、互いに同形状を有する同一の部材とされている。このようなコアモールド部材62a,62bは、接着剤36で接着したコア分割体32とギャップ板34の積層体をインサート成型する成形型に、サイドボビン44に対応する成形キャビティを設けて、コア分割体32とギャップ板34の積層体のインサート成形時に該積層体を被覆する熱可塑性樹脂38でサイドボビン44を一体的に併せて形成することによって成形することが出来る。そして、一方のコアモールド部材62aの内側コア24aを一方のコイル素子18aに挿通する一方、他方のコアモールド部材62bの内側コア24bを他方のコイル素子18bに挿通して、両内側コア24a,24bを相手方のサイドボビン44b、44aの筒状部46,46に挿し込むと共に、両サイドボビン44a,44bに外側コア26a,26bをそれぞれ組み付けることによって、環状コア14を形成することが出来る。
【0052】
このような構造とされたリアクトル60によれば、コアモールド部材62a,62bにおいて内側コア24にサイドボビン44が一体形成されていることから、部品点数をより削減することが出来ると共に、組立作業の効率をより向上することが出来る。また、本実施形態においても、一対のコアモールド部材62a,62bが互いに同一部材とされていることから、1つの成形型で安価に製造することが出来る。
【0053】
次に、図9〜図11に、本発明の第三の実施形態としてのリアクトル70を示す。リアクトル70は、内側コア24a,24bのそれぞれに、サイドボビン44a,44bの一方に加えて、該サイドボビン44a又は44bに組み付けられる外側コア26a,26bの一方が一体形成されることにより、コアモールド部材72a,72bが形成されている。これにより、コア分割体32とギャップ板34の積層体と共に、外側コア26が熱可塑性樹脂38で覆われて一体的に連結されている。その結果、コアモールド部材72a,72bは、互いに同形状を有する同一の部材とされている。このようなコアモールド部材72a,72bは、成形型にサイドボビン44に対応する成形キャビティを設けると共に、接着剤36で接着したコア分割体32とギャップ板34の積層体と併せて外側コア26を成形型内にセットして熱可塑性樹脂38でインサート成形することによって形成することが出来る。そして、一方のコアモールド部材72aの内側コア24aを一方のコイル素子18aに挿通する一方、他方のコアモールド部材72bの内側コア24bを他方のコイル素子18bに挿通して、両内側コア24a,24bを相手方のサイドボビン44b、44aの筒状部46,46に挿し込むことにより、環状コア14を形成することが出来る。
【0054】
このような構造とされたリアクトル70によれば、コアモールド部材72a,72bにおいて、内側コア24とサイドボビン44に加えて、外側コア26も一体形成されている。これにより、一対のコアモールド部材72a,72bのみで環状コア14を形成することが出来て、更なる部品点数の削減と、組立作業の効率化を図ることが出来る。また、内側コア24と共に、外側コア26も熱可塑性樹脂38で覆われて相互に固定されることから、内側コア24と外側コア26との相互の固定力をより安定的に確保することが出来る。
【0055】
次に、図12に、本発明の第四の実施形態としてのリアクトル80を示す。リアクトル80は、外側コア26aに、一対の内側コア24a,24bとサイドボビン44aが一体形成されることにより、コアモールド部材82が形成されている。これにより、コアモールド部材82は、外側コア26aから一対の内側コア24a,24bが突出するU字形状を有している。このようなコアモールド部材82は、成形型にサイドボビン44aに対応する成形キャビティを設けると共に、接着剤36で接着したコア分割体32とギャップ板34の積層体の一対と外側コア26aを成形型内にセットして熱可塑性樹脂38でインサート成形することによって形成することが出来る。一方、外側コア26bには、インサート成形によりサイドボビン44bが一体形成されている。そして、コアモールド部材82の内側コア24a,24bをコイル素子18a,18bにそれぞれ挿通すると共に、サイドボビン44bの筒状部46,46にそれぞれ挿し込むことによって、コアモールド部材82と外側コア26bで環状コア14を形成することが出来る。
【0056】
このような構造とされたリアクトル80によれば、コアモールド部材82に一対の内側コア24a,24bが一体的に設けられている。従って、一対の内側コア24a,24bをコイル素子18a,18bに同時に挿通することが出来て、組立作業をより効率良く行なうことが出来る。
【0057】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、コアモールド部材の表面の具体的形状は適宜に変更可能であって、前記実施形態における突条部42は必ずしも必要ではない。また、前述のように、コア分割体およびギャップ板の形状は矩形に限定されるものではなく、円形や多角形状も採用可能であり、コアモールド部材の断面形状も、コア分割体およびギャップ板の形状に対応して、各種の形状が採用可能である。
【0058】
また、前記第四の実施形態(図12参照)において、一対の内側コア24a,24bとサイドボビン44aの一体成形品やサイドボビン44bを先に成形し、別途外側コア26a,26bをそれぞれ取り付けるようにしても良い。これにより、成形の容易性を確保しつつ、一対の内側コア24a,24bをコイル素子18a,18bに同時に挿通する利点を享受することが出来る。
【符号の説明】
【0059】
10,60,70,80:リアクトル、12:コイル、14:環状コア、24a,b:内側コア(コアモールド部材)、26a,b:外側コア、28:端面(内側コア)、32:コア分割体、34:ギャップ板、36:接着剤(シアノアクリレート系接着剤)、38:熱可塑性樹脂、44a,b:サイドボビン、62,72,82:コアモールド部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコア分割体の間にギャップ板が介在された環状コアにコイルが巻回されているリアクトルにおいて、
前記環状コアが、前記コア分割体と前記ギャップ板とがシアノアクリレート系接着剤で相互に接着されて熱可塑性樹脂でインサート成形されて一体化されたコアモールド部材を含んで形成されている
ことを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記環状コアは、前記コイルが巻回される一対の内側コアと、それら内側コアの両端部を相互に連結する一対の外側コアとを含んで構成されており、前記一対の内側コアのそれぞれが、前記コアモールド部材で形成されている
請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記一対の内側コアの一方と、前記外側コアを前記内側コアに対して位置決めするサイドボビンとが一体化されて前記コアモールド部材が形成されており、互いに同形状とされた一対の該コアモールド部材を用いて前記環状コアが形成されている
請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記一対の内側コアの一方と、前記サイドボビンと、該サイドボビンで位置決めされる前記外側コアとが一体化されて前記コアモールド部材が形成されている
請求項3に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記一対の外側コアの一方と前記一対の内側コアが一体化されて前記コアモールド部材が形成されていると共に、該コアモールド部材と前記一対の外側コアの他方とによって前記環状コアが形成されている
請求項2に記載のリアクトル。
【請求項6】
複数のコア分割体の間にギャップ板が介在された環状コアにコイルが巻回されているリアクトルの製造方法において、
前記コア分割体と前記ギャップ板とを、シアノアクリレート系接着剤で相互に接着して熱可塑性樹脂でインサート成形して一体化したコアモールド部材を形成して、
該コアモールド部材を用いて前記環状コアを形成する
ことを特徴とするリアクトルの製造方法。
【請求項1】
複数のコア分割体の間にギャップ板が介在された環状コアにコイルが巻回されているリアクトルにおいて、
前記環状コアが、前記コア分割体と前記ギャップ板とがシアノアクリレート系接着剤で相互に接着されて熱可塑性樹脂でインサート成形されて一体化されたコアモールド部材を含んで形成されている
ことを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記環状コアは、前記コイルが巻回される一対の内側コアと、それら内側コアの両端部を相互に連結する一対の外側コアとを含んで構成されており、前記一対の内側コアのそれぞれが、前記コアモールド部材で形成されている
請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記一対の内側コアの一方と、前記外側コアを前記内側コアに対して位置決めするサイドボビンとが一体化されて前記コアモールド部材が形成されており、互いに同形状とされた一対の該コアモールド部材を用いて前記環状コアが形成されている
請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記一対の内側コアの一方と、前記サイドボビンと、該サイドボビンで位置決めされる前記外側コアとが一体化されて前記コアモールド部材が形成されている
請求項3に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記一対の外側コアの一方と前記一対の内側コアが一体化されて前記コアモールド部材が形成されていると共に、該コアモールド部材と前記一対の外側コアの他方とによって前記環状コアが形成されている
請求項2に記載のリアクトル。
【請求項6】
複数のコア分割体の間にギャップ板が介在された環状コアにコイルが巻回されているリアクトルの製造方法において、
前記コア分割体と前記ギャップ板とを、シアノアクリレート系接着剤で相互に接着して熱可塑性樹脂でインサート成形して一体化したコアモールド部材を形成して、
該コアモールド部材を用いて前記環状コアを形成する
ことを特徴とするリアクトルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−84767(P2013−84767A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223698(P2011−223698)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
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