説明

リアクトル及びその製造方法

【課題】放熱性を高めることができるリアクトル及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】リアクトル1は、導体線21を巻回してなると共に通電により磁束を発生する筒状のコイル2と、絶縁樹脂に磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなると共にコイル2を内部に埋設したコア3と、コイル2の内周側においてコイル2の軸線方向Xに配設してある柱状の中芯部材5とを有する。コイル2と中芯部材5との間には、両者に接触すると共にコア3よりも熱伝導率の高い放熱部材6を介設してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置等に用いられるリアクトル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用のインバータ、DC−DCコンバータ等の電力変換装置等に用いられるリアクトルが知られている。
近年、部品点数の低減による低コスト化等を実現するものとして、通電により磁束を発生する筒状のコイルと、絶縁樹脂に磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなると共にコイルを内部に埋設したコアとを有するリアクトルがある。
【0003】
このリアクトルでは、コイルをコアに埋設した構造となるため、コイルから発生する熱を効率よく放熱することが要求される。
そこで、特許文献1には、コイルの内周側に放熱用の中芯部材を配設したリアクトルが開示されている。これによれば、コイルにおいて発生した熱をコアを介して中芯部材に伝達し、放熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−130965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のように放熱用の中芯部材を配設したリアクトルであっても、コイルに発生した熱を中芯部材に伝達するためには、コアを介さなければならない。そのため、放熱性を十分に高めることができなかった。また、コアの熱伝導率を向上させるという手段も考えられるが、この場合、コアの組成を大きく変更するとリアクトルの磁気特性が変化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、放熱性を高めることができるリアクトル及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、導体線を巻回してなると共に通電により磁束を発生する筒状のコイルと、絶縁樹脂に磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなると共に上記コイルを内部に埋設したコアと、上記コイルの内周側において該コイルの軸線方向に配設してある柱状の中芯部材とを有するリアクトルであって、
上記コイルと上記中芯部材との間には、両者に接触すると共に上記コアよりも熱伝導率の高い放熱部材を介設してあることを特徴とするリアクトルにある(請求項1)。
【0008】
第2の発明は、導体線を巻回してなると共に通電により磁束を発生する筒状のコイルと、絶縁樹脂に磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなると共に上記コイルを内部に埋設したコアと、上記コイルの内周側において該コイルの軸線方向に配設してある柱状の中芯部材とを有し、上記コイルと上記中芯部材との間には、両者に接触すると共に上記コアよりも熱伝導率の高い放熱部材を介設してあるリアクトルを製造する方法であって、
上記コイルの内周面に接触する接触面を有する接触部が設けられた複数の上記放熱部材を柱状のコイル巻付用治具に取り付け、上記放熱部材の上記接触部を上記コイル巻付用治具の外周面に露出させると共に、上記放熱部材の上記接触部の上記接触面を上記コイル巻付用治具の外周面よりも外方に位置させる取り付け工程と、
上記コイル巻付用治具の外周において、上記導体線を上記複数の放熱部材の上記接触部の上記接触面上に巻き付け、上記コイルを形成するコイル形成工程と、
上記コイル及び上記放熱部材を互いに組み付けた状態で上記コイル巻付用治具から取り外す取り外し工程と、
上記コイル及び上記放熱部材を互いに組み付けた状態で、該放熱部材を上記中芯部材に設けられた係合部に係合させる係合工程と、
上記コイル、上記放熱部材及び上記中芯部材を互いに組み付けた状態で成形型内に収容する収容工程と、
上記成形型内に上記磁性粉末混合樹脂を充填して硬化させ、上記コアを成形するコア成形工程とを有することを特徴とするリアクトルの製造方法にある(請求項8)。
【発明の効果】
【0009】
上記第1の発明のリアクトルにおいて、上記コイルと上記中芯部材との間には、両者に接触するように上記放熱部材が介設してある。また、その放熱部材は、コアよりも熱伝導率が高い。そのため、コイルにおいて発生した熱を放熱部材を介して中芯部材に伝達し、放熱することができる。これにより、放熱部材を設けていない場合に比べ、コイルから中芯部材への放熱性、つまりコイルの内側方向における放熱性を高めることができる。その結果、リアクトルの温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0010】
また、上述したように、上記放熱部材の熱伝導率がコアよりも高いことから、コイルにおいて発生した熱をコアではなく、放熱部材を介して中芯部材に伝達し、放熱することができる。そのため、放熱性の観点からコアの材質を考慮する必要がなく、磁気特性の観点からコアの材質を選択することができる。これにより、放熱部材によって放熱性を確保しつつ、インダクタンスの高いリアクトルを容易に得ることができる。
【0011】
上記第2の発明のリアクトルの製造方法において、上記取り付け工程では、放熱部材の接触部をコイル巻付用治具の外周面に露出させると共に、接触部の接触面をコイル巻付用治具の外周面よりも外方に位置させた状態で、複数の放熱部材をコイル巻付用治具に取り付ける。そして、上記コイル形成工程では、導体線を複数の放熱部材の接触部の接触面上に巻き付け、コイルを形成する。すなわち、導体線を放熱部材に巻き付けてコイルを形成する。そのため、コイルと放熱部材とを密着性を高めることができる。これにより、コイルから放熱部材への伝熱を高めることができる。
【0012】
また、上記取り外し工程では、コイル及び放熱部材を互いに組み付けた状態でコイル巻付用治具から取り外す。ここで、コイルは、導体線をコイル巻付用治具に巻き付けて形成されているのではなく、放熱部材に巻き付けて形成されている。そのため、コイルをコイル巻付用治具に接触させることなく、コイル巻付用治具から取り外すことができる。これにより、コイルの損傷を防止することができる。
【0013】
また、上記係合工程では、放熱部材を中芯部材の係合部に係合させ、上記収容工程では、コイル、放熱部材及び中芯部材を互いに組み付けた状態で成形型内に収容し、上記コア成形工程では、成形型内に磁性粉末混合樹脂を充填して硬化させ、コアを成形する。そのため、コイルと中芯部材との間に放熱部材を介設してある上記第1の発明のリアクトルを容易に製造することができる。
【0014】
このように、上記第1及び第2の発明によれば、放熱性を高めることができるリアクトル及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例における、リアクトルの横断面を示す説明図。
【図2】実施例における、リアクトルの縦断面を示す説明図。
【図3】実施例における、コイル、放熱部材及び中芯部材の組み付け状態を示す説明図。
【図4】実施例における、放熱部材を示す説明図。
【図5】実施例における、取り付け工程を示す説明図。
【図6】実施例における、取り付け工程を示す説明図。
【図7】実施例における、コイル形成工程を示す説明図。
【図8】実施例における、取り外し工程を示す説明図。
【図9】実施例における、係合工程を示す説明図。
【図10】実施例における、係合工程を示す説明図。
【図11】実施例における、収容工程を示す説明図。
【図12】実施例における、放熱部材の配設位置を変更した例を示す説明図。
【図13】実施例における、放熱部材の配設位置を変更した例を示す説明図。
【図14】実施例における、放熱部材の配設位置を変更した例を示す説明図。
【図15】実施例における、放熱部材の連結部の配設位置を変更した例を示す説明図。
【図16】実施例における、放熱部材の連結部の配設位置を変更した例を示す説明図。
【図17】実施例における、放熱部材の連結部の配設位置を変更した例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記第1の発明において、上記リアクトルは、例えば、車両用のインバータ、DC−DCコンバータ等の電力変換装置等に用いることができる。
また、上記コアを構成する上記磁性粉末混合樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性、熱可塑性等を有する絶縁樹脂に鉄粉等の磁性粉末を混合して分散させたものを用いることができる。
【0017】
また、上記放熱部材としては、例えば、アルミニウムやその合金等の金属等、熱伝導性の高い材料を用いることが好ましい。
また、上記中芯部材としては、上記放熱部材と同様に、例えば、アルミニウムやその合金等の金属等、熱伝導性の高い材料を用いることが好ましい。
【0018】
また、上記コイルと上記中芯部材との間には、板状の上記放熱部材を複数介設してあり、該放熱部材は、その両主面が上記コイルの周方向に対して略直交するように配置されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、コイルの周りに発生した磁束が放熱部材を横切る面積をできるだけ小さくすることができる。これにより、放熱部材によって磁束の流れが阻害されにくくなり、インダクタンスの低下を防止することができる。
なお、放熱部材の両主面がコイルの周方向に対して略直交する場合、放熱部材の両主面がコイルの軸線方向に略平行となっている。
【0019】
また、上記複数の放熱部材は、上記コイルの内周面に沿って設けられた環状の連結部によって互いに連結されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、複数の放熱部材が連結部によって連結されて一体となるため、放熱部材の取扱いが容易となる。
【0020】
また、上記放熱部材には、上記コイルの内周面に接触する接触面を有する接触部が設けられていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、接触部によって放熱部材をコイルに対して十分かつ確実に接触させることができる。また、接触部の接触面によってコイルと放熱部材との接触面積を確保することができ、コイルから放熱部材への伝熱を高めることができる。
【0021】
また、上記放熱部材には、上記接触部の上記接触面から外方に突出してなると共に、上記コイルにおける上記軸線方向の少なくとも一方の端面を支持するコイル支持部が設けられていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、コイル支持部によって放熱部材に対するコイルの位置決めを容易に行うことができる。
【0022】
また、上記放熱部材には、上記接触部の上記接触面から外方に突出してなると共に、上記コイルを構成する上記導体線同士の間に係止される係止部が設けられていることが好ましい(請求項6)。
この場合には、係止部によって放熱部材をコイルに対して十分かつ確実に固定することができる。
【0023】
また、上記中芯部材には、上記放熱部材を係合する係合部が設けられていることが好ましい(請求項7)。
この場合には、係合部によって放熱部材を中芯部材に対して十分かつ確実に接触させることができる。また、放熱部材から中芯部材への伝熱を高めることができる。
【0024】
上記第2の発明において、上記複数の放熱部材は、上記コイルの内周面に沿って設けられた環状の連結部によって互いに連結されていることが好ましい(請求項9)。
この場合には、複数の放熱部材が連結部によって連結されて一体となるため、放熱部材の取扱いが容易となる。これにより、上記取り付け工程及び上記取り外し工程では、複数の放熱部材をコイル巻付用治具に対して容易に取り付けることができ、コイル巻付用治具から容易に取り外しすることができる。
【0025】
また、上記放熱部材には、上記接触部の上記接触面から外方に突出してなると共に、上記コイルにおける上記軸線方向の少なくとも一方の端面を支持するコイル支持部が設けられていることが好ましい(請求項10)。
この場合には、コイル支持部によって放熱部材に対するコイルの位置決めを容易に行うことができる。これにより、上記コイル形成工程では、導体線を放熱部材に対して精度良く、所望の位置に巻き付けることができる。
【0026】
また、上記放熱部材には、上記接触部の上記接触面から外方に突出してなると共に、上記コイルを構成する上記導体線同士の間に係止される係止部が設けられていることが好ましい(請求項11)。
この場合には、係止部によって放熱部材をコイルに対して十分かつ確実に固定することができる。これにより、上記コイル形成工程では、導体線を放熱部材に対して巻き付けることにより、コイルと放熱部材とを容易に固定することができる。
【実施例】
【0027】
本発明の実施例にかかるリアクトル及びその製造方法について、図を用いて説明する。
本例のリアクトル1は、図1〜図4に示すごとく、導体線21を巻回してなると共に通電により磁束を発生する筒状のコイル2と、絶縁樹脂に磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなると共にコイル2を内部に埋設したコア3と、コイル2の内周側においてコイル2の軸線方向Xに配設してある柱状の中芯部材5とを有する。
コイル2と中芯部材5との間には、両者に接触すると共にコア3よりも熱伝導率の高い放熱部材6を介設してある。
以下、これを詳説する。
【0028】
図1、図2に示すごとく、リアクトル1は、例えば、車両用のインバータ、DC−DCコンバータ等の電力変換装置等に用いられるものである。
リアクトル1は、上記のごとく、コイル2、コア3、中芯部材5及び放熱部材6を有し、さらにケース4を有する。
【0029】
同図に示すごとく、コイル2は、銅線からなる導体線21を螺旋状に巻回して円筒状に形成されている。コイル2は、コア3の内部に埋設されている。
コア3は、絶縁樹脂としてのエポキシ樹脂に磁性粉末としての鉄粉を混合して分散させた磁性粉末混合樹脂からなる。コア3は、コイル2を覆うように、またケース4内を充填するように配設されている。
【0030】
同図に示すごとく、ケース4は、円板状の底面部41と、底面部41の外周端縁から立設された円筒状の側面部42とを有し、一方が開口した箱型形状となっている。ケース4の内側には、コイル2、コア3等が収容されている。また、ケース4は、アルミニウム又はその合金よりなる。
【0031】
図1〜図3に示すごとく、中芯部材5は、円柱状を呈しており、コイル2の内周側を貫通するように、コイル2の軸線方向X(以下、単に軸線方向Xという)に配設されている。また、中芯部材5は、ケース4の底面部41にボルト等で固定されている。なお、中芯部材5は、ケース4と一体的に形成されていてもよい。また、中芯部材5は、アルミニウム又はその合金よりなる。
【0032】
また、中芯部材5には、後述する板状の放熱部材6を係合する4つの係合部51が設けられている。係合部51は、中芯部材5の外周面502において凹溝状に形成されている。また、係合部51は、中芯部材5の上端面503から軸方向に中芯部材5の途中まで形成されている。
【0033】
図1〜図3に示すごとく、コイル2と中芯部材5との間には、両者に接触するように4つの板状の放熱部材6が設けられている。放熱部材6は、その両主面601がコイル2の周方向に対して略直交するように配置されている。すなわち、放熱部材6の両主面601が軸線方向Xに略平行となっている。また、4つの放熱部材6は、コイル2の軸線200を中心として略放射状に配置されている。
【0034】
図4に示すごとく、放熱部材6には、コイル2の内周面201に接触する接触面611を有する接触部61が設けられている。接触部61は、放熱部材6の外端からコイル2の内周面201に沿って折り曲げて形成されている。そして、図1、図3に示すごとく、接触部61の接触面611は、コイル2の内周面201に密着した状態で接触している。
一方で、図1、図3に示すごとく、放熱部材6は、それぞれ中芯部材5に設けられた係合部51に係合されている。これにより、放熱部材6は、中芯部材5に係合した状態で接触している。
【0035】
図4に示すごとく、放熱部材6には、接触部61の接触面611から外方に突出してなると共に、コイル2における軸線方向Xの一方の端面(下端面204)を支持するコイル支持部62が設けられている。コイル支持部62は、接触部61の接触面611の下端から外方に突出して形成されている。そして、図2に示すごとく、コイル支持部62は、コイル2の下端面204に接触しており、下端面204を支持している。
【0036】
図4に示すごとく、4つの放熱部材6は、コイル2の内周面201に沿って設けられた環状の連結部63によって互いに連結されている。4つの放熱部材6は、それぞれの接触部61を連結部63によって互いに連結することにより一体となって形成されている。連結部63は、放熱部材6における軸線方向X(図2)の中間位置に設けられている。また、連結部63には、コイル2の内周面201に接触する接触支持面631が設けられている。そして、図3に示すごとく、連結部63の接触支持面631は、コイル2の内周面201に密着した状態で接触している。
【0037】
次に、本例のリアクトル1の製造方法について説明する。
本例のリアクトル1の製造方法では、取り付け工程とコイル形成工程と取り外し工程と係合工程と収容工程とコア成形工程とを行う。
【0038】
取り付け工程では、図5、図6に示すごとく、コイル2の内周面201に接触する接触面611を有する接触部61が設けられた複数の放熱部材6を柱状のコイル巻付用治具7に取り付け、放熱部材6の接触部61をコイル巻付用治具7の外周面702に露出させると共に、放熱部材6の接触部61の接触面611をコイル巻付用治具7の外周面702よりも外方に位置させる。
【0039】
また、コイル形成工程では、図7に示すごとく、コイル巻付用治具7の外周において、導体線21を複数の放熱部材6の接触部61の接触面611上に巻き付け、コイル2を形成する。
また、取り外し工程では、図8に示すごとく、コイル2及び放熱部材6を互いに組み付けた状態でコイル巻付用治具7から取り外す。
【0040】
また、係合工程では、図9、図10に示すごとく、コイル2及び放熱部材6を互いに組み付けた状態で、放熱部材6を中芯部材5に設けられた係合部51に係合させる。
また、収容工程では、図11に示すごとく、コイル2、放熱部材6及び中芯部材5を互いに組み付けた状態でケース(成形型)4内に収容する。
また、コア成形工程では、ケース(成形型)4内に磁性粉末混合樹脂を充填して硬化させ、コア3を成形する。
以下、これを詳説する。
【0041】
まず、図5に示すごとく、コイル巻付用治具7を準備する。円柱状のコイル巻付用治具7には、板状の放熱部材6を取り付ける4つの取付部71が設けられている。取付部71は、コイル巻付用治具7の外周面702において凹溝状に形成されている。また、取付部71は、コイル巻付用治具7の上端面703から軸方向にコイル巻付用治具7の途中まで形成されている。
【0042】
次いで、同図に示すごとく、4つの放熱部材6をコイル巻付用治具7に取り付ける。具体的には、各放熱部材6をコイル巻付用治具7の取付部71に対して上方から挿入する。
そして、図6に示すごとく、放熱部材6の接触部61をコイル巻付用治具7の外周面702に露出させると共に、放熱部材6の接触部61の接触面611をコイル巻付用治具7の外周面702よりも外方に位置させる。
【0043】
次いで、図7に示すごとく、コイル巻付用治具7の外周において、導体線21を4つの放熱部材6の接触部61の接触面611上に螺旋状に巻き付ける。これにより、円筒状のコイル2を形成する。
次いで、図8に示すごとく、放熱部材6に対してコイル2を組み付けた状態で、両者をコイル巻付用治具7から取り外す。
【0044】
次いで、図9、図10に示すごとく、放熱部材6に対してコイル2を組み付けた状態で、4つの放熱部材6を中芯部材5に設けられた4つの係合部51にそれぞれ係合させる。
次いで、図11に示すごとく、コイル2、放熱部材6及び中芯部材5を互いに組み付けた状態でケース4内に収容する。そして、中芯部材5をケース4の底面部41にボルト等で固定する。その後、ケース4内に磁性粉末混合樹脂を充填して硬化させ、コア3を成形する。
これにより、本例のリアクトル1(図1、図2)を得る。
【0045】
次に、本例のリアクトル1及びその製造方法における作用効果について説明する。
本例のリアクトル1において、コイル2と中芯部材5との間には、両者に接触するように放熱部材6が介設してある。また、その放熱部材6は、コア3よりも熱伝導率が高い。そのため、コイル2において発生した熱を放熱部材6を介して中芯部材5に伝達し、放熱することができる。これにより、放熱部材6を設けていない場合に比べ、コイル2から中芯部材5への放熱性、つまりコイル2の内側方向における放熱性を高めることができる。その結果、リアクトル1の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0046】
また、上述したように、放熱部材6の熱伝導率がコア3よりも高いことから、コイル2において発生した熱をコア3ではなく、放熱部材6を介して中芯部材5に伝達し、放熱することができる。そのため、放熱性の観点からコア3の材質を考慮する必要がなく、磁気特性の観点からコア3の材質を選択することができる。これにより、放熱部材6によって放熱性を確保しつつ、インダクタンスの高いリアクトル1を容易に得ることができる。
【0047】
また、リアクトル1の製造方法において、取り付け工程では、放熱部材6の接触部61をコイル巻付用治具7の外周面702に露出させると共に、接触部61の接触面611をコイル巻付用治具7の外周面702よりも外方に位置させた状態で、複数の放熱部材6をコイル巻付用治具7に取り付ける。そして、コイル形成工程では、コイル巻付用治具7の外周において、導体線21を複数の放熱部材6の接触部61の接触面611上に巻き付け、コイル2を形成する。すなわち、導体線21を放熱部材6に巻き付けてコイル2を形成する。そのため、コイル2と放熱部材6とを密着性を高めることができる。これにより、コイル2から放熱部材6への伝熱を高めることができる。
【0048】
また、取り外し工程では、コイル2及び放熱部材6を互いに組み付けた状態でコイル巻付用治具7から取り外す。ここで、コイル2は、導体線21をコイル巻付用治具7に巻き付けて形成されているのではなく、放熱部材6に巻き付けて形成されている。そのため、コイル2をコイル巻付用治具7に接触させることなく、コイル巻付用治具7から取り外すことができる。これにより、コイル2の損傷を防止することができる。
【0049】
また、係合工程では、放熱部材6を中芯部材5の係合部51に係合させ、収容工程では、コイル2、放熱部材6及び中芯部材5を互いに組み付けた状態でケース4内に収容し、コア成形工程では、ケース4内に磁性粉末混合樹脂を充填して硬化させ、コア3を成形する。そのため、コイル2と中芯部材5との間に放熱部材6を介設してある本例のリアクトル1を容易に製造することができる。
【0050】
また、本例では、中芯部材5は、ケース4の底面部41にボルト等で固定されている。そのため、コイル2において発生した熱を放熱部材6を介して中芯部材5に伝達し、さらにケース4に伝達し、放熱することができる。これにより、放熱性をさらに高めることができる。また、コイル2において発生した熱をコア3を介してケース4の底面部41、側面部42に伝達し、放熱することもできる。そのため、コイル2の内側方向だけでなく、外側方向等における放熱性も十分に確保することができる。なお、中芯部材5は、ケース4と一体的に形成されていてもよく、この場合には、中芯部材5からケース4への熱の伝達を円滑に行うことができる。
【0051】
また、コイル2と中芯部材5との間には、板状の放熱部材6を複数介設してあり、放熱部材6は、その両主面601がコイル2の周方向に対して略直交するように配置されている。そのため、コイル2の周りに発生した磁束が放熱部材6を横切る面積をできるだけ小さくすることができる。これにより、放熱部材6によって磁束の流れが阻害されにくくなり、インダクタンスの低下を防止することができる。
【0052】
また、複数の放熱部材6は、コイル2の内周面201に沿って設けられた環状の連結部63によって互いに連結されている。そのため、複数の放熱部材6が連結部63によって連結されて一体となるため、放熱部材6の取扱いが容易となる。また、取り付け工程及び取り外し工程では、複数の放熱部材6をコイル巻付用治具7に対して容易に取り付けることができ、コイル巻付用治具7から容易に取り外しすることができる。
【0053】
また、放熱部材6には、コイル2の内周面201に接触する接触面611を有する接触部61が設けられている。そのため、接触部61によって放熱部材6をコイル2に対して十分かつ確実に接触させることができる。また、接触部61の接触面611によってコイル2と放熱部材6との接触面積を確保することができ、コイル2から放熱部材6への伝熱を高めることができる。
【0054】
また、放熱部材6には、接触部61の接触面611から外方に突出してなると共に、コイル2における軸線方向Xの一方の端面(下端面204)を支持するコイル支持部62が設けられている。そのため、コイル支持部62によって放熱部材6に対するコイル2の位置決めを容易に行うことができる。また、コイル形成工程では、導体線21を放熱部材6に対して精度良く巻き付けることができる。
【0055】
また、中芯部材5には、放熱部材6を係合する係合部51が設けられている。そのため、係合部51によって放熱部材6を中芯部材5に対して十分かつ確実に接触させることができる。また、放熱部材6から中芯部材5への伝熱を高めることができる。
【0056】
このように、本例によれば、放熱性を高めることができるリアクトル1及びその製造方法を提供することができる。
【0057】
なお、本例では、図2に示すごとく、放熱部材6は、コイル2の内周面201における軸線方向Xの全体に接触しているが、例えば、図12に示すごとく、コイル2の内周面201における軸線方向Xの上側部分のみに接触していてもよいし、図13に示すごとく、コイル2の内周面201における軸線方向Xの下側部分のみに接触していてもよい。
【0058】
また、図14に示すごとく、コイル2の内周面201における軸線方向X(図2)の中間部分のみに接触していてもよい。このとき、放熱部材6には、接触部61の接触面611から外方に突出してなると共に、コイル2を構成する導体線21同士の間に係止される係止部64が設けておく。これにより、係止部64によって放熱部材6をコイル2に対して十分かつ確実に固定することができる。
【0059】
また、本例では、図4に示すごとく、連結部63は、放熱部材6における軸線方向X(図2)の中間位置に設けられているが、例えば、図15に示すごとく、放熱部材6における軸線方向Xの上端部に設けられていてもよいし、図16に示すごとく、放熱部材6における軸線方向Xの下端部に設けられていてもよい。また、図17に示すごとく、放熱部材6における軸線方向Xの上端部及び下端部の両方に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 リアクトル
2 コイル
21 導体線
3 コア
5 中芯部材
6 放熱部材
X 軸線方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体線を巻回してなると共に通電により磁束を発生する筒状のコイルと、絶縁樹脂に磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなると共に上記コイルを内部に埋設したコアと、上記コイルの内周側において該コイルの軸線方向に配設してある柱状の中芯部材とを有するリアクトルであって、
上記コイルと上記中芯部材との間には、両者に接触すると共に上記コアよりも熱伝導率の高い放熱部材を介設してあることを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
請求項1に記載のリアクトルにおいて、上記コイルと上記中芯部材との間には、板状の上記放熱部材を複数介設してあり、該放熱部材は、その両主面が上記コイルの周方向に対して略直交するように配置されていることを特徴とするリアクトル。
【請求項3】
請求項2に記載のリアクトルにおいて、上記複数の放熱部材は、上記コイルの内周面に沿って設けられた環状の連結部によって互いに連結されていることを特徴とするリアクトル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリアクトルにおいて、上記放熱部材には、上記コイルの内周面に接触する接触面を有する接触部が設けられていることを特徴とするリアクトル。
【請求項5】
請求項4に記載のリアクトルにおいて、上記放熱部材には、上記接触部の上記接触面から外方に突出してなると共に、上記コイルにおける上記軸線方向の少なくとも一方の端面を支持するコイル支持部が設けられていることを特徴とするリアクトル。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のリアクトルにおいて、上記放熱部材には、上記接触部の上記接触面から外方に突出してなると共に、上記コイルを構成する上記導体線同士の間に係止される係止部が設けられていることを特徴とするリアクトル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のリアクトルにおいて、上記中芯部材には、上記放熱部材を係合する係合部が設けられていることを特徴とするリアクトル。
【請求項8】
導体線を巻回してなると共に通電により磁束を発生する筒状のコイルと、絶縁樹脂に磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなると共に上記コイルを内部に埋設したコアと、上記コイルの内周側において該コイルの軸線方向に配設してある柱状の中芯部材とを有し、上記コイルと上記中芯部材との間には、両者に接触すると共に上記コアよりも熱伝導率の高い放熱部材を介設してあるリアクトルを製造する方法であって、
上記コイルの内周面に接触する接触面を有する接触部が設けられた複数の上記放熱部材を柱状のコイル巻付用治具に取り付け、上記放熱部材の上記接触部を上記コイル巻付用治具の外周面に露出させると共に、上記放熱部材の上記接触部の上記接触面を上記コイル巻付用治具の外周面よりも外方に位置させる取り付け工程と、
上記コイル巻付用治具の外周において、上記導体線を上記複数の放熱部材の上記接触部の上記接触面上に巻き付け、上記コイルを形成するコイル形成工程と、
上記コイル及び上記放熱部材を互いに組み付けた状態で上記コイル巻付用治具から取り外す取り外し工程と、
上記コイル及び上記放熱部材を互いに組み付けた状態で、該放熱部材を上記中芯部材に設けられた係合部に係合させる係合工程と、
上記コイル、上記放熱部材及び上記中芯部材を互いに組み付けた状態で成形型内に収容する収容工程と、
上記成形型内に上記磁性粉末混合樹脂を充填して硬化させ、上記コアを成形するコア成形工程とを有することを特徴とするリアクトルの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のリアクトルの製造方法において、上記複数の放熱部材は、上記コイルの内周面に沿って設けられた環状の連結部によって互いに連結されていることを特徴とするリアクトルの製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のリアクトルの製造方法において、上記放熱部材には、上記接触部の上記接触面から外方に突出してなると共に、上記コイルにおける上記軸線方向の少なくとも一方の端面を支持するコイル支持部が設けられていることを特徴とするリアクトルの製造方法。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載のリアクトルの製造方法において、上記放熱部材には、上記接触部の上記接触面から外方に突出してなると共に、上記コイルを構成する上記導体線同士の間に係止される係止部が設けられていることを特徴とするリアクトルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−209324(P2012−209324A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72155(P2011−72155)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)