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リガンド親和性が改変されたGタンパク質共役型受容体およびその利用
説明

リガンド親和性が改変されたGタンパク質共役型受容体およびその利用

【課題】実体が明らかにされていないGタンパク質共役型受容体の機能を解析する技術を提供する。
【解決手段】Gタンパク質共役型受容体と、特定のアミノ酸配列からなるポリペプチドとを結合させることにより、リガンド親和性が改変されたGタンパク質共役型受容体改変体を提供する。さらに、上記Gタンパク質共役型受容体改変体が発現した形質転換体を用いて、このGタンパク質共役型受容体改変体に対する作働薬または拮抗薬をスクリーニングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンド親和性が改変されたGタンパク質共役型受容体およびその利用に関するものであり、より詳細には、特定のタンパク質と複合体を形成することによりリガンド親和性が改変されたGタンパク質共役型受容体およびその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体での反応の多くは、細胞外の情報が細胞内に伝播されることにより引き起こされる。膜受容体は、細胞外の情報を細胞内に伝達する入り口の1つであり、7つの細胞膜貫通部を有しているGタンパク質共役型受容体(GPCR)がよく知られている。
【0003】
GPCRはリガンド(アミノ酸、ペプチド、タンパク質、アミン類など)が結合すると、三量体Gタンパク質を介してその情報を細胞内に伝達する。GPCRと共役するGタンパク質はGs、Gi、Gqなどに分類され、それぞれ対応するエフェクター経路(例えば、cAMP経路、cGMP経路、PLC経路など)が異なる。例えば、α1アドレナリン受容体は主としてGqと共役してエフェクター系であるホスホリパーゼC系を促進して、ジアシルグリセロールとイノシトール3リン酸を増加させ、細胞内Ca2+を増加させ、α2アドレナリン受容体はGiと共役してアデニル酸シクラーゼ系を抑制し、cAMPを減少させる。また、βアドレナリン受容体はGsと共役してエフェクター系であるアデニル酸シクラーゼ系を促進させ、cAMPを増加させる。
【0004】
GPCRの生体内での局在は、各受容体によって異なる。例えば、α1アドレナリン受容体は、血管平滑筋、前立腺などに局在し、これらの収縮に重要である。また、脳などの中枢神経系にも分布していることも知られている。βアドレナリン受容体は、心臓、脂肪組織などに局在し、心拍増加、脂肪分解に重要である。
【0005】
GPCRを介する情報伝達系は、生体の恒常性を制御するとともに、種々の疾患の発症に関与することが知られている。よって、特定の疾患の発症に関与するGPCRを同定し、この受容体の活性を調節する薬剤(アゴニスト、アンタゴニストなど)を開発することは、疾患治療に非常に有効である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Muramatsu, I. et al. Br. J. Pharmacol., 99: 197 (1990)
【非特許文献2】Muramatsu, I. et al. Pharmacol. Commun., 6: 23 (1995)
【非特許文献3】Morishima, S. et al. J. Urol. 117: 377-381 (2007)
【非特許文献4】Molenaar, P. and Parsonage, W.A. Trends Pharmacol. Sci., 26: 368-375 (2005)
【非特許文献5】Samaha, A.N. et al., J. Neurosci. 27: 2979-2986 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
GPCRに関する研究はかなり進んでおり、これまでに数多くのGPCRが同定されている。しかし、表現型が知られていても実体が不明であるGPCRも存在する。例えば、αアドレナリン受容体は、その遺伝子からα1A、α1B、α1Dの3つのサブタイプに分類されるが、αアドレナリン受容体において、これらとは異なる表現型(薬理学的な特性)を示すサブタイプ(α1L)が同じ遺伝子から発現することが知られている。具体的には、このα1Lサブタイプは、代表的なα遮断薬(例えば、prazosin)に対する親和性が低く、組織片結合法を用いてのみその活性を検出し得る(非特許文献1〜3参照)。また、βアドレナリン受容体においても、異なる表現型を示すサブタイプ(β1Hおよびβ1L)が同じ遺伝子から発現することが知られている(非特許文献4参照)。このようなサブタイプは表現型のみが知られており、その実体は不明である。同様のことが、ドーパミン受容体、ムスカリン受容体またはエンドセリン受容体においても指摘されている(非特許文献5等参照)。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、実体が明らかにされていないGタンパク質共役型受容体の機能を解析する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るタンパク質複合体は、Gタンパク質共役型受容体と、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;(4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは(6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチドとが、結合していることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係るタンパク質複合体の作製方法は、Gタンパク質共役型受容体と、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;(4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは(6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチドとを、脂質膜上に共存させる工程を包含することを特徴としている。
【0011】
上記構成を有することにより、本発明は、Gタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変することができる。すなわち、本発明に係るタンパク質複合体の作製方法は、Gタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する方法でもあり得る。
【0012】
本発明に係る脂質膜は、上記タンパク質複合体を含有していることを特徴としている。本発明に係る脂質膜の作製方法は、Gタンパク質共役型受容体と、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;(4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは(6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチドとを、脂質膜上に共存させる工程を包含することを特徴としている。
【0013】
さらに、本発明に係る形質転換体は、上記タンパク質複合体を発現していることを特徴としている。本発明に係る形質転換体の作製方法は、上記タンパク質複合体を発現させる工程を包含していることを特徴としており、好ましくは、Gタンパク質共役型受容体をコードする遺伝子および上記ポリペプチドをコードする遺伝子を、細胞に導入する工程を包含する。
【0014】
上記構成を有することにより、本発明は、リガンド親和性が改変されたGタンパク質共役型受容体の機能解析を容易にする。
【0015】
本発明に係るスクリーニング方法は、リガンド親和性が改変されたGタンパク質共役型受容体の作働薬または拮抗薬をスクリーニングするために、〔I〕Gタンパク質共役型受容体と、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;(4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは(6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド、とを、脂質膜上に共存させてタンパク質複合体を生成する工程、ならびに〔II〕このタンパク質複合体を候補因子とともにインキュベートする工程、を包含することを特徴としている。本発明に係るスクリーニング方法は、細胞内Ca2+濃度を測定する工程、または細胞内イノシトールリン酸の代謝を測定する工程をさらに包含することが好ましい。
【0016】
本発明に係る形質転換体の作製方法は、リガンド親和性が改変されたGタンパク質共役型受容体を発現している形質転換体を作製するために、Gタンパク質共役型受容体が発現している細胞において、以下のポリペプチド:(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;(4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは、(6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド、の発現を抑制する工程を包含することを特徴としている。
【0017】
上記構成を有することにより、本発明は、リガンド親和性が改変されたGタンパク質共役型受容体の機能解析を容易にするとともに、Gタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変することができる。すなわち、本発明は、Gタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する方法でもあり得る。
【0018】
本発明に係る作製方法において、上記ポリペプチドは内因性タンパク質であることが好ましく、上記ポリペプチドの発現を阻害する工程はRNAi法によって行われることが好ましい。また、上記細胞は、外因性のGタンパク質共役型受容体を発現させている形質転換体であってもよい。
【0019】
本発明に係るスクリーニング方法は、リガンド親和性が改変されたGタンパク質共役型受容体の作働薬または拮抗薬をスクリーニングするために、〔I〕Gタンパク質共役型受容体が発現している細胞において、以下のポリペプチド:(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;(4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは、(6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド、の発現を阻害する工程、ならびに〔II〕該細胞を候補因子とともにインキュベートする工程、を包含することを特徴としている。本発明に係るスクリーニング方法は、細胞内Ca2+濃度を測定する工程、または細胞内イノシトールリン酸の代謝を測定する工程をさらに包含することが好ましい。
【0020】
本発明において、上記タンパク質複合体を構成するGタンパク質共役型受容体は、アドレナリン受容体、ドーパミン受容体、ムスカリン受容体またはエンドセリン受容体であることが好ましく、上記アドレナリン受容体はα受容体であってもβ受容体であってもよい。また、上記ドーパミン受容体はD2受容体であるであることが好ましい。なお、上記α受容体はα受容体であることが好ましく、さらにはα1Aサブタイプであることがより好ましく、好ましい実施形態において、本発明に係るタンパク質複合体は、アドレナリン受容体のα1Lサブタイプまたはβ1Lサブタイプである。
【発明の効果】
【0021】
本発明を用いれば、実体が不明であったGタンパク質共役型受容体を明らかにし、この受容体が関連するあらゆる疾患に対する治療を提供することができる。また、Gタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変することができる。
【0022】
本発明の他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分分かるであろう。また、本発明の利点は、添付図面を参照した次の説明によって明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】種々の濃度の[H]−silodosinの、α1L細胞に対する飽和結合曲線を示す図である。
【図2】(a)は、α1L細胞およびα1A細胞のprazosinに対する感受性を示す図である。(b)は、α1L細胞、α1L細胞のホモジネートおよびα1A細胞のホモジネートを用いた、prazosinに対する感受性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔1:タンパク質複合体〕
本発明は、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)と特定のポリペプチドとのタンパク質複合体を提供する。本明細書中で使用される場合、用語「複合体」は複数の物質があわさって一体をなしているものが意図され、「複合体化」は「一体化」と交換可能に使用される。なお、複合体を形成する複数の物質は、近接して相互作用していればよく、互いに結合していても結合していなくてもよい。好ましい実施形態において、本発明に係るタンパク質複合体は、GPCRと特定のポリペプチドとが近接して相互作用している状態であり、その結果、リガンド親和性が改変されたGPCRとして機能する。
【0025】
本明細書において、特定のポリペプチドと相互作用してリガンド親和性が改変されるGPCRとしてアドレナリン受容体(特に、α1Aサブタイプ)を例に挙げて本発明を説明するが、本発明を構成するGPCRはアドレナリン受容体に限定されないことを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。また、当業者であれば、本発明を構成するGPCRの配列情報を容易に入手し得る。
【0026】
受容体として最も初期に同定されたアドレナリン受容体(AR)は、生体において最も重要な受容体の1つであり、自律神経系(交感神経系)の働きを司ることが知られている。アドレナリン受容体は、アドレナリン、ノルアドレナリンなどが結合することにより、様々な部位において平滑筋の収縮および代謝の亢進を引き起こし、血圧および脈拍の上昇、瞳孔の散大、血中ブドウ糖の上昇といった生体反応を惹起する。
【0027】
研究の進歩や様々な新しい薬物の開発に伴い、アドレナリン受容体は様々なタイプに分類されることが明らかになってきた。アドレナリン受容体は、古くは、イソプロテレノール、フェントラミンなどの薬物に対する反応性の違いからα受容体とβ受容体に分類され、さらに、薬理学的なサブタイプ(α受容体、α受容体、β受容体)に分類された。各受容体は、組織ごとに異なった分布を示し、異なった働きをしていることが知られている。例えば、αアドレナリン受容体は、血管平滑筋、前立腺などの収縮において特に重要な働きをすることが知られており、脳など中枢神経系にも分布して意識および情動の調節に関与していることが知られている。
【0028】
ヒトゲノム解析が終わり、多くのタンパク質の構造および機能が遺伝子レベルで示されるようになった。αアドレナリン受容体の遺伝子においてもα1A、α1B、α1Dの3つのサブタイプが同定された。これらの遺伝子によるサブタイプ分類は、薬理学的なサブタイプ分類とよく一致することが知られている。このように、基本的には1つの遺伝子から1種類のサブタイプ受容体タンパク質が生成されると考えられている。
【0029】
しかし、αアドレナリン受容体において、薬理学的なサブタイプのいずれにも属さない受容体が存在することが、以前より指摘されている。この未知のαサブタイプは、代表的なα遮断薬(例えば、prazosin)に対する親和性が低いため、α1Lサブタイプと呼ばれるが、その遺伝子は未だクローニングされていない。
【0030】
αアドレナリン受容体の分類および薬物選択性を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
なお、表1に示した各化合物の効果についての典拠を以下に示す。
1. Muramatsu, I.et al. Pharmacol. Commun., 6: 23 (1995)
2. Ford, AP. et al. Mol. Pharmacol., 49: 209 (1996)
3. Murata, S. et al. J. Urol., 164: 578 (2000)
4. Hiraizumi-Hiraoka, Y. et al. J. Pharmacol. Exp. Ther., 310: 995 (2004)
5. Murata, S. et al. Br. J. Pharmacol., 127: 19 (1999)。
【0033】
近年、薬理学的機能実験および薬理学的結合実験によって、種々の哺乳動物の下部尿路系(ヒト前立腺など)においてα1Lサブタイプの活性が検出されている。α1Lサブタイプの機能を明らかにすることは、αアドレナリン受容体を標的とした、哺乳動物の下部尿路系に対する従来の治療をより発展させるために重要である。しかしながら、このようなα1Lサブタイプ活性は、組織をホモジナイズして行う従来の結合実験では検出されなかった。ホモジナイズした組織からはα1Lサブタイプ活性が検出されないということは、組織からのα1Lサブタイプの精製が非常に困難であることを意味する。α1Lサブタイプの実体を明らかにしない限り、α1Lサブタイプの機能解析、特に受容体の活性を調節する薬剤(アゴニスト、アンタゴニストなど)を開発することは非常に困難である。
【0034】
本発明者らは、実体が不明なα1Lサブタイプが、α1Aサブタイプ分子に何らかの副次的な分子が結合することによって構成されていると考えた。すなわち、α1Lサブタイプを構成しているα1Aサブタイプ分子とその副次的な分子は、組織をホモジナイズすることによって両者間の相互作用が解かれ、その結果、α1Lサブタイプがα1Aサブタイプにその特性を変化させると考えた。鋭意検討を行った結果、本発明者らは、特定のタンパク質がα1Aサブタイプに結合すること、およびこのタンパク質をα1Aサブタイプとともに培養細胞に共発現させるとα1Lサブタイプの表現型が発現することを確認した。すなわち、本発明者らは、α1Lサブタイプがタンパク質複合体からなることを見出し、この複合体を構成するタンパク質を特定することにより、本発明を完成するに至った。
【0035】
一実施形態において、本発明は、アドレナリン受容体のα1Lサブタイプを形成するタンパク質複合体を提供する。すなわち、本実施形態に係るタンパク質複合体は、アドレナリン受容体のα1Lサブタイプである。本実施形態によれば、実体が明らかになったα1Lサブタイプの関連するあらゆる疾患に対する治療を提供することができる。
【0036】
本実施形態に係るタンパク質複合体を構成するポリペプチドは、CRELD(cysteine-rich with EGF-like domains)1αタンパク質としてすでに公知であり、そのミスセンス変異が房室中隔欠損に関連することが示唆されている(Gene 293: 47-57 (2002)、Am. J. Hum. Genet. 72: 1047-1052 (2003))。このポリペプチドの配列情報はNCBIアクセッション番号NM_015513として提供され、本明細書において配列番号1(アミノ酸配列)および配列番号2(塩基配列)として示される。すなわち、本実施形態に係るタンパク質複合体を構成するポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドであっても、配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであってもよい。
【0037】
なお、本実施形態に係るタンパク質複合体を構成するポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドに限定されず、その活性を保持した変異体ポリペプチドであってもよい。変異体ポリペプチドとしては、例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつGPCRと複合体化してそのGPCRのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチドが挙げられる。
【0038】
当業者は、当該分野の技術常識を用いれば、特定のポリペプチドのアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸を欠失、置換もしくは付加した変異体ポリペプチドを容易に作製し得る。また、当業者は、本明細書の記載および技術常識に基づけば、その変異体ポリペプチドが元のポリペプチドと同じ活性を保持しているか否かを、容易に確認し得る。
【0039】
また、本実施形態に係るタンパク質複合体を構成するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドに限定されず、複合体化したGPCRのリガンド親和性を改変する活性を保持しているポリペプチドをコードする変異体ポリヌクレオチドであればよい。変異体ポリヌクレオチドとしては、例えば、(1)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド、(2)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチド、あるいは(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%、好ましくは80%、より好ましくは85%、またはそれ以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドが挙げられるがこれらに限定されない。
【0040】
当業者は、当該分野の技術常識を用いれば、特定のポリヌクレオチドの塩基配列において1もしくは数個の塩基を欠失、置換もしくは付加した変異体ポリヌクレオチド、特定のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る変異体ポリヌクレオチド、または特定のポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有している変異体ポリヌクレオチドを容易に作製し得る。また、当業者は、本明細書の記載および技術常識に基づけば、その変異体ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドが、元のポリヌクレオチドがコードするポリペプチドと同じ活性を保持しているか否かを、容易に確認し得る。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄することが意図される。
【0042】
なお、具体的なハイブリダイゼーション手順は、当該分野において周知の方法(例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版,J.SambrookおよびD.W.Russll編,Cold Spring Harbor Laboratory,NY(2001)」(本明細書中に参考として援用される。)に記載されている方法)に従って行われればよい。
【0043】
このように、本発明に係るタンパク質複合体を構成するGPCRとしてアドレナリン受容体を例に挙げて本発明を説明したが、本発明に係るタンパク質複合体は、GPCRと、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;(4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは(6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチドとが、複合体化していればよいといえる。すなわち、本発明に係るタンパク質複合体を構成するGPCRはアドレナリン受容体に限定されず、ドーパミン受容体、ムスカリン受容体またはエンドセリン受容体であってもよい。また、当業者であれば、本発明を構成するGPCRの配列情報を公知のデータベースから容易に入手し得るので、当業者は、本明細書の記載および技術常識に基づいて、所望のタンパク質複合体を容易に作製し得る。
【0044】
〔2:タンパク質複合体を含有している脂質膜〕
本発明はまた、GPCRと特定のポリペプチドとのタンパク質複合体の作製方法を提供する。本発明に係るタンパク質複合体の作製方法は、GPCRおよび特定のポリペプチドを脂質膜上に共存させる工程を包含することを特徴としている。すなわち、本発明は、タンパク質複合体を含有している脂質膜およびその作製方法を提供する。
【0045】
本発明に係る脂質膜は、上述したタンパク質複合体を含有していることを特徴としている。本発明に係る脂質膜は、天然由来の脂質膜であっても、人工の脂質膜であってもよい。脂質膜が天然由来である場合、脂質膜は生体膜であることが意図され、脂質膜が人工である場合は、脂質膜は脂質平面膜またはリポソームであることが意図される。
【0046】
1つの局面において、本発明に係る脂質膜は、本発明に係るタンパク質複合体を構成するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換体の生体膜であり得る。このような形質転換体は、上記ポリペプチドが生体膜状に発現され得るように、上記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを生物中に導入することによって取得される。なお、形質転換体に用いられる生物は、原核生物であっても真核生物であってもよい。
【0047】
他の局面において、本発明に係る脂質膜は、本発明に係るタンパク質複合体を構成するポリペプチドを含有している脂質二重層であり得る。脂質二重層は、極性脂質(特にリン脂質)が二層となった膜状の構造である。脂質二重層構造が二次元構造として安定化するのは球状であるが、末端を水分子から隔離すれば平面構造になり得る。本明細書中で使用される場合、人工的に作製される脂質二重層のうち球状のものをリポソーム、平面状のものを脂質平面膜という。当該分野において、人工的な脂質二重層は、膜タンパク質(例えば、チャネルタンパク質)の活性をin vitroで測定する際に使用されている。このように、当業者は、脂質平面膜を容易に作製し得、目的のタンパク質(ポリペプチド)を脂質平面膜に保持させ得る。また、リポソームは、ベジクルとも称される脂質人工膜であり、脂質(例えば、リン脂質)の懸濁液を激しく攪拌して分散させた後に超音波処理を施すことにより作製され得る。当該分野において、リポソームを用いた研究は広く行われており、細胞膜モデルとして利用されたり、薬物送達(DDS)の手段の一つとして利用されたりしている。このように、当業者は、リポソームを容易に作製し得、目的のタンパク質(ポリペプチド)をリポソームに保持させ得る。
【0048】
一実施形態において、本発明は、アドレナリン受容体のα1Lサブタイプを含有している脂質膜を提供する。上述したように、アドレナリン受容体のα1Lサブタイプは、アドレナリン受容体のα1AサブタイプとCRELD1αタンパク質とのタンパク質複合体である。アドレナリン受容体のα1AサブタイプおよびCRELD1αタンパク質はいずれも膜結合型のタンパク質であり、上述したように、ホモジナイズ(膜破壊)することによって互いの相互作用が解かれてしまう。すなわち、両者を脂質膜上に配置しかつ保持することにより、互いの相互作用が発現される。
【0049】
本実施形態に係る脂質膜が生体膜である場合、本実施形態に係る脂質膜の作製方法は、アドレナリン受容体のα1Lサブタイプを発現する形質転換体を作製する方法でもあり得、アドレナリン受容体のα1AサブタイプとCRELD1αタンパク質とを共発現する工程を包含すればよいといえる。アドレナリン受容体のα1Aサブタイプの配列情報はNCBIアクセッション番号U03866またはNM_000680として提供され、本明細書において配列番号3(アミノ酸配列)および配列番号4(塩基配列)として示される。すなわち、本実施形態に係るタンパク質複合体の作製方法は、配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むベクターと配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むベクターとを用いて宿主を形質転換する工程を包含すればよい。
【0050】
上記ベクターは、目的のポリヌクレオチドを作動可能に連結した発現ベクターであることが好ましい。本明細書中で使用される場合、用語「作動可能に連結」は、目的のペプチド(またはタンパク質)をコードするポリヌクレオチドが、プロモータなどの制御領域の制御下にあって、このペプチド(またはタンパク質)を宿主中で発現し得る形態にあることが意図される。目的のペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現ベクターに「作動可能に連結」して所望のベクターを構築する手順は当該分野において周知である。また、発現ベクターを宿主に導入する方法もまた、当該分野において周知である。よって、当業者は、容易に所望のペプチドを宿主内に生成させることができる。
【0051】
本明細書中で使用される場合、用語「形質転換体」は、細胞、組織または器官だけでなく、生物個体もまた意図される。形質転換の対象となる生物としても、特に限定されないが、各種微生物、植物および動物が挙げられる。なお、本発明に係る形質転換体は、少なくとも、本発明に係るタンパク質複合体を構成するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入されており、これらのポリペプチドを発現していればよいといえる。すなわち、発現ベクター以外の手段によって生成された形質転換体も、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。また、本発明に係る形質転換体は、本発明に係るタンパク質複合体を構成するポリペプチドが安定的に発現していることが好ましいが、目的のポリペプチドが一過性に発現するものであってもよい。なお、本実施形態に係るタンパク質複合体を共存させた形質転換体を用いれば、宿主細胞内のセカンドメッセンジャーの動態を観察することによりこの複合体の作働薬または拮抗薬をスクリーニングすることができる。
【0052】
本実施形態に係る脂質膜が人工の脂質膜である場合、本実施形態に係る脂質膜の作製方法は、アドレナリン受容体のα1Lサブタイプを含有している脂質平面膜またはリポソームを作製する方法でもあり得、より詳細には、アドレナリン受容体のα1AサブタイプとCRELD1αタンパク質とを人工の脂質膜上に再構成する工程を包含すればよいといえる。当業者は、当該分野の技術常識に従えば、膜タンパク質を人工の脂質膜上に容易に再構成することができる。本実施形態に係るタンパク質複合体を共存させた人工の脂質膜を用いれば、この複合体のリガンド親和性を測定することができる。
【0053】
〔3:脂質膜の利用〕
上述した脂質膜の作製方法が、タンパク質複合体の作製方法であり得、GPCRのリガンド親和性を改変する方法でもあり得ることを、当業者は容易に理解する。すなわち、本発明は、GPCRのリガンド親和性を改変する方法を提供する。
【0054】
また、本発明に係る脂質膜を用いれば、リガンド親和性が改変されたGPCRの作働薬または拮抗薬をスクリーニングすることができる。すなわち、本発明は、リガンド親和性が改変されたGPCRの作働薬または拮抗薬をスクリーニングする方法を提供する。
【0055】
本発明に係るスクリーニング方法は、上述したタンパク質複合体を脂質膜上に生成する工程、およびこのタンパク質複合体を候補因子とともにインキュベートする工程を包含することを特徴としている。なお、本明細書中で使用される場合、「インキュベートする」は複数の物質を共存させかつ互いに十分接触し得る状態に置くことが意図される。
【0056】
好ましい実施形態において、本発明に係るスクリーニング方法は、目的のGPCRを含有している形質転換体(例えば、アドレナリン受容体のα1Lサブタイプを発現させた細胞)を候補因子とともにインキュベートする工程を包含する。本実施形態に係るスクリーニング方法では、細胞におけるセカンドメッセンジャーの変動(例えば、Gタンパク質がGsまたはGiの場合はcAMP量、Gqの場合はイノシトール3リン酸およびCa2+濃度)を測定することにより、目的のGPCR(例えば、アドレナリン受容体のα1Lサブタイプ)の作働薬または拮抗薬をスクリーニングすることができる。
【0057】
アドレナリン受容体のα1Lサブタイプの作働薬は、失禁治療薬、散瞳薬、緑内障治療薬、中枢刺激薬として利用可能であり、アドレナリン受容体のα1Lサブタイプの拮抗薬は、排尿障害治療薬、レイノー病治療薬、微小循環障害治療薬、降圧薬、中枢抑制薬、腎血流改善薬、利尿薬として利用可能である。また、アドレナリン受容体のβ1Lサブタイプは心臓病に関連し、ドーパミンD2受容体やムスカリン受容体は中枢神経疾患に関連することが知られているので、これらの作働薬または拮抗薬もまた有用である。
【0058】
〔4:ノックダウン細胞およびその利用〕
本発明はまた、GPCRとタンパク質複合体を形成するポリペプチドをノックダウンした形質転換体およびその作製方法を提供する。本発明に係る形質転換体の作製方法は、内因性のポリペプチドの発現を阻害する工程を包含することを特徴としている。
【0059】
例えば、GPCRと複合体化してタンパク質複合体を形成するポリペプチドの1つであるCRELD1αタンパク質は種々の細胞に発現している。よって、内因性のCRELD1αタンパク質の発現を阻害した形質転換体は、上記タンパク質複合体の機能を解析したり標的化合物(例えば、作働薬または拮抗薬)をスクリーニングしたりする際に用いるコントロール細胞として非常に有用である。本項で述べるノックダウン細胞は単独で利用されてもよいが、上述のタンパク質複合体またはタンパク質複合体含有脂質膜とともに利用されることが好ましい。なお、対象の細胞に発現しているGタンパク質共役型受容体は、内因性であっても外因性であってもよい。
【0060】
1つの局面において、本発明は、Gタンパク質共役型受容体が発現している細胞において内因性のCRELD1αタンパク質の発現を阻害する工程を包含し得る。これにより、細胞に発現していたGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変することができる。すなわち、本発明に係る形質転換体の作製方法は、リガンド親和性が改変されたGタンパク質共役型受容体を発現している形質転換体の作製方法であり得、Gタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する方法でもあり得る。一実施形態において、本発明は、アドレナリン受容体のα1Lサブタイプを発現している細胞における内因性のCRELD1αタンパク質の発現を阻害する工程を包含し得る。これにより、α1Lサブタイプの表現型を示す細胞をα1Aサブタイプの表現型を示す細胞に改変し得る。
【0061】
内因性のCRELD1αタンパク質の発現を阻害する手法としては、RNAi法を用いることが好ましい。RNAi法は当該分野において周知の技術であり、例えば、配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを目的の細胞に導入することによって内因性のCRELD1αタンパク質の発現を首尾よく阻害することができる。なお、配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを目的の細胞に導入するためのベクターを用いる場合は、配列番号6に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをアンチセンスに用いることが好ましいが、これに限定されない。
【0062】
本発明はさらに、上述した形質転換体を用いることを特徴とする、リガンド親和性が改変されたGタンパク質共役型受容体の作働薬または拮抗薬をスクリーニングする方法を提供する。
【0063】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0065】
〔1.構築物〕
ヒトアドレナリン受容体alpha−1A遺伝子(ADRA1A)を、ヒト前立腺ライブラリからPCR法を用いてクローニングした。クローニングした遺伝子は、全長1465bpであり、ORF配列が従来報告されているヒトalpha−1A遺伝子(NCBIアクセッション番号:U03866またはNM_000680)と完全に一致した。また、その前後の配列も、Hirasawa et al. (1993)の報告のものと一致した。
【0066】
CRELD1α遺伝子を、ヒト前立腺cDNAライブラリからクローニングした。配列決定の結果、クローニングした遺伝子は、Rupp et al. (2002)が報告したもの(NCBIアクセッション番号:NM_015513)と一致した。
【0067】
次いで、ADRA1A遺伝子のコード領域をpIRES(Clontech社Catalog番号 PT3266−5)のマルチクローニングサイトAのEcoRI制限酵素サイトにサブクローニングした。また、CRELD1αのコード領域をpIRESのマルチクローニングサイトBのXbaI制限酵素サイトにサブクローニングした。なお、遺伝子の両端にはサブクローニングのために制限酵素のアダプターを付加した。
【0068】
〔2.形質転換体の作製〕
通常の方法で上記のベクターを増幅/精製し、Chinese Hamster卵巣由来細胞であるCHO−K1細胞に、Lipofectamine 2000(Invitrogen社)を用いて、製造業者のプロトコールに従ってトランスフェクトした。トランスフェクトの2日後より、抗生物質ジェネティシン(G418) 1200μg/mlをDMEM培地に添加した。トランスフェクトしなかった細胞、すなわち、Lipofectamine 2000などの操作を全て同様に行い、ベクターのみを加えなかった細胞が完全に死滅するG418の濃度は、1000μg/mlであった。G418耐性細胞を1穴あたり平均0.5個の細胞が入るように希釈懸濁して、96穴プレートに分注し、単一コロニーを選択した。この操作を3回繰り返すことにより、ADRA1A遺伝子とCRELD1α遺伝子を共発現したstable clone(α1L細胞)を作製した。また、コントロールとして、ADRA1A遺伝子のみを安定発現した細胞(α1A細胞)およびCRELD1α遺伝子のみを安定発現した細胞(CRELD1α細胞)を作製した。
【0069】
〔3.結合実験〕
結合実験に用いた薬物とその正式化学名は以下の通り。silodosin, prazosin, tamsulosin, RS−17053 (N−[2−(2−cyclopropylmethoxyphenoxy)ethyl]−5−chloro−α,α−dimethyl−1H−indole−3−ethanamine hydrochloride), BMY 7378 (8−[2−[4−(2−methoxyphenyl)−1−piperazinyl]ethyl]8−azaspiro[4,5]decane7,9−dione dihydrochloride)。
【0070】
放射性リガンド[H]−silodosinを用いた薬理学的結合法にてStable cloneを検討した。全細胞法whole cell binding methodにて、実験を行った。即ち、実験2〜3日前にセミコンフルエントになるように細胞を播種し、氷冷PBSで2回洗浄した後に、スクレーパーにて細胞を掻き取った。回収した細胞を、Krebs−HEPES溶液に再懸濁し、[H]−silodosinおよび必要に応じて他の薬剤とともに、4℃で4時間インキュベートした。その後、細胞を、ポリエチレンイミンで前処理したWhatmann GC/Fフィルタで濾過/洗浄し、液体シンチレーションカウンタにて、放射能を測定した。非特異的結合を、30μM phentolamine存在下での結合と評価した。
【0071】
〔A〕全細胞法による飽和結合実験
α1L細胞に対して、種々の濃度(30〜500pM)の[H]−silodosinの結合を調べた(図1)。図1は全細胞法で得られた飽和結合曲線を示す。[H]−silodosinのα1L細胞に対する特異的結合は、最大結合量(Bmax) 134fmol/mg proteinであり、Kd値 843pM(pK=9.1)であった。
【0072】
〔B〕競合結合実験
silodosinはα1Aサブタイプとα1Lサブタイプにしか高親和性に結合しないことが知られている。ここで、高親和性とは、Kd値が1nM以下であることを意味する。α1L細胞に発現する受容体の薬理学的特性を同定するため、300pM [H]−silodosinの結合部位に対するprazosinの競合結合実験を、全細胞結合実験法を用いて行った。対照には、α1A細胞を用いた。上記の通り、この濃度では、[H]−silodosinはα1Aサブタイプおよびα1Lサブタイプにしか結合することができない。
【0073】
図2の(a)の競合曲線に示すように、α1L細胞は、大部分(88%以上)の受容体が、prazosinに対して低い感受性を示した(pK=7.6)。また、RS−17053に対しても同様に感受性が低く、かつtamsulosinに対しては高い感受性を有していた。また、BMY 7378に対しては、低い感受性しか示さなかった(表2)。これに対し、コントロールとして用いたα1A細胞のprazosin(図2)、tamsulosin、RS−17053に対する感受性(pK値)はそれぞれ9.5、9.9、8.8と高値であり、これまで報告されているα1Aの特性と一致した(表2)。
【0074】
【表2】

【0075】
なお、表中、α1L細胞、α1L細胞およびヒト前立腺組織片での[H]−silodosin結合に対する競合薬物の阻害定数(K)を、−logK(pK)の値として示す。ただし、[H]−silodosinは、飽和結合曲線より求めたpK値(解離平衡定数)を示す(数値は3〜4例の平均値)。
【0076】
また、図2の(b)には、α1L細胞とα1L細胞のホモジネートを用いてprazosinに対する感受性を調べた結果を示す。ホモジネートにおいては、α1L細胞は、prazosinに対してα1A細胞と同様の高い感受性を示した。この事実は、前立腺や脳などの組織をホモジナイズすると、α1L受容体が観察されなく事実とよく一致する。
【0077】
表2に、上記結果とヒト前立腺などで得られている結果を対比して示す。ADRA1A遺伝子とCRELD1α遺伝子を共発現させたα1L細胞の受容体特性は、α1A受容体とはまったく異なるもので、ヒト前立腺などで報告されているα1L受容体に薬理学的特性はよく一致した。したがって、α1L細胞はα1A細胞と異なり、生体でのα1L受容体を発現した細胞系と考えられた。
【0078】
〔4.細胞内Ca2+測定実験〕
さらに、α1A細胞に内因性に発現している可能性のある、CRELD1αの影響を完全に取り除くために、RNAi法を用いて、CRELD1αの発現をノックダウンした細胞(以下、KD細胞)を作製した。RNAi法を用いて遺伝子発現を抑制するために、市販のpSilencerTM4.1-CMV hygro(Ambion社)に対して、その取扱説明書に従って、chinese hamster CRELD1αのmRNAのコード領域を含んだオリゴヌクレオチド(センス配列;GATCCAGGCGACTTAGTGTTCACCTTCAAGAGAGGTGAACACTAAGTCGCCTTTA:配列番号5、アンチセンス配列;AGCTTAAAGGCGACTTAGTGTTCACCTCTCTTGAAGGTGAACACTAAGTCGCCTG:配列番号6)を挿入したベクターを作製し、上述したα1A細胞に上記と同様の手法でトランスフェクトした。このKD細胞を用いて、蛍光色素Fura−2を用いた蛍光比測光法により、ノルアドレナリンに対する細胞内Ca2+応答を調べた。KD細胞のノルアドレナリンによるCa2+応答のpEC50値は、7.9であった。一方、この細胞を、プラゾシン10−8Mにて2分間予め処置しておくと、ノルアドレナリンに対するCa2+応答の用量反応曲線は右方に移動し、プラゾシンのpK値は9.3と計算された。このことから、KD細胞におけるノルアドレナリンに対するCa2+応答は、α1Aサブタイプの特性と一致した。
【0079】
このように、α1Aサブタイプの遺伝子を発現させたCHO細胞における内因性のCRELD1αの発現をRNAi法にて抑制すると、完全にα1A受容体特性を示した。なお、CHO細胞にα1Aサブタイプの遺伝子を発現させてCa2+応答などの受容体機能を調べた実験が、これまでにいくつか存在する。しかし、それらの実験で示された受容体特性については、必ずしも一致した見解が得られていなかった。
【0080】
本発明は、以下の態様でも提供され得る:
[1]Gタンパク質共役型受容体α1Lを含有している脂質膜を作製する方法であって、
Gタンパク質共役型受容体α1Aおよび以下のポリペプチド:
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
(4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド
を脂質膜上に共存させる工程を包含する、作製方法。
[2]Gタンパク質共役型受容体α1Lを発現している形質転換体を作製する方法であって、
Gタンパク質共役型受容体α1Aおよび以下のポリペプチド:
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
(4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド
を細胞に共発現させる工程を包含する、作製方法。
[3]Gタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する方法であって、
Gタンパク質共役型受容体α1Aおよび以下のポリペプチド:
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
(4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド
を脂質膜上に共存させる工程を包含する、方法。
[4]Gタンパク質共役型受容体α1Lの作働薬または拮抗薬をスクリーニングする方法であって、
Gタンパク質共役型受容体α1Aおよび以下のポリペプチド:
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
(4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド
を脂質膜上に共存させてタンパク質複合体を生成する工程、ならびに
該タンパク質複合体を候補因子とともにインキュベートする工程
を包含する、方法。
[5]細胞内Ca2+濃度を測定する工程、または細胞内イノシトールリン酸の代謝を測定する工程をさらに包含する、4に記載の方法。
[6]Gタンパク質共役型受容体α1Aを発現している形質転換体を作製する方法であって、
Gタンパク質共役型受容体α1Aが発現している細胞において、以下のポリペプチド:
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
(4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド
の発現を抑制する工程を包含する、方法。
[7]前記ポリペプチドが内因性タンパク質である、6に記載の方法。
[8]前記ポリペプチドの発現を阻害する工程が、RNAi法によって行われる、6に記載の方法。
[9]前記RNAi法が、配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを導入することによって行われる、8に記載の方法。
[10]前記細胞が、外因性のGタンパク質共役型受容体α1Aを発現させている形質転換体である、6に記載の方法。
[11]Gタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する方法であって、
Gタンパク質共役型受容体α1Aが発現している細胞において、以下のポリペプチド:
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
(4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド
の発現を阻害する工程を包含する、方法。
[12]Gタンパク質共役型受容体α1Aの作働薬または拮抗薬をスクリーニングする方法であって、
Gタンパク質共役型受容体α1Aが発現している細胞において、以下のポリペプチド:
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
(4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体α1Aのリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド
の発現を阻害する工程、ならびに
該細胞を候補因子とともにインキュベートする工程
を包含する、方法。
[13]細胞内Ca2+濃度を測定する工程、または細胞内イノシトールリン酸の代謝を測定する工程をさらに包含する、12に記載の方法。
【0081】
発明の詳細な説明の項においてなされた具体的な実施形態または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内において、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
α1L−ARは、下部尿路系に発現していることが明らかになっており、我々の開発したα1L−AR発現細胞は、前立腺肥大や失禁などの排尿障害に対する治療薬の開発に極めて有用なものであると考えられる。また、α1L−ARの関連するあらゆる疾患に対する治療薬のスクリーニング法としても、極めて有用であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Gタンパク質共役型受容体および以下のポリペプチド:
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
(3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
(4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
(6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド
が複合体化した、タンパク質複合体。
【請求項2】
前記Gタンパク質共役型受容体が、アドレナリン受容体、ドーパミン受容体、ムスカリン受容体またはエンドセリン受容体である、請求項1に記載のタンパク質複合体。
【請求項3】
前記アドレナリン受容体がα受容体またはβ受容体である、請求項2に記載のタンパク質複合体。
【請求項4】
前記α受容体がα1A受容体である、請求項3に記載のタンパク質複合体。
【請求項5】
前記ドーパミン受容体がD2受容体である、請求項2に記載のタンパク質複合体。
【請求項6】
請求項1に記載のタンパク質複合体を含有している、脂質膜。
【請求項7】
請求項1に記載のタンパク質複合体を発現している、形質転換体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−36193(P2012−36193A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196565(P2011−196565)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【分割の表示】特願2009−516280(P2009−516280)の分割
【原出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(509317391)ファルマコーム合同会社 (1)
【出願人】(000228590)日本ケミファ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】