説明

リグノセルロース物質蒸解用蒸解助剤及びパルプの製造方法

【課題】
パルプ収率及びパルプ品質(白色度、比引裂強度、比破裂強度及びカッパー価の低下等)を著しく向上できるリグノセルロース物質蒸解用蒸解助剤を提供することである。
【解決手段】
有機酸(A)及び/又はこの塩を含有してなることを特徴とするリグノセルロース蒸解用蒸解助剤を用いる。(A)は、アミノカルボン酸(A1)及び/又はオキシカルボン酸(A2)が好ましい。さらに、溶解度パラメーターが14〜24の水溶性高分子(B)及び/又はHLBが6〜18の界面活性剤(C)を含有することが好ましい。(C)はノニオン性界面活性剤(C1);スルホ基、スルホオキシ基又はホスホノ基の少なくとも1種を有するアニオン性界面活性剤(C2);並びに両性界面活性剤(C3)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグノセルロース物質蒸解用蒸解助剤及びパルプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リグノセルロース物質を蒸解してパルプを製造する際、原木やエネルギーの原単位を抑え、経済的に良質な製品を生産するために、水溶性ジヒドロキシアントラセン化合物及び浸透促進剤を添加することが知られている(特許文献1)。また、蒸解工程用脱樹脂剤として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩が知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特公平1−20276号公報
【特許文献2】特公昭53−28522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、水溶性ジヒドロキシアントラセン化合物及び浸透促進剤やポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩を添加しても、パルプ収率及びパルプ品質(比引裂強度及び比破裂強度等)を十分に向上することができないという問題がある。さらに、蒸解工程で得られるパルプの白色度が低く、漂白工程における漂白剤{酸素、二酸化塩素、塩素、次亜塩素、過酸化水素、水酸化ナトリウム及びオゾン等}を大量に必要とするという問題がある。
本発明の目的は、パルプ収率及びパルプ品質(白色度、比引裂強度、比破裂強度及びカッパー価の低下等)を著しく向上できるリグノセルロース物質蒸解用蒸解助剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のリグノセルロース物質蒸解用蒸解助剤の特徴は、有機酸(A)及び/又はこの塩を含有してなる点を要旨とする。
【0005】
本発明のパルプの製造方法の特徴は、上記のリグノセルロース蒸解用蒸解助剤の存在下で、リグノセルロース物質をアルカリ蒸解又は亜硫酸塩蒸解してパルプを得る工程を含む点を要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のリグノセルロース蒸解用蒸解助剤は、パルプ収率及びパルプ品質(白色度、比引裂強度、比破裂強度及びカッパー価の低下等)を著しく向上できる。
また、本発明のリグノセルロース蒸解用蒸解助剤を使用することにより、白色度の高いパルプが効率よく得られるため、漂白工程における漂白剤の使用量を大幅に低減できる。
【0007】
また、本発明のパルプの製造方法は、上記のリグノセルロース蒸解用蒸解助剤を使用するため、高いパルプ収率で、優れたパルプ品質(白色度、比引裂強度、比破裂強度及びカッパー価の低下等)を持つパルプを容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
有機酸(A)としては、アミノカルボン酸(A1)、オキシカルボン酸(A2)及びカルボン酸(A3)が含まれる。
【0009】
アミノカルボン酸(A1)としては、アミノモノカルボン酸及びアミノポリカルボン酸が含まれる。
【0010】
アミノモノカルボン酸としては、ジヒドロキシメチルグリシン、ジヒドロキシエチルグリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン等が挙げられる。
【0011】
アミノポリカルボン酸としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエトレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸及びヒドロキシイミノ二酢酸、N,N−ジカルボキシメチルアスパラギン酸及びN,N−ジカルボキシメチル−メチルグリシン等が挙げられる。
【0012】
オキシカルボン酸(A2)としては、オキシモノカルボン酸及びオキシポリカルボン酸が含まれる。
【0013】
オキシモノカルボン酸としては、乳酸、グリセリン酸、アラビノン酸、グルコン酸及びガラクトン酸等が挙げられる。
【0014】
オキシポリカルボン酸としては、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸、アラビナル酸、グルカル酸及びガラクタル酸等が挙げられる。
【0015】
カルボン酸(A3)としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸及び少なくとも5価のポリカルボン酸等が含まれる。
モノカルボン酸としては、飽和モノカルボン酸及び不飽和モノカルボン酸等が含まれる。
飽和モノカルボン酸としては、炭素数2〜30の飽和直鎖モノカルボン酸、炭素数4〜30の飽和分岐モノカルボン酸及び炭素数5〜30の飽和環状モノカルボン酸等が使用できる。
【0016】
飽和直鎖モノカルボン酸としては、酢酸、n−プロピオン酸、n−ブタン酸、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−ウンデカン酸、n−ドデカン酸、n−トリデカン酸、n−テトラデカン酸、n−ペンタデカン酸、n−ヘキサデカン酸、n−ヘプタデカン酸、n−オクタデカン酸、n−ノナデカン酸、n−エイコサン酸、n−ドコサン酸、n−テトラコサン酸、n−ヘキサコサン酸、n−オクタコサン酸及びn−トリアコンタン酸等が挙げられる。
【0017】
飽和分岐モノカルボン酸としては、2−メチルプロパン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、2−エチルオクタン酸、2−メチルウンデカン酸、2−エチルテトラデカン酸、2−メチルヘプタデカン酸、2−メチルトリコサン酸及び2−エチルオクタコサン酸等が挙げられる。
【0018】
飽和環状モノカルボン酸としては、シクロブタンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、2−シクロヘキシルエタン酸、3−シクロヘキシルプロパン酸、4−シクロヘキシルブタン酸、6−シクロヘキシルヘキサン酸、8−シクロヘキシルオクタン酸、12−シクロヘキシルドデカン酸、16−シクロヘキシルテトラデカン酸、18−シクロヘキシルオクタデカン酸、2−(カルボキシクロヘキシル)−2−シクロヘキシルプロパン、4−(シクロヘキシル)シクロヘキサンカルボン酸及び24−シクロヘキシルリグノセリン酸等が挙げられる。
【0019】
不飽和モノカルボン酸としては、炭素数4〜22の脂肪族不飽和直鎖モノカルボン酸、炭素数5〜30の脂肪族不飽和分岐モノカルボン酸及び炭素数7〜30の芳香族モノカルボン酸等が使用できる。
【0020】
脂肪族不飽和直鎖モノカルボン酸としては、ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オクタデセン酸、エイコセン酸、ドコセン酸、テトラコセン酸、リノール酸、エレオステアリン酸、リノレン酸、パリナリン酸、アラキドン酸、タリリン酸、ステアロール酸及びベヘノール酸等が挙げられる。
【0021】
脂肪族不飽和分岐モノカルボン酸としては、2−メチル−3−ブテン酸、2−エチル−5−ヘキセン酸、2−メチル−10−ウンデセン酸、2−エチル−15−ヘキサデセン酸、2−メチル−22−トリコセン酸及び2−エチル−27−オクタコセン酸等が挙げられる。
【0022】
芳香族モノカルボン酸としては、ベンゼンカルボン酸(安息香酸)、フェニルエタン酸、3−フェニルプロパン酸、4−フェニルブタン酸、5−フェニルペンタン酸、6−フェニルヘキサン酸、8−フェニルオクタン酸、10−フェニルデカン酸、12−フェニルドデカン酸、18−フェニルオクタデカン酸、24−フェニルテトラコサン酸、ナフタレンカルボン酸、4−フェニルベンゼンカルボン酸及び2−(カルボキシフェニル)−2−フェニルプロパン等が挙げられる。
【0023】
ジカルボン酸としては、飽和ジカルボン酸及び不飽和ジカルボン酸等が含まれる。
飽和ジカルボン酸としては、炭素数4〜32の飽和直鎖ジカルボン酸、炭素数6〜21の飽和分岐ジカルボン酸及び炭素数8〜20飽和環状ジカルボン酸等が使用できる。
【0024】
飽和直鎖ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、1,24−テトラコサンジカルボン酸、リンゴ酸及び1,30−トリアコンタンジカルボン酸等が挙げられる。
【0025】
飽和分岐ジカルボン酸としては、2−メチルプロパン−1,3−ジカルボン酸、2−メチルオクタン−1,8−ジカルボン酸及び2−メチルオクタデカン−1,18−ジカルボン酸等が挙げられる。
【0026】
飽和環状ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、4−(カルボキシシクロヘキシル)シクロヘキサンカルボン酸及び2,2−ビス(カルボキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
【0027】
不飽和ジカルボン酸としては、炭素数4〜30の脂肪族不飽和直鎖ジカルボン酸、炭素数7〜21の脂肪族不飽和分岐ジカルボン酸及び炭素数8〜17の芳香族ジカルボン酸等が使用できる。
【0028】
脂肪族不飽和直鎖ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、2−ヘキセン−1,6−ジカルボン酸、2−オクテン−1,8−ジカルボン酸、2−デセン−1,10−ジカルボン酸、2−ドデセン−1,12−ジカルボン酸、2−ヘキサデセン−1,16−ジカルボン酸、2−テトラコセン−1,24−ジカルボン酸、2−トリアコンテン−1,30−ジカルボン酸及び2,6−オクタジエン−1,8−ジカルボン酸等が挙げられる。
【0029】
脂肪族不飽和分岐ジカルボン酸としては、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジカルボン酸、2−メチル−2−オクテン−1,8−ジカルボン酸及び2−メチル−2−オクタデセン−1,18−ジカルボン酸等が挙げられる。
【0030】
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ベンジルコハク酸、4−(カルボキシフェニル)ベンゼンカルボン酸及び2,2−ビス(カルボキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0031】
トリカルボン酸としては、炭素数6〜13の脂肪族トリカルボン酸及び炭素数9〜13の芳香族トリカルボン酸等が含まれる。
【0032】
脂肪族トリカルボン酸としては、アコニット酸{HOCCHC(COH)=CHCOH}、ヘキサントリカルボン酸、オクテントリカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸及びデカントリカルボン酸等が挙げられる。
【0033】
芳香族トリカルボン酸としては、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン及びナフタレントリカルボン酸等が挙げられる。
【0034】
テトラカルボン酸としては、炭素数8〜10の脂肪族テトラカルボン酸及び炭素数10〜16の芳香族トリカルボン酸等が含まれる。
【0035】
脂肪族テトラカルボン酸としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸及び1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0036】
芳香族テトラカルボン酸としては、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ビフェニル−2,3,3’、4’−テトラカルボン酸及びナフタレン−1,8,4,5−テトラカルボン酸等が挙げられる。
【0037】
少なくとも5価のポリカルボン酸としては、エチレン性不飽和カルボン酸を構成単位として含む水溶性共重合体等が含まれる。
【0038】
エチレン性不飽和カルボン酸としては、α,β−不飽和カルボン酸{アクリル酸及びメタクリル酸等}、α,β−不飽和ジカルボン酸{クロトン酸、マレイン酸及びイタコン酸等}が含まれる。
【0039】
水溶性共重合体の重量平均分子量は、300〜15,000が好ましく、さらに好ましくは500〜10,000、特に好ましくは700〜5,000である。この範囲にあると、パルプ収率及びパルプ品質がさらに良好となる。
【0040】
なお、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記)を用いて求められる値である(測定条件はたとえば以下のとおりである。)。
【0041】
<GPC測定条件>
機 種:Waters510(日本ウォーターズ・リミティッド製)
カ ラ ム:TSK gel G5000pwXL及びTSK gel G3000pwXL (いずれも東ソー株式会社製)を直列に結合したカラム
カラム温度:40℃
検 出 器:RI
溶 媒:0.5%酢酸ソーダ・水/メタノール(体積比70/30)
流 速:1.0ml/分
試料濃度 :0.25重量%
注 入 量:200μl
標 準:ポリオキシエチレングリコール (東ソー株式会社製;TSK STANDARD POLYETHYLENE OXIDE)
データ処理装置:SC−8010(東ソー株式会社製)
【0042】
これらの有機酸のうち、パルプ収率及びパルプ品質の観点から、アミノカルボン酸(A1)、オキシカルボン酸(A2)及び少なくとも5価のポリカルボン酸が好ましく、さらに好ましくはアミノカルボン酸(A1)及びオキシカルボン酸(A2)、特に好ましくはオキシカルボン酸(A2)、最も好ましくは乳酸、リンゴ酸及びクエン酸である。
【0043】
有機酸(A)の塩としては、アンモニア塩、アルキルアミン(モノエチルアミン、モノブチルアミン及びトリエチルアミン等)塩、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等)塩、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)塩及びアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム及び亜鉛等)塩等が含まれる。
【0044】
有機酸(A)及び有機酸(A)の塩の両方を含む場合、これらの含有重量比{有機酸(A)/有機酸(A)の塩}は、0.1〜100が好ましく、さらに好ましくは0.2〜90、特に好ましくは0.5〜80である。
【0045】
本発明のリグノセルロース蒸解用蒸解助剤には、パルプ収率及びパルプ品質の観点から、さらに、溶解度パラメーターが14〜24の水溶性高分子(B)及び/又はHLBが6〜18の界面活性剤(C)を含むことが好ましい。
【0046】
溶解度パラメーター(SP値)は、次式(1)に示すように、モル蒸発熱とモル体積との比の平方根で表される値である。
【0047】

SP値(δ)=(ΔH/V)1/2 (1)
【0048】
ただし、式中、ΔHはモル蒸発熱(cal)を、Vはモル体積(cm)を表す。
また、ΔH及びVは、「POLYMER ENGINEERING AND FEBRUARY,1974, Vol.14,No.2,ROBERT F.FEDORS.(151〜153頁)」に記載の原子団のモル蒸発熱(Δei)の合計(ΔH)とモル体積(Δvi)の合計(V)を用いることができる。
【0049】
水溶性高分子(B)の構成単量体が1種類の場合、SP値は構成単量体のSP値と同じになる。水溶性高分子(B)の構成単量体が2種以上の場合、SP値は、各構成単量体のSP値にモル分率を乗じた値の総和となる。
【0050】
水溶性高分子(B)のSP値は、14〜24であり、好ましくは15〜23、さらに好ましくは16〜22、特に好ましくは17〜19.5である。この範囲であると、パルプ収率及びパルプ品質がさらに良好となる。
【0051】
本発明において、水溶性高分子とは、上記のSP値を持つ高分子を意味する。すなわち、水溶性とは、SP値が上記の範囲である性質を意味する。
水溶性高分子(B)としては、水溶性アニオンポリマー、水溶性ノニオンポリマー、水溶性カチオンポリマー及び水溶性両性ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーが含まれる。
【0052】
水溶性アニオンポリマーとしては、アニオン性基{カルボキシ基、スルホ基、スルホオキシ基及びホスホノ基等}を1分子中に少なくとも1個有する水溶性ポリマーであればよく、水溶性アニオンラジカル重合体、水溶性アニオン非ラジカル重合体及び水溶性アニオン天然ポリマー等が含まれる。
【0053】
水溶性アニオンラジカル重合体は、アニオン性ビニル単量体(b1)を必須構成単量体としてなる重合体が含まれる。
アニオン性ビニル単量体(b1)としては、たとえば、以下のものが挙げられる。
(b1−1)カルボキシ基含有ビニル単量体
モノカルボン酸{不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、クロトン酸及び桂皮酸等]及び不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル[マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル及びイタコン酸モノアルキルエステル等]
ジカルボン酸{マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸等}
【0054】
(b1−2)スルホ基含有ビニル単量体
炭素数2〜6のアルケンスルホン酸{ビニルスルホン酸及び(メタ)アリルスルホン酸等}
炭素数6〜12の芳香族ビニル基含有スルホン酸{スチレンスルホン酸及びα−メチルスチレンスルホン酸等}
スルホ基含有(メタ)アクリルエステル{スルホプロピル(メタ)アクリレート及び2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸等}
スルホ基含有(メタ)アクリルアミド{2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等}
スルホ基と水酸基とを含有するビニル単量体{3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸及び3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等}
アルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸エステル{ドデシルアリルスルホコハク酸エステル等}
【0055】
(b1−3)スルホオキシ基含有ビニル単量体
ポリ(重合度2〜30)オキシアルキレン(オキシエチレン、オキシプロピレン及び/又はオキシブチレン:ランダム、ブロックのいずれでもよい。以下同様である。)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル、ポリ(重合度2〜30)オキシアルキレンビスフェノールAモノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル等
【0056】
(b1−4)ホスホノ基含有ビニル単量体
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(アルキルの炭素数2〜6)燐酸モノエステル{(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等}
(メタ)アクリロイルオキシホスホン酸{2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸等}
【0057】
アニオン性ビニル単量体としては、塩{1価金属塩、2価金属塩、アミン塩又はアンモニウム塩、以下同じ。}であってもよい。
1価金属としては、アルカリ金属(ナトリウム及びカリウム等)が挙げられる。
2価金属としては、アルカリ土類金属(カルシウム及びマグネシウム等)及び亜鉛等が挙げられる。
アミンとしては、モノ−、ジ−又はトリ−アルキル(炭素数1〜8)アミン{モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン等};モノ−、ジ−又はトリ−アルカノール(炭素数1〜8)アミン{モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン及びジイソプロパノールアミン等};及び複素環アミン{ピリジン及びモルホリン等}が挙げられる。
【0058】
水溶性アニオンポリマーを構成する単量体としては、アニオン性ビニル単量体(b1)以外に、ノニオン性ビニル単量体(b2)及びその他の単量体(b3)を含んでもよい。
ノニオン性ビニル単量体(b2)としては、たとえば、以下のものが挙げられる。
【0059】
(b2−1)カルバモイル基含有ビニル単量体
非置換又はモノアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド{(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−i−プロピル(メタ)アクリルアミド及びN−n−又はi−ブチル(メタ)アクリルアミド等}
ジアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド{N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジn−ブチル(メタ)アクリルアミド等}
N−ビニルカルボン酸アミド{N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−n−又はi−プロピオニルアミド及びN−ビニルヒドロキシアセトアミド等}
【0060】
(b2−2)ヒドロキシ基含有ビニル単量体
ヒドロキシ基含有芳香族ビニル単量体{p−ヒドロキシスチレン等}
ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等}
モノ−又はジ−ヒドロキシアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド{N,N−ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジ−2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等}
酢酸ビニル{加水分解によりビニルアルコール単位を形成できる。}
炭素数3〜12のアルケノール{(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−オクテノール及び1−ウンデセノール等}
炭素数4〜12のアルケンジオール{1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール及び2−ブテン−1,4−ジオール等}
ヒドロキシアルキル(炭素数1〜6)アルケニル(炭素数3〜10)エーテル{2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等}
多価(3〜8価)アルコール{アルカンポリオール、この分子内又は分子間脱水物、糖類;グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン及び蔗糖等)のアルケニル(炭素数3〜10)エーテル又は(メタ)アクリレート{蔗糖(メタ)アリルエーテル等}
【0061】
(b2−3)ポリオキシアルキレン鎖含有ビニル単量体
ポリオキシアルキレングリコール(オキシアルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜50)の(メタ)アクリレート{ポリオキシエチレングリコール(数平均分子量100〜300)モノ(メタ)アクリレート及びポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量130〜500)モノ(メタ)アクリレート等}
ポリオキシアルキレングリコールアルキルモノエーテル(オキシアルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜50)の(メタ)アクリレート{メトキシポリオキシエチレングリコール(数平均分子量110〜310)(メタ)アクリレート及びラウリルアルコールエチレンオキシド付加物(2〜30モル)(メタ)アクリレート等}
ポリオキシアルキレンポリオール{多価アルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキル基の炭素数2〜4、重合度2〜100)等}の(メタ)アクリレート{モノ(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン(数平均分子量150〜230)ソルビタン等}
【0062】
なお、数平均分子量はGPCを用いて求められる値である(測定条件はたとえば重量平均分子量の測定条件と同様である。)。
【0063】
その他の単量体(b3)としては、たとえば、以下のものが挙げられる。
(b3−1)エポキシ基含有ビニル単量体
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等
【0064】
(b3−2)ハロゲン原子含有ビニル単量体
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル、ハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等
【0065】
(b3−3)ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン
飽和脂肪酸(炭素数2〜12)のビニルエステル{酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等}
アルキル、アリール又はアルコキシアルキル(炭素数1〜12)とビニルとのビニルエーテル{メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル2−メトキシエチルエーテル及びビニル2−ブトキシエチルエーテル等}
アルキル又はアリール(炭素数1〜8)とビニルとのビニルケトン{ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン及びビニルフェニルケトン等}
【0066】
(b3−4)不飽和カルボン酸エステル
不飽和モノカルボン酸{(メタ)アクリル酸及びクロトン酸等}アルキル(アルキルの炭素数1〜30)エステル{炭素数1〜30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−又はi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、i−又はt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート及びエイコシル(メタ)アクリレート等}
不飽和モノカルボン酸{(メタ)アクリル酸及びクロトン酸等}シクロアルキル(炭素数5〜30)エステル{炭素数5〜30のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレート;シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−メチル−シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート及びアダマンタニル(メタ)アクリレート等}
不飽和モノカルボン酸{(メタ)アクリル酸及びクロトン酸等}アラルキル(炭素数7〜30)エステル{炭素数7〜30のアラルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート及びフェネチル(メタ)アクリレート等}
不飽和ジカルボン酸{マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等}アルキル(アルキルの炭素数1〜8)ジエステル{ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート等}
【0067】
(b3−5)ビニル基含有炭化水素
炭素数2〜20のアルケン{エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等}
炭素数4〜12のアルカジエン{ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6ヘプタジエン及び1,7−オクタジエン等}
炭素数6〜30の脂環式炭化水素{シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等}
芳香族炭化水素{スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−ブチルスチレン、4−フェニルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ベンジルスチレン、4−クロチルベンゼン及び2−ビニルナフタレン等}
【0068】
(b3−6)シアノ基又はニトロ基含有ビニル単量体
(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン及び4−ニトロスチレン等
【0069】
水溶性アニオンラジカル重合体のうち、SP値が14〜24となる具体例としては、(1)アニオン性ビニル単量体(b1)のうちSP値が14〜24の単量体のみからなる重合体{たとえば、ポリマレイン酸ジナトリウム(SP値=16.2)、ポリイタコン酸ジナトリウム(SP値=15.1)、ポリ3−アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(SP値=16.3)等};(2)アニオン性ビニル単量体(b1)のみからなる共重合体である重合体{たとえば、ポリ(マレイン酸ジナトリウム/アクリル酸ナトリウム:モル比50/50)共重合体(SP値=15.2)及びポリ(マレイン酸ジナトリウム/ビニルスルホン酸ナトリウム:モル比50/50)(SP値=14.7)等};(3)アニオン性ビニル単量体(b1)とノニオン性ビニル単量体(b2)とからなる共重合体{アクリル酸ナトリウム/アクリルアミド(モル比40/60)共重合体(SP値=17.2)及びアクリル酸ナトリウム/ヒドロキシエチルメタクリレート(モル比90/10)(SP値=14.2)等};(4)重合後に変性して新たなアニオン性基を導入した重合体{たとえば、(メタ)アクリルアミド又は(メタ)アクリロニトリルを必須構成単量体としてなる重合体を加水分解(過酸化水素水溶液及び/又はアルカリ性化合物水溶液による加水分解等)してカルボキシ基を導入した重合体}等が挙げられる。
【0070】
ノニオン性ビニル単量体(b2)単位を含む場合、アニオン性ビニル単量体(b1)単位とノニオン性ビニル単量体(b2)単位との含有割合{(b1)/(b2)}(重量比)は、99/1〜1/99が好ましく、さらに好ましくは95/5〜5/95、特に好ましくは90/10〜10/90である。
また、その他の単量体(b3)単位を含む場合、アニオン性ビニル単量体(b1)単位とその他の単量体(b3)単位との含有割合{(b1)/(b3)}(重量比)は、99/1〜60/40が好ましく、さらに好ましくは95/5〜70/30、特に好ましくは90/10〜80/20である。
また、ノニオン性ビニル単量体(b2)単位及びその他の単量体(b3)単位を含む場合、ノニオン性ビニル単量体(b2)単位とその他の単量体(b3)単位との含有割合{(b2)/(b3)}(重量比)は、99/1〜60/40が好ましく、さらに好ましくは97/3〜70/30、特に好ましくは95/5〜75/25である。
以上の範囲であると、パルプ収率及びパルプ品質がさらに良好となる。
【0071】
水溶性アニオンラジカル重合体の重量平均分子量としては、1,500〜1,000万が好ましく、さらに好ましくは2,000〜500万、特に好ましくは3,000〜100万、である。この範囲にあると、パルプ収率及びパルプ品質がさらに良好となる。
【0072】
水溶性アニオン非ラジカル重合体としては、アニオン性ホルムアルデヒド樹脂{4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸(塩)ホルマリン縮合体(縮合度2〜200)、ナフタレンスルホン酸(塩)ホルマリン縮合体(縮合度2〜200)及び4−ヒドロキシナフタレンスルホン酸(塩)ホルマリン縮合体(縮合度2〜200)等}{なお、塩としては、塩{1価金属塩、2価金属塩、アミン塩又はアンモニウム塩}が含まれる。};アニオン性基含有ポリエステル{ジカルボン酸成分及び/又はジオール成分の一部として、スルホ基含有ジカルボン酸(スルホコハク酸、スルホイソフタル酸及び3,5−カルボメトキシベンゼンスルホン酸等)及び/又はスルホ基含有ジオール(2,5−ビスヒドロキシエトキシベンゼンスルホン酸等)を用いて得られる水溶性ポリエステル;たとえば、1,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸とエチレングリコールの縮合物等};アニオン性基含有ポリウレタン{活性水素原子含有成分の一部として、アニオン性基含有化合物(スルホ基、カルボキシ基、スルホネート基又はカルボキシレート基を含有する化合物、例えば、1,3−ジヒドロキシプロパン2−スルホン酸、1,3−ジヒドロキシ2−メチルプロパン2−カルボン酸等)用いてアニオン性基を導入した水溶性ポリウレタン;たとえば、スルホ基含有ポリウレタン(1,3−ジヒドロキシプロパン2−スルホン酸とエチレンジイソシアネートとからなる重合体)、カルボキシ基含有ポリウレタン(1,3−ジヒドロキシ2−メチルプロパン2−カルボン酸とジエチレンジイソシアネートとからなる重合体等}等が挙げられる。
【0073】
水溶性アニオン天然ポリマーとしては、アニオン性多糖類{カルボキシ基含有ポリマー;カルボキシメチルセルロース(メチル基の置換度0.5〜3.0)、カルボキシエチルセルロース(エチル基の置換度0.5〜2.4)、アルギン酸(塩)及びカルボキシメチルキチン等};スルホオキシ基含有ポリマー{コンドロイチン硫酸、硫酸化キトサン、ヒアルロン酸及び硫酸セルロース等};燐酸デンプン;セルロースの無機酸エステル{硝酸セルロース等};アニオン性タンパク質{ポリアスパラギン酸(塩);及び高分子凝集剤{大森英三著、高分子刊行会昭和50年1月10日発行、60〜90頁}等が含まれる。
【0074】
水溶性アニオン性ポリマーのうち、水溶性アニオンラジカル重合体及び水溶性アニオン天然ポリマーが好ましく、さらに好ましくはアニオン性ビニル単位(b1)及びノニオン性ビニル単量体(b2)を有する水溶性アニオンラジカル重合体、アニオン性多糖類及びアニオン性タンパク質、特に好ましくはアニオン性ビニル単位(b1)のみを有する水溶性アニオンラジカル重合体、カルボキシメチルセルロース及びポリアスパラギン酸(塩)である。
【0075】
水溶性ノニオンポリマーとしては、水溶性ノニオンラジカル重合体、水溶性ノニオン非ラジカル重合体及び水溶性ノニオン天然ポリマー等が含まれる。
【0076】
水溶性ノニオンポリマーは、ノニオン性ビニル単量体(b2)を必須構成単量体としてなる重合体が含まれる。
水溶性ノニオンポリマーを構成する単量体としては、ノニオン性ビニル単量体(b2)以外に、その他の単量体(b3)を含んでもよい。
【0077】
その他の単量体(b3)単位を含む場合、ノニオン性ビニル単量体(b2)単位とその他の単量体(b3)単位との含有割合{(b2)/(b3)}(重量比)は、99/1〜65/35が好ましく、さらに好ましくは95/5〜70/30、特に好ましくは90/10〜70/30である。この範囲であると、パルプ収率及びパルプ品質がさらに良好となる。
【0078】
水溶性ノニオンポリマーの重量平均分子量としては、1,500〜1,000万が好ましく、さらに好ましくは2,000〜500万、特に好ましくは3,000〜100万、である。この範囲にあると、パルプ収率及びパルプ品質がさらに良好となる。
【0079】
水溶性ノニオンラジカル重合体のうち、SP値が14〜24となる具体例としては、(1)ノニオン性ビニル単量体(b2)のうちSP値が14〜24の単量体のみからなる重合体{たとえば、ポリアクリルアミド(SP値=19.2)、ポリN−ビニルホルムアミド(SP値=17.2)及びポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルのケン化度60〜100モル%、重量平均分子量5,000〜200,000、SP値=19.1〜14.2)等};(2)ノニオン性ビニル単量体(b2)及びその他の単量体からなる共重合体である重合体{たとえば、エチレン/酢酸ビニル共重合体のケン化物(SP値=19.0〜14.1)、ブチレン/酢酸ビニル共重合体のケン化物(SP値=18.9〜14.0)、アクルリルアミド/酢酸ビニル共重合体のケン化物(SP値=19.1〜14.5)等}が挙げられる。
【0080】
水溶性ノニオン非ラジカル重合体としては、多価アルコールの脱水縮合物{ポリグリセリン等};水溶性ナイロン樹脂{コハク酸とN,N’ジヒドロキシメチルエチレンジアミンとの縮合体等};水溶性ポリウレタン樹脂{ポリオール成分の一部として、水溶性ポリオール(エチレングリコール、オキシエチレン基を主体とするポリオキシアルキレンポリオール(オキシエチレン基の含量50重量%以上、重合度2〜100)等)を用いて得られる水溶性ポリウレタン樹脂:エチレンジイソシアネートとエチレングリコールとからなる重合体}等が挙げられる。
【0081】
水溶性ノニオン天然ポリマーとしては、ノニオン性多糖類{水溶性デンプン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース及びエチルセルロース等}が挙げられる。
【0082】
水溶性ノニオンポリマーのうち、水溶性ノニオンラジカル重合体が好ましく、さらに好ましくはポリビニルアルコール及びエチレン/酢酸ビニル共重合体のケン化物、特に好ましくはポリビニルアルコールである。
【0083】
水溶性カチオンポリマーとしては、カチオン性基{1〜3級アミノ基及び第4級アンモニオ基等}を1分子中に少なくとも1個有する水溶性ポリマーであればよく、水溶性カチオンラジカル重合体、水溶性カチオン非ラジカル重合体及び水溶性カチオン天然ポリマー等が含まれる。
【0084】
水溶性カチオンラジカル重合体は、カチオン性ビニル単量体(b4)を必須構成単量体としてなる重合体が含まれる。
カチオン性ビニル単量体(b4)としては、以下のものが挙げられる。
(b4−1)1〜3級アミノ基含有ビニル単量体
1級アミノ基含有ビニル単量体{炭素数3〜6のアルケニルアミン((メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等)、アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート(アミノエチル(メタ)アクリレート等)等}
【0085】
2級アミノ基含有ビニル単量体{アルキル(炭素数1〜6)アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート(t−ブチルアミノエチルメタクリレート及びメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)、炭素数6〜12のジアルケニルアミン(ジ(メタ)アリルアミン等)等}
【0086】
3級アミノ基含有ビニル単量体{ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート(ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)、ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリルアミド(ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等)、3級アミノ基含有芳香族ビニル単量体(N,N−ジメチルアミノスチレン等)、含窒素複素環含有ビニル単量体(モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン及びN−ビニルチオピロリドン等)等};及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、燐酸塩、低級カルボン酸塩(炭素数1〜8)等
【0087】
(b4−2)第4級アンモニオ基含有ビニル単量体
1〜3級アミノ基含有ビニル単量体(b4−1)を、4級化剤(炭素数1〜12のアルキルクロライド、炭素数1〜6のジアルキル硫酸、炭素数1〜6のジアルキルカーボネート及びベンジルクロライド等)を用いて4級化したもの等{(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルモルホリノアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムメチルサルフェート及びトリメチルビニルフェニルアンモニウムクロライド等}が挙げられる。
【0088】
水溶性カチオンラジカル重合体を構成する単量体としては、カチオン性ビニル単量体(b4)以外に、ノニオン性ビニル単量体(b2)及び/又はその他の単量体(b3)を含んでもよい。
【0089】
ノニオン性ビニル単量体(b2)単位を含む場合、カチオン性ビニル単量体(b4)単位とノニオン性ビニル単量体(b2)単位との含有割合{(b4)/(b2)}(重量比)は、99/1〜1/99が好ましく、さらに好ましくは95/5〜5/95、特に好ましくは90/10〜10/90である。
また、その他の単量体(b3)単位を含む場合、カチオン性ビニル単量体(b4)単位とその他の単量体(b3)単位との含有割合{(b4)/(b3)}(重量比)は、99/1〜60/40が好ましく、さらに好ましくは97/3〜70/30、特に好ましくは95/5〜75/25である。
また、ノニオン性ビニル単量体(b2)単位及びその他の単量体(b3)単位を含む場合、ノニオン性ビニル単量体(b2)単位とその他の単量体(b3)単位との含有割合{(b2)/(b3)}(重量比)は、99/1〜60/40が好ましく、さらに好ましくは97/3〜70/30、特に好ましくは95/5〜75/25である。
以上の範囲であると、パルプ収率及びパルプ品質がさらに良好となる。
【0090】
水溶性カチオンポリマーの重量平均分子量としては、1,500〜1,000万が好ましく、さらに好ましくは2,000〜500万、特に好ましくは3,000〜100万、である。この範囲にあると、パルプ収率及びパルプ品質がさらに良好となる。
【0091】
水溶性カチオン非ラジカル重合体としては、カチオン性ホルムアルデヒド樹脂{ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物(縮合度3〜500)等};カチオン性基含有水溶性ポリウレタン樹脂{3級アミノ基又は4級アンモニオ基を有する水溶性ポリウレタン(1,3−ジヒドロキシプロパン−2−トリヒドロキシメチルアンモニウムクロライドとジエチレンジイソシアネートとからなる重合体、米国特許第4,271,217号明細書に記載の4級窒素原子含有ポリオールを用いて4級アンモニオ基を導入した水溶性ポリウレタン樹脂、及び特公昭42−19278号公報又は特公昭48−36958号公報に記載のような3級アミノ基含有ポリウレタンをカチオン化(中和又は4級化)してなるもの等}等が挙げられる。
【0092】
水溶性カチオン天然ポリマーとしては、カチオン性多糖類{カチオン化デンプン及びキトサン等};及び高分子凝集剤{大森英三著、高分子刊行会昭和50年1月10日発行、35〜59頁}等が含まれる。
【0093】
水溶性カチオンポリマーのうち、水溶性カチオンラジカル重合体、水溶性カチオン天然ポリマーが好ましく、さらに好ましくは水溶性カチオンラジカル重合体、特に好ましくはカチオン化デンプンである。
【0094】
水溶性両性ポリマーとしては、カチオン性基及びアニオン性基を1分子中に少なくとも1個ずつ有する水溶性ポリマーであればよく、水溶性両性ラジカル重合体及び水溶性両性天然ポリマー等が含まれる。
【0095】
水溶性両性ラジカル重合体は、アニオン性ビニル単量体(b1)及びカチオン性ビニル単量体(b4)を必須構成単量体としてなる重合体が含まれる。
カチオン性ビニル単量体(b4)単位とアニオン性ビニル単量体(b1)単位との含有割合{(b4)/(b1)}(重量比)は、5/95〜95/5が好ましく、さらに好ましくは等電点付近(当量比60/40〜40/60)から外れた割合、すなわち5/95〜40/60及び60/40〜95/5、特に好ましくは10/90〜30/70及び70/30〜90/10である。この範囲であると、パルプ収率及びパルプ品質がさらに良好となる。
【0096】
水溶性両性ラジカル重合体を構成する単量体としては、アニオン性ビニル単量体(b1)及びカチオン性ビニル単量体(b4)以外に、ノニオン性ビニル単量体(b2)及び/又はその他の単量体(b3)を含んでもよい。
【0097】
ノニオン性ビニル単量体(b2)単位を含む場合、アニオン性ビニル単量体(b1)及びカチオン性ビニル単量体(b4)単位とノニオン性ビニル単量体(b2)単位との含有割合{(b1)+(b4)/(b2)}(重量比)は、99/1〜1/99が好ましく、さらに好ましくは95/5〜5/95、特に好ましくは90/10〜10/90である。
また、その他の単量体(b3)単位を含む場合、アニオン性ビニル単量体(b1)及びカチオン性ビニル単量体(b4)単位とその他の単量体(b3)単位との含有割合{(b1)+(b4)/(b3)}(重量比)は、99/1〜60/40が好ましく、さらに好ましくは97/3〜70/30、特に好ましくは95/5〜75/25である。
また、ノニオン性ビニル単量体(b2)単位及びその他の単量体(b3)単位を含む場合、ノニオン性ビニル単量体(b2)単位とその他の単量体(b3)単位との含有割合{(b2)/(b3)}(重量比)は、99/1〜60/40が好ましく、さらに好ましくは97/3〜70/30、特に好ましくは95/5〜75/25である。
以上の範囲であると、パルプ収率及びパルプ品質がさらに良好となる。
【0098】
水溶性両性ラジカルポリマーの重量平均分子量としては、1,500〜1,000万が好ましく、さらに好ましくは2,000〜500万、特に好ましくは3,000〜100万である。この範囲にあると、パルプ収率及びパルプ品質がさらに良好となる。
【0099】
水溶性両性天然ポリマーとしては、ゼラチン、ニカワで代表される水溶性タンパク質等が挙げられる。
【0100】
水溶性両性ポリマーのうち、(b1)及び(b4)からなる水溶性両性ラジカル重合体、水溶性両性天然ポリマーが好ましく、さらに好ましくは水溶性両性天然ポリマー、特に好ましくはゼラチンである。
【0101】
水溶性高分子(B)のうち、水溶性アニオンポリマー及び水溶性ノニオンポリマーが好ましく、さらに好ましくは水溶性アニオンラジカル重合体、水溶性アニオン天然ポリマー及び水溶性ノニオンラジカル重合体、特に好ましくはアルギン酸(塩)、ポリアスパラギン酸(塩)、カルボキシメチルセルロース、ポリマレイン酸(塩)、ポリイタコン酸(塩)、アクリルアミド/アクリル酸(塩)共重合体、ポリビニルアルコール及びポリアクリルアミド、最も好ましくはポリビニルアルコール及びポリアクリルアミドである。
【0102】
水溶性高分子(B)の重量平均分子量は、1,500〜1,000万が好ましく、さらに好ましくは2,000〜500万、特に好ましくは3,000〜100万、である。この範囲にあると、パルプ収率及びパルプ品質がさらに良好となる。
【0103】
水溶性高分子(B)のうち、ラジカル重合体は、通常行われているラジカル重合法(塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合等)により製造することができる。また、非ラジカル重合体は通常行われている重合反応(脱水重合、付加重合等)により製造することができる。また、天然ポリマーは、天然物からの抽出物又は精製物等をそのまま使用できる。また、公知の化学反応(メチル化反応及びヒドロキシエチル化等)により変性等してもよい。
【0104】
水溶性高分子(B)を含有する場合、(B)の含有量(重量%)は、有機酸(A)の重量に基づいて2〜98が好ましく、さらに好ましくは5〜95、特に好ましくは10〜90である。この範囲であると、パルプ収率及びパルプ品質がさらに良好となる。
【0105】
界面活性剤(C)としては、公知の界面活性剤{たとえば、特開2002−180391号公報}等が使用でき、ノニオン界面活性剤(C1)、スルホ基、スルホオキシ基又はホスホノ基の少なくとも1種を有するアニオン界面活性剤(C2)、両性界面活性剤(C3)及びカチオン界面活性剤(C4)が含まれる。これらのうち、ノニオン界面活性剤(C1)、スルホ基、スルホオキシ基又はホスホノ基の少なくとも1種を有するアニオン界面活性剤(C2)及び両性界面活性剤(C3)が好ましく、さらに好ましくはノニオン界面活性剤(C1)及びスルホ基、スルホオキシ基又はホスホノ基の少なくとも1種を有するアニオン界面活性剤(C2)、特に好ましくはノニオン界面活性剤(C1)、最も好ましくはポリオキシアルキレンアルキル(炭素数4〜24)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数4〜24)フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数4〜24)アミド及びポリエーテル変性シリコーンである。
【0106】
界面活性剤(C)のHLBは、6〜18が好ましく、さらに好ましくは7〜17、特に好ましくは8〜16である。この範囲であると、より高い浸透効果が得られ、さらにパルプ収率及びパルプ品質が良好となる。
ここで、HLBは有機性と無機性のバランスを示し、Hydorophile−Liophile Balanceの略である。HLBは、小田法による数値であり、有機性と無機性を示す数値(小田、寺村著「界面活性剤の合成と其応用」501頁、槇書店)を合計することによって計算できる。
【0107】
界面活性剤(C)を含有する場合、界面活性剤(C)の含有量(重量%)は、有機酸(A)の重量に基づいて、2〜98が好ましく、さらに好ましくは5〜95、特に好ましくは10〜90である。
【0108】
本発明のリグノセルロース蒸解用蒸解助剤には、必要によりさらに、消泡剤(D)、溶媒(E)及び/又はその他の添加剤(F)を含有してもよい。
消泡剤(D)としては、公知の消泡剤{ポリエーテル消泡剤、動植物鉱物油消泡剤、シリコーン消泡剤及びワックスエマルション消泡剤等}等が使用できる。
【0109】
消泡剤(D)を含有する場合、消泡剤(D)の含有量(重量%)は、有機酸(A)の重量に基づいて、2〜50が好ましく、さらに好ましくは5〜40、特に好ましくは10〜30である。
【0110】
溶媒(E)としては、水又は水と親水性有機溶剤との混合溶媒等が含まれる。
親水性有機溶剤としては、炭素数4〜8のエステル{酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート及びエチルセロソルブアセテート等}、炭素数4〜8のエーテル{エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等}、炭素数3〜8のケトン{アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等}、炭素数1〜8のアルコール{メタノール、エタノール、n−又はi−プロパノール、n−、i−又はt−ブタノール、プロピレングリコール及びジプロピレングリコール等}、及び炭素数5〜8の複素環式化合物{N−メチルピロリドン等}等が挙げられる。これらのうち、水、水とエーテルとの混合溶媒及び水とアルコールとの混合溶媒が好ましく、特に好ましくは水である。
溶媒として、水と親水性有機溶剤との混合溶媒を用いる場合、水/親水性有機溶剤の含有重量比(水/親水性有機溶剤)は、1〜200が好ましく、さらに好ましくは1.5〜100、特に好ましくは2〜50である。
【0111】
溶媒(E)を含有する場合、溶媒(E)の含有量(重量%)は、有機酸(A)の重量に基づいて、1〜99が好ましく、さらに好ましくは5〜95、特に好ましくは10〜90である。
【0112】
その他の添加剤(F)としては、公知の添加剤{分散剤、耐水化剤、保水剤、増粘剤、表面サイズ剤、流動性改良剤、潤滑剤、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消臭剤、香料、染料、填料、スライムコントロール剤、ピッチコントロール剤及び/又は防腐剤等}等が含まれる。
【0113】
その他の添加剤(F)を含有する場合、その他の添加剤(F)の含有量(重量%)は、有機酸(A)の重量に基づいて、2〜50が好ましく、さらに好ましくは5〜40、特に好ましくは10〜30である。
【0114】
本発明のリグノセルロース蒸解用蒸解助剤が有機酸(A)及び/又はこの塩以外に、水溶性高分子(B)、界面活性剤(C)、消泡剤(D)、溶媒(E)及び/又はその他の添加剤(F)を含む場合、本発明の蒸解助剤は、有機酸(A)と、水溶性高分子(B)、界面活性剤(C)、消泡剤(D)、溶媒(E)及び/又はその他の添加剤(F)とを均一混合することにより得られる。
【0115】
本発明のリグノセルロース蒸解用蒸解助剤は、この蒸解助剤の存在下で、リグノセルロース物質をアルカリ蒸解又は亜硫酸塩蒸解できれば、直接的に、リグノセルロース物質と混合してもよく、また、間接的に、蒸解液と混合してからリグノセルロース物質と混合してもよい。
【0116】
直接的に、リグノセルロース物質と混合する場合、リグノセルロース物質に本発明の蒸解助剤を噴霧又は塗布してもよいし、本発明の蒸解助剤にリグノセルロース物質を浸漬してもよい。これらのうち、設備設計の簡便性の観点から、リグノセルロース物質に本発明の蒸解助剤を噴霧することが好ましい。
【0117】
本発明の蒸解助剤とリグノセルロース物質とを混合する時期は、リグノセルロース物質の蒸解前であればいずれのタイミングであってもよいが、蒸解までの間に、水等によって、蒸解助剤が洗い流されないようにすることが好ましい{たとえば、蒸解助剤を混合したリグノセルロース物質を屋内やストックタンクに貯蔵する等}。
【0118】
リグノセルロース物質としては、木材{針葉樹及び広葉樹等}、非木材{草木類(ケナフ、バガス及びバンブーフ等)}及びこれらに由来するパルプ等が挙げられる。
【0119】
蒸解としては、リグノセルロースを蒸解できれば制限がないが、アルカリ蒸解{クラフト法、ソーダ法、ポリサルファイド蒸解及び炭酸ソーダ法等}及び亜硫酸塩蒸解{アルカリ性亜硫酸塩法、中性亜硫酸塩法及び重亜硫酸塩法等}が好ましい。
【0120】
蒸解設備としては、連続式又はバッチ式のいずれでもよい。また、蒸解システムとして、従来の連続蒸解式以外に、修正クラフト蒸解(MCC)、アイソサーマル蒸解(ITC)及びローソリッド(Lo−solid)蒸解の方式にも適用できる。
【0121】
本発明のリグノセルロース物質蒸解用蒸解助剤の使用量は、リグノセルロース物質の絶乾重量に基づいた有機酸(A)の量(重量%)が1×10−4〜4となる量が好ましく、さらに好ましくは1×10−3〜2、特に好ましくは1×10−2〜1となる量である。この範囲であると、漂白効率がさらに良好となる。
なお、絶乾重量とは、105℃で恒量になるまで乾燥した後の重量を意味する(以下、同じである。)。
【0122】
本発明の蒸解助剤は、必要により、キノン(G)と共に使用してもよい。
キノン(G)としては、キノン化合物及びヒドロキノン化合物が含まれる。
【0123】
キノン化合物としては、アントラキノン、ジヒドロアントラキノン(たとえば、1,4−ジヒドロアントラキノン)、テトラヒドロアントラキノン(たとえば、1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン及び1,2,3,4−テトラヒドロアントラキノン)、メチルアントラキノン(たとえば、1−メチルアントラキノン及び2−メチルアントラキノン)、メチルジヒドロアントラキノン(たとえば、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラキノン)及びメチルテトラヒドロアントラキノン(たとえば、1−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン及び2−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン)等が挙げられる。
【0124】
ヒドロキノン化合物としては、アントラヒドロキノン(たとえば、9,10−ジヒドロキシアントラセン)、メチルアントラヒドロキノン(たとえば、2−メチルアントラヒドロキノン)、ジヒドロアントラヒドロアントラキノン(たとえば、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン)及びこれらのアルカリ金属塩(たとえば、アントラヒドロキノンのジナトリウム塩及び1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム塩)等が挙げられる。
【0125】
キノン(G)を用いる場合、キノン(G)の使用量(重量%)は、リグノセルロース物質の絶乾重量に基づいて、0.005〜3が好ましく、さらに好ましくは0.01〜2、特に好ましくは0.05〜1である。
【0126】
本発明の蒸解助剤とキノン(G)とを用いる場合、本発明の蒸解助剤とキノン(G)とを別々に又は均一混合してから、直接的にリグノセルロース物質と混合してもよく、又は蒸解液と混合してから間接的にリグノセルロース物質と混合してもよい。
【実施例】
【0127】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、部及び%は特に断りのない限り重量部及び重量%を意味する。
【0128】
<製造例1>
窒素雰囲気減圧下、120℃で、ラウリルアルコール186部(1モル)及び水酸化カリウム0.2部を、1時間脱水した後、150℃で、エチレンオキシド132部(3モル)を、ゲージ圧が1〜3kgf/cmとなるように5時間かけて滴下した。引き続き、同温で1時間熟成して、ノニオン性界面活性剤{ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加体(平均付加モル数:3、HLB値:約6)(C11)を得た。
【0129】
<製造例2>
窒素雰囲気減圧下、120℃で、ラウリルアルコール186部(1モル)及び水酸化カリウム0.2部を、1時間脱水した後、150℃で、エチレンオキシド440部(10モル)を、ゲージ圧が1〜3kgf/cmとなるように5時間かけて滴下した。引き続き、同温で1時間熟成して、ノニオン性界面活性剤{ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加体(平均付加モル数:10、HLB値:約13)(C12)を得た。
【0130】
<実施例1>
溶媒{水}(E1)90部及び有機酸の塩{ナカライテスク株式会社製、乳酸リチウム}(A21)10部を、25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(1)を得た。
【0131】
<実施例2>
溶媒(E1)90部及び有機酸{ナカライテスク株式会社製、DL−リンゴ酸}(A22)10部を、25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(2)を得た。
【0132】
<実施例3>
溶媒(E1)90部及び有機酸の塩{ナカライテスク株式会社製、くえん酸三カリウム一水和物}(A23)10部を、25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(3)を得た。
【0133】
<実施例4>
溶媒(E1)90部及び有機酸の塩{ナカライテスク株式会社製、エチレンジアミン四酢酸二カリウム}(A11)10部を、25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(4)を得た。
【0134】
<実施例5>
溶媒(E1)78部及び有機酸の塩{BASFジャパン株式会社製、ポリアクリル酸ナトリウム、Sokalan PA−15、45%水溶液、重量平均分子量1200}(A31)22部を、25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(5)を得た。
【0135】
<実施例6>
溶媒(E1)80部及び有機酸{BASFジャパン株式会社製、アクリル酸/マレイン酸共重合体、Sokalan CP 12S、50%水溶液、重量平均分子量3000}(A32)20部を、25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(6)を得た。
【0136】
<実施例7>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)4部及び水溶性高分子{サンノプコ株式会社製ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、SN−PW 43、41%水溶液、SP値:14.4}(B1)6部を25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(7)を得た。
【0137】
<実施例8>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)4部及び水溶性高分子{株式会社クラレ製ポリビニルアルコール、PVA217、SP値:17.2}(B2)6部を25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(8)を得た。
【0138】
<実施例9>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)4部及び水溶性高分子{ナカライテスク株式会社製デンプン、可溶性デンプン、SP値:23.5}(B3)6部を25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(9)を得た。
【0139】
<実施例10>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)4部及び製造例1で得たノニオン性界面活性剤{ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加体}(C11)6部を25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(10)を得た。
【0140】
<実施例11>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)4部及び製造例2で得たノニオン性界面活性剤{ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加体}(C12)6部を25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(11)を得た。
【0141】
<実施例12>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)4部及びアニオン性界面活性剤{シグマアルドリッチ株式会社製、テトラデシル硫酸ナトリウム、HLB:約18}(C21)6部を25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(12)を得た。
【0142】
<実施例13>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)3部、水溶性高分子(B1)3部及び製造例1で得たノニオン性界面活性剤(C11)4部を25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(13)を得た。
【0143】
<実施例14>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)3部、水溶性高分子(B1)3部及び製造例2で得たノニオン性界面活性剤(C12)4部を25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(14)を得た。
【0144】
<実施例15>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)3部、水溶性高分子(B1)3部及びアニオン性界面活性剤(C21)4部を25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(15)を得た。
【0145】
<実施例16>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)3部、水溶性高分子(B2)3部及び製造例1で得たノニオン性界面活性剤(C11)4部を25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(16)を得た。
【0146】
<実施例17>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)3部、水溶性高分子(B2)3部及び製造例2で得た界面活性剤(C12)4部を25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(17)を得た。
【0147】
<実施例18>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)3部、水溶性高分子{(B2)3部及びアニオン性界面活性剤(C21)4部を25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(18)を得た。
【0148】
<実施例19>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)3部、水溶性高分子(B3)3部及び製造例1で得たノニオン性界面活性剤(C11)4部を25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(19)を得た。
【0149】
<実施例20>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)3部、水溶性高分子(B3)3部及び製造例2で得たノニオン性界面活性剤(C12)4部を25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(20)を得た。
【0150】
<実施例21>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)3部、水溶性高分子(B3)3部及びアニオン性界面活性剤(C21)4部を25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(21)を得た。
【0151】
<実施例22>
溶媒(E1)90部、有機酸(A22)3部、水溶性高分子(B3)3部、界面活性剤(C21)4部及び消泡剤{サンノプコ株式会社製ポリエーテル消泡剤、SN デフォーマー265}(D1)0.01部を、25℃で均一混合して、本発明の蒸解助剤(22)得た。
【0152】
<実施例23>
有機酸(A22)をこのまま、本発明の蒸解助剤(23)とした。
【0153】
<実施例24>
国内産広葉樹材50%とユーカリ材50%とからなる広葉樹混合木材チップ30g(絶乾重量)を200mLオートクレープに採取し、チップの絶乾重量当たり有効アルカリ{有効アルカリとは、JIS P0001:1998において定義される「クラフト蒸解液の蒸解作用をするアルカリ量の表示方法、有効アルカリ=NaOH+NaS×1/2、NaO又はNaOHに換算して表す。」を意味する。}18%、硫化度25%の蒸解液120g及び蒸解助剤(1)0.6gの混合液を添加し、蒸解温度160℃、蒸解時間120分の条件下で、クラフト蒸解して、蒸解パルプを得た。
【0154】
次いで、蒸解パルプを布袋に入れて、蒸解液を除去し、水道水を降り注ぎながら洗浄液の着色がほとんどなくなるまで洗浄した後、フラットスクリーン(熊谷理機工業製、スクリーンプレートのスリット幅0.25mm)により未蒸解繊維を除去し、ヌッチェにより吸引ろ過して、シート状の未晒パルプ(1)を得た。
【0155】
<実施例25>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(2)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(2)を得た。
【0156】
<実施例26>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(3)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(3)を得た。
【0157】
<実施例27>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(4)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(4)を得た。
【0158】
<実施例28>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(5)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(5)を得た。
【0159】
<実施例29>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(6)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(6)を得た。
【0160】
<実施例30>
「蒸解助剤(1)0.6g」を「蒸解助剤(2)3×10−4g」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(7)を得た。
【0161】
<実施例31>
「蒸解助剤(1)0.6g」を「蒸解助剤(2)3×10−3g」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(8)を得た。
【0162】
<実施例32>
「蒸解助剤(1)0.6g」を「蒸解助剤(2)3×10−2g」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(9)を得た。
【0163】
<実施例33>
「蒸解助剤(1)0.6g」を「蒸解助剤(2)3.0g」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(10)を得た。
【0164】
<実施例34>
「蒸解助剤(1)0.6g」を「蒸解助剤(2)6.0g」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(11)を得た。
【0165】
<実施例35>
「蒸解助剤(1)0.6g」を「蒸解助剤(23)1.2g」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(12)を得た。
【0166】
<実施例36>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(7)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(13)を得た。
【0167】
<実施例37>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(8)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(14)を得た。
【0168】
<実施例38>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(9)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(15)を得た。
【0169】
<実施例39>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(10)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(16)を得た。
【0170】
<実施例40>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(11)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(17)を得た。
【0171】
<実施例41>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(12)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(18)を得た。
【0172】
<実施例42>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(13)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(19)を得た。
【0173】
<実施例43>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(14)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(20)を得た。
【0174】
<実施例44>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(15)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(21)を得た。
【0175】
<実施例45>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(16)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(22)を得た。
【0176】
<実施例46>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(17)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(23)を得た。
【0177】
<実施例47>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(18)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(24)を得た。
【0178】
<実施例48>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(19)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(25)を得た。
【0179】
<実施例49>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(20)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(26)を得た。
【0180】
<実施例50>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(21)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(27)を得た。
【0181】
<実施例51>
「蒸解助剤(1)」を「蒸解助剤(22)」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(28)を得た。
【0182】
<実施例52>
「蒸解助剤(1)0.6g」を「蒸解助剤(22)0.6g及びキノン(9,10−ジヒドロキシアントラセン;アントラキノンをハイドロサルファイトで還元して調製した。)(G1)0.15g」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(29)を得た。
【0183】
<比較例1>
「蒸解助剤(1)」を用いなかったこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(H1)を得た。
【0184】
<比較例2>
「蒸解助剤(1)0.6g」を「水溶性高分子(B2)0.6g及びノニオン性界面活性剤(C12)0.6g」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(H2)を得た。
【0185】
<比較例3>
「蒸解助剤(1)0.6g」を「キノン(G1)0.15g」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(H3)を得た。
【0186】
<比較例4>
「蒸解助剤(1)0.6g」を「ノニオン性界面活性剤(C12)0.6g及びキノン(G1)0.15g」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(H4)を得た。
【0187】
<比較例5>
「蒸解助剤(1)0.6g」を「ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム{花王株式会社製、カオーアキポRLM−100NV、24%水溶液}1.3g」に変更したこと以外、実施例24と同様にして、未晒パルプ(H5)を得た。
【0188】
実施例及び比較例で得た未晒パルプ(1)〜(29)及び(H1)〜(H5)について、カッパー価、収率、比引裂強度、比破裂強度、白色度及びスケール付着量を次のようにして評価して、評価結果を次表に示した。
【0189】
<カッパー価>
JIS P8211:1998に準拠して測定した。
【0190】
<収率(%)>
蒸解前の広葉樹混合木材チップの絶乾重量(s1)と、蒸解後パルプの絶乾重量(s2)とから、次式から得られる値を収率(%)とした。

(収率)=(s2)×100/(s1)
【0191】
<比引裂強度(mN・m/g)>
JIS P8116:2000に準拠して測定した。
【0192】
<比破裂強度(kPa・m/g)>
JIS P8112−1994に準拠して測定した。
【0193】
<白色度(%)>
JIS P8212:1998に準拠して測定した。
【0194】
<スケール付着量(mg)>
蒸解後、オートクレーブから蒸解パルプ及び蒸解液を取り出し、オートクレーブの内部を100mLの水で5回水洗し、循風乾燥機により、105℃で2時間乾燥した。その後、オートクレーブ内に5%塩酸195mLを入れて、24時間放置した後、この塩酸を300mLナスフラスコに移し、ロータリーエバポレーター(93kPa、95℃)を用いて、10mLまで濃縮させて、濃縮液を得た。ついで、この濃縮液を重量既知の磁製るつぼに移し、順風乾燥機により、105℃で2時間で乾固させ、電気炉で900℃、2時間加熱した後、室温(約25℃)まで冷却し、磁製るつぼを計量し、この重量から空のるつぼの重量を差し引いた値を求めて、この値をスケールの付着量とした。
【0195】
【表1】


【0196】
【表2】

【0197】
本発明の蒸解助剤(実施例1〜22)を用いると、比較例の蒸解助剤に比べて、カッパー価を大きく低減でき、パルプ収率向上及びパルプ品質(白色度、比引裂強度及び比破裂強度)を大きく向上できた。
また、本発明の蒸解助剤を用いると、パルプ製造工程で操業上の問題となるスケールの発生を大きく抑えることができた。
さらに、本発明の蒸解助剤を用いて得たパルプの白色度が高いため、蒸解工程後の漂白工程で使用される漂白剤の使用量を大幅に削減できることが示唆される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸(A)及び/又はこの塩を含有してなることを特徴とするリグノセルロース物質蒸解用蒸解助剤。
【請求項2】
有機酸(A)が、アミノカルボン酸(A1)及び/又はオキシカルボン酸(A2)である請求項1に記載の蒸解助剤。
【請求項3】
さらに、溶解度パラメーターが14〜24の水溶性高分子(B)及び/又はHLBが6〜18の界面活性剤(C)を含有する請求項1又は2に記載の蒸解助剤。
【請求項4】
界面活性剤(C)が、ノニオン性界面活性剤(C1);スルホ基、スルホオキシ基又はホスホノ基の少なくとも1種を有するアニオン性界面活性剤(C2);並びに両性界面活性剤(C3)からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の蒸解助剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のリグノセルロース物質蒸解用蒸解助剤の存在下で、リグノセルロース物質をアルカリ蒸解又は亜硫酸塩蒸解して、パルプを得る工程を含むことを特徴とするパルプの製造方法。
【請求項6】
リグノセルロース物質蒸解用蒸解助剤の使用量が、リグノセルロース物質の絶乾重量に基づいた有機酸(A)の量が10−4〜4重量%となる量である請求項5に記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−185413(P2009−185413A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27100(P2008−27100)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】