説明

リコンビナーゼポリメラーゼ増幅

【課題】Zarling法の不十分さを克服する改善されたリコンビナーゼ依存性のDNA増幅方法を提供すること。
【解決手段】RPAと称されるDNA増幅方法。ネスティドRPA増幅のプロセス。二本鎖標的分子のDNA増幅のRPAプロセス。RPAを使用して遺伝子型を検出する方法。これらの方法は、dsDNAの指数関数的増幅を達成するために設計されている。これらの方法は、動的なRecA/DNAフィラメントの存在下で、標的核酸中の標的化可能配列の迅速な再生を可能にすることによって、これを達成する。さらに、1つ以上の方法は、リーディング鎖およびラギング鎖の合成を組み合わせて、同時に2つの二本鎖産物を生成することによって、標的核酸の両端からの、同調した複製の開始についての要件を排除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、U.S.S.N.60/358,563(2002年2月21日出願)に対する優先権の利益を主張する。U.S.S.N.60/358,563は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
本明細書を通して、種々の特許、公開特許出願および科学参考文献が、当該分野の水準および内容を記載するために、引用される。これらの開示は、その全体が、本明細書中で参考として援用される。
【0003】
DNAを増幅する能力は、現代の生物学的研究および医学的研究の中心にある。なぜなら、ほとんどの分子生物学的技術は、アッセイの感度を増加させるため、またはさらなる処理のために十分な材料を調製するために、多くの同一の分子を含むサンプルに依存するからである。種々の核酸増幅技術には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)があり、これは、短い核酸配列を増幅する際のその感度および効率に起因して、最も一般的である。
【0004】
PCRは、大いに有用であるが、これはまた、多数の方法で限定されている。PCRの第一の制限は、高温での熱融解(変性)、その後のハイブリダイゼーションおよび低下した温度での伸長の、複数のサイクルに依存することである。効率を最大化しそしてノイズを最小化するために、複数の反応の複雑な温度制御が必要とされる。このことは、外来物質でできた、サーモサイクラーにより制御可能な迅速な加熱/冷却ブロック(例えば、金メッキした銀ブロック)、または温度制御された領域間でサンプルを移動させるためのロボット機構の使用を必要とする。生理学的塩条件下でDNAを融解するのに必要な高温に起因して、PCR技術は、サイクル毎の新たなポリメラーゼの添加または熱安定性ポリメラーゼの使用のいずれかを必要とする。新たなポリメラーゼを添加するアプローチは、自動化されておらず、従って、手間がかかりかつ誤ち(例えば、混入、落ちたチューブ、表示間違い)を導きやすい。さらに、酵素を添加する必要性および各反応を混合する必要性は、個々に、酵素添加PCR方法の適用が小規模に限定された、重大な欠点を示す。
【0005】
新たなポリメラーゼの添加を含む方法と比較して、PCRにおける熱安定性ポリメラーゼの使用は、最も広く実施されている。このアプローチは、熱安定性ポリメラーゼが限定された数の生物において見出され、そして好熱生物によって使用される複製機構があまり理解されていないという事実に苦しむ。熱安定性ポリメラーゼの利用可能なレパートリーは、DNA修復および/またはラギング鎖合成に関与する単一のポリペプチドポリメラーゼ酵素に限定される。DNA修復および/またはラギング鎖ポリメラーゼは、乏しい前進性(processivity)(分配型合成(distributive synthesis))を示すので、DNA増幅についての選択肢が狭い。一部、修復および/またはラギング鎖ポリメラーゼ(例えば、Taq、Pfu、Ventポリメラーゼ)を使用することの結果として、そして熱融解後の阻害的な核酸の二次構造または三次構造の形成に起因して、現在のPCRプロトコルは、数千塩基対よりも長い配列を容易に増幅しない。より長いテンプレートの信頼性のある合成(および増幅)は、ポリメラーゼおよび補助酵素複合体(集合的に、かなり高いレベルの前進性、鎖置換、および二次構造分解を示す)、ならびに阻害的な高次核酸構造(熱変性したDNAを冷却する際に形成され得る)の形成の制限に依存する。
【0006】
PCRの第二の制限は、これが、水性環境中の、オリゴヌクレオチド(PCRプライマー)と変性したテンプレートDNA(すなわち、増幅されるべきDNA)との間の溶液ハイブリダイゼーションに依存することである。効率的にするために、PCR反応は、短時間で実施される。なぜなら、熱安定性ポリメラーゼは、PCR温度において活性が迅速に低下するからである。さらに、迅速な転回に重要な特徴である、短時間での効率的なハイブリダイゼーションについて、高濃度のオリゴヌクレオチドを有する環境中でPCRを実施することが必要である。高いオリゴヌクレオチド濃度はまた、溶液中になお存在する熱変性した相補鎖と競合して、オリゴヌクレオチドとの標的配列の迅速な相互作用を確実にする。高いオリゴヌクレオチドプライマー濃度は、標的配列のコピー数が低く、かつDNA分子の複雑な混合物中に存在する場合に特に、問題を引き起こし得る。例えば、1つの遺伝子座における遺伝子多型を決定するための、ゲノムのPCRの場合がそれである。
【0007】
高いオリゴヌクレオチド濃度を使用する1つの問題は、このことが、複雑なDNA混合物中の部分的にのみ一致した配列を誤って開始する程度を増強することである。誤った開始とは、プライマー配列が、テンプレート核酸と完全には相補的でない(これは、核酸の非特異的増幅を生じ得る)場合でさえの、PCRにおけるテンプレートDNAへのプライマーのハイブリダイゼーションをいう。誤った開始に起因するノイズは、オリゴヌクレオチド濃度および総出発DNAの複雑さと共に増大する。さらに、誤った開始の可能性は、標的配列のコピー数の減少と共に増大する。誤った開始についての条件が好都合な場合(すなわち、高いオリゴヌクレオチド濃度、高い複雑性、低いコピー数)、誤って増幅された配列が、優勢な反応産物となり得る。結果として、過剰な、誤って開始されたバックグラウンドなしに、サンプルDNAから標的配列を清浄に増幅するための、条件およびオリゴヌクレオチドを同定することは、困難であり得る。従って、PCRを使用することのさらなる欠点は、複雑な配列混合物から稀な標的DNAを清浄に増幅する際の成功が限定されることである。
【0008】
特異性の問題およびPCRが被る温度融解問題の1つの解決は、細菌RecAタンパク質、またはその原核生物および真核生物の関連物の生物学的特性に依存する方法を使用することである。これらのタンパク質は、一本鎖DNA(ssDNA)を覆ってフィラメントを形成し、次いで、配列相同性の領域について二本鎖DNA(dsDNA)を走査する。相同配列が位置づけられると、核タンパク質フィラメント鎖は、dsDNAに侵入して、短いハイブリッドおよびDループとして公知の置換鎖バブルを生じる。Dループ中のフィラメント鎖の遊離3’末端は、新たな相補鎖を合成するために、DNAポリメラーゼによって伸長され得る。相補鎖は、伸長するにつれて、元の対合鎖を置換する。PCRにおいて使用されるのと類似の様式でオリゴヌクレオチドの対を利用することによって、類似の様式ではあるが熱溶解(熱サイクリング)を必要とせずに、標的DNA配列を増幅することが可能であるはずである。このことは、PCRにおいて以前には使用不能であった熱不安定性ポリメラーゼの使用を可能にし、そしてハイブリダイゼーションの代わりにテンプレート走査および鎖侵入によって、信頼性および感度を増大させるという、両方の利点を有する。
【0009】
核酸のインビトロ増幅のためのRecAおよびそのホモログの使用は、以前に記載されているが(特許文献1(Zarlingら)(本明細書中で「Zarling」と称する))、これらの方法および結果は、限定されている。Zarlingの方法は、決定的な欠点を有し、二本鎖DNAの指数関数的増幅を達成する能力が限定されている。Zarlingの方法が指数関数的増幅を達成できないことは、ATPではなくATPγSを使用するその仕様に起因し得る。Zarlingの方法は、RecA核タンパク質フィラメントの構築においてATPの代わりにATPγSの使用を主張する。なぜなら、これは、より安定なRecA/ssDNAフィラメント構造を生じるからである。通常、フィラメントは、5’から3’の方向で構築され、そしてRecAがATPを加水分解するのと同時に、同じ5’から3’の方向で解体する。このプロセスは、構築および解体が同時に生じ、そして構築されたフィラメントの量が平衡している点で、動的である。加水分解不能なATPアナログであるATPγSが使用される場合、ATPγSの加水分解およびフィラメントの5’から3’への解体は、阻害される。RecA/ATPγSフィラメントの高い安定性は、鎖交換の前および後の両方で、標的化方法(すなわち、Zarling法)において有用である一方で、DNA増幅について有害かつ非現実的である。
【0010】
Zarling法において、鎖侵入に関与するRecAタンパク質は、鎖交換後に、交換された物質の二本鎖部分と会合したままである。この相互作用は、新たに形成された二重鎖がRecAの高親和性部位に結合することに起因して生じる。置換された鎖は、別の一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)(例えば、E.coli SSB)に結合しない限り、異なる低い親和性部位を占める。ATPが交換構造を生成するために利用される場合、5’から3’への自発的解体が生じ得るが、この交換複合体は、完全に安定であり得、そしてATP依存性の解体を刺激するために、さらなる因子を必要とし得る。自発的であるか刺激されるかに関わらず、ATPγSの存在下で、RecAフィラメントの5’から3’への解体は阻害される(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。これらのRecA/dsDNA複合体は、正確に、侵入および合成の引き続くラウンドを開始するために使用されるRecA/ssDNAプライマー複合体によって標的化される部位である。RecAの結合の際に、dsDNAは、もはやRecA/ssDNAプライマー複合体によって侵入され得ず、従って、この点からは増幅不能である。これらのテンプレートからのさらなる合成は、テンプレートの他の末端(RecAから離れている)で開始される場合に生じ得、そしてこれは、結合したRecAの置換を最終的に導き得る。しかし、多くのポリメラーゼがこの様式でRecAを置換し得るか否かは、不明である。さらに、合成ラウンドの開始部位は、ここで、代わりに「ブロック」される。このような状況において、増幅は、時間に関して線形なだけであり、そして一本鎖DNA増幅産物を優勢に生じる。従って、記載されたZarling法は、せいぜい、各テンプレートから少量のssDNAコピーだけをおそらく生じる。さらに、Zarling法によって提供される線形増幅は、SSBの存在下でのみ生じる。なぜなら、この置換鎖は、RecA上の第二の相互作用部位に結合し続け、そして一本鎖DNAが放出されないからである(非特許文献4)。このことは、おそらく、Zarling法が、SSBを含んだ場合に、より速く移動するさらなるフラグメントを観察した理由を説明する。これらのさらなるフラグメントは、置換された一本鎖フラグメントである可能性が最も高かった。従って、Zarling法において、一本鎖DNAの線形増幅のみが生じる。従って、改善されたリコンビナーゼ依存性のDNA増幅方法についての必要性が当該分野に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,223,414号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Paulus,B.F.およびBryant,F.R.,Biochemistry(1997)36,7832−8
【非特許文献2】Rosselli,W.およびStasiak,A.,J Mol Biol(1990)216,335−52
【非特許文献3】Shan,Q.ら、J Mol Biol(1997)265,519−40
【非特許文献4】Mazin,A.V.およびKowalczykowski,S.C.,Embo J(1998)17,1161−8
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、DNAの熱融解または熱安定性成分についての任意の要件を回避する、2つの新たな増幅ストラテジーを利用する。これらのストラテジーはまた、Zarling法の不十分さを克服する。Zarlingストラテジーのように、これらの方法は、細菌RecAタンパク質、またはその原核生物および真核生物の関連物の生物学的特性に依存する。しかし、Zarling法とは対照的に、これらの方法は、dsDNAの指数関数的増幅を達成するために設計されている。これらの方法は、動的なRecA/DNAフィラメントの存在下で、標的核酸中の標的化可能配列の迅速な再生を可能にすることによって、これを達成する。さらに、1つ以上の方法は、リーディング鎖およびラギング鎖の合成を組み合わせて、同時に2つの二本鎖産物を生成することによって、標的核酸の両端からの、同調した複製の開始についての要件を排除する。
【0014】
(発明の簡単な説明)
本発明は、RPAと称されるDNA増幅方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する。第一に、第一の核酸プライマーおよび第二の核酸プライマーとリコンビナーゼ因子とを接触させて、第一の核タンパク質プライマーおよび第二の核タンパク質プライマーを形成する。第二に、この第一の核タンパク質プライマーおよび第二の核タンパク質プライマーを、二本鎖標的配列に接触させて、第一鎖の第一の部分において第一の二本鎖構造を形成し、そして該二鎖の第二の部分にて第二の二本鎖構造を形成し、その結果、この第一の核酸プライマーおよび第二の核酸プライマーの3’末端は、所定のテンプレートDNA分子上で互いに向かい合う。第三に、この第一の核タンパク質プライマーおよび第二の核タンパク質プライマーの3’末端を、DNAポリメラーゼによって伸長させて、第一の二本鎖核酸および第二の二本鎖核酸、ならびに第一の核酸置換鎖および第二の核酸置換鎖を生成する。最後に、所望の程度の増幅が達成されるまで、第二の工程および第三の工程を繰り返す。
【0015】
本発明はまた、ネスティド(nested)RPA方法を提供する。ネスティドRPAにおいて、核酸の第一の領域は、RPAによって増幅されて、第一の増幅領域を形成する。次いで、完全に第一の増幅領域内にある核酸の第二の領域は、RPAを使用して増幅されて、第二の増幅領域を形成する。このプロセスは、必要に応じて繰り返され得る。例えば、核酸の第三の領域(これは、完全に第二の領域内にある)は、RPAによって、第二の増幅領域から増幅され得る。上記で考察したRPAの1回、2回および3回のラウンドに加えて、本発明は、少なくとも4回、そして好ましくは少なくとも5回の、ネスティドRPAのラウンドもまた、企図する。
【0016】
本発明はまた、RPAを使用して遺伝子型を検出する方法を提供する。この方法は、遺伝子型決定、正常状態もしくは疾患状態、素因または疾患状態の素因の欠如の検出のために、有用である。さらに、RPAは、ゲノム(例えば、病原体のゲノム)の存在を検出するために使用され得る。この用途において、この方法は、診断および検出のために有用である。
・本発明はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1)
二本鎖標的配列のDNA増幅のRPAプロセスであって、当該標的配列は、DNAの第一鎖および第二鎖を含み、当該プロセスは、以下の工程:
(a)第一の核酸プライマーおよび第二の核酸プライマーとリコンビナーゼ因子とを接触させて、第一の核タンパク質プライマーおよび第二の核タンパク質プライマーを形成する工程;
(b)当該第一の核タンパク質プライマーおよび第二の核タンパク質プライマーを、当該二本鎖標的配列に接触させ、それによって、当該第一鎖の第一の部分において第一の二本鎖構造を形成し、そして当該第二鎖の第二の部分にて第二の二本鎖構造を形成し、その結果、当該第一の核酸プライマーの3’末端および第二の核酸プライマーの3’末端は、同じテンプレート核酸分子上で互いに向かい合う、工程;
(c)当該第一の核タンパク質プライマーの3’末端および第二の核タンパク質プライマーの3’末端を、1つ以上のポリメラーゼおよびdNTPを用いて伸長させて、第一の二本鎖核酸および第二の二本鎖核酸、ならびに第一の核酸置換鎖および第二の核酸置換鎖を生成する、工程、
(d)所望の程度の増幅が達成されるまで、(b)および(c)を繰り返して、当該反応を継続する工程、
を包含する、プロセス。
・(項目2)
上記工程(C)において、上記核酸の置換鎖は、同時RPA反応によって増幅される、項目1に記載のプロセス。
・(項目3)
上記核酸の置換鎖が、以下:
(a)上記第一の核タンパク質プライマーまたは第二の核タンパク質プライマーを、当該置換鎖と接触させる工程;および
(b)当該第一の核タンパク質プライマーまたは第二の核タンパク質プライマーを、ポリメラーゼおよびdNTPを用いて伸長させる工程、
によって増幅される、項目2に記載のプロセス。
・(項目4)
上記第一の置換鎖および第二の置換鎖が、互いに対して少なくとも部分的に相補的であり、かつハイブリダイズして、娘二本鎖核酸を形成し得、当該娘二本鎖核酸は、引き続く工程(b)および(c)において、二本鎖テンプレート核酸として作用し得る、項目1に記載のプロセス。
・(項目5)
上記第一の置換鎖および第二の置換鎖が、上記第一のプライマーまたは第二のプライマーに対して少なくとも部分的に相補的であり、かつ当該第一のプライマーまたは第二のプライマーにハイブリダイズし得る、項目1に記載のプロセス。
・(項目6)
上記核酸プライマーが、DNA、RNA、PNAまたはそれらの組み合わせである、項目1に記載のプロセス。
・(項目7)
上記核酸プライマーの各々が、少なくとも1つの一本鎖3’領域を有する、項目1に記載のプロセス。
・(項目8)
少なくとも1つのプライマーが、部分的に一本鎖かつ部分的に二本鎖であり、ここで、当該プライマーは、特異的3’プライマー配列を有するより長い侵入鎖、および当該より長い侵入鎖の5’末端に相補的なより短い非侵入鎖から構成される、項目1に記載のプロセス。
・(項目9)
上記第一の核酸プライマーが、第一の非侵入鎖を含み、そして上記第二の核酸プライマーが、第二の非侵入鎖を含み、そして当該第一の非侵入鎖および第二の非侵入鎖が、互いに相補的である、項目8に記載のプロセス。
・(項目10)
上記侵入鎖、上記非侵入鎖、または当該侵入鎖および当該非侵入鎖の両方が、検出可能な部分で標識されている、項目9に記載のプロセス。
・(項目11)
上記検出可能な部分が、蛍光色素、酵素、蛍光クエンチャー、酵素インヒビター、放射性標識およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目10に記載のプロセス。
・(項目12)
上記侵入鎖および上記非侵入鎖の両方が標識され、当該侵入鎖は、第一の蛍光色素または第一の酵素で標識されており、そして当該非侵入鎖は、第二の蛍光色素、第二の酵素、蛍光クエンチャーまたは酵素インヒビターで標識されている、項目10に記載のプロセス。
・(項目13)
上記侵入鎖および上記非侵入鎖の両方が標識され、当該非侵入鎖は、第一の蛍光色素または第一の酵素で標識されており、そして当該侵入鎖は、第二の蛍光色素、第二の酵素、蛍光クエンチャーまたは酵素インヒビターで標識されている、項目10に記載のプロセス。
・(項目14)
上記核酸プライマーの一方または両方が、一本鎖プライマーである、項目1に記載のプロセス。
・(項目15)
上記一本鎖プライマーが、蛍光色素、酵素、蛍光クエンチャー、酵素インヒビター、放射性標識およびこれらの組み合わせからなる群より選択される検出可能な部分で標識されている、項目14に記載のプロセス。
・(項目16)
工程(d)が、上記非侵入鎖の置換を引き起こす、項目1に記載のプロセス。
・(項目17)
上記侵入鎖および上記非侵入鎖が標識され、当該侵入鎖と当該非侵入鎖との分離が検出される、項目9に記載のプロセス。
・(項目18)
部分的に二本鎖の侵入オリゴヌクレオチドの一方の放出された鎖が、他方の二本鎖侵入オリゴヌクレオチドの放出された鎖に対して相補的な配列である、項目1に記載のプロセス。
・(項目19)
上記放出されたオリゴヌクレオチドが、一本鎖標的テンプレートに対して相補的であり、かつ当該一本鎖標的テンプレートにハイブリダイズし、そして当該一本鎖標的テンプレートの3’末端からのDNA合成を開始する、項目18に記載のプロセス。
・(項目20)
上記リコンビナーゼ因子が、RecA、RadA、RadB、Rad51、そのホモログ、その機能的アナログおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載のプロセス。
・(項目21)
上記ホモログが、E.coli RecAの193〜212残基である、項目20に記載のプロセス。
・(項目22)
上記ホモログが、RecA、RadAまたはRadBの古細菌ホモログである、項目20に記載のプロセス。
・(項目23)
上記リコンビナーゼ因子が、温度感受性であり、ここで、当該温度感受性リコンビナーゼ因子は、許容温度で鎖侵入活性を有し、そして非許容温度で鎖侵入活性を有さない、項目1に記載のプロセス。
・(項目24)
上記RPAプロセスが、ATPまたはATPアナログの存在下で実施される、項目1に記載のプロセス。
・(項目25)
RecO、RecRおよびRecFの存在下で実施される、項目1に記載のプロセス。
・(項目26)
上記ATPアナログが、dATP、ddATP、ATPγSおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目25に記載のプロセス。
・(項目27)
上記1つ以上のポリメラーゼが、原核生物ポリメラーゼまたは真核生物ポリメラーゼである、項目1に記載のRPAプロセス。
・(項目28)
上記原核生物ポリメラーゼが、E.coli pol I、E.coli pol II、E.coli pol III、E.coli pol IV、E.coli pol Vまたはこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目27に記載のRPAプロセス。
・(項目29)
上記真核生物ポリメラーゼが、pol−α、pol−β、pol−δ、pol−εおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、真核生物の多タンパク質ポリメラーゼ複合体である、項目27に記載のRPAプロセス。
・(項目30)
上記所望の程度の増幅が、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、または少なくとも1,000,000倍である、項目1に記載のRPAプロセス。
・(項目31)
上記第一の部分および第二の部分が、間に入る標的DNA配列にわたる、項目1に記載のRPAプロセス。
・(項目32)
上記間に入る標的DNA配列が、少なくとも1メガベースである、項目31に記載のRPAプロセス。
・(項目33)
1つ以上の補助成分の存在下で実施される、項目1に記載のRPAプロセス。
・(項目34)
上記1つ以上の補助成分が、E.coli由来である、項目33に記載のRPAプロセス。
・(項目35)
上記補助成分が、一本鎖結合タンパク質、ヘリカーゼ、トポイソメラーゼ、レソルバーゼおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目34に記載のRPAプロセス。
・(項目36)
上記補助成分が、RecF、RecO、RecR、一本鎖結合タンパク質、RuvA、RuvB、RuvC、RecG、PriA、PriB DnaT、DnaB、DnaC、DnaG、E.coli β−ダイマースライディングクランプ、DnaXクランプローダー、ポリメラーゼコア複合体、DNAリガーゼである、項目34に記載のRPAプロセス。
・(項目37)
上記補助部分が、E.coli β−ダイマースライディングクランプ、真核生物PCNAスライディングクランプ、T4スライディングクランプgp45およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるスライディングクランプである、項目34に記載のRPAプロセス。
・(項目38)
上記補助成分が、β−クランプ、DnaXクランプローダーおよびポリメラーゼコア複合体からなる、DNAポリメラーゼIIIホロ酵素複合体である、項目34に記載のプロセス。
・(項目39)
上記補助成分が、一本鎖結合(SSB)タンパク質、スライディングクランプ、ヘリカーゼ、トポイソメラーゼ、レソルバーゼおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目34に記載のプロセス。
・(項目40)
上記一本鎖結合(SSB)タンパク質が、E.coli由来である、項目39に記載のプロセス。
・(項目41)
上記スライディングクランプが、E.coli β−ダイマースライディングクランプ、真核生物PCNAスライディングクランプまたはT4スライディングクランプ(gp45)である、項目40に記載のプロセス。
・(項目42)
上記補助部分が、RuvA、RuvB、RuvCおよびRecGである、項目34に記載のプロセス。
・(項目43)
上記プロセスが、RecA/ssDNA核タンパク質フィラメントを安定化する因子の存在下で実施される、項目1に記載のプロセス。
・(項目44)
上記因子が、RecR、RecO、RecFまたはこれらの組み合わせである、項目43に記載のプロセス。
・(項目45)
上記補助部分が、PriA、PriB、DnaT、DnaB、DnaCおよびDnaGからなるプライモソーム複合体である、項目34に記載のプロセス。
・(項目46)
上記プロセスが、20℃と50℃との間で実施される、項目1に記載のRPAプロセス。
・(項目47)
上記プロセスが、20℃と40℃との間で実施される、項目1に記載のRPAプロセス。
・(項目48)
上記プロセスが、20℃と30℃との間で実施される、項目1に記載のRPAプロセス。
・(項目49)
上記プロセスが、上記テンプレート核酸の温度誘導性の溶融なしに実施される、項目1に記載のRPAプロセス。
・(項目50)
上記2つの核タンパク質プライマーが、各々、少なくとも1000:1のプライマー:二本鎖核酸標的のモル比で存在する、項目1に記載のRPAプロセス。
・(項目51)
上記工程(b)および(c)が、少なくとも1回繰り返される、項目1に記載のプロセス。
・(項目52)
上記工程(b)および(c)が、少なくとも5回繰り返される、項目1に記載のプロセス。
・(項目53)
少なくとも1つのプライマーが、増幅されるべき特異的配列と相補的でない1つ以上のヌクレオチドを含む、項目1に記載のRPAプロセス。
・(項目54)
少なくとも1つのプライマーが、その5’末端で上記標的配列と相補的でない1つ以上のヌクレオチドを含む、項目1に記載のRPAプロセス。
・(項目55)
上記少なくとも1つのヌクレオチドが、制限エンドヌクレアーゼ認識部位の配列を含むオリゴヌクレオチドである、項目54に記載のRPAプロセス。
・(項目56)
上記増幅された核酸が、遺伝病に関連する少なくとも1つの特異的変異を含む、項目1に記載のRPAプロセス。
・(項目57)
上記増幅された核酸配列が、病原性生物、癌遺伝子、活性化癌遺伝子または抑制された癌遺伝子中に含まれる、項目1に記載のRPAプロセス。
・(項目58)
少なくとも1つのプライマーが、遺伝病に関連する配列に対して相補的である、項目1に記載のRPAプロセス。
・(項目59)
少なくとも1つのプライマーが、病原性生物、癌遺伝子、活性化癌遺伝子または抑制された癌遺伝子中の核酸配列に対して相補的である、項目1に記載のRPAプロセス。
・(項目60)
ネスティドRPA増幅のプロセスであって、当該プロセスは、以下の工程:
(a)第一のプライマーおよび第二のプライマーを用いて項目1に記載のRPAプロセスを使用してDNAの領域を増幅して、第一の増幅産物を生成する工程;
(b)第三および第四のプライマーを用いて項目1に記載のRPAプロセスを使用して当該増幅産物を増幅して、第二の増幅産物を生成する工程であって、ここで、当該第二の増幅産物は、当該第一の増幅産物内に含まれる、より小さい配列である、工程、
を包含する、プロセス。
・(項目61)
上記第一のプライマー、上記第二のプライマー、上記第三のプライマーおよび上記第四のプライマーが、各々異なる、項目60に記載のプロセス。
・(項目62)
上記第一のプライマーおよび上記第二のプライマーの一方が、上記第三のプライマーおよび第四のプライマーの一方と同一である、項目60に記載のプロセス。
・(項目63)
二本鎖標的分子のDNA増幅のRPAプロセスであって、当該プロセスは、以下の工程:
(a)リコンビナーゼ因子を、第一の核酸プライマーおよび第二の核酸プライマーと接触させて、第一の核タンパク質プライマーおよび第二の核タンパク質プライマーを形成する工程;
(b)当該第一の核タンパク質プライマーおよび第二の核タンパク質プライマーを、当該二本鎖標的配列に接触させ、それによって、当該標的分子の第一の部分において第一の二本鎖構造を形成し、そして当該標的分子の第二の部分にて第二の二本鎖構造を形成し、その結果、当該第一の核酸プライマーの3’末端および第二の核酸プライマーの3’末端は、同じテンプレート核酸分子上で互いに向かい合うようになる、工程;
(c)当該標的配列を、プライモソーム(primosome)構築(assembly)タンパク質およびクランプ(clamp)ローダー(loader)/ポリメラーゼIIIホロ酵素複合体と接触させて、当該標的分子の第一の部分にて複製フォークを形成し、そして当該標的分子の第二の部分にて第二の複製フォークを形成する、工程;
(d)当該標的分子を、DNAポリメラーゼIIIコア、DNAポリメラーゼI、プライマーゼ、ヘリカーゼおよびリガーゼに接触させて、リーディング鎖とラギング(lagging)鎖のDNA合成を組み合わせ、そして当該複製フォークを互いに対して移動させる、工程;
(f)所望の程度の増幅が達成されるまで、工程(b)、(c)および(d)の繰り返しによって当該反応を継続する、工程、
を包含する、プロセス。
・(項目64)
dNTPおよびrNTPの存在下で実施される、項目63に記載のプロセス。
・(項目65)
一本鎖DNA結合タンパク質の存在下で実施される、項目63に記載のプロセス。
・(項目66)
上記リコンビナーゼ因子が、RecAまたはその機能的ホモログである、項目63に記載のプロセス。
・(項目67)
上記プライモソーム構築タンパク質が、PriA、PriB、PriC、DnaT、DnaC、DnaB、DnaG、Pol IIIホロ酵素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目63に記載のプロセス。
・(項目68)
上記クランプローダーが、DnaXクランプローダー複合体である、項目63に記載のプロセス。
・(項目69)
上記DNAポリメラーゼIIIホロ酵素が、E.coliポリメラーゼIIIである、項目63に記載のプロセス。
・(項目70)
上記DNAポリメラーゼIが、E.coliポリメラーゼIである、項目68に記載のプロセス。
・(項目71)
上記プライマーゼが、E.coli DnaGプライマーゼである、項目68に記載のプロセス。
・(項目72)
上記ヘリカーゼが、E.coli DnaBヘリカーゼである、項目68に記載のプロセス。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、RecA/プライマーローディングの模式的図を示す。
【図2A】図2は、パネル(a)および(b)で示される、リーディング鎖リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(lsRPA)の連続工程の模式図を示す。
【図2B】図2は、パネル(a)および(b)で示される、リーディング鎖リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(lsRPA)の連続工程の模式図を示す。
【図3A】図3は、パネル(a)、(b)、(c)および(d)で示される、リーディング鎖およびラギング鎖のリコンビナーゼポリメラーゼ増幅の連続工程の模式図を示す。
【図3B】図3は、パネル(a)、(b)、(c)および(d)で示される、リーディング鎖およびラギング鎖のリコンビナーゼポリメラーゼ増幅の連続工程の模式図を示す。
【図3C】図3は、パネル(a)、(b)、(c)および(d)で示される、リーディング鎖およびラギング鎖のリコンビナーゼポリメラーゼ増幅の連続工程の模式図を示す。
【図3D】図3は、パネル(a)、(b)、(c)および(d)で示される、リーディング鎖およびラギング鎖のリコンビナーゼポリメラーゼ増幅の連続工程の模式図を示す。
【図4】図4は、ネスティドRPAのために選択されたネスティドプライマーの例を示す。
【図5】図5は、適切な二本鎖テンプレート核酸の例を示す。
【図6】図6は、パネル(a)および(b)において、標的核酸とのハイブリダイゼーションにおける、RPAプライマー対の種々の配向を示す。
【図7】図7パネル(a)、(b)および(c)は、進行中のRPA反応の模式的描写を示す。
【図8】図8は、(a)二本鎖プライマーの例(b)伸長後の二本鎖プライマーおよびプライマー対の第二のメンバーアニーリング後、(c)非侵入鎖が置換された、プライマー対の第二のメンバーの伸長後、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明は、標的核酸ポリマーの増幅のための方法である、リコンビナーゼ−ポリメラーゼ増幅(RPA)を提供する。RPAの1つの利点は、これが、二本鎖テンプレートの熱融解を必要とせずに実施され得、従って、高価なサーモサイクラーもまた排除するという点である。本発明は、RPAが標的核酸ポリマーの指数関数的増幅を可能にするように構成され得る、2つの関連するストラテジーを記載する。
【0019】
(リーディング鎖リコンビナーゼ−ポリメラーゼ増幅(lsRPA))
リーディング鎖リコンビナーゼ−ポリメラーゼ増幅(lsRPA)において、一本鎖または部分的に一本鎖の核酸プライマーが、Dループ構造を形成するリコンビナーゼ因子を使用して、相同な二本鎖または部分的に二本鎖の配列に標的化される。侵入一本鎖プライマー(これは、Dループの一部である)が、ポリメラーゼ合成反応を開始するために使用される。単一のプライマー種が、二本鎖侵入およびその後の合成の、複数のラウンドを通じて、標的核酸配列を増幅する。2つの対向するプライマーが使用される場合、フラグメント(標的配列)の増幅が達成され得る。lsRPAは、図1および2において簡潔に記載される。
【0020】
本発明の方法のいずれかにおいて増幅されるべき標的配列は、好ましくは、二本鎖DNAである。しかし、本発明の方法は、二本鎖DNA分子に限定されない。なぜなら、他の核酸分子(例えば、一本鎖DNAまたはRNA)は、公知の方法を使用して当業者によって、二本鎖DNAに転換され得るからである。適切な二本鎖標的DNAは、ゲノムDNAまたはcDNAであり得る。本発明のRPAは、標的核酸を、少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍、より好ましくは少なくとも1,000倍、なおより好ましくは少なくとも10,000倍、そして最も好ましくは少なくとも1,000,000倍、増幅し得る。
【0021】
標的配列は、リコンビナーゼ因子の助けにより増幅される。リコンビナーゼ因子は、一本鎖DNA(ssDNA)を覆ってフィラメントを形成し得る酵素であり、このフィラメントは、次いで、配列相同性の領域について二本鎖DNA(dsDNA)を走査し得る。相同配列が位置づけられると、核タンパク質フィラメント(リコンビナーゼ因子を含む)鎖は、dsDNAに侵入して、短いハイブリッドおよびDループとして公知の置換鎖バブルを生じる。適切なリコンビナーゼ因子としては、E.coli RecAタンパク質または任意の門由来の任意の相同なタンパク質もしくはタンパク質複合体が挙げられる。これらのRecAホモログは、この群の最初のメンバーが同定された後に、Rad51と一般に命名されている。他のリコンビナーゼ因子(例えば、RecTまたはRecO)が、RecAの代わりに利用され得る。リコンビナーゼ因子は、一般に、ATP、ATPγSまたは他のヌクレオシド三リン酸およびそれらのアナログの存在を必要とする。標的化部位の再生がDループにより刺激される合成のラウンドの直後に生じ得る反応環境において、リコンビナーゼ因子が使用されることが好ましい。このことは、片側合成を一方の端から他方の端へ振動させることによって引き起こされる、ssDNAの増幅の失速または不十分な線形増幅を回避する。
【0022】
天然に、上記リコンビナーゼ因子の任意の誘導体および機能的アナログもまた、それ自体、リコンビナーゼ因子として機能し得、そしてこれらの誘導体およびアナログもまた、本発明の実施形態として企図される。例えば、recA由来の小ペプチド(これは、recAのリコンビナーゼ特性のいくつかの局面を保持することが示されている)が使用され得る。このペプチドは、E.coli recAの残基193〜212を含み、そしてssオリゴの対合を媒介し得る(Oleg N.Voloshin,Lijang Wang,R.Daniel Camerini−Otero,Homologous DNA pairing Promoted by a 20−amino Acid Peptide Derived from RecA.Science Vol.272 10 May 1996)。
【0023】
ATPγSの使用は、安定なリコンビナーゼ因子/dsDNA複合体(これは、効率的な増幅と適合性でない可能性がある)の形成を生じるので、ATPならびにリコンビナーゼ因子/ssDNAプライマー複合体をロードおよび維持するための補助酵素を使用することが好ましい。あるいは、ATPγSの使用の制限は、ATPγSに結合したrecAを交換複合体から剥ぎ取り得る、さらなる反応成分の使用によって、克服され得る。この役割は、RuvA/RuvB複合体のようなヘリカーゼによって、果たされ得る。
【0024】
用語「核酸ポリマー」または「核酸」は、本記載において使用される場合、広く解釈され得、そしてDNAおよびRNA、ならびに他のハイブリダイズする核酸様分子(例えば、置換された骨格を有する分子(例えば、ペプチド核酸(PNA))、モルホリン骨格核酸)または改変された塩基および糖を有する分子)を包含し得る。
【0025】
好ましい実施形態において、RPAは、いくつかの補助酵素(これは、DNA合成の開始後に、リコンビナーゼ因子/dsDNA複合体の効率的な解体を促進し得る)を用いて実施される。これらの補助酵素としては、3’から5’への解体を刺激し得るもの、および5’から3’への解体を支持し得るものが挙げられる。
【0026】
補助酵素としては、3’から5’の方向でRecAを置換し得、そしてリコンビナーゼ因子/dsDNA複合体の3’から5’への解体を刺激し得るいくつかのポリメラーゼ(Phamら、2001)が挙げられる。これらのDNAポリメラーゼとしては、E.coli PolVおよび他種の相同ポリメラーゼが挙げられる。通常、E.coliの生活において、3’から5’の方向でのRecAの置換は、SSB、スライディングクランプ(sliding clamp)およびDNAポリメラーゼと協同して、SOS傷害標的化合成(SOS−lesion−targeted synthesis)の一部として生じる。E.coliにおけるこの活性に必須なポリメラーゼは、UmuC、DinB、Rad30およびRevlを含むポリメラーゼの最近発見されたスーパーファミリーのメンバーであるPolVであり、そのインビボでの機能は、DNA傷害(lesion)テンプレートをコピーすることである。RPAにとって重要な、インビトロでのRecAフィラメントの3’から5’への解体は、PolI単独、PolIII単独またはPolIV単独によっては、触媒され得ない。PolVのみが、SSBと協同して、測定可能な、ATP非依存的な3’から5’へのRecA/dsDNA解体活性を有する。実際、PolVは、ポリメラーゼの前に、3’から5’の方向で、RecAを推し進め、そしてDNAからRecAを除去する(Phamら、2001;Tangら、2000)。PolVまたは機能的ホモログを含めることによって、増幅効率を改善し得る。
【0027】
他の補助酵素としては、dsDNAからのRecAの解体を促進するために使用され得る、ヘリカーゼと称される酵素のクラスが挙げられる。これらは、5’から3’の方向および3’から5’の方向の両方での解体を促進する。ヘリカーゼは、インビボの組換えプロセスの必須な構成要素であり、そしてある場所から別の場所へと組換え中間体の分岐点を移動させ、鎖を分離し、そしてDNAに結合した成分を解体およびリサイクルするように、機能する。RPAにおいて侵入/合成の第一ラウンドが生じた後、2つの新たなDNA二重鎖が、プライマーが合成のさらなるラウンドのために結合すべき部位上に結合したRecAの存在によって「印付け」される。このような状況において、dsDNAは、5’から3’の方向でのATP依存性の解離(限定的であり得る)またはいくつかの他の活性プロセスでの3’から5’の方向での解離のいずれかによって、活性に置換されるまで、RecA中の高親和性部位を占有する傾向がある。中間体からのRecAの解体を刺激するための理想的なヘリカーゼ複合体は、E.coliタンパク質のRuvAおよびRuvBからなる。RuvAB複合体は、分枝の移動を促進し、そしてRecAタンパク質を解離させて、RecAのリサイクルを可能にする(Adamsら、1994)。通常、RuvAB複合体は、組換え中間体(特にホリデイ接合部様構造)を標的化する。作用の際に、RuvAB複合体は、DNAを取り囲み、そしてATPにより駆動される転座において、DNAからRecAを押しやる(force)(CromieおよびLeach,2000;EgglestonおよびWest,2000)。このRecA解離活性は、ホリデイ接合部さえ有さない、RecAと結合したスーパーコイルdsDNAを使用して実証されている(Adamsら、PNAS 1994)。RuvAB複合体は、RecAに覆われたDNA内の分枝構造を認識し得る。RPA混合物へのRuvABの取り込みは、鎖の交換および置換後に、dsDNAからのRecAの解離を促進し、同じ部位からの複製されたテンプレートの新たな合成を可能にする。その上、RuvAB複合体は、RuvC(これは、ホリデイ接合部を最終的に切断および分解する)と協同して作用し得る。RPA反応混合物にRuvCを添加すると、侵入部位において形成される、ホリデイ接合部のような複雑な構造が分解され得る。RuvCによって提供されるようなレソルバーゼ活性は、標的化オリゴヌクレオチドが部分的に二本鎖である場合に、特に重要である。このような状況において、逆分枝移動は、ホリデイ接合部(これは、次いで、RuvABC複合体によって分解され得る)を生成して、清浄な分離された増幅産物を生成し得る。
【0028】
なお他の補助酵素としては、E.coli RecGタンパク質が挙げられる。RecGは、分枝構造の解体を刺激し得る。インビボで、このタンパク質は、リーディング鎖およびラギング鎖の両方を巻き戻して、複製フォークを戻して駆動することによって、DNA損傷部位にて複製フォークを逆転させるように機能して、4方向接合部(4−way junction)を生成する(Coxら、2000;DillinghamおよびKowalczykowski,2001;Singletonら、2001)。インビボで、このような接合部は、鎖スイッチングのための基質として機能して、傷害バイパスを可能にする。インビトロで、RecGは、Dループに結合し、そして逆分枝移動を駆動することによってDループ構造の減少を導く。RecGは、いずれかの側での二本鎖エレメントとの接合部を優先し、従って、一本鎖領域および二本鎖領域の両方で標的化部位に相同な、部分的に二本鎖の標的化オリゴヌクレオチドが理想的である。これは、逆分枝移動およびホリデイ接合部(これは、RuvABC複合体によって分解され得る)の形成を刺激する。インビボで、RecGとRuvABとは競合して、異なる組換え結果を生じ得る。なぜなら、分枝移動は、両方向で駆動されるからである(McGlynnおよびLloyd,1999;McGlynnら、2000)。両方の場合において、タンパク質は、RecAで覆われた接合部DNAを標的化し、そして能動的様式でそれを解体する。
【0029】
RPA反応混合物において有用な他の補助酵素は、ATPおよびSSBの存在下で、RecA核タンパク質フィラメントの連続的な生成を可能にするものである。適切な瞬間でのRecAの除去を可能にするために、RPA反応において、ATPγSではなくATPを使用することが好ましい。残念ながら、ATPを用いて形成されたRecA/ssDNAフィラメントは、5’から3’の方向で自発的に脱重合し、そしてここで必要に応じてSSBの存在下で、再重合は有意な速度で生じない。この問題の解決は、RecOタンパク質、RecRタンパク質、そしておそらくはRecFタンパク質の使用である。SSBおよびATPの存在下で、RecA/ssDNAフィラメントが解離する(Borkら、2001;Webbら、1995;Webbら、1997;Webbら、1999)。RecA/ssDNAがRecOタンパク質およびRecRタンパク質の存在下でインキュベートされる場合、この解離は生じない。実際、RecRタンパク質は、フィラメントと会合したままであり、そしてその構造を永久的に安定化する。ssDNAがSSBと結合している場合でさえ、RecRおよびRecOの存在下で、RecAのフィラメントは、置換SSBを再構築し得る。従って、必要に応じて、RecA/ssDNAフィラメントの完全性を維持するために、RecOおよびRecRの存在下でATPを使用することによって、ATPγSの使用を排除することが可能である。RecFタンパク質は、見かけ上反対の様式で、RecOおよびRecRの系と相互作用する。RecFは、インビトロでのフィラメント解体を駆動する傾向があるRecRと競合する。ssDNAのRecAでの覆いの程度を制限しつつ、3つ全ての成分が、侵入構造の生成を制御するためにインビボで一緒に機能する可能性がある。別の好ましい実施形態において、RecFは、インビボプロセスの動力学を繰り返すのに適切な濃度で、RPA反応に含まれる。さらに、RecFは、侵入が生じた後の、RecAで覆われた中間体の解離を促進し得る。
【0030】
記載されるように、ATPγSではなくATPの使用、ならびに/または置換ポリメラーゼおよびヘリカーゼ(例えば、RuvA/RuvB複合体)、RecO、RecRおよびRecFの使用は、標的化部位の連続的な再生を駆動することによって、二本鎖DNAの指数関数的増幅を可能にするはずである。しかし、この方法は、2つの対向する標的化部位で生じ得る、開始速度の差異に応答性であるままである。このような差異は、増幅効率の低下およびいくつかの一本鎖DNAの産生を導き得る。温度サイクリングは、いずれかの部位からの調和した合成を導くので、PCR方法は、これらの複雑さをほぼ回避する。別の実施形態において、上記PCR条件と類似の状況は、RecAの温度感受性(ts)変異体(これは、42℃で非機能的であるが、25℃〜37℃の範囲のより低い温度では機能する)を使用することによって、導入され得る(Alexseyevら、1996; Hicksonら、1981)。この場合、いずれかの末端からの合成は、許容温度に周期的に低下させ、次いで、変異体RecAタンパク質の機能については非許容性であるが、他の成分については許容性の温度まで反応の温度を上げることによって、同調され得る。反応温度のサイクリングと組み合わせてtsRecA変異体を用いてRPAを実施することによって、生成されるDNA分子数が制御され得る。これは、温度サイクリングを提供するためにいくつかの機構を必要とするが、この温度は、好熱菌由来のタンパク質の使用を必要とする温度よりは十分低い。実際、単純な化学物質ベースまたは携帯型低出力の温度サイクリングデバイスが、このような反応サイクルを制御するために十分である。
【0031】
他の全ての今日の核酸増幅方法と同様に、RPAは、テンプレート核酸分子のコピーを生成するために、ポリメラーゼを使用する。組み込みが、新たな合成の部位に隣接する二本鎖核酸の短い鎖の末端糖上の遊離の3’ヒドロキシル部分を必要とすることが、ほとんどの核酸ポリメラーゼに必要である。二本鎖核酸のこの鎖は、代表的には、短い相補鎖(プライマーと呼ぶ)(これは、ポリメラーゼ合成反応の開始部位として作用する)によって、テンプレート上で形成される。いくつかの場合、スルフヒドリルのような3’改変が、合成反応を開始するために利用され得る。テンプレートと塩基対合し、そしてポリメラーゼによって伸長されるプライマー核酸は、RNAまたはDNAであり得る。インビボのゲノムDNA複製の間に、RNAプライマー配列は、プライマーゼ酵素によって、テンプレートDNA上に新たに合成される。代表的に、インビトロの反応について、プライマーは、しばしば化学合成された、短い一本鎖DNA(または改変DNAもしくはRNA)として供給され、そしてオリゴヌクレオチドプライマーと通常いわれる。プライマーは、しばしば、特異的配列のものであるが、ランダムプライマーもまた使用され得る。プライマーは、その特異的塩基対合能によって、相補的配列に対して標的化される。オリゴヌクレオチドプライマーと標的核酸との間のハイブリッドの形成は、代表的に、自発的アニーリングを可能にする塩、pHおよび温度の条件下で、溶液中でこれら2つをインキュベートすることによって、形成される。
【0032】
PCRの場合、オリゴヌクレオチドプライマーは、通常、2つの主な理由のために大過剰である。第一に、高濃度は、迅速なアニーリングを駆動する。第二に、融解、アニーリングおよび伸長のラウンドを通じて反応が進行するにつれて、プライマーは消費され、そして限定されてくる。PCR標的化核酸は、しばしば、本来最初に二本鎖であり、そうでない場合、最初の合成サイクルの後に二本鎖になる。このような二本鎖分子は、ほとんどの原核生物および真核生物のタンパク質の触媒活性および安定性について適切な温度および溶媒条件では、新たなオリゴヌクレオチドにアニーリングできない。結果として、増幅サイクルを可能にするために、元のテンプレートおよび新たに合成された鎖は、アニーリングが再び生じる前に、最初に分離されなければならない。実際、これは、熱融解によって達成される。PCRについて、少なくとも80℃の温度が、100塩基対より長い長さのほとんどの二本鎖核酸分子の熱融解に必要である。ほとんどのPCRプロトコルにおいて、90℃〜100℃の温度が、DNAを融解するために適用される。このような温度は、まれな熱安定性酵素だけの使用を可能にする。これらのポリメラーゼは、代表的に、好熱原核生物由来である。
【0033】
RPAの利点は、熱融解なしでの二本鎖テンプレートからの伸長のために、遊離の3’−OHを有する二本鎖核酸の短い鎖の形成を可能にすることである。これは、E.coli由来のRecAタンパク質(または他の門由来のRecA関連物)を使用することによって達成される。 ATP、dATP、ddATP、UTP、ATPγSおよびおそらく他の型のヌクレオシド三リン酸ならびにそれらのアナログの存在下で、RecAは、一本鎖DNAの周りで核タンパク質フィラメントを形成する。次いで、このフィラメントは、二本鎖DNAを走査する。相同な配列が位置づけられると、RecAは、鎖侵入反応、および標的DNAの相同鎖とのオリゴヌクレオチドの対合を触媒する。元の対合鎖は、鎖侵入によって置換されて、この領域中に一本鎖のバブルを残す。
【0034】
RecAタンパク質は、市販の供給源から獲得され得る。あるいは、これは、標準的な手順(例えば、Coxら、1981;Kuramitsuら、1981)に従って精製され得る。RecAホモログは、以下を含む好熱生物から精製されている:Thermococcus kodakaraensis(Rashidら、2001)、Thermotoga maritima(Wetmurら、1994)、Aquifex pyrophilus(Wetmurら、1994)、Pyrococcus furiosus(Komoriら、2000)、Thermus aquaticus(Wetmurら、1994)、Pyrobaculum islandicum(Spiesら、2000)およびThermus thermophilus(KatoおよびKuramitsu,1993)。RecAはまた、他の原核生物(例えば、Salmonella typhimurium (PierreおよびPaoletti,1983)、Bacillus subtilis(LovettおよびRoberts,1985)、Streptococcus pneumoniae(SteffenおよびBryant,2000)、Bacteroides fragilis(Goodmanら、1987)、Proteus mirabilis(Westら、1983)、Rhizobium meliloti(Better およびHelinski,1983)、Pseudomonas aeruginosa(Kurumizakaら、1994))、真核生物(例えば、Saccharomyces cerevisiae(HeyerおよびKolodner,1989)、Ustilago maydis(BennettおよびHolloman、2001)、脊椎動物(例えば、ヒトRad51 (Baumannら、1997)およびXenopus laevis(Maeshimaら、1996)を含む)、ならびにブロッコリーを含む植物(Tissierら、1995))から、精製されている。
【0035】
記載を明確にするため、リーディング鎖リコンビナーゼ−ポリメラーゼ増幅方法(lsRPA)は、以下の4つの段階に分割され得る。
【0036】
1)配列標的化
RPAは、RecAまたは機能的ホモログで覆われた合成オリゴヌクレオチドを使用して配列を標的化することによって開始される。指数関数的増幅を可能にするために、2つのこのような合成オリゴヌクレオチドを、その遊離3’末端が互いに対して向き合うような様式で、使用した。これらのオリゴヌクレオチドおよびRecAタンパク質を含む核タンパク質フィラメントは、複雑なDNA中の標的を、迅速かつ特異的に同定する。一旦標的化されると、RecAタンパク質が鎖交換を触媒し、その結果、Dループ構造が形成される。効率的な増幅のための手順において、ATPγSではなくATPを使用することが必要であり得る。ATPが使用される場合、RecO分子、RecR分子および/またはRecF分子は、効率的な増幅に重要であることを立証し得る。
【0037】
2)DNA合成の開始
DNAポリメラーゼは、侵入オリゴヌクレオチドとテンプレートDNAとの間のハイブリッドを検出し、そしてこのハイブリッドに結合し、そしてハイブリッド中の露出した遊離3’−ヒドロキシルからDNA合成を開始する。この3’−ヒドロキシルの露出および引き続くDNA合成は、鎖交換によって形成された二本鎖ハイブリッドからの、RecAタンパク質の解体を必要とする可能性がある。この解体に達するために、侵入複合体からのRecAの自発的な解体を支持し得る、ATPを使用する必要がおそらくある。さらに、解体は、鎖交換産物からRecAを剥ぎ取るように作用し得る、反応混合物中に含まれる他のタンパク質(例えば、RuvA、RuvB、RuvC、recG、他のヘリカーゼ)または他の刺激成分の使用によって、刺激/増強され得る。
【0038】
3)鎖置換DNA合成およびレプリコン分離
DNAポリメラーゼが、侵入オリゴヌクレオチドの遊離3’−ヒドロキシルを使用して、テンプレートDNAの相補コピーまたはそれらの部分的伸長産物を合成する場合、このポリメラーゼは、反応中に含まれる一本鎖結合タンパク質(SSB)で覆われ得る、一本鎖DNAを置換する。理想的な構成において、標的核酸配列の両方の末端でのオリゴヌクレオチドの侵入は、同じテンプレート核酸上の2つのポリメラーゼが、互いに向かって最初に進行するように、類似の時間枠で生じる。これらの伸長する複合体が互いに遭遇する場合、元のテンプレートは、単純にばらばらにされるはずであり、そしてポリメラーゼは、鎖置換を必要とせずに合成し続けて、ここで、SSBに結合したssDNAテンプレートをコピーする。立体障害に起因して、ポリメラーゼが遭遇して、2つのテンプレート鎖の分離を可能にする場合、テンプレートから一時的に解離し得る。
【0039】
4)合成の完了および再侵入
一旦、テンプレート鎖が分離されると、ポリメラーゼは、テンプレートの末端への(または、最初のテンプレートが所望の産物よりも長い場合、第二の対向する標的部位として作用する配列を通過して)伸長を完了し得る。指数関数的増幅を可能にするために、両方の標的化末端からである、元のテンプレートと類似の様式で、新たな産物が標的化および複製されることが必要である。新たに合成された標的化部位は、RecA/オリゴヌクレオチドフィラメントを標的化するために、自由に利用可能である。合成を開始するために最初に使用される部位はまた、鎖交換産物からのRecAの解体に有利な、反応系中の条件の使用の結果として、遊離化されていなければならない。この後者の部位での再侵入が、ポリメラーゼが第二の標的化部位を通過して合成し、その第二の部位で開始され、そして第一の部位に戻るのにかかる時間よりも短い時間で生じる場合、一本鎖DNAは、初代の産物ではなく、そして指数関数的増幅が生じる。同じテンプレートに対して作用する複数の合成複合体を有することは、非常に短い増幅時間が達成され得る可能性を上昇させる。
【0040】
(同時のリーディング鎖およびラギング鎖の合成を使用する、リコンビナーゼ−ポリメラーゼ増幅(RPA))
本発明者らの(リーディング鎖RPA)lsRPAの記載において、本発明者らは、標的化配列を再生する能力、従って、二本鎖DNAの指数関数的増幅を可能にする能力を有する多成分系を詳述する。Zarling法とは異なり、lsRPAは、一本鎖DNAの線形生成を回避する。一本鎖産物の可能性および同時末端開始の要件を完全に回避する、この問題を解決するための別のアプローチが存在する。この方法は、より複雑な反応混合物を必然的に包含する。それにもかかわらず、全ての必要な成分は、ここで十分理解され、そして単一の系への構築に従うはずである。この系は、細胞の正常な複製サイクルの間に生じる事象を繰り返して、リーディング鎖およびラギング鎖の合成を組み合わせることを可能にする。この方法、リーディング鎖/ラギング鎖RPAは、図1および3に簡単に記載される。
【0041】
インビボでの正常な複製の間に、二本鎖DNAは、2つの鎖に同時に分離され、そしてその両方が、複製機構によってコピーされて、2つの新たな二本鎖DNA分子を生じる。この「機構」は、従来の5’から3’の方向のリーディング鎖の合成を、ラギング鎖の合成と組み合わせ、ここで、短いRNAプライマーが、プライマーゼ酵素によって、テンプレート核酸上で合成される。ラギング鎖の合成の間、岡崎フラグメントと呼ばれる短いDNAフラグメントが生成され、これらは、一緒に連結されて、連続したラギング鎖を形成する。この同時リーディング鎖/ラギング鎖合成は、原核生物および真核生物の全ゲノムの複製も同様に担う。この系の重要な構成要素は、同定され、そして生化学的に特徴付けられている。これらの構成要素は、リーディング鎖の合成のみを使用して可能なものよりも効率的な増幅を達成するために、インビトロで構築され得る。
【0042】
複製「機構」の重要な構成要素は、現在、E.coliについて十分特徴付けられている。この機構は、PolIIIホロ酵素(GloverおよびMcHenry,2001;KelmanおよびO’Donnell,1995)およびプライモソーム(Benkovicら、2001;Marians,1999)を含む。POlIIIホロ酵素は、10個のポリペプチド要素からなる。各ホロ酵素は、2つの非対称的に配向したコア構造を含み、これらの各々は、ポリメラーゼ(αサブユニット)および2つのさらなるコア要素であるεサブユニット(3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有する)、およびθサブユニットからなる。このコア複合体に加えて、別のセットのポリペプチドが、前進性をホロ酵素に提供し、そしてリーディング鎖およびラギング鎖の合成を組み合わせる。β−ダイマースライディングクランプは、テンプレートDNAを取り囲んで、非常に高い親和性でこのテンプレートに複合体を取り付ける。スライディングクランプは、τγδδ’χψポリペプチドサブユニットを含むDnaXクランプローダー(clamp loader)によって、DNA上にロードされる。
【0043】
記載を明確にするため、RPA方法は、以下の4つの段階に分割され得る。実際には、全ての段階は、単一の反応で同時に生じる。
【0044】
1)配列標的化
RPAは、RecAで覆われた合成オリゴヌクレオチドまたは機能的ホモログを使用して、配列を標的化することによって開始される。このような核タンパク質フィラメントは、複雑なDNA中の標的を、迅速かつ特異的に同定する。一旦標的化されると、RecAタンパク質は、Dループ構造が形成されるように、鎖置換を触媒する。効率的な増幅のための手順において、ATPγSではなくATPを使用することが必要であり得る。しかし、リーディング鎖およびラギング鎖の合成の連結は、合成開始後の非常に迅速なRecA剥ぎ取りの要件を排除し得る。ATPが使用される場合、RecO分子、RecR分子および/またはRecF分子は、効率的な増幅に重要であることを立証し得る。
【0045】
2)プライモソーム構築
プライモソームは、Dループにて構築され得る。通常、Dループ構造は、インビボのDNA損傷をレスキューする機構の一部として、または他の形態の組換えの間に、RecAによって形成される。RecA媒介性の鎖交換およびプライモソーム構築の合わされた作用の目的は、複製フォークを生成することである。複製フォークは、分離されたテンプレートDNAおよびレプリソーム(replisome)を含む核タンパク質構造である。このレプリソームは、ポリメラーゼホロ酵素複合体、プライモソームおよびテンプレートDNAの両方の鎖を同時に複製するために必要とされる他の構成要素からなる。プライモソームは、複製フォークの進行に必要な、DNA巻き戻しおよび岡崎フラグメントの開始機能の両方を提供する。
【0046】
プライモソーム構築は、E.coliにおいて、遺伝学的分析および生化学的分析を用いて集中的に研究されている。このプロセスに必要な最小セットのポリペプチドは周知であり、そして精製された成分として存在する。プライモソーム構築タンパク質は、PriA、PriB、PriC、DnaT、DnaC、DnaBおよびDnaGである。これらのタンパク質は、インビトロで、バクテリオファージΦX174 DNA上にプライモソーム複合体を構築するのに十分であることが示されている(KornbergおよびBaker,1992;Marians,1992)。PriAは、ΦX174染色体上のプライモソーム構築部位(PAS)に結合する。次いで、PriB、DnaTおよびPriCが、このPriA−DNA複合体に連続して結合する。PriBは、PASにてPriAを安定化し、そしてDnaTの結合を容易にするようである(Liuら、1996)。PriCは、完全な構築反応のために部分的にのみ必要である。この反応からPriCを省くと、開始が3〜4分の1に低下する(NgおよびMarians,1996a;NgおよびMarians,1996b)。細菌におけるPriCの機能は、PriBと遺伝学的に重複する。次いで、DnaCは、ATP依存的な様式で、この複合体にDnaBをロードする。このPriABC−DnaBT複合体は、染色体に沿って転座する能力がある。DnaGプライマーゼは、この複合体と一過的に相互作用して、RNAプライマーを合成し得る。
【0047】
E.coliにおける複製の間に、DnaBおよびDnaGは、それぞれ、ヘリカーゼおよびプライマーゼとして機能する。これら2つの構成要素は、PolIIIホロ酵素に関連して頻繁に必要とされて、岡崎フラグメントについてのプライマーを合成する。従って、DnaBおよびDnaGは、複製フォークに付随する可動性プライモソームのコア構成要素である。他の記載されたプライモソーム構成要素は、DNA上へのプライモソームの構築およびダイマーポリメラーゼの会合に必須である。このプライモソーム構築タンパク質は、RecAおよび鎖交換によって形成される組換え中間体における、複製フォークの再確立に必要である。PriAは、DNA合成のための構成要素であるレプリソームの、組換え中間体上での構築を開始し得る。PriA、PriBおよびDnaTの混合物を用いてインビトロでDループを標的化することが可能であり、これらは、次いで、DnaBおよびDnaCを組み込む能力がある。一旦プライモソームがDループにおいて形成されると、複製を開始するためにするべき残りのことは、ホロ酵素複合体をこの部位にロードすることである。
【0048】
3)フォーク構築およびDNA合成の開始
複製フォークは、プライモソーム構築の部位にて構築する。Dループの侵入鎖上の遊離3’末端の存在は、以前に詳述したDnaXクランプローダー複合体を刺激して、スライディングクランプとして作用するように、β−ダイマーをこの部位にて構築させる。ホロ酵素および2つのコアユニットは、足場τサブユニットによって一緒に連結される。τサブユニットはまた、プライモソームの、β−ダイマー要素、クランプローダー要素およびDnaBヘリカーゼ要素についての相互作用表面を有する。これらの複数の相互作用は、2つの非対称的に連結されたコアポリメラーゼ複合体を使用して、リーディング鎖およびラギング鎖の両方の合成を調和させるために必要である。
【0049】
プライモソームプライマーゼであるDnaGは、巻きがかかっていないラギング鎖DNAテンプレート上で短いRNAプライマーを合成する。ホロ酵素の存在下で、クランプローダーは、RNA/DNA二重鎖を認識し、そしてこの部位に第二のβ−ダイマークランプをロードする。活性プライモソームの存在およびτサブユニットのDnaBとの相互作用は、同時リーディング鎖/ラギング鎖合成を確実にするために重要である。この相互作用がないと、ポリメラーゼは、連結することなく、プライモソーム部位から離れて異動する。
【0050】
ここで、複製フォークが構築される。リーディング鎖およびラギング鎖の両方の合成が、ここで同時に生じ、そしてDnaBヘリカーゼが、接近してくるホロ酵素の前に、テンプレート鎖を分離する。ラギング鎖のホロ酵素コアは、1〜2キロベース長の岡崎フラグメントを生成する。一旦ラギング鎖のポリメラーゼが以前のRNAプライマーに遭遇すると、これは、β−クランプから解離し、そして合成が、リーディング鎖前の近傍にロードされた、新たに構築されたクランプから開始される。同じラギング鎖のホロ酵素コアは、リーディング鎖コアへと物理的に係留されるので、再利用される。
【0051】
β−ダイマークランプとコアサブユニットとクランプローダーとの間には、動的な相互作用が存在する。それらの親和性は、物理的環境に依存して切り替わり得る。岡崎フラグメントの末端で「放棄」されたβ−ダイマーは、クランプローダーまたは存在し得る過剰なδサブユニットによる能動的な除去を介してリサイクルされ得る。
【0052】
RNAプライマーは、岡崎フラグメントの末端にて、DNAポリメラーゼIの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性によって除去される。次いで、DNAリガーゼが、これらの岡崎フラグメントを一緒に連結して、連続したラギング鎖を形成する。
【0053】
4)フォークの遭遇および終結
RPAにおいて、複製は、2つの離れた部位にて開始され、そして複製フォークは互いに向き合っている。複製フォークが集中すると、2つの元のテンプレート鎖は、互いから解離して、各フォークの後ろおよび前の両方で、完全に分離する。次いで、各フォークのリーディング鎖コアが完全に合成され、残りのRNAプライマーがプロセシングされ、そして最終産物は、2つの二本鎖分子である。本発明者らは、このようなアプローチによって、数メガベース(Mb)規模で、DNAを増幅することを合理的に予測し得る。本開示において、メガベースはまた、メガ塩基対を包含する。PolIIIホロ酵素の既知の合成速度に基づいて、本発明者らは、複製フォークが、約1Mb/1000秒、すなわち、1Mbのフラグメントについて、1サイクル当たり約15〜20分の速度で進行することを予測し得る。
【0054】
最後の考慮事項は、DNAの迅速な指数関数的増幅が達成される機構である。このプロセスについて重要なことは、ヘリカーゼ、レソルバーゼならびにRecOタンパク質、RecRタンパク質およびRecFタンパク質の混合物の使用によって、標的化部位の効率的な再侵入を可能にすることである。適切な条件下で、再侵入およびプライモソーム構築は、ホロ酵素がフォーク構築部位から離れて移動した直後に、可能であるはずである。DNAは、多くの点で単に分枝するので、連続的な侵入には、何の問題もないはずである。各分枝は、接近してくるフォークに遭遇する場合に、自然に分解する。これらの条件下で、一回だけのDNA複製にかかる時間と類似の時間で、多量の増幅を達成することが可能である。しかし、合成の完了前のヌクレオチド枯渇を回避するために、標的化オリゴヌクレオチドの濃度を制限することが重要であり得る。
【0055】
ホロ酵素複合体に加えて、複製機構は、プライモソームとして公知の別の複合体を使用する。プライモソームは、ラギング鎖を合成し、そして複製フォークを前方に移動させる。プライモソーム複合体は、DnaBによってコードされるヘリカーゼおよびDnaGによってコードされるプライマーゼを含む。最後に、ホロ酵素およびプライモソームのタンパク質に加えて、複製は、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)、E.coli DNAポリメラーゼIおよびDNAリガーゼの活性を必要とする。これらの後者の2つの構成要素は、岡崎フラグメントをプロセシングするために必要である。
【0056】
(ネスティドRPA)
別の実施形態において、RPA複製は、「ネスティドRPA」と本明細書中で称されるプロセスにおいて実施され得る。
【0057】
稀な配列を検出することの困難さは、非標的配列対標的配列の高い比率が存在し得ることである。標的DNAと非標的DNAとの間を識別し、そして標的配列のみを増幅するRPAの能力は、改善された感度の重要な局面である。非標的と標的との間の識別は、プライマーの特異性および反応条件を反映する。反応の特異性が高くなるほど、生成される特異的標的配列の相対的な量多くなり、そして産物の検出がより容易になる。従って、特異性の増大は、感度も増大させ得る。
【0058】
改善された感度および特異性についての必要性は、ネスティドRPAを使用して扱われ得る。ネスティドRPAは、DNAの第一の領域の第一のRPAを含む。次いで、この反応混合物は、第一のプライマー対の濃度を減少させるために、例えば、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍または100倍以上希釈され、そして第二のプライマー対がこの混合物に導入され、そしてRPAが繰り返される。本発明の1実施形態によれば、この第二のプライマー対は、第一のRPA産物の部分配列を増幅するために、この第一のプライマー対に対して内部に設計される。この方法は、特異的増幅を増大させる。すなわち、この方法は、非特異的バックグラウンド増幅産物を減少させ、従って、感度を増大させる。このような非特異的増幅産物は、隣接プライマーに対する偶然の部分的相同性によって生じるものの、増幅を継続するのに十分なネスティドプライマーに対する相同性もまた有する可能性は低い。RPAの検出および特異性は、第二のプライマー対の1つまたは両方で増幅されたプライマーだけが検出されるように、第二のプライマー対の1つまたは両方を標識することによって、さらに改変され得る。
【0059】
ネスティドRPAは、2セットのプライマーの使用に限定されない。通常、より多くのセットのプライマーが、特異性または感度を増大させるために使用され得る。従って、3つ、4つまたは5つのプライマー対が使用され得る。さらに、本発明の別の実施形態として、異なるセットのプライマーが、図4に示されるように、共通のプライマーを共有し得る。
【0060】
図4において、これらのプライマーセットは、連続して使用されるように設計される。例えば、第一のRPAは、プライマーセット1を用いて実施され、第一のRPAの増幅産物を使用する第二のRPAは、プライマーセット2を用いて実施され、第二のRPAの増幅産物を使用する第三のRPAは、プライマーセット3を用いて実施され、第三のRPAの増幅配列を使用する第四のRPAは、プライマーセット4を用いて実施され、そして最後に、第四のRPAの増幅産物を使用する第五のRPAは、プライマーセット5を用いて実施される。この場合、プライマーセット1、2および3は、共通のプライマー−プライマー(a)を共有する。プライマー3、4および5は、共通のプライマー−プライマー(b)を共有する。
【0061】
ネスティドRPAは、記載した2つのRPA方法のいずれか、ならびに任意の特定の順序での、これら2つの方法の組み合わせを使用して、実施され得る。すなわち、RPAは、単にリーディング鎖RPAによって、単にリーディング鎖およびラギング鎖のRPAによって、または任意の特定の順序でのリーディング鎖RPAとリーディング鎖およびラギング鎖のRPAとの組み合わせによって、実施され得る。
【0062】
本発明の任意のRPA方法の1つの利点は、増幅産物のサイズである。現行の増幅方法(例えば、PCR)は、約10kbの上限までに制限されているが、RPA方法は、数百メガベースまでの核酸の領域を増幅し得る。リーディング鎖/ラギング鎖RPAについて、増幅されるべき標的配列のサイズは、数百メガベース(例えば、500メガベース未満、300メガベース未満、100メガベース未満、70メガベース未満、50メガベース未満、25メガベース未満、10メガベース未満、5メガベース未満、2メガベース未満、1メガベース未満、500kb未満、200kb未満、100kb未満、50kb未満、25kb未満または10kb未満、5kb未満、2kb未満、1kb未満)であり得る。lsRPAについて、標的配列のサイズは、メガベース範囲(例えば、5メガベース未満、2メガベース未満、1メガベース未満、500kb未満、200kb未満、100kb未満、50kb未満、25kb未満または10kb未満、5kb未満、2kb未満、1kb未満)であり得る。
【0063】
(RPA試薬および反応パラメータの選択)
リーディング鎖RPA、リーディング鎖およびラギング鎖RPA、ならびにネスティドRPAの詳細は、上記に列挙した。この節は、上記で考察した3つの方法のいずれかについての、試薬およびパラメータの選択を記載する。
【0064】
RPAの1つの利点は、RPAの増幅産物が、他の分子生物学的手順について使用され得る二本鎖DNAである点である。従って、RPAは、分子生物学における他の方法と組み合わせられ得る。例えば、RPAの出発物質は、PCR増幅フラグメントであり得る。あるいは、RPAの産物は、PCRに使用され得る。
【0065】
必要に応じて、本発明の方法のいずれかにおいて、RPA産物は精製され得る。例えば、ネスティドRPA方法において、増幅産物は、各RPA工程の後かつ引き続くRPA工程の前に、精製され得る。核酸の精製方法は、当該分野で公知であり、そしてこれには、少なくとも以下が挙げられる:フェノール抽出、核酸沈殿(例えば、塩およびエタノールを用いる)、カラムクロマトグラフィー(例えば、サイズ排除、イオンカラム、アフィニティカラムなど)、またはこれら技術の任意の組み合わせ。
【0066】
議論されるように、RPAにおいて使用されるプライマーは、「二本鎖」または「二本鎖構造を形成し得る」ものであり得る。これらの用語は、RPA反応溶液またはPCR反応溶液のような反応溶液において二本鎖状態で存在する、DNA分子をいう。PCR溶液の組成は、公知である。RPA反応の組成は、詳細な説明の節および実施例に列挙される。
【0067】
プライマーは、リコンビナーゼ因子の存在下で、標的DNAにハイブリダイズための一本鎖領域を有し得る。この一本鎖領域は、例えば、約10塩基、約15塩基、約20塩基、約25塩基、約30塩基、約40塩基および約50塩基であり得る。約75塩基、約100塩基、約150塩基またはそれ以上といった、より長い領域さえも使用され得るが、必須ではない。一本鎖領域の選択は、出発核酸の複雑性に依存する。その結果、例えば、ヒトゲノムは、より長いプライマーを必要とし得るが、プラスミドは、かなりより短いプライマーを必要とし得る。
【0068】
二本鎖DNA中の核酸の2つの鎖は、完全に相補的である必要はない。例えば、二本鎖DNAの二本鎖領域は、配列が1%まで異なり得る。すなわち、核酸の2つの鎖の配列は、百塩基当たり1塩基まで異なり得、そして溶液中でなお二本鎖状態で存在する。その相補鎖中に1%の差異を有する核酸は、本開示の目的のために、二本鎖DNAとして企図される。
【0069】
さらに、標的核酸(すなわち、本発明のRPA方法によって増幅されるべき核酸)は、部分的に二本鎖かつ部分的に一本鎖であり得る。例えば、図5の構成のいずれかにおける核酸は、本発明の標的核酸として適切である。議論したように、標的核酸は、RNAであり得る。RNAは、公知の方法を使用して、二本鎖cDNAに転換され得、そしてこの二本鎖cDNAは、標的核酸として使用され得る。図5に示されるような場合、テンプレート核酸は、3’オーバーハング(overhang)、5’オーバーハングまたは平滑末端から選択される末端の任意の組み合わせを有し得る。
【0070】
本発明のlsRPA方法は、少なくとも以下の工程を包含する。第一に、リコンビナーゼ因子を、2つの核酸プライマー(本明細書中で、第一のプライマーおよび第二のプライマーと称する)に接触させて、2つの核タンパク質プライマー(本明細書中で、第一の核タンパク質プライマーおよび第二の核タンパク質プライマーと称する)を形成する。
【0071】
第二に、この第一の核タンパク質プライマーおよび第二の核タンパク質プライマーを、テンプレート核酸に接触させて、第一の鎖の第一の部分での第一の二本鎖構造および第二の鎖の第二の部分での第二の二本鎖構造を形成する。これら2つのプライマーは、ハイブリダイズした場合に、図6Aに示されるように互いに向かい合う(point)ように設計される。あるいは、プライマー1およびプライマー2は、図6Bに示されるように、異なる標的核酸にハイブリダイズし得る。
【0072】
第三に、核タンパク質プライマーは、それらの3’末端で伸長されて、第一の二本鎖核酸および第二の二本鎖核酸を生成する(図7A)。これらのプライマーが異なる標的核酸にハイブリダイズする場合、これらのプライマーの伸長は、置換鎖を生成する(図7B)。この場合、プライマー伸長から生じる2つの置換鎖は、ハイブリダイズし得、そして新たな二本鎖テンプレート核酸を形成し得る(図7C)。
【0073】
工程2および3は、所望の程度の増幅が達成されるまで、繰り返される。このプロセスは、標的核酸へのプライマーハイブリダイゼーションおよび伸長が、連続的に進行される、動的なプロセスである。本発明の1つの利点は、増幅が、熱サイクリングも反応開始後の酵素添加も必要とせずに、連続して実施されることである。
【0074】
1実施形態において、工程2および3は、少なくとも5回繰り返される。好ましくは、これは、少なくとも10回繰り返される。より好ましくは、これは、少なくとも20回、例えば、少なくとも30回繰り返される。最も好ましくは、これら2つの工程は、少なくとも50回繰り返される。増幅工程(例えば、工程2および3)の複数回の反復について、本発明のRPAは、好ましくは、プライマー:標的核酸の比が、少なくとも100:1、好ましくは少なくとも300:1、そして最も好ましくは少なくとも1000:1で開始される。すなわち、標的核酸1コピー当たり、少なくとも100、300または1000コピーのプライマーが存在する。
【0075】
任意の工程において、十分なラウンドの増幅後、さらなる成分が、全体的増幅効率を増強するために、一定時間後に、この反応に添加され得る。1実施形態において、このさらなる成分は、以下の1つ以上であり得る:リコンビナーゼ因子、1つ以上のプライマー、ポリメラーゼおよび1つ以上のさらなる因子(以下の分離の節で考察される)。
【0076】
好ましい実施形態において、第一のRPA反応の小さい画分が、引き続くラウンドまたはRPA増幅のためのテンプレートDNAの補充として使用される。この方法において、第一のRPA増幅反応は、標的核酸に対して実施される。第一のRPA反応後、全反応の小さい画分が、RPA反応の引き続くラウンドのために、標的核酸の代替物として使用される。この画分は、例えば、最初の反応の約10%未満であり得る。好ましくは、この画分は、最初の反応の約5%未満であり得る。より好ましくは、この画分は、最初の反応の2%未満であり得る。最も好ましくは、この画分は、最初の反応の1%未満であり得る。
【0077】
RPAにおいて使用されるプライマーは、好ましくは、DNAであるが、PNAおよびRNAもまた、プライマーとしての使用に適切である。実際、DNA複製において、DNAポリメラーゼは、RNAプライマーからゲノムDNAを伸長するということが留意される。
【0078】
合成オリゴヌクレオチドは、DNAプライマーとして作用し得、そしてRecAまたはそのホモログとの、核タンパク質フィラメントの形成のための基質として、使用され得る。15ヌクレオチドほどの長さの配列は、二本鎖DNAを標的化し得る(Hsiehら、1992)。このようなオリゴヌクレオチドは、標準ホスホラミデート化学または他の方法に従って合成され得る。改変された塩基および/またはリンカー骨格化学は、いくつかの場合に所望され得、そして機能的であり得る。さらに、オリゴヌクレオチドは、その末端(5’または3’のいずれか)において、種々の目的を果たす基(例えば、蛍光基、クエンチャー、保護(ブロック)基(可逆的であってもなくても)、磁性タグ、タンパク質など)によって改変され得る。いくつかの場合、一本鎖オリゴヌクレオチドは、鎖侵入のために使用され得、他の場合には、侵入核酸の配列の5’鎖が、すでにオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている、部分的に一本鎖の核酸のみが使用され得る。
【0079】
本発明の別の実施形態において、これらのプライマーは、標的核酸に相同でない5’領域を含み得る。本発明のプロセスは、プライマーが標的核酸に完全に相補的でない場合にさえ、機能的であるはずであることに、留意すべきである。これらのプライマーは、その5’末端にさらなる配列を有することによって、非相補的であり得る。これらのさらなる配列は、例えば、制限エンドヌクレアーゼ認識部位の配列または配列決定プライマーに相補的な配列であり得る。制限エンドヌクレアーゼ認識部位は、増幅配列の引き続く切断のために有用であり得る。制限エンドヌクレアーゼ認識部位の外側で核酸を切断する制限エンドヌクレアーゼの使用もまた、企図される。配列決定プライマーに相補的な配列は、市販のプライマーまたは市販の配列決定装置を使用して、増幅産物の迅速なDNA配列決定を可能にし得る。
【0080】
核タンパク質フィラメントの形成は、プライマー(オリゴヌクレオチド)の、RecAタンパク質またはそのホモログと共に、ATPおよび補助タンパク質(例えば、RecO、RecRおよびRecF)の存在下でのインキュベーションによって、実施され得る。RecA緩衝液(20mM Tris−HCl(pH7.5)、10mM MgCl、2mM ATP、2mM DTTおよび100ug/ml ウシ血清アルブミン)中で37℃でインキュベートする場合、RecAは、1つのターン当たり6個のプロモーターで、ssDNA上にらせん状フィラメントを形成する。このDNAは、タンパク質らせんの内部に位置する。dsDNAの存在下で、RecA/ssDNA核タンパク質フィラメントは、1時間当たり少なくとも10bpの速度で、DNAを走査し得る。走査の様式は不明であるが、これは、これが、主溝の1つの面に沿って容易に接近され得る、最初のいくつかの塩基対のみを含み得る、ある速度(>10bp/秒)である。首尾よい結合は、三重らせん中間体への移行を生じ得、次いで、鎖侵入および置換が生じて、Dループを形成する。このような連結分子は、らせん状フィラメントの形成について上記した条件と類似の条件下で形成され得、従って、ssDNA、相同なdsDNA、RecA、ATP、補助タンパク質ならびに適切な緩衝液条件および温度条件の存在下で、連結分子が同時に形成する。ATPが使用される場合、この構築は、可逆的であり、そして平衡に達するが、RecA/ssDNAフィラメントは、補助タンパク質RecOおよびRecRによって、SSBの存在下でさえ、安定化され得る。熱安定性タンパク質の場合、インキュベーション温度は、より高くできる。ATPの更新可能な補充が必要とされる場合、標準的なATP再生系が、この反応中に含められ得る。
【0081】
DNAポリメラーゼは、新たなヌクレオチドを取り込むことによってDNA合成を触媒するために、侵入鎖の遊離3’−ヒドロキシルを使用し得る。多数のポリメラーゼが、合成を触媒し、そして合成が生じるのと同時に他の鎖を置換するために、侵入鎖の3’−ヒドロキシルを使用し得る。例えば、E.coliのポリメラーゼIIまたはポリメラーゼIIIは、侵入したDループを伸長するために使用され得る(Morelら、1997)。さらに、E.coliにおけるSOS−傷害標的化変異において通常使用されるE.coliのポリメラーゼVが、使用され得る(Phamら、2001)。これらのポリメラーゼの全てが、β−ダイマークランプ、ならびに一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)および他の構成要素との、それらの相互作用および協調を介して、高度に進行性にされ得る。原核生物、ウイルスおよび真核生物由来の他のポリメラーゼもまた、侵入鎖を伸長するために使用され得る。
【0082】
本発明の別の実施形態において、プライマーは、少なくとも1つの一本鎖3’オーバーハングを有する、部分的に二本鎖で、部分的に一本鎖であり得る。この実施形態において、プライマーは、図8Aに示されるように、侵入鎖および非侵入鎖を含み得る。この場合、侵入鎖が標的DNAにハイブリダイズして伸長された後、これは、図8Bに示されるように、第二のプライマーについての標的核酸として作用する。第二のプライマーの伸長は、図8Cに示されるように、非侵入鎖を置換する。この実施形態において、標的核酸が増幅されるにつれて、プライマー1の非侵入鎖が置換される。プライマー1およびプライマー2の両方が部分的に二本鎖のプライマーである場合、プライマー1およびプライマー2の両方の非侵入鎖は、標的核酸が増幅されるにつれて、溶液中に蓄積する。
【0083】
本発明の1実施形態において、RPA反応中のこれらのプライマーの少なくとも2つは、部分的に二本鎖かつ部分的に一本鎖であり、各々、侵入鎖および非侵入オリゴヌクレオチド鎖のハイブリダイゼーションによって生成され、これらは、二本鎖領域を形成するのに十分相補的な配列を有する。好ましくは、2つのオリゴヌクレオチド鎖は、RPA反応条件において二本鎖構造を形成し得る適切な領域にわたって、十分相補的である。
【0084】
本発明の1実施形態において、一本鎖プライマーおよび部分的に二本鎖のプライマーを含むこれらのプライマーは、検出可能な標識で標識される。蛍光クエンチャーもまた、検出可能な標識とみなされることに、留意すべきである。例えば、蛍光クエンチャーは、蛍光色素に接触され得、そしてクエンチングの量が検出される。検出可能な標識は、伸長反応を妨害しないような標識であるべきである。プライマーが、侵入鎖および非侵入鎖を有して部分的に二本鎖である場合、検出可能な標識は、侵入鎖の伸長反応を妨害しないような方法で結合されるべきである。部分的に二本鎖のプライマーの非侵入鎖は、伸長されないので、非侵入鎖上の標識が、侵入鎖の伸長反応を妨害すべきでないことのみを除いて、非侵入鎖の標識化に対して制限は存在しない。標識されたプライマーは、増幅産物のより迅速な検出の利点を提供する。さらに、組み込まれていない標識、すなわち、伸長されていない標識オリゴヌクレオチドの検出は、反応状態のモニタリングを可能にする。
【0085】
RPA反応のモニタリングは、例えば、RPA反応の画分を取り出す工程、組み込まれていない画分を単離する工程、および組み込まれていないプライマーを検出する工程を包含し得る。組み込まれていないプライマーのサイズは、50bp未満、40bp未満、30bp未満または25bp未満であり得、そして増幅産物のサイズは、1kbより長いか、2kbより長いか、5kbより長いか、または10kbより長くあり得るので、組み込まれたプライマーと組み込まれていないプライマーとの間に大きなサイズの差異が存在する。組み込まれていないプライマーの単離は、サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、スピンカラム)を使用して、迅速に実施され得る。プライマーが標識される場合、スピンカラムおよび測定(例えば、蛍光または放射性)を含むモニタリング手順は、1分未満で実施され得る。非伸長プライマーから伸長プライマーを分離するための別の代替法は、PAGEの使用を含む。例えば、伸長プライマーは、5分未満のゲル電気泳動によって、非伸長プライマーから分離され得る。伸長プライマーを分離するためのなお別の代替法は、固定化オリゴヌクレオチドの使用を含む。例えば、増幅されたDNA配列内に独自に見出される配列に相同なオリゴヌクレオチドは、プライマー伸長によって特異的に生成される核酸を捕捉するために使用され得る。これらの捕捉オリゴヌクレオチドは、チップまたは他の基材上に固定化される。捕捉オリゴヌクレオチドによる、伸長オリゴヌクレオチドの捕捉は、RecAタンパク質媒介性の方法または必要に応じて従来の溶液ハイブリダイゼーションによって、実施され得る。
【0086】
本発明の別の実施形態において、二本鎖プライマーは、プライマーの2つの鎖の分離が検出され得るように、標識され得る。上記考察のように、複数ラウンドの伸長の後、部分的に二本鎖のプライマーの侵入鎖および非侵入鎖が分離される。この分離後、非侵入鎖は、RPA反応に関与しない。この特徴は、多数の方法でRPA反応を検出およびモニタリングするために使用され得る。
【0087】
本出願において、検出可能な標識は、蛍光標識または酵素であり得、そして標識クエンチャー(標識インヒビターとも称される)は、蛍光クエンチャーまたは酵素インヒビターであり得る。これらの場合、標識は、蛍光または酵素の阻害によって検出される。標識の検出能(delectability)は、蛍光標識が使用される場合には蛍光、または酵素が使用される場合には酵素活性である。
【0088】
第一の方法において、侵入鎖は、標識で標識され得、そして非侵入鎖は、検出可能な蛍光クエンチャーで標識され得る。部分的に二本鎖のプライマー上の標識クエンチャー(標識インヒビター)の近位にある標識は、高度に検出可能でない。RPA後、侵入鎖は、非侵入鎖から分離され、従って、標識および標識クエンチャーは分離される。この分離は、標識をより検出可能にする。従って、RPA反応は、検出可能な標識の量の増加を測定することによって、モニタリングされ得る。
【0089】
第二の方法は、侵入鎖が標識クエンチャーで改変され、一方で非侵入鎖が標識で改変されている点以外は、第一の方法と類似である。その場合、RPAは、標識クエンチャーから分離された標識の結果(方法1と同じ)を進めることが可能である。従って、標識の全体的な検出能(delectability)は増大する。
【0090】
第三の方法は、1つの二本鎖プライマーの非侵入鎖を標識で標識する工程を包含する。さらに、第二の二本鎖プライマーの非侵入鎖は、標識クエンチャーで標識される。2つの非侵入鎖は、互いに相補的であるように設計される。この構成において、RPA反応は、最初は蛍光性である。RPA反応が進行するにつれて、2つの非侵入鎖は、溶液中に置換され、そしてこれらは相補的であるように設計されているので、互いにハイブリダイズする。これらがハイブリダイズすると、標識および標識クエンチャーは互いに近づき、そして反応の蛍光が減少する。RPA反応の進行は、標識検出能の減少をモニタリングすることによって、測定され得る。
【0091】
第四の方法において、第一および第二の二本鎖プライマーの非侵入鎖は、第一の標識および第二の標識によって標識され得る。2つの非侵入鎖はまた、互いに相補的であるように設計される。第三の方法と同様に、RPA後、2つの非侵入鎖は互いにハイブリダイズし、そして2つの標識の接近は、RPA反応の進行の反映であり得る。2つの標識の近さは、例えば、直接的観察または非侵入鎖の単離によって、決定され得る。上記で考察したように、プライマーおよび他の小さい核酸の単離は、サイズ排除カラム(スピンカラムを含む)またはゲル電気泳動によって、達成され得る。
【0092】
本発明の別の実施形態において、プライマーの一方または両方の非侵入鎖は、核酸の第二の領域に対して相同であり、その結果、プライマーは、核酸の第二の領域にハイブリダイズし得、そしてそこでプライマーDNA合成がなされ得る。この方法を使用して、第一のRPAのプライマー由来の非侵入鎖を使用する第二のRPA反応が、開始され得る。第二のRPAの産物は、第一のRPAの進行を決定するためにモニタリングされ得る。
【0093】
本発明のなお別の実施形態において、非侵入鎖は、非侵入鎖の配列に特異的なバイオセンサ(biosensor)によって検出され得る。例えば、バイオセンサは、非侵入鎖に相補的な核酸配列を有する表面であり得る。このバイオセンサは、非侵入鎖の結合から生じる特徴をモニタリングし得る。この特徴は、検出可能な標識であり得る。
【0094】
本発明の方法のいずれかに適切な検出可能な標識としては、酵素、酵素基質、補酵素、酵素インヒビター、蛍光マーカー、発色団、発光マーカー、放射性同位体(放射性核種を含む)および結合対の片方のメンバーが挙げられる。より特定の例としては、フルオレセイン、フィコビリンタンパク質、テトラエチルローダミンおよびβ−galが挙げられる。結合対は、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、抗原/抗体、リガンド/レセプター、ならびにこれらの結合対のアナログおよび変異体が挙げられ得る
本発明のリコンビナーゼ因子は、RecA、RadA、RadB、Rad51またはこれらのタンパク質の機能的アナログもしくはホモログであり得る。所望の場合、リコンビナーゼは、温度感受性(本明細書中で「ts」という)リコンビナーゼ因子であり得る。tsリコンビナーゼが使用される場合、RPAは、1つの温度(許容温度)で開始され得、そして別の温度(非許容温度)で終結され得る。許容温度の組み合わせは、例えば、25℃/30℃、30℃/37℃、37℃/42℃などであり得る。好ましい実施形態において、tsタンパク質は可逆性である。可逆性tsタンパク質の活性は、非許容温度から許容温度にシフトする場合に、回復される。
【0095】
好ましい実施形態において、RPAは、ATP、ATPアナログまたは別のヌクレオシド三リン酸の存在下で実施される。このATPアナログは、例えば、ATPγS、dATP、ddATPまたは別のヌクレオシド三リン酸アナログ(例えば、UTP)であり得る。
【0096】
RPA反応に添加され得る他の有用な試薬は、ヌクレオチド三リン酸(すなわち、dNTP(例えば、dATP、dTTP、dCTP、dGTPならびにその誘導体およびアナログ)およびDNAポリメラーゼを含む。リーディング鎖/ラギング鎖のRPAについて有用な、他の有用な試薬は、NTP(ATP、GTP、CTP、UTPならびにその誘導体およびアナログ)を含む。RPA反応の1つの利点は、使用されるポリメラーゼの型を限定しないことである。例えば、真核生物および原核生物両方のポリメラーゼが使用され得る。原核生物のポリメラーゼとしては、少なくとも、E.coli polI、E.coli polII、E.coli polIII、E.coli polIVおよびE.coli polVが挙げられる。真核生物のポリメラーゼとしては、pol−α、pol−β、pol−δ、およびpol−εからなる群より選択される、多タンパク質ポリメラーゼ複合体が挙げられる。
【0097】
本発明の別の実施形態において、RPAプロセスは、ポリメラーゼの前進性または信頼性を改善するために、補助成分の存在下で実施される。原核生物および真核生物の両方の補助成分が使用され得る。好ましくは、この補助成分は、E.coli由来である。有用な補助タンパク質としては、一本鎖結合タンパク質、ヘリカーゼ、トポイソメラーゼおよびレソルバーゼが挙げられる。他の有用な補助タンパク質としては、E.coli β−ダイマースライディングクランプ、真核生物PCNAスライディングクランプおよびT4スライディングクランプgp45からなる群より選択されるスライディングクランプが挙げられる。他の補助成分としては、β−クランプ、DnaXクランプローダーおよびポリメラーゼコア複合体からなるDNAポリメラーゼIIIホロ酵素複合体が挙げられる。なお他の補助成分としては、RuvA、RuvB、RuvCおよびRecGが挙げられる。さらなる成分の使用によって付与される特性は、PCRのような現行の方法によってはこれまで首尾よく標的化されなかった大きいDNAの増幅を可能にする可能性がある。
【0098】
別の実施形態において、RPAは、RecA/ssDNA核タンパク質フィラメントを安定化するために使用される因子の存在下で実施される。例えば、この因子は、RecR、RecO、RecFまたはこれらのタンパク質の組み合わせであり得る。他の有用な因子としては、PriA、PriB、DnaT、DnaB、DnaCおよびDnaGが挙げられる。
【0099】
本発明の1つの利点は、RPA反応が、PCR反応と比較して低い温度で実施され得ることである。例えば、RPAプロセスは、20℃と50℃との間の温度で実施され得る。好ましくは、RPAプロセスは、45℃未満で実施される。より好ましくは、RPA反応は、40℃未満で実施され得る。なおより好ましくは、RPA反応は、35℃未満で実施され得る。最も好ましくは、RPA反応は、30℃未満で実施され得る。RPA反応がこれらの低い温度で実施され得る1つの理由は、RPAが、テンプレート核酸の温度誘導性の融解なしに実施され得るからである。さらに、PCRとは異なり、絶対温度制御が必要とされず、そして温度は、RPAに悪影響を及ぼさずに変動し得るからである。例えば、変動の量は、上記で特定した温度内のどこでもよい。二本鎖DNAの融解に必要な温度はまた、本発明の方法において存在しない不都合である、未成熟な酵素の不活化に寄与する。
【0100】
RPAは、遺伝子型の存在または非存在について試験するために実施され得る。試験される遺伝子型は、疾患または疾患の素因に関連し得る。あるいは、遺伝子型は、正常な表現型または疾患に対する特別な耐性を付与する表現型と関連し得る。上記開示のような遺伝子型は、任意の標準的な遺伝的改変(例えば、点変異、欠失、挿入、逆位、フレームシフト変異、交差事象、または複数コピーの遺伝子配列の存在もしくは非存在(例えば、ミニ染色体の存在))であり得る。
【0101】
遺伝子型を検出する1つの方法は、RPA反応中のプライマー対間の距離を検出することである。プライマー対間の距離は、増幅配列のサイズによって反映される。この方法において、2つのプライマーが、標的領域(例えば、遺伝子)にわたるように、選択される。次いで、このプライマー対を使用してRPAが実施され、そしてRPA産物が分析される。この分析は、増幅産物のサイズまたは配列を決定する工程を包含する。DNA配列のサイズを決定する方法(例えば、少なくともアガロースゲル、PAGEゲル、質量分析、パルスフィールドゲル、遺伝子チップ、ショ糖沈殿などの技術を含む)は、公知である。多くのDNA配列決定方法およびその改変型が存在する:例えば、ジデオキシ終結および変性ゲル電気泳動を使用するSanger配列決定(Sanger,F.,Nichlen,S.およびCoulson,A.R.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.75,5463−5467(1977))、化学的切断および変性ゲル電気泳動を使用するMaxam−Gilber配列決定(Maxam,A.M.およびGilbert,W.Proc Natl Acad Sci USA 74,560−564(1977))、DNAポリメラーゼ反応の間に放出されるピロリン酸(PPi)を検出するピロ配列決定(pyro−sequencing)(Ronaghi,M.,Uhlen,M.およびNyren,P.Science 281,363,365(1998))ならびにオリゴヌクレオチドを使用するハイブリダイズによる配列決定(SBH)(Lysov,I.,Florent’ev,V.L.,Khorlin,A.A.,Khrapko,K.R.およびShik,V.V.Dokl Akad Nauk SSSR 303,1508−1511(1988);Bains W.およびSmith G.C.J.Theor.Biol 135,303−307(1988);Drnanac,R.,Labat,I.,Brukner,I.およびCrkvenjakov,R.Genomics 4,114−128(1989);Khrapko,K.R.,Lysov,Y.,Khorlyn,A.A.,Shick,V.V.,Florentiev,V.L.およびMirzabekov,A.D.FEBS Lett 256.118−122(1989);Pevzner P.A.J Biomol Struct Dyn 7,63−73(1989);Southern,E.M.,Maskos,U.およびElder,J.K.Genomics 13,1008−1017(1992))。
【0102】
遺伝子型を検出する1つの方法は、特定の遺伝子型に特異的なプライマーを使用することである。例えば、プライマーは、1つの遺伝子型を効率的に増幅するか、または別の遺伝子型を全く増幅しないように、設計され得る。1実施形態において、このプライマーは、1つの遺伝子型(例えば、遺伝病の遺伝子型)に相補的であるが、別の遺伝子型(例えば、正常な遺伝子型)とは相補的でない3’配列を含み得る。
【0103】
決定されるべき遺伝子型は、疾患の指標(例えば、活性化した癌遺伝子の存在;ハンティングトン病の遺伝子の存在または腫瘍抑制遺伝子の非存在)であり得る。
【0104】
プライマーの3’塩基は、RPA反応の特異性および効率を決定する際に、特に重要である。プライマーは、3’塩基が、1つの遺伝子型に特異的であるが別の遺伝子型には相補的でないように、設計され得る。このことは、1つの遺伝子型の効率的なRPAおよび第二の遺伝子型(存在する場合)の非効率的なRPAを可能にする。この方法は、プライマー対の1つのプライマーが、(異なる増幅効率を有することによって)異なる遺伝子型間を識別し得る場合にのみ有効であることに留意する。好ましい実施形態において、RPA反応中の両方のプライマーが、異なる遺伝子型間を識別し得る。この上記の例において、これらのプライマーは、1つの遺伝子型に対して相補的であるが、第二の遺伝子型に対しては、その3’末端にて1塩基分、相補的ではない。好ましい実施形態において、このプライマーは、その3’末端にて少なくとも1塩基分、第二の遺伝子型に対して相補的でない。好ましくは、このプライマーは、その3’末端にて、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10塩基分、第二の遺伝子型に対して相補的でない。最も好ましくは、このプライマーは、完全に非相補的であるか、または第二の遺伝子型にハイブリダイズできないが、第一の遺伝子型にはハイブリダイズし得る。
【0105】
考察した方法のいくつかにおいて、増幅産物の存在または非存在は、遺伝子型の存在または非存在の指標を提供する。これらの場合、RPA反応は、本明細書を通じて、これらの考察した方法によって、モニタリングされ得る。
【0106】
好ましい実施形態において、遺伝子型決定のためのRPA反応は、患者の遺伝子型に関わらず、配列を増幅する。しかし、患者の遺伝子型は、増幅配列の特徴を変更する。例えば、1つの遺伝子型についての増幅配列は、別の遺伝子型についての増幅配列よりも、異なるサイズまたは配列であり得る。この方法において、RPA反応は、増幅反応が首尾よく実施されたことを示す、内部コントロールを含む。もちろん、RPA反応の性能についてのコントロールとして、1つ以上のさらなる対のプライマーを含むRPA方法もまた、想定される。
【0107】
別の実施形態において、RPA反応は、核酸分子の存在または非存在を決定するために使用され得る。この核酸分子は、任意の生物由来であり得る。例えば、サンプルの微生物組成は、異なる微生物の核酸に対するRPA反応の組を使用することによって、決定され得る。RPAは、微生物の検出に特に有用である。1実施形態において、病原体は、ウイルス、細菌、寄生生物および真菌から選択される。さらなる実施形態において、この病原体は、インフルエンザウイルス、風疹ウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、他の肝炎ウイルス、単純疱疹ウイルス、ポリオウイルス、痘瘡ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ワクシニアウイルス、狂犬病ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、レトロウイルスおよびライノウイルスから選択される。別の実施形態において、この病原体は、Escherichia coli、Mycobacterium tuberculosis、Salmonella、ChlamydiaおよびStreptococcusから選択される細菌である。なおさらなる実施形態において、この病原体は、Plasmodium、Trypanosoma、Toxoplasma gondiiおよびOnchocercaから選択される寄生生物である。しかし、本発明が、上記列挙した特定の属および/または種に限定されることは意図しない。
【0108】
(参考文献)
【0109】
【数1】





【実施例】
【0110】
(実施例1:リーディング鎖リコンビナーゼ−ポリメラーゼ増幅(lsRPA))
DNA配列を、図1に示されるリコンビナーゼ−ポリメラーゼ増幅(RPA)方法に従うリーディング鎖合成を使用して増幅し得る。
【0111】
反応は、以下の組成で構築される:
【0112】
【表1】


この反応を、最終濃度が、Dループ形成/分解成分、ポリメラーゼ/ヘリカーゼ/レソルバーゼ混合物および反応緩衝液を満たすように構築し、DNAポリメラーゼおよび/またはテンプレートは、必要に応じて最後に添加される。例えば、Dループ形成/分解成分の2×濃度の溶液およびポリメラーゼ/ヘリカーゼ/レソルバーゼ混合物の2×濃度の溶液を、1×の反応緩衝液に調製し得る。この反応を、2つの成分の各々の等量(各々1×反応緩衝液中)を混合することによって開始し得る。必要に応じて、そして上記のように、DNAポリメラーゼまたはテンプレート(標的DNA)は、最後に添加され得る。この反応を、反応物が使い果たされるまでの十分な時間にわたってインキュベートする。代表的なインキュベーション時間は、1時間、2時間、3時間、5時間、10時間または一晩(約16時間)の範囲である。迅速な温度変化のために小さい容量を必要とするPCRとは異なり、RPAの反応容量には制限がない。25μl、50μl、100μl、1ml、10mlおよび100mlまたはそれより大きい反応容量が、1つの容器中で実施され得る。インキュベーション温度は、代表的な実験室温度(例えば、25℃、30℃または37℃)であり得る。
【0113】
テンプレートDNAおよび/またはポリメラーゼの添加前に、RecAおよびSSBは、一本鎖オリゴヌクレオチドプライマーへの結合について競合する。RecRおよびRecOの存在下で、RecAは、一本鎖プライマー上に選択的に安定化されて、RecOおよびRecRとの複合体中のRecA核タンパク質フィラメントを形成する。この複合体は、二本鎖DNAに侵入して、オリゴヌクレオチドプライマーに相同な部位においてDループを形成する能力がある。あるいは、RecA、RecOおよびRecRを、反応混合物へのSSBの導入前に、オリゴヌクレオチドプライマー上に予めロードし得る(図1)。侵入鎖を、5’から3’の方向でポリメラーゼによって伸長させる。Dループが形成され、そして合成が進むにつれ、置換された一本鎖DNAは、SSBで覆われるようになる。二本鎖DNAからのRecA放出は、5’から3’方向でのATP加水分解を介して生じ得るか、またはヘリカーゼ/レソルバーゼもしくはポリメラーゼの活性の結果として生じ得る(図2A、B)。侵入/合成の新たなラウンドは、連続的に生じる。第三ラウンドの鎖侵入/合成は、その末端が2つの対向するプライマー部位に対応する、放出された分離産物を放出する。これらのフラグメントは、直ぐに優勢な反応産物になり、そして高レベルまで蓄積する。各合成複合体がテンプレートの末端へと進行するにつれて、RecAタンパク質は、ポリメラーゼ活性、またはヘリカーゼ(例えば、RuvAB)もしくはレソルバーゼ(例えば、RuvC)の活性のいずれかによって、置換される。一旦、プライマー、ATP、デオキシリボヌクレオシド三リン酸または任意の他の制限的成分が使い果たされると、反応は停止する。
【0114】
温度感受性RecA変異体を含めると、DND合成の制御された開始が可能になる。このような状況において、開始反応を、25℃〜37℃で実施して、Dループの形成を可能にする。伸長反応を、42℃で実施する。この温度は、RecA媒介性の二本鎖侵入について非許容性である。サイクル数が、反応産物の量を決定する。延長された伸長期間は、再侵入を妨害せずに、非常に長いDNAの増幅を可能にする。
【0115】
(実施例2:ネスティドRPA)
RPA反応を、実施例1において記載されるように実施する。反応の1/10の画分および1/100の画分を取り出し、そして第二ラウンドのRPAにおいてDNAテンプレートの代わりに使用する。lsRPA、リーディング/ラギングRPAおよびこれらの組み合わせを、ネスティドRPAのために使用し得る。
【0116】
(実施例3:リーディング鎖およびラギング鎖の同時リコンビナーゼ−ポリメラーゼ増幅)
DNA配列を、図2に示されるリコンビナーゼ−ポリメラーゼ増幅(RPA)方法に従うリーディング鎖およびラギング鎖の合成を使用して増幅し得る。
【0117】
反応を、以下の組成を用いて構築する:
【0118】
【表2】



この反応を、全ての試薬の最終濃度が上記で列挙したようになるように、構築する。従って、例えば、5倍濃度の各成分の溶液(Dループ形成/分解成分、ヘリカーゼ/レソルバーゼ混合物、プライモソーム複合体、DNAポリメラーゼIIIホロ酵素複合体、ラギング鎖混合物)を、1×緩衝液中に作製する。次いで、5つの溶液を等量で一緒に混合して、反応を開始する。この反応を、反応物が使い果たされるまでの十分な時間にわたって、インキュベートする。代表的なインキュベーション時間は、1時間、2時間、3時間、5時間、10時間または一晩(約16時間)の範囲である。上記のように、RPAの反応容量には制限がない。25μl、50μl、100μl、1ml、10mlおよび100mlまたはそれより大きい反応容量が、1つの容器中で実施され得る。インキュベーション温度は、代表的な実験室温度(例えば、25℃、30℃または37℃)であり得る。
【0119】
まず、プライモソームは、RecA核タンパク質フィラメントの侵入によって形成されるDループ上にロードする。このプライモソームは、RNAプライマーの鎖を合成する。最後に、プライモソームは、クランプローダーをリクルート(recruit)し、このクランプローダーは、スライディングクランプダイマーおよび非対称的DNAポリメラーゼコアの両方をリクルートする(図3A)。
【0120】
合成は、リーディング方向およびラギング方向の両方で同時に生じる。最終的に、ラギング鎖合成は停止し、そしてラギング鎖クランプが外れる。リーディング鎖の合成は、ラギング鎖の合成の新たな部位が形成されるまで、継続する(図3B)。
【0121】
リーディング鎖合成は継続したままで、ラギング鎖合成の新たな部位が形成される。ラギング鎖合成は、ラギング鎖クランプが外れた、以前の岡崎フラグメントに戻って継続する(図3C)。
【0122】
DNAポリメラーゼIは、RNAプライマーを除去し、そしてギャップを満たし、一方でDNAリガーゼは、2つの岡崎フラグメントを接続して、連続したラギング鎖を形成する(図3D)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載されるRPAプロセス。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−249637(P2012−249637A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−203178(P2012−203178)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【分割の表示】特願2009−278020(P2009−278020)の分割
【原出願日】平成15年2月21日(2003.2.21)
【出願人】(512051941)アリーア サン ディエゴ, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】