説明

リターデーションまたは配向パターンを有する重合液晶フィルム

【課題】異なる波長の光における直線偏光状態と円偏光状態の間でのより効率的な変換が可能なアクティブマトリクス型カラーLCDで使用される位相差フィルムを提供する。
【解決手段】重合液晶(LC)材料を有するパターニングフィルムであって、LC材料の異なるリターデーションを有する少なくとも2つの領域および異なる配向を有する少なくとも2つの領域を有し、リターデーションにおいて異なる前記領域が配向においても異なることができるか、あるいはそれらが異なる領域であることができるパターニングフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個の光異性化可能な化合物を含み、LC材料の異なるリターデーションおよび/または異なる配向を有する領域のパターンを持つ重合液晶(LC)フィルムに関する。本発明はさらに、そのようなフィルムの製造方法、ならびにLCディスプレイその他の光学もしくは電気光学部品もしくは装置でのアラインメント層、光学位相差板または導光板としてのそれの使用または装飾用途もしくはセキュリティ用途でのそれの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術から公知の液晶ディスプレイ(LCD)は通常、例えばアラインメント層、カラーフィルターおよびリターデーション層などの異なる機能層の各種取り合わせたものを有する。位相差板は例えば、直線偏光と円偏光の間の変換を行ったり、広い視角でのLCDのコントラストおよび色の低下を補償するのに用いられる。しかしながら、先行技術で用いられる従来の位相差板の光学分散のために、変換が不完全になる場合が多い。すなわち、可視光の全ての周波数が、直線偏光状態と円偏光状態の間で変換されるわけではない。それは、アドレス指定状態でのディスプレイの異なるピクセルが、異なる原色(R、G、B)を示すようにカラーフィルターが設けられているアクティブマトリクス型のカラーLCDにおいて特に不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一つの目的は、LCD、特には上記の先行技術のフィルムにおける欠点を持たず、特に異なる波長の光における直線偏光状態と円偏光状態の間でのより効率的な変換が可能なアクティブマトリクス型カラーLCDで使用される位相差フィルムを提供することにある。別の目的は、そのような位相差フィルムの製造において有利な方法および材料を提供することにある。別の目的は、そのような位相差フィルムの有利な使用を提供することにある。本発明の他の目的は、当業者であれば、下記の詳細な説明から直ちに明らかになる。
【0004】
本発明者らは、これらの目的が、異なるリターデーションを有する異なる領域またはピクセルのパターンを持つ、下記の方法によって製造されるパターニングまたはピクセル化されたリターデーション層を提供することで達成可能であることを見出した。前記ピクセル化リターデーション層をカラーフィルターを持つLCDに適用して、リターデーション層の各ピクセルが、カラーフィルターの相当するピクセルを通過する光についての正確なリターデーションを有するようにすることができる。このようにして、前記ディスプレイを通過する偏光をより効率的に変換することができる。本発明によるピクセル化位相差フィルムは好ましくは、UV光に対する感光性基を有する化合物を組み込んだ重合性液晶(LC)材料を露光することで製造される。
【0005】
本発明による方法および材料によって、LC材料の異なる配向を有するリターデーション層、例えばプラナー層およびスプレイ層の製造が可能であることも見出された。それにより、異なる配向および/または異なるリターデーションを有する領域のパターンを持ったパターニングフィルムを製造することができる。その後の層のためのアラインメント層として作用する重合LC層、ならびに異なる配向および/またはリターデーションを有するフィルムまたは層の積層物を製造することも可能である。
【0006】
EP02019792.7には、重合ネマチックLC材料を含むリターデーションパターンを持った光学位相差板、ならびに重合性LC材料の重合条件および/または組成を変えることによるそれの製造方法が開示されている。しかしながらそれには、本発明によるフィルムおよび方法は開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも1個の光異性化可能な化合物を含む重合液晶(LC)材料を有するフィルムにおいて、前記フィルムが前記LC材料の異なるリターデーションを有する少なくとも2つの領域および/または異なる配向を有する少なくとも2つの領域を有することを特徴とするフィルムに関する。
【0008】
本発明はさらに、重合液晶(LC)材料を有するパターニングフィルムにおいて、前記LC材料の異なるリターデーションを有する少なくとも2つの領域および異なる配向を有する少なくとも2つの領域を有することを特徴とするパターニングフィルムに関する。
【0009】
本発明はさらに、重合液晶(LC)材料を有するパターニングフィルムにおいて、前記LC材料の異なるリターデーションを有する少なくとも2つの領域を有することを特徴とするパターニングフィルムに関する。
【0010】
本発明はさらに、上記フィルムの製造方法であって、
a)基板上に少なくとも1個の光異性化可能な化合物を含む重合性LC材料の層を設ける工程;
b)前記LC材料の層をプラナー配向に配列する工程;
c)前記層またはその層の選択された領域における前記LC材料を、前記異性化可能な化合物の異性化を引き起こす光照射、好ましくはUV照射で露光する工程;
d)前記材料の前記露光領域の少なくとも一部で前記LC材料を重合させることで、前記配向を固定する工程;および
e)任意の工程として、前記基板から前記重合フィルムを取り出す工程
を有する方法に関するものであり、
好ましくは、前記LC材料の前記リターデーションおよび/または配向を、前記光異性化可能な化合物の量および/または種類を変えることで、および/または前記光照射の強度および/または露光時間を変えることで制御する、工程a)〜e)を有する方法に関するものである。
【0011】
本発明はさらに、異なる配向を有する重合LC材料の少なくとも2つの層を有する多層体の製造方法において、
A)基板上に少なくとも1種類の光異性化可能な化合物を含む重合性LC材料の第1の層を設ける工程、
B)LC材料の前記第1の層をプラナー配向に配列し、前記材料を重合させることで前記配向を固定する工程、
C)前記第1の層を基板として用いて、A)およびB)の工程により、LC材料の第2の層を設ける工程
を有し、
前記第1のおよび第2の層の少なくとも一方またはそれらの層の選択された領域中の前記LC材料を、重合前に、前記異性化可能な化合物の異性化を引き起こす光、好ましくはUV光に露光することを特徴とする方法に関するものである。
【0012】
本発明はさらに、上記のフィルムまたは多層体の製造方法であって、光異性化および光重合を引き起こす光照射に前記LC材料を曝露し、前記光異性化および光重合の工程を異なる条件下、特には異なるガス雰囲気下で行う、特に好ましくは光異性化を酸素の存在下に行い、光重合を酸素の非存在下に行う方法に関するものである。
【0013】
本発明はさらに、上記の方法によって得られるフィルムまたは多層体に関するものである。
【0014】
本発明は、前記および下記の少なくとも1個の光異性化可能な化合物を含む重合性LC材料に関するものである。
【0015】
本発明はさらに、液晶ディスプレイ(LCD)その他の装飾用途またはセキュリティ用途用の光学もしくは電気光学的な部品または装置での、上記および下記のフィルムまたは多層体の使用に関するものである。
【0016】
本発明はさらに、アラインメント層、光学位相差フィルムまたは導光板としての上記および下記のフィルムの使用に関するものである。
【0017】
本発明はさらに、アクティブマトリクスカラーLCDで光学位相差フィルムとして使用される異なるリターデーションを有する少なくとも2つの領域を持ったパターニングフィルムに関するものである。
【0018】
本発明はさらに、上記および下記の光学位相差フィルムを有するLCDに関するものである。
【0019】
本発明はさらに、LCDでの光学位相差フィルムとしての、上記および下記のフィルム、特には異なるリターデーションを有する少なくとも2つの領域または領域のパターンを有するフィルムの使用において、前記フィルムを切り替え可能なLCセルの基板間に配置することを特徴とする使用に関するものである。
【0020】
本発明はさらに、互いに平行であって少なくとも一方が入射光に対して透明である2つの平行な基板、前記2つの透明基板のうちの少なくとも一方の内側に設けられアラインメント層と重なっていても良い電極層、および電界印加によって少なくとも2つの異なる状態間で切り替え可能である前記2つの基板間に配置されたLC媒体によって形成されるLCセルを有する上記および下記のLCDであって、前記LCDが前記LCセルを形成する前記2つの面平行な基板の間に配置された上記および下記の重合LC材料を有する少なくとも一つのフィルムを有するLCDに関するものである。
【0021】
<用語の定義>
本願で使用される「フィルム」という用語には、ほぼ顕著な機械的安定性および可撓性を示す自己保持性、すなわち自立性のフィルム、ならびに支持基板上または2個の基板間のコーティングまたは層が含まれる。
【0022】
「液晶またはメソゲン材料」または「液晶またはメソゲン化合物」という用語は、1以上のロッド形状、ボード形状またはディスク状のメソゲン基、すなわち液晶相挙動を誘発する能力を有する基を含む材料または化合物を指すべきものである。ロッド形状またはボード形状の基を有する液晶(LC)化合物は、当業界においては「カラミチック」液晶とも称される。円板形状基を有する液晶化合物は、当業界においては「ディスコチック」液晶とも称される。メソゲン基を有する化合物または材料は、必ずしもそれ自体が液晶相を示す必要はない。それらが他の化合物のとの混合物である場合、あるいはメソゲン化合物または材料あるいはそれらの混合物が重合した場合のみに液晶相挙動を示すものであることも可能である。
【0023】
簡潔のため、以下において「液晶材料」という用語は、液晶材料およびメソゲン材料の両方に用いる。
【0024】
1つの重合性基を有する重合可能な化合物は「モノ反応性」化合物とも称され、2個の重合性基を有する化合物は「ジ反応性」化合物と称され、2個より多い重合性基を有する化合物は「多反応性」化合物と称される。重合性基を持たない化合物は、「非反応性」化合物とも称される。
【0025】
「反応性メソゲン」(RM)という用語は、重合性メソゲン化合物または液晶化合物を意味する。
【0026】
「ダイレクタ」という用語は先行技術において知られており、液晶材料中のメソゲンの長分子軸(カラミチック化合物の場合)または短分子軸(ディスコチック化合物の場合)の好ましい配向方向を意味する。
【0027】
「プラナー構造」または「プラナー配向」という用語は、光学軸がフィルム面に対して実質的に平行であるフィルムを指す。
【0028】
「ホメオトロピック構造」または「ホメオトロピック配向」という用語は、光学軸がフィルム面に対して実質的に垂直である、すなわちフィルム法線に平行なフィルムを指す。
【0029】
「チルト構造」または「チルト配向」という用語は、光学軸がフィルム面に対して0〜90°の角度θで傾いているフィルムを指す。
【0030】
「スプレイ構造」または「スプレイ配向」という用語は、チルト角がさらに、フィルム面に対して垂直な方向で、0〜90°、好ましくは最小値から最大値の範囲で単調に変換する上記で定義のチルト配向を意味する。
【0031】
下記においてスプレイ型フィルムのチルト角は、別段の断りがない限り、平均チルト角θaveとして提供する。
【0032】
平均チルト角θaveは、以下のように定義される。
【0033】
【数1】

式中、
θ’(d’)は、フィルム内の厚さd’での局所チルト角であり、dはフィルムの合計の厚さである。
【0034】
均一な配向を有する一軸的に正の複屈折液晶材料を含むプラナー、ホメオトロピック、およびチルト光学フィルムでは、フィルムの光学軸は液晶材料のダイレクタによって与えられる。
【0035】
光学フィルムに関連して使用される、例えば「スプレイまたはチルト配向」あるいは「ホメオトロピック配向」または「プラナー配向」という用語で使用される「配向」という用語は、フィルムの光学軸の大体の空間的配向方向を説明するためのものである。それは、光学軸または液晶分子が、フィルム面に平行な面では全て配向しているが、前記面内において異なる領域では異なる方位「配向」方向を有する、プラナーアラインメントを持ったパターニングフィルムと混同してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例1による方法によって製造されるフィルムでの照射時間に対するリターデーションを示す図である。
【図2】本発明の実施例2による方法によって製造されるフィルムでの照射時間に対するリターデーションを示す図である。
【図3】本発明の実施例2によるピクセル化光学フィルムを示す図である。
【図4】本発明による光学フィルムを有するアクティブマトリクス型カラーLCDを模式的に描く図である。
【図5】本発明による光学フィルムを有する半透過型カラーLCDを模式的に描く図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の1態様は、重合液晶(LC)材料を有するパターニングフィルムであって、LC材料の異なるリターデーションを有する少なくとも2つの領域および異なる配向を有する少なくとも2つの領域を有し、リターデーションにおいて異なる前記領域が配向においても異なることができるか、あるいはそれらが異なる領域であることができるパターニングフィルムに関するものである。従って、例えば1実施形態は、第1および第2の領域のパターンを有するフィルムであって、前記第1および前記第2の領域がリターデーションおよび配向の両方において異なっているフィルムに関するものである。別の実施形態は、例えば第1、第2および第3の領域のパターンを有するフィルムであって、前記第1および第2の領域がリターデーションおよび配向のうちの一方において異なっており、前記第3の領域が前記第1のおよび前記第2の領域のうちの少なくとも一方とリターデーションおよび配向のうちの少なくとも一方において異なっているフィルムに関するものである。別の実施形態は、例えば第1、第2、第3および第4の領域のパターンを有するフィルムであって、それぞれの領域が他のそれぞれの領域とは異なるリターデーションを有し、前記領域のうちの2つが同じ配向を有するフィルムに関するものである。他の組合せも可能である。
【0038】
本発明によるパターニングフィルムは好ましくは、重合性LC材料の重合または架橋によって、好ましくは前述の工程a)〜e)を有する方法によって得られる。本発明で記載されている具体的な条件および材料は別として、工程a)〜e)は、専門家には既知であって、文献に記載されている標準的な手順に従って行うことができる。
【0039】
重合性LC材料は、光異性化可能な化合物、好ましくは光異性化可能なメソゲニックまたはLC化合物、非常に好ましくは重合性でもある光異性化可能な化合物を含む。異性化可能な化合物は、特定波長の光、例えばUV光に曝露されると、例えばE−Z−異性化によって形状を変える。それによって、LC材料の均一なプラナー配向の混乱が生じて、複屈折の低下を生じる。配向LC層の光遅延はLC材料の層厚dと複屈折Δnの積d・Δnとして与えられることから、複屈折の低下は、LC材料の照射部分でのリターデーション低下も生じる。次に、フィルム全体の照射領域のin situ重合によって、LC材料の配向およびリターデーションを固定する。
【0040】
LC材料の重合は、例えば熱重合または光重合によって行われる。光重合を用いる場合、LC材料の光異性化および光重合に使用される光の種類は、同一であっても異なっていても良い。LC材料の光異性化および光重合の両方を引き起こす波長の光、例えばUV光を用いる場合、光異性化および光重合の工程は好ましくは、異なる条件下で、特には異なるガス雰囲気下で行う。その場合、好ましくは光異性化は、空気中などの酸素存在下で行い、光重合は酸素の非存在下に、特に好ましくは窒素やアルゴンのような希ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行う。異性化工程を酸素存在下または空気中で行うと、酸素が材料中に存在する光重合剤からのフリーラジカルを捕捉することで、重合を防止する。次の工程では、酸素または空気を除去し、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスに置き換えることで、重合を起こさせる。それによって、工程工程の制御を良好にすることができる。
【0041】
LC材料の層での異性化の程度、従って複屈折変化は、例えば照射線量、すなわち光の強度、露光時間および/またはパワーを変えることで制御することができる。さらに、光源とLC層の間にフォトマスクを設けることで、互いに異なる特定のリターデーション値を有する領域またはピクセルのパターンを持ったフィルムを製造することができる。例えば、簡単な単色マスクを用いて、2つの異なるリターデーション値からなるフィルムを形成することができる。異なるリターデーションの複数領域を示すより複雑なフィルムは、階調マスクを用いて形成することができる。所望のリターデーション値を得た後、LC層を重合させる。このようにして、初期LC層のものからゼロまでの範囲のリターデーション値を有するポリマー位相差フィルムを形成することができる。初期LC材料層でのリターデーション値は、層厚ならびにLC材料の個々の構成成分の種類および量を適切に選択することで制御される。
【0042】
重合性LC材料は好ましくは、ネマチックまたはスメクチックLC材料、特にはネマチック材料であり、好ましくは少なくとも1種類のジ反応性または多反応性アキラルRMおよび適宜に1種類以上のモノ反応性アキラルRMを含む。ジまたは多反応性RMを用いることによって、構造が永久的に固定され、温度または溶媒などの外部の影響に対する高い機械的安定性と光学特性の高い安定性を示す架橋フィルムが得られる。従って、架橋LC材料を含むフィルムが特に好ましい。
【0043】
本発明で使用される重合性メソゲンモノ−、ジ−および多反応性化合物は、それ自体公知であって、例えば有機化学の標準的な著作(例えば、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, Thieme-Verlag,
Stuttgart)に記載されている方法によって製造することができる。
【0044】
重合性LC混合物中のモノマーまたはコモノマーとして使用可能な好適な重合性メソゲン化合物の例は、例えばWO93/22397、EP0261712、DE19504224、WO95/22586、WO97/00600およびGB2351734に開示されている。しかしながら、これら文書に開示されている化合物は、単に例と見なされるべきものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0045】
特別に重要な重合性メソゲン化合物(反応性メソゲン類)の例を下記に挙げているが、これらは単に例示的なものとすべきであって、いかなる形でも本発明を限定するものではなく、本発明を説明するためのものである。
【0046】
【化1】

【0047】
【化2】

【0048】
上記の式において、Pは重合性基、好ましくはアクリル、メタクリル、ビニル、ビニロキシ、プロペニルエーテル、エポキシ、オキセタンまたはスチリル基であり;xおよびyは1〜12の同一または異なった整数であり;Aは、Lによってモノ置換、ジ置換もしくはトリ置換されていても良い1,4−フェニレン、または1,4−シクロヘキシレンであり;uおよびvは互いに独立に、0または1であり;Zは−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−または単結合であり;Rは極性基または非極性基であり;L、LおよびLは互いに独立に、H、F、Cl、CNまたは1〜7個の炭素原子を有するハロゲン化されていても良いアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシ基であり;rは0、1、2、3または4である。上記の式中におけるフェニル環は、1、2、3または4個の基Lによって置換されていても良い。
【0049】
これに関して「極性基」という用語は、F、Cl、CN、NO、OH、OCH、OCN、SCN、4個以下の炭素原子を有するフッ素化されていても良いアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ基、あるいは1〜4個の炭素原子を有するモノ−、オリゴ−またはポリフッ素化アルキルもしくはアルコキシ基から選択される基を意味する。「非極性基」という用語は、「極性基」の上記定義によって網羅されない、1以上、好ましくは1〜12個の炭素原子を有するハロゲン化されていても良いアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ基を意味する。
【0050】
特別に好ましいものは、例えば上記式Igの化合物のような、高い複屈折を有するアセチレン基またはトラン基を有する1以上の重合性化合物を含む混合物である。好適な重合性トラン類は、例えばGB2351734に記載されている。
【0051】
好適な光異性化可能な化合物は公知である。光異性化可能な化合物の例には、アゾベンゼン類、ベンズアルドキシム類、アゾメチン類、スチルベン類、スピロピラン類、スピロオキサジン類、フルギド類、ジアリールエテン類、ケイ皮酸化合物類などがある。さらに別の例には、例えばEP1247796に記載のような2−メチレンインダン−1−オン類、ならびに例えばEP1247797に記載のような(ビス−)ベンジリデンシクロアルカノン類がある。
【0052】
特に好ましくはLC材料は、1以上のケイ皮酸化合物、特には例えばUS5770107(P0095421)およびEP02008230.1に記載のようなケイ皮酸化合物(ケイ皮酸エステル)反応性メソゲン(RM)を含む。非常に好ましくはLC材料は、下記式から選択される1以上のケイ皮酸化合物RM(ケイ皮酸エステルRM)を含む。
【0053】
【化3】

【0054】
式中、
P、Aおよびvは上記の意味を有し;Lは、上記で定義のLのいずれか1つの意味を有し;Spは、例えば1〜12個の炭素原子を有するアルキレンまたはアルキレンオキシなどのスペーサ基または単結合であり;Rは、上記で定義のYまたはRであるか、P−Spを意味する。
【0055】
特に好ましいものは、上記で定義の極性末端基Yを有するケイ皮酸化合物RMである。非常に好ましいものは、RがYである式IIIおよびIVのケイ皮酸化合物RMである。
【0056】
LC材料において光異性化を引き起こすのに使用される光照射は、光異性化可能な化合物の種類によって決まり、当業者は容易に選択することができる。通常、UV光によって誘発される光異性化を示す化合物が好ましい.例えば、式III、IVおよびVの化合物のようなケイ皮酸化合物の場合、代表的にはUV−A範囲(320〜400nm)の波長または365nmの波長を有するUV光を用いる。
【0057】
高含有量で光異性化可能な化合物を含む重合性LC材料は、光学的位相差フィルムのリターデーションの容易な制御および調節が可能になることから、そのような材料が本発明の目的のために特に有用であることが見出された。例えば、高含有量で光異性化可能な化合物を含むLC混合物の配向層は、光異性化を誘発する光照射を受け、照射時間が増大するに連れて、リターデーションの低下が大きくなることを示す。そのような材料では、リターデーションをより広い範囲の値内で変えることができ、ごくわずかなリターデーション変化しか示さない材料と比較して、例えば照射時間を変えることで、より正確に制御することができる。
【0058】
従って、本発明の第1の好ましい実施形態によれば、重合性LC材料の重合性成分は、少なくとも12モル%の光異性化可能な化合物、好ましくはケイ皮酸化合物RM、最も好ましくは式III、IVおよびVから選択されるものを含む。
【0059】
「重合性成分」という用語は、総重合性混合物中の重合性メソゲンおよび非メソゲン化合物を指す。すなわち開始剤、界面活性剤、安定剤、溶剤などの他の非重合性成分および添加剤を含まない。
【0060】
好ましくはLC材料の重合性成分は、12〜100モル%、非常に好ましくは40〜100モル%、特には60〜100モル%、最も好ましくは80〜100モル%の光異性化可能な化合物、好ましくはケイ皮酸化合物RM、最も好ましくは式III、IVおよびVから選択されるものを含む。
【0061】
別の好ましい実施形態では、LC材料の重合性成分は、20〜99モル%、好ましくは40〜80モル%、最も好ましくは50〜70モル%の光異性化可能な化合物、好ましくはケイ皮酸化合物RM、最も好ましくは式III、IVおよびVから選択されるものを含む。
【0062】
別の好ましい実施形態では、LC材料の重合性成分は、100モル%の光異性化可能なRM、好ましくはケイ皮酸化合物RM、最も好ましくは式III、IVおよびVから選択されるものを含む。
【0063】
重合フィルムにおけるLC−分子(ダイレクタ)のチルト角θは、リターデーション測定から求めることができる。それらの測定から、LC材料を光異性化に用いられる光照射に、比較的長時間または比較的高い光強度で露光すると、それの最初のプラナー配向がチルト配向またはスプレイ配向に変わることが示される。特に、これらのスプレイ型フィルムは、低プレチルト基板上の形成されるスプレイ型LCフィルムに通常伴うリバース・チルト欠陥を示さない。従って、本発明による方法は、均一なスプレイ配向の位相差フィルムを得る優れた方途を提供するものである。
【0064】
そこで、本発明の第2の好ましい実施形態によれば、フィルムにおけるLC材料の配向は、LC材料において異性化を引き起こすのに用いられる光照射の照射時間および/または強度を変えることで制御される。この好ましい実施形態は、上記の工程a)〜e)に記載されたように、プラナー配向を有する重合性LC材料層中の配向を変えることにより、スプレイ構造を有し、リバース・チルト欠陥の数が少なく、あるいはチルト欠陥がない重合LCフィルムの製造方法に関するものでもある。この第2の好ましい実施形態は、好ましくは厚さが3μm未満、非常に好ましくは0.5〜2.5μmである、前記方法によって得られるスプレイ配向フィルムに関するものでもある。
【0065】
最適な照射時間および照射強度は、使用されるLC材料の種類、特にはLC材料中の光異性化可能な化合物の種類および量によって決まる。
【0066】
上述のように、例えばケイ皮酸化合物RMを含む重合性LC材料のリターデーション低下は、ケイ皮酸化合物RMの濃度が高い混合物では大きくなる。他方、高線量のUV光で重合性LC材料を照射すると、スプレイ配向フィルムが形成される。
【0067】
そこで、LC層でのリターデーションおよび配向の変化を制御するための別の方法は、LC層におけるプラナー配向をなお維持しながら、光異性化可能な化合物の濃度の関数として、光異性化によって得られるリターデーションの最大低下を規定することである。
【0068】
プラナーからスプレイへの配向変化が必要とされない本発明によるフィルムの製造方法で使用される重合性LC混合物では、重合性成分は好ましくは、40〜90モル%、非常に好ましくは50〜70%の光異性化可能な式III、IVおよび/またはVのケイ皮酸化合物を含む。
【0069】
プラナーからスプレイへの配向変化が望ましい本発明によるフィルムの製造方法で使用される重合性LC混合物では、重合性成分は好ましくは、100%の式III、IVおよび/またはVの光異性化可能なケイ皮酸化合物を含む。
【0070】
やはり、プラナーからスプレイへの配向変化が望ましい本発明によるフィルムの製造方法で使用される重合性LC混合物は好ましくは、Rがアルキル基である式IIIまたはIVの光異性化可能なケイ皮酸化合物を含まない。
【0071】
フォトマスク法を用いることによって、この第2の好ましい実施形態による方法を用いて、異なる配向および/または異なるリターデーションを持った領域を有するパターニングフィルムを製造することができる。
【0072】
特に好ましいものは、プラナー配向を持つ少なくとも一つの領域およびスプレイド配向を持つ少なくとも一つの領域を有するフィルムである。
【0073】
さらに好ましいものは、リターデーションがゼロである少なくとも一つの領域を有するフィルムである。
【0074】
上記の方法を用いて、複数の重合LCフィルムを含み、それぞれがLC材料の異なる配向を有する複数層を、上記の工程A)、B)およびC)を有する方法によって製造することもできる。
【0075】
特に好ましいものは、2以上、非常に好ましくは2、3または4個の重合LCフィルムを有する多層構造である。
【0076】
例えば、第1の重合プラナーLCフィルムを、上記の方法に従って製造する。そのフィルムを基板として用い、次に同じLC混合物の第2の層でコーティングする。次に、第2の層もプラナー方向に配列する。そうして、2枚のプラナー重合LCフィルムを含む積層構造を製造することができる。重合前に、第2の層を、例えば十分な線量のUV光で照射すると、それはスプレイ構造を示す。従って、プラナーおよびスプレイ型重合LCフィルムを含む積層構造を製造することができる。
【0077】
重合前に、第1の層のLC混合物を例えば十分な線量のUV光で照射すると、第1の層はスプレイ型LCフィルムを生じる。同じLC混合物の第2の層でこのスプレイ型フィルムをコーティングし、照射してから重合させると、第2の層はホメオトロピック的に配列した層を形成することから、スプレイおよびホメオトロピックフィルムの積層構造体を製造することができる。
【0078】
特に好ましいものは、プラナー配向を持つ少なくとも一つの層およびスプレイ配向を持つ少なくとも一つの層を有する多層体である。
【0079】
さらに好ましいものは、スプレイ配向を持つ少なくとも一つの層およびホメオトロピック配向を持つ少なくとも一つの領域を有する多層体である。
【0080】
上記の方法を組み合わせて、異なる配向を持った領域と異なるリターデーションを持った領域のパターンを有するフィルムを製造することもできる。
【0081】
上記の方法を組み合わせて、2以上の層を有する多層体であって、少なくとも一つの層が異なる配向を有する領域および/または異なるリターデーションを領域のパターンを有する多層体を製造することも可能である。
【0082】
第3の好ましい実施形態では、本発明によるフィルムを、ディスプレイの切り替え可能なLCセルの外ではなく、切り替え可能なLCセルを形成し、切り替え可能なLC媒体を含む基板間、通常はガラス基板間でのLCDにおける光学位相差フィルムとして用いる(セル内使用)。
【0083】
光学的位相差フィルムが通常はLCセルと偏光板の間に置かれている従来のディスプレイと比較して、光学的位相差フィルムのセル内使用はいくつかの利点を有する。例えば、光学フィルムがLCセルを形成するガラス基板の外側に貼り付けられているディスプレイでは通常、視角特性をかなり損ない得る視差の問題がある。位相差フィルムをLCディスプレイセル内部に設けると、その視差の問題を軽減または回避することすら可能である。
【0084】
この実施形態によるLCDは好ましくは、
1)下記に挙げた順で縁部から開始してセルの中央まで、以下の構成要素:
11)互いに平行である第1および第2の基板面であって、少なくとも一方が入射光に対して透明であるもの、
12)前記基板の一方の上の非線形電気素子のアレイであって、前記LCセルの個々のピクセルを個別に切り替えるのに用いることができ、前記素子が好ましくはトランジスタのような能動素子、非常に好ましくはTFTであるもの、
13)前記基板の一方の上、好ましくは前記非線形素子アレイを有する基板に対向する基板上に設けられたカラーフィルターアレイであって、前記カラーフィルターが平坦化層によって覆われていても良いもの、
14)前記第1の基板の内側に設けられた第1の電極層、
15)任意の構成要素として、前記第2の基板の内側に設けられた第2の電極層、
16)任意の構成要素として、前記第1および第2の電極上に設けられた第1および第2のアラインメント層、
17)電界を印加することで少なくとも2つの異なる状態間で切り替え可能なLC媒体
を有する液晶(LC)セル;
2)前記LCセルの一方の側にある第1の直線偏光板;
3)任意の構成要素として、前記第1の直線偏光板のものに対向する前記LCセルの側の第2の直線偏光板;ならびに
4)少なくとも1個のパターニング光学位相差フィルム
を有し;
前記パターニング光学位相差フィルム4)が、前記LCセルの前記第1の基板と第2の基板の間、好ましくは前記カラーフィルターと前記液晶媒体の間、非常に好ましくは前記カラーフィルターと前記電極層のうちの一方の間、あるいは平坦化層が存在する場合には、前記平坦化層と前記電極層のうちの一方の間に配置されていることを特徴とする。
【0085】
この好ましい実施形態によるLCDは図4に例示的に示してあり、2つの基板(11a、11b)、TFTアレイ(12)、カラーフィルターアレイ(13a)、平坦化層(13b)、電極層(14)および任意の(15)、任意の2つのアラインメント層(16a、16b)、LC媒体(17)、ならびに前記平坦化層とLC媒体の間に配置されて別のアラインメント層(16c)上に設けられていても良い本発明による光学位相差フィルム(4)を有する。
【0086】
ディスプレイモードに応じて、アラインメント層(16a)および/または(16b)、ならびに電極層(14)および(15)のうちの一方を省略することもできる。好ましくは、アラインメント層(16c)が、光学位相差フィルム(4)と平坦化層(13b)との間に存在する。
【0087】
光学位相差フィルム(4)は、平坦化層(13b)を存在させずにカラーフィルターアレイ(13a)上に直接(すなわち、中間層を存在させずに)配置して、光学位相差フィルムが平坦化層として働くようにすることができる。光学位相差フィルム(4)をカラーフィルターアレイ(13a)と平坦化層(13b)の間に配置することも可能である。好ましくは、アラインメント層(16c)が光学位相差フィルム(4)とカラーフィルター(13a)の間に存在する。
【0088】
特に好ましくは、光学位相差フィルム(4)はカラーフィルター(13a)またはディスプレイセル内の平坦化層(13b)の上、すなわちカラーフィルターまたは平坦化層の上に直接設け、アラインメント層によって覆われていても良く、LCフィルム製造用の基板となる。
【0089】
フラットパネルディスプレイで使用されるカラーフィルター(13a)としては、先行技術で公知のいずれか標準的なカラーフィルターを用いることができる。そのようなカラーフィルターは代表的には、原色である赤、緑および青(R、G、B)のうちの一つを透過する異なるピクセルのパターンを有する。光学位相差フィルム(4)は好ましくは、3種類の異なるリターデーションを有するピクセルのパターンを示し、各リターデーションが調節されて、それが直線偏光を円偏光に変換する効率が色R、GおよびBのいずれかについて最適化されるようになっており、好ましくはカラーフィルターのR−、G−またはB−ピクセルのそれぞれが、その色に関して最適化されたリターデーションを有する光学位相差フィルムの相当するピクセルによって覆われるようにカラーフィルター上で配置されている。
【0090】
本発明によるフィルムの厚さ、あるいは多層体の場合には単一層の厚さは、好ましくは0.5〜2.5ミクロン、非常に好ましくは0.6〜2ミクロン、最も好ましくは0.7〜1.5ミクロンである。
【0091】
本発明によるフィルムまたは層の軸上リターデーション(すなわち、0°視角で)は、好ましくは60nm〜400nm、特に好ましくは100nm〜350nmである。
【0092】
LCDの実際の用途の場合、光学位相差フィルムが、先行技術において1/4波位相差板または位相差フィルム(QWF)すなわちλ/4板とも称される、入射光の波長のほぼ0.25倍のリターデーションを示すことが特に好ましい。QWFとして用いるのに特に好ましいリターデーションは、90〜200nm、好ましくは100〜175nmである。
【0093】
さらに好ましいものは、1以上、好ましくは1、2または3つの異なる値のリターデーションを有する領域を持つ位相差フィルムであって、前記各値が調節されて、それが直線偏光を円偏光に変換する効率が原色である赤、緑および青(R、G、B)のいずれかの光に関して最適化されるようになっているものである。特には、前記リターデーション値は以下の通りである。
【0094】
波長600nmの赤色光の場合、リターデーションは140〜190nm、好ましくは145〜180nm、非常に好ましくは145〜160nm、最も好ましくは150nmである。
【0095】
波長550nmの緑色光の場合、リターデーションは122〜152nm、好ましくは127〜147nm、非常に好ましくは132〜142nm、最も好ましくは137nmである。
【0096】
波長450nmの青色光の場合、リターデーションは85〜120nm、好ましくは90〜115nm、非常に好ましくは100〜115nm、最も好ましくは112nmである。
【0097】
本発明によるフィルムは、LC材料用のアラインメント層として用いることもできる。例えば、本発明による重合LCフィルムを用いて、上にコートされる重合性LC材料のその後の層をアラインメントすることも可能である。このようにして、重合LCフィルムの積層体を製造することができる。第1の重合LC層の配向が、次の層上のアラインメントに影響を与え、LC材料におけるアラインメントが照射強度、時間および光異性化可能な化合物の量を変えることで変わり得ることから、プラナー、ホメオトロピックおよびスプレイ型フィルムの異なる組合せの積層体を製造することが可能である。
【0098】
重合LCフィルムを製造するには、重合性LC混合物を、好ましくは基板上にコーティングし、好ましくはプラナー配向にアラインメントし、例えば熱または光線照射への曝露によってin situで重合させてLC分子の配向を固定する。アラインメントおよび硬化は、混合物のLC相で行う。この技術は当業界で公知であり、例えばブレールらの報告(D.
J. Broer, et al., Angew. Makromol, Chem. 183 (1990), 45-66)に記載されている。
【0099】
LC材料のアラインメントは例えば、材料コーティングを行う基板を処理することで、あるいはコーティング時またはコーティング後に材料を剪断することで、あるいはコーティングされた材料に磁界もしくは電界を印加することで、あるいはLC材料に表面活性化合物を加えることで行うことができる。アラインメント技術についての総説が、例えばセージの著作(I. Sage, ″Thermotropic Liquid Crystals″, G. W. Gray編, John
Wiley & Sons, 1987, pp. 75-77)およびウチダらの著作(T. Uchida and H. Seki, ″Liquid
Crystals-Applications and Uses, Vol. 3″, B. Bahadur編, World Scientific Publishing, Singapore
1992, pp. 1-63)にある。アラインメントの材料および方法についての総説は、コニャールの報告(J. Cognard, Mol. Cryst. Liq.
Cryst. 78, Supplement 1 (1981), pp. 1-77)にある。
【0100】
好ましい実施形態では、重合性LC材料は、基板上でのLC分子のプラナーアラインメントを誘導または促進する添加剤を含む。好ましくはその添加剤は、1以上の界面活性剤を含む。好適な界面活性剤は、例えばコニャールの報告(J. Cognard, Mol. Cryst. Liq. Cryst. 78, Supplement 1, 1-77
(1981))に記載されている。特に好ましいものは、ノニオン系界面活性剤、特には例えば市販のフルオロカーボン系界面活性剤Fluorad FC−171(登録商標;3M社(3M Co.)から)またはZonyl FSN(登録商標;デュポン社(DuPont)から)などのフルオロカーボン系界面活性剤およびGB0227108.8に記載の界面活性剤である。
【0101】
重合性LC材料は好ましくは、溶媒に、好ましくは有機溶媒に溶解または分散させる。次に、得られた溶液または分散液を基板上に、例えばスピンコーティングその他の公知の方法によってコーティングし、溶媒を留去してから重合を行う。
【0102】
重合性LC材料はさらに、ポリマー系結合剤またはポリマー系結合剤を形成することができる1以上のモノマーおよび/または1以上の分散補助剤を含むことができる。好適な結合剤および分散補助剤は、例えばWO96/02597に開示されている。しかしながら特に好ましいものは、結合剤も分散補助剤も含まないLC材料である。
【0103】
重合は、例えば熱または化学線照射への曝露によって行うことができる。化学線照射とは、UV光、IR光または可視光のような光の照射、X線またはγ線照射、あるいはイオンまたは電子などの高エネルギー粒子の照射を意味する。好ましくは重合は、非吸収波長でのUV照射によって行う。化学線源としては、例えば単一のUVランプまたはUVランプセットを用いることができる。高ランプパワーを用いると、硬化時間を短縮することができる。化学線の別の可能な線源は、UVレーザ、IRレーザまたは可視レーザなどのレーザである。
【0104】
重合は好ましくは、化学線の波長で吸収を行う開始剤の存在下で行う。例えば、UV光によって重合を行う場合、UV照射下に分解して、重合反応を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成する光開始剤を用いることができる。アクリル酸エステル基またはメタクリル酸エステル基を有する重合性材料を硬化する場合、好ましくはラジカル光開始剤を用い、ビニル基、エポキシド基およびオキセタン基を有する重合性材料を硬化する場合は、好ましくはカチオン性光開始剤を用いる。加熱すると分解して、重合を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成する重合開始剤を用いることも可能である。ラジカル重合用の光開始剤としては、例えば市販のIrgacure 651、Irgacure 184、Darocure 1173またはDarocure 4205(いずれもチバ・ガイギー社(Ciba Geigy AG)から)を用いることができ、一方でカチオン光重合の場合には市販のUVI 6974(ユニオン・カーバイド(Union Carbide))を用いることができる。
【0105】
重合性LC材料はさらに、例えば触媒、増感剤、安定剤、インヒビター、連鎖移動剤、共反応性モノマー、表面活性化合物、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水化剤、接着剤、流動改善剤、消泡剤、脱泡剤、希釈剤、反応性希釈剤、補助剤、着色剤、染料または顔料などの1以上の他の好適な成分を含むことができる。
【0106】
本発明による光学位相差フィルムは、従来のLCD、特には例えばECB(電界制御複屈折)、CSH(カラー・スーパーホメオトロピック)、VANもしくはVAC(垂直配向ネマチックもしくはコレステリック)ディスプレイ、MVA(マルチドメイン垂直配向)もしくはPVA(パターン垂直配向)ディスプレイのようなDAP(配向相の変形)またはVA(垂直配向)モードのものにおいて、例えばOCB(光学補償ベンドセルまたは光学補償複屈折)、R−OCB(反射OCB)、HAN(ハイブリッド配向ネマチック)またはパイ−セル(π−セル)ディスプレイのようなベンドモードのディスプレイもしくはハイブリッド型ディスプレイにおいて、さらにはTN(ねじれネマチック)、HTN(高ねじれネマチック)またはSTN(超ねじれネマチック)モードのディスプレイにおいて、AMD−TN(アクティブマトリクス駆動TN)ディスプレイにおいて、あるいは「スーパーTFT」ディスプレイとも称されるIPS(インプレインスイッチング)モードのディスプレイにおいて、リターデーションまたは補償フィルムとして、あるいはアラインメント層として用いることができる。
【0107】
特に好ましいものは、TN、STN、VAおよびIPSディスプレイであり、特にはアクティブマトリクス型のものである。さらに好ましいものは、半透過型ディスプレイである。
【0108】
本発明によるフィルムは、上記のもの以外の目的のための光学機器または電気光学機器で例えばアラインメント層、光学フィルターもしくは偏光ビームスプリッターとして、あるいは装飾用途もしくはセキュリティ用途で用いることもできる。
【0109】
例えばそれらは、装飾用途またはセキュリティ用途での複屈折マーキング、画像またはパターンとして用いることができる。本発明の方法を用いると、交差した偏光板間でのみ見ることができるフィルムでのネガ画像を形成することができる。これらのフィルムの好ましい用途は、重要な文書の認証および偽造防止のための、あるいは隠れた画像もしくはパターンの確認のためのセキュリティマーキングまたはセキュリティスレッドとしてである。従ってそれは、消費者製品または民生用品、車体、ホイル、充填材料、布もしくは織物に使用したり、プラスチックに組み込んだり、あるいは預金通帳、クレジットカードもしくはIDカード、国家的なID文書、ライセンスまたは切手、チケット、株、小切手のような金銭的価値のあるものに用いることができる。
【0110】
複屈折マーキングとしての用途で特に好ましいものは、反射基板、例えばEP02019792.7に記載のような金属または金属蒸着フィルムまたはホイル上に設けられた、あるいはその上で直接作られたパターニングフィルムである。
【0111】
本発明による方法を用いることで、傾斜屈折率を有する、すなわちフィルム面に対して平行な方向で、片方の縁から反対側の縁まで屈折率が連続的に低下する、厚さ一定で横寸法が大きいフィルムを形成することも可能である。
【0112】
そのようなフィルムは例えば、下記のようにして製造することができる。上記および下記の重合性LC材料を、プラナーアラインメントを誘導するためにラビング処理されたポリイミドアラインメント層が設けられた2つの面平行な基板によって形成されたセルに流し込む。次に、ある領域ではUVが通過せず、徐々に移動して全てのUVが通過する領域に至るように形成されているグレースケールマスクを介して、LC材料を上記の方法に従って異性化する。それによって、厚さは一定でありながら、フィルムにおいて屈折率が徐々に変化するようになる。次に、LC材料フィルムを、例えば光重合によってin situで重合させ、得られたポリマーフィルムをセルから取り出す。それによって、光をフィルムの狭い部分に通過させるための導光板として好適な傾斜屈折率を有するフィルムが提供される。
【0113】
数ミリメートルの範囲のフィルム厚を得るには、好ましくは、例えばガラス板または石英板のような2つの剛性基板によって形成されるセルで、重合性LC材料をコーティング、アラインメントおよび重合する。そのようなフィルムは、例えば導光板として用いることができる。
【0114】
例えばWO01/72037およびWO02/060187では、大面積のフラットパネルディスプレイまたはプロジェクションディスプレイとして用いられる導光板が開示されている。1メートルを超える横寸法およびシートの一方の縁から反対側の縁まで連続的に減少する例えば0.5〜2.5mmの厚さを有する平坦で楔形のガラス製もしくはプラスチック製パネルからなる導光板である。例えばレーザ光などの光が、相対的に大きい厚さを有する短辺で楔に進入し、その楔内を進み、光が楔を出る臨界角に達するまで、徐々に反射角が大きくなる内側表面で反射される。光が楔に進入する入射角は、その光が楔を出るまでにその楔内を移動する距離を制御する。楔形に代わるものとして、WO02/060187には、一方の表面上でエンボス加工された回折格子を有する平面パネルを用いることが提案されている。しかしながら、楔形パネルまたはエンボス加工回折格子を有する大面積パネルの製造では、例えばガラスまたはアクリルなどの高価な光学的品質の材料の高精度での複雑な加工が必要である。
【0115】
この欠点は、厚さが一定で、傾斜屈折率勾配を有する本発明によるフィルムを用いることで回避することができる。屈折率勾配があることで、そのフィルムは、屈折率一定であるが厚さ勾配がある楔形と光学的に同様に動作するが、楔形や表面格子を得るためのフィルムの加工は必要ない。
【0116】
本発明による多層体またはパターニング位相差フィルムは、例えば米国特許第6437915号に記載のような視差バリアなどの光学的効果に用いることもできる。
【0117】
下記の実施例は、本発明を説明するものであって、本発明を限定するものではない。下記の実施例は、本発明を限定することなく、それを説明する上で役立つものである。これらの実施例において、別段の断りがない限り、温度はいずれも摂氏単位であり、パーセントはいずれも重量パーセントである。
【0118】
実施例1
重合性成分が専ら異性化可能なRMからなる(すなわち、重合性成分中の異性化可能な化合物の合計量が100モル%である)重合性LC混合物M1を調製した。
【0119】
M1:
(1)9.0%
(2)23.0%
(3)14.4%
(4)18.0%
(5)17.0%
(6)17.0%
イルガキュア651:1.0%
フルオラドFC171:0.6%
【0120】
【化4】

【0121】
【化5】

【0122】
化合物(1)〜(6)は先行技術で公知である。イルガキュア651は、市販の光開始剤である(チバAG(Basel, Switzerland)から)。フルオラド(Fluorad)FC171は、市販のノニオン系フルオロカーボン界面活性剤(3Mから)である。
【0123】
混合物を溶解させて、50重量%キシレン溶液を調製した。この溶液をろ過し(0.2μm PTFE膜)、ガラス/ラビング処理ポリイミドスライド(日本合成ゴム(Japan Synthetic Rubber)からの低プレチルトポリイミドJSR AL 1054)上にスピンコーティングした。そのフィルムを、時間を変えて、空気中にて、20mWcm−2の365nm光で露光した。次に、得られたフィルムを、N雰囲気下に60秒間にわたり、20mWcm−2のUV−A照射を用いて光重合した。フィルムの配向軸を偏光板軸に対して角度45°とした平行な偏光板間のフィルムの透過率を測定することで、製造した各サンプルの視角−60°〜+60°におけるリターデーションを求めた。光源としてタングステン灯を用い、波長範囲420〜800nmについてオリエル(Oriel)分光器で光の透過率を測定した(O. Parri et al., Mol. Cryst. Liq. Cryst., Vol.
332, p.273, 1999参照)。放線入射(0°)でのリターデーション値を、照射時間の関数として図1に示した。
【0124】
図1から、365nmの光を連続照射することで、リターデーション値が相対的に低いフィルムになることが明らかである。300秒間にわたって露光されたフィルムは、リターデーションがゼロであることが認められた。次に、各重合サンプルの厚さをKLAテンコル(Tencor)アルファ−ステップ(alpha-step)500を用いて測定したところ、実験誤差の範囲内で、1.1±0.1μmで一定であることが認められた。フィルム厚は一定のままであるがフィルムのリターデーションは低下していることから、フィルムの複屈折も低下している。
【0125】
フィルムにおけるLC−分子(ダイレクタ)のチルト角θも、リターデーション測定値から求めた。それらの測定値は、365nm照射で20秒間まで露光したフィルムが最初のプラナー配向を維持したことを示している。365nm照射で25秒間以上露光されたフィルムは、スプレイ配向を有していた。顕著な点として、それらのスプレイ型フィルムは、低プレチルト基板上に形成された時に、そのようなLC−フィルムに通常伴う逆チルト不良を示さなかった。従って、この方法は、均一なスプレイ型位相差フィルムを得る優れた方法を提供するものである。
【0126】
スプレイ型位相差フィルムの製造だけでなく、平面の1/4波位相差板を製造することも望ましい。青色ピクセルが450nmを中心とし、赤色ピクセルが600nmを中心とすると仮定すると、そのような層は、初期値の150nmから、約40nmのリターデーション低下を必要とする。リターデーション範囲の正確な要件は、使用されるディスプレイの種類によって決まる。上記の混合物M1を用いて形成されるフィルムは、リターデーションにおけるこの低下を与えた。同時にそれらのフィルムは、プラナー配向からスプレイ配向にも変わった。
【0127】
実施例2
非異性化性の反応性メソゲン(7)を32重量%含む重合性LC混合物M2を調製した。
【0128】
M2:
(3)14.4%
(4)18.0%
(5)17.0%
(6)17.0%
(7)32.0%(非異性化性)
イルガキュア651:1.0%
フルオラドFC171:0.6%
【0129】
【化6】

【0130】
M2において、重合性成分(化合物(3)〜(7)からなる)中での異性化可能な化合物(3)〜(6)の合計量は72.8モル%であり、重合性成分中での非異性化性化合物(7)の量は27.2モル%である。
【0131】
この混合物のフィルムを、実施例1に詳細に記載の方法に従って製造および分析した。法線でのリターデーションを、図2において照射の関数としてプロットしている。
【0132】
リターデーションデータから、フィルムにおけるLC分子の配向も確認した。20mWcm−2で365nmの光で75秒間露光した後、製造されたフィルムはプラナー型からスプレイ型に変化することが認められた。従って、この混合物のフィルムは、実施例1でのものより良好にプラナー配向を保存する。フィルム厚を測定したところ、フィルムの配向とは無関係に一定であることが認められた(1.0±0.1μm)。従って、所望のリターデーション値範囲にわたってプラナー配向1/4波フィルムを形成することが可能である。
【0133】
より多くの量の非異性化性RMを組み込むことで混合物をさらに変化させることによって、最初のプラナー配向を保存しながら、リターデーションをさらに大きくシフトさせることが可能である。
【0134】
パターニングされたリターデーション層を形成するという考え方をさらに示すため、スピンコーティングされたフィルムを、上記で詳述した方法により、グレースケール(0:50:100%T)マスクを介した光照射および光重合を行った。得られたピクセル化位相差フィルムであって、交差した偏光板間に保持されたものについての写真を図3に示した。
【0135】
実施例3
A)実施例1で詳述した混合物M1から製造した第1の重合プラナーLC層を基板として用い、次に同じLC混合物M1の第2の層でコーティングし、そしてそれを重合させた。第2の層はプラナー配向であることが認められた。そうして、2つのプラナー重合LCフィルムを有する積層体を製造した。
【0136】
B)第1および第2の重合LC層をA)に記載の方法に従って製造したが、第2の層を十分な線量の365nmのUV光照射してから重合させたところ、それはスプレイ型配向を示した。そうして、プラナー型およびスプレイ型の重合LCフィルムを有する積層体を製造した。
【0137】
C)第1のスプレイ型LC層を、実施例1に記載の方法に従って混合物M1から製造し、アラインメント層として用いた。同じLC混合物M1の第2の層を、最大チルト角を示す(すなわちほぼホメオトロピック配向を有する)第1のスプレイ型フィルムの面上にコーティングした。第2の層における前記混合物を先に365nmのUV光で照射してから、重合させた。その結果、LC材料の第2の層は、層全体を通じてホメオトロピックに配向していた。そうして、スプレイ型およびホメオトロピック型のLCフィルムの積層体を製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の光異性化可能な化合物を含む重合液晶(LC)材料を有するフィルムにおいて、前記フィルムが前記LC材料の異なるリターデーションを有する少なくとも2つの領域および/または異なる配向を有する少なくとも2つの領域を有することを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記LC材料の異なるリターデーションを有する少なくとも2つの領域を有する請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
少なくとも1個の重合性および光異性化可能な化合物を含む重合性LC材料の重合または架橋によって得られる請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記LC材料の前記配向が、前記LC材料において光異性化を引き起こすのに用いられる前記光照射の照射時間および/または強度を変えることで制御される請求項1〜3の少なくともいずれかに記載のフィルム。
【請求項5】
前記重合性LC材料が、アゾベンゼン類、ベンズアルドキシム類、アゾメチン類、スチルベン類、スピロピラン類、スピロオキサジン類、フルギド類、ジアリールエテン類、ケイ皮酸化合物類、2−メチレンインダン−1−オン類および(ビス−)ベンジリデンシクロアルカノン類から選択される1以上の光異性化可能な化合物を含む請求項1〜4の少なくともいずれかに記載のフィルム。
【請求項6】
前記重合性LC材料が、重合性メソゲニックケイ皮酸化合物類から選択される1以上の光異性化可能な化合物を含む請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
前記重合性LC材料が、下記式から選択される1以上の光異性化可能な化合物を含む請求項1〜6の少なくともいずれかに記載のフィルム。
【化1】

(式中、
Aは、1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキセンであり;
Pは、重合性基であり、
Spはスペーサー基または単結合であり;
Rは、極性基または炭素原子数15個以下の非極性のアルキルもしくはアルコキシ基であり;
Lは各出現で独立に、H、F、Cl、CNあるいは炭素原子数1〜7個であるハロゲン化されていても良いアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシ基であり;
Vは、0または1であり;
前記フェニレン環は、Lによってモノ−、ジ−、トリ−またはテトラ置換されていても良い。)
【請求項8】
前記重合性LC材料の前記重合性成分が、少なくとも12モル%の光異性化可能な化合物を含む請求項1〜7の少なくともいずれかに記載のフィルム。
【請求項9】
前記重合性LC材料の前記重合性成分が、40〜100モル%の光異性化可能な化合物を含む請求項8に記載のフィルム。
【請求項10】
前記重合性LC材料の前記重合性成分が、100%の光異性化可能な化合物を含む請求項8に記載のフィルム。
【請求項11】
請求項8〜10の少なくとも1項に記載の重合性LC材料。
【請求項12】
重合液晶(LC)材料を有するパターニングフィルムにおいて、前記LC材料の異なるリターデーションを有する少なくとも2つの領域および異なる配向を有する少なくとも2つの領域を有することを特徴とするパターニングフィルム。
【請求項13】
請求項1〜12の少なくともいずれかに記載のフィルムの製造方法であって、
a)基板上に少なくとも1個の光異性化可能な化合物を含む重合性LC材料の層を設ける工程;
b)前記LC材料の層をプラナー配向に配列する工程;
c)前記層またはその層の選択された領域における前記LC材料を、前記異性化可能な化合物の異性化を引き起こす光照射で露光する工程;
d)前記材料の前記露光領域の少なくとも一部で前記LC材料を重合させることで、前記配向を固定する工程;および
e)任意の工程として、前記基板から前記重合フィルムを取り出す工程
を有する方法。
【請求項14】
前記LC材料の前記リターデーションおよび/または配向を、前記光異性化可能な化合物の量および/または種類を変えることで、および/または前記光照射の強度および/または前記露光時間を変えることで制御する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
異なる配向を持つ重合LC材料の少なくとも2つの層を有する多層の製造方法において、
A)基板上に少なくとも1種類の光異性化可能な化合物を含む重合性LC材料の第1の層を設ける工程、
B)LC材料の前記第1の層をプラナー配向に配列し、前記材料を重合させることで前記配向を固定する工程、
C)前記第1の層を基板として働かせて、A)およびB)の工程により、LC材料の第2の層を設ける工程
を有し、
前記第1のおよび第2の層の少なくとも一方またはそれらの層の選択された領域中の前記LC材料を、重合前に、前記異性化可能な化合物の異性化を引き起こす光で露光することを特徴とする方法。
【請求項16】
光異性化および光重合を引き起こす光照射に前記LC材料を曝露し、光異性化を酸素の存在下に行い、光重合を酸素の非存在下に行う請求項13〜15の少なくともいずれかに記載の方法。
【請求項17】
請求項13〜16の少なくともいずれかによる方法によって得られるフィルムまたは多層体。
【請求項18】
プラナー配向を持つ少なくとも一つの領域およびスプレイ配向を持つ少なくとも一つの領域を有する請求項1〜17の少なくともいずれかに記載のフィルムまたは多層体。
【請求項19】
プラナー配向を持つ少なくとも一つの層およびスプレイ配向を持つ少なくとも一つの層を有する請求項17または18に記載の多層体。
【請求項20】
スプレイ配向を持つ少なくとも一つの層およびホメオトロピック配向を持つ少なくとも一つの領域を有する請求項17または18に記載の多層体。
【請求項21】
装飾用途またはセキュリティ用途向けの液晶ディスプレイ(LCD)その他の光学的もしくは電気光学的部品装置でのアラインメント層、光学位相差フィルムまたは導光板としての、請求項1〜20の少なくともいずれかに記載のフィルムまたは多層体の使用。
【請求項22】
アクティブマトリクスカラーLCDで光学位相差フィルムとして使用される、異なるリターデーションを持つ少なくとも2つの領域を含むパターニングフィルム。
【請求項23】
請求項1〜22の少なくともいずれかに記載の光学位相差フィルムを含むLCD。
【請求項24】
LCDでの光学位相差フィルムとしての請求項1〜22の少なくともいずれかに記載のフィルムの使用であって、前記フィルムが前記切り替え可能なLCセルの前記基板間に配置されている使用。
【請求項25】
互いに平行であって少なくとも一方が入射光に対して透明である2つの平行な基板、前記2つの透明基板のうちの少なくとも一方の内側に設けられ、アラインメント層を備えていても良い電極層、および電界印加によって少なくとも2つの異なる状態間で切り替え可能である前記2つの基板間に配置されたLC媒体によって形成されるLCセルを有するLCDにおいて、前記LCDが前記LCセルを形成する前記2つの面平行な基板の間に配置された請求項1〜22の少なくともいずれかに記載の少なくとも一つのフィルムを有するLCD。
【請求項26】
1)下記に挙げた順で縁部から開始してセルの中央まで、以下の構成要素:
11)互いに平行である第1および第2の基板面であって、少なくとも一方が入射光に対して透明であるもの、
12)前記基板の一方の上の非線形電気素子のアレイであって、前記LCセルの個々のピクセルを個別に切り替えるのに用いることができ、前記素子が好ましくはトランジスタのような能動素子、非常に好ましくはTFTであるもの、
13)前記基板の一方の上、好ましくは前記非線形素子アレイを有する基板に対向する基板上に設けられたカラーフィルターアレイであって、前記カラーフィルターが平坦化層によって覆われていても良いもの、
14)前記第1の基板の内側に設けられた第1の電極層、
15)任意の構成として、前記第2の基板の内側に設けられた第2の電極層、
16)任意の構成として、前記第1および第2の電極上に設けられた第1および第2のアラインメント層、
17)電界を印加することで少なくとも2つの異なる状態間で切り替え可能なLC媒体
を有する液晶(LC)セル;
2)前記LCセルの一方の側にある第1の直線偏光板;
3)任意の構成として、前記第1の直線偏光板のものに対向する前記LCセルの側の第2の直線偏光板;ならびに
4)請求項1〜22の少なくともいずれかに記載の少なくとも1個の光学位相差フィルム
を有するLCDであって、
前記光学位相差フィルム4)が、前記カラーフィルターと前記LC媒体の間に配置されているLCD。
【請求項27】
前記カラーフィルターが、原色である赤、緑および青(R、G、B)のうちの一つを透過する異なるピクセルのパターンを有し;前記光学位相差フィルムが、3種類の異なるリターデーションを有するピクセルのパターンを示し、各リターデーションが調節されて、それが直線偏光を円偏光に変換する効率が色R、GおよびBのいずれかについて最適化されるようになっており;前記光学位相差フィルムが、前記カラーフィルターのR−、G−またはB−ピクセルのそれぞれが、その色に関して最適化されたリターデーションを有する前記光学位相差フィルムの相当するピクセルによって覆われるようにカラーフィルター上で配置されている請求項26に記載のLCD。
【請求項28】
請求項1〜22の少なくともいずれかに記載のフィルムを有する導光板。
【請求項29】
一定の厚さと屈折率勾配を有し;前記屈折率が、前記導光板の一方の縁部からそれの反対側の縁部まで、前記フィルム面に平行な方向で連続的に低下する請求項28に記載の導光板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−141549(P2011−141549A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12142(P2011−12142)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【分割の表示】特願2006−504979(P2006−504979)の分割
【原出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】