説明

リチウムイオン電池用のフッ素化添加剤

芳香族基、C=C二重結合、C=O基、または有機ケイ素基を有する所定のフッ化有機化合物の、Liイオン電池用の添加剤としての有用性が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のフッ化化合物についての、新規な電解質、電解質溶媒、及びリチウムイオン電池への新規な応用に関する。
【背景技術】
【0002】
一次及び二次リチウムイオン電池は、携帯電子デバイス向けに非常な重要性を有する。他の電池と比較すると、これらは低重量での高エネルギー密度を含む特徴を有する。これらは、通常カーボン製である陽極、金属酸化物陰極、並びに導電性塩及び溶媒を含む電解質を含む。導電性塩は、典型的にはリチウムヘキサフルオロホスフェートであるが、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等の別の塩を使用することも可能である。電解質溶媒の幾つかの好適な化合物群が、例えばJ. Electrochem. Soc. Vol. 141 (1994), pages 2989 to 2996に明示されている。アルキルカーボネートまたはアルキレンカーボネートが頻繁に使用される(EP-A-0 643 433参照)。ピロカーボネートもまた使用可能である(US-A 5,427,874参照)。アルキルアセテート、N,N-二置換アセトアミド、スルホキシド、ニトリル、グリコールエーテル、及びエーテルもまた有用であると認識されている(EP-A-0 662 729参照)。しばしばこうした溶媒の混合物が使用され、例えばジオキソランとの混合物もまた使用される(EP-A-0 385 724参照)。リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのためには、1,2-ビス(トリフルオロアセトキシ)エタン及びN,N-ジメチルトリフルオロアセトアミドもまた溶媒として使用されている(ITE Battery Letters Vol.l (1999), pages 105-109参照)。US-A 5,976,731は、リチウムイオン電池及び導電性塩のための溶媒を開示している。使用される溶媒添加剤は、カルバゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、アクリジン、ジベンゾアゼピン、またはフェナジンであり、これらは明らかに溶液を安定化するものである。フルオロメチルメチルカルボネートもまた、こうした電池用の溶媒または溶媒添加剤として有用である。
【特許文献1】EP-A-0 643 433
【特許文献2】US-A 5,427,874
【特許文献3】EP-A-0 662 729
【特許文献4】EP-A-0 385 724
【特許文献5】US-A 5,976,731
【非特許文献1】J. Electrochem. Soc. Vol. 141 (1994), pages 2989 to 2996
【非特許文献2】ITE Battery Letters Vol.l (1999), pages 105-109
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般的に、電解質中の導電性塩のための溶媒または溶媒添加剤として入手可能な化合物群の非常に大量の蓄積を、利用可能にしておくことが推奨される。導電性塩のための使用可能な添加剤の範囲を拡張することが、本発明の目的である。この目的は、本発明によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、所定のフッ化化合物がリチウムイオン電池用の電解質及び電解質溶媒向けの添加剤として使用可能であるとの発見に基づく。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明は、1-アセトキシ-2-フルオロベンゼン、1-アセトキシ-3-フルオロベンゼン、1-アセトキシ-4-フルオロベンゼン、2-アセトキシ-5-フルオロベンジルアセテート、4-アセチル-2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール、6-アセチル-2,2,3,3-テトラフルオロベンゾ-1,4-ジオキシン、1-アセチル-3-トリフルオロメチル-5-フェニルピラゾール、1-アセチル-5-トリフルオロメチル-3-フェニルピラゾール、アリルペンタフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、ベンゾイルトリフルオロアセトン、1-ベンゾイル-3-トリフルオロメチル-5-メチルピラゾール、1-ベンゾイル-5-トリフルオロメチル-3-メチルピラゾール、1-ベンゾイルオキシ-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ベンゼン、1-ベンゾイル-4-トリフルオロメチルベンゼン、1,4-ビス(t-ブトキシ)テトラフルオロベンゼン、2,2-ビス(4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネート、1,4-ビス(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)ベンゼン、2,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド、2,6-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、ジフルオロアセトフェノン、2,2-ジフルオロベンゾジオキソール、2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-4-カルバルデヒド、4,4'-ジフルオロビフェニル、1-[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]エタノン、3-(3,5-ジフルオロフェニル)-1-プロペン、トランス-α,β-ジフルオロスチルベン、フルオロベンゾフェノン、ジフルオロベンゾフェノン、1-(2'-フルオロ[1,1'-ビフェニル]-4-イル)プロパン-1-オン、6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾチイン-4-オン、4-フルオロジフェニルエーテル、5-フルオロ-1-インダノン、1-(3-フルオロ-4-メトキシフェニル)エタノン、4-フルオロ-α-メチルスチレン、フルオロフェニルアセトニトリルからなる芳香族化合物の群、
ビス(ペンタフルオロフェニル)ジメチルシラン、1,2-ビス[ジフルオロ(メチル)シリル]エタン、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N-(t-ブチルジメチルシリル)-N-メチルトリフルオロアセトアミド、t-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、2-ジメチルアミノ-1,3-ジメチルイミダゾリウムトリメチルジフルオロシリコネート、ジフェニルジフルオロシランからなるSi-C結合を有する化合物の群、
ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロプ-2-イル)2-メチレンスクシネート、ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロプ-2-イル)マレエート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)マレエート、ビス(ペルフルオロオクチル)フマレート、ビス(ペルフルオロイソプロピル)ケトン、2,6-ビス(2,2,2-トリフルオロアセチル)シクロヘキサノン、ブチル2,2-ジフルオロアセテート、シクロプロピル4-フルオロフェニルケトン、ジエチルペルフルオロアジペート、N,N-ジエチル-2,3,3,3-テトラフルオロプロピオンアミドからなるC=O結合を有する化合物の群、
アリル1H,1H-ヘプタフルオロブチルエーテル、トランス-1,2-ビス(ペルフルオロヘキシル)エチレン、(E)-5,6-ジフルオロオクタ-3,7-ジエン-2-オンからなるC=C結合を有する化合物の群、
N,N-ジエチル-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルアミンからなるアミンの群、
から選択される選択されるフッ化芳香族化合物の、
リチウムイオン電池中の電解質及び電解質溶媒のための添加剤としての使用を提供する。
【0006】
「ジフルオロアセトフェノン」なる語は、芳香環の2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、及び3,5-位にフッ素置換を有する異性体を包含する。
【0007】
「フルオロベンゾフェノン」なる語は、特に2-フルオロベンゾフェノン及び4-フルオロベンゾフェノンを包含する。
【0008】
「ジフルオロベンゾフェノン」なる語は、2,3'-、2,3-、2,4'-、2,4-、2,5-、2,6-、3,3'-、3,4'-、3,4-、3,5-、及び4,4'-位にフッ素置換を有する異性体を包含する。
【0009】
「フルオロフェニルアセトニトリル」なる語は、2-、3-、及び4-位にフッ素置換を有する異性体を包含する。
【0010】
こうした化合物は、既知の方法で合成することができ、また例えばABCR GmbH & Co.KG, Karlsruhe, Germanyからも購入可能である。
【0011】
電解質溶媒中のその量は、様々である。添加剤は、添加剤−電解質溶媒の混合物中での添加剤及び電解質溶媒の合計重量を100重量%とし、これに基づいて好ましくは1乃至25重量%の量で存在する。1重量%未満の量は、低量過ぎて所望の効果をもたらさない可能性がある。25重量%以上の含量では、さらなる改善が達成されないかまたは所望の効果、例えば粘度の増大等が起こらない可能性がある。
【0012】
有用な電解質溶媒は、冒頭に述べた溶媒である。特に適当な溶媒はエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、及びフルオロメチルメチルカーボネートである。冒頭に述べた化合物に加えて有用な化合物は、ラクトン、ホルムアミド、ピロリジノン、オキサゾリジノン、ニトロアルカン、N,N-置換ウレタン、スルホラン、ジアルキルスルホキシド、ジアルキルサルファイト、ジアルキルスルホキシド、及びトリアルキルホスフェートまたはアルコキシエステルであり、これは例えばDE-A 10016816に記載の通りである。ここには有用な導電性塩についても更に言及されている。導電性塩は、典型的にはLiPF6であり、電解質中に少なくとも0.5mol/lの濃度、好ましくは0.9乃至1.1mol/lの濃度で存在する。別の導電性塩、例えばWO03020691に記載されている化合物Li(SO3-i-C3F7)2は同様に有用である。
【0013】
むろん、言及した添加剤の二つ以上を使用することも可能である。電解質溶媒の混合物を使用することもまた可能である。
本発明は、上述のフッ化化合物の1つ以上を、添加剤と電解質溶媒との混合物を100重量%としてこれに基づき、好ましくは1乃至25重量%の量で含む電解質溶媒を更に提供する。
【0014】
本発明は、本発明による電解質溶媒及び導電性塩、好ましくはLiPF6を含む電解質を更に提供する。これは電解質中に少なくとも0.5mol/lの濃度で、好ましくは0.9乃至1.1mol/lの濃度で存在する。
【0015】
本発明は更に、本発明によって使用される添加剤を1つ以上含むリチウムイオン電池を提供する。
【0016】
本発明は、リチウムイオン電池についての下記の利点:
充電/放電サイクルの増加、電池の経年劣化の遅延化、充電/放電特性における性能増大及び改善;
を兼ね備えている。
【0017】
以下の実施例は、本発明をその範囲を限定することなく更に詳説することを企図する。
【実施例】
【0018】
(1.1.1-(ベンジルオキシ)-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ベンゼンとの混合物)
5gの化合物1-(ベンジルオキシ)-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ベンゼン(ABCRより入手可能)を添加剤として、45mlの化合物エチルメチルカーボネート(Merck Darmstadt, Selectipur purityより入手可能)及び7.6gのLiPF6(Stella Chemifa, Osaka, Japanより入手可能)と混合する。
【0019】
(1.2.2,6-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾニトリルとの混合物)
5gの化合物2,6-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(ABCRより入手可能)を添加剤として、45mlの化合物エチルメチルカーボネート(Merck Darmstadt, Selectipur purityより入手可能)及び7.6gのLiPF6(Stella Chemifa, Osaka, Japanより入手可能)と混合する。
【0020】
(1.3.1,2-ビス(ジフルオロ(メチル)シリル)エタンとの混合物)
5gの化合物1,2-ビス(ジフルオロ(メチル)シリル)エタン(ABCRより入手可能)を添加剤として、45mlの化合物エチルメチルカーボネート(Merck Darmstadt, Selectipur purityより入手可能)及び7.6gのLiPF6(Stella Chemifa, Osaka, Japanより入手可能)と混合する。
【0021】
(1.4.4-フルオロベンゾフェノンとの混合物)
5gの化合物4-フルオロベンゾフェノン(Aldrichより入手可能)を添加剤として、45mlの化合物エチルメチルカーボネート(Merck Darmstadt, Selectipur purityより入手可能)及び7.6gのLiPF6(Stella Chemifa, Osaka, Japanより入手可能)と混合する。
【0022】
(1.5.ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロプ-2-イル)マレエートとの混合物)
5gの化合物ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロプ-2-イル)マレエート(ABCRより入手可能)を添加剤として、45mlの化合物エチルメチルカーボネート(Merck Darmstadt, Selectipur purityより入手可能)及び7.6gのLiPF6(Stella Chemifa, Osaka, Japanより入手可能)と混合する。
【0023】
実施例1.1乃至1.5の混合物と同等の混合物を、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、またはプロピレンカーボネートを電解質溶媒として使用して調製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-アセトキシ-2-フルオロベンゼン、1-アセトキシ-3-フルオロベンゼン、1-アセトキシ-4-フルオロベンゼン、2-アセトキシ-5-フルオロベンジルアセテート、4-アセチル-2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール、6-アセチル-2,2,3,3-テトラフルオロベンゾ-1,4-ジオキシン、1-アセチル-3-トリフルオロメチル-5-フェニルピラゾール、1-アセチル-5-トリフルオロメチル-3-フェニルピラゾール、アリルペンタフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、ベンゾイルトリフルオロアセトン、1-ベンゾイル-3-トリフルオロメチル-5-メチルピラゾール、1-ベンゾイル-5-トリフルオロメチル-3-メチルピラゾール、1-ベンゾイルオキシ-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ベンゼン、1-ベンゾイル-4-トリフルオロメチルベンゼン、1,4-ビス(t-ブトキシ)テトラフルオロベンゼン、2,2-ビス(4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネート、1,4-ビス(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)ベンゼン、2,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド、2,6-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、ジフルオロアセトフェノン、2,2-ジフルオロベンゾジオキソール、2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-4-カルバルデヒド、4,4'-ジフルオロビフェニル、1-[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]エタノン、3-(3,5-ジフルオロフェニル)-1-プロペン、トランス-α,β-ジフルオロスチルベン、フルオロベンゾフェノン、ジフルオロベンゾフェノン、1-(2'-フルオロ[1,1'-ビフェニル]-4-イル)プロパン-1-オン、6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾチイン-4-オン、4-フルオロジフェニルエーテル、5-フルオロ-1-インダノン、1-(3-フルオロ-4-メトキシフェニル)エタノン、4-フルオロ-α-メチルスチレン、フルオロフェニルアセトニトリルからなる芳香族化合物の群、
ビス(ペンタフルオロフェニル)ジメチルシラン、1,2-ビス[ジフルオロ(メチル)シリル]エタン、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N-(t-ブチルジメチルシリル)-N-メチルトリフルオロアセトアミド、t-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、2-ジメチルアミノ-1,3-ジメチルイミダゾリウムトリメチルジフルオロシリコネート、ジフェニルジフルオロシランからなるSi-C結合を有する化合物の群、
ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロプ-2-イル)2-メチレンスクシネート、ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロプ-2-イル)マレエート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)マレエート、ビス(ペルフルオロオクチル)フマレート、ビス(ペルフルオロイソプロピル)ケトン、2,6-ビス(2,2,2-トリフルオロアセチル)シクロヘキサノン、ブチル2,2-ジフルオロアセテート、シクロプロピル4-フルオロフェニルケトン、ジエチルペルフルオロアジペート、N,N-ジエチル-2,3,3,3-テトラフルオロプロピオンアミドからなるC=O結合を有する化合物の群、
アリル1H,1H-ヘプタフルオロブチルエーテル、トランス-1,2-ビス(ペルフルオロヘキシル)エチレン、(E)-5,6-ジフルオロオクタ-3,7-ジエン-2-オンからなるC=C結合を有する化合物の群、
N,N-ジエチル-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルアミンからなるアミンの群、
から選択されるフッ化芳香族化合物の、
リチウムイオン電池中の電解質及び電解質溶媒のための添加剤としての使用。
【請求項2】
添加剤及び電解質溶媒の総重量に基づいて1乃至25重量%の量での、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
請求項1に記載の1つ以上の添加剤の含量によって特徴付けられる、リチウムイオン電池のための電解質または電解質溶媒。
【請求項4】
請求項1に記載の1つ以上の添加剤の含量によって特徴付けられる、リチウムイオン電池。

【公表番号】特表2009−512148(P2009−512148A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535004(P2008−535004)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067129
【国際公開番号】WO2007/042471
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(592165314)ゾルファイ フルーオル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Fluor GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20,D−30173 Hannover,Germany
【Fターム(参考)】