説明

リチウム二次電池負極集電体用銅箔およびその製造方法

【課題】高い放電容量を維持しつつより優れたサイクル特性を発揮するために有効なリチウム二次電池用負極集電体用銅箔及びその製造方法を提供する。
【解決手段】粗面粗さRz1.5〜4.5μm、光沢面粗さRz1.5〜4.5μmの両面の粗さRzの差が2μm以下の未処理電解銅箔を使用し、その両面を粗化してRz3.0〜8.0μmとし、表裏の粗さRzの差が2μm以下の同程度に粗化したことを特徴とする電解銅箔を使用することが有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池用の銅箔、さらに詳しくはリチウム二次電池負極集電体用の電解銅箔およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の電解銅箔は銅を含む水溶液中で、一般的には硫酸酸性浴中で、電気分解し陰極に銅を析出させてこれを剥離し製造されている。このような電解銅箔では結晶方向が陰極から垂直に結晶成長し、柱状晶となっている。そのため、製造時電解液側表面はいわゆるピラミッド状の凹凸のある表面となっている。一般的なプリント配線板ではこの形状は好ましく、リジッドプリント配線板等では樹脂との投錨的接着効果があった。なお、製造時電解液側とは未処理銅箔における従来からの表現として粗面に相当する側のことである。
【0003】
しかし、二次電池集電体用としては、両面に均質に活物質を付着させるために同粗度の粗化面であることが好ましい。その中で、粗面側が十点平均粗さRz 3μm以下、通常2μm以下の平滑な面を持つ電解銅箔や圧延銅箔が使用されてきた。たとえば(特許文献1)のようにRz 3μm以下の粗化しない銅箔または逆に粗面をめっきして粗度を低下させた銅箔が提案されている。
【0004】
あるいは(特許文献2、特許文献3)にも粗面側Rz1〜2μmの銅箔が提案されており、実際負極に使われる現在主流のカーボン系活物質を使用するリチウムイオン二次電池用にはこのタイプの、光沢面よりも粗面が平滑な銅箔が主に使用されている。
ところで、さらに電池容量が大きく充放電などの優れた高性能の電池を実現するためには、電気化学容量の大きな合金系活物質を用いることが必要となるが、このような現行の銅箔を使用すると、活物質と接する銅箔表面が滑らかなため、界面表面積が小さく集電性能が低く、また、充放電によって活物質塗膜層の体積変化が生じて銅箔表面から容易に剥がれるという問題がある。
【0005】
また(特許文献4)にはエッチング粗化処理により両面を荒らすことが記載されているが、エッチング粗化では充放電時に体積変化の大きい活物質を用いた高容量次世代型電池用としては負極集電体である銅箔の強度の観点から、結晶粒界を腐食して粗化を行う本方法では粒界に沿って破断しやすくなるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特許第3742144号公報
【特許文献2】特開2004-263289号公報
【特許文献3】特開2004-162144号公報
【特許文献4】特開2006-202635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電池容量が高く、充放電サイクルを繰り返しても銅箔から活物質塗膜層が剥離しない両面同程度の粗化された電解銅箔を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、粗面粗さRz 1.5〜4.5μm、光沢面粗さRz 1.5〜4.5μmであり、その粗さRzの差が2μm以内の未処理電解銅箔を使用し、その両面を粗化してRz 3.0〜8.0μmとし、その粗さRzの差が表裏で2μm以内にしたことを特徴とするリチウム二次電池負極集電体用銅箔であり、未処理電解銅箔の両面に0.1〜4μmの銅粒子を付着することにより粗化したことを特徴とし、また、未処理電解銅箔がデキストリン1〜100ppm含む硫酸―硫酸銅電解液から電解析出させて製造することを特徴とするリチウム二次電池負極集電体用銅箔の製造方法であり、さらに必要に応じてその表面上に防錆層としてクロメート層、ベンゾトリアゾール層、又はシランカップリング剤層を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果は次世代型リチウム二次電池において充放電サイクルを繰り返しても電池容量の劣化が少なく、負極集電体である銅箔から活物質塗膜層が剥離しない効果、および両面とも同じ程度の粗度であるため安定性が高いことなどの効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を説明する。
【0011】
一般にプリント配線板用などで使用されている銅箔において、通常の陰極ドラム面では研磨面(銅箔の光沢面)の粗さRzは1.5〜4.5μmである。また、この範囲を超える場合は逆に量産上難しい。粗さが大きいと製造時、チタン陰極から銅箔が剥がれにくくなり量産が難しい。また小さい場合は研磨にかかる時間が長くなり、労力、エネルギーなどコストがかさむことで量産には向かない。本発明において、研磨面(光沢面)の粗さRzは通常の1.5μmから4.5μmとし、さらに好ましくは2.0〜4.0μmとし、電解析出面(いわゆる粗面側)をこの粗度に合わせるものである。なお、ここでいうRzはJIS B0601-1994に基づく表面粗さである。
【0012】
このように両面同粗度を得ることで、両面の粗化処理が容易になり、仕上がった銅箔の
両面形状は極めて近いものとなる。そのため、活物質塗布工程の条件設定が容易となり、両面の塗膜構造は同一になり、同程度の充放電特性が得られ、電池として極めて安定した性能を発揮するものと考えられる。
【0013】
まず、未処理電解銅箔であるが、これはチタン陰極により硫酸―硫酸銅溶液に添加剤を
加え、粗面(製造時電解液側)粗さRz1.5〜4.5μmの未処理電解銅箔を得る。この銅箔を得るには例えばデキストリンを添加剤として使う。デキストリンは、数個のα-グルコースがグリコシド結合によって重合した物質で、食物繊維の一種であり、デンプンの加水分解により得られる。多糖類であり、デンプンとマルトースの中間にあたる。このデキストリンを1〜100ppm、さらに好ましくは2〜10ppm、また塩素を20〜60ppm添加し、温度 30〜60℃、電流密度 2〜100A/dm2 により得ることができる。この銅箔の粗面側はピラミッド形状を呈さず、なだらかな起伏を持ちRz1.5〜4.5μmの粗さ、さらに好ましくはRz 2.0〜4.0μmとなる。
【0014】
光沢面側は陰極チタンドラム面が元となるが、通常そのチタン表面をナイロン不織布などに酸化アルミ、シリコンカーバイト等の研磨砥粒を均一に接着含浸させた円筒形研磨バフによって行う。このような公知の方法で研磨されたチタン面を使うことでRz1.5〜4.5μm、さらに好ましくは2.0〜4.0μmに制御できる。また、金属やセラミックなどの投射材の粒体を陰極ドラム面に衝突させ、加工を行ういわゆるショットブラスト 法で表面加工しても良い。
【0015】
以上から両面とも同程度の粗度を持つ未処理電解銅箔が得られる。
【0016】
なお、このデキストリン添加の電解液により得られた電解銅箔は抗張力が通常330MPa〜380MPaのところを390MPa〜480MPa程度に向上し、抗張力が通常より5〜20%向上する。これにより活物質の体積膨張収縮の変化が大きい合金系負極を用いた次世代型二次電池にとっては耐力のある集電体材料が必要であるが、これにふさわしい特性を持つことができる。なお、箔厚さとしては8〜35μmが好適と考えられる。
【0017】
次にこの未処理電解銅箔の両面を粗化処理する。両面とも同程度に粗化すれば両面とも粗さRz 3〜8μmの表面処理銅箔を得ることができる。粗化の方法はプリント配線板用銅箔で利用される公知の方法で良い。本発明においては両面に0.1〜4μmの銅粒子を陰極電解により付着することにより粗化することを特徴とする。銅粒子は最初に限界電流密度以上で樹枝状銅を析出させ、次いでその脱落防止のためかぶせ銅鍍金をする方法や、限界電流密度付近で析出させる、いわゆるヤケ鍍金による方法などがある。なお、このような粗化粒子においては2段式に処理を行うこともできる。例えば大きめの一次銅粒子を付け、その上に小粒〜微細の粗化銅粒子をつけることもできる。
【0018】
粗面側の粗さが大きい従来の銅箔において、粗面をそのままとし、光沢面のみ粗化処理
することで負極集電体とする方法も考えられるが、これでは形状が表裏で大きく異なり、粗度として同じ値になったとしても表面の性質が異なる。粗面側は電解銅箔特有の柱状晶によりピラミッド粗面であり、光沢面側は研磨痕のレプリカとなっているため比較的平滑である。この光沢面を粗面化する場合、通常、銅粒子付着により粒状凹凸になるが、粗面側のピラミッド型粗面とは表面形状が全く異なる。そのため電解銅箔の両面で均質な活物質層を得るための塗工条件が大きく異なるなどの不具合が生じる。
【0019】
なお、表面粗さRz3μm以下では活物質層との密着性が弱く、充放電時に活物質層が膨
張収縮するので剥離し易くなり、集電性が損なわれ、容量維持性が低下するなど高性能
にならない。Rz8μm以上は粗面化が可能であるものの、負極集電体としてのトータル厚さ
が厚くなってくることから好ましくない。また、未処理銅箔の光沢面を大きく粗くすることはできても、陰極ドラムから銅箔を引き剥がすことが可能であることが銅箔製造上必須であり、Rz4.5μm程度が限度である。従って本発明においては未処理銅箔の粗面側粗さを上記のように光沢面と同じRz 1.5〜4.5μmとし、両面に銅粒子を付着させ粗化することにより、両面ともRz 3〜8μmの銅箔を得るものである。
【0020】
防錆処理には、クロメート処理やベンゾトリアゾールを代表とする有機防錆処理、また、シランカップリング剤処理などがあり、単一に又は組み合わせて行うこともできる。クロメート処理には重クロム酸イオンを含む水溶液を使用し、酸性でもアルカリ性でも良く、浸漬処理又は陰極電解処理を行う。なお、このクロメート処理では銅箔への付着形態は6価クロムから還元された3価クロムの酸化物又は水酸化物となっている。通常の薬品としては三酸化クロム、重クロム酸カリウム、重クロム酸ナトリウム等を使用する。有機防錆としてのベンゾトリアゾール類にはベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、アミノベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール等があり、水溶液として浸漬処理又はスプレー処理などにより施す。シランカップリング剤にはエポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基を持つもの等多種あるが、樹脂との適応性のあるものを使用すれば良く、水溶液又は溶媒を使用して浸漬処理又はスプレー処理などにより施す。
以上の処理によりリチウム二次電池負極集電体用銅箔が完成する。
【実施例】
【0021】
<実施例1>
チタン陰極を使用し、[硫酸50 g/L、硫酸銅(五水塩)300 g/L、塩素30 ppm]の電解液にデキストリン3 ppmを加え、温度40℃、40 A/dm2で電気分解により厚さ16μm銅箔(A)を得た。この銅箔の粗面粗さはRz 3.1μm、光沢面粗さはRz 2.0μm、室温抗張力は450MPa、伸び率6.3%であった。
この銅箔の粗面側を処理液(1)[硫酸100 g/L、硫酸銅(五水塩)50 g/L]中で10A/dm2、6秒間陰極電解した。また、光沢面側は同じ処理液(1)中で10 A/dm2、10秒間陰極電解した。次いで処理液(2)[硫酸100 g/L、硫酸銅(五水塩)220 g/L]中で粗面側を5A/dm2、60秒間陰極電解した。また、光沢面側は同じ処理液(2)中で5 A/dm2、100秒間陰極電解した。粗化処理方法について表1に示す。
【0022】
次にこの銅箔を水洗後処理液(3)二クロム酸ナトリウム10 g/L 中で両面とも0.5 A/dm2、3秒間陰極電解し、水洗して乾燥させ、電池用電解銅箔とした。
また、この電解銅箔の電子顕微鏡写真を撮り、図1に粗面側を、図2に光沢面側を示す。
粗面側、光沢面側類似の形状をしていることがわかる。粗化処理による銅粒子サイズは粗面側約0.5〜2μm、光沢面側約0.5〜2.5μmであった。
【0023】
一方、活物質については、まず各元素の比率を、Fe/Ag/Sn = 15.6/36.4/48(原子%)になるように、Fe、Ag、Snの各粉末をボールミル中でメカニカルミリング処理することにより、平均粒子径が10μm以下の活物質粉末材料を得た。
【0024】
このようにして得られた活物質85重量部に、ポリビニリデンフルオライド10重量部と
カーボンブラック5重量部をN-メチルピロリドン(NMP)を溶媒として、混合してスラリーを調製した。次いで、上記電解銅箔に上記スラリーを塗布し、塗工膜をほぼ均一なシートにした。NMPを揮発後、プレス機で、電解銅箔からなる集電体と活物質からなる層を密着接合させ、減圧乾燥させて試験電極(負極)を作製した。
【0025】
上記の電極を負極とし、試験電極計算容量の約20倍以上の容量を有している金属リ
チウムを対極として、1モルのLiPF/エチレンカーボネート(EC)+ジエチルカーボネート(DEC)(EC:DEC=1:1(体積比))溶液を電解液として、コイン試験セルを作製した。
この試験セルにおける負極の評価を次の方法で行った。
【0026】
まず、試験セルを、0 Vに達するまで0.2 mA/cm2の定電流で充電し、10分間の休止後、1.0 Vに達するまで0.2 mA/cm2の定電流で定電流で放電した。これを、1サイクルとして、繰り返し充放電を行って放電容量を調べた。
【0027】
この電解銅箔を負極集電体材料として用いた電極について、充放電50サイクル後放電容量保持率並びにこの銅箔の表面粗さRzを表2に示す。
【0028】
なお、50 サイクル後放電容量保持率は次式で示される。
(50サイクル後放電容量保持率%)=[ (50サイクル目の放電容量) / (最大放電容量)]×100
【0029】
<実施例2>
実施例1で得た未処理電解銅箔と同じ銅箔を使用し、処理液(1)中で粗面側、光沢面側とも10 A/dm2、8秒間陰極電解した。次いで処理液(2)中で粗面側、光沢面側ともに5 A/dm2、80秒間陰極電解した。粗化処理方法について表1に示す。
【0030】
次にこの銅箔を水洗後処理液(3)二クロム酸ナトリウム10 g/L中で両面とも0.5 A/dm2 、3秒間陰極電解し、水洗し、次いでベンゾトリアゾール0.05 g/L中で5秒間両面とも浸漬させ、水洗後乾燥させ、電池用電解銅箔とした。
【0031】
この電解銅箔に実施例1と同じ活物質を塗布し、同じ方法で試験セルの作製と評価を行
った。その結果を表2に示す。
【0032】
<実施例3>
実施例1で得た未処理電解銅箔と同じ銅箔を使用し、処理液(1)中で粗面側、光沢面側ともに10 A/dm2、10秒間陰極電解した。次いで処理液(2)中で粗面側、光沢面側とも
5 A/dm2、100秒間陰極電解した。粗化処理方法について表1に示す。
【0033】
次にこの銅箔を水洗後処理液(3)二クロム酸ナトリウム10 g/L中で両面とも
0.5 A/dm2 、3秒間陰極電解し、水洗して乾燥させ、電池用電解銅箔とした。
【0034】
この電解銅箔に実施例1と同じ活物質を塗布し、同じ方法で試験セルの作製と評価を行
った。その結果を表2に示す。
【0035】
<実施例4>
チタン陰極を使用し、[硫酸50 g/L、硫酸銅(五水塩)300 g/L、塩素40 ppm]の電解液にデキストリン7 ppmを加え、温度45℃、50 A/dm2で電気分解により厚さ16μm銅箔(B)を得た。この銅箔の粗面粗さはRz 3.2μm、光沢面粗さはRz 2.3μm、室温抗張力は420 MPa、伸び率8.3%であった。この未処理電解銅箔を使用し、処理液(1)中で粗面側、10 A/dm2、14秒間陰極電解した。また、光沢面側は同じ処理液(1)中で10 A/dm2、12秒間陰極電解した。粗化処理方法について表1に示す。
【0036】
次に処理液(2)中で粗面側、光沢面側ともに5 A/dm2、120秒間陰極電解した。次にこの銅箔を水洗後処理液(3)二クロム酸ナトリウム10 g/L 中で両面とも0.5A/dm2 、3秒間陰極電解し、水洗して乾燥させ、電池用電解銅箔とした。
また、この電解銅箔の電子顕微鏡写真を撮り、図3に粗面側を、図4に光沢面側を示す。
粗面側、光沢面側類似の形状をしていることがわかる。粗化処理による銅粒子サイズは粗面側、光沢面側とも約0.5〜3μmであった。
【0037】
この電解銅箔に実施例1と同じ活物質を塗布し、同じ方法で試験セルの作製と評価を行
った。その結果を表2に示す。
【0038】
<実施例5>
実施例4で得た未処理電解銅箔と同じ銅箔を使用し、処理液(1)中で粗面側を10 A/dm2
10秒間陰極電解した。また、光沢面側は同じ処理液(1)中で10 A/dm2、12秒間陰極電解した。次いで処理液(2)中で粗面側を5 A/dm2、100秒間陰極電解した。また、光沢面側は同じ処理液(2)中で5 A/dm2、120秒間陰極電解した。粗化処理方法について表1に示す。
【0039】
次にこの銅箔を水洗後処理液(3)二クロム酸ナトリウム10 g/L中で両面とも0.5A/dm2、3秒間陰極電解し、水洗して乾燥させ、電池用電解銅箔とした。
【0040】
この電解銅箔に実施例1と同じ活物質を塗布し、同じ方法で試験セルの作製と評価を行
った。その結果を表2に示す。
【0041】
<実施例6>
実施例4で得た未処理電解銅箔と同じ銅箔を使用し、処理液(1)中で粗面側を10 A/dm2、12秒間陰極電解した。また、光沢面側は同じ処理液(1)中で10 A/dm2、14秒間陰極電解した。
次いで処理液(2)中で粗面側を 5 A/dm2、120秒間陰極電解した。また、光沢面側は同じ処理液(2)中で5 A/dm2、140秒間陰極電解した。粗化処理方法について表1に示す。
【0042】
次にこの銅箔を水洗後処理液(3)二クロム酸ナトリウム10 g/L 中で両面とも0.5 A/dm2、3秒間陰極電解し、水洗して乾燥させ、電池用電解銅箔とした。
【0043】
この電解銅箔に実施例1と同じ活物質を塗布し、同じ方法で試験セルの作製と評価を行
った。その結果を表2に示す。
【0044】
<実施例7>
実施例1で得た未処理電解銅箔と同じ銅箔を使用し、処理液(1)中で粗面側を10 A/dm2、8秒間陰極電解した。また、光沢面側は同じ処理液(1)中で10 A/dm2、12秒間陰極電解した。
次いで処理液(2)中で粗面側を5 A/dm2、80秒間陰極電解した。また、光沢面側は同じ処理液(2)中で5 A/dm2、120秒間陰極電解した。粗化処理方法について表1に示す。
【0045】
次にこの銅箔を水洗後処理液(3)二クロム酸ナトリウム10 g/L中で両面とも0.5 A/dm2、3秒間陰極電解し、水洗して乾燥させ、電池用電解銅箔とした。
【0046】
この電解銅箔に実施例1と同じ活物質を塗布し、同じ方法で試験セルの作製と評価を行
った。その結果を表2に示す。
【0047】
<比較例1>
チタン陰極を使用し、[硫酸50 g/L、硫酸銅(五水塩)300 g/L、塩素40 ppm]の電解液に3-メルカプト-1-プロパンスルフォン酸ナトリウム220 μmol/L、ポリエチレングリコール(平均分子量20000 )30 mg/L、ポリエチレンイミン(エポミン、日本触媒製P-1000)0.5 mg/L、を加え、温度40℃、40 A/dm2で電気分解により厚さ16μm銅箔を得た。この銅箔の粗面粗さはRz 1.1μm、光沢面粗さはRz 2.0μm、室温抗張力は370 MPa、伸び率11.0%であった。この銅箔を処理液(3)二クロム酸ナトリウム10 g/L中で両面とも0.5 A/dm2 、3秒間陰極電解し、水洗して乾燥させ、電池用電解銅箔とした。
【0048】
この電解銅箔に実施例1と同じ活物質を塗布し、同じ方法で試験セルの作製と評価を行
った。その結果を表2に示す。
【0049】
<比較例2>
チタン陰極を使用し、[硫酸50 g/L、硫酸銅(五水塩)300 g/L、塩素40 ppm]の電解液にゼラチン2 ppmを加え、温度40℃、40 A/dm2で電気分解により厚さ16μm銅箔を得た。この銅箔の粗面粗さはRz 4.0μm、光沢面粗さはRz 1.9μm、室温抗張力は380 MPa、伸び率7.0%であった。この銅箔を処理液(3)二クロム酸ナトリウム10 g/L中で両面とも0.5 A/dm2、3秒間陰極電解し、水洗して乾燥させ、電池用電解銅箔とした。
【0050】
この電解銅箔に実施例1と同じ活物質を塗布し、同じ方法で試験セルの作製と評価を行
った。その結果を表2に示す。
【0051】
<比較例3>
実施例1で得られた未処理電解銅箔(A)を処理液(3)二クロム酸ナトリウム10 g/L中
で両面とも0.5 A/dm2 、3秒間陰極電解し、水洗して乾燥させ、電池用電解銅箔とした。
【0052】
この電解銅箔に実施例1と同じ活物質を塗布し、同じ方法で試験セルの作製と評価を行
った。その結果を表2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
表2に示すように表面粗さが大きいほど放電容量保持率が高くなる傾向となる。本発明
では両面の粗度が同程度のものが得られ、かつ、電池特性として比較例のような超低粗面
銅箔(比較例1)や従来電解銅箔(比較例2)、粗化処理のない銅箔(比較例3)に比較して充放
電50サイクル後の放電容量保持率が高く、表裏とも安定し優れた特徴を発揮している。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本件銅箔は二次電池用銅箔、特にリチウム二次電池負極集電体用として有用である。ま
た両面同粗度の必要な他の二次電池用あるいはプリント配線板用としても適用の可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1の粗面側電子顕微鏡写真
【図2】実施例1の光沢面側電子顕微鏡写真
【図3】実施例4の粗面側電子顕微鏡写真
【図4】実施例4の光沢面側電子顕微鏡写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗面粗さRz 1.5〜4.5μm、光沢面粗さRz 1.5〜4.5μmであり、その粗さRzの差が2μm以内の未処理電解銅箔を使用し、その両面を粗化してRz 3.0〜8.0μmとし、その粗さRzの差が表裏で2μm以内にしたことを特徴とするリチウム二次電池負極集電体用銅箔。
【請求項2】
未処理電解銅箔の両面に0.1〜4μmの銅粒子を付着することにより粗化したことを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池負極集電体用銅箔。
【請求項3】
未処理電解銅箔がデキストリン1〜100 ppm含む硫酸―硫酸銅電解液から電解析出させて製造することを特徴とする請求項1から請求項2記載のリチウム二次電池負極集電体用銅箔の製造方法。
【請求項4】
粗化処理した表面上に防錆層としてクロメート層、ベンゾトリアゾール層、又はシランカップリング剤層を有することを特徴とする請求項1から請求項3記載のリチウム二次電池負極集電体用銅箔およびその製造方法。





















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−226800(P2008−226800A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67879(P2007−67879)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000239426)福田金属箔粉工業株式会社 (83)
【Fターム(参考)】