説明

リップシンク信号発生装置

【課題】本発明は、リップシンク信号発生装置に関し、例えばリップシンクの調整、検査に適用して、映像と音声の時間のずれを視覚と聴覚により従来に比して精度よく確認することができるようにする。
【解決手段】本発明は、リップシンク映像信号による映像を基準のタイミングで切り換えるようにして、この基準タイミングより一定時間だけ早いタイミングと、この基準タイミングと同一のタイミングと、この基準タイミングより一定時間だけ遅いタイミングとで、順次タイミングを切り換えて、リップシンク用映像信号による映像が切り換わる毎に、リップシンク用音声信号の信号レベルを立ち上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リップシンク信号発生装置に関し、例えばリップシンクの調整、検査に適用することができる。本発明は、リップシンク映像信号による映像を基準のタイミングで切り換えるようにして、この基準タイミングより一定時間だけ早いタイミングと、この基準タイミングと同一のタイミングと、この基準タイミングより一定時間だけ遅いタイミングとで、順次タイミングを切り換えて、リップシンク用映像信号による映像が切り換わる毎に、リップシンク用音声信号の信号レベルを立ち上げることにより、映像と音声の時間のずれを視覚と聴覚により従来に比して精度よく確認することができるようにする。
【背景技術】
【0002】
従来、放送局等においては、映像信号及び音声信号が異なる伝送路により伝送される等により、映像と音声との間に時間のずれが発生する。このため放送局においては、テスト用の映像信号及び音声信号(以下、リップシンク映像信号及びリップシンク音声信号と呼ぶ)を送信側より受信側に伝送すると共に、これらの伝送されたリップシンク信号を受信側で解析することにより、時間のずれを測定、補正し、リップシンクを図るようになされている。
【0003】
このようなリップシンクに関して、従来、専用装置を送受信側にそれぞれ配置して時間のずれを測定する方法と、モニタ装置を用いて視覚と聴覚とにより時間のずれを検出する方法があり、専用装置による場合には、数ミリ秒単位で時間のずれを検出することができる。
【0004】
このような専用装置に関して、例えば特開平10−285483号公報には、専用装置の構成を簡略化する方法が提案されている。
【0005】
これに対してモニタ装置を用いて視覚と聴覚とにより時間のずれを検出する方法に関しては、特開2003−47030号公報等に種々の工夫が提案されている。
【0006】
ここでこの特開2003−47030号公報に提案の方法は、静止物体に移動物体が徐々に接近する映像を表示するようにリップシンク映像信号を生成し、静止物体に移動物体が接触したタイミングでリップシンク音声信号を立ち上げ、これによりモニタ装置を用いて、視覚、聴覚により時間のずれを簡易に確認することができるようになされている。
【0007】
ところでこのようにモニタ装置を用いて視覚、聴覚により時間のずれを確認する場合に、検出精度を向上することができれば、一段と使い勝手を向上することができ、便利であると考えられる。特に、従来方法では、オペレータの個人差により時間ずれの検出精度が大きく変化し、また確認を繰り返すうちにオペレータの視覚、聴覚の感覚が麻痺して時間ずれの検出精度が著しく低下する傾向がある。
【特許文献1】特開平10−285483号公報
【特許文献2】特開2003−47030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、映像と音声の時間のずれを視覚と聴覚により従来に比して精度よく確認することができるリップシンク信号発生装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため請求項1の発明は、リップシンク用映像信号を生成する映像信号発生回路と、前記リップシンク用映像信号に対応するリップシンク用音声信号を生成する音声信号発生回路とを有するリップシンク信号発生装置に適用して、前記映像信号発生回路は、所定の基準タイミングで、前記リップシンク用映像信号による映像を切り換え、前記音声信号発生回路は、前記基準タイミングより一定時間だけ早いタイミングと、前記基準タイミングと同一のタイミングと、前記基準タイミングより前記一定時間だけ遅いタイミングとで、順次循環的にタイミングを切り換えて、前記リップシンク用映像信号による映像が切り換わる毎に、前記リップシンク用音声信号の信号レベルを立ち上げる。
【0010】
また請求項2の発明は、請求項1の構成において、前記リップシンク用映像信号による映像の切り換わりが、一定の時間間隔の繰り返しであるようにする。
【0011】
また請求項3の発明は、請求項1の構成において、前記リップシンク用音声信号による信号レベルの立ち上がりが、一定の時間間隔の繰り返しであるようにする。
【0012】
請求項1の構成によれば、映像信号SVの表示切り換えに係るタイミングに対して、一定時間だけ早いタイミング、同一のタイミング、一定時間だけ遅れたタイミングを順次繰り返して音声信号が立ち上がる。この場合、単に同一のタイミングで繰り返し音声信号を立ち上げている場合に比して、慣れによる感覚の麻痺を防止することができる。また時間ずれの検出精度、時間ずれの検出感度の個人差についても低減することができる。これによりオペレータの視覚、聴覚における感覚の麻痺を防止して時間ずれの検出精度の低下を防止することができ、またオペレータの個人差も少なくすることができ、これらにより映像と音声の時間のずれを視覚と聴覚により従来に比して精度よく確認することができる。
【0013】
また請求項2の構成によれば、請求項1の構成において、前記リップシンク用映像信号による映像の切り換わりが、一定の時間間隔の繰り返しであることから、一定の時間間隔による映像の切り換わりに対する、リップシンク音声信号の信号レベルの立ち上がりのタイミングの変化を把握して、映像と音声の時間のずれを視覚と聴覚により従来に比して精度よく確認することができる。
【0014】
また請求項3の構成によれば、請求項1の構成において、前記リップシンク用音声信号による信号レベルの立ち上がりが、一定の時間間隔の繰り返しであることから、一定の時間間隔によるリップシンク音声信号の信号レベルの立ち上がりに対する、映像の切り換わりのタイミングの変化を把握して、映像と音声の時間のずれを視覚と聴覚により従来に比して精度よく確認することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、映像と音声の時間のずれを視覚と聴覚により従来に比して精度よく確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施例を詳述する。
【実施例1】
【0017】
(1)実施例の構成
図2は、本発明の実施例に係るリップシンク信号発生装置を示すブロック図である。このリップシンク信号発生装置1は、モニタ装置2を用いて視覚と聴覚により映像と音声の時間ずれを検出する場合に適用される。これによりこのリップシンク信号発生装置1は、被測定対象3である伝送路、信号処理回路等を介してリップシンク信号SLが伝送され、伝送端でリップシンク信号SLがモニタ装置2によりモニタされる。なおここでこのモニタ装置2には、例えばハイビジョンテレビのテレビジョン受像機等が適用される。
【0018】
ここでこのリップシンク信号発生装置1において、映像信号発生回路4は、図示しないトリガ信号発生回路から出力されるトリガ信号STを基準にして、リップシンク映像信号SVを生成して出力する。また音声信号発生回路5は、トリガ信号発生回路から出力されるトリガ信号STを基準にして、リップシンク音声信号SAを生成して出力する。
【0019】
ここで図1は、これら映像信号発生回路4、音声信号発生回路5から出力されるリップシンク映像信号SV、リップシンク音声信号SAを示すタイミングチャートである。映像信号発生回路4は、一定の時間間隔Tで、リップシンク映像信号SVによる映像を切り換える。映像信号発生回路4は、この一定の時間間隔Tによる映像の切り換えを、順次、循環的に、3種類の映像を一定時間表示するようにして実行する。
【0020】
すなわちこれら3種類の映像は、図1(A1)、(A2)、(A3)により示すように、黒色による背景の画面左側、画面中央、画面右側に、それぞれ白色の矩形形状を表示する映像である。またこれら3種類の映像は、各表示の開始のタイミングに対する、対応するリップシンク用音声信号SAの立ち上がりの時間ずれを示す表示が、各矩形形状の表示領域の上に形成される。
【0021】
これに対して音声信号発生回路5は、リップシンク用映像信号SVによる映像の切り換えの基準タイミングより一定時間だけ早いタイミングと、この基準タイミングと同一のタイミングと、この基準タイミングより一定時間だけ遅いタイミングとで、順次循環的にタイミングを切り換えて、リップシンク用映像信号SVによる映像の切り換わり毎に、リップシンク用音声信号SAの信号レベルを立ち上げる。なおここでリップシンク音声信号は、例えば周波数1[kHz]等の単一周波数の正弦波信号である。
【0022】
(2)実施例の動作
以上の構成において、このリップシンク信号発生装置1では(図1及び図2)、被測定対象である伝送路、各種設備にリップシンク用映像信号SV及びリップシンク用音声信号SAを出力し、これら伝送路、各種設備から出力されるリップシンク用映像信号SV及びリップシンク用音声信号SAをモニタ装置に入力する。リップシンク信号発生装置1では、このモニタ装置2によりリップシンク用映像信号SV及びリップシンク用音声信号SAをモニタして視覚及び聴覚によりリップシンク用映像信号SV及びリップシンク用音声信号SAの時間ずれを把握することになる。
【0023】
このリップシンク信号発生装置1では、一定の時間間隔Tによる基準のタイミングで、リップシンク用映像信号SVによる映像が切り換えられ、画面左側に矩形形状が表示され、一定時間の経過によりこの矩形形状の表示が停止される。また続いて画面中央に矩形形状が表示され、一定時間の経過によりこの矩形形状の表示が停止され、さらに画面右側に矩形形状が表示され、一定時間の経過によりこの矩形形状の表示が停止される。また続いて画面左側における矩形形状の表示に戻って、同様の表示の繰り返しにより一定の時間間隔Tによる基準のタイミングで、順次映像が切り換えられる。
【0024】
これに対してリップシンク音声信号SAは、映像信号SVに係る一定の時間間隔によるタイミングに対して、一定時間ΔTだけ早いタイミング、同一のタイミング、一定時間ΔTだけ遅れたタイミングが順次循環的に選択されて、対応する映像の切り換え表示毎に、選択したタイミングで信号レベルが立ち上がる。
【0025】
ここでこのように映像信号SVの表示切り換えに係る基準のタイミングに対して、一定時間ΔTだけ早いタイミング、同一のタイミング、一定時間ΔTだけ遅れたタイミングを繰り返しして音声信号を立ち上げる場合には、単に同一のタイミングで繰り返し音声信号を立ち上げている場合に比して、慣れによる感覚の麻痺を防止することができる。また時間ずれの検出精度、時間ずれの検出感度の個人差についても低減することができる。
【0026】
これによりこの実施例では、オペレータの視覚、聴覚における感覚の麻痺を防止して時間ずれの検出精度の低下を防止することができ、またオペレータの個人差も少なくすることができ、これらにより映像と音声の時間のずれを視覚と聴覚により従来に比して精度よく確認することができる。
【0027】
またこの実施例では、この映像信号SVの表示切り換えに係る基準のタイミングが一定の時間間隔Tに設定され、これによりオペレータは、一定の時間間隔による映像の切り換わりに対する、リップシンク音声信号の信号レベルの立ち上がりのタイミングの変化を把握して、すなわち視覚を介してリズムを取りながら、聴覚を介して把握されるリズムの変化を把握して、映像と音声の時間のずれを視覚と聴覚により従来に比して精度よく確認することができる。
【0028】
(3)実施例の効果
以上の構成によれば、リップシンク映像信号による映像を基準のタイミングで切り換えるようにして、この基準タイミングより一定時間だけ早いタイミングと、この基準タイミングと同一のタイミングと、この基準タイミングより一定時間だけ遅いタイミングとで、順次タイミングを切り換えて、リップシンク用映像信号による映像が切り換わる毎に、リップシンク用音声信号の信号レベルを立ち上げることにより、映像と音声の時間のずれを視覚と聴覚により従来に比して精度よく確認することができる。
【0029】
またこのときこの映像による基準のタイミングを一定の時間間隔とすることにより、一定の時間間隔による映像の切り換わりに対する、リップシンク音声信号の信号レベルの立ち上がりのタイミングの変化を把握して、映像と音声の時間のずれを視覚と聴覚により従来に比して精度よく確認することができる。
【実施例2】
【0030】
図3は、図2との対比により本発明の実施例2に係るリップシンク信号発生装置によるリップシンク用映像信号及びリップシンク用音声信号を示すタイムチャートである。この実施例では、リップシンク用音声信号における信号レベルの立ち上がりが一定の時間間隔Tに設定されている点を除いて、実施例1と同一に構成される。
【0031】
この実施例のように映像信号における映像の切り換わりに代えて、リップシンク用音声信号における信号レベルの立ち上がりを一定の時間間隔とするようにしても、実施例1と同様の効果を得ることができる。またこの場合、一定の時間間隔によるリップシンク音声信号の信号レベルの立ち上がりに対する、映像の切り換わりのタイミングの変化を把握して、すなわち聴覚によりリズムを取りながら、視覚を介して把握されるリズムの変化を把握して、映像と音声の時間のずれを視覚と聴覚により従来に比して精度よく確認することができる。
【実施例3】
【0032】
なお上述の実施例においては、矩形形状を表示して映像を切り換える場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は映像によるタイミングを把握することができればよく、種々の形状、記号等を一時的に表示してもよく、さらには画面全体の色を切り換えるようにしてもよい。
【0033】
また上述の実施例においては、単にリップシンク映像信号、リップシンク音声信号を生成する構成に本発明を適用する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、このようにして生成したリップシンク映像信号、リップシンク音声信号により時間のずれを検出して自動補正する場合等にも広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、リップシンク信号発生装置に関し、例えばリップシンクの調整、検査に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1に係るリップシンク信号発生装置によるリップシンク用映像信号及びリップシンク用音声信号を示すタイミングチャートである。
【図2】本発明の実施例1に係るリップシンク信号発生装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例2に係るリップシンク信号発生装置によるリップシンク用映像信号及びリップシンク用音声信号を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1……リップシンク信号発生装置、3……被測定対象、4……映像信号発生回路、5……音声信号発生回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リップシンク用映像信号を生成する映像信号発生回路と、前記リップシンク用映像信号に対応するリップシンク用音声信号を生成する音声信号発生回路とを有するリップシンク信号発生装置において、
前記映像信号発生回路は、
所定の基準タイミングで、前記リップシンク用映像信号による映像を切り換え、
前記音声信号発生回路は、
前記基準タイミングより一定時間だけ早いタイミングと、前記基準タイミングと同一のタイミングと、前記基準タイミングより前記一定時間だけ遅いタイミングとで、順次循環的にタイミングを切り換えて、前記リップシンク用映像信号による映像が切り換わる毎に、前記リップシンク用音声信号の信号レベルを立ち上げる
ことを特徴とするリップシンク信号発生装置。
【請求項2】
前記リップシンク用映像信号による映像の切り換わりが、一定の時間間隔の繰り返しである
ことを特徴とする請求項1に記載のリップシンク信号発生装置。
【請求項3】
前記リップシンク用音声信号による信号レベルの立ち上がりが、一定の時間間隔の繰り返しである
ことを特徴とする請求項1に記載のリップシンク信号発生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−300516(P2007−300516A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128085(P2006−128085)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(000131496)株式会社シバソク (57)
【Fターム(参考)】