説明

リテーナ及び濾過装置

【課題】本発明はバグフィルタ用のリテーナに関し、濾布の捕集機能を損なうことなく長期に亘って安定的な払い落とし機能を確保することを目的とする。
【解決手段】濾布14はセルプレート10に装着される上端14-1が開口するも下端14-2は閉鎖している。リテーナ16は上下に間隔をおいた複数の環材16-1と円周方向に間隔をおいた複数の縦材16-1とからなる籠構造であり、濾布14に上端14-1より挿入される。リテーナ16の下端と濾布14の下端14-2との間に、上下に薄板鋼材製円板24, 22を備えた圧縮ばねとしてのコイルスプリング26が配置され、濾布を所定荷重にて緊張している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はリテーナ及び濾過装置に関し、大型の産業用燃焼炉におけるパルス型集塵機で使用されるバグフィルタに特に適したものである。
【背景技術】
【0002】
パルス型集塵機で使用される濾過装置であるバグフィルタにおいては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の耐熱性繊維を素材とする濾布は一端が開口部を構成し、他端が閉じた筒状に形成され、濾布は開口部においてセルプレートに固定される。濾布に適当な緊張を与え、その筒形状を維持するため、濾布の開口端からステンレス等の耐熱鋼線を籠構造としたリテーナが挿入され、リテーナもセルプレートに対する固定構造となっている(例えば特許文献1)。除塵すべき高温度の燃焼ガスは濾布の筒状面から濾布内部に通され、開口部より外部に排出される。濾布が塵圧で詰まることにより圧力損失が一定値を超えると、開口部から払い落とし用の高圧気流が所定時間パルス状に印加され、濾布は加振され、塵埃は濾布から払い落とされ、濾布による捕集効率を回復することができる。
【特許文献1】特開2002−28425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近の集塵機の大型化に伴い濾布としても長尺のものが使用されるようになってきている。そして、濾布を構成するPTFE等の耐熱性繊維は180℃といった軟化温度を持ち、長時間高温に晒されることにより濾布の経時的な伸張は避けられない。他方、バグフィルタの継続使用は塵埃を濾布に堆積せしめ、そのままでは濾過性能は低下してしまうので、濾過性能を維持するため高圧気流のパルス的な印加による払い落とし動作が定期的に行われる。濾布の伸張はリテーナに対する濾布の緊張状態を弛緩させ、払い落とし効率をそもそも低下させるし、濾布の弛緩は払い落とし動作時の濾布の変位を大きくし、リテーナと最も強く接触する濾布の底面での局部的な衝撃荷重が大きくなり、この部位での濾布の損傷の懸念も大きくなる。そこで、従来は濾布の底面部位に当布することで2重化することで強化する対策が行われていた。しかしながら、当布によりその部位での濾過機能は期待できなくなり、長尺化の本来の意図である濾過能率の向上は損なわれる結果となる。
【0004】
この発明の目的は長尺化された濾布において捕集機能を損なうことなく長期に亘って安定的な払い落とし機能を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のリテーナは、一端は開口し、他端において閉鎖する濾布の内側に装着され、濾布の筒形状を維持するため濾過装置に使用されるものであり、濾布への装着状態においてリテーナと濾布との伸張特性の相違を補償するべく濾布を緊張付勢する弾性手段を備えている。
【0006】
この発明の濾過装置は、一端が開口部を構成するように機枠に装着され、他端は閉鎖され、被処理流体をその側面より導入し前記開口部より排出する濾布と、被処理流体の流通は許容しつつ濾布の筒形状を維持するべく前記開口部に挿入されると共に機枠に装着されるリテーナと、リテーナの装着状態において濾布を緊張状態に付勢し、リテーナと濾布との伸張特性の相違を補償する弾性手段とから構成される。
【0007】
弾性手段は濾布の閉鎖端部に対向する第1の当接部と、リテーナ端部に対する第2の当接部と、第1及び第2の当接部間の圧縮スプリングとから構成することができる。
【発明の効果】
【0008】
弾性手段を備えることにより高熱等の影響によるリテーナと濾布との伸張特性の相違に拘わらず濾布の一定若しくは実質的一定張力を維持することができ、所期の濾過性能を確保できると共に、濾布の早期損傷を防止することができる。
また、弾性手段を上下の当接部とその間の圧縮スプリングとすることで濾布に対する適正な緊張の付与が可能となり、また、一体化等により組立性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1において、10はパルス型集塵機におけるセルプレートを示しており、周知のようにセルプレート10にはフィルタ設置開口10Aが多数設けられ、各開口にこの発明の濾過装置としてのバグフィルタ12が設置される。バグフィルタ12は濾布14と、リテーナ16と、ベンチュリ18とを基本的構成要素とする。濾布14はPTFE等の耐熱性繊維を素材とし、一端(上端)が開口部14-1を構成し、他端(下端)が閉鎖底面14-2をなした筒状に成形されている。長尺化のため、筒状の濾布を多段に接合することができる。また、濾布はプリーツ形状をなすように折り畳まれ、プリーツ形状を維持するべく樹脂加工等が施されたものとすることが好適である(耐熱性濾布のプリーツ構造については例えば特開2007−237160号公報参照)。濾布14はその上端がセルプレート10に対して固定であるが、交換容易のため嵌着構造をとることがでる。即ち、濾布14の上端14-1はSU製若しくはSUS製等の耐熱金属リング19に折り返し式に縫い込まれ、リング19の外周の環状溝19Aをセルプレート10の開口部14-1の内周縁にスナップ式に嵌着することで装着することができる(嵌着構造の詳細についても特開2007−237160号公報参照)。ベンチュリ18は濾布に堆積した塵埃の払い落とし動作時に高圧気流パルスを導入するためのものである。即ち、払い落とし動作時高圧気流パルスがベンチュリ18にその外側より導入され、ベンチュリ18により気流が増速され長尺濾布14であってもその底面付近まで気流を届かせることができ、濾布14の実質的全長に亘り効率的な払い落としを行うことができる。
【0010】
リテーナ16はSU製若しくはSUS製等の耐熱金属線からなる籠構造であり、図2に示すように長手方向(上下方向)に間隔をおいた多数の環材16-1と、それぞれが長手方向に延び、円周方向に間隔をおいた縦材16-2とからなり、環材16-1と縦材16-2とを溶接することにより籠構造に構成される。図1に示すように縦材16-2の上端は環状円板20に溶接され、この状態でリテーナ16は環状円板20がセルプレート10と当接するまで濾材14に挿入され、リテーナ16により濾材14はその内径がリテーナ16の外径に準じた(正確には幾分大きい)筒形状に保持される。
【0011】
ベンチュリ18はステンレス鋼板により中間部18-1が絞られた筒形状に形成され、上端はフランジ18-2を形成し、環状ストッパ円板20と共に、セルプレート10に周知の固定具により固定されている。
【0012】
この発明によれば、濾布14の閉鎖端部(下端)14-2とこれに対向するリテーナ端部(下端)との間に配置され、これらの対向端部を離間付勢することにより濾布を適宜な緊張状態に維持する弾性手段が備えられる。この実施形態ではこの弾性手段は、SU製若しくはSUS製等の耐熱金属にて形成された円形の下側薄板22(この発明の第1の当接部)と、円形の上側薄板24(この発明の第2の当接部)と、上下の円板間のコイルスプリング26(この発明の圧縮スプリング)とから構成される。上下の円板22, 24はその外径がリテーナ16の外径に等しいか幾分小さく、リテーナによる濾材14の筒形状維持機能及びスプリング26による後述の濾布14の緊張機能が損なわれることがないようになっている。コイルスプリング26は、その下端において下側円板22に溶接され、その上端において下側円板22に溶接される。リテーナ16の最下端のリング16-1aには円周方向に離間して4個のタブ28が固定される。即ち、タブ28は矩形のSU製若しくはSUS製等の耐熱金属板矩形ピースをその中間で曲折して構成され、リング16-1aに嵌挿後溶接される。そして、タブ28の下端は上側円板24に溶接され、リテーナ16及び弾性手段を構成する上下の円板22,24及びコイルスプリング26とは組立体となる。リテーナ16への上下の円板22,24の取付については図示構造以外にボルト・ナットやかしめなどの適当な固定化構造を採用することができる。または、リテーナ16及び上下の円板22,24はそれぞれ分離された部品とし、濾布装着や交換時に順次組み付けるようにすることも可能である。
【0013】
セルプレート10への新規な濾布14の装着時、上下の円板22,24及びコイルスプリング26と組立体を構成したリテーナ16が挿入される。コイルスプリング26は圧縮スプリングであり、新規な濾布14の取付長(リテーナ16を装着することで筒形状の保持した際の濾布14の長さ)に対して、リテーナ+スプリング26の自然長は相当大きくなっている。そのため、セルプレート10に対するリテーナ16の固定を行った状態ではスプリング26は縮められ、装着状態ではこの弾性力に応じた張力が濾布14に加えられる。バグフィルタを構成するPTFE繊維は燃焼ガスの高温により伸張傾向にあり、これは恒久的な変形として残留し得るが、この発明ではこのような伸張傾向及び恒久変形があってもコイルスプリング26により濾布14はいつも適切な緊張状態に保持される。当然のことであるが、スプリング26の自然長及び弾性率は使用期限内で適正に想定される濾布14の経時的な伸張にかかわらず濾布に係る張力を維持しうるように適正に設定される。そのため、払い落とし動作時における高圧気流パルス印加時に濾布14に局部的(濾布底面14-2等)にかかる衝撃的荷重が緩和され、当布が不要となり、濾布14の全長を濾過機能に役立てることができ、高い濾過効率を得ることができる上、安定な払い落とし動作が実現され、また、濾布の寿命の延長が実現される。
【0014】
実施例1としてPTFE繊維からなる目付け700g/mの濾材より外径155mmで全長6000mmの筒状濾布に構成し、通常型のリテーナ16の底部に、上下に径105mm、厚み0.8mmのボンデ処理されたSU円板24, 22を備え、太さ4mmのバネ鋼製線材にて外径150mm、長さ100mmに構成されたコイルスプリング26を配置し、バグフィルタとして使用した(190℃で実機120日間)。比較例としてコイルスプリングを備えない従来品のバグフィルタも並設した。動作中のPTFE濾布の下部の伸張は120mmにも達し、スプリングを備えない従来品は濾布下部の磨耗破損が使用開始から1年程で発生していたが、スプリングを備えた本発明のバグフィルタはこの期間経過後であってもダスト付着は均一であり、破損もなかった。ダストの付着量を比較すると本発明のバグフィルタは120g/m平均、通常品は165g/m平均であり、濾過効率の向上は明らかであった。
【0015】
また、実施例2としてはm−アラミドからなる目付け480g/mのプリーツ形状の濾布をアスファルト再生用集塵機のフィルタに使用した(160℃で3ヶ月間)。本発明では3ヶ月後も所期状態と同程度の濾過性能の維持を確認できた。従来品の場合、3ヶ月後に濾布の溝部にダストの付着があり、プリーツ構造が視認しえないほどであり、ろ過性能の悪化は明らかであった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1はこの発明のリテーナを備えた濾過装置に示す断面図である。
【図2】図2は濾布へのこの発明のリテーナの装着状態を示す部分破断斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
10…セルプレート
12…バグフィルタ
14…濾布
14-1…濾布の開口部
14-2…濾布の底部
16…リテーナ
18…ベンチュリ
22…下側薄板(この発明の第1の当接部)
24…上側薄板(この発明の第2の当接部)
26…コイルスプリング(この発明の圧縮スプリング)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端は開口し、他端において閉鎖する濾布の内側に装着され、濾布の筒形状を維持するため濾過装置に使用されるリテーナであって、濾布への装着状態においてリテーナと濾布との伸張特性の相違を補償するべく濾布を緊張付勢する弾性手段を備えたリテーナ。
【請求項2】
請求項1の発明において、前記弾性手段は濾布の閉鎖端部に対向する第1の当接部と、リテーナ端部に対する第2の当接部と、第1及び第2の当接部間の圧縮スプリングとからなるリテーナ。
【請求項3】
一端が開口部を構成するように機枠に装着され、他端は閉鎖され、被処理流体をその側面より導入し前記開口部より排出する濾布と、被処理流体の流通は許容しつつ濾布の筒形状を維持するべく前記開口部に挿入されると共に機枠に装着されるリテーナと、リテーナの装着状態において濾布を緊張状態に付勢し、リテーナと濾布との伸張特性の相違を補償する弾性手段とを備えた濾過装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発明において、前記弾性手段は前記濾布の閉鎖端部とこれに対向するリテーナ端部との間に配置された濾過装置。
【請求項5】
請求項4に記載の発明において、弾性手段は濾布の閉鎖端部に対向する第1の当接部と、リテーナ端部に対向する第2の当接部と、第1及び第2の当接部間の圧縮スプリングとから成る濾過装置。

【図1】
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【図2】
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