説明

リニアガイド装置およびその位置決め方法

【課題】リニアガイド装置を設置する場合の移動テーブルの取付精度等の精度を維持しながら、移動テーブルの小型化を図ると共に、位置決め部材の部品点数を削減する手段を提供する。
【解決手段】基台5に設置されたレール2を直線的に移動するスライダ6を備えたリニアガイド装置1において、スライダ6に、テーブル取付面7からスライダ側面6aに達し、基台5側に傾斜する傾斜面12を有する位置決め溝11を設け、この位置決め溝11に遊嵌し、傾斜面12に摺動する斜面23と、スライダ側面6aに平行な平面24とを有するスライド駒21を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械や産業機械、半導体製造装置、精密機械等の機械装置の基台にリニアガイド装置を精度よく設置するときに用いられるリニアガイド装置およびその位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリニアガイド装置は、基台への設置精度を向上させるために、レールの一の側面を位置決めする基準面と、この基準面に対向する支持面とを側壁とし、レール据付面を底面した据付溝を形成した基台にレールを設置するときに、押圧片と、レール側圧接片と、支持側圧接片とを一組とした位置決め部材をレールの他の側面と設置溝の支持面との間に複数配置し、押圧片をレール設置面に締付ねじで締付け、レール側圧接片と支持側圧接片とでレールの他の側面と支持面との間を押し広げ、基準面にレールの一の側面を押付けてレールの位置決めを行っている。
【0003】
また、移動テーブルとスライダとの取付精度を向上させるために、移動テーブルに据付溝と同様の構成のスライダを取付けるための取付溝を設け、同様の位置決め部材をスライダの他の側面と支持面との間に配置し、スライダの一の側面を基準面に押付けてスライダと移動テーブルとの位置決めを行っている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−263793号公報(第6頁段落0022−第7頁段落0028、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術においては、スライダと移動テーブルとの位置決めを行うときに、押圧片とスライダ側圧接片と支持側圧接片とを一組とした位置決め部材をスライダの他の側面と支持面との間に配置し、押圧片をスライダ取付面に締付ねじで締付け、スライダの他の側面と支持面との間を押し広げてスライダの一の側面を基準面に押付けているため、スライダの側面と支持面との間に位置決め部材を設けるスペースを確保するために、取付溝の幅を広くしなければならず、これが制約となって移動テーブルの小型化を図ることが困難になる場合があるという問題がある。
【0005】
また、位置決め部材を、押圧片とスライダ側圧接片と支持側圧接片との3つの部品で構成しているため、部品点数が増加するという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、リニアガイド装置を設置する場合の移動テーブルの取付精度等の精度を維持しながら、移動テーブルの小型化を図ると共に、位置決め部材の部品点数を削減する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、基台に設置されたレールと、該レールを直線的に移動するスライダとを備えたリニアガイド装置において、前記スライダに、該スライダのテーブル取付面から該スライダの一の側面に達し、前記基台側に傾斜する傾斜面を有する位置決め溝を設け、該位置決め溝に遊嵌し、前記傾斜面に摺動する斜面と、前記スライダの側面に平行な平面とを有する位置決め部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
これにより、本発明は、特別なスペースを設けなくても位置決め作業のための位置決め部材を配置することができ、移動テーブルの取付溝の溝幅を狭くすることが可能になり、リニアガイド装置のスライダに移動テーブルを取付ける場合の取付精度を維持しながら、移動テーブルの小型化を図ることができると共に、位置決め作業に用いる部品の点数を最小にすることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、図面を参照して本発明によるリニアガイド装置およびその位置決め方法の実施例について説明する。
【実施例1】
【0009】

図1は実施例1のリニアガイド装置の正面を示す説明図、図2は実施例1のリニアガイド装置を示す斜視図、図3は実施例1のスライド駒を示す斜視図、図4は図3のA方向矢視図である。
図1、図2において、1はリニアガイド装置である。
2はリニアガイド装置1のレールであり、合金鋼等の鋼材で製作された長尺の棒状部材であって、その長手方向に沿った両側の側面(レール側面2aという。)には、それぞれの長手方向に沿って図示しないボール等の転動体が転動するレール軌道溝3が形成されている。
【0010】
4はレール設置穴であり、レール2の長手方向に沿って所定のピッチで複数設けられたレール2を高さ方向に貫通する段付ボルト穴であって、図2に示すようにレール2の上面(レール上面2bという。)側にその大径部が形成されており、レール2を機械装置の基台5に設置ボルトで設置するために用いられる。
6はスライダであり、合金鋼等の鋼材で製作された略コの字状の断面形状を有する鞍状部材であって、その上面(テーブル取付面7という。)には取付ねじ穴8が複数設けられており、この取付ねじ穴8を用いてテーブル取付面7に機械装置の移動テーブル9が取付ボルトにより取付けられる。
【0011】
本実施例の取付ねじ穴8は、スライダの移動方向(スライダ移動方向という。)に沿った両側に各2個、合計4個形成されている。
11は位置決め溝であり、テーブル取付面7の中央部からスライダ移動方向に沿った一の側面(スライダ側面6aという。)とその反対側の他の側面(スライダ側面6bという。)とに達し、基台5側に傾斜する傾斜面12が形成された傾斜溝であって、スライダ6の取付ねじ穴8のスライダ移動方向に沿ったピッチ間の中央部に形成されている。
【0012】
14はサイドシールであり、合金鋼等の板材で製作された芯金とこの芯金のレール2側に設けられた天然ゴムや合成ゴム等のゴム材料で製作されたシール体15とにより構成されてエンドキャップ16のスライダ移動方向の外側の端面に配置され、ボルト等の締結手段によりエンドキャップ16と共にスライダ6に取付けられている。
17はグリースニップルであり、エンドキャップ16のスライダ6側の端面に形成された図示しない潤滑剤供給溝に接続し、スライダ6の内部に潤滑剤としてのグリースを補充するときに用いられる。
【0013】
図1において、21は位置決め部材としてのスライド駒であり、焼入鋼で形成され、位置決め溝11の傾斜面12とテーブル取付面7との挟み角の補角となる角度を頂角として形成された傾斜面12に摺動する斜面22とねじ加圧面23、およびスライダ側面6aまたは6bに平行に形成された平面24で形成された直角三角形状の断面形状を有する駒部材であって、その幅B(図4参照)は位置決め溝11の溝幅より狭く形成されており、位置決め溝11の傾斜面12に斜面22を合せ、ねじ加圧面23を移動テーブル9側に向けた状態で位置決め溝11に遊嵌させて配置される。
【0014】
前記の斜面22およびねじ加圧面23は、高周波焼入処理により硬度を高めて形成されている。
また、図3、図4に示すように平面24には、その幅B方向の両側に平面24を頂部として傾斜するテーパ面25が形成されている。
なお、このテーパ面25を設けずに、幅B方向の全てを1つの平面24で形成するようにしてもよい。
【0015】
移動テーブル9の基台5側の面には、スライダ移動方向に沿って形成されたスライダ側面6aを位置決めするときの基準となる基準面30および基準面30に対向する支持面31をそれぞれ側壁とし、スライダ取付面32を底面とした矩形断面形状の取付溝33が形成され、そのスライダ取付面32には、スライド駒21のねじ加圧面23を押圧する加圧ねじ35を螺合させる加圧ねじ穴36がスライダ取付面32に貫通して形成されている。
【0016】
この場合に、取付溝33の溝幅は、スライダ6のスライダ移動方向の直交方向の幅に所定の隙間代を加えた溝幅に形成される。
上記の斜面22とねじ加圧面23とで形成される頂角は、角度を小さくする程、加圧ねじ35の締付トルクが大きくなるので、頂角は約30度以上に設定することが望ましい。
上記の構成の作用について説明する。
【0017】
本実施例のスライド駒21を用いてリニアガイド装置1のスライダ6に移動テーブル9を位置決めして取付ける場合は、レール2をレール設置穴4に挿通させた設置ボルトにより基台5に締付けて固定し、レール2にスライダ6を組付ける。
そして、図1に示すようにスライダ6の一方の位置決め溝11(図1の例ではスライダ側面6a側の位置決め溝11)に、傾斜面12に斜面22を合せ、平面24をスライダ側面6aと平行にしたスライド駒21を遊嵌させて載置し、スライダ6のテーブル取付面7に移動テーブル9のスライダ取付面32を重ね合わせ、図示しない取付ボルトをスライダ取付面32の取付ねじ穴8に螺合させて移動テーブル9をスライダ6に仮締めする。
【0018】
次いで、移動テーブル9の加圧ねじ穴36に加圧ねじ35を螺合させ、これを締付けて加圧ねじ35の先端でスライド駒21のねじ加圧面23を押圧し、斜面22を傾斜面12上で摺動させながらスライド駒21を支持面31の方向へ移動させ、支持面31にスライド駒21の平面24を当接させる。
この状態で、加圧ねじ35を更に締め込むと、スライド駒21の平面24が支持面31を押圧し、その反力でスライダ側面6aと支持面31との間が押し広げられ、基準面30にスライダ側面6bが隙間なく押付けられ、移動テーブル9とスライダ6とが高精度に位置決めされる。
【0019】
その後に、仮締めしていた取付ボルトを規定の締付トルクで締付けて移動テーブル9をスライダ6に固定する。
このようにして、本実施例のスライド駒21を用いたスライダ6と移動テーブル9との位置決めが行われる。
上記のように、本実施例のスライダ駒21は、スライダ6に設けた位置決め溝11に遊嵌させて配置されるので、スライダ駒21を配置するための特別なスペースを必要とせず、移動テーブル9の取付溝33の溝幅を狭くすることが可能になり、リニアガイド装置1のスライダ6に移動テーブル9を取付ける場合の取付精度を維持しながら、移動テーブル9の小型化を図ることができる。
【0020】
また、位置決め部材は、一つのスライド駒21で構成されているので、位置決め部材の部品点数を最小にすることができ、部品コストの削減を図ることができると共に、移動テーブル9の軽量化が可能になり、省エネルギ化や保守作業の負担の軽減を図ることができる。
更に、移動テーブル9の位置決めをするときに、加圧ねじ35を締付ければ自動的に移動テーブル9とスライダ6との位置決めを行うことができ、位置決め作業の熟練度を必要とせず、位置決め作業の標準化を容易に行うことができる。
【0021】
更に、本実施例のスライド駒21は、平面24の両側にテーパ面25が設けて平面24を狭くしてあるので、支持面31の加工精度の影響を受けずにスライダ側面6bを基準面30に正確に押付けることができる。
更に、本実施例の位置決めは、位置決め溝11に遊嵌するスライド駒21の斜面22が傾斜面12上を摺動することにより行われるので、スライド駒21の形成に高い加工精度が要求されることはなく、加工コストを削減することができると共に、スライダ6の位置決め溝11の形成にも高い加工精度が要求されることはなく、切削加工による加工が可能になり、加工コストを削減することができる。
【0022】
更に、位置決め溝11は、スライダ6の取付ねじ穴8の間に配置するので、スライダ6の外形寸法を変更することなく形成することができ、レール2へのスライダ6の組付作業の手順の変更を行う必要がない他、位置決め作業を行う必要のないリニアガイド装置1の設置作業における移動テーブル9の取付作業の際にも邪魔になることはないので、標準のスライダ6として用いることも可能になる。
【0023】
以上説明したように、本実施例では、スライダに傾斜面を有する位置決め溝を設け、この傾斜面に摺動する斜面とスライダの側面に平行な平面とを有するスライド駒を位置決め溝に遊嵌させるようにしたことによって、特別なスペースを設けなくても位置決め作業のためのスライド駒を配置することができ、移動テーブルの取付溝の溝幅を狭くすることが可能になり、リニアガイド装置のスライダに移動テーブルを取付ける場合の取付精度を維持しながら、移動テーブルの小型化を図ることができると共に、位置決め作業に用いる部品の点数を最小にすることができる。
【0024】
なお、本実施例においては、スライダの両側に位置決め溝を形成するとして説明したが、位置決め溝は基準面に押付けるスライダ側面の反対側のスライダ側面側に1箇所設ければよく、このようにしても上記の効果を損なうものではない。
【実施例2】
【0025】
図5は実施例2のリニアガイド装置の設置状態を示す説明図である。
本実施例では、2台のリニアガイド装置が並設されているので、これらを区別するために、図5において右側を第1のリニアガイド装置1とし、左側を第2のリニアガイド装置101として説明する。
また、第1および第2のリニアガイド装置1、101は、両方とも上記実施例1と同じリニアガイド装置であるので、第1のリニアガイド装置1の場合は実施例1と同じ符号を付し、第2のリニアガイド装置101に場合は、百番台の符号の末尾2桁を実施例1と同じ符号(基台5、移動テーブル9を除く。)として個々の部品または部位の説明は省略する。
【0026】
更に、個々の部品の区別を要する場合には「第1の」または「第2の」を付して示す。
本実施例の第2のリニアガイド装置101の第2のレール102には、両側に位置決め溝111を形成した第2のスライダ106が2台直列に組付けられており、図5に示す第2のリニアガイド装置101をいう場合には「前方の」と称し、紙面奥側の第2のリニアガイド装置101をいう場合には「後方の」と称する。
【0027】
本実施例の基台5は、図5に示すように、第1のレール2と第2のレール102とを並置することができる大きさに形成され、移動テーブル9は、第1のスライダ6と第2のスライダ106を覆うように形成されており、その第1のスライダ6を取付ける第1の取付溝33は上記実施例1と同じ形状に形成されている。
図5において、50は第2の取付溝であり、第2のスライダのスライダ側面106aに対向し、第1の取付溝33の基準面30に平行な、第1のレール2側に位置する内側対向面51、およびスライダ側面106bに対向する外側対向面52をそれぞれ側壁とし、第2のスライダ取付面132を底面とした矩形断面形状の溝であって、その溝幅は、第2のスライダ106のスライダ移動方向の直交方向の幅に実施例1の所定の隙間代の2倍を加えた溝幅に形成されている。
【0028】
この第2のスライダ取付面132には、スライダ側面106a側のスライド駒121のねじ加圧面123を押圧する内側加圧ねじ55を螺合させる加圧ねじ穴136と、スライダ側面106b側のスライド駒121のねじ加圧面123を押圧する外側加圧ねじ56を螺合させる加圧ねじ穴136とが、第2のスライダ取付面132に貫通して形成されている。
【0029】
58はレール設置基準面であり、移動テーブル9の第2スライダ取付面132側の端面を基準面30と平行にして形成された面であって、第2のリニアガイド装置101の第1のレール102を第1のレール2と平行に設置するときの基準として機能する。
上記の構成の作用について説明する。
本実施例は、第1のリニアガイド装置1を基準として第2のリニアガイド装置の設置位置を位置決めするときの第2のレール102の位置決めを簡易に行う方法である。
【0030】
第1および第2のリニアガイド装置1、101の第1および第2のレール2、102を基板5上に略平行に並置し、第1のレール2を、レール設置穴4に挿通させた設置ボルトにより基台5に締付けて固定し、第2のレール102を、レール設置穴104に挿通させたボルトにより基台5に仮締めし、第1のレール2に第1のスライダ6を組付け、第2のレール102に前方および後方の第2のスライダ106を組付ける。
【0031】
次いで、実施例1と同様にして第1のスライダ6の一方の位置決め溝11にスライド駒21を遊嵌させて載置し、前方および後方の第2のスライダ106のそれぞれの両側の位置決め溝111に実施例1と同様にしてスライド駒121を遊嵌させて載置し、図5に示すように、第1のスライダ6のテーブル取付面7、並びに前方および後方の第2のスライダ106のテーブル取付面107に、移動テーブル9の第1のスライダ取付面32並びに第2のスライダ取付面132を重ね合わせ、図示しない取付ボルトを第1および第2のスライダ取付面7、107の取付ねじ穴8、108に螺合させて移動テーブル9を第1および第2のスライダ6、106に仮締めする。
【0032】
そして、実施例1と同様にしてスライド駒21を用いて第1のスライダ6と移動テーブル9との位置決めを行い、仮締めしていた第1のリニアガイド装置1側の取付ボルトを規定の締付トルクで締付けて移動テーブル9を第1のスライダ6に固定する。
基準となる第1のリニアガイド装置1を基板5に設置した後に、前方の第2のスライダ106の近傍の移動テーブル9のレール設置基準面58を基準として第2のレール102のレール側面102aにダイヤルゲージを当て、その第1のレール2に対する位置を計測する。
【0033】
この場合に、その位置が第1のレール2側(内側)に寄っているときは、移動テーブル9の第2のスライダ取付面132の加圧ねじ穴136に螺合する内側加圧ねじ55を締付けてその先端でスライド駒121のねじ加圧面123を押圧し、斜面122を傾斜面112上で摺動させながらスライド駒121を内側対向面51の方向へ移動させ、内側対向面51にスライド駒121の平面124を当接させ、更に締め込んで、スライド駒121によりスライダ側面106aと内側対向面51との間を押し広げ、ダイヤルゲージで位置を確認しながら第2のレール102を外側へ移動させる。
【0034】
また、その位置が第1のレール2反対側(外側)に寄っているときは、移動テーブル9の第2のスライダ取付面132の加圧ねじ穴136に螺合する外側加圧ねじ56を締付けてその先端でスライド駒121のねじ加圧面123を押圧し、斜面122を傾斜面112上で摺動させながらスライド駒121を外側対向面52の方向へ移動させ、外側対向面52にスライド駒121の平面124を当接させ、更に締め込んで、スライド駒121によりスライダ側面106bと外側対向面52との間を押し広げ、ダイヤルゲージで位置を確認しながら第2のレール102を内側へ移動させる。
【0035】
再度、ダイヤルゲージで位置を確認し、確認した位置が規定の位置であれば前方の第2のスライダ106の位置における位置合せを終える。
確認した位置が規定の位置からずれているときは、前記の位置合せ作業を繰り返す。この場合に先に移動させた方向と逆の方向に第2のレール102を移動させるときは、先に締め込んだ側の加圧ねじを緩めてから前記の位置合せ作業を行う。
【0036】
このようにして、前方の第2のスライダ106の位置における位置合せを終えた後に、後方の第2のスライダ106の位置における位置合せを、前方の場合と同様にして行い、後方の第2のスライダ106の位置における位置合せを終えた後に、再度、ダイヤルゲージで前方の第2のスライダ106の位置における位置を確認し、前方および後方の第2のレール102の位置が規定の位置であれば上記の位置合せ作業を終了し、ずれがある場合には上記の位置合せ作業を繰り返す。
【0037】
位置合せ作業の終了後に、緩み側となっている内側加圧ねじ55または外側加圧ねじ56を締付けてスライド駒121のねじ加圧面123に当接させ、第2のレール102のレール設置穴104に仮締めしていた設置ボルトを規定の締付トルクで締付けて基台5に第2のレール102を固定し、次いで仮締めしていた第2のリニアガイド装置101側の取付ボルトを規定の締付トルクで締付けて移動テーブル9を前方および後方の第2のスライダ106に固定する。
【0038】
このようにして、本実施例の第1のリニアガイド装置1を基準とし、これに対して第2のリニアガイド装置101を平行に設置する位置決めが行われる。
上記のように、本実施例の第1のリニアガイド装置1に対して第2のリニアガイド装置101の第2のレール102を平行に設置する位置決め作業は、第1のリニアガイド装置1を設置した後に、移動テーブル9のレール設置基準面を基準にし、スライド駒121を用いて第2のレール102の位置合せを行うので、特別な治具を用いることなく、また熟練度を必要とせずに第2のレール102の設置精度を維持しながら位置決め作業を容易に行うことができ、第1のレール2と平行に第2のレール102を設置する位置決め作業の標準化を容易に行うことができる他、作業者の未熟に伴う再組立て等の修正作業をなくして位置決め作業における負荷を軽減することができる。
【0039】
なお、本実施例では、第2のレール102に組付ける第2のスライダ106は、2つとして説明したが、3つ以上であってもよい。この場合には第2のレール102の端部に組付けた第2のスライダ6の位置から順に位置合せを行うようにする。
以上説明したように、本実施例では、第2のレールの位置決め作業に用いるスライド駒を第2のスライダに設けた位置決め溝に遊嵌させるようにしたので、上記実施例1と同様に、移動テーブルの第2の取付溝の溝幅を狭くすることが可能になり、移動テーブルの小型化を図ることができると共に、位置決め作業に用いる部品の点数を最小にすることができる他、基台に設置した第1のリニアガイド装置のスライダに取付けた移動テーブルのレール設置基準面を基準にし、第2のスライダに設けたスライド駒を用いて第2のレールの位置合せを行うので、特別な治具を用いることなく、第2のレールの設置精度を維持しながら第2のリニアガイド装置の位置決め作業を容易に行うことができる。
【0040】
なお、上記実施例においては、転動体としてボールを用いたリニアガイド装置を例に説明したが、転動体としてころを用いたリニアガイド装置においても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1のリニアガイド装置の正面を示す説明図
【図2】実施例1のリニアガイド装置を示す斜視図
【図3】実施例1のスライド駒を示す斜視図
【図4】図3のA方向矢視図
【図5】実施例2のリニアガイド装置の設置状態を示す説明図
【符号の説明】
【0042】
1、101 リニアガイド装置
2、102 レール
2a、102a レール側面
2b、102b レール上面
3、103 レール軌道溝
4、104 レール設置穴
5 基台
6、106 スライダ
6a、6b、106a、106b スライダ側面
7、107 テーブル取付面
8、108 取付ねじ穴
9 移動テーブル
11、111 位置決め溝
12、112 傾斜面
14 サイドシール
15 シール体
16 エンドキャップ
17 グリースニップル
21、121 スライド駒
22、122 斜面
23、123 ねじ加圧面
24、124 平面
25、125 テーパ面
30 基準面
31 支持面
32、132 スライダ取付面
33 取付溝(第1の取付溝)
35 加圧ねじ
36、136 加圧ねじ穴
50 第2の取付溝
51 内側対向面
52 外側対向面
55 内側加圧ねじ
56 外側加圧ねじ
58 レール設置基準面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に設置されたレールと、該レールを直線的に移動するスライダとを備えたリニアガイド装置において、
前記スライダに、該スライダのテーブル取付面から該スライダの一の側面に達し、前記基台側に傾斜する傾斜面を有する位置決め溝を設け、
該位置決め溝に遊嵌し、前記傾斜面に摺動する斜面と、前記スライダの側面に平行な平面とを有する位置決め部材を設けたことを特徴とするリニアガイド装置
【請求項2】
請求項1において、
前記スライダの一の側面の反対側の他の側面側に、前記位置決め溝を設けたことを特徴とするリニアガイド装置。
【請求項3】
請求項1に記載のリニアガイド装置を用いたリニアガイド装置の位置決め方法であって、
前記基台側の面に、前記スライダの一の側面の反対側の他の側面を位置決めする基準面、および該基準面に対向する支持面をそれぞれ側壁とし、スライダ取付面を底面とした取付溝と、前記スライダ取付面に貫通し、前記位置決め部材を押圧する加圧ねじを螺合させる加圧ねじ穴とを形成した移動テーブルを設け、
前記リニアガイド装置のスライダのテーブル取付面に、前記移動テーブルのスライダ取付面を重ね合わせ、
前記移動テーブルの加圧ねじ穴に螺合する加圧ねじで、前記位置決め部材を押圧して、前記支持面と前記スライダの一の側面との間を押し広げ、前記基準面に前記スライダの他の面を押付けて、前記移動テーブルと前記スライダとの位置決めを行うことを特徴とするリニアガイド装置の位置決め方法。
【請求項4】
請求項1に記載のリニアガイド装置を第1のリニアガイド装置とし、請求項2に記載のリニアガイド装置を第2のリニアガイド装置とし、前記第1のリニアガイド装置を基準に前記第2のリニアガイド装置の設置位置を位置決めするときのリニアガイド装置の位置決め方法であって、
前記基台に、前記第1のリニアガイド装置の第1のレールと、前記第2のリニアガイド装置の第2のレールとを並置し、
前記第1のレールを前記基台に固定すると共に、前記第2のレールに、前記両側に位置決め溝を形成した第2のスライダを少なくとも2つ直列に組付け、
前記基台側の面に、
前記第1のリニアガイド装置の第1のスライダの一の側面の反対側の他の側面を位置決めする基準面、および該基準面に対向する支持面をそれぞれ側壁とし、第1のスライダ取付面を底面とした第1の取付溝と、
前記第1のスライダ取付面に貫通し、前記位置決め部材を押圧する加圧ねじを螺合させる加圧ねじ穴と、
前記第2のスライダの一の側面に対向し、前記基準面に平行な、前記第1のレール側に位置する内側対向面、および前記一の側面の反対側の他の側面に対向する外側対向面をそれぞれ側壁とし、第2のスライダ取付面を底面とした第2の取付溝と、
前記第2のスライダ取付面に貫通し、前記第2のスライダの前記第1のレール側の位置決め部材を押圧する内側加圧ねじを螺合させる加圧ねじ穴と、
前記第2のスライダ取付面に貫通し、前記第2のスライダの前記第1のレールの反対側の位置決め部材を押圧する外側加圧ねじを螺合させる加圧ねじ穴と、
前記第2のスライダ取付面側の端面を、前記基準面と平行にしたレール設置基準面と、を形成した移動テーブルを設け、
前記第1のスライダのテーブル取付面に、前記移動テーブルの第1のスライダ取付面を、前記第2のスライダの各テーブル取付面に、前記移動テーブルの第2のスライダ取付面を重ね合わせ、
前記移動テーブルの第1のスライダ取付面の加圧ねじ穴に螺合する加圧ねじで、前記位置決め部材を押圧して、前記支持面と前記第1のスライダの一の側面との間を押し広げ、前記基準面に前記第1のスライダの他の面を押付けて、前記移動テーブルを前記第1のスライダに固定し、
前記レール設置基準面を基準として、前記移動テーブルの第2のスライダ取付面の加圧ねじ穴に螺合する内側加圧ねじで、前記第2のスライダの一の側面側の位置決め部材を押圧して該一の側面と内側対向面との間を押し広げ、または、前記移動テーブルの第2のスライダ取付面の加圧ねじ穴に螺合する外側加圧ねじで、前記第2のスライダの他の側面側の位置決め部材を押圧して前記該他の側面と外側対向面との間を押し広げ、
前記第2のレールを、前記第1のレールに対して平行に位置決めすることを特徴とするリニアガイド装置の位置決め方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−247773(P2007−247773A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71631(P2006−71631)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】