説明

リニアレンズと前記リニアレンズを用いた太陽光集光装置

【課題】 一方から入射する光は反射し他方から入射する光はそのまま透過することで光の進行方向を一定方向に抑制するリニアレンズを用いた据え置き型の太陽光集光装置を提供する。
【解決手段】 一方の面に凹曲面と平面が交互に繰り返して成る略階段状面を有し、他方の面における前記略階段状面の谷部分に対向する位置に形成された外側に凸曲面状のスライダー部を備えた複数のFBレンズ12,13を各階段状面が集光目標位置となる内側を向くとともに、各階段状面の谷部分の位置を基準に各階段状面を構成する凹曲面が上、平面が下となるように太陽熱温水器23周辺を覆う。FBレンズ12,13特有の正面からの入射光を反射させ、裏面からの入射光をそのまま透過させる性質により入射光を内側に閉じ込めて余す事無く太陽熱温水器23へと集光させることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時々刻々と入射角度が変化する太陽光の進行方向を抑制するリニアレンズと、前記リニアレンズを用いた太陽光集光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでに太陽光エネルギーを凝縮させる為に凸レンズや凹面鏡を用いた研究がなされている。凸レンズや凹面鏡によれば太陽光を焦点に集光させることで濃縮が可能である。しかし、凸レンズや凹面鏡によれば常時、入射光を一定方向から入射させる必要があるため時事刻々と変化する太陽光の入射角度に応じて、入射光の向きが常に一定になるように追尾させる必要がある。そのため、制御系も複雑になる等設備が大掛かりになってしまい希薄な太陽光エネルギーを利用する割りには設備費が高額なものとなり実用には不向きとされている。また、曇天の日には、太陽光は散乱してしまうため集光不能である。
【0003】
通常、太陽光集光に用いるレンズは全て屈折理論であるが、全反射の併用を考えることにより、高効率に太陽光を集光出来ることが分かった。鈴木は、これまでに「リニアレンズパネルと前記リニアレンズパネルを用いた集光方法」(特開2000−56102号公報)、光路抑制レンズ(特開2002−214406号公報)、光路抑制レンズ(特開2002−357702号公報)にて開示しているように、地表面の1平方メートルあたりに1kW程度と極めて希薄なエネルギーである太陽光を従来の集光技術では実現しえない程に効率よく濃縮するリニアレンズパネルを開発した。これらのレンズによれば、様々な方向から入射する光の透過後の進行方向を入射角度に関係なく略一定に保つことができた。例えば、具体的には±75°の範囲で入射角度が変化する太陽光を放射角度35°程度の範囲に制限することが出来、鉛直下向きに近い状態に保つことが出来た。なお、レンズの放射面の法線と放射光の進行方向との成す角度を放射角度と定義する。これらのレンズによれば、複数のレンズを使用して各レンズの透過光が一定の位置に集中する様に配置するだけで、時刻の変化で太陽光の入射角度が変化しようとも、曇りの日で入射光が散乱光であっても、太陽光を集光させることができた。
【0004】
【特許文献1】特開2000−56102号公報
【特許文献2】特開2000−303946号公報
【特許文献3】特開2000−284212号公報
【特許文献4】特開2001−82057号公報
【特許文献5】特開2002−214406号公報
【特許文献6】特開2002−357702号公報
【0005】
さらに、特願2001−359005の「光路変更装置とこれを用いた光誘導装置」にて開示した光路変更装置は平板状のリニアレンズであるが一方から入射する光は反射し他方から入射する光はそのまま透過するという特徴を備え光の進行方向を一定方向に抑制する性質を備えていた。このレンズを集光装置に応用する技術として特願2003−143957号の「光路抑制レンズとこれを用いた集光装置」、特願2004−94264号の「太陽光集光装置」、特願2005−94000号の「太陽光集光装置」がある。これらリニアレンズは光学的性能を優先して開発しており、強度については必ずしも充分な検討を行っていなかった。また、新規技術であるがために開示した用途以外にも有用な用途が有り得た。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、リニアレンズの光学的性能と強度確保の両立である。さらに、リニアレンズの用途の更なる開拓である。特に、一方から入射する光は反射し他方から入射する光はそのまま透過することで光の進行方向を一定方向に抑制するリニアレンズの用途の更なる開拓である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明にかかるリニアレンズは、奥行き方向の端部から見たときに一方の面に凹曲面と平面が交互に繰り返して成る略階段状面を有し、奥行き方向の端部から見たときに他方の面における前記略階段状面の谷部分に対向する位置に形成された外側に凸曲面状のスライダー部を備え、全体が略平板状で透明な素材からなるものである。
【0008】
請求項2の発明にかかる太陽光集光装置は、請求項1の発明のリニアレンズを各階段状面が集光目標位置となる内側を向くとともに、各階段状面の谷部分の位置を基準に各階段状面を構成する凹曲面が上、平面が下となるように集光目標位置周辺を覆ったものである。
【0009】
請求項3の発明にかかる太陽光集光装置は、請求項2の発明にかかる太陽光集光装置において、鏡面反射するアルミ板等を公報に略15°傾斜して立設して成る反射板を備えたものである。
【0010】
請求項4の発明にかかる太陽光集光装置は、請求項2の発明にかかる太陽光集光装置において、左右方向中央に上方からの入射光を積極的に集光する東西集光手段を備えたもので、前記東西集光手段は様々な方向から入射する太陽光の透過後の進行方向を入射角度に関係なく放射面に対して略垂直に保つことが出来るリニアレンズを南北方向から見てアーチ状に配置した複数のアーチ部からなり、これらアーチ部は各円弧中心位置が集光目標位置になるように配置されたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明にかかるリニアレンズによれば、階段状面の谷部分の位置を基準に凹曲面が上側にあるとともに全体を略鉛直に立てた状態において階段状面側からの入射光は、ほとんど平面からの入射となり、そのままレンズの内側から反対側の面へと到達後全反射されて入射面へと放射される。また、スライダー部は谷部分に対向する位置にあることからレンズ全体の厚さが極端に薄くなることが防止でき、光学性能と強度確保とを両立出来る。加えて、スライダー部の存在は、階段状面側からの入射光を跳ね上げて効率よく反射させる効果がある。また、反対側の面からの入射光はそのまま透過する。このように、本発明のリニアレンズは、正面からの入射光を反射させ、裏面からの入射光をそのまま透過させることから、光の進行方向を常に一定方向に保つ性質を備える。しかも、光学性能と強度確保とを両立出来る。
【0012】
請求項2の発明にかかる太陽光集光装置によれば、請求項1の発明のリニアレンズ特有の正面からの入射光を反射させ、裏面からの入射光をそのまま透過させる性質により入射光を内側に閉じ込めて余す事無く集光目標位置へと集光させることが出来る。その結果、温湯生成などを効率良く行え真冬でも再加熱することなくそのまま風呂等に使用出来る。
【0013】
請求項3の発明にかかる太陽光集光装置によれば、請求項2の発明の太陽光集光装置の効果に加えて、後方へと漏れ出た太陽光まで余す事無く集光目標位置へと到達させることが出来る。
【0014】
請求項4の発明にかかる太陽光集光装置によれば、請求項2の発明の太陽光集光装置の効果に加えて、設置するアーチ部の数や規模に応じて集熱能力を向上出来る。収集した太陽光エネルギーは、温湯や暖気を得る事で給湯、暖房に利用出来る。また、吸収冷凍サイクルの再生器の再生エネルギーとして利用しても良く、太陽熱利用による冷房を行うことが出来る。なお、吸収冷凍サイクルには吸収剤にリチウムブロマイドを用いた一般的なものの他、塩化リチウム、塩化カルシウムを用いたもの等がある。特に、規模の大きい場合には、塩化カルシウム利用が経済的なので適しているが、規模が小さくなる場合には、塩化カルシウム利用では専門性知識の高い人員が要求されるので扱いが簡易な塩化リチウム利用が望ましい。太陽熱温水器利用の場合では、一般家庭用よりも規模の大きな集合住宅等の建物にも利用出来る。特に、本発明の太陽光集光装置の大規模な例として、ビルの屋上に設置する場合には、上記太陽熱利用の他、屋上緑化による庭園を得る事が出来る。その結果、ストレスの多い都会生活の居住者にとって心の安らぎの場を得る事が出来好ましい。その他に、本発明の太陽光集光装置は、生ゴミ・汚泥の乾燥や化学工場における溶液の煮詰めによる濃縮にも利用出来る。そして、これらいずれの用途においても、本発明の太陽光集光装置によれば、利用過程で水蒸気が発生する。この水蒸気は、コークスとの反応による水素と二酸化炭素の生成に使用しても良い。生成された水素と二酸化炭素は混合された状態にあるが、その混合ガスから水素吸蔵合金による吸着を利用した水素吸蔵法により水素だけ分離して直接燃料としてまたは燃料電池等に使用出来る。また、水素吸蔵法により水素を除去され残った二酸化炭素は、藻類の培養に使用し、収穫した藻類を直接加工食品の原料にしたり、鯉、ドジョウ等の淡水魚、スッポンのエサとして使用しても良い。なお、塩化リチウム、塩化カルシウムの再生は、休耕田における太陽熱利用により行い、休耕田では設備規模も大きく出来、二酸化炭素利用の藻類の培養や淡水魚等の飼育規模も拡大出来る。また、上記のように生成された水蒸気の他の利用例として、主に大阪府立大学で研究がなされている光触媒によるHOのHとOへの分解の前準備として必要な水蒸気の供給に利用出来る。生成されたHは、直接燃料としてまたは燃料電池等に使用出来る。また、Oは、工業、医療等の産業に利用出来る。現状存在する光触媒は、紫外光領域での反応において有効な分解効率を得る事が出来るので、高効率にエネルギー取得が可能な風力発電と紫外光への変換が行える発光ダイオードとの組み合わせにより、光触媒反応に必要な紫外光を得れば良い。その他に、本発明の太陽光集光装置によれば発電を行うことも出来る。発電の形態としては、濃縮した太陽光を直接太陽電池を駆動する光源として利用する場合と、蒸気機関を駆動する熱源として利用する場合がある。蒸気機関を駆動する場合には、多量の水蒸気が発生するが、発生した水蒸気は上記で説明した通り、コークスとの反応や光触媒を利用した水素生成に利用出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態のリニアレンズと前記リニアレンズを用いた太陽光集光装置について説明する。図1は本発明の第一実施形態のリニアレンズの奥行き方向の端部の一部分を示す説明図である。本発明の第一実施形態のリニアレンズ1は、全体が略平板状で屈折率1.49のメタアクリル(MMA)、ガラス等の透明な素材からなる。このリニアレンズ1は奥行き方向の端部から見たときに一方の面に凹曲面2と平面3が交互に繰り返して成る略階段状面4を有している。また、奥行き方向の端部から見たときに他方の面における前記略階段状面4の谷部分5に対向する位置に形成された外側に凸曲面状のスライダー部6を備えている。
【0016】
上記構成からなる本発明の第一実施形態のリニアレンズ1によれば、図2乃至図4に示すように、階段状面4側から様々な角度で入射する入射光をその特有の形状による作用により全反射させる。図2は図1のリニアレンズの階段状面側から入射角度75°で入射する太陽光の進行経路を示す説明図である。図3は図1のリニアレンズの階段状面側から入射角度60°で入射する太陽光の進行経路を示す説明図である。図4は図1のリニアレンズの階段状面側から入射角度45°で入射する太陽光の進行経路を示す説明図である。
【0017】
また、本発明の第一実施形態のリニアレンズ1によれば、図5乃至図7に示すように、反対側の面(スライダー部6を備える面)からの入射光に対しては反射することなく、略そのまま透過する。図5は図1のリニアレンズのスライダー部6を備える面から入射角度75°で入射する太陽光の進行経路を示す説明図である。図6は図1のリニアレンズのスライダー部6を備える面から入射角度60°で入射する太陽光の進行経路を示す説明図である。図7は図1のリニアレンズのスライダー部6を備える面から入射角度45°で入射する太陽光の進行経路を示す説明図である。
【0018】
すなわち、本発明の第一実施形態のリニアレンズ1によれば、正面からの入射光を反射させ、裏面からの入射光をそのまま透過させることから、光の進行方向を常に一定方向に保つ性質を備える。
【0019】
特に、本実施形態のリニアレンズ1は、鉛直に立てて使用するが、このとき、階段状面4を構成する凹曲面2と平面3との位置関係は、谷部分5の位置を基準とすると凹曲面2が上、平面3が下となるようにする。このようにして使用するので、階段状面4側からの入射光は、ほとんど平面3からの入射となり、そのままレンズの内側から反対側の面へと到達後全反射されて入射面へと放射される。放射される光はレンズ内部から凹状の凹曲面2を通って放射されるので程よく分散されることとなるが、このとき後述する効果を発揮する。また、スライダー部6は谷部分5に対向する位置にあることからレンズ全体の厚さが極端に薄くなることが防止されるので、光学性能と強度確保とを両立する効果を発揮する。加えて、スライダー部6の存在は、階段状面4側からの入射光を跳ね上げて効率よく反射させる効果がある。その副作用としてスライダー部6側からの入射光を収束させてしまう作用があるが前述した凹曲面2の分散作用により相殺され結果的にレンズ通過後の光を略一定方向へと放射させることが出来る。このように、本実施形態のリニアレンズ1は、光学性能と強度確保とを両立した形状となっている。
【0020】
このように、本発明の第一実施形態のリニアレンズ1は、奥行き方向の端部から見たときに一方の面に凹曲面2と平面3が交互に繰り返して成る略階段状面4を有し、奥行き方向の端部から見たときに他方の面における前記略階段状面4の谷部分5に対向する位置に形成された外側に凸曲面状のスライダー部6を備え、全体が略平板状で透明な素材からなるものである。
【0021】
従って、本発明の第一実施形態のリニアレンズ1によれば、階段状面4の谷部分5の位置を基準に凹曲面2が上側にあるとともに全体を略鉛直に立てた状態において階段状面4側からの入射光は、ほとんど平面3からの入射となり、そのままレンズ1の内側から反対側の面へと到達後全反射されて入射面へと放射される。また、スライダー部6は谷部分5に対向する位置にあることからレンズ全体の厚さが極端に薄くなることが防止でき、光学性能と強度確保とを両立出来る。加えて、スライダー部6の存在は、階段状面4側からの入射光を跳ね上げて効率よく反射させる効果がある。また、反対側の面からの入射光はそのまま透過する。このように、本発明の第一実施形態のリニアレンズ1は、正面からの入射光を反射させ、裏面からの入射光をそのまま透過させることから、光の進行方向を常に一定方向に保つ性質を備える。しかも、光学性能と強度確保とを両立出来る。
【0022】
続いて、本発明の第二実施形態について説明する。本発明の第二実施形態の太陽光集光装置は前記第一実施形態のリニアレンズ1を用いたものである。図8は本発明の第二実施形態の太陽光集光装置を示す左側方断面図である。図9は本発明の第二実施形態の太陽光集光装置を示す正面図である。なお、リニアレンズ1は、正面からの入射光を反射させ、裏面からの入射光をそのまま透過させる性質を持つことから、以降の説明では、FRONT BACK LENSを略してFBレンズと呼ぶことにする。
【0023】
図8及び図9に示すように、本発明の第二実施形態の太陽光集光装置11は、例えば、水平面22に対して30°を成すような傾斜した屋根21に設置された太陽熱温水器23を覆って使用するもので、太陽光を常時、太陽熱温水器23へと集光させて集熱量を増大させる太陽熱温水器増熱シェルターである。太陽熱温水器23の正面側(北半球では南側、南半球では北側)は、第一実施形態のリニアレンズ1同様のFBレンズ12を上側を後方に略15°傾斜して立設して覆う。太陽熱温水器23の後方側(北半球では北側、南半球では南側)は、第一実施形態のリニアレンズ1同様のFBレンズ13を上側を前方に略5°傾斜して立設して覆う。さらに、FBレンズ13の後方は、アルミ板等の鏡面反射による反射板18を後方に略15°傾斜して立設して覆う。左右の側面は、第一実施形態のリニアレンズ1同様のFBレンズ14,15を上側を内側に略15°傾斜して立設して覆う。さらに、FBレンズ14,15上下方向の各中間位置から上方に向けてFBレンズ14,15の高さ位置までの範囲は別途FBレンズ14,15と同様のFBレンズ16,17を立直状態で覆う。このときFBレンズ12〜17の各階段状面4は集光目標位置となる内側(太陽熱温水器23側)を向くように配置するとともに、各階段状面4を構成する凹曲面2と平面3との位置関係は、谷部分5の位置を基準とすると凹曲面2が上、平面3が下となるようにする。最後に、上側は、ポリカーボネート等の透明板19により覆い、太陽光の入射を妨げる事無く雨風の進入を防ぐようになっている。
【0024】
以上の構成からなる本発明の第二実施形態の太陽光集光装置11によれば、図10及び図11に示すように、外部より入射する太陽光を周辺より内側へと取り込むことはあるが、再び、外へと放出することなく内部に閉じ込めた状態を保つ。図10は本発明の第二実施形態の太陽光集光装置へと入射する太陽光の進行経路を示す左側方断面図である。図11は本発明の第二実施形態の太陽光集光装置へと入射する太陽光の進行経路を示す正面図であるミ板等を後方に略15°傾斜して立設して成る。すなわち、太陽光の進行方向はFBレンズ12〜17により外部から内側へのみの移動に制限される。従って、内側へと取り込まれた太陽光の全てが太陽熱温水器23へと濃縮されて到達でき、太陽熱温水器23の温水生成能力を高めることが出来る。特に、FBレンズ13の後部に配置された反射板18で反射された太陽光は、後方よりFBレンズ13を透過して太陽熱温水器23へと到達出来る等、本実施形態の太陽光集光装置11は、リニアレンズとしてはFBレンズのみを使用した従来にない据え置き型集光装置である。生成された温湯は、貯湯槽23aへと収集され利用出来るが、温湯生成能力が高いことから真冬においても、再加熱することなくそのまま風呂等に使用出来る。
【0025】
このように、本発明の第二実施形態の太陽光集光装置11は、上記第一実施形態のリニアレンズ1からなる複数のFBレンズ12〜17を各階段状面4が集光目標位置となる内側を向くとともに、各階段状面4の谷部分5の位置を基準に各階段状面4を構成する凹曲面2が上、平面3が下となるように集光目標位置周辺を覆ったものである。
【0026】
従って、本発明の第二実施形態の太陽光集光装置11によれば、リニアレンズ1特有の正面からの入射光を反射させ、裏面からの入射光をそのまま透過させる性質により入射光を内側に閉じ込めて余す事無く集光目標位置へと集光させることが出来る。その結果、温湯生成などを効率良く行え真冬でも再加熱することなくそのまま風呂等に使用出来る。特に、本実施形態の太陽光集光装置11によれば、入射光の入射角度に略無関係に集光能力を保持出来ることから、日の出から日没に至るまで日中を通じて時々刻々と入射角度が東西方向に変化しようとも、曇天の日の散乱光であっても常に太陽光エネルギーを最大限に利用出来る。しかも、追尾機構が不要であることから設置スペースの省スペース化・設備コストパフォーマンスの面でも有効である。
【0027】
特に、本発明の第二実施形態の太陽光集光装置11は鏡面反射するアル反射板18を備える。従って、後方へと漏れ出た太陽光まで余す事無く集光目標位置へと到達させることが出来る。
【0028】
続いて、本発明の第三実施形態について説明する。図12は本発明の第三実施形態の太陽光集光装置を示す部分省略正面図である。図13は本発明の第三実施形態の太陽光集光装置を示す右側方断面図である。図12及び図13に示す様に、本発明の第三実施形態の太陽光集光装置31は、上記第二実施形態の太陽光集光装置11の左右方向中央に上方からの入射光を積極的に集光する東西集光手段を備えたもので、一般家庭用よりも規模の大きな集合住宅等の建物に設置するものである。なお、図中、上記第二実施形態と同一の符号及び記号で示す部材は、上記第二実施形態と同一部材または相当の部分を示す。
【0029】
本発明の第三実施形態の太陽光集光装置31の東西集光手段は、図14及び図15に示すようなリニアレンズ41を南北方向から見てアーチ状に配置した複数のアーチ部32,33,34で構成したものである。図14は本発明の第三実施形態の太陽光集光装置の東西集光手段を構成するリニアレンズを示す部分省略断面図である。図15は図14のリニアレンズを構成する集光部の1つを示す拡大断面図である。図14及び図15に示すリニアレンズ41は、同一断面形状が奥行き方向に連続した複数の集光部42が幅方向に連なって全体が略平板状をした透明な板材である。リニアレンズ41を構成する材質には屈折率1.49のメタアクリル(MMA)、ガラス等がある。リニアレンズ41は、1つの集光部42の幅が略15mmであり、全体が縦横略50cmの大きさである。リニアレンズ41の形状は、様々な方向から入射する太陽光の透過後の進行方向を入射角度に関係なく略一定に保つことが出来る形状である。詳しくは水平に配置した場合に透過光の進行方向は略鉛直下向きとなる。従って、リニアレンズ41により構成されるアーチ部32,33,34の外側から入射する光は各アーチ部32,33,34の円弧中心に集光される。アーチ部32,33,34は、太陽光集光装置31の中央部分を上から覆った状態に配置されており、図12に示すように、各アーチ部32,33,34の円弧中心位置が太陽熱温水器23位置になるようになっている。なお、本実施形態では屋根21に配置される太陽熱温水器23の数は上記第二実施形態の場合に比べて大幅に増えており、大規模に温湯の生成が可能である。ここで、アーチ部32,33,34の規模及び数は、限定するものではなく、規模や数に応じて太陽熱温水器23の数も増大出来る。
【0030】
続いてリニアレンズ41の支持構造について説明する。リニアレンズ41は、図12及び図13では図示しない後述のアングル部材51で支持される。すなわち、アーチ部32,33,34の骨組みは、アングル部材51で構成され、その上にリニアレンズ41が配列される。リニアレンズ41の幅方向両端は、図16に示すように、アングル部材51で支持し易いような形状となっている。図16は本発明の第三実施形態の太陽光集光装置の東西集光手段を構成するリニアレンズの支持構造を示す断面図である。詳しくは、アングル部材51の角部分の横平面に当接する横平板部43と、アングル部材51の角部分の縦平面に当接する縦平板部44とをリニアレンズ41は備えている。なお、横平板部43のアングル部材51との引っかかり部分の寸法は10mm程度であり、集光部42の幅の2/3程度の大きさである。そして、横平板部43と縦平板部44とはアングル部材51の角部分に噛み合ってリニアレンズ41は安定して位置決め及び支持される。また、アングル部材51の縦平面部分は縦平板部44の下端を下方より受け支持するために突起状に形成された補強部52を備えている。補強部52によりリニアレンズ41の支持状態は更に安定する。
【0031】
このように、本発明の第三実施形態の太陽光集光装置31は、上記第二実施形態の太陽光集光装置11の左右方向中央に上方からの入射光を積極的に集光する東西集光手段を備えたもので、前記東西集光手段は様々な方向から入射する太陽光の透過後の進行方向を入射角度に関係なく放射面に対して略垂直に保つことが出来るリニアレンズ41を南北方向から見てアーチ状に配置した複数のアーチ部32,33,34からなり、これらアーチ部32,33,34は各円弧中心位置が集光目標位置となる太陽熱温水器23位置になるように配置されているものである。
【0032】
従って、本発明の第三実施形態の太陽光集光装置31によれば、設置するアーチ部32,33,34の数や規模に応じて集熱能力を向上出来る。収集した太陽光エネルギーは、温湯や暖気を得る事で給湯、暖房に利用出来る。また、吸収冷凍サイクルの再生器の再生エネルギーとして利用しても良く、太陽熱利用による冷房を行うことが出来る。なお、吸収冷凍サイクルには吸収剤にリチウムブロマイドを用いた一般的なものの他、塩化リチウム、塩化カルシウムを用いたもの等がある。特に、規模の大きい場合には、塩化カルシウム利用が経済的なので適しているが、規模が小さくなる場合には、塩化カルシウム利用では専門性知識の高い人員が要求されるので扱いが簡易な塩化リチウム利用が望ましい。太陽熱温水器利用の場合では、一般家庭用よりも規模の大きな集合住宅等の建物にも利用出来る。特に、本発明の太陽光集光装置31の大規模な例として、ビルの屋上に設置する場合には、上記太陽熱利用の他、屋上緑化による庭園を得る事が出来る。その結果、ストレスの多い都会生活の居住者にとって心の安らぎの場を得る事が出来好ましい。その他に、本発明の太陽光集光装置31は、生ゴミ・汚泥の乾燥や化学工場における溶液の煮詰めによる濃縮にも利用出来る。そして、これらいずれの用途においても、本発明の太陽光集光装置31によれば、利用過程で水蒸気が発生する。この水蒸気は、コークスとの反応による水素と二酸化炭素の生成に使用しても良い。生成された水素と二酸化炭素は混合された状態にあるが、その混合ガスから水素吸蔵合金による吸着を利用した水素吸蔵法により水素だけ分離して直接燃料としてまたは燃料電池等に使用出来る。また、水素吸蔵法により水素を除去され残った二酸化炭素は、藻類の培養に使用し、収穫した藻類を直接加工食品の原料にしたり、鯉、ドジョウ等の淡水魚、スッポンのエサとして使用しても良い。なお、塩化リチウム、塩化カルシウムの再生は、休耕田における太陽熱利用により行い、休耕田では設備規模も大きくでき、二酸化炭素利用の藻類の培養や淡水魚等の飼育規模も拡大出来る。また、上記のように生成された水蒸気の他の利用例として、主に大阪府立大学で研究がなされている光触媒によるHOのHとOへの分解の前準備として必要な水蒸気の供給に利用出来る。生成されたHは、直接燃料としてまたは燃料電池等に使用出来る。また、Oは、工業、医療等の産業に利用出来る。現状存在する光触媒は、紫外光領域での反応において有効な分解効率を得る事が出来るので、高効率にエネルギー取得が可能な風力発電と紫外光への変換が行える発光ダイオードとの組み合わせにより、光触媒反応に必要な紫外光を得れば良い。その他に、本発明の太陽光集光装置31によれば発電を行うことも出来る。発電の形態としては、濃縮した太陽光を直接太陽電池を駆動する光源として利用する場合と、蒸気機関を駆動する熱源として利用する場合がある。蒸気機関を駆動する場合には、多量の水蒸気が発生するが、発生した水蒸気は上記で説明した通り、コークスとの反応や光触媒を利用した水素生成に利用出来る。
【産業上の利用可能性】
【0033】
上記のような構成からなる本発明によれば、一般家庭用の太陽熱温水器へと太陽光を集光させて集熱量を増大させる小規模な太陽熱温水器増熱シェルターとしての利用の他、規模の大きな集合住宅等の建物にも利用出来る。また、太陽光を暖房、給湯への利用のレベルを超えて吸収冷凍サイクルや蒸気機関への利用も可能であり、冷房、発電への利用も出来る。水蒸気を得る場合には、コークスとの反応により水素と二酸化炭素の生成に使用しても良い。生成された水素は、直接燃料としてまたは燃料電池等に使用出来る。二酸化炭素は、藻類の培養に使用し、収穫した藻類を直接加工食品の原料にしたり、鯉、ドジョウ等の淡水魚、スッポンのエサとして使用しても良い。なお、吸収冷凍サイクルの吸収剤には、リチウムブロマイドを用いた一般的なものの他、塩化リチウム、塩化カルシウムを用いたものがある。塩化リチウム、塩化カルシウムの再生は、休耕田における太陽熱利用により行い、CaCl・2HOとしてだけでなく、CaCl・4HOまたはCaCl・6HOとして再生する場合もある。休耕田では設備規模も大きくでき、二酸化炭素利用の藻類の培養や淡水魚等の飼育規模も拡大出来る。また、汚泥や生ゴミの乾燥にも使用出来る。このように、本発明は石油代替エネルギーとして様々な利用可能性を秘めている。しかも、本発明は太陽光を用いることで、COの排出を防止するだけでなく、藻類培養への展開により積極的にCOの吸収を行い、地球温暖化防止にも貢献出来る。しかも、藻類培養に加えて、淡水魚飼育への展開により将来の食料不足問題の解決にも寄与する。さらに、二次的に生成された水蒸気は、光触媒によるHOのHとOへの分解前に必要な水蒸気としても利用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第一実施形態のリニアレンズの奥行き方向の端部の一部分を示す説明図である。
【図2】図1のリニアレンズの階段状面側から入射角度75°で入射する太陽光の進行経路を示す説明図である。
【図3】図1のリニアレンズの階段状面側から入射角度60°で入射する太陽光の進行経路を示す説明図である。
【図4】図1のリニアレンズの階段状面側から入射角度45°で入射する太陽光の進行経路を示す説明図である。
【図5】図1のリニアレンズのスライダー部6を備える面から入射角度75°で入射する太陽光の進行経路を示す説明図である。
【図6】図1のリニアレンズのスライダー部6を備える面から入射角度60°で入射する太陽光の進行経路を示す説明図である。
【図7】図1のリニアレンズのスライダー部6を備える面から入射角度45°で入射する太陽光の進行経路を示す説明図である。
【図8】本発明の第二実施形態の太陽光集光装置を示す左側方断面図である。
【図9】本発明の第二実施形態の太陽光集光装置を示す正面図である。
【図10】本発明の第二実施形態の太陽光集光装置へと入射する太陽光の進行経路を示す左側方断面図である。
【図11】本発明の第二実施形態の太陽光集光装置へと入射する太陽光の進行経路を示す正面図である。
【図12】本発明の第三実施形態の太陽光集光装置を示す部分省略正面図である。
【図13】本発明の第三実施形態の太陽光集光装置を示す右側方断面図である。
【図14】本発明の第三実施形態の太陽光集光装置の東西集光手段を構成するリニアレンズを示す部分省略断面図である。
【図15】図14のリニアレンズを構成する集光部の1つを示す拡大断面図である。
【図16】本発明の第三実施形態の太陽光集光装置の東西集光手段を構成するリニアレンズの支持構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1,41 リニアレンズ
2 凹曲面
3 平面
4 階段状面
5 谷部分
6 スライダー部
11 太陽光集光装置
12,13,14,15,16,17 FBレンズ
18 反射板
19 透明板
21 屋根
22 水平面
23 太陽熱温水器
23a 貯湯槽
31 太陽光集光装置
32,33,34 アーチ部
42 集光部
43 横平板部
44 縦平板部
51 アングル部材
52 補強部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
奥行き方向の端部から見たときに一方の面に凹曲面と平面が交互に繰り返して成る略階段状面を有し、奥行き方向の端部から見たときに他方の面における前記略階段状面の谷部分に対向する位置に形成された外側に凸曲面状のスライダー部を備え、全体が略平板状で透明な素材からなることを特徴とするリニアレンズ。
【請求項2】
請求項1に記載のリニアレンズを各階段状面が集光目標位置となる内側を向くとともに、各階段状面の谷部分の位置を基準に各階段状面を構成する凹曲面が上、平面が下となるように集光目標位置周辺を覆ったことを特徴とする太陽光集光装置。
【請求項3】
鏡面反射するアルミ板等を後方に略15°傾斜して立設して成る反射板を備えたことを特徴とする請求項2に記載の太陽光集光装置。
【請求項4】
左右方向中央に上方からの入射光を積極的に集光する東西集光手段を備え、前記東西集光手段は様々な方向から入射する太陽光の透過後の進行方向を入射角度に関係なく放射面に対して略垂直に保つことが出来るリニアレンズを南北方向から見てアーチ状に配置した複数のアーチ部からなり、これらアーチ部は各円弧中心位置が集光目標位置になるように配置されたことを特徴とする請求項2に記載の太陽光集光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−216717(P2008−216717A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55127(P2007−55127)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000251691)