説明

リニア駆動型超音波モータ

【課題】安定した押圧力を得ることができ、外部装置との関係における制約が少ない、小型のリニア駆動型超音波モータを提供する。
【解決手段】圧電素子を有する超音波振動子と、超音波振動子との間の摩擦力により駆動される被駆動部材と、超音波振動子と被駆動部材との間に摩擦力が生じるように超音波振動子を押圧する押圧部材と、超音波振動子、押圧部材、及び被駆動部材を収納するケース部材と、ケース部材内部において被駆動部材に連結する連結部材と、を少なくとも具備したリニア駆動型超音波モータであって、ケース部材は、連結部材の一部を通すための開口部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニア駆動型超音波モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のリニア駆動型超音波モータとしては、例えば特許文献1記載の振動装置が挙げられる(図3)。ここで、図3は、従来のリニア駆動型超音波モータの構成を示す図であって、(a)は分解斜視図、(b)は縦断面図である。
【0003】
図3に示す振動装置は、振動体901を収容したケース906、ケース906内を通って振動体901に接触する移動体904、及び、移動体904と振動体901とを加圧接触させる押圧力(付勢力)を発生する押圧バネ905を備えている。押圧バネ905は、ケース906の外側に取り付けられている。ケース906の振動体901に面する側には開口部が形成され、押圧バネ905の押圧力は、開口部を通して振動体901に作用している。すなわち、この振動装置は、押圧バネ905がケース906の開口部を覆いながらケース906の外側に取り付けられた構造をしており、押圧力を発生させる押圧バネ905の変形部(開口部を覆っている平面部)が露出している。
【0004】
【特許文献1】特許第3524248号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の振動装置では、なんらかの外部装置に取り付ける場合には、押圧バネ905の押圧力の変化をさけるために、押圧バネ905が外部装置の部材に接触しないように、すなわち、押圧バネ905を回避するように配置しなければならないという設計の制限が発生する。さらに、押圧バネ905が、移動体904を移動させることができるような十分な押圧力を発生するためには、押圧バネ905側を外部装置に固定することができない。このように押圧バネ905側を固定することができないことから、ケース906の内包物の保護が十分ではなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、安定した押圧力を得ることができ、外部装置との関係における制約が少ない、小型のリニア駆動型超音波モータを提供することを目的とする。また、本発明の目的は、ケース部材の内包物を確実に保護することのできるリニア駆動型超音波モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るリニア駆動型超音波モータは圧電素子を有する超音波振動子と、超音波振動子との間の摩擦力により駆動される被駆動部材と、超音波振動子と被駆動部材との間に摩擦力が生じるように超音波振動子を押圧する押圧部材と、超音波振動子、押圧部材、及び被駆動部材を収納するケース部材と、ケース部材内部において記被駆動部材に連結する連結部材と、を少なくとも具備したリニア駆動型超音波モータであって、ケース部材は、連結部材の一部を通すための開口部を備えることを特徴としている。
【0008】
本発明に係るリニア駆動型超音波モータにおいては、連結部材の一部を通すための開口部が、被駆動部材の駆動方向と前記押圧部材による押圧方向のいずれにも異なる方向に開口することが好ましい。
【0009】
本発明に係るリニア駆動型超音波モータにおいて、連結部材は、超音波振動子及び前記被駆動部材に対向する部位であって、所定の機能素子を設置する部位を有するとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るリニア駆動型超音波モータは、安定した押圧力を得ることができ、外部装置との関係における制約が少なく、かつ、小型化可能であり、さらに、ケース部材の内包物を確実に保護することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態に係る超音波モータ10(リニア駆動型超音波モータ)について、図1、図2を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。ここで、図1は、超音波モータ10の構成を示す分解斜視図であり、図2は、組み立てた状態の超音波モータ10の外観を示す斜視図である。
【0012】
図1に示すように、超音波モータ10は、超音波振動子としての振動子22、被駆動部材24、押圧部材21、ケース部材11、及び、転動部材25を備える。以下各部材について詳細に説明する。
【0013】
振動子22及びケース部材11はいずれも略直方体状の外形を備え、ケース部材11の内部には収容凹部16が形成されている。この収容凹部16内には、超音波モータ10の高さ方向(図1のz方向)において上側から順に、押圧部材21、振動子22、案内部材29、転動部材25が収容されている。なお、本実施形態では、ケース部材11は1つの部材からなるが、複数の部材を互いに組み付けて構成することもできる。
【0014】
押圧部材21は、長板状の板バネであり、その長手方向が、超音波モータ10、ケース部材11の長手方向(図1(a)のx方向)に沿うように配置される。転動部材25は、ケース部材11の長手方向に沿って2つずつ2列になるように配置されている。
【0015】
案内部材29は、長板状部材を幅方向中心で折り曲げた形状をなしている。この案内部材29は、折り曲げ部が下側に配置されるようにケース部材11の収容凹部16内に収容したときに転動部材25に対応する位置に、貫通孔であるガイド穴部29aをそれぞれ備える。案内部材29は、収容凹部16内に設けた係合部(不図示)と係合することによって、その位置が固定されることが好ましい。この構成により、収容凹部16内においては、4つの転動部材25が案内部材29のガイド穴部29aの下側から上側へそれぞれ挿通されることによって、転動可能な状態で位置決めされる。
【0016】
被駆動部材24は、断面がD形の軸状部材であり、平面部24aが駆動子22aを介して振動子22に接しており、曲面部24bが転動部材25に当接している。
【0017】
一方、ケース部材11の収容凹部16内において、被駆動部材24は、案内部材29のガイド穴部29aの上側に突出した転動部材25に当接支持される。被駆動部材24は、ケース部材11の長手方向に沿って配置された転動部材25に支持されることによって、長手方向に移動可能となる。
【0018】
押圧部材21は、長手方向の両端部の上面が、押圧ネジ36(加圧部材)により押圧可能になっている。押圧ネジ36は、ケース部材11の上面に設けた貫通孔であるねじ穴11hを通じて、先端が収容凹部16内に延出している。また、押圧部材21は、長手方向の中央部の下面が振動子22の位置決め用の支持部材23と当接するような配置となっている。ここで、支持部材23は、振動子22の長手方向(図1(a)のx方向)中央に固定されている。また、振動子22は、超音波振動子(例えば圧電素子)によって構成される。なお、超音波振動子の駆動方法は公知であるため、以下の図においては、振動子22を駆動するための電気配線は省略している。また、ケース部材11の収容凹部16内には、支持部材23の張り出し部が係合される係合溝(不図示)が形成されている。
【0019】
図1、図2に示すように、被駆動部材24の両端部には、外部装置の連結部材35を連結するための連結部31が設けられている。連結部材35には、連結部31に対応する位置に、連結ネジ32を挿通するためのねじ穴33(連結部)が設けられている。したがって、二つの連結ネジ32を、連結部材35の二つのねじ穴33に挿入し、連結ネジ32の先端部分を被駆動部材24の連結部31内に螺合することによって、連結部材35を被駆動部材24に固定することができる。これにより、被駆動部材24とともに連結部材35が駆動されることになるため、リニア可動装置を実現することができる。
【0020】
ここで、連結部材35は、振動子22及び被駆動部材24に対向する部位であって、所定の機能素子を設置する部位を有する。具体的には、連結部材35は、平面視略コの字状をなし、振動子22及び被駆動部材24に沿って配置される本体部35aと、本体部35aの両端から被駆動部材24へ延びる二本の腕部35bと、を備える。本体部35aは、ケース部材11の長手方向(x方向)に沿って延び、振動子22及び被駆動部材24との間にこれらに対向する領域を形成する。本体部35aには、外部装置のほか所定の機能素子を設置することができる。
【0021】
また、ケース部材11には、連結部材35の一部を通すための開口部11pが設けられている。この開口部11pは、押圧部材21による押圧方向(z方向)及び被駆動部材24の駆動方向(x方向)のいずれにも直交する方向(y方向)に、開口している。なお、開口部11pは、押圧部材21による押圧方向及び被駆動部材24の駆動方向のいずれとも直交する方向ではなく、異なる方向又は交差する方向であってもよい。
【0022】
開口部11pは、少なくとも連結部材35の一部を通すことのできる大きさ及び形状であることが好ましいが、振動子22のみ、又は、振動子22に固定された支持部材23上に押圧部材21を支持したユニットを通すことができる大きさ及び形状であるとさらに良い。また、開口部11pは、ケース部材11の一つの面にのみ設けても良いが、二つ以上の面に設けることもできる。開口部11pを複数設ける場合は、それぞれの大きさ及び形状は同一であってもよいし、異なっても良い。異なる大きさ及び形状で形成する場合は、少なくとも一つの開口部11pの大きさ及び形状が、少なくとも連結部材35の一部を通すことが可能であることが好ましい。
【0023】
以上の構成の超音波モータ10の組立ては次のように行う。
まず、押圧部材21を、開口部11pから、ケース部材11の収容凹部16に入れる。次に、支持部材23の張り出し部とケース部材11の係合部とを嵌合することによって、ケース部材11に振動子22を固定する。なお、支持部材23の張り出し部とケース部材11の係合部とを嵌合しているため、この状態で一体的にハンドリングすることが可能である。
【0024】
つづいて、開口部11pから、被駆動部材24、及び、あらかじめ被駆動部材24に連結された連結部材35を挿入する。挿入された被駆動部材24は、転動部材25によって支持される。さらに、押圧ネジ36の収容凹部16内への延出量を調整することにより押圧部材21による押圧力を所望の値に設定する。押圧力の設定後は、例えば押圧ネジ36をケース部材11のねじ穴11hに対して接着することによって固定することもできる。なお、押圧力の調整は、押圧部材21の材質、形状の変更によっても行うことができる。
【0025】
ケース部材11は押圧部材21より十分高い剛性を有しており、ケース部材11が図示しない外部装置の部材に接触しても、例えば押圧部材21の撓み量が変わるということがない。そのため、外部装置の設計自由度が向上する。また、押圧部材21がケース部材11の外部に露出していないため、ケース部材11の外形を外部装置にあてつけて取り付けの位置決めに使うことができる。さらに、ケース部材11に取り付け穴を設けて外部装置に直接取り付けることも可能になる。
【0026】
なお、被駆動部材が移動可能であれば、転動部材を設けない構成も可能である。例えば、転動することのない半球状の部材を設けたり、第2のケース部材において、被駆動部材と接触する部分に半球状の突起部を設け、又は、接触部分を滑らかな面とするなどの構成を採用することができる。
【0027】
以上の構成においては、押圧部材21が振動子22を被駆動部材24に対して押圧することにより、振動子22と被駆動部材24との間には摩擦力が生じるため、振動子22の振動によって被駆動部材24はその長手方向に移動する。さらに、被駆動部材24が転動部材25によって支持されつつ移動することから、安定した押圧力を得ることができる。
【0028】
また、振動子22、押圧部材21だけでなく、被駆動部材24を1つのケース部材11内に収納する構成となっているため、これらの相対的な位置決め精度が向上し、モータ性能や信頼性の向上につながる。さらに、連結部材35やこれを通す開口部11pを設けたことにより、組立時やメンテ時の作業を容易にできる。
【0029】
また、連結部材35には所定の機能素子を設置することができ、機能素子として、例えばセンサを設置すると、実装状態や駆動状態をモニタすることができる。
【0030】
外部装置に対してケース部材11を固定することが可能となるため、押圧部材21による押圧力を安定的に得つつ、幅広いリニア可動装置に適用することができる。
【0031】
一般に、超音波モータ装置において、主要な構成要件をパッケージしたユニット構造にすることは汎用性、特性安定化の点で有効であるが、小型にすることが求められている。これに対して、従来の超音波モータにおいては、押圧部材(付勢部材)をケース部材に内包した状態で小型化することは、押圧力のばらつきが大きくなりやすく、困難である。しかし、押圧部材をケースに取り付け露出した状態ではケースとして内容物を保護するという機能が不十分である。
【0032】
これに対して、上述の実施形態に係る超音波モータによれば、押圧部材21の位置決めが容易にでき、かつ、組立及びメンテナンスも簡易なユニット構造を実現できる。すなわち、箱状のケース部材11の開口部側に振動子22、開口部と逆側に押圧部材21を案内して収容する。よって、小型化が可能となるとともに、剛体であるケース部材11が押圧部材21を含む各部材を覆って保護するため、ケース部材11は外部装置に固定したり、位置決めのために当てつけたり、ということが可能となる。
【0033】
さらに、一つの部材からなるケース部材11という閉じられた空間内で、押圧部材21の押圧力によって、振動子22が被駆動部材24に接触するため、異音の発生を防止することができる。また、押圧部材21、振動子22のいずれか一方又は両方を位置規制することによって、被駆動部材24の精密な駆動には不必要な共振の発生を抑えることができる。さらにまた、押圧部材21と被駆動部材24との間に振動子22を配置する構造により、被移動部材24の移動がスムーズとなる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明に係るリニア駆動型超音波モータは、小型機器の精度の高い駆動に適している。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波モータの構成を示す分解斜視図である。
【図2】組み立てた状態の超音波モータの外観を示す斜視図である。
【図3】従来のリニア駆動型超音波モータの構成を示す図であって、(a)は分解斜視図、(b)は縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 超音波モータ(リニア駆動型超音波モータ)
11 ケース部材
11h ねじ穴
16 収容凹部
21 押圧部材
22 振動子(超音波振動子)
22a 駆動子
23 支持部材
24 被駆動部材
24a 平面部
24b 曲面部
25 転動部材
29 案内部材
29a ガイド孔部
31 連結部
32 連結ネジ
33 ねじ穴(連結部)
35 連結部材
36 押圧ネジ(加圧部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を有する超音波振動子と、
前記超音波振動子との間の摩擦力により駆動される被駆動部材と、
前記超音波振動子と前記被駆動部材との間に摩擦力が生じるように前記超音波振動子を押圧する押圧部材と、
前記超音波振動子、前記押圧部材、及び前記被駆動部材を収納するケース部材と、
前記ケース部材内部において記被駆動部材に連結する連結部材と、
を少なくとも具備したリニア駆動型超音波モータであって、
前記ケース部材は、前記連結部材の一部を通すための開口部を備えることを特徴とするリニア駆動型超音波モータ。
【請求項2】
前記連結部材の一部を通すための開口部は、前記被駆動部材の駆動方向と前記押圧部材による押圧方向のいずれにも異なる方向に開口することを特徴とする請求項1に記載のリニア駆動型超音波モータ。
【請求項3】
前記連結部材は、前記超音波振動子及び前記被駆動部材に対向する部位であって、所定の機能素子を設置する部位を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリニア駆動型超音波モータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate