説明

リフター

【課題】昇降台の最低高さをできる限り低くしたリフターを提供することを目的とする。
【解決手段】テンションバー28は、カムコロ26及び27が回転可能に取り付けられた2つの板状のカムコロ取付部33,33と、2つのカムコロ取付部33,33同士を連結する板状の連結部34とを備え、全体としてコの字形状を有している。連結部34の中央部分には貫通穴35が設けられている。雄ねじ部が形成されたロッド30の端部が貫通穴35に挿入されて連結部34を貫通し、このロッド30の端部に座金37が挿入されてナット36が螺合することによって、ロッド30の端部が連結部34に接続されている。連結部34が上コロ19を通り越して、内アーム15と重ならないように上コロ19に対して内アーム15とは反対側に位置するまで、テンションバー28は移動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はリフターに係り、特に、基台と、昇降台と、昇降台を基台に対して平行を保ったまま昇降させる昇降装置とを備えたリフターに関する。
【背景技術】
【0002】
各家庭や集会所等の階段に使用するためのリフターが、例えば、特許文献1等に記載されている。このようなリフターの構成を、図6〜8に示す。リフター50は、基台51と、昇降台52と、昇降台52を基台51に対して平行を保ったまま昇降させる昇降装置70とを備えている。昇降装置70は2つの案内手段53を備え、案内手段53は、内アーム54及び外アーム55がそれぞれの中央部分で交差して1つのピン66によって回動可能に支持されている。2つの内アーム54,54はそれぞれ、一端が基台51にピン56によって回動可能に取り付けられると共に、他端に昇降台52の下面を転動する上コロ57が取り付けられている。2つの外アーム55,55はそれぞれ、2つの内アーム54,54の外側に、一端が昇降台52にピン58によって回動可能に取り付けられると共に、他端に基台51の上面を転動する下コロ59が取り付けられている。また、昇降装置70は、テンションバー65と、テンションバー65を移動させる油圧シリンダー60とをさらに備えている。油圧シリンダー60によりテンションバー65が移動すると、テンションバー65の両端に取り付けられたカムコロ63及び64が、内アーム54及び外アーム55のそれぞれに設けられたカム61及び62に接するように転動するようになっている。
【0003】
昇降台52が最高高さにあるとき(図6)、油圧シリンダー60がテンションバー65を上コロ57及び下コロ59の方向に移動することにより、カムコロ63及び64のそれぞれがカム61及び62に接するように上コロ57及び下コロ59の方向に移動する。すると、案内手段53が、図6に示されるようなアルファベットの「X」字形状の状態から、そのアルファベットの「X」が次第につぶれるように変形して、案内手段53の高さが低下することにより、昇降台52は基台51に対して平行を保ったまま下降していく。昇降台52が下降していくと、図7及び8のAで示される部分においてテンションバー65は2つの内アーム54,54に重なり、この状態よりも昇降台52の位置が低下しなくなる。すなわち、昇降台52の最低高さを、図8の状態における高さhよりも低くすることはできない。したがって、リフター50を設置する際に、設置場所周辺との間で段差が生じないようにするためには、設置場所に深さhのくぼみを設けなくてはならない。
【0004】
【特許文献1】特開2003−20196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、リフター50の設置場所に深さhのくぼみを設けることができない場合には、リフター50と設置場所周辺との間で段差が生じてしまうといった問題点があった。
【0006】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、昇降台の最低高さをできる限り低くしたリフターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るリフターは、基台と、昇降台と、前記昇降台を前記基台に対して平行を保ったまま昇降させる昇降装置とを備えたリフターであって、前記昇降装置は、一端が前記基台に回動可能に取付けられると共に他端に前記昇降台の下面を転動する上コロが取付けられた内アーム、及び一端が前記昇降台に回動可能に取付けられると共に他端に前記基台の上面を転動する下コロが取付けられた外アームが交差して回転可能に支持された2つの案内手段と、前記内アーム及び前記外アームに設けられたカムと、前記カムに接しながら転動するカムコロを備えたテンションバーと、前記テンションバーを移動させる移動機構とを備え、前記テンションバーは、前記カムコロが回転可能に取り付けられると共に前記内アームと前記外アームとの間を移動する2つのカムコロ取付部と、前記2つのカムコロ取付部を連結する連結部とを備え、前記カムコロが前記カムに接しながら転動することによって前記昇降台が下降したときに、前記連結部が前記内アームと重ならないように前記上コロに対して前記内アームとは反対側に位置するまで、前記テンションバーが移動する。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、テンションバーは、カムコロが回転可能に取り付けられると共に内アームと外アームとの間を移動する2つのカムコロ取付部と、2つのカムコロ取付部を連結する連結部とを備えることにより、カムコロがカムに接しながら転動することによって昇降台が下降したときに、連結部が内アームと重ならないように上コロに対して内アームとは反対側に位置するまで、テンションバーが移動するので、内アームがテンションバーの影響を受けずに回動するようになる。これにより、昇降台の最低高さをできる限り低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1には、この実施の形態に係るリフターを玄関の土間部分に設けたときの断面図を示している。図1(a)は、昇降台13の高さが最低の状態を表し、図1(b)は昇降台13の高さが最高の状態を表している。
図1(a)に示されるように、昇降台13の高さが最低の状態のとき、玄関ドア2の外側の戸外面3とリフター1の昇降台13とが面一となり、段差がない状態となっている。このような段差のない状態を実現するためには、玄関の土間部分5を、戸外面3よりも昇降台13の高さと同じ深さだけくぼませる必要がある。後述するリフター1の構造により、昇降台13の最低高さができる限り低くなるので、土間部分5のくぼみの深さができる限り小さくなる。
【0010】
図1(a)の状態では、昇降台13と戸外面3との間には段差がないものの、昇降台13とあがりかまち4との間には段差が存在する。しかし、図1(b)に示されるように、昇降台13の高さを最高の状態にすると、昇降台13とあがりかまち4とが面一となり、段差が解消される。
ここで、例えば、車椅子が戸外面3からあがりかまち4に移動する場合を考える。昇降台13が最低高さであれば(図1(a))、戸外面3と昇降台13との間に段差がないので、車椅子が戸外面3から玄関ドア2を通って昇降台13に移動する際に、車椅子は段差の影響を受けることなく移動することができる。車椅子が乗った状態で昇降台13が上昇して昇降台13の高さが最高になると(図1(b))、昇降台13とあがりかまち4との間に段差がないので、車椅子が昇降台13からあがりかまち4に移動する際に、車椅子は段差の影響を受けることなく移動することができる。したがって、車椅子は、戸外面3からあがりかまち4への移動が容易になる。
【0011】
次に、リフター1の構造について説明する。
図2及び3に示されるように、リフター1は、地面に設置される基台12と、基台12に対して平行な昇降台13と、昇降台13を基台12に対して平行を保ったまま昇降させる昇降装置10とを備えている。昇降装置10は、2つの案内手段14,14を備えている。案内手段14は、内アーム15及び外アーム16がそれぞれの中央部分で接しないように交差して1つのピン17によって互いに回動可能に支持されている。2つの内アーム15,15はそれぞれ、一端が基台12にピン18によって回動可能に取り付けられると共に、他端に昇降台13の下面を転動する上コロ19がピン20によって回転可能に取り付けられている。2つの外アーム16,16はそれぞれ、2つの内アーム15,15の外側に、一端が昇降台13にピン21によって回動可能に取り付けられると共に、他端に基台12の上面を転動する下コロ22がピン23によって回転可能に取り付けられている。内アーム15及び外アーム16のそれぞれには、互いが対向し合う面にカム24及び25が設けられている。カム24は下方に向かって凸状に湾曲した湾曲面24aを有し、カム25は上方に向かって凸状に湾曲した湾曲面25aを有している。ここで、カム24及び25はくさび形カムを構成する。
【0012】
また、昇降装置10は、テンションバー28と、テンションバー28を移動させるための移動機構である油圧シリンダー31とをさらに備えている。テンションバー28は、カム24及び25の湾曲面24a及び25a(図2参照)に接するように転動するカムコロ26及び27を備えている。また、油圧シリンダー31は円筒状のシリンダー29と、シリンダー29の内筒内に摺動可能に挿入されるロッド30とを備えている。2つの内アーム15,15それぞれの基台12側の端部付近同士を連結するように板状の内アーム連結部材32が設けられており、シリンダー29の端部が内アーム連結部材32に設けられた取付部32aにピン32bによって回動可能に取り付けられている。また、ロッド30の端部は、テンションバー28に接続されている。
【0013】
次に、テンションバー28について説明する。
図4に示されるように、テンションバー28は、カムコロ26及び27が回転可能に取り付けられた2つの板状のカムコロ取付部33,33と、2つのカムコロ取付部33,33同士を連結する板状の連結部34とを備え、全体としてコの字形状を有している。連結部34の中央部分には貫通穴35が設けられている。雄ねじ部が形成されたロッド30の端部が貫通穴35に挿入されて連結部34を貫通し、このロッド30の端部に座金37が挿入されてナット36が螺合することによって、ロッド30の端部が連結部34に接続されている。
【0014】
次に、この実施の形態に係るリフターの動作について説明する。
図2に示されるように、油圧シリンダー31の作動によりロッド30がシリンダー29の内筒内に入り込むように摺動すると、ロッド30がテンションバー28を引っ張ることにより、テンションバー28が内アーム15の下側に位置しながらピン17の方向に移動する。すると、カムコロ26及び27がそれぞれ湾曲面24a及び25aに接しながらピン17の方向に転動することにより、内アーム15及び外アーム16がピン17を中心に回動し、案内手段14がアルファベットの「X」字形状の状態になる。この状態を油圧シリンダー31が維持することにより、昇降台13が基台12に対して平行を保ったまま最高高さに維持される。このとき、リフター1の高さが最高となる。
【0015】
次に、ロッド30がシリンダー29の内筒内から突出すように摺動すると、ロッド30がテンションバー28を押すことにより、テンションバー28が内アーム15の下側に位置しながらピン17から離れる方向に移動する。すると、カムコロ26及び27がそれぞれ湾曲面24a及び25aに接しながらピン17から離れる方向に転動することにより、内アーム15及び外アーム16がピン17を中心に回動し、案内手段14がつぶれたアルファベットの「X」字形状の状態、すなわち、案内手段の高さが低くなると共に幅が広くなる。これにより、昇降台13は、基台12に対して平行を保ったまま下降する。
【0016】
昇降台13が下降すると、連結部34が内アーム15と重ならないように上コロ19を通り越して上コロ19に対して内アーム15とは反対側に位置するまで、テンションバー28は移動する(図3及び4)。さらにカムコロ取付部33は内アーム15と外アーム16との間を移動するので、内アーム15の回動には影響を与えない。従って、内アーム15はテンションバー28の影響を受けずに回動することができる。昇降台13が最低高さまで下降すると、内アーム15と外アーム16とは互いに水平の状態になる。この状態で、リフター1を側方から見ると、図5に示されるように、内アーム15と外アーム16とが重なり合った状態で、昇降装置10が基台12と昇降台13との間に収容される。これにより、リフター1の高さが、基台12及び昇降台13の厚みと、内アーム15または外アーム16の幅との合計になる。すなわち、昇降台13の最低高さができる限り低くなる。
【0017】
このように、テンションバー28は、カムコロ26及び27が回転可能に取り付けられると共に内アーム15と外アーム16との間を移動する2つのカムコロ取付部33,33と、2つのカムコロ取付部33,33を連結する連結部34とを備えることにより、カムコロ26及び27がカム24及び25に接しながら転動することによって昇降台13が下降したときに、連結部34が内アーム15と重ならないように上コロ19に対して内アーム15とは反対側に位置するまで、テンションバー28が移動するので、内アーム15がテンションバー28の影響を受けずに回動することができる。これにより、昇降台13の最低高さをできる限り低くすることができる。したがって、図1に示されるように、リフター1を玄関におけるあがりかまち4の段差解消を目的に使用する場合、リフター1を土間部分5に設置するために土間部分5に設けるくぼみの深さを、できる限り小さくすることができる。
【0018】
この実施の形態では、テンションバー28を移動する移動機構として油圧シリンダー31を用いたが、これに限定するものではない。駆動源により駆動される回転ナットとこの回転ナットと螺合するねじ軸とからなる移動機構、例えば、ボールねじを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態に係るリフターを玄関の土間部分に設けたときの断面図である。
【図2】この実施の形態に係るリフターの高さが最高の状態におけるリフターの側面図である。
【図3】この実施の形態に係るリフターの高さが最低の状態におけるリフターの昇降装置の平面図である。
【図4】図3におけるテンションバーおよびその周辺の拡大平面図である。
【図5】この実施の形態に係るリフターの高さが最低の状態におけるリフターの側面図である。
【図6】高さが最高の状態における従来のリフターの側面図である。
【図7】高さが最低の状態における従来のリフターの昇降装置の平面図である。
【図8】高さが最低の状態における従来のリフターの側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 リフター、10 昇降装置、12 基台、13 昇降台、14 案内手段、15 内アーム、16 外アーム、19 上コロ、22 下コロ、24,25 カム、26,27 カムコロ、28 テンションバー、 31 油圧シリンダー(移動機構)、33 カムコロ取付部、34 連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、昇降台と、前記昇降台を前記基台に対して平行を保ったまま昇降させる昇降装置とを備えたリフターであって、
前記昇降装置は、
一端が前記基台に回動可能に取付けられると共に他端に前記昇降台の下面を転動する上コロが取付けられた内アーム、及び一端が前記昇降台に回動可能に取付けられると共に他端に前記基台の上面を転動する下コロが取付けられた外アームが交差して回転可能に支持された2つの案内手段と、
前記内アーム及び前記外アームに設けられたカムと、
前記カムに接しながら転動するカムコロを備えたテンションバーと、
前記テンションバーを移動させる移動機構と
を備え、
前記テンションバーは、
前記カムコロが回転可能に取り付けられると共に前記内アームと前記外アームとの間を移動する2つのカムコロ取付部と、
前記2つのカムコロ取付部を連結する連結部と
を備え、
前記カムコロが前記カムに接しながら転動することによって前記昇降台が下降したときに、前記連結部が前記内アームと重ならないように前記上コロに対して前記内アームとは反対側に位置するまで、前記テンションバーが移動するリフター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−176623(P2007−176623A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374933(P2005−374933)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(593045488)日本機器鋼業株式会社 (12)
【出願人】(593045499)有限会社日機エンジニヤリング (1)