説明

リフティングマグネット式の搬送装置

【課題】クレーンまで移動して容易に着脱でき、使用中の停電にも対応可能なリフティングマグネット式の搬送装置を提供する。
【解決手段】クレーン11のフック13、14に掛止可能な対となる掛止手段15、16を左右上部に有する吊り具本体と、吊り具本体の左右にそれぞれモータ駆動による横移動台車18、19を介して吊り下げられたリフティングマグネット20〜23と、吊り具本体に搭載された発電機24及び電池25を備えた電源部26と、吊り具本体に搭載されて電源部からの電力を受けてリフティングマグネット20〜23に電力を供給する電源制御部27と、陸上を走行可能なトレーラ28に搭載されて吊り具本体をリフティングマグネット20〜23ごと載せる搬送架台29とを有し、吊り具本体に設けられている機器の電力供給は、電源部から行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役用のクレーン(例えば岸壁クレーン)に容易に着脱可能で、電源部を備えたリフティングマグネット式の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所や鋼材倉庫等における鉄鋼製品の玉掛作業においては、人手による玉掛作業を必要としないリフティングマグネットを装着した吊具(以下、単にリフティングマグネット吊具という)を採用することで、安全性向上と作業の効率化を図ることができる(例えば、特許文献1参照)。特に、岸壁における船舶への船積み作業、船舶からの陸揚げ作業では、狭い限られた船内で作業者が玉掛け作業を行う必要があり、挟まれ事故や墜落事故等の危険を伴うことになっており、人手を介在しないリフティングマグネット吊具を岸壁クレーンに取付けて荷役作業を行うことが望ましい。また、リフティングマグネット吊具を採用すると玉掛けが容易で、鉄鋼製品に疵を付ける虞れも少なく、しかも船積み時に鉄鋼製品(積荷)間に玉掛アームやワイヤ等を入れるための間隔を確保する必要もないため、積載効率も向上する。
【0003】
ここで、リフティングマグネット吊具を岸壁クレーンに取付けて荷役を行う場合、岸壁クレーン本体側のクレーン機械室にリフティングマグネット吊具用の動作電源部と制御部を設置している。このため、リフティングマグネットへの給電は、一旦クレーン機械室からリフティングマグネット吊具を吊り下げている横行トロリまでトロリケーブルで給電され、更に横行トロリから下の方に給電ケーブルを垂らして行なわれている。そして、給電ケーブルは、断線等のケーブル破損を防ぐため、リフティングマグネット吊具の巻揚げ、巻降ろし動作に追従して給電ケーブルの巻取り、巻出しができるように、給電ケーブルの巻取り装置を使用している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−24871号公報
【特許文献2】実公平6−8149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の岸壁クレーンがある岸壁で荷役作業を行う際に、荷役作業にどの岸壁クレーンを使うかは船の着岸位置等様々な理由で、着岸直前に決定される場合が多い。このため、使用する岸壁クレーンが決定された際に、リフティングマグネット吊具を素早く岸壁クレーンに取付けることができるように、岸壁クレーン毎にリフティングマグネット吊具用の動作電源部と制御部を設置している。このため、設備コストが上昇するという問題がある。
また、荷役が終了したら次の作業に備えて速やかにリフティングマグネット吊具を岸壁クレーンから取外し、次に使用する岸壁クレーンに取付けねばならず、リフティングマグネット吊具は簡単に岸壁クレーンに取付け、取外しができることが望ましい。しかし、岸壁クレーンに対するリフティングマグネット吊具の着脱は、リフティングマグネット吊具の本体と岸壁クレーンとの着脱に加えて、岸壁クレーンに設けた動作電源部及び制御部とリフティングマグネット吊具との間を接続する各種ケーブルの着脱も併せて行う必要があり、時間も要するという問題がある。
更に、リフティングマグネットへの給電は、横行トロリや巻取り装置を介して給電ケーブルを用いて行なわれているので、給電ケーブルの不用意な又は不測の引き抜けや断線に備えて二回線給電方式等の非常に多くの停電対策を行うと共に、運転操作に十分注意を払う必要があるという問題が生じる。
そして、吊荷(鉄鋼製品)の吸着中に発生する急な停電に備え、バックアップ電源の装備や停電中に安全な位置に素早く吊荷を移動し着地させる設備が必要で、設備コストが更に上昇するという問題がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、クレーンまで移動して容易に取付け、取外しができ、使用中の断線の虞れがなく停電にも対応可能なリフティングマグネット式の搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係るリフティングマグネット式の搬送装置は、クレーンのフックに掛止可能な対となる掛止手段を左右上部に有する吊り具本体と、
前記吊り具本体の左右にそれぞれモータ駆動による横移動台車を介して吊り下げられたリフティングマグネットと、
前記吊り具本体に搭載された発電機及び電池を備えた電源部と、
前記吊り具本体に搭載されて前記電源部からの電力を受けて前記リフティングマグネットに電力を供給する電源制御部と、
陸上を走行可能なトレーラに搭載されて前記吊り具本体を前記リフティングマグネットごと載せる搬送架台とを有し、
前記吊り具本体に設けられている機器の電力供給は、前記電源部から行われる。
【0008】
本発明に係るリフティングマグネット式の搬送装置において、前記吊り具本体の左右にはそれぞれ2台の前記リフティングマグネットが設けられ、しかも該2台のリフティングマグネットはそれぞれ左右に2台あって、該2台のリフティングマグネットは前記横移動台車に前後方向及び左右方向にそれぞれその位置をモータ駆動によって調整可能に設けられていることが好ましい。
【0009】
本発明に係るリフティングマグネット式の搬送装置において、前記クレーンは岸壁クレーンであって、前記リフティングマグネットで吸着する対象物は船舶から荷揚げ、あるいは船舶に積込みを行う鉄鋼製品とすることができる。
【0010】
本発明に係るリフティングマグネット式の搬送装置において、前記吊り具本体に設けられている機器の操作は無線によるリモコンで行われることが好ましい。
【0011】
本発明に係るリフティングマグネット式の搬送装置において、前記トレーラに搭載されている前記搬送架台は、前記吊り具本体を中央にしてその両側に点検台を有し、しかも、該各点検台には地上に連続する階段が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るリフティングマグネット式の搬送装置においては、吊り具本体の左右にそれぞれ横移動台車を介してリフティングマグネットが吊り下げられているので、吊荷の長さに応じてリフティングマグネットを最適位置に配置することができ、吊荷を安定して吊り揚げることができる。
吊り具本体に電源部と電源制御部が搭載され、吊り具本体に設けられている機器の電力供給が電源部から行われるので、従来必要であったクレーン機械室から横行トロリまでの給電を行うトロリケーブル、横行トロリと吊り具本体を接続する給電ケーブル及び信号ケーブル、それらの巻取り機(巻取り装置)が不要になって、給電ケーブルの断線や接続外れ、信号ケーブルの断線や接続外れにそれぞれ起因するトラブルの発生を防止できる。そして、クレーン毎に電源部と電源制御部を設けるクレーンの改造が不要になるため、従来のようにクレーンの改造に伴う官庁への変更届が不要になると共に、設備コストの大幅な削減が可能になる。また、クレーンの横行トロリと吊り具本体を給電ケーブル及び信号ケーブルで接続しないので、クレーンへの吊り具本体の着脱が容易になる。
【0013】
吊り具本体が電源部を備えているので、クレーン用の電源が停電してもリフティングマグネットの吸引力を保持できるためクレーン停電時の処置に余裕ができ、電源回復まで吊荷の吸着状態を維持するか、又は予めクレーンに備わっている非常電源により吊荷を安全な場所に退避させる、あるいは降ろすことができる等、対処がし易くなる。また、電源部が電池を備えており、発電機が停止する等の異常時にはリフティングマグネットのマグネット電源が自動的に電池に切り替わるのでリフティングマグネットの吸引力を所定時間維持することができる。この場合は、クレーン本体には異常がないので、その所定時間内に吊荷を安全な場所に降ろすことが可能になる。
【0014】
吊り具本体をリフティングマグネットごと載せる搬送架台が陸上を走行可能なトレーラに搭載されているので、荷役作業に使用するクレーンの場所までリフティングマグネットと共に吊り具本体を素早く移動させることができ、クレーンへの吊り具本体の着脱を容易に行うことができる。
【0015】
本発明に係るリフティングマグネット式の搬送装置において、吊り具本体の左右にはそれぞれ2台のリフティングマグネットが設けられ、吊荷の長さに応じて横移動台車により吊り位置がモータ駆動によって設定される。しかも、片側2台のリフティングマグネットはそれぞれ左右に2台あって、吊荷の幅に適合させるため2台のリフティングマグネットは横移動台車に前後方向及び左右方向にそれぞれその位置をモータ駆動によって調整可能に設けられているので、吊荷の前後方向の幅及び左右方向の長さに応じてリフティングマグネットの位置を調整することができ、吊荷を安定して吊り揚げることができる。
【0016】
本発明に係るリフティングマグネット式の搬送装置において、クレーンが岸壁クレーンであって、リフティングマグネットで吊り上げる対象物が船舶に搭載された鉄鋼製品である場合、玉掛け作業に人手が介在しないので、狭い限られた船内での荷役作業を安全に行うことができる。また、玉掛けが容易で鉄鋼製品に疵を付ける虞れが少なくなる。更に、船積み時に鉄鋼製品(積荷)の間に玉掛アームやワイヤ等を入れるための間隔を確保する必要がないため、積載効率を向上することができる。
【0017】
本発明に係るリフティングマグネット式の搬送装置において、吊り具本体に設けられている機器の操作が無線によるリモコンで行われる場合、通常はクレーン運転席から行う玉掛け操作と、吊荷の大きさに応じたリフティングマグネットの位置や吸着具合など詳細確認を地上から行うことができる。
【0018】
本発明に係るリフティングマグネット式の搬送装置において、トレーラに搭載されている搬送架台が、吊り具本体を中央にしてその両側に点検台を有し、しかも、点検台には地上に連続する階段が設けられている場合、クレーンのフックと吊り具本体の掛止手段との玉掛け及び玉外し、吊り具本体の点検、電源部の整備(例えば、発電機のエンジンへの給油)、電源部の操作(例えば、メインスイッチの入り切り)を点検台から安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係るリフティングマグネット式の搬送装置の説明図である。
【図2】岸壁クレーンに取付けた吊り具本体の正面図である。
【図3】岸壁クレーンに取付けた吊り具本体の側面図である。
【図4】(A)は吊り具本体の平面図、(B)は吊り具本体の側面図である。
【図5】掛止手段の説明図である。
【図6】(A)は搬送架台の平面図、(B)は搬送架台の側面図、(C)は搬送架台の背面図である。
【図7】複数の岸壁クレーンが設置された岸壁の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1〜図3に示すように、本発明の一実施の形態に係るリフティングマグネット式の搬送装置10(以下、単に「搬送装置10」ともいう)は、クレーンの一例である岸壁クレーン11に取付けられて、船舶12で輸送する鉄鋼製品を吊り上げる対象物としている。そして、搬送装置10は岸壁クレーン11のフック13、14に掛止可能な対となる掛止手段15、16を左右上部に有し、長尺の梁材から形成された吊り具本体17と、吊り具本体17の左右にそれぞれモータ駆動による横移動台車18、19を介して吊り下げられたリフティングマグネット20、21、22、23とを有している。
【0021】
また、搬送装置10は、吊り具本体17にそれぞれ搭載された発電機24及び電池25を備えた電源部26と、吊り具本体17に搭載されて電源部26からの電力を受けてリフティングマグネット20〜23に電力を供給する電源制御部27と、陸上を走行可能なトレーラ28に搭載されて吊り具本体17をリフティングマグネット20〜23ごと載せる搬送架台29とを有している。なお、符号30はトレーラ28を牽引するトラクタである。以下、詳細に説明する。
【0022】
図2、図3、図7に示すように、岸壁クレーン11は、岸壁31を正面視して(海側から見て)岸壁31に沿って左右方向に敷設されたレール32、33上を走行する車輪34を備えた走行部35を下部左右の前後にそれぞれ備えた脚構造体36と、脚構造体36の上部中央に長手方向を前後方向に向けて取付けられたブーム37と、ブーム37に前後方向に沿って移動可能に取付けられた横行トロリ38とを有している。そして、横行トロリ38にはトロリーシーブ39、40が取付けられ、クレーン機械室40a等に設置された昇降装置(ウインチ等の巻取り機)から繋がるワイヤ41、42がトロリーシーブ39、40を介して下方向に下げられ、その先端部にフック13、14が取付けられている。
【0023】
図4(A)、(B)に示すように、吊り具本体17の左上部に設けられた掛止手段15(右上部に設けられた掛止手段16も同様)は、岸壁クレーン11に掛止した状態の吊り具本体17の左上部に前後方向に隙間を設けて対向して取付けられた支持フレーム43、44と、支持フレーム43、44間に前後方向から挿入可能でかつ挿入完了後は両側が支持フレーム43、44で支持されてフック13の掛止が可能になる吊りピン45と、支持フレーム43、44の下側の左右方向両側に配置されて支持フレーム43、44と吊り具本体17との取付け状態を補強する補強部材46、47とを有している。
【0024】
図5に示すように(特開2002−265182号公報参照)、支持フレーム43、44のうち、一方の支持フレーム44には、両端が開放された円筒状の吊りピンガイド48が設けられている。そして、吊りピンガイド48には、吊りピン45の挿入口側に、吊りピンガイド48を貫通可能な割りピン49の挿入が可能な挿入孔が形成されている。更に、吊りピンガイド48には、吊りピンガイド48の挿入口から支持フレーム44に向けて水平に設けられた水平ガイド孔50と、水平ガイド孔50の先部と連接し水平ガイド孔50に対して下向きに直交して設けられた直角ガイド孔51を有するL字形状のガイド孔52が形成されている。また、他方の支持フレーム43には、吊りピンガイド48に先側から挿通された吊りピン45の先端部を突出させて支持する支持リング53が設けられ、支持リング53には、吊りピン45の先側に形成された挿通孔と連通して、支持リング53を貫通可能なロックピン54を挿入する挿入孔が形成されている。
なお、符号56は、吊りピン45に掛止するフック13の位置決め用の窪みである。
【0025】
以上の構成とすることにより、吊りピン45の基部に半径方向外側に向けて突出して設けられた操作棒55が水平ガイド孔50内に進入可能なように位置決めして吊りピン45を吊りピンガイド48に挿通し、吊りピンガイド48に割りピン49を挿入して割りピン49の先を開くことにより割りピン49の抜けを防止して、挿入された吊りピン45が吊りピンガイド48から抜け出ることを防止できる。次いで、岸壁クレーン11のフック13を降ろして支持フレーム43、44の間に入れて位置決めし、操作棒55を水平ガイド孔50に沿って直角ガイド孔51との接続位置まで移動させることにより、吊りピン45の先側を支持リング53内に進入させ、吊りピン45の先端部を支持リング53から突出させることができる。そして、吊りピン45を回転させて操作棒55を直角ガイド孔51内に移動させると、操作棒55の前後方向の移動が直角ガイド孔51の対向する側壁によって規制され、吊りピン45の移動が防止される。更に、支持リング53の挿入孔にロックピン54を挿入することで、吊りピン45を固定することができる。
【0026】
図4に示すように、横移動台車18(横移動台車19も同様)は、吊り具本体17に横移動可能に設けられた台車本体57と、台車本体57の下方に長手方向(軸方向)を左右方向に向けて保持された台車側ビーム58とを有している。更に、横移動台車18は、台車側ビーム58の下部の左右両側に長手方向を前後方向に向けて(長手方向を台車側ビーム58に直交させて)配置され、モータ駆動による移動機構(図示せず)によって前後方向に移動可能に設けられた対となるマグネット側ビーム59、60と、対となるマグネット側ビーム59、60にそれぞれ設けられたイコライザ61、62とを有している。そして、横移動台車18のマグネット側ビーム59、60に設けられたイコライザ61、62にそれぞれ取付けられたチェーン83を介してリフティングマグネット20、21が吊り下げられ、横移動台車19のマグネット側ビーム59、60に設けられたイコライザ61、62にそれぞれ取付けられたチェーン84を介してリフティングマグネット22、23が吊り下げられている。
リフティングマグネット20、21、22、23を吊り下げるチェーン83、84は、通常500mm程度だが、搬送装置10では長く設定する(約4m)。これにより、上部のクレーン運転室からリフティングマグネット20、21、22、23が吊り具本体17に隠れて確認できなくなることを防ぐことができる。また、荷役時にリフティングマグネット20、21、22、23を船底の鋼材(鉄鋼製品の一例)に吸着する場合でも、吊り具本体17は船倉口より高い位置にあり、船倉に当たりづらくなるので、吊り具本体17の損傷を防ぐことができる。
【0027】
このような構成とすることにより、吊り具本体17の左右にそれぞれ片側2台のリフティングマグネット20〜23を設けることができる。そして、左側の2台のリフティングマグネット20、21は、横移動台車18に前後方向にその位置をモータ駆動によって調整可能になって、右側の2台のリフティングマグネット22、23は、横移動台車19に前後方向にその位置をモータ駆動によって調整可能になっている。
なお、左右のそれぞれ2台のリフティングマグネットを横移動台車に前後方向及び左右方向にそれぞれその位置をモータ駆動によって調整可能に設けることもできる。
【0028】
図4に示すように、電源部26は、例えばディーゼルエンジンを備えた交流の発電機24と、発電機24で発生した交流を直流に変換してリフティングマグネット20〜23に供給する整流器(図示せず)と、発電機24が停止した際にリフティングマグネット20〜23の吸引力を所定時間維持するための電池25と、発電機24で発生した交流を用いて電池25を充電する充電器(図示せず)とを有している。なお、符号63は、整流器、リフティングマグネット20〜23に電力を供給する給電ケーブル(図示せず)の接続端子盤及び充電器を収納する電源箱である。
【0029】
図4に示すように、電源制御部27は、無線によるリモコン(図示せず)からの運転指令信号を受信する受信機と、受信機から出力される運転指令信号に基づいて吊り具本体17に設けられている機器(発電機24、横移動台車18、19、リフティングマグネット20〜23、マグネット側ビーム59、60)の運転をそれぞれ制御する制御信号を出力する制御機(図示せず)とを有している。更に、電源制御部27は、吊り具本体17に設けられている機器の異常を検知する検知機(図示せず)と、異常状態を表示する警告灯群64及びサイレン65と、発電機24が停止した際に電池25から電力をリフティングマグネット20〜23に供給する給電切換え機(図示せず)と、設けられている機器(発電機24、横移動台車18、19、リフティングマグネット20〜23)の動作停止時にリフティングマグネット20〜23に通電している電流を徐々に放電させる放電抵抗器66とを有している。ここで、放電抵抗器66は吊り具本体17の上部の右端側に載置され、受信機、制御機、検知機、及び給電切換え機は、放電抵抗器66と並べて吊り具本体17の上部の右側に載置された制御箱67内に収容されている。そして、警告灯群64及びサイレン65は制御箱67の上部に載置されている。
【0030】
図6(A)、(B)、(C)に示すように、搬送架台29は、トレーラ28の荷台68の幅方向(左右方向)両側に、トレーラ28の進行方向に沿って対向して載置された点検台69、70を有し、点検台69、70の後端部には、地上(岸壁31上面)に連続する階段71、72が設けられている。ここで、点検台69は、荷台68上の右側に取付けられた支持フレーム73と、支持フレーム73に支持された作業デッキ74と、作業デッキ74の前端部及び右側端部に一体で立設された安全柵75とを有している。また、点検台70は、荷台68上の左側に取付けられた支持フレーム73aと、支持フレーム73aに支持された作業デッキ74aと、作業デッキ74aの前端部及び左側端部に一体で立設された安全柵75aとを有している。
【0031】
更に、搬送架台29は、荷台68の進行方向の両側(前側及び後側)にそれぞれ立設され、荷台68の幅方向両側から点検台69、70で挟持された平面視して矩形状の吊り具支持台77、78を有している。そして、上方から吊り具本体17を下降させた際に、吊り具本体17が吊り具支持台77、78に載置されるように、吊り具支持台77、78の点検台70側の対向する角部と、吊り具支持台77、78の点検台69側の対向する角部には、下降する吊り具本体17を吊り具支持台77、78まで案内する案内ガイド79、80がそれぞれ立設されている。なお、案内ガイド79、80のうち、一方の案内ガイド79の長さは他方の案内ガイド80の長さより長くなっている。これによって、吊り具本体17が最初に案内ガイド79に当接するため、吊り具支持台77、78に対する位置決めが容易になる。
【0032】
階段72(階段71も同様)は、作業デッキ74の後端部に一端側が接続され、他端側が地上に当接する階段本体81と、階段本体81の外側(荷台68の幅方向外側)端部に立設された手摺り82とを有している。
なお、以上の搬送架台29の説明において、荷台68の幅方向両側の向きは、搬送架台29に載せた吊り具本体17の前後方向と対応し(同じ方向であり)、搬送架台29の進行方向両側の向きは、吊り具本体17の左右方向に対応している。
【0033】
続いて、本発明の一実施の形態に係るリフティングマグネット式の搬送装置10の作用について説明する。
本発明に係るリフティングマグネット式の搬送装置10は、吊り具本体17の左右にそれぞれ横移動台車18、19を介してリフティングマグネット20〜23が吊り下げられ、左側の2台のリフティングマグネット20、21は、横移動台車18に対してマグネット側ビーム59、60を介して前後方向にその位置が調整可能になって、右側の2台のリフティングマグネット22、23は、横移動台車19に対してマグネット側ビーム59、60を介して前後方向にその位置が調整可能になっているので、吊荷である鉄鋼製品の大きさに応じてリフティングマグネット20〜23を鉄鋼製品に対して最適位置に配置することができ、鉄鋼製品を安定して吊り揚げることができる。
【0034】
そして、リフティングマグネット20〜23を使用して鉄鋼製品を船舶12に積載(積込み)する場合、また、船舶12から荷揚げを行う場合、玉掛け作業が人手を介在しないで実行できるので、狭い限られた船内での荷役作業を安全かつ容易に行うことができる。また、玉掛け時に鉄鋼製品に疵を付ける虞れも少なくなる。更に、船舶12に鉄鋼製品を積載する際、鉄鋼製品の間に玉掛アームやワイヤ等を入れるための間隔を確保する必要がないため、作業効率が向上すると共に、鉄鋼製品の積載率も向上させることができる。更に、吊り具本体17に設けられている機器の操作が無線によるリモコンで行われるので、詳細確認を行いながら玉掛け作業を行うことができる。
【0035】
搬送装置10の吊り具本体17に、電源部26と電源制御部27が搭載され、吊り具本体17に設けられている機器の電力供給が電源部26から行われるので、従来必要であった岸壁クレーンの本体と吊り具本体を接続する給電ケーブル及び信号ケーブルが不要になって、給電ケーブルの断線や接続外れ、信号ケーブルの断線や接続外れにそれぞれ起因するトラブルの発生を防止できる。更に、岸壁クレーン11の本体と吊り具本体17を給電ケーブル及び信号ケーブルで接続しないので、岸壁クレーン11への吊り具本体17の着脱が容易になる。そして、岸壁クレーン毎に電源部と電源制御部を設けるクレーンの改造が不要になるため、クレーンの改造に伴う官庁への変更届が不要になると共に、設備コストの大幅な削減が可能になる。
【0036】
吊り具本体17が電源部26を備えているので、岸壁クレーン11用の電源が停電してもリフティングマグネット20〜23の吸引力を保持できるため、岸壁クレーン11停電時の処置に余裕ができ、電源回復まで吊荷の吸着状態を維持するか、又は予め岸壁クレーン11に備わっている非常用電源により吊荷を安全な場所に退避させる、あるいは降ろすことができる等、対処がし易くなる。また、電源部26が電池25を備えており、発電機24が停止する等の異常時にはリフティングマグネット20〜23の電源が自動的に電池に切り替わるので、リフティングマグネット20〜23の吸引力を所定時間維持することができ
る。この場合、岸壁クレーン11には異常がないので、その所定時間内に吊荷を安全な場所に降ろすことが可能になる。
【0037】
搬送装置10は、吊り具本体17をリフティングマグネット20〜23ごと載せることが可能な搬送架台29が岸壁31を走行可能なトレーラ28に搭載されているので、荷役作業に使用する岸壁クレーン11の場所までリフティングマグネット20〜23と共に吊り具本体17を素早く移動させることができ、岸壁クレーン11への吊り具本体17の取付けを素早く行うことができる。また、荷役作業が終了した後、次に使用する岸壁クレーンの場所まで、リフティングマグネット20〜23と共に吊り具本体17を素早く移動させることができる。
【0038】
また、トレーラ28に搭載されている搬送架台29が、吊り具本体17を中央にしてその両側に点検台69、70を有し、しかも、点検台69、70には岸壁31の上面(地上)に連続する階段71、72が設けられているので、岸壁クレーン11のフック13、14と吊り具本体17の掛止手段15、16との玉掛け及び玉外し、吊り具本体17の点検、電源部26の整備、電源部26の操作を点検台69、70から安全に行うことができる。
【0039】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
10:リフティングマグネット式の搬送装置、11:岸壁クレーン、12:船舶、13、14:フック、15、16:掛止手段、17:吊り具本体、18、19:横移動台車、20、21、22、23:リフティングマグネット、24:発電機、25:電池、26:電源部、27:電源制御部、28:トレーラ、29:搬送架台、30:トラクタ、31:岸壁、32、33:レール、34:車輪、35:走行部、36:脚構造体、37:ブーム、38:横行トロリ、39、40:トロリーシーブ、40a:クレーン機械室、41、42:ワイヤ、43、44:支持フレーム、45:吊りピン、46、47:補強部材、48:吊りピンガイド、49:割りピン、50:水平ガイド孔、51:直角ガイド孔、52:ガイド孔、53:支持リング、54:ロックピン、55:操作棒、56:窪み、57:台車本体、58:台車側ビーム、59、60:マグネット側ビーム、61、62:イコライザ、63:電源箱、64:警告灯群、65:サイレン、66:放電抵抗器、67:制御箱、68:荷台、69、70:点検台、71、72:階段、73、73a:支持フレーム、74、74a:作業デッキ、75、75a:安全柵、77、78:吊り具支持台、79、80:案内ガイド、81:階段本体、82:手摺り、83、84:チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンのフックに掛止可能な対となる掛止手段を左右上部に有する吊り具本体と、
前記吊り具本体の左右にそれぞれモータ駆動による横移動台車を介して吊り下げられたリフティングマグネットと、
前記吊り具本体に搭載された発電機及び電池を備えた電源部と、
前記吊り具本体に搭載されて前記電源部からの電力を受けて前記リフティングマグネットに電力を供給する電源制御部と、
陸上を走行可能なトレーラに搭載されて前記吊り具本体を前記リフティングマグネットごと載せる搬送架台とを有し、
前記吊り具本体に設けられている機器の電力供給は、前記電源部から行われることを特徴とするリフティングマグネット式の搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載のリフティングマグネット式の搬送装置において、前記吊り具本体の左右にはそれぞれ2台の前記リフティングマグネットが設けられ、しかも該2台のリフティングマグネットはそれぞれ左右に2台あって、該2台のリフティングマグネットは前記横移動台車に前後方向及び左右方向にそれぞれその位置をモータ駆動によって調整可能に設けられていることを特徴とするリフティングマグネット式の搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のリフティングマグネット式の搬送装置において、前記クレーンは岸壁クレーンであって、前記リフティングマグネットで吸着する対象物は船舶から荷揚げ、あるいは船舶に積込みを行う鉄鋼製品であることを特徴とするリフティングマグネット式の搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリフティングマグネット式の搬送装置において、前記吊り具本体に設けられている機器の操作は無線によるリモコンで行われることを特徴とするリフティングマグネット式の搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のリフティングマグネット式の搬送装置において、前記トレーラに搭載されている前記搬送架台は、前記吊り具本体を中央にしてその両側に点検台を有し、しかも、該各点検台には地上に連続する階段が設けられていることを特徴とするリフティングマグネット式の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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