説明

リフトを兼備した自動車修正機

【考案の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本考案は、事故車を修正するに際し、該事故車を載せる架台を持ち上げたり、床上に固定した事故車の裏面を修正するのに使用するリフトを兼備した自動車修正機に関するものである。
〔従来の技術〕
従来、事故車を元の状態に修正するには事故車の前後方向又は側方向に車体の一部を水平に引き出すことにより行っているほか、車体の裏面を下方に引く事をも行っている。この下方に引くことを下引きと称している。例えば、床上に固定装置で事故車を固定しておき、かつ床面にレールを固定し、該レール内に引張用チエンを通す挿通口を設けた摺動子を嵌入し、該摺動子を摺動して下引きする箇所の真下に位置させ引張用チエンの先端に取着したクランプを適宜個所に噛合して挿通口から引張用チエンの他端を水平に引き出し、該引張用チエンを引くことにより修正を行っていた。
一方、特願平1−30397号(特開平2−212245号)に見られる如く作業の能率化を図るため事故車を該事故車より一回り大きい架台上に載せ、しかも該架台上でリフトにより持ち上げつつ事故車を固定し引張作業を行う場合も有る。この場合、架台には周囲に伸縮自在の脚を設け、脚を伸ばして事故車を載せるようにして作業性の面から床より若干高い位置に保持しているが、架台上に事故車を楽に導入するため例えば前端部をガレージジャッキ等で持ち上げて後端部位置を下げ床面に近づけるようにしている。
〔考案が解決すべき問題点〕
しかるに、前者の場合、すなわち下引き作業を行う時は、レールが床面に固定されるため必然的に引き出す個所がレール上方のみに限られ、必要とあらば再度レールを外して移動するしかなく、この作業は面倒であるばかりか、事故車を移動して再度固定するなど二重三重の手間が掛かり作業の能率化に大きな支障をきたすものであった。
また、後者の場合、架台の前端部は床面と架台間の隙間にガレージジヤツキの一端が入れられるものの、後端部から事故車を導入した後、脚を伸ばそうとするも該後端部は架台が傾斜することからその隙間が少なくなりガレージジヤツキの一端が入らないため別途

型のスペーサを用意し、該スペーサをその隙間に差し込むことにより架台の後端部を持ち上げていたので余分な部品を使用せねばならず、手間を要し作業性に問題を残すものであった。
そこで本考案はこれら問題点を一掃し、多目的に使用できしかも作業性の向上を図らんとするリフトを兼備した自動車修正機を提供することを目的とするものである。
〔問題点を解決するための手段〕
かかる目的を達成するため、本考案のリフトを兼備した自動車修正機は車輪を取付けた水平な基板の上面に、所定の間隔を隔てて一対の支柱を立設し、両支柱に筒体を上下摺動自在に嵌着すると共に該各筒体間の上部に各筒体を一体に連結する連結片を固着してなる可動体を取設し、該可動体の前面に下端を屈曲して前方へ水平に延出する水平板部を設けた持上板を一体に固着し、前記連結片の後端縁にチエン掛止用の切欠溝を設け、前記一対をなす支柱の後方で基板の上面にチエンを係止する滑車を並置した構成よりなる。
〔作用〕
下引き作業を行う場合は、自動車修正機の2個の滑車を事故車に対向させて事故車の裏面に挿入し、引張チエン先端のクランプを必要な個所に噛合させ、該引張チエンを滑車に係止させつつ他端を連結片の切欠溝に係留する。そして、一対の支柱間に別途用意した油圧シリンダーを配置し、該シリンダーを作動させてそのピストンロツド先端により連結片を押し上げて引張チエンを引き凹み引き出す。
また、架台を持ち上げるには、架台の前端部と床面間の隙間に自動車修正機の持上板を対向させてその水平板部を隙間に挿入する。そして、前記と同様に一対の支柱間に油圧シリンダーを配置し、該油圧シリンダーを作動させてそのピストンロツドの先端により連結片を押し上げて可動体を上動することにより水平板部で架台の前端部を持ち上げる。この状態で事故車を後端部から導入し、導入し終ったら今度は架台の後端部に自動車修正機を移動させ、床面間に水平板部を挿入して前記と同様の作業により後端部を持ち上げて架台を水平に保持する。
〔実施例〕
以下に本考案のリフトを兼備した自動車修正機の一実施例を図面と共に説明する。図において1は長方形をなす水平な基板であり、前後位置で左右両側に夫々車輪2を取付けて移動自在としており、基板1の上面略中央には所定の間隔を隔てて一対をなす支柱3,3を立設する。
4はこれらの支柱3,3に上下摺動自在に挿着した筒体5,5を連結片6でもって上部で一体に連結してなる可動体であり、該可動体4の前面にはその下端を前方へ水平に延出させた水平板部7を設けてなる持上板8を一体に固着している。
9は支柱3,3の中間で基板1上面に着脱自在に配設した油圧シリンダーであって、該油圧シリンダー9の上端に臨ませたピストンロツド10の先端を上方に突出させることにより前記連結片6を下から押動し、可動体4と共に持上板8を上昇させる。前記連結片6には後端縁にチエン掛止用の切欠溝11を設けている。
12,13は支柱3,3の後方で基板1の上面に前後に2個並設した引張チエン14を掛止させる滑車であり、このように滑車12,13に掛止させた引張チエン14には先端にクランプ15,また、基端部は連結片6の切欠溝12に係止させている。
次に、このように構成された本考案のリフトを兼備した自動車修正機の使用について説明する。
まず、下引き作業を行う場合は、第4図に示すように自動車修正機の2個の滑車12,13を事故車A側に対向させて事故車Aの裏面に挿入し、引張チエン14先端のクランプ15を必要な個所に噛合させ、該引張チエン14を滑車12,13に係止させつつ他端を連結片6の切欠溝11に係留する。そして、一対の支柱3,3間に油圧シリンダー9を配置し、該シリンダー9を作動させてそのピストンロツド10先端により連結片6を押し上げて引張チエン14を引き凹みを引き出す。
また、架台Bを持ち上げるには、第5図に示すように架台Bの前端部と床面間の隙間に自動車修正機の持上板8を対向させて、水平板部7をその隙間に挿入する。そして、前記と同様に一対の支柱3,3間に油圧シリンダー9を配置し、該油圧シリンダー9を作動させてそのピストンロツド10の先端により連結片6を押し上げて可動体4を上動することにより水平板部7で架台Bの前端部を持ち上げ、同時に脚Fを伸ばす。この状態で事故車を後端部から導入し、導入し終ったら架台Bの後端部に自動車修正機を移動させ、床面間に水平板部7を挿入して前記と同様の作業により後端部を持ち上げ脚Fを伸ばして架台Bを水平に保持する。
このように本考案のリフトを兼備した自動車修正機は一台で多目的に使用できしかも車輪を取着して移動自在としたから使い勝手が良い。
尚、下引きする場合、修正機の滑車側の基板の寸法長さが短くて都合が悪ければ、必要に応じ長く伸ばせば適応範囲が広くなる。
〔考案の効果〕
以上に述べたように本考案のリフトを兼備した自動車修正機は上記構成よりなるものであるから、下引きをする場合、従来の如く床面上にレールを固定する必要はなく手間が省け、しかも車輪を取着して移動自在としたから適用範囲が広くなる。また、事故車を載せる架台を持ち上げるに一台で済み、水平板部が低い位置まで下がるので架台と床面の狭い隙間にも容易に挿入し得て支障をきたすことなく作業でき、作業性の能率向上に大きく寄与する。
更には油圧シリンダーが着脱自在に装着し得る構成なので、使用しない場合は該油圧シリンダーを外してそのまま押動するのみで簡単に移動することができ倉庫に収納し易く、また外した油圧シリンダーは別の用途に使用でき使い勝手が良い等有益な効果を多く有するものである。
【図面の簡単な説明】
図は本考案のリフトを兼備した自動車修正機の一実施例に係わるもので、第1図は該自動車修正機の側面図、第2図は同裏面図、第3図は同平面図、第4図は下引きする場合の使用状態図、第5図は架台を押上する場合の使用状態図である。
1…基板,2…車輪,3,3…支柱、4…可動体、5,5…筒体、6…連結片、7…水平板部、8…持上板、11…切欠溝、12,13…滑車。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】車輪を取付けた水平な基板の上面に、所定の間隔を隔てて一対の支柱を立設し、両支柱に筒体を上下摺動自在に嵌着すると共に該各筒体間の上部に各筒体を一体に連結する連結片を固着してなる可動体を取設し、該可動体の前面に下端を屈曲して前方へ水平に延出する水平板部を設けた持上板を一体に固着し、前記連結片の後端縁にチエン掛止用の切欠溝を設け、前記一対をなす支柱の後方で基板の上面にチエンを係止する滑車を並置したことを特徴とするリフトを兼備した自動車修正機。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【公告番号】実公平6−21801
【公告日】平成6年(1994)6月8日
【考案の名称】リフトを兼備した自動車修正機
【国際特許分類】
【出願番号】実願平1−60072
【出願日】平成1年(1989)5月24日
【公開番号】実開平2−149358
【公開日】平成2年(1990)12月19日
【出願人】(999999999)
【参考文献】
【文献】実開平1−173065(JP,U)
【文献】特公昭62−225452(JP,B2)