説明

リフト装置

【課題】支持脚を直立させた状態であってもフレームの上方に邪魔な部品が突出することのないリフト装置を簡便な構造にて提供する。
【解決手段】第一の水平リンク部材7の上下に形成した2つの平行リンク機構を第一の水平リンク部材7を挟んで線対称の状態で変形させ、フレーム2の同じ側の側面に位置する一方の上部リンク部材5と下部リンク部材6で構成される1本の支持脚4と此れと同じ側の側面に位置する他方の上部リンク部材5と下部リンク部材6によって構成されるもう1本の支持脚4とを同期して屈伸させる。フレーム2の左右両側面の支持脚屈伸用油圧シリンダ9を同期して作動させるといった簡単な操作で左右の4本の支持脚4の屈伸を同期させてフレーム2を鉛直方向に移動させる構成とすることでフレーム2の上方への突出物をなくし、かつ、リフト装置1の構造を簡便化して製造コストを引き下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン車の旋回胴やブーム等を始めとする重量物の着脱や積載あるいは積み替え作業等に利用されるリフト装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のリフト装置は既に公知であり、例えば、特許文献1に開示されるようなリフター装置や特許文献2に開示されるようなリフト装置が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されるリフター装置はテレスコピック構造を有する支持脚を可倒式としたもので、リフター装置の搬送に際してリフター装置の上下高さを短縮することができる。
しかし、支持脚を可倒式とする必要上、短縮された状態にある支持脚の下端部をフレームに枢着することが構成上の必須要件となり、フレームの立ち上げに際して支持脚を直立させると少なくとも支持脚の外筒部分がフレームの上方に突出してしまい、上方に十分な作業空間を確保できないような作業現場、例えば、橋桁や電線の下で行われる旋回胴やブームの着脱や積載作業等に支障を生じる恐れがある。
【0004】
これに対し、特許文献2に開示されるリフト装置は、フレームの四隅に取り付けられた2本1組のリンクによって構成される4本の支持脚を屈伸させてフレームを立ち上げる構成であるため、フレームの上方に邪魔な部品が突出することはなく、また、搬送時の上下高さの短縮も可能である。
しかしながら、4本の支持脚を屈伸させるために各支持脚毎の姿勢調整用油圧シリンダと屈曲動作用油圧シリンダ、つまり、都合8本の油圧シリンダを必要とする。
しかも、これら4本の支持脚を同期して屈伸させるために、複数のシーブとテンションスプリングおよびワイヤやリミットスイッチ等を組み合わせて構成される複雑な偏差検出器、更には、油圧シリンダを並列的に駆動制御するための専用の制御手段が必要となり、全体の構造が複雑化する弊害と製造コストが割高となる不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−1689号公報
【特許文献2】特開2010−116233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の不都合を改善し、搬送時における上下高さの短縮が可能であり、しかも、支持脚を直立させた状態であってもフレームの上方に邪魔な部品が突出することのないリフト装置を簡便な構造にて提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のリフト装置は、重量物を懸吊するフレームと、フレームに重量物を接続するための吊り具と、フレームに設けられて重量物とフレームの荷重を支える4本の支持脚とを備えたリフト装置であり、前記目的を達成するため、特に、
前記フレームの左右両側面の各々に、水平方向に間隔を置いて、2つの上部リンク部材の一端を前記上部リンク部材の各々が前記フレームの側面に沿った垂直面内で揺動自在となるようにして枢着すると共に、前記上部リンク部材と同等の長さを有する下部リンク部材の一端を、前記各上部リンク部材の他端に、前記垂直面内で前記下部リンク部材が揺動自在となるようにして枢着し、相互に接続された上部リンク部材と下部リンク部材の組によって前記4本の支持脚を構成する一方、
前記フレームの同じ側の側面に位置する一方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材との枢着部と此れと同じ側に位置する他方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材との枢着部を前記間隔に匹敵する長さを有する第一の水平リンク部材で接続し、かつ、前記フレームの同じ側の側面に位置する一方の支持脚を構成する下部リンク部材の他端と此れと同じ側に位置する他方の支持脚を構成する下部リンク部材の他端を前記間隔に匹敵する長さを有する第二の水平リンク部材で接続し、
前記第一の水平リンク部材に、この水平リンク部材に沿って配置された支持脚屈伸用油圧シリンダによって駆動され、当該水平リンク部材に沿って移動する支持脚屈伸用スライダを設け、
前記フレームの同じ側の側面に位置する一方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材の各々に、上部リンク部材と下部リンク部材との枢着部から等しい間隔を置いて、上部リンク部材用リンク枢着部と下部リンク部材用リンク枢着部を設け、
前記支持脚屈伸用スライダが前記一方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材との枢着部から最も離間した移動限界位置にある状態で前記一方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材とが一直線上に並ぶようにして、前記上部リンク部材用リンク枢着部と前記支持脚屈伸用スライダとの間、および、前記下部リンク部材用リンク枢着部と前記支持脚屈伸用スライダとの間の各々を、等しい長さを有する支持脚屈伸用リンク部材で接続したことを特徴とする構成を有する。
【0008】
フレームの同じ側の側面に位置する2つの上部リンク部材の一端が水平方向に間隔を置いてフレームに揺動自在に枢着され、更に、これら2つの上部リンク部材の他端が前述した間隔に匹敵する長さを有する第一の水平リンク部材で接続されることになるので、長さの等しいフレームの側面と第一の水平リンク部材、および、長さの等しい2つの上部リンク部材の組み合わせから成る1つの平行リンク機構が第一の水平リンク部材の上方に形成される。
また、フレームの同じ側の側面に位置する2つの下部リンク部材の一端が第一の水平リンク部材に枢着され、これら2つの下部リンク部材の他端が前述した間隔に匹敵する長さを有する第二の水平リンク部材で接続されることになるので、長さの等しい第一の水平リンク部材と第二の水平リンク部材、および、長さの等しい2つの下部リンク部材の組み合わせから成る他の1つの平行リンク機構が第一の水平リンク部材の下方に形成される。
第一の水平リンク部材は、2つの平行リンク機構に共通する構成要素であり、しかも、第一の水平リンク部材に接続する上部リンク部材と下部リンク部材は同等の長さを有するものであるから、結果的に、第一の水平リンク部材を挟むようにして、其の上下に均等な構造を有する2つの平行リンク機構が形成されることになる。
そして、第一の水平リンク部材には、この水平リンク部材に沿って配置された支持脚屈伸用油圧シリンダを駆動源として当該水平リンク部材に沿って移動する支持脚屈伸用スライダが設けられている。
フレームの同じ側の側面に位置する一方の支持脚を構成する上部リンク部材に設けられた上部リンク部材用リンク枢着部と支持脚屈伸用スライダとの間、および、この一方の支持脚を構成する下部リンク部材に設けられた下部リンク部材用リンク枢着部と支持脚屈伸用スライダとの間が、各々の支持脚屈伸用リンク部材で接続されているので、第一の水平リンク部材に沿って移動可能な支持脚屈伸用スライダを一方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材との枢着部に向けて移動させると、これらの上部リンク部材と下部リンク部材が各々の支持脚屈伸用リンク部材によって外側に押し出されるようなかたち、つまり、上部リンク部材と第一の水平リンク部材との成す角、および、下部リンク部材と第一の水平リンク部材との成す角を増大させるかたちで揺動する。
また、これとは逆に、第一の水平リンク部材に沿って移動可能な支持脚屈伸用スライダを一方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材との枢着部から離間する方向に移動させると、これらの上部リンク部材と下部リンク部材が、各々の支持脚屈伸用リンク部材によって内側に引き込まれるようなかたち、つまり、上部リンク部材と第一の水平リンク部材との成す角、および、下部リンク部材と第一の水平リンク部材との成す角を減少させるかたちで揺動する。
フレームの同じ側の側面に位置する一方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材との枢着部から上部リンク部材用リンク枢着部に至る間隔と此の一方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材との枢着部から下部リンク部材用リンク枢着部に至る間隔とが等しく、かつ、各々の支持脚屈伸用リンク部材の長さも等しいので、第一の水平リンク部材の上下に形成された2つの平行リンク機構は第一の水平リンク部材を挟んで線対称の状態で変形する。つまり、第一の水平リンク部材を基準として見た場合、第一の水平リンク部材の軸方向に向けてフレームが±xだけ移動したとすれば第ニの水平リンク部材も第一の水平リンク部材の軸方向に向けて必ず±xだけ移動することになる。
従って、フレームと第ニの水平リンク部材との間に水平方向の相対移動が生じることはなく、また、支持脚屈伸用油圧シリンダを作動させて第一の水平リンク部材に沿って支持脚屈伸用スライダを移動させれば、フレームの同じ側の側面に位置する一方の上部リンク部材と下部リンク部材によって構成される1本の支持脚と、これと同じ側の側面に位置する他方の上部リンク部材と下部リンク部材によって構成されるもう1本の支持脚とを完全に同期させて屈伸することができる。
フレームの左右両側面の各々に同等の構成を有する支持脚があるので、フレームの左右両側面の支持脚屈伸用油圧シリンダを同期して作動させることにより、4本の支持脚の屈伸を同期させてフレームを鉛直方向に移動させることができる。
支持脚屈伸用スライダが一方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材との枢着部から最も離間した移動限界位置にある状態で、支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材とが一直線上に並ぶようになっているので、フレームを完全に立ち上げた状態で全ての荷重が上部リンク部材と下部リンク部材の軸線に沿った圧縮力として作用することになり、支持脚屈伸用油圧シリンダにはフレームやフレームに接続された重量物の荷重は作用しない。
支持脚を伸縮させるのではなく、支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材を屈伸させてフレームを立ち上げる構成であるから、フレームを立ち上げた状況下でフレームよりも上方に邪魔な部品が突出することはなく、上方の作業空間が制限された作業現場、例えば、橋桁の下であっても支障なく旋回胴やブームの着脱や積載作業等を実施することができる。
また、一方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材との枢着部に最も接近する移動限界位置まで支持脚屈伸用スライダを移動させて第二の水平リンク部材をフレームに接近させることによって、リフト装置の上下高さを短縮してリフト装置を搬送したり格納したりすることができる。
同期制御する必要があるのはフレームの左右両側面に位置する都合2つの支持脚屈伸用油圧シリンダのみであるから、複雑な偏差検出器や制御手段および多数の油圧シリンダを必要とせず、リフト装置全体の構造が簡便化され安価なリフト装置を提供することが可能となる。
【0009】
また、前記下部リンク部材の各々を、其の短縮時に前記上部リンク部材と同等の長さとなる伸縮可能なテレスコピック構造とし、各下部リンク部材に内装されたフレーム昇降用油圧シリンダを駆動源として同期して伸縮するように構成してもよい。
【0010】
このような構成を適用した場合には、前述のように上部リンク部材と下部リンク部材とが一直線上に並ぶようにしてフレームを完全に立ち上げた状態で、クレーン車の旋回胴やブーム等を始めとする重量物をフレームの吊り具に接続し、4本の下部リンク部材に内装された4本のフレーム昇降用油圧シリンダを同期して伸縮させることによって此れらの重量物を吊り下げて、重量物の着脱や積載あるいは積み替え作業等を実施する。
但し、下部リンク部材を伸縮可能なテレスコピック構造としてフレーム昇降用油圧シリンダによって伸縮させることは必須の要件ではない。
例えば、特許文献2に開示されるような吊り下げ機能を有する懸吊装置をフレームに実装した場合にあっては、懸吊装置を利用して重量物を吊り下げて重量物の着脱や積載あるいは積み替え作業等を実施することが可能であり、下部リンク部材に格別の伸縮機能は特に求められない。
【0011】
更に、前記フレームの左右の中心線に沿って設けられて前記中心線に沿って移動可能とされた2つの懸吊位置調整用サドルと、
前記懸吊位置調整用サドル上に左右方向移動可能に取り付けられた各懸吊位置調整用サドル毎に2つの懸吊位置調整用スライダと、
前記懸吊位置調整用サドルの各々を独立的に移動させるべく前記懸吊位置調整用サドルの各々に対応して前記中心線上に設置されたサドル位置調整用油圧シリンダと、
前記懸吊位置調整用スライダの各々を移動させるべく前記懸吊位置調整用スライダの各々に対応して前記懸吊位置調整用サドル上に設置されたスライダ位置調整用油圧シリンダとによって構成される吊り位置調整装置を設け、
前記吊り位置調整装置における各懸吊位置調整用スライダの下面側に、前記吊り具を取り付けた構成としてもよい。
【0012】
このような構成を適用すれば、2つ1組とされた懸吊位置調整用スライダの位置を各組毎にフレームの左右の中心線に沿った方向で自由に調整することができ、更に、4つの懸吊位置調整用スライダの位置を各々独立的にフレームの左右の中心線と直交する方向で水平方向に自由に調整することができる。
従って、特に、クレーン車の旋回胴やブーム等といったもののように異形状の重量物の着脱や積載あるいは積み替え作業等を行う際に、重量物の形状や吊りボルトの位置に合わせて懸吊位置調整用スライダひいては吊り具の位置を調整することが可能となり、フレームのバランスの確保が容易となる。
また、フレーム側の吊り具の位置を重量物に設けられた吊りボルトの位置に的確に一致させることができるため、重量物にワイヤ等の治具を掛け回してフレーム側の吊り具に接続するといった必要もなくなり、特に、懸吊作業の対象となる長尺のブーム等が治具との接触で不用意に傷付くといった事故が未然に防止される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のリフト装置は、フレームの側面と第一の水平リンク部材および2つの上部リンク部材の組み合わせから成る平行リンク機構と第一の水平リンク部材と第二の水平リンク部材および2つの下部リンク部材の組み合わせから成る平行リンク機構とを組み合わせて第一の水平リンク部材の上下に2つの平行リンク機構を形成すると共に、第一の水平リンク部材に沿って移動する支持脚屈伸用スライダを設けて上部リンク部材と支持脚屈伸用スライダとの間および下部リンク部材と支持脚屈伸用スライダとの間を各々の支持脚屈伸用リンク部材で接続し、支持脚屈伸用油圧シリンダで支持脚屈伸用スライダを移動させることにより、第一の水平リンク部材の上下に形成された2つの平行リンク機構を第一の水平リンク部材を挟んで線対称の状態で変形させ、フレームの同じ側の側面に位置する一方の上部リンク部材と下部リンク部材で構成される1本の支持脚と此れと同じ側の側面に位置する他方の上部リンク部材と下部リンク部材によって構成されるもう1本の支持脚とを同期して屈伸させるようにしたので、フレームの左右両側面の支持脚屈伸用油圧シリンダを同期して作動させるといった簡単な操作でフレームの4本の支持脚の屈伸を同期させてフレームを鉛直方向に移動させることができる。
支持脚を伸縮させるのではなく、支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材を屈伸させてフレームを立ち上げる構成であるから、フレームを立ち上げた状況下でフレームよりも上方に邪魔な部品が突出することはなく、上方の作業空間が制限された作業現場、例えば、橋桁の下であっても支障なく旋回胴やブームの着脱や積載作業等を実施することができる。
また、一方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材との枢着部に最も接近する移動限界位置まで支持脚屈伸用スライダを移動させて第二の水平リンク部材をフレームに接近させることによって、リフト装置の上下高さを短縮してリフト装置を搬送したり格納したりすることができる。
しかも、立ち上げ作業に際して同期制御する必要があるのはフレームの左右両側面に位置する都合2つの支持脚屈伸用油圧シリンダのみであるから、複雑な偏差検出器や制御手段および多数の油圧シリンダを必要とせず、リフト装置全体の構造が簡便化され安価なリフト装置を提供することが可能となる。
【0014】
また、下部リンク部材の各々を、其の短縮時に上部リンク部材と同等の長さとなる伸縮可能なテレスコピック構造とし、各下部リンク部材に内装されたフレーム昇降用油圧シリンダを駆動源として同期させて伸縮する構成を適用した場合には、上部リンク部材と下部リンク部材とが一直線上に並ぶようにしてフレームを完全に立ち上げた状態でクレーン車の旋回胴やブーム等を始めとする重量物をフレームの吊り具に接続し、4本の下部リンク部材に内装された4本のフレーム昇降用油圧シリンダを同期して伸縮させることによって此れらの重量物を吊り下げて、重量物の着脱や積載あるいは積み替え作業等を実施することができる。
【0015】
更に、2つの懸吊位置調整用サドルと各懸吊位置調整用サドル毎に2つの懸吊位置調整用スライダ、および、これらを駆動するサドル位置調整用油圧シリンダとスライダ位置調整用油圧シリンダとによって構成される吊り位置調整装置を設け、各懸吊位置調整用スライダの下面側に吊り具を取り付けた構成を採用した場合にあっては、2つ1組とされた懸吊位置調整用スライダの位置を各組毎にフレームの左右の中心線に沿った方向で自由に調整することができ、更に、4つの懸吊位置調整用スライダの位置を各々独立的にフレームの左右の中心線と直交する方向で水平方向に自由に調整することができる。
従って、特に、クレーン車の旋回胴やブーム等といったように異形形状の重量物の着脱や積載あるいは積み替え作業等を行う際に、重量物の形状や吊りボルトの位置に合わせて懸吊位置調整用スライダひいては吊り具の位置を調整することが可能となり、フレームのバランスの確保が容易となる。
また、フレーム側の吊り具の位置を重量物に設けられた吊りボルトの位置に的確に一致させることができるため、重量物にワイヤ等の治具を掛け回してフレーム側の吊り具に接続するといった必要もなくなり、特に、懸吊作業の対象となる長尺のブーム等に不用意な傷が付くといった事故が未然に防止される結果、長尺ブーム等の初期強度の保証や経年的な劣化の防止に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した一実施形態のリフト装置を格納状態としてトラックの荷台に載置した状態を示した側面図である。
【図2】同実施形態のリフト装置を格納状態としてトラックの荷台に載置した状態を示した平面図である。
【図3】同実施形態のリフト装置における支持脚の周辺構造を示した図で、図3(a)では上部リンク部材と下部リンク部材を一直線上に位置させたときの各部のリンクの姿勢について、また、図3(b)では下部リンク部材の詳細な構造について示している。
【図4】第一の水平リンク部材に支持脚屈伸用油圧シリンダと支持脚屈伸用スライダを取り付けるための構造について示した図で、図4(a)は第一の水平リンク部材と第一の水平リンク部材に取り付けられた支持脚屈伸用スライダを上方から示した平面図、図4(b)は支持脚屈伸用スライダを拡大して示した側面図、図4(c)は図4(b)のA−A断面を示した断面図、図4(d)は図4(b)のB−B断面を示した断面図である。
【図5】フレームの一部を構成する側面リンクをフレームの主要部となるフレーム本体に取り付けるための構造について示した図で、図5(a)は側面リンクを取り外したフレーム本体を上方から示した平面図、また、図5(b)は其の側面図である。
【図6】側面リンクを取り付けたフレーム本体を上方から示した平面図であり、側面リンクをメインビームから最も離間させたときの脚部振り出し用リンクおよび側面リンクの姿勢を実線で示し、また、側面リンクをメインビームに最も接近させたときの脚部振り出し用リンクおよび側面リンクの姿勢を二点鎖線で示している。
【図7】同実施形態のリフト装置における吊り位置調整装置の構造について示した斜視図である。
【図8】同実施形態のリフト装置における吊り位置調整装置の構造を示した平面図である。
【図9】同実施形態のリフト装置における補助脚の取り付け状態について示した図で、図9(a)前後の補助脚の取り付け状態を示した側面図、また、図9(b)は後方の支持脚を格納状態で示した側面図である。
【図10】同実施形態のリフト装置における補助脚の取り付け状態について示した図で、図10(a)は前方の支持脚の取り付け状態を示した正面図、また、図10(b)は前方の支持脚を格納状態で示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について一例を挙げ、図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
図1は本発明を適用した一実施形態のリフト装置1を格納状態としてトラック71の荷台に載置した状態を示した側面図、また、図2は同実施形態のリフト装置1を格納状態としてトラック71の荷台に載置した状態を示した平面図である。
【0019】
図1に示す通り、この実施形態のリフト装置1は、重量物を懸吊するフレーム2と、フレーム2に重量物を接続するための吊り具3と、フレーム2に設けられて重量物とフレーム2の荷重を支える4本の支持脚4を備えたリフト装置1である。
【0020】
フレーム2の左右両側面の各々を形成する側面リンク2aには、水平方向つまり図1の左右方向に間隔Aを置いて2つの上部リンク部材5の一端(上端)が枢着され、各々の上部リンク部材5が、フレーム2の側面に沿った垂直面内すなわち図1の面と平行を成す平面内で揺動自在とされ、更に、上部リンク部材5と同等の長さを有する下部リンク部材6の一端(上端)が上部リンク部材5の他端(下端)に枢着され、各々の下部リンク部材6が、フレーム2の側面に沿った垂直面内で上部リンク部材5に対して揺動自在とされている。
下部リンク部材6は伸縮可能なテレスコピック構造を有し、図1および図2で示す状態が、下部リンク部材6を最も短縮した時の状態、つまり、下部リンク部材6の長さを上部リンク部材5の長さと同等にしたときの状態である。
【0021】
この実施形態では、第一の水平リンク部材7の端部に形成されたステープル部分を介して上部リンク部材5の他端に下部リンク部材6の一端を接続しているが、これは、リンク間の干渉を防止するための措置に過ぎず、リンク間の干渉といった問題さえなければ、上部リンク部材5の他端と下部リンク部材6の一端と第一の水平リンク部材7の端部を纏めて1箇所で枢着しても構わない。
つまり、上部リンク部材5の他端と下部リンク部材6の一端との間に第一の水平リンク部材7のステープル部分を介在させているのは便宜上の措置であり、機械的な構成および力学的な構成から見れば、上部リンク部材5の他端に下部リンク部材6の一端を直接的に枢着していると考えても差し支えないということであり、この構成は、下部リンク部材6の一端を上部リンク部材5の他端に枢着するとした請求項記載の定義に反するものではない。
【0022】
この実施形態の支持脚4は、相互に接続された上部リンク部材5と下部リンク部材6の組み合わせによって構成されるもので、その本数はフレーム2の左右両側面のものを併せて都合4本である。
【0023】
そして、フレーム2の同じ側の側面に位置する一方の支持脚4(図1中で左側に位置する支持脚4)を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1と此れと同じ側に位置する他方の支持脚4(図1中で右側に位置する支持脚4)を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P2が、前述した間隔Aに匹敵する長さを有する第一の水平リンク部材7で接続され、かつ、フレーム2の同じ側の側面に位置する一方の支持脚4を構成する下部リンク部材6の他端(下端)と此れと同じ側に位置する他方の支持脚4を構成する下部リンク部材6の他端が、前述した間隔Aに匹敵する長さを有する第二の水平リンク部材8で接続されている。
【0024】
また、第一の水平リンク部材7には、この水平リンク部材7に沿って配置された支持脚屈伸用油圧シリンダ9(図1では図示せず)によって駆動され、水平リンク部材7に沿って移動する支持脚屈伸用スライダ10が設けられている。
【0025】
更に、フレーム2の同じ側の側面に位置する一方の支持脚4を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6の各々に、上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1から等しい間隔Bを置いて、上部リンク部材用リンク枢着部11と下部リンク部材用リンク枢着部12が設けられ、上部リンク部材用リンク枢着部11と支持脚屈伸用スライダ10との間、および、下部リンク部材用リンク枢着部12と支持脚屈伸用スライダ10との間が、等しい長さC(図1では図示せず)を有する支持脚屈伸用リンク部材13,13で接続されている。
【0026】
側面リンク2a,上部リンク部材5,下部リンク部材6,第一の水平リンク部材7,第二の水平リンク部材8,支持脚屈伸用リンク部材13等から成る支持脚4の周りのリンク構造を取り出して図3(a)に、また、下部リンク部材6の構造の詳細を図3(b)に示す。
図3(a)では支持脚4の周りのリンク構造を図1と同じ方向から示し、図3(b)では下部リンク部材6の構造を図3(a)を基準として右側から見た状態で示している。
但し、図3(a)は一方の支持脚4(図3(a)中で左側に位置する支持脚4)を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1から支持脚屈伸用スライダ10を離間側の移動限界位置にまで移動させたときの状態、つまり、上部リンク部材5と下部リンク部材6とが一直線上に並んだときの状態について示したもので、図1および図2に示した格納状態とでは各リンクの位置や姿勢が異なる。
また、図3(a)および図3(b)は下部リンク部材6を限界まで伸長させたときの状態について示したものであり、図1および図2に示した格納状態とでは下部リンク部材6の全長が異なる。
【0027】
図3(a)に示す通り、上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1から上部リンク部材用リンク枢着部11に至る間隔Bと上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1から下部リンク部材用リンク枢着部12に至る間隔B、および、支持脚屈伸用リンク部材13,13の長さCは、支持脚屈伸用スライダ10が、一方の支持脚4を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1から最も離間した図3(a)の移動限界位置にある状態で、一方の支持脚4を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6とが一直線上に並ぶように定められている。
【0028】
ここで、第一の水平リンク部材7に支持脚屈伸用油圧シリンダ9と支持脚屈伸用スライダ10を取り付けるための構造について図4を参照して詳細に説明する。
【0029】
図4(a)は第一の水平リンク部材7と第一の水平リンク部材7に取り付けられた支持脚屈伸用スライダ10を上方から示した平面図、図4(b)は支持脚屈伸用スライダ10を拡大して示した側面図、図4(c)は図4(b)のA−A断面を示した断面図、図4(d)は図4(b)のB−B断面を示した断面図である。
【0030】
第一の水平リンク部材7は、図4(a)および図4(c)に示されるように、補強リブ24を内部に溶接したコの字型断面のミゾ形鋼7a,7aの凹部側を対向配置して構成したもので、支持脚屈伸用油圧シリンダ9は、ミゾ形鋼7a,7a間の間隙に第一の水平リンク部材7の長手方向に沿ったかたちで配置され、更に、ミゾ形鋼7a,7aを跨ぐようにして第一の水平リンク部材7に固着されたアングル材26に、シリンダ27から突出したピストンロッド25の先端25aが固着されている。
【0031】
また、シリンダ27の長手方向略中央部における径方向左右の端部には、ミゾ形鋼7a,7aの上方に突出する矩形状のプレート28,28と、これらと対を成してミゾ形鋼7a,7aの下方に突出する矩形状のプレート29,29が固着されている。
【0032】
そして、プレート28,28におけるピストンロッド25寄りの端部には、図4(b)および図4(c)に示されるように、上部リンク部材用リンク枢着部11と接続した支持脚屈伸用リンク部材13の端部がピン30を介して枢着され、同様に、プレート29,29におけるピストンロッド25寄りの端部には、下部リンク部材用リンク枢着部12と接続した支持脚屈伸用リンク部材13の端部がピン31を介して枢着されている。
【0033】
一方、プレート28,28におけるシリンダボトム寄りの端部には、図4(b)および図4(d)に示されるように、ミゾ形鋼7a,7aの上面に平行となる下面を備えたステー32,32が固着され、同様に、プレート29,29におけるシリンダボトム寄りの端部には、ミゾ形鋼7a,7aの下面に平行となる上面を備えたステー33,33が固着されると共に、ステー32,32の下面およびステー33,33の上面には、各々、第一の水平リンク部材7を構成するミゾ形鋼7a,7aとの摺接抵抗を軽減するためのパッド34が固着されている。
【0034】
既に述べた通り、支持脚屈伸用油圧シリンダ9のピストンロッド25を突出させれば、シリンダ27に固着された支持脚屈伸用スライダ10が上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1から離間する方向に移動し、最終的に、支持脚屈伸用スライダ10が離間側の移動限界位置に到達した段階で図3(a)に示されるようにして上部リンク部材5と下部リンク部材6とが一直線上に並ぶ。
また、これとは逆に、支持脚屈伸用油圧シリンダ9のピストンロッド25を縮退させれば、シリンダ27に固着された支持脚屈伸用スライダ10が上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1に接近する方向に移動し、支持脚屈伸用スライダ10が接近側の移動限界位置に到達すると、支持脚4を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6が図1および図2に示されるようにして折り畳まれた状態となる。
【0035】
このように、フレーム2の同じ側の側面に位置する2つの上部リンク部材5,5の一端が水平方向に間隔Aを置いてフレーム2の側面リンク2aに揺動自在に枢着され、これら2つの上部リンク部材5,5の他端が間隔Aに匹敵する長さを有する第一の水平リンク部材7で接続されることになるので、互いに長さの等しい側面リンク2aと第一の水平リンク部材7、および、互いに長さの等しい2つの上部リンク部材5,5の組み合わせによって第一の水平リンク部材7の上方に1つの平行リンク機構が形成されることになる。
【0036】
同様に、フレーム2の同じ側の側面に位置する2つの下部リンク部材6,6の一端が第一の水平リンク部材7に枢着され、これら2つの下部リンク部材6,6の他端が間隔Aに匹敵する長さを有する第二の水平リンク部材8で接続されることになるので、互いに長さの等しい第一の水平リンク部材7と第二の水平リンク部材8、および、短縮状態で互いに長さの等しい2つの下部リンク部材6,6の組み合わせによって第一の水平リンク部材7の下方にもう1つの平行リンク機構が形成される。
【0037】
第一の水平リンク部材7は、これら2つの平行リンク機構に共通する構成要素であり、しかも、第一の水平リンク部材7に接続する上部リンク部材5,5と短縮状態にある下部リンク部材6,6は同等の長さを有するものであるから、結果的に、第一の水平リンク部材7を挟むようにして、其の上下に均等な構造を有する2つの平行リンク機構が形成されることになる。
【0038】
そして、フレーム2の同じ側の側面に位置する一方の支持脚4を構成する上部リンク部材5に設けられた上部リンク部材用リンク枢着部11と支持脚屈伸用スライダ10との間、および、この一方の支持脚4を構成する下部リンク部材6に設けられた下部リンク部材用リンク枢着部12と支持脚屈伸用スライダ10との間が、各々の支持脚屈伸用リンク部材13で接続されているので、第一の水平リンク部材7に沿って支持脚屈伸用スライダ10を一方の支持脚4を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1に向けて移動させると、上部リンク部材5と下部リンク部材6が各々の支持脚屈伸用リンク部材13によって外側に押し出されるようなかたち、つまり、上部リンク部材5と第一の水平リンク部材7との成す角、および、下部リンク部材6と第一の水平リンク部材7との成す角を増大させるかたちで揺動する。
【0039】
また、これとは逆に、第一の水平リンク部材7に沿って支持脚屈伸用スライダ10を一方の支持脚4を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1から離間する方向に移動させると、上部リンク部材5と下部リンク部材6が、各々の支持脚屈伸用リンク部材13によって内側に引き込まれるようなかたち、つまり、上部リンク部材5と第一の水平リンク部材7との成す角、および、下部リンク部材6と第一の水平リンク部材7との成す角を減少させるかたちで揺動する。
【0040】
しかも、フレーム2の同じ側の側面に位置する一方の支持脚4を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1から上部リンク部材用リンク枢着部11に至る間隔Bと此の一方の支持脚4を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1から下部リンク部材用リンク枢着部12に至る間隔Bとが等しく、かつ、各々の支持脚屈伸用リンク部材13,13の長さCも等しいので、第一の水平リンク部材7の上下に形成された2つの平行リンク機構は第一の水平リンク部材7を挟んで線対称の状態で変形する。
【0041】
つまり、下部リンク部材6を短縮状態として上部リンク部材5と等しい長さとした状況下では、第一の水平リンク部材7を基準として見た場合、第一の水平リンク部材7の軸方向に向けて側面リンク2aが±xだけ移動したとすれば第ニの水平リンク部材8も第一の水平リンク部材7の軸方向に向けて必ず±xだけ移動することになる。
【0042】
従って、側面リンク2aひいてはフレーム2と第ニの水平リンク部材8との間に水平方向の相対移動が生じることはなく、支持脚屈伸用油圧シリンダ9を作動させて第一の水平リンク部材7に沿って支持脚屈伸用スライダ10を移動させれば、フレーム2の同じ側の側面に位置する一方の上部リンク部材5と下部リンク部材6によって構成される1本の支持脚4(図3(a)中で左側に位置する支持脚4)と、これと同じ側の側面に位置する他方の上部リンク部材5と下部リンク部材6によって構成されるもう1本の支持脚4(図3(a)中で右側に位置する支持脚4)とを完全に同期させて屈伸することができる。
【0043】
フレーム2の左右両側面の各々に同等の構成を有する支持脚4,4の組が設けられているので、フレーム2の左右両側面の支持脚屈伸用油圧シリンダ9,9を同期して作動させることにより4本の支持脚4の屈伸を同期させてフレーム2を鉛直方向に移動させることができ、この際、フレーム2と支持脚4,4,4,4の間で水平方向の移動は生じない。
【0044】
そして、支持脚屈伸用スライダ10が一方の支持脚4を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1から最も離間した移動限界位置にある状態で各支持脚4を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6とが一直線上に並ぶようになっているので、フレーム2を完全に立ち上げた状態では全ての荷重が上部リンク部材5と下部リンク部材6の軸線に沿った圧縮力として作用することになり、支持脚屈伸用油圧シリンダ9にはフレーム2やフレーム2に接続された重量物の荷重は作用しない。
【0045】
更に、この実施形態の下部リンク部材6は、上部リンク部材5の他端に枢着される外筒部6aと此の外筒部6aに内嵌されて外筒部6aに対し摺動自在とされた内筒部6bとから成るテレスコピック構造を有し、内筒部6bに内装されたフレーム昇降用油圧シリンダ14を作動させて外筒部6aの下端部から内筒部6bを突出あるいは縮退させることにより、下部リンク部材6を全体的に伸縮させられるようになっている。
より具体的には、図3(b)に示す通り、フレーム昇降用油圧シリンダ14におけるシリンダ15のシリンダヘッド側端部15aが内筒部6bの上端部に固着される一方、フレーム昇降用油圧シリンダ14におけるピストンロッド16の先端16aが外筒部6aの上端部に固着された構造であり、ピストンロッド16の突出動作によって下部リンク部材6が全体として伸長し、ピストンロッド16の縮退動作によって下部リンク部材6が全体として短縮される。
【0046】
なお、実際に地面に接地するのは第二の水平リンク部材8の両端部から下方に突出して設けられた接地板17a,17aの部分であり、接地板17aの各々は、レベルシリンダ17を介して第二の水平リンク部材8に取り付けられている。
そして、第二の水平リンク部材8に対するレベルシリンダ17の伸縮状態、つまり、第二の水平リンク部材8から下方に突出するレベルシリンダ17の長さを此れらに対応する支持脚4毎に独立して調整することによって、第二の水平リンク部材8ひいてはフレーム2の水平状態を確保できるようになっている。
また、接地板17aはレベルシリンダ17の下端部に自在継手を介して接続されており、地形に倣った姿勢変化が可能である。
【0047】
次に、フレーム2の一部を構成する側面リンク2aをフレーム2の主要部となるフレーム本体2bに取り付けるための構造について図5および図6を参照して説明する。
【0048】
図5(a)は側面リンク2aを取り外したフレーム本体2bを上方から示した平面図、図5(b)は其の側面図、また、図6は側面リンク2aを取り付けたフレーム本体2bを上方から示した平面図である。
【0049】
フレーム本体2bの主要部は、図5(a)に示されるように、フレーム2の左右の中心線L1−L1’に沿って設けられたメインビーム18と、水平面内でメインビーム18と直交するようにしてメインビーム18の一端に固設されたクロスビーム35、同じく、水平面内でメインビーム18と直交するようにしてメインビーム18の他端に固設されたクロスビーム36によって構成される。
【0050】
クロスビーム35の左右の端部には脚部振り出し用リンク37,37の一端が、これらのリンク37,37が水平面内で回転自在となるようにして枢着され、同様に、クロスビーム36の左右の端部には、脚部振り出し用リンク37,37と同等の長さを有する脚部振り出し用リンク38,38の一端が、これらのリンク38,38が水平面内で回転自在となるようにして枢着されている。
脚部振り出し用リンク37,37と脚部振り出し用リンク38,38もフレーム本体2bの構成要素である。
【0051】
クロスビーム36を超えてメインビーム18の長手方向に突出するハウジング設置部39は、動力源であるエンジンや油圧装置等を設置するためのスペースである。
【0052】
図3(a)に示した側面リンク2aは、脚部振り出し用リンク37に対して水平面内で相対的に揺動可能となるようにして、その一方の端部40を脚部振り出し用リンク37の他端に枢着され、かつ、側面リンク2aが脚部振り出し用リンク38に対して水平面内で相対的に揺動可能となるようにして、もう一方の端部41を脚部振り出し用リンク38の他端に枢着されることにより、支持脚4の周りのリンク構造を鉛直下方に伴った状態で、フレーム本体2bの側面に取り付けられる。
【0053】
但し、図5(a)に示されるように、クロスビーム35の長さに比べてクロスビーム36の長さの方が短い。
従って、クロスビーム35と脚部振り出し用リンク37、および、クロスビーム36と脚部振り出し用リンク38の各々が一直線上に並ぶように各脚部振り出し用リンク37,38を揺動させた状況下において、脚部振り出し用リンク37の他端に形成された枢着部P3と脚部振り出し用リンク38の他端に形成された枢着部P4との間に、メインビーム18と直交する方向のオフセットDが水平方向に生じる。
しかし、実際には、側面リンク2aにおける端部41側に設けられた枢着部P4’に比べて側面リンク2aにおける端部40側に設けられた枢着部枢着部P3’の方が図3(a)の紙面に垂直な方向でオフセットDに相当する分だけ手前側にずれているので、側面リンク2aの端部40を脚部振り出し用リンク37の他端に枢着し、かつ、側面リンク2aの端部41を脚部振り出し用リンク38の他端に枢着した状態で、側面リンク2aがメインビーム18に対して図6に示すように平行な状態となる。
【0054】
そして、図5(a)に示されるように、脚部振り出し用リンク38の側面には、シリンダボトムをメインビーム18側に枢着された脚部振り出し用油圧シリンダ42のピストンロッドの先端が枢着され、脚部振り出し用油圧シリンダ42を伸縮させて脚部振り出し用リンク37,38および側面リンク2aから成る平行リンク機構を作動させることによって、メインビーム18に対する側面リンク2aの平行状態を維持したまま、メインビーム18に対し、側面リンク2aを水平面内で接離移動させられるようになっている。
図5(a)で中心線L1−L1’よりも下方に実線で示したのが、脚部振り出し用油圧シリンダ42を伸長させて側面リンク2aをメインビーム18から最も離間させたときの状態であり、このとき、クロスビーム36と脚部振り出し用リンク38、および、クロスビーム35と脚部振り出し用リンク37の各々が一直線上に並ぶ。
また、図5(a)で中心線L1−L1’よりも上方に実線で示したのが、脚部振り出し用油圧シリンダ42を短縮させて側面リンク2aをメインビーム18に最も接近させたときの状態であり、このとき、クロスビーム36と脚部振り出し用リンク38、および、クロスビーム35と脚部振り出し用リンク37の各々が直交した状態となる。
なお、脚部振り出し用リンク37,38は、メインビーム18に沿って格納される状態とメインビーム18に対して直交する状態との間の中間的な角度で固定できるようにしてもよい。脚部振り出し用リンク37の固定は、クロスビーム35および脚部振り出し用リンク37の各々の枢着部近傍の重合部分にピン穴を穿設し、これらのピン穴にロックピンを貫通させる等の手段によって容易に実現可能である。既に述べた通り、脚部振り出し用リンク37,38は、脚部振り出し用リンク37,38および側面リンク2aから成る平行リンク機構の一部であるから、脚部振り出し用リンク37,38を中間的な角度に固定するためのピン穴やロックピンは、クロスビーム35および脚部振り出し用リンク37の各々の枢着部近傍の重合部分、もしくは、クロスビーム36および脚部振り出し用リンク38の各々の枢着部近傍の重合部分のうち、何れか一方に設ければ事足りる。
【0055】
各支持脚4を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6、および、此れらを同期して屈伸させるために必要とされる第一の水平リンク部材7,第二の水平リンク部材8,支持脚屈伸用油圧シリンダ9,支持脚屈伸用スライダ10,支持脚屈伸用リンク部材13は全て側面リンク2aをベースとして実装されているので、メインビーム18の両側に位置する脚部振り出し用油圧シリンダ42,42を同期駆動してフレーム本体2bの左右両側の側面リンク2a,2aをフレーム本体2bの側方に接離移動させることによって、フレーム本体2bの左側に位置する支持脚4,4とフレーム本体2bの右側に位置する支持脚4,4との間の離間距離(トレッド)を調整することができる。
【0056】
側面リンク2aをフレーム本体2bから最も離間させたときの脚部振り出し用リンク37,38および側面リンク2aの姿勢を図6中に実線で示し、また、側面リンク2aをフレーム本体2bに最も接近させたときの脚部振り出し用リンク37,38および側面リンク2aの姿勢を図6中に二点鎖線で示す。
【0057】
更に、この実施形態におけるリフト装置1は、図2に示す通り、フレーム2の左右の中心線L1−L1’に沿って設けられたメインビーム18から左右両側に張り出した状態で設置され、メインビーム18に沿って移動可能とされた2つの懸吊位置調整用サドル19,19と、各懸吊位置調整用サドル19上に左右方向移動可能に取り付けられた各懸吊位置調整用サドル19毎に2つの懸吊位置調整用スライダ20,20と、懸吊位置調整用サドル19,19の各々を独立的に移動させるべく懸吊位置調整用サドル19,19の各々に対応してメインビーム18上に設置されたサドル位置調整用油圧シリンダ21,21と、懸吊位置調整用スライダ20の各々を独立的に移動させるべく懸吊位置調整用スライダ20の各々に対応して懸吊位置調整用サドル19上に設置されたスライダ位置調整用油圧シリンダ22,22とによって構成される吊り位置調整装置23を備える。
【0058】
ここで、吊り位置調整装置23の構造について図7および図8を参照して詳細に説明する。
【0059】
図7は吊り位置調整装置23の構造について示した斜視図、図8は吊り位置調整装置23を上方から示した平面図である。
【0060】
メインビーム18は図7に示される通り上下方向に長い矩形断面を有するチューブ状の長尺部材であり、その外周部には、メインビーム18の外周形状に適合した矩形状の断面形状を備えた2つの送り駒43がメインビーム18の長手方向に摺動自在な状態で外嵌されている。
【0061】
懸吊位置調整用サドル19は長手方向の中央部にスリット45を備えた枕木状の鋼板によって構成され、長手方向中央部の下面を送り駒43の上面に固着されて、メインビーム18の左右両側に張り出す。
そして、懸吊位置調整用サドル19の四隅と送り駒43の下端部の四隅とが補強ステー44で接続されることにより、送り駒43に対する懸吊位置調整用サドル19の捩れや懸吊位置調整用サドル19に大きな荷重が作用した際の懸吊位置調整用サドル19自体の撓みが抑制されるようになっている。
【0062】
懸吊位置調整用サドル19をメインビーム18に沿って移動させるためのサドル位置調整用油圧シリンダ21は、図8に示されるように、メインビーム18の長手方向の中央部で左右に一定の間隔を置いてメインビーム18上に固着された2枚の固定板46,46に穿設された孔47,47にピン48を介してピストンロッドの先端を枢着される一方、シリンダボトム側の端部をメインビーム18上の懸吊位置調整用サドル19の中央部に枢着されるかたちで、メインビーム18上に設置されている。
【0063】
従って、何れの懸吊位置調整用サドル19,19も、対応するサドル位置調整用油圧シリンダ21を短縮させればメインビーム18の長手方向中央寄りの位置に移動し、また、これとは逆に、対応するサドル位置調整用油圧シリンダ21を伸長させれば、メインビーム18の長手方向の端部寄りの位置に移動することになる。
【0064】
なお、固定板46,46には両端部の孔47,47の他にも、図5(b)に示されるように、固定板46,46の長手方向の中央寄りに位置する別の孔48,48が孔47,47と同様にして穿設されており、サドル位置調整用油圧シリンダ21におけるピストンロッド先端の枢着位置を孔47,47から孔48,48に手動操作で変更することによって、サドル位置調整用油圧シリンダ21に対応する懸吊位置調整用サドル19の移動ストロークをシフトすることができるようになっている。
クロスビーム35に近い側に位置する懸吊位置調整用サドル19について言えば、ピストンロッドの先端を孔47,47に接続した時の移動ストロークが図8に示されるS1の区間、また、ピストンロッドの先端を孔48,48に接続した時の移動ストロークが図8に示されるS2の区間となる。
当然、クロスビーム36に近い側に位置する懸吊位置調整用サドル19についても前記と同様の操作によって移動ストロークのシフトが可能である。
【0065】
懸吊位置調整用スライダ20は懸吊位置調整用サドル19のスリット45と摺嵌する下面構造を備え、懸吊位置調整用サドル19の長手方向に沿って移動自在とされている。懸吊位置調整用スライダ20の下面がスリット45と摺嵌する構造となっているので、懸吊位置調整用サドル19に対して懸吊位置調整用スライダ20が不用意に姿勢を変えて回転することはない。
【0066】
懸吊位置調整用スライダ20を懸吊位置調整用サドル19のスリット45に沿って移動させるためのスライダ位置調整用油圧シリンダ22は、図8に示されるように、懸吊位置調整用サドル19における長手方向の端部位置から外側にオフセットして固設されたステープル49にシリンダボトム側の端部を枢着される一方、ピストンロッドの先端を、このステープル49と同じ側に枢着部をオフセットされた懸吊位置調整用スライダ20の角部に枢着されている。
【0067】
従って、何れの懸吊位置調整用スライダ20も、対応するスライダ位置調整用油圧シリンダ22を短縮させれば懸吊位置調整用サドル19の長手方向中央寄りの位置に移動し、また、これとは逆に、対応するスライダ位置調整用油圧シリンダ22を伸長させれば、懸吊位置調整用サドル19の端部寄りの位置に移動することになる。
【0068】
この実施形態にあっては、更に、各懸吊位置調整用スライダ20の下面側に懸吊開始高さ調整用油圧シリンダ50のシリンダボトム側の端部が固着され、図7に示される通り、この懸吊開始高さ調整用油圧シリンダ50のピストンロッドの先端に、フックあるいはワイヤ等の吊り具3が取り付けられている。
但し、懸吊開始高さ調整用油圧シリンダ50は飽くまでも懸吊作業を開始する際の吊り具3の初期高さを調整するためのものであって、その短縮動作や伸長動作によって重量物を吊り上げたり下ろしたりするためのものではない。
この実施形態にあっては、重量物の上げ下ろしは全ての懸吊開始高さ調整用油圧シリンダ50のポートを閉じて懸吊開始高さ調整用油圧シリンダ50のピストンロッドの突出位置を固定した状態で、支持脚4を構成する下部リンク部材6を同期させて伸縮することで行われる。
【0069】
また、この実施形態のリフト装置1は、図1に示されるように、リフト装置1の格納や搬送に際して利用される4本の補助脚51を備える。
【0070】
このうち2本の補助脚51,51は図9(a)および図10(a)に示されるようにしてクロスビーム35の下面側の左右の両端部に取り付けられ、また、残る2本の補助脚51,51は図9(a)に示されるようにしてクロスビーム36の下面側の左右の両端部に取り付けられている。
【0071】
クロスビーム35の下面に位置する2本の補助脚51,51のうち一方の補助脚51(図10(a)中で左側に位置する補助脚51)は、クロスビーム35の下面に固着された補助脚用ブラケット52にピン53を介して取り付けられ、また、他方の補助脚51(図10(a)中で右側に位置する補助脚51)は、クロスビーム35の下面に固着されたスペーサ54に取り付けられた補助脚用ブラケット52にピン53を介して取り付けられており、何れの補助脚51もピン53を支点として内側に向けて揺動可能とされている。
【0072】
つまり、他方の補助脚51は一方の補助脚51に比べてスペーサ54の厚み相当分だけ短く構成されており、図10(b)に示されるように、一方の補助脚51を倒してから他方の補助脚51を倒すことにより、2本の補助脚51,51を上下方向に重合させてクロスビーム35の下面に格納できるようになっている。
【0073】
このようにしてクロスビーム35側に位置する2本の補助脚51,51を上下方向に重合させてクロスビーム35の下面に格納することにより、これらの補助脚51,51をメインビーム18の長手方向にオフセットして取り付ける場合と比べ、リフト装置1の全長つまりメインビーム18の長手方向に沿った長さの短縮が可能である。
【0074】
補助脚51を揺動させるための脚引き込み用油圧シリンダ55は、そのシリンダボトム側の端部をクロスビーム35の下面側に枢着される一方、ピストンロッドの先端を補助脚51に枢着されている。
従って、補助脚51を立ち上げる際には脚引き込み用油圧シリンダ55を伸長させ、また、補助脚51を格納する際には、脚引き込み用油圧シリンダ55を短縮させることになる。
【0075】
また、クロスビーム35側に位置する各々の補助脚51の基部と補助脚用ブラケット52の各々には図10(b)に示されるようにしてロックピン取付穴56,57が穿設されており、補助脚51を立ち上げた状態で図10(a)に示されるようにしてロックピン取付穴56,57にロックピン58を貫通させることで補助脚51の不用意な倒れ込みが防止されるようになっている。
【0076】
そして、補助脚51を格納する場合には、一方の補助脚51に設けられた係止片59に穿設されたロックピン取付穴とクロスビーム35の下面に固設された係止片60に穿設されたロックピン取付穴とにロックピン58を貫通させ、更に、他方の補助脚51に設けられた係止片61に穿設されたロックピン取付穴と一方の補助脚51に設けられた係止片62に穿設されたロックピン取付穴とにロックピン58を貫通させることにより、左右の補助脚51,51が不用意に揺動してクロスビーム35の下面から離れることを防止する。
【0077】
一方、クロスビーム36の下面側に位置する2本の補助脚51,51は、何れも、図9(a)に示されるように、クロスビーム36の下面に固着された補助脚用ブラケット63にピン64を介して取り付けられており、ピン64を支点としてハウジング設置部39側に向けて揺動可能とされている。
【0078】
クロスビーム36側に位置する補助脚51を揺動させるための脚引き込み用油圧シリンダ65は、そのシリンダボトム側の端部をハウジング設置部39の下面側に枢着される一方、ピストンロッドの先端を補助脚51に枢着されているので、補助脚51を立ち上げる際には脚引き込み用油圧シリンダ65を伸長させ、また、補助脚51を格納する際には脚引き込み用油圧シリンダ65を短縮させるようにする。
【0079】
クロスビーム36側に位置する各々の補助脚51の基部と補助脚用ブラケット63の各々には図9(b)に示されるようにしてロックピン取付穴66,67が穿設されており、補助脚51を立ち上げた状態でロックピン取付穴66,67に図9(a)に示されるようにしてロックピン68を貫通させることで補助脚51の不用意な倒れ込みが防止されるようになっている。
【0080】
そして、補助脚51を格納する場合には、補助脚51に設けられた係止片69に穿設されたロックピン取付穴とハウジング設置部39の下面側に設けられたロックピン取付穴70に図9(b)に示されるようにしてロックピン68を貫通させることにより、左右の補助脚51,51が不用意に揺動してハウジング設置部39の下面側から離れることを防止する。
【0081】
クロスビーム36の下面に位置する2本の補助脚51,51はメインビーム18の長手方向に沿うように倒して格納する構成であるが、メインビーム18の長手方向の端部には突出するハウジング設置部39が設けられており、クロスビーム36の下面に位置する2本の補助脚51,51を倒した状態でも補助脚51,51がハウジング設置部39を超えてメインビーム18の長手方向に突出することはないので、これらの補助脚51,51をメインビーム18の長手方向に沿って倒してもリフト装置1の全長が増大する不都合は生じない。
【0082】
クロスビーム35,36の下面に位置する4本の補助脚51を全て立ち上げた状態ではフレーム2が地面に対して水平な状態となる。
また、図1に示されるように、4本の支持脚4を折り畳んでリフト装置1を格納状態とし、かつ、4本の補助脚51を立ち上げた状態で、4本の支持脚4の下端すなわち接地板17aの下面よりも僅かに下方側に突出するように補助脚51の全長が定められている。
【0083】
次に、この実施形態におけるリフト装置1の運用について簡単に説明する。
【0084】
リフト装置1をトラック71の荷台から降ろす場合には、まず、左右の支持脚屈伸用油圧シリンダ9に油圧を供給して支持脚屈伸用油圧シリンダ9を完全な短縮状態とし、4本の支持脚4を限界まで折り畳んでトラック71の荷台と接地板17aの下面との間のクリアランスを図1に示すようにして確保する。
【0085】
次いで、左右の脚部振り出し用油圧シリンダ42を伸長させて脚部振り出し用リンク38,37を揺動させることによって左右両側の側面リンク2a,2aを外側に振り出し、図6に実線で示されるようにしてフレーム本体2bから側面リンク2a,2aが最も離間した状態とする。
【0086】
この操作により左右両側の側面リンク2a,2aひいては4本の支持脚4が図2に示されるようなトラック71の荷台の横幅を越えて外側に張り出し、4本の支持脚4の伸長動作が許容されることになる。
【0087】
次いで、左右の支持脚屈伸用油圧シリンダ9を同期駆動してピストンロッド25を突出させ、シリンダ27に固着された支持脚屈伸用スライダ10を上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1から離間する方向に移動させることにより、4本の支持脚4の伸長動作を開始する。
【0088】
支持脚屈伸用油圧シリンダ9の突出に伴う支持脚4の伸長動作については既に段落0040〜0044にかけて説明した通りであり、同期制御する必要があるのは左右両側面に位置する都合2つの支持脚屈伸用油圧シリンダ9,9のみであるから、複雑な偏差検出器や制御手段および多数の油圧シリンダを必要としない。
【0089】
また、トラック71の荷台から降ろしたリフト装置1を利用して引き続きクレーン車の旋回胴やブーム等を始めとする重量物の懸吊作業を行なう場合には、補助脚51が邪魔になる可能性があるので、接地板17aの下面が地面に接地してリフト装置1がトラック71の荷台から浮き上がった時点で支持脚屈伸用油圧シリンダ9の突出動作を一旦停止させ、クロスビーム35の下面に位置する2本の補助脚51とクロスビーム36の下面側に位置する2本の補助脚51からロックピン58,68を引き抜いて脚引き込み用油圧シリンダ55,65を短縮させ、これら4本の補助脚51を格納状態としてクロスビーム35の下面やハウジング設置部39の下面に固定しておくようにする。
【0090】
そして、最終的に、支持脚屈伸用スライダ10が上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1から離間する側の移動限界位置に到達した段階で、図3(a)に示されるようにして上部リンク部材5と下部リンク部材6とが一直線上に並び、リフト装置1の立ち上げ作業が完了する。
図3(a)では下部リンク部材6を限界まで伸長させたときの状態について示しているが、リフト装置1の立ち上げ作業が完了した時点では下部リンク部材6は依然として図1および図2に示した格納状態と同様に短縮状態に保持されたままである。
【0091】
このようにしてリフト装置1の立ち上げ作業が完了するとフレーム2がトラック71の荷台から大きく上方に離間するので、リフト装置1を載置していたトラック71の搬出作業や懸吊対象となる重量物を積載した別のトラックをフレーム2の下方に搬入する作業が許容されるようになる。
【0092】
ここで、フレーム2の下方に別のトラックを搬入してクレーン車の旋回胴やブーム等の重量物を懸吊する作業を行なう場合には、まず、リフト装置1を載置していたトラック71をフレーム2の下方位置から搬出し、重量物を載置したトラックをフレーム2の下方に適切に位置決めして停車させ、新たに搬入されたトラックに載置されたクレーン車の旋回胴やブーム等に設けられた吊りボルト等の位置に合わせてリフト装置1側の各懸吊位置調整用スライダ20の位置を調整する。
【0093】
既に述べた通り、フレーム2を構成するメインビーム18の長手方向に沿って懸吊位置調整用スライダ20を移動させる場合には懸吊位置調整用サドル19毎のサドル位置調整用油圧シリンダ21を作動させて懸吊位置調整用サドル19の位置を独立的に調整し、また、メインビーム18の長手方向と直交する水平方向に懸吊位置調整用スライダ20を移動させる場合には、懸吊位置調整用スライダ20毎のスライダ位置調整用油圧シリンダ22を作動させて懸吊位置調整用スライダ20の位置を独立的に調整することになる。
【0094】
更に、搬入されたトラックに載置されたクレーン車の旋回胴やブーム等に設けられた吊りボルトの高さが上下方向に異なる場合にあっては、各懸吊位置調整用スライダ20の下面に固着された懸吊開始高さ調整用油圧シリンダ50を伸縮させることによって、懸吊開始高さ調整用油圧シリンダ50のピストンロッドの先端に取り付けられた吊り具3の上下位置を懸吊対象となる重量物の吊りボルトの位置に合わせて調整することができる。
【0095】
従って、特に、クレーン車の旋回胴やブーム等といったもののように異形状(非対称形状)の重量物の懸吊作業等を行う際に、重量物の形状や吊りボルトの位置に合わせて懸吊位置調整用スライダ20ひいては吊り具3の位置を自由に調整することが可能となり、フレーム2のバランスの確保が容易となる。
【0096】
しかも、フレーム2側の吊り具3の位置を重量物に設けられた吊りボルトの位置に的確に一致させることができるため、重量物にワイヤ等の治具を掛け回してフレーム2側の吊り具3に接続するといった必要もなくなり、特に、懸吊の対象となる長尺のブーム等が治具との接触で不用意に傷付くといった事故が未然に防止される。
【0097】
そして、フックやワイヤ等の吊り具3の各々を懸吊対象となる重量物の吊りボルト等に接続した後、サドル位置調整用油圧シリンダ21とスライダ位置調整用油圧シリンダ22および懸吊開始高さ調整用油圧シリンダ50のポートを閉じ、懸吊位置調整用スライダ20に対する吊り具3の上下の相対位置と懸吊位置調整用サドル19に対する懸吊位置調整用スライダ20の水平方向の相対位置およびメインビーム18に対する懸吊位置調整用サドル19の水平方向の相対位置を固定した状態で、4本のフレーム昇降用油圧シリンダ14を同期させて突出方向に作動させ、各支持脚4を構成する外筒部6aの下端部から内筒部6bを突出させることによって支持脚4の全長を伸ばしてフレーム2を上昇させ、この時点で搬入されているトラックの荷台からクレーン車の旋回胴やブーム等の重量物を吊り下げる。
【0098】
フレーム2を立ち上げた状況下では支持脚4を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6とが鉛直方向に沿って一直線上に並ぶようになっているので、フレーム2や重量物の全ての荷重は上部リンク部材5と下部リンク部材6の軸線に沿った圧縮力としてのみ作用することになり、支持脚屈伸用油圧シリンダ9にはフレーム2や重量物の荷重は作用しない。
つまり、吊り上げの際に支持脚屈伸用油圧シリンダ9に必要とされる出力はリフト装置1の横揺れや振動に抗して上部リンク部材5と下部リンク部材6の姿勢を保持できる程度のものでよく、小径のもので構わない。
よって、第一の水平リンク部材7に支持脚屈伸用油圧シリンダ9を組み込む構造であっても支持脚4の周りのリンク構造が大型化することはなく、支持脚4を折り畳んだ際のフレーム2の小型化、特に、フレーム2の上下方向の厚みの短縮が容易である。
【0099】
更に、クレーン車の旋回胴やブーム等の重量物を改めてクレーン車のボディに取り付ける場合には、旋回胴やブーム等を吊り下げたまま旋回胴やブーム等の搬入に利用したトラックを搬出した後、クレーン車のボディを載置した更に別のトレーラをフレーム2の下方に搬入する。
【0100】
そして、リフト装置1の4本のフレーム昇降用油圧シリンダ14を短縮方向に作動させて各支持脚4を構成する外筒部6aに内筒部6bを突入させ、4本の支持脚4の全長を短くしてフレーム2を下降させることによって、新たに搬入されたトレーラに載置されているクレーン車のボディに旋回胴やブーム等を載せて取り付け作業を行ない、その後、フックやワイヤ等の吊り具3を懸吊対象の重量物から取り外すようにする。
【0101】
以上に述べた通り、支持脚4を構成する上部リンク部材5と下部リンク部材6を屈伸させてフレーム2を立ち上げる構成であるから、フレーム2を立ち上げた状況下でフレーム2よりも上方に邪魔な部品が突出することはなく、上方の作業空間が制限された作業現場、例えば、橋桁の下であっても支障なくフレーム2の立ち上げ作業および旋回胴やブーム等の重量物の積み替えに必要とされる懸吊作業を行うことができる。
【0102】
最後に、作業の終了したリフト装置1を空荷のトラックの荷台に載置する場合の作業について簡単に説明する。
【0103】
トラックの荷台にリフト装置1を載置する場合には、まず、リフト装置1を立ち上げた状態のまま空荷のトラックをフレーム2の下方に搬入し、脚引き込み用油圧シリンダ55,65を伸長させて全ての補助脚51を立ち上げてから、4本のフレーム昇降用油圧シリンダ14を同期させて短縮方向に作動させることにより全ての支持脚4の全長を短縮し、下部リンク部材6の全長を上部リンク部材5と同等の長さに戻す。
【0104】
次いで、左右の支持脚屈伸用油圧シリンダ9を同期駆動してピストンロッド25を縮退させ、シリンダ27に固着された支持脚屈伸用スライダ10を上部リンク部材5と下部リンク部材6との枢着部P1に接近する方向に移動させることにより4本の支持脚4の折り畳み動作を開始させる。
支持脚屈伸用油圧シリンダ9の短縮に伴う支持脚4の折り畳み動作については既に段落0039,0041〜0044にかけて説明した通りであり、同期制御する必要があるのは左右両側面に位置する都合2つの支持脚屈伸用油圧シリンダ9,9のみであるから、複雑な偏差検出器や制御手段および多数の油圧シリンダを必要としない。
【0105】
そして、支持脚4の折り畳み動作に伴ってフレーム2が下降すると、まず、リフト装置1の4本の補助脚51の下面がトラックの荷台に接地し、その後、折り畳み動作の進む支持脚4が地上から引き上げられて、最終的に、各支持脚4に対応して設けられた接地板17aの下面が4本の補助脚51の下端よりも僅かに上方に引き上げられて、図1に示されるように、トラックの荷台と接地板17aの下面との間に上下方向のクリアランスが形成される。
【0106】
次いで、左右の脚部振り出し用油圧シリンダ42を短縮させると、脚部振り出し用リンク38,37が揺動して左右両側の側面リンク2a,2aが内側に振り戻され、図6に二点鎖線で示されるように、フレーム本体2bに側面リンク2aが最も接近した状態となって、側面リンク2aに取り付けられた4本の支持脚4を含むリフト装置1の全幅が、図2に示されるようにして、トラックの荷台の横幅に収まる。
【0107】
既に述べた通り、フレーム2の上下移動に際して水平方向の位置ずれが生じることはなく、フレーム2が鉛直方向にのみ移動することになるので、空荷のトラックをフレーム2の下方に搬入する作業さえ適切に行なっておけば、荷台上の予定位置に的確にリフト装置1を載置することができる。
【0108】
ここでは、一例として、吊り位置調整装置23と吊り具3を利用して旋回胴やブーム等の重量物をフレーム2に固定した状態で支持脚4の全長を伸ばしてフレーム2を上昇させることによって重量物を吊り下げる構成例について述べたが、吊り位置調整装置23に代えて特許文献2に開示されるような吊り下げ機能を有する懸吊装置をフレーム2に実装した場合にあっては、4本の脚4を伸縮させなくても懸吊装置を利用してクレーン車の旋回胴やブーム等の重量物を吊り下げることが可能となる。
従って、そのような構成を適用した場合にあっては、下部リンク部材6に格別の伸縮機能は要求されず、よって、下部リンク部材6を外筒部6aと内筒部6bに分割して構成したり下部リンク部材6にフレーム昇降用油圧シリンダ14を実装したりする必要もない。
また、支持脚4を取り付けた側面リンク2a,2aをフレーム本体2bの側方に振り出すための手段としては、前述した脚部振り出し用リンク37,38を利用した揺動式の振り出し機構に代え、直動形の油圧シリンダをそのまま利用した伸縮型の振り出し機構を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 リフト装置
2 フレーム
2a 側面リンク
2b フレーム本体
3 吊り具
4 支持脚
5 上部リンク部材
6 下部リンク部材
7 第一の水平リンク部材
7a ミゾ形鋼
8 第二の水平リンク部材
9 支持脚屈伸用油圧シリンダ
10 支持脚屈伸用スライダ
11 上部リンク部材用リンク枢着部
12 下部リンク部材用リンク枢着部
13 支持脚屈伸用リンク部材
14 フレーム昇降用油圧シリンダ
15 シリンダ
15a シリンダヘッド側端部
16 ピストンロッド
16a 先端
17 レベルシリンダ
17a 接地板
18 メインビーム
19 懸吊位置調整用サドル
20 懸吊位置調整用スライダ
21 サドル位置調整用油圧シリンダ
22 スライダ位置調整用油圧シリンダ
23 吊り位置調整装置
24 補強リブ
25 ピストンロッド
25a 先端
26 アングル材
27 シリンダ
28,29 矩形状のプレート
30,31 ピン
32,33 ステー
34 パッド
35,36 クロスビーム
37,38 脚部振り出し用リンク
39 ハウジング設置部
40 側面リンクの一方の端部
41 側面リンクのもう一方の端部
42 脚部振り出し用油圧シリンダ
43 送り駒
44 補強ステー
45 スリット
46 固定板
47,48 孔
49 ステープル
50 懸吊開始高さ調整用油圧シリンダ
51 補助脚
52 補助脚用ブラケット
53 ピン
54 スペーサ
55 脚引き込み用油圧シリンダ
56,57 ロックピン取付穴
58 ロックピン
59,60,61,62 係止片
63 補助脚用ブラケット
64 ピン
65 脚引き込み用油圧シリンダ
66,67 ロックピン取付穴
68 ロックピン
69 係止片
70 ロックピン取付穴
71 トラック
A 間隔
B 等しい間隔
C 等しい長さ
D オフセット
P1 枢着部
P2 枢着部
P3 枢着部
P4 枢着部
L1−L1’ フレームの左右の中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を懸吊するフレームと、前記フレームに前記重量物を接続するための吊り具と、前記フレームに設けられて前記重量物とフレームの荷重を支える4本の支持脚とを備えたリフト装置であって、
前記フレームの左右両側面の各々に、水平方向に間隔を置いて、2つの上部リンク部材の一端を前記上部リンク部材の各々が前記フレームの側面に沿った垂直面内で揺動自在となるようにして枢着すると共に、前記上部リンク部材と同等の長さを有する下部リンク部材の一端を、前記各上部リンク部材の他端に、前記垂直面内で前記下部リンク部材が揺動自在となるようにして枢着し、相互に接続された上部リンク部材と下部リンク部材の組によって前記4本の支持脚を構成する一方、
前記フレームの同じ側の側面に位置する一方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材との枢着部と此れと同じ側に位置する他方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材との枢着部を前記間隔に匹敵する長さを有する第一の水平リンク部材で接続し、かつ、前記フレームの同じ側の側面に位置する一方の支持脚を構成する下部リンク部材の他端と此れと同じ側に位置する他方の支持脚を構成する下部リンク部材の他端を前記間隔に匹敵する長さを有する第二の水平リンク部材で接続し、
前記第一の水平リンク部材に、この水平リンク部材に沿って配置された支持脚屈伸用油圧シリンダによって駆動され、当該水平リンクに沿って移動する支持脚屈伸用スライダを設け、
前記フレームの同じ側の側面に位置する一方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材の各々に、上部リンク部材と下部リンク部材との枢着部から等しい間隔を置いて、上部リンク部材用リンク枢着部と下部リンク部材用リンク枢着部を設け、
前記支持脚屈伸用スライダが前記一方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材との枢着部から最も離間した移動限界位置にある状態で前記一方の支持脚を構成する上部リンク部材と下部リンク部材とが一直線上に並ぶようにして、前記上部リンク部材用リンク枢着部と前記支持脚屈伸用スライダとの間、および、前記下部リンク部材用リンク枢着部と前記支持脚屈伸用スライダとの間の各々を、等しい長さを有する支持脚屈伸用リンク部材で接続したことを特徴とするリフト装置。
【請求項2】
前記下部リンク部材の各々が、其の短縮時に前記上部リンク部材と同等の長さとなる伸縮可能なテレスコピック構造を有し、各下部リンク部材に内装されたフレーム昇降用油圧シリンダを駆動源として同期して伸縮するように構成されていることを特徴とした請求項1記載のリフト装置。
【請求項3】
前記フレームの左右の中心線に沿って設けられて前記中心線に沿って移動可能とされた2つの懸吊位置調整用サドルと、
前記懸吊位置調整用サドル上に左右方向移動可能に取り付けられた各懸吊位置調整用サドル毎に2つの懸吊位置調整用スライダと、
前記懸吊位置調整用サドルの各々を独立的に移動させるべく前記懸吊位置調整用サドルの各々に対応して前記中心線上に設置されたサドル位置調整用油圧シリンダと、
前記懸吊位置調整用スライダの各々を移動させるべく前記懸吊位置調整用スライダの各々に対応して前記懸吊位置調整用サドル上に設置されたスライダ位置調整用油圧シリンダとによって構成される吊り位置調整装置を備え、
前記吊り位置調整装置における各懸吊位置調整用スライダの下面側に、前記吊り具が取り付けられていることを特徴とした請求項1または請求項2記載のリフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−86944(P2013−86944A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230613(P2011−230613)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000140719)株式会社加藤製作所 (29)
【Fターム(参考)】