説明

リボンを巻き付けるための方法および装置

【課題】リボンを巻き付けるための新規な方法および対応の装置を提供する。
【解決手段】本発明は、第1の繰り出しスプール(11)から第2の巻き取りスプール(13)へリボン(12)を巻き付けるための方法であって、両スプール(11、13)は、それぞれ駆動部(16、17)によって、所定のリボン引っ張り応力および/または所定の目標リボン速度に応じて、目標回転数および/または目標回転モーメントで駆動され、それぞれの目標回転数および/またはそれぞれの目標回転モーメントが、両スプール(11、13)の巻き付け円周の幾何平均(UMG)に応じて求められる、方法に関する。本発明によると、両スプール(11、13)の巻き付け円周の幾何平均(UMG)は、巻き付けている間連続的に求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のおいて書き部分に記載のリボンを巻き付けるための方法に関する。さらに、本発明は、請求項12のおいて書き部分に記載のリボンを巻き付けるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リボンを巻き付ける際には、リボン速度およびリボンの応力を所定の値になるよう調整または制御するという課題がしばしば生じる。しかし、対応する駆動部の目標回転数または目標回転モーメントは、巻き付け工程の間に、またはリボンを新しく巻き付ける間に、スプールの直径が変化することに起因して変化するため、設定することができない。
【0003】
特許文献1は、第1の繰り出しスプールから第2の巻き取りスプールへリボンを巻き付けるための方法であって、両スプールはそれぞれ、駆動部を介して所定のリボン引っ張り応力および所定の目標リボン速度に応じて、目標回転数および/または目標回転モーメントで駆動される、方法を開示している。特許文献1によると、両スプールそれぞれの、目標回転数および目標回転モーメントを、両スプールの巻き付け円周(Wicklungsumfang)の数理幾何平均(mathematisch-geometrisches Mittel)に応じて求める。この場合、巻き付け円周の幾何平均が一定であることが前提である。特許文献1によると、巻き付け円周の幾何平均を求めるために、両スプールの実際の半径をいったん(einmalig)測定して、そこから巻き付け円周の幾何平均を算出する、ということが提案される。この提案には、両スプールの実際の半径を測定しなくてはならない、という欠点がある。代替的に、特許文献1は、巻き付けをスタートする際に、一方のスプールの既知のスタート時の半径とスタート時に測定された両スプールの回転数比とに基づいて巻き付け円周の幾何平均を求めること、を提案している。この場合、測定を短いタイムスパンで行わなくてはならないので、結果が不正確になるおそれがある。両バリエーションには、巻き付け円周の幾何平均が一定であることが前提であり、よって、巻き付けている間またはリボンを交換する際に生じ得る、厚さおよび長さというリボンパラメータの変化を考慮することができない、という欠点がある。
【特許文献1】独国特許発明第4427780号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような背景のもと、本発明の課題は、リボンを巻き付けるための新規な方法および対応の装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、請求項1に記載のリボンを巻き付けるための方法によって解決される。本発明によると、両スプールの巻き付け円周(Wicklungsumfang)の幾何平均が、巻き付けている間連続的に求められる。
【0006】
本発明による装置は、請求項12に定義されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の好適な構成は、従属請求項および以下の記載から明らかとなる。本発明の実施例を、図面に基づいて詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0008】
以下、図1を参照して本発明を詳細に説明する。
【0009】
図1は、第1のスプール11に巻き取られたリボン12を第2のスプール13に巻き付けるための装置10を示す。第1のスプール11は繰り出しスプールとも呼ばれ、第2のスプール13は巻き取りスプールとも呼ばれる。両スプール11および12は、通常、シャフト14または15を介して、両スプールを駆動するためのモータ16および17に接続されている。モータ16または17の回転数、よってスプール11または13の回転数を、センサ18または19によって検出することができる。センサ18、19は、エンコーダとして構成することができる。エンコーダの替わりに、別のセンサ、たとえばタコメータ、電磁式回転検出器、または渦電流式回転検出器を使用することもできる。図1によると、センサ18を用いて第1の繰り出しスプール11の回転数N11を測定することができ、また、センサ19を用いて第2の巻き取りスプール13の回転数N13を測定することができる。
【0010】
第1の繰り出しスプール11は、複数の半径、すなわち、いわゆる空状態の半径(Leerradius)r11、いわゆるスタート時の半径r11,START、および実際の半径R11によって特徴付けられる。同様に、第2の巻き取りスプール13は、複数の半径、すなわち、いわゆる空の半径r13、スタート時の半径r13,START、および実際の半径R13によって特徴付けられる。スタート時の半径r11,STARTおよびr13,STARTは、巻き付けのスタート時のスプール11、13の半径である。実際の半径R11およびR13は、スプール11、13の、巻き動作の間に変化する半径のことである。リボンの全長が一方のスプール11または13に巻き取られている場合、そのスプールが半径r11、VOLLまたはr13、VOLLとなる一方、他方のスプール13または11は、空の半径r13またはr11となる。
【0011】
ここで、上記の実施形態は別として、本発明では、当然、スプールの回転数を非接触的に検出する(abtasten)ことができる、ということを指摘しておく。この場合、モータおよびスプールは、適切な速度比によって相関させられ(Korrelierung)、その際、回転数センサをたとえばスプールに設けることもできる。
【0012】
リボン12が一方向にのみ巻き付けられる場合、繰り出す側のシャフト14または15のモータ16または17は、ブレーキとして使用することもできる。
【0013】
本発明によれば、図1に図示された装置10によって、第1の繰り出しスプール11に巻き付けられているリボン12は、第2の巻き取りスプール13に巻き付けられることになる。その際、制御または調整装置20は、両スプール11および13の測定された回転数N11およびN13に応じて、かつ、所定の目標リボン速度νBAND,SOLLおよび/または所定のリボン引っ張り応力FBAND,SOLLに応じて、目標回転数および/または目標回転モーメントが、スプール11、13の駆動部16、17用の操作変数(Stellgroesse)21、22として生成される。
【0014】
この場合、本発明によると、目標回転数および/または目標回転モーメントの生成は、両スプール11および13の巻き付け円周の数理幾何平均UMGに応じて行われる。その際、本発明によると、巻き付け円周の幾何平均UMGは、巻き付けている間連続的に求められる、または算出される。巻き付け円周の数理幾何平均UMGは、以下の式によって求められる。
【0015】
【数10】

【0016】
両スプール11、13の巻き付け円周の幾何平均UMGを連続的に求めるためには、両スプール11、13の回転数N11、N13を測定するのに加えて、巻き取りスプール13のスタート時の半径r13,STARTまたは繰り出しスプール11のスタート時の半径r11,STARTを知り、かつ/または測定することが必要である。これらの値から、両スプール11、13の巻き付け円周の幾何平均UMGを、以下の式を用いて算出することができる。式中、U11およびU13は、巻き付けのスタートまたは開始以降の時点tにおける駆動部16、17の計算された回転の回数(Umdrehungen)であり、xwaは、繰り出しスプール11に対する巻き取りスプール13の回転数比である。
【0017】
【数11】

【0018】
スタート時の半径r11,STARTおよびr13,STARTは、以下の式のように互いに換算することができる(実際の半径は、適宜式を変形することによってその都度計算することができる)。
【0019】
【数12】

【0020】
上述したように、両スプール11、13の巻き付け円周の幾何平均UMGを算出するために、巻き取りスプール13のスタート時の半径r13,STARTまたは繰り出しスプール11のスタート時の半径r11,STARTが必要である。巻き取りスプール13のこのスタート時の半径r13,STARTまたは繰り出しスプール11のこのスタート時の半径r11,STARTは、設定するか、または巻き付けている間に測定することによって求めることができる。
【0021】
巻き取りスプール13のスタート時の半径r13,STARTを求める、または計算する際に、リボンの測定速度νBANDが用いられる。このリボン速度νBANDは、実施形態では、センサ24を用いてリボンガイドロール23において測定される。もちろん、リボンの走行速度の他の測定方法、たとえば非接触的にまたは光学的に行う測定方法も考えられ得る。センサ24は、制御または調整装置20に、リボンガイドロール23の回転数N23を提供する。この回転数N23から、リボンガイドロール23の半径r23を設定した状態で、巻き付けられるリボン12のリボン速度νBANDを、よって巻き取りスプール13のスタート時の半径r13,STARTを、以下の式を用いて算出することができる。
【0022】
【数13】

【0023】
代替的に、巻き取りスプールのスタート時の半径r13,STARTを、巻き付けのスタート以降の時点tにおける巻き付けられたリボンの長さLBANDに基づいて測定することができる。この場合、巻き付けをスタートしてから巻き付けられたリボンの長さLBANDは、リボンの走行速度νBANDの積分から計算することができる。この代替形態によると、巻き取りスプール13のスタート時の半径r13,STARTは、以下の両式を用いて計算される。
【0024】
【数14】

【0025】
続いて、上述した方法およびやり方で連続的に求められたスプール11、13の巻き付け円周の幾何平均UMGを用いて、駆動部16、17の目標回転数NSOLLおよび/または目標回転モーメントMSOLLを、以下の両式を用いて求めることができる。その場合、制御または調整装置20によって求められた目標回転数および目標回転モーメントが、制御信号21または22として駆動部16、17に送信される。
【0026】
【数15】

【0027】
本発明によると、さらなる値を算出することができる。たとえば、以下の式を用いて、繰り出しスプール11の半径r11,VOLLを計算することができる。ここで、スプール11は、全リボン12がスプール11に完全に巻き取られると、半径r11,VOLLとなる。
【0028】
【数16】

【0029】
さらに、巻きの全断面積を、スプール11、13両方の巻き断面積A11、A13から、以下の式を用いて算出することができる。
【0030】
【数17】

【0031】
さらに、本発明によると、巻き付けられるリボン12のリボンの厚さDは、以下の式を用いて求めることができる。
【0032】
【数18】

【0033】
この場合、リボン幅によっては、上記式を用いて算出された厚さDが個々の巻き層間に閉じ込められた空気を含んでいる場合がある、ということを考慮しなくてはならない。実際のリボンの公称厚さが既知であるかまたは測定可能である場合、本発明の方法を用いて、閉じ込められた空気の厚さ、または巻き付け工程によるこの厚さの変化を決定することができる。
【0034】
同様に、本発明による方法を用いて、リボンの全長LBAND,GESAMTを、以下の式に基づいて算出することができる。
【0035】
【数19】

【0036】
この場合、両スプール11および13間のリボン12の巻き取られていない行路の長さ(freie Weglaenge)を、上記の式を用いて求められた値に合計することができる。
【0037】
さらに、両スプール11および13の回転数比の変化速度を、以下のように求めることができる。
【0038】
【数20】

【0039】
まず、本発明による、2つのスプール間でリボンを巻き付けるための方法によって、両スプールの駆動部の目標回転数および目標回転モーメントを求めるのに必要な数理幾何平均UMGを連続的に求めることが提案される。これによって、巻き付けている間に、またはリボンを交換する際に生じ得る、リボンの長さおよび厚さに関する可変パラメータを考慮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明による方法を詳細に示すための、リボンを巻き付けるための装置の図である。
【符号の説明】
【0041】
10 装置
11 スプール
12 リボン
13 スプール
14 シャフト
15 シャフト
16 駆動部
17 駆動部
18 センサ
19 センサ
20 制御または調整装置
21 制御信号
22 制御信号
23 リボンガイドロール
24 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の繰り出しスプール(11)から第2の巻き取りスプール(12)へリボン(12)を巻き付けるための方法であって、前記両スプール(11、13)は、駆動部(16、17)によって、所定のリボン引っ張り応力および/または所定の目標リボン速度に応じて、目標回転数および/または目標回転モーメントで駆動され、それぞれの目標回転数および/またはそれぞれの目標回転モーメントが、前記両スプール(11、13)の巻き付け円周の幾何平均(UMG)に応じて求められる、方法において、
前記両スプール(11、13)の巻き付け円周の幾何平均(UMG)は、巻き付けている間連続的に求められることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記両スプール(11、13)の巻き付け円周の幾何平均(UMG)を求めるために、巻き取りスプール(13)のスタート時の半径(r13,START)が設定および/または測定され、さらに、前記両スプール(11、13)の実際の回転数(N11、N13)が測定され、これらの値から、前記両スプール(11、13)の巻き付け円周の幾何平均(UMG)を、以下の式
【数1】

によって算出することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記両スプール(11、13)の巻き付け円周の幾何平均(UMG)を求めるために、繰り出しスプール(11)のスタート時の半径(r11,START)が設定および/または測定され、さらに、前記両スプール(11、13)の実際の回転数(N11、N13)が測定され、これらの値から、前記両スプール(11、13)の巻き付け円周の幾何平均(UMG)を、以下の式
【数2】

によって算出することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記巻き取りスプール(13)のスタート時の半径(r13,START)が設定されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記繰り出しスプール(11)のスタート時の半径(r11,START)が設定されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記巻き取りスプール(13)のスタート時の半径(r13,START)を測定するために、リボン速度(νBAND)が測定され、スタート時の半径(r13,START)は、以下の式
【数3】

によって算出されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
リボン速度(νBAND)を測定するために、リボンガイドロール(23)の回転数(N23)が測定され、リボン速度(νBAND)は、前記リボンガイドロール(23)の半径(r23)を設定した状態で、以下の式
【数4】

によって算出されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記巻き取りスプール(13)のスタート時の半径(r13,START)を測定するために、巻き付けをスタートしてから巻き付けられたリボンの長さ(LBAND)を測定し、スタート時の半径(r13,START)は、以下の式
【数5】

によって算出されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
巻き付けをスタートしてから巻き付けられたリボンの長さ(LBAND)を測定するために、リボンガイドロール(23)の回転数(N23)が測定され、巻き付けられたリボンの長さ(LBAND)は、前記リボンガイドロール(23)の半径(r23)を設定した状態で、以下の式
【数6】

によって算出されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記スプール(11、13)の目標回転数(NSOLL)は、所定の目標リボン速度(νBAND,SOLL)から、以下の式
【数7】

を用いて算出されることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記スプール(11、13)の目標回転モーメント(MSOLL)は、所定のリボン引っ張り応力(FBAND,SOLL)から、以下の式
【数8】

を用いて算出されることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記両スプール(11、13)の回転数比の変化速度は、以下の式
【数9】

によって求められることを特徴とする、請求1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
第1の繰り出しスプール(11)から第2の巻き取りスプール(13)へリボン(12)を巻き付けるための装置であって、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法を実施するための制御または調整装置(20)を特徴とする装置。

【図1】
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