説明

リミッタ回路

【課題】リーケージ量と耐電力の間のトレードオフ関係を緩和できるリミッタ回路を得る。
【解決手段】入力端子1とグランドの間に接続されたPINダイオード回路3と、結合入力端子4a、分岐端子4b及び結合出力端子4cを有し、PINダイオード回路3に結合入力端子4aが接続され、入力端子1から入力される高周波信号を分岐端子4bから分岐する結合回路4と、結合出力端子4cに一端が接続されたキャパシタ5と、キャパシタ5とグランドの間に接続されたPINダイオード回路6と、分岐端子4bから入力される高周波信号の信号レベルに応じた正のバイアス電流をキャパシタ5と出力端子9との間に供給する検波回路7とを備え、PINダイオード回路3は、PINダイオード31と、所要中心周波数において電気長が1/4波長である高周波信号線路32とを有し、PINダイオード回路6は、PINダイオード61を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、不要な高周波信号を低減し、低リーケージと高耐電力を両立するリミッタ回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のリミッタ回路について図6を参照しながら説明する。図6は、従来のリミッタ回路の構成を示す図である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6において、従来のリミッタ回路は、入力端子1から高周波信号を分岐する結合線路91と、入力側のキャパシタ92と、出力側のキャパシタ96との間に高周波信号線路94を挟んで並列に接続されたPINダイオード回路93及び95と、結合線路91の分岐側から入力される高周波信号の信号レベルに応じた直流バイアスを供給する検波回路97とが設けられている。
【0004】
このリミッタ回路では、入力される高周波信号の信号レベルが十分低い場合は、検波回路97から直流バイアスが供給されることなく、PINダイオード93A、95Aは等価的にオープンと見なすことができ、入力信号の大部分は出力端子9へと出力される。
【0005】
一方、入力される信号レベルが十分高い場合は、検波回路97から信号レベルに応じた直流バイアスが供給され、PINダイオード93A、95Aにバイアス電流が流れる。このときPINダイオード93A、95Aは等価的にショートと見なすことができ、入力信号の大部分はグランドにて反射され入力端子1へと戻される。このように、不要な高周波信号を低減するリミッタ回路として動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−6433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のリミッタ回路には、以下のような課題がある。リミッタ回路への入力信号の一部が結合線路91を介して検波回路97へと入力される。検波回路97は入力信号レベルがある閾値以上となると駆動し、正のバイアス電流をPINダイオード93A、95Aに供給する。PINダイオード回路93、95は電流が流れることにより等価的にショートとなり、入力信号はグランドにて反射されることによりリミッタ動作を行う。そこで、従来のリミッタ回路の構成においてリーケージを低くためには、結合線路91の結合量を大きくし、検波回路97への入力信号レベルを大きくする必要がある。
【0008】
しかし、従来のリミッタ回路の構成はPINダイオード回路93、95よりも入力側に高周波信号を分岐するための結合線路91を備えているため、この結合線路91の結合量は入力信号レベルによらずほぼ一定の値である。よって、結合線路91の結合量及びリミッタ回路へ入力される最大入力信号レベルが決定されると、結合線路91を介して検波回路97へ入力される最大の入力信号レベルが決定され、結合線路91の結合量を大きくするほど検波回路97へ入力される最大入力信号レベルは大きくなる。
【0009】
ここで、検波回路97が破壊することなく動作するまでの入力信号レベル(耐電力)は変わらないので、結合量が大きくなるほど、より低いレベルのリミッタ回路への入力信号により検波回路97が破壊される。このように、従来のリミッタ回路で低リーケージ化を行うと、検波回路97の耐電力、つまりはリミッタ回路の耐電力の制約により、最大入力信号レベルが低くなってしまう。このため、従来のリミッタ回路ではリーケージ量と耐電力の間にトレードオフの関係が存在するという問題点があった。
【0010】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、低リーケージ化を行った場合においても、検波回路の耐電力を保ち、リーケージ量と耐電力の間のトレードオフ関係を緩和することができるリミッタ回路を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るリミッタ回路は、入力端子及びグランドの間に接続された第1のPINダイオード回路と、結合入力端子、分岐端子及び結合出力端子を有し、前記第1のPINダイオード回路に前記結合入力端子が直列接続され、前記入力端子から前記結合入力端子を経て入力される高周波信号を前記分岐端子から分岐する結合回路と、前記結合回路の結合出力端子に一端が接続され、出力端子に他端が接続されたキャパシタと、前記キャパシタの他端及びグランドの間に接続された第2のPINダイオード回路と、前記結合回路の分岐端子から入力される高周波信号の信号レベルに応じたバイアス電流を前記キャパシタと前記出力端子との間に供給する検波回路とを備え、前記第1のPINダイオード回路は、前記入力端子及びグランドの間に接続された第1のPINダイオードと、前記入力端子及びグランドの間に接続され、所要中心周波数において電気長が1/4波長であるDCリターン線路とを有し、前記第2のPINダイオード回路は、前記キャパシタの他端及びグランドの間に接続された第2のPINダイオードを有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るリミッタ回路によれば、結合回路の前段等に、入力信号を反射するPINダイオードを接続する構成であるため、入力信号レベルが高くなるにしたがって結合回路の分岐側へ入力信号レベルを低くすることが可能となり、これにより、検波回路の耐電力を高くすることと同等の効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係るリミッタ回路の構成を示す図である。
【図2】リミッタ回路の入力電力と検波回路の入力電力の関係を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係るリミッタ回路の構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態3に係るリミッタ回路の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態4に係るリミッタ回路の構成を示す図である。
【図6】従来のリミッタ回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のリミッタ回路の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0015】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係るリミッタ回路について図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係るリミッタ回路の構成を示す図である。なお、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0016】
図1において、この発明の実施の形態1に係るリミッタ回路は、入力端子1と、キャパシタ2と、PINダイオード回路(第1のPINダイオード回路)3と、結合回路4と、キャパシタ5と、PINダイオード回路(第2のPINダイオード回路)6と、検波回路7と、キャパシタ8と、出力端子9とが設けられている。
【0017】
PINダイオード回路3は、PINダイオード(第1のPINダイオード)31と、高周波信号線路(DCリターン線路)32とが設けられている。また、結合回路4は、結合入力端子4aと、分岐端子4bと、結合出力端子4cとが設けられている。さらに、PINダイオード回路6は、PINダイオード(第2のPINダイオード)61が設けられている。
【0018】
図1において、入力端子1と出力端子9の間に、結合回路4が接続される。また、キャパシタ2は入力端子1と結合回路4の結合入力端子4aとの間に接続され、キャパシタ8は出力端子9と結合回路4の結合出力端子4cとの間に接続される。
【0019】
また、PINダイオード31は、アノードがキャパシタ2と結合回路4の結合入力端子4aの間に接続され、カソードがグランドに接続されている。また、高周波信号線路32は、一端がキャパシタ2と結合回路4の結合入力端子4aの間に接続され、他端がグランドに接続されている。ここで、高周波信号線路32は所要中心周波数において電気長が1/4波長となるように設定される。なお、PINダイオード31と高周波信号線路32の並列回路は自己検波型のPINダイオード回路3を構成する。
【0020】
また、キャパシタ5は、結合回路4の結合出力端子4cとキャパシタ8との間に直列接続されており、検波回路7からの出力バイアス電流がPINダイオード31へ流れることを阻止している。
【0021】
また、PINダイオード回路6を構成するPINダイオード61は、アノードがキャパシタ5とキャパシタ8との間に接続され、カソードがグランドに接続されている。
【0022】
また、検波回路7は、入力側が結合回路4の分岐端子4bに接続されるとともに、出力側がPINダイオード61とキャパシタ8との間に接続され、結合回路4から入力される高周波信号の信号レベルに応じて正のバイアス電流(直流バイアス)を、キャパシタ5とキャパシタ8との間に供給するものである。
【0023】
つぎに、この実施の形態1に係るリミッタ回路の動作について図面を参照しながら説明する。
【0024】
PINダイオード31及び高周波信号線路32からなるPINダイオード回路3は、十分に低い入力信号レベルにおいてはPINダイオード31が等価的にオープンとなるため、スルーと見なすことができる。
【0025】
一方、十分に高い入力信号レベルにおいては、PINダイオード31に電流が流れるため、入力信号レベルが高くなるにしたがってインピーダンスが低くなる。この場合、PINダイオード31は等価的にショートと見なすことができ、入力される信号はグランドにより反射され入力端子1側へ戻される。この反射量は、入力信号レベルが高くなるにしたがって大きくなる。
【0026】
また、検波回路7の出力バイアス電流が供給されるPINダイオード回路6は、十分に低い入力信号レベルにおいては検波回路7からバイアス電流が出力されないため、PINダイオード61は等価的にオープンとなるため、PINダイオード回路6はスルーと見なすことができる。
【0027】
一方、十分に高い入力信号レベルにおいては、結合回路4を介して入力された高周波信号によって検波回路7が駆動し、この検波回路7から出力されるバイアス電流によってPINダイオード61に電流が流れ、インピーダンスが低くなりPINダイオード回路6に入力される信号はグランドにより反射され入力端子1側へ戻される。このバイアス電流は、検波回路7へ入力される信号レベルが高くなるにしたがって大きくなるため、反射量は入力信号レベルが高くなるにしたがって大きくなる。
【0028】
本実施の形態1に係るリミッタ回路において、入力端子1から入力される高周波信号の信号レベルが十分低い場合は、検波回路7から正のバイアス電流は供給されず、かつPINダイオード回路3、6にも電流が流れないため、PINダイオード回路3及び6の両者は等価的にスルーと見なせる。よって、入力される信号の大部分は出力端子9へ出力される。
【0029】
一方、入力端子1から入力される高周波信号の信号レベルが十分に高い場合は、前段のPINダイオード31とPINダイオード61に電流が流れる。これにより、PINダイオード31及び61の両者は等価的にショートとなり、それぞれのグランドにおいて入力信号は反射される。よって、入力信号の大部分は入力端子1側へ戻されることになり、このようにして本リミッタ回路は2つのPINダイオード31及び61に入力信号レベルに応じたバイアス電流が流れることにより、不要な高周波信号を低減するリミッタ回路として動作する。
【0030】
ここで、本実施の形態1に係るリミッタ回路の構成では、結合回路4よりも入力端子1側にPINダイオード回路3が接続されているために、入力信号の一部はこのダイオード回路3で反射される。このため、後段の結合回路4に入力される信号レベルは、入力信号よりも低くなり、検波回路7への入力信号レベルも低減される。さらに、上記効果は入力信号レベルが高いほど顕著になるため、検波回路7の耐電力を高くすることと同等の効果を得ることが可能となる。
【0031】
図2は、リミッタ回路の入力電力と検波回路の入力電力の関係を示す図である。
【0032】
同図では、従来のリミッタ回路と、本発明(実施の形態1−4)のリミッタ回路の入力電力の計算例を示している。従来のリミッタ回路の場合、検波回路への入力電力はリミッタ回路への入力電力レベルにほぼ比例していることが分かる。一方、本発明のリミッタ回路では、リミッタ回路への入力電力が高くなるほど、検波回路への入力電力が、従来のリミッタ回路と比較し、低減されていることが分かる。ここで、同図の例では、従来のリミッタ回路の最大入力電力が、検波回路の最大許容入力電力によって約27dBmまでに制限されているのに対して、本発明のリミッタ回路では最大入力電力を40dBm以上とすることができる。従って、結合量を大きくしても最大入力電力を高くすることができるため、低いリーケージと高い入力電力(入力信号レベル)を両立することが可能となる。
【0033】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係るリミッタ回路について図3を参照しながら説明する。図3は、この発明の実施の形態2に係るリミッタ回路の構成を示す図である。
【0034】
図3において、ダイオード31及び高周波信号線路32からなるPINダイオード回路3が、結合回路4の結合入力端子4aと結合出力端子4cの間の主線路の任意の位置に接続されている。また、PINダイオード回路6が、キャパシタ5と検波回路7の出力端子の接続点と、キャパシタ8の間に接続されている。その他の構成は、上記の実施の形態1と同様である。
【0035】
つぎに、この実施の形態2に係るリミッタ回路の動作について図面を参照しながら説明する。
【0036】
本実施の形態2に係るリミッタ回路において、入力端子1から入力される高周波信号の信号レベルが十分低い場合は、検波回路7から正のバイアス電流は供給されず、かつPINダイオード31、61にも電流が流れないため、PINダイオード回路3及び6は等価的にスルーと見なせる。よって、入力される信号の大部分は出力端子9へ出力される。
【0037】
一方、入力端子1から入力される高周波信号の信号レベルが十分に高い場合は、PINダイオード31及び61に電流が流れる。これにより、PINダイオード回路3及び6の両者は等価的にショートとなり、それぞれのグランドにおいて入力信号は反射される。よって、入力信号の大部分は入力端子1側へ戻されることになり、このようにして本リミッタ回路は2つのPINダイオード31及び61に入力信号レベルに応じたバイアス電流が流れることにより、不要な高周波信号を低減するリミッタ回路として動作する。
【0038】
本実施の形態2に係るリミッタ回路の構成では、上記の実施の形態1の効果と同様に、入力信号の一部は入力端子1側のPINダイオード回路3で反射され、後段の結合回路4に入力される信号レベルは、入力信号よりも低くなり、検波回路7への入力電力が低減される効果がある。
【0039】
ここで、本実施の形態2に係るリミッタ回路の構成では、結合回路4の結合入力端子4aと結合出力端子4cの間にPINダイオード回路3が接続されている。このPINダイオード回路3のPINダイオード31に電流が流れると、PINダイオード31は等価的にスルーと見なせ、PINダイオード回路3はショートと見なせる。この場合、結合回路4において、PINダイオード31の接続部よりも結合出力端子4c側では結合の影響がなくなり、結合回路4全体の電気長が短くなる。これにより結合量が変化し、結合回路4の分岐端子4b側への電力が低減される効果がある。
【0040】
このように実施の形態2によれば、PINダイオード回路3による反射の効果だけでなく、入力信号レベルに応じて結合回路4の電気長をも変化させることが可能であるため、上記の実施の形態1による検波回路7への入力信号レベルを信号レベルが高くなるにしたがって低くすることができる効果に加えて、結合回路4の結合入力端子4aと結合出力端子4cの間に接続するPINダイオード回路3の位置により、検波回路7への入力信号レベルを調整することが可能となる。
【0041】
なお、上述した実施の形態1及び2では、DCリターン線路として高周波信号線路32を用いたものについて説明したが、高周波信号線路32の代わりに、インダクタや、抵抗で構成した場合でも同等の効果を得ることができる。
【0042】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係るリミッタ回路について図4を参照しながら説明する。図4は、この発明の実施の形態3に係るリミッタ回路の構成を示す図である。
【0043】
図4において、入力端子1及び出力端子9の間に結合回路4が接続される。また、キャパシタ2は入力端子1と結合回路4の結合入力端子4aとの間に接続され、キャパシタ8は出力端子9と結合回路4の結合出力端子4cとの間に接続される。
【0044】
また、PINダイオード31は、アノードがキャパシタ2と結合回路4の結合入力端子4aとの間に接続され、カソードがグランドに接続されている。また、PINダイオード61は、アノードが結合回路4の結合出力端子4cとキャパシタ8との間に接続され、カソードがグランドに接続されている。
【0045】
また、検波回路7は、入力側が結合回路4の分岐端子4bに接続されるとともに、出力側がキャパシタ8と結合回路4の結合出力端子4cとの間に接続され、結合回路4から入力される高周波信号の信号レベルに応じて正のバイアス電流を、キャパシタ2とキャパシタ8との間に供給するものである。
【0046】
つぎに、この実施の形態3に係るリミッタ回路の動作について図面を参照しながら説明する。
【0047】
本実施の形態3に係るリミッタ回路において、PINダイオード31及び61はともに検波回路7から供給される正のバイアス電流によってインピーダンスが変化する。入力端子1から入力される高周波信号の信号レベルが十分低い場合は、検波回路7から正のバイアス電流は供給されず、PINダイオード31及び61の両者は等価的にオープンと見なせる。よって、PINダイオード回路3及び6はスルーと見なすことができ、入力される信号の大部分は出力端子9へ出力される。
【0048】
一方、入力端子1から入力される高周波信号の信号レベルが十分に高い場合は、検波回路7から出力される正のバイアス電流によりPINダイオード31及び61に電流が流れ、等価的にスルーとなる。これにより、PINダイオード31及び61はショートと見なすことができる。よって、それぞれのグランドにおいて入力信号は反射される。従って、入力信号の大部分は入力端子1側へ戻されることになり、このようにして本リミッタ回路は2つのPINダイオード31及び61には入力信号レベルに応じたバイアス電流が流れることにより、不要な高周波信号を低減するリミッタ回路として動作する。
【0049】
ここで、本実施の形態3に係るリミッタ回路では、入力端子1側に近いPINダイオード31は結合回路4よりも入力端子1側に接続されている。このPINダイオード31は、高周波信号が入力されたときに瞬時的にスルーとなるため、入力信号の一部は反射され入力端子1側へ戻されることになる。このため、後段の結合回路4に入力される信号レベルは、入力信号よりも低くなり、検波回路7への入力電力も低減される。さらに、上記効果は入力信号レベルが高くなるにしたがって顕著になるため、検波回路7の耐電力を高くすることと同等の効果を得ることが可能となる。
【0050】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係るリミッタ回路について図5を参照しながら説明する。図5は、この発明の実施の形態4に係るリミッタ回路の構成を示す図である。
【0051】
図5において、ダイオード31からなるPINダイオード回路3が、結合回路4の結合入力端子4aと結合出力端子4cの間の主線路の任意の位置に接続されている。また、PINダイオード回路6が、結合回路4の結合出力端子4cと検波回路7の出力端子の接続点と、キャパシタ8の間に接続されている。その他の構成は、上記の実施の形態3と同様である。
【0052】
つぎに、この実施の形態4に係るリミッタ回路の動作について図面を参照しながら説明する。
【0053】
入力端子1から入力される高周波信号の信号レベルが十分低い場合は、検波回路7から正のバイアス電流は供給されず、PINダイオード31及び61は等価的にオープンと見なせる。よって、PINダイオード回路3及び6はスルーと見なすことができ、入力される信号の大部分は出力端子9へ出力される。
【0054】
一方、入力端子1から入力される高周波信号の信号レベルが十分に高い場合は、検波回路7から出力される正のバイアス電流によりPINダイオード31及び61に電流が流れる。これにより、PINダイオード31及び61は等価的にスルーとなり、PINダイオード回路3及び6はショートと見なすことができる。よって、それぞれのグランドにおいて入力信号は反射されるため、入力信号の大部分は入力端子1側へ戻される。このようにして本リミッタ回路は、2つのPINダイオード31及び61に入力信号レベルに応じたバイアス電流が流れることにより、不要な高周波信号を低減するリミッタ回路として動作する。
【0055】
ここで、本実施の形態4に係るリミッタ回路の構成では、上記の実施の形態3の効果と同様に、入力信号の一部はPINダイオード回路3で反射され、後段の結合回路4に入力される信号レベルは、入力信号よりも低くなり、検波回路7への入力電力が低減される効果がある。
【0056】
さらに、本実施の形態4に係るリミッタ回路の構成では、結合回路4の結合入力端子4aと結合出力端子4cの間にPINダイオード回路3が接続されている。このPINダイオード回路3のPINダイオード31に電流が流れると、PINダイオード31は等価的にスルーと見なせ、PINダイオード回路3はショートと見なせることになる。この場合、結合回路4において、PINダイオード31の接続部よりも結合出力端子4c側では結合の影響がなくなり、結合回路4全体の電気長が短くなる。これにより結合量が変化し、結合回路4の分岐端子4b側への入力信号レベルが低減される効果がある。
【0057】
このように実施の形態4によれば、PINダイオード回路3による反射の効果だけでなく、入力信号レベルに応じて結合回路4の電気長をも変化させることが可能であるため、上記の実施の形態3による検波回路7への入力電力を信号レベルが高くなるにしたがって低くすることができる効果に加えて、結合回路4の結合入力端子4aと結合出力端子4cの間に接続するPINダイオード回路3の位置により、検波回路7への入力信号レベルを調整することが可能となる。
【0058】
なお、上述した実施の形態1−4では、PINダイオード31、61の使用を説明したが、PINダイオードの代わりに、ショットキーダイオードや、電界効果トランジスタでも同等の効果を得ることができる。
【0059】
また、上述した実施の形態1−4では、入力信号を分岐するための結合回路4に、ディバイダや、スプリッタ等の信号の一部を取り出す回路を用いた場合でも同等の効果を得ることができる。
【0060】
また、上述した実施の形態1−4では、PINダイオード回路3は、PINダイオード31に並列接続された1つ又は複数のPINダイオードをさらに含んでも良い。また、PINダイオード回路6は、PINダイオード61に並列接続された1つ又は複数のPINダイオードをさらに含んでも良い。
【0061】
また、上述した実施の形態1−4では、PINダイオード31、61は、カソードが入出力端子間の線路に接続され、アノードがグランドに接続され、検波回路7は、結合回路4の分岐端子4bから入力される高周波信号の信号レベルに応じた負のバイアス電流を供給しても良い。
【0062】
また、上述した実施の形態1−4では、結合回路4の分岐端子4bと検波回路7との間に、検波回路7への入力信号に対して、例えば、PINダイオード回路3のような非線形な通過特性を示す回路を接続しても良い。
【0063】
さらに、上述した実施の形態1−4や、上述した変形例のいずれかのリミッタ回路のうち、同一のリミッタ回路もしくは異なるリミッタ回路の組合せで各リミッタ回路を縦列接続しても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 入力端子、2 キャパシタ、3 PINダイオード回路、4 結合回路、4a 結合入力端子、4b 分岐端子、4c 結合出力端子、5 キャパシタ、6 PINダイオード回路、7 検波回路、8 キャパシタ、9 出力端子、31 PINダイオード、32 高周波信号線路、61 PINダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子及びグランドの間に接続された第1のPINダイオード回路と、
結合入力端子、分岐端子及び結合出力端子を有し、前記第1のPINダイオード回路に前記結合入力端子が直列接続され、前記入力端子から前記結合入力端子を経て入力される高周波信号を前記分岐端子から分岐する結合回路と、
前記結合回路の結合出力端子に一端が接続され、出力端子に他端が接続されたキャパシタと、
前記キャパシタの他端及びグランドの間に接続された第2のPINダイオード回路と、
前記結合回路の分岐端子から入力される高周波信号の信号レベルに応じたバイアス電流を前記キャパシタと前記出力端子との間に供給する検波回路とを備え、
前記第1のPINダイオード回路は、
前記入力端子及びグランドの間に接続された第1のPINダイオードと、
前記入力端子及びグランドの間に接続され、所要中心周波数において電気長が1/4波長であるDCリターン線路とを有し、
前記第2のPINダイオード回路は、
前記キャパシタの他端及びグランドの間に接続された第2のPINダイオードを有する
ことを特徴とするリミッタ回路。
【請求項2】
結合入力端子、分岐端子及び結合出力端子を有し、入力端子に前記結合入力端子が直列接続され、前記入力端子から前記結合入力端子を経て入力される高周波信号を前記分岐端子から分岐する結合回路と、
前記結合回路の結合入力端子及び結合出力端子の間とグランドとの間に接続された第1のPINダイオード回路と、
前記結合回路の結合出力端子に一端が接続され、出力端子に他端が接続されたキャパシタと、
前記キャパシタの他端及びグランドの間に接続された第2のPINダイオード回路と、
前記結合回路の分岐端子から入力される高周波信号の信号レベルに応じたバイアス電流を前記キャパシタと前記出力端子との間に供給する検波回路とを備え、
前記第1のPINダイオード回路は、
前記結合回路の結合入力端子及び結合出力端子の間とグランドとの間に接続された第1のPINダイオードと、
前記結合回路の結合入力端子及び結合出力端子の間とグランドとの間に接続され、所要中心周波数において電気長が1/4波長であるDCリターン線路とを有し、
前記第2のPINダイオード回路は、
前記キャパシタの他端及びグランドの間に接続された第2のPINダイオードを有する
ことを特徴とするリミッタ回路。
【請求項3】
入力端子及びグランドの間に接続された第1のPINダイオード回路と、
結合入力端子、分岐端子及び結合出力端子を有し、前記第1のPINダイオード回路に前記結合入力端子が直列接続され、前記入力端子から前記結合入力端子を経て入力される高周波信号を前記分岐端子から分岐する結合回路と、
前記結合回路の結合出力端子及び出力端子の間とグランドとの間に接続された第2のPINダイオード回路と、
前記結合回路の分岐端子から入力される高周波信号の信号レベルに応じたバイアス電流を前記入力端子と前記出力端子との間に供給する検波回路とを備え、
前記第1のPINダイオード回路は、
前記入力端子及びグランドの間に接続された第1のPINダイオードを有し、
前記第2のPINダイオード回路は、
前記結合回路の結合出力端子及び出力端子の間とグランドとの間に接続された第2のPINダイオードを有する
ことを特徴とするリミッタ回路。
【請求項4】
結合入力端子、分岐端子及び結合出力端子を有し、入力端子に前記結合入力端子が直列接続され、前記入力端子から前記結合入力端子を経て入力される高周波信号を前記分岐端子から分岐する結合回路と、
前記結合回路の結合入力端子及び結合出力端子の間とグランドとの間に接続された第1のPINダイオード回路と、
前記結合回路の結合出力端子及び出力端子の間とグランドとの間に接続された第2のPINダイオード回路と、
前記結合回路の分岐端子から入力される高周波信号の信号レベルに応じたバイアス電流を前記入力端子と前記出力端子との間に供給する検波回路とを備え、
前記第1のPINダイオード回路は、
前記結合回路の結合入力端子及び結合出力端子の間とグランドとの間に接続された第1のPINダイオードを有し、
前記第2のPINダイオード回路は、
前記結合回路の結合出力端子及び出力端子の間とグランドとの間に接続された第2のPINダイオードを有する
ことを特徴とするリミッタ回路。
【請求項5】
前記第1のPINダイオード回路は、
前記第1のPINダイオードに並列接続された第3のPINダイオードをさらに有する
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のリミッタ回路。
【請求項6】
前記第2のPINダイオード回路は、
前記第2のPINダイオードに並列接続された第4のPINダイオードをさらに有する
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載のリミッタ回路。
【請求項7】
前記第1及び第2のPINダイオードは、アノードが入出力端子間の線路に接続され、カソードがグランドに接続され、
前記検波回路は、前記結合回路の分岐端子から入力される高周波信号の信号レベルに応じた正のバイアス電流を供給する
ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載のリミッタ回路。
【請求項8】
前記第1及び第2のPINダイオードは、カソードが入出力端子間の線路に接続され、アノードがグランドに接続され、
前記検波回路は、前記結合回路の分岐端子から入力される高周波信号の信号レベルに応じた負のバイアス電流を供給する
ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載のリミッタ回路。
【請求項9】
前記結合回路の分岐端子と前記検波回路との間に、前記検波回路への入力信号に対して、非線形な通過特性を示す回路が接続された
ことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかに記載のリミッタ回路。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれかに記載のリミッタ回路のうち、同一のリミッタ回路もしくは異なるリミッタ回路の組合せで各リミッタ回路が縦列接続された
ことを特徴とするリミッタ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−129722(P2012−129722A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278283(P2010−278283)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】