説明

リム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造

【課題】 ボルト以外の構造でサイドリングの回り止めをはかったリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造の提供。
【解決手段】(1)ホイール本体11と、ホイール本体とは別体に構成されてホイール本体に装着されるサイドリング12と、ホイール本体とサイドリングの何れか一方に設けられたパッキン装着溝13と、パッキン装着溝に装着されるパッキン14と、サイドリングのホイール軸方向外側に設けられてサイドリングをホイール本体に対してホイール軸方向に固定するロックリング15と、サイドリングとホイール本体に設けられたホイール軸方向に延びる歯と溝を有し、サイドリングに設けられた歯とホイール本体に設けられた歯がホイール周方向に互いに噛合する、セレーション16と、を備えたリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造10。
(2) パッキン装着溝13がロックリング部位15よりホイール軸方向内側に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リムとディスクとを含むホイール本体とホイール本体に対して着脱可能とされたサイドリングとを有するリム分割式ホイールの、サイドリング回り止め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリム分割式ホイールは、特開2004−17727号公報に開示されているように、あるいは公報開示のものではないが図5に示すように、ホイール本体11と、ホイール本体11とは別体に構成されてホイール本体11に装着されるサイドリング12と、ホイール本体11とサイドリング12の何れか一方に設けられたパッキン装着溝13と、パッキン装着溝13に装着されるパッキン14と、タイヤエア圧がかかった時のサイドリング12のホイール本体11からの軸方向抜け外れを防止するためにホイール本体11とサイドリング12に周方向に間欠的に形成されたロックリブ部21、22と、を備えている。サイドリング12装着時には、サイドリング12のロックリブ部22をホイール本体11のロックリブ部21間の溝を通してロックリブ部21を通過させ、通過後サイドリング12を回転させてサイドリング12のロックリブ部22をホイール本体11のロックリブ部21に軸方向に係合させ、サイドリング12をホイール本体11から軸方向に抜けないようにする。
サイドリング12に車両制動・駆動時などにタイヤ20から回転力がかかった時にサイドリング12がタイヤ本体11に対して回転または周方向位置ずれを生じてサイドリング12のロックリブ部22とホイール本体11のロックリブ部21との軸方向で係合が外れてサイドリング12がタイヤ本体11から軸方向に抜け外れるのを防止するために、サイドリング回り止め構造が設けられる。
サイドリング回り止め構造として一般的に考えられる構造は、図5に示すように、ボルト23によるサイドリング回り止め構造である。ボルト23によるサイドリング回り止め構造は、サイドリング12のロックリブ部22とホイール本体11のロックリブ部21との係合面部位において、ボルト23をホイール本体内周側からホイール本体11に形成したねじ穴24にねじ込みホイール本体11を貫通させて半径方向外方に延ばし、サイドリング12に形成したタップ穴25に係合させる構造である。ねじ穴24のシールはボルト頭部とホイール本体内面との間にパッキン26を設けてそれによってシールする。
【特許文献1】特開2004−17727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、図5のサイドリング回り止め構造を作製して試験してみたところ、図5の、ボルトによるサイドリング回り止め構造には、つぎの課題があることがわかった。
制動・駆動時にボルト23およびタップ穴25の変形が観られた。これらの変形により、通常走行時のエア漏れ(ボルト変形によりパッキン26のシール性が低下して生じるエア漏れ)、ランフラット走行時のサイドリング脱落(ランフラット走行時、大回転荷重がかかりボルト先端が折損してサイドリングが回転しロックリブが解除されてサイドリングが軸方向に移動して脱落)等が懸念される。
【0004】
本発明の第1の目的は、ボルト以外の構造でサイドリングの回り止めをはかったリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造を提供することにある。
本発明の第2の目的は、サイドリングのホイール本体に対する軸方向ロックをロックリブ以外の構造で行ったリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明は、つぎの通りである。
(1) ホイール本体と、
ホイール本体とは別体に構成されてホイール本体に装着されるサイドリングと、
ホイール本体とサイドリングの何れか一方に設けられたパッキン装着溝と、
パッキン装着溝に装着されるパッキンと、
サイドリングのホイール軸方向外側に設けられてサイドリングをホイール本体に対してホイール軸方向に固定するロックリングと、
サイドリングとホイール本体に設けられたホイール軸方向に延びる歯と溝を有し、サイドリングに設けられた歯とホイール本体に設けられた歯がホイール周方向に互いに噛合する、セレーションと、
を備えたリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造。
(2) 前記パッキン装着溝がロックリング部位よりホイール軸方向内側に設けられている(1)記載のリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造。
【発明の効果】
【0006】
上記(1)のリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造によれば、サイドリングとホイール本体に設けられたホイール軸方向に延びる歯と溝を有し、サイドリングに設けられた歯とホイール本体に設けられた歯がホイール周方向に互いに噛合する、セレーションを備えているので、図5のボルトによるサイドリング回り止め構造を、本発明ではセレーションによるサイドリング回り止め構造に変えることができる。これによって、ボルト構造に存在していたボルトの変形、それによる通常走行時のエア漏れ、ランフラット走行時のサイドリング脱落がなくなる。
また、サイドリングのホイール軸方向外側に設けられてサイドリングをホイール本体に対してホイール軸方向に固定するロックリングを備えているので、図5のロックリブ構造によるサイドリングのホイール本体に対する軸方向ロックを、本発明ではロックリングによるサイドリングのホイール本体に対する軸方向ロックに変えることができる。これによって、ロックリブ構造が本質的にもっていた、サイドリングが回転した際のサイドリングのホイール本体からの軸方向抜け外れを、無くすことができる。
上記(2)のリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造によれば、パッキン装着溝がロックリング部位よりホイール軸方向内側に設けられているので、外部からの泥水、塵埃、飛び石等の外乱によるパッキンへの悪影響がロックリングによって抑えられ、シールの信頼性を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造を図1〜図4を参照して説明する。
図1、図2は本発明の実施例1を示し、図3は本発明の実施例2を示し、図4は本発明の実施例1と実施例2に共通に適用可能なセレーションの正面構成を示す。
本発明の実施例1、実施例2に共通または類似な構造部分には、本発明の実施例1、実施例2にわたって同じ符号を付してある。
【0008】
まず、本発明の実施例1、実施例2に共通または類似な構造部分の構成、作用・効果を、図1、図2、図4を参照して説明する。
本発明のリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造10は、乗用車、バス、トラックを含むリム分割式ホイールとした場合の自動車用ホイールのサイドリング回り止め構造である。
本発明のリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造10は、ホイール本体11と、ホイール本体11とは別体に構成されてホイール本体11に着脱可能に装着されるサイドリング12と、ホイール本体11とサイドリング12の何れか一方(図示例ではホイール本体11)に設けられたパッキン装着溝13と、パッキン装着溝13に装着されるパッキン14と、サイドリング12のホイール軸方向外側に設けられてサイドリング12をホイール本体11に対してホイール軸方向に固定するロックリング15(周方向に1ヵ所切れ目のある金属製リング)と、セレーション16と、からなる。
【0009】
サイドリング12は、ホイール軸方向においてサイドリング12が設けられる側の、リムフランジ部とリムビードシート部を構成する部材である。サイドリング12は、サイドリング以外の部分のリムとディスクとからなるホイール本体11とは別体構成の部材で、タイヤ20(ランフラットホイールの場合は、タイヤとランフラット中子)をホイール本体11に装着後、ホイール本体11に装着され、ロックリング15をホイール本体11に嵌めることにより、ホイール軸方向へホイール本体11に拘束される。サイドリング12は、ホイール周方向にはセレーション16によってホイール本体11に拘束される。
パッキン14は、たとえば、ゴムパッキンからなる。パッキンはOリング等からなる。ただし、パッキンはOリングに限るものではなく、断面が円形以外のリングであってもよい。
【0010】
セレーション16は、サイドリング12とホイール本体11の各々に設けられたホイール軸方向に直線状に延びる歯16aと溝16bを有する。サイドリング12に設けられた歯16aとホイール本体11に設けられた歯16aは、ホイール周方向に互いに噛合している。セレーション16部位とパッキン装着溝13部位とはホイール軸方向にオフセットしており、パッキン14はセレーション16部位からホイール軸方向に離れている。
セレーション16の、サイドリング12とホイール本体11の一方の部材の歯16aの先端面ととサイドリング12とホイール本体11の他方の部材の溝16bの溝底面との間には隙間が設けられているが、サイドリング12とホイール本体11の一方の部材の歯16aの周方向側面とサイドリング12とホイール本体11の他方の部材の溝16bの周方向溝側面とは、隙間無く、またはほとんど隙間無く、接触している。これによって、サイドリング12とホイール本体11とは、軸方向には互いに摺動可能に、かつ周方向には隙間無く、またはほとんど隙間無く、噛合している。
【0011】
ロックリング15は、ホイール本体11に形成されたホイール半径方向外方に突出する突起17によって、ホイール本体11からの軸方向抜け外れを止められている。
また、パッキン装着溝13はロックリング15が装着される部位よりもホイール軸方向内側に設けられている。
組み付け順序は、パッキン14をパッキン装着溝13に装着しておき、ついでサイドリング12をホイール本体11に装着してサイドリング12とホイール本体11のセレーション16を噛合させ、最後にロックリング15を突起17のホイール軸方向内側に装着する。
【0012】
本発明の実施例1、2に共通する部分の作用・効果は、つぎの通りである。
リム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造10が、サイドリング12とホイール本体11に設けられたホイール軸方向に延びる歯16aと溝16bを有し、サイドリング12に設けられた歯16aとホイール本体11に設けられた歯16aがホイール周方向に互いに噛合する、セレーション16を備えているので、図5のボルト23によるサイドリング回り止め構造を、本発明ではセレーション16によるサイドリング回り止め構造に変えることができる。これによって、ボルト構造に存在していたボルト23の変形、それによる通常走行時のエア漏れ、ランフラット走行時のサイドリング脱落がなくなる。
【0013】
また、サイドリング12のホイール軸方向外側に設けられてサイドリング12をホイール本体11に対してホイール軸方向に固定するロックリング15を備えているので、図5のロックリブ構造21、22によるサイドリングのホイール本体に対する軸方向ロックを、本発明ではロックリング15によるサイドリング12のホイール本体11に対する軸方向ロックに変えることができる。これによって、ロックリブ構造21、22が本質的にもっていた、サイドリングが回転した際のサイドリングのホイール本体からの軸方向抜け外れを、無くすことができる。
【0014】
また、パッキン装着溝13はロックリング15が装着される部位よりもホイール軸方向内側に設けられているので、外部からの泥水、塵埃、飛び石等の外乱によるパッキンへの悪影響を抑え、シールの信頼性を向上することができる。
【0015】
つぎに、本発明の各実施例に特有な構成、作用・効果を説明する。
〔実施例1〕−−−図1、図2、図4
本発明の実施例1では、図1、図2、図4に示すように、ホイール本体11のリムに、ホイール軸方向外側端から内側に向かって順に、突起17、ロックリング15の装着部、セレーション16、セレーションが切られていない部分18、パッキン装着溝13、テーパ部19が形成されており、サイドリング12に、ホイール軸方向外側端から内側に向かって順に、セレーション16、ホイール本体11のセレーションが切られていない部分18に半径方向に対向する部分、ホイール本体11のパッキン装着溝13に半径方向に対向する部分、ホイール本体11のテーパ部19に半径方向に対向する分が、形成されている。
サイドリング12のセレーション16の歯16aの内径は突起17の外径より小径である。サイドリング12をホイール本体11の外周にホイール軸方向に装着する時に、サイドリング12のセレーション16の歯16aが突起17を通過できるように、突起17には、サイドリング12のセレーション16の歯16aを軸方向に通過させる溝17aがホイール周方向に間欠的に(サイドリング12のセレーション16の歯16aの間欠形成に合わせて)形成されている。
【0016】
本発明の実施例1の作用・効果については、突起17に、サイドリング12のセレーション16の歯16aを軸方向に通過させる溝17aが形成されているので、サイドリング12にセレーション16を形成したにもかかわらず、突起形成部位でのホイール本体11の内径を小さくする必要がなく、リム内径部位に大きな空間を確保でき、ブレーキドラム設置などにとって都合がよい。
【0017】
〔実施例2〕−−−図3、図4
本発明の実施例2では、図3、図4に示すように、ホイール本体11のリムに、ホイール軸方向外側端から内側に向かって順に、突起17、ロックリング15の装着部、パッキン装着溝13、セレーション16が形成されており、サイドリング12に、ホイール軸方向外側端から内側に向かって順に、ホイール本体11のパッキン装着溝13に半径方向に対向する部分、セレーション16が、形成されている。
サイドリング12のセレーション16の歯16aの内径は突起17の外径より大径である。サイドリング12をホイール本体11の外周にホイール軸方向に装着する時に、サイドリング12のセレーション16の歯16aが突起17の外周側を通過できるため、突起17には、実施例1の溝17aを形成する必要がない。
【0018】
本発明の実施例2の作用・効果については、突起17に溝17aを形成する必要がないため、溝17a形成用の加工が必要でなく、その分コストダウンをはかることができる。しかし、実施例1に比べて突起形成部位でのホイール本体11の内径が小さくなり、リム内径部位の空間が実施例1に比べて小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1のリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造の断面図である。
【図2】図1の円で囲んだ部分の拡大断面図である。
【図3】本発明の実施例2のリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造の断面図である。
【図4】本発明の実施例1、2のセレーション部のリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造の部分正面図である。
【図5】従来のリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造の断面図である。
【符号の説明】
【0020】
10 リム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造
11 ホイール本体
12 サイドリング
13 パッキン装着溝
14 パッキン
15 ロックリング
16 セレーション
16a 歯(セレーション歯)
16b 溝(セレーション溝)
17 突起
17a 突起17に形成した溝
18 セレーションが切られていない部分18
19 テーパ部
20 タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイール本体と、
ホイール本体とは別体に構成されてホイール本体に装着されるサイドリングと、
ホイール本体とサイドリングの何れか一方に設けられたパッキン装着溝と、
パッキン溝に装着されるパッキンと、
サイドリングのホイール軸方向外側に設けられてサイドリングをホイール本体に対してホイール軸方向に固定するロックリングと、
サイドリングとホイール本体に設けられたホイール軸方向に延びる歯と溝を有し、サイドリングに設けられた歯とホイール本体に設けられた歯がホイール周方向に互いに噛合する、セレーションと、
を備えたリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造。
【請求項2】
前記パッキン装着溝がロックリング部位よりホイール軸方向内側に設けられている請求項1記載のリム分割式ホイールのサイドリング回り止め構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−335089(P2006−335089A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158666(P2005−158666)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)