説明

リモコン装置、及び船舶

【課題】リモコン側ECUの設置台数が多くても船体にコンパクトに設置し、リモコン側ECUの調整作業を簡易に行えるようにする。
【解決手段】左側シフトレバー23L及び右側シフトレバー23Rを備えたリモコン本体21の下部には取付けパネル34が形成され、取付けパネル34の下方に、非導電性の収容板により形成された左側収容部38P、中央収容部38C、右側収容部38Sが突設され、各収容部38P,38C,38Sには、略板状に形成された左舷用リモコン側ECU36P、中央用リモコン側ECU36C、右舷用リモコン側ECU36Sが、それぞれの板面側を対向させた状態で収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトレバーを操作することにより、前進、中立、後退や船速等の遠隔操作を電気的に行うリモコン装置、及びこのリモコン装置が設けられた船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の船舶としては、特許文献1に記載されたようなものがある。
【0003】
すなわち、この特許文献1には、リモコン装置のシフトレバーを有するリモコン本体と、前進、中立、後退の遠隔操作を行うシフト切替装置及びシフト切替装置を駆動するシフトアクチュエータを有する船舶推進装置と、シフトレバーの操作量に基づきシフトアクチュエータの作動量を制御するリモコン側ECU及びエンジン側ECUとが一のハーネスに個々のノードとして接続されている。
【特許文献1】特願2005−297785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のものにあっては、リモコン側ECUとリモコン本体とが船体の異なる箇所に別個に設けられることになる。このため、リモコン側ECU及びリモコン本体の設置スペースが大きくなり、配線が複雑化するという問題がある。また、ハーネスに接続されるノードは通常ハーネスを船体に設置する工程ののちにそれぞれ設置されることになるため、リモコン側ECUの動作状態をリモコン本体に適するように調整する工程(例えばシフトレバーの回転角を検知する回転角センサの信号に基づいて、正しい角度が検出されるようにリモコン側ECUを調整する工程)はリモコン側ECUとリモコン本体とが船体に設置された後に行われることになり、リモコン側ECUの調整作業が煩雑化するという問題がある。この問題は、船外機が複数台設置され、船外機の数に対応してリモコン側ECUが複数台設置された場合に特に顕著に現れることになる。
【0005】
そこで、この発明は、リモコン本体及びリモコン側ECUの設置スペースをコンパクトに形成し、リモコン側ECUの調整作業を簡易に行えるリモコン装置、及び船舶を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、推進力を発生させるエンジンを備えた複数の船舶推進装置を制御するリモコン装置であって、
【0007】
リモコン本体には、シフト・スロットル操作を行うシフトレバーが回動自在に設けられると共に、該リモコン本体から下方に向けて収容板が延長されて該収容板には側方から収容物を挿入可能な凹状の収容部が形成され、該収容部には前記シフトレバーに入力された操作命令に基づいて前記船舶推進装置に操作信号を供給するリモコン側ECUが前記収容物として収容されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記収容部は前記収容板の両側に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記収容板の側方に追加板が着脱自在に設けられ、前記追加板には側方から収容物を挿入可能な凹状の収容部が形成され、該収容部には前記シフトレバーに入力された操作命令に基づいて前記船舶推進装置に操作信号を供給するリモコン側ECUが前記収容物として収容されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記収容部には、前記リモコン本体内の電装品と前記リモコン側ECUとを電気的に接続させるコネクタ部が設置されるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記リモコン本体の下部には取付けパネルが設けられ、該取付けパネルより下方に前記収容部が設けられ、前記取付けパネルの周縁部には該リモコン装置を船体の操船席のパネル上に取付けるための船体取付部が形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構成に加え、前記取付けパネルは前記リモコン本体の一側側に伸延し、前記取付けパネルの前記伸延した部分の下面には前記追加板により形成される収容部が設置されると共に前記伸延した部分の上面には前記エンジンを切替えるための制御対象切替スイッチが配設されたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、船舶であって、請求項1乃至6の何れか一つに記載のリモコン装置が配設されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、リモコン装置のリモコン本体には、シフト・スロットル操作を行うシフトレバーが回動自在に設けられると共に、リモコン本体から下方に向けて複数の収容板が延長されて収容板には側方から収容物を挿入可能な凹状の収容部が形成され、収容部にはシフトレバーに入力された操作命令に基づいて船舶推進装置に操作信号を供給するリモコン側ECUが収容物として収容されたことにより、シフトレバーが設けられたリモコン本体とリモコン側ECUとを一体化することができる。これにより、船舶の船体にリモコン本体と別にリモコン側ECUを配設するスペースを形成する必要がなく、リモコン本体及びリモコン側ECUの設置スペースをコンパクトに形成できる。また、リモコン装置を製造する段階でリモコン側ECUをリモコン本体に対応させて調整できるので、リモコン側ECUを船体に設置してから調整する必要がなく、リモコン側ECUの調整作業を簡易に行うことができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、収容部は収容板の両側に形成されていることにより、2基以上の複数のリモコン側ECUを収容板を介して対向した状態に収容できる。これにより、複数のリモコン側ECUの収容スペースを集積し、リモコン本体及びリモコン側ECUの設置スペースを一層コンパクトに形成できる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、収容板の側方に追加板が設けられ、追加板には側方から収容物を挿入可能な凹状の収容部が形成され、収容部にはシフトレバーに入力された操作命令に基づいて船舶推進装置に操作信号を供給するリモコン側ECUが収容物として収容されたことにより、船舶に設けられた船外機の数に基づいて、リモコン装置に設けられるリモコン側ECUを追加することができ、複数の船外機が設けられた船舶に用いる、汎用性の高いリモコン装置を形成できる。また、追加板は着脱自在に設けられたことにより、追加された収容部に収容されたリモコン側ECUのリモコン本体への着脱作業を簡易に行うことができ、リモコン装置の製造や設置に際する作業の利便性を向上させることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、収容部の下方には、リモコン本体内の電装品とリモコン側ECUとを電気的に接続させるコネクタ部が設置されていることにより、リモコン側ECUはリモコン本体の下側においてリモコン本体と確実に信号の導通が可能な状態となり、リモコン側ECUの調整作業を一層簡易に行うことができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、リモコン本体の下部には取付けパネルが設けられ、取付けパネルより下方に収容部が設けられたことにより、取付けパネルの構成によってリモコン本体への収容部の設置態様を予め画一的に定め、リモコン側ECUをリモコン本体に設置する作業の利便性を一層向上させると共に、リモコン本体及びリモコン側ECUの設置スペースを一層コンパクトに形成できる。また、取付けパネルの周縁部にはリモコン装置を船体の操船席のパネル上に取付けるための船体取付部が形成されたことにより、リモコン装置と船体の操船席のパネルとをリモコン側ECUの周囲において接続させることができる。これにより、リモコン装置と船舶とを接続させる箇所を大きく設ける必要がなく、リモコン本体及びリモコン側ECUの設置スペースを一層コンパクトに形成できる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、取付けパネルはリモコン本体の一側側に伸延し、取付けパネルの伸延した部分の下面には追加板により形成される収容部が設置されたことにより、リモコン側ECUを追加しない状態で用いるリモコン本体を元に、リモコン側ECUの増加に対応するリモコン装置を形成し、リモコン装置の汎用性を一層高めてコストダウンを図ることができる。また、取付けパネルの伸延した部分の上面にエンジンを切替えるための制御対象切替スイッチが設けられたことにより、リモコン装置の一側側が船舶操舵者の身体側になるように船舶に設置すれば操船に用いられるエンジンの切替えを操舵者の手元に近い位置で行えるようになるため、取付けパネルの上面を有効活用してリモコン装置の小型化を図りつつ、リモコン装置の操作性を向上させることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、上記効果を有するリモコン装置が配設された船舶を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1乃至図5には、本発明の実施形態を示す。
【0023】
まず構成を説明すると、本実施形態の船舶は、図1に示すように、船体10の船尾に「船舶推進装置」としての3基の船外機、即ち左舷側船外機11、中央船外機12、右舷側船外機13が取り付けられると共に、この船体10に設けられた操船席14にリモコン装置15,及びハンドル装置16等が配置され、これらにより、各船外機11,12,13が操船されるようになっている。
【0024】
リモコン装置15は、図2の機能ブロック図に示すように各船外機11,12,13にそれぞれ設けられた電子制御系統とネットワーク接続されている。図2の右上から右下には、右舷側船外機13に設けられている右舷用エンジン側ECU(Engine Control Unit)17S、中央船外機12に設けられている中央用エンジン側ECU17C、左舷側船外機11に設けられている左舷用エンジン側ECU17Pを示している。各ECUは、CPU(中央処理装置)を有し、各種信号やデータに基づいてエンジン(図示せず)の回転や操舵角等の制御を行う。
【0025】
各エンジン側ECU17S,17C,17Pは、各船外機13,12,11に内蔵されたエンジン(図示せず)の運転状態を決定する電動スロットルアクチュエータ18の動作及びシフトアクチュエータ19の動作等の制御を行うための各種機構を有する。
【0026】
操船席14に設けられたリモコン装置15には、各エンジン側ECU17S,17C,17Pに対応するリモコン側ECU、即ち右舷用リモコン側ECU36S、中央用リモコン側ECU36C、左舷用リモコン側ECU36Pが設けられており、各リモコン側ECU36S,36C,36Pは、相互通信可能なハーネス50にてネットワーク接続されている。このハーネス50における通信プロトコルは、自動車の自動制御で使用されているCAN(Controller Area Network)を用いてもよいし、信頼性と応答性とが高い専用プロトコルを用いてもよい。
【0027】
図1に示す通り、リモコン装置15は、船体10の操縦席の前面にある操作盤の前のテーブル上や操船席14の近くのデッキ上に取り付けられる。リモコン装置15のリモコン本体21は、合成樹脂材料を使用した射出成形品を組み合わせて組み立てられ、図3に示す通り、リモコン本体21は、略截頭四角錐の形状をしており、その稜線部に当たる角部は丸みが施されている。
【0028】
リモコン本体21の左側面22aと右側面22bには、複数の船外機等の推進機のシフト操作及びスロットル操作をするための前後に回動自在な左側シフトレバー23L及び右側シフトレバー23Rがそれぞれ立設されている。
【0029】
また、リモコン本体21の天面24には操舵者が指先を前方に向けて手を載せた場合に、指先で操作できる位置に各推進機に対応したチルト・トリム角調整スイッチ25P,25C,25Sを有する。なお、操舵の利便性を高めるべく、操舵者の掌に接触する部分にはスイッチは配置されない。
【0030】
リモコン本体21の背面26側には、シフト・スロットル操作の対象としてのエンジンを切替えるための、2つの制御対象切替スイッチが配設されている。即ち、左舷側船外機11と右舷側船外機13とを制御する場合に対応する左右制御スイッチ27と、中央船外機12を制御する中央制御スイッチ28とが設けられている。
【0031】
左側シフトレバー23L及び右側シフトレバー23Rの上部にはそれぞれ左側水平ハンドル29L及び右側水平ハンドル29Rが設けられており、図4に示す通り、左側シフトレバー23Lの上端には、三機の推進機のチルト・トリム角を一緒に調整するための主チルト・トリム角調整スイッチ30が設けられている。
【0032】
図4に示す通り、左側シフトレバー23Lは左側軸部31Lによってリモコン本体21の左側面に軸支され、右側シフトレバー23Rは右側軸部23Rによってリモコン本体21の右側面に軸支されている。
【0033】
リモコン本体21の下部には、略水平面の取付けパネル34が形成されている。取付けパネル34は、図4に示す通り、リモコン本体21の右側においては右側シフトレバー23Rの最外位置と略同一位置まで形成されているのに対し、左側においては左側シフトレバー23Lの最外位置よりも外方に伸延した形状を呈している。即ち、取付けパネル34は平面視において左右非対称な形状を呈している。
【0034】
リモコン本体21から下方に向けて、樹脂等の非導電性の部材からなる略矩形の中央収容板33C、右側収容板33Sが延長されると共に、この中央収容板33Cには追加板33Pが着脱自在に配設されている。
【0035】
中央収容板33Cと右側収容板33Sとは左右対称に形成され、それぞれの板面が上下方向に延び、かつ、一側側(図4における左側。本明細書において同じ)及び他側側(図4における右側。本明細書において同じ。)を向いた板面同士が接触した状態で、リモコン本体21の中心部分を中心として左右対称に配設されている。中央収容板33Cと右側収容部33Sとは図5に示す通り取付けパネル34の上下にわたって設けられ、図5に示す通りねじ45a等によって固着されている。即ち、右側収容部38S及び中央収容部38Cはリモコン本体21に着脱不能に固定されている。
【0036】
図示しないが、中央収容板33Cの取付けパネル34よりも上側の部分はリモコン本体21の内部において左側軸部31Lを軸支する。同様に、右側収容板33Sの取付けパネル34よりも上側の部分もリモコン本体21の内部において右側軸部31Rを軸支する。
【0037】
また、中央収容板33Cの取付けパネル34よりも下方に突出した略矩形の部分は、周縁部に沿って板材がそれぞれ直角方向(図4の左方向)に延長され、この延長された板材に囲まれた部分は一側側に開口した断面略凹状の中央収容部38Cを形成している。一方、右側収容部33Sの取付けパネル34よりも下方に突出した略矩形の部分も、周縁部に沿って板材がそれぞれ直角方向(図4の右方向)に延長されており、この延長された板材に囲まれた部分は他側側に開口した断面略凹状の右側収容部38Cを形成している。
【0038】
中央収容部38C、右側収容部38Sは面同士が接触した中央収容板33Cの一側側及び右側収容板33Sの他側側に、図4に示す側面視において左右対称に形成されている。これにより、収容物(即ち、後述する通り中央用リモコン側ECU36C及び右舷用リモコン側ECU36S)を中央収容板33C及び右側収容板33Sを介して対向した状態に収容し、収容物の収容スペースを集積することができる。また、リモコン本体21に着脱不能に固定された右側収容部38S及び中央収容部38Cに収容物として2個のリモコン側ECU(即ち右舷用リモコン側ECU36S及び中央用リモコン側ECU36C)が収容されるため、船外機が2基設けられた船舶用のリモコン装置に基づいて、複数の船外機(本実施形態においては左舷側船外機11及び右舷側船外機13)が設けられた船舶に用いる、汎用性の高いリモコン装置15を形成できる。
【0039】
図示しないが、中央収容部38Cの内部には中央用リモコン側ECU36Cが配設される。中央用リモコン側ECU36Cは略板状を呈し、板面の一方面を一側側、他方面が他側側に向けた状態で配設されている。
【0040】
また、中央用リモコン側ECU36Cには中央コネクタ部(図示せず)が設置されている。この中央コネクタ部(図示せず)は導電性の端子やリード線等を有し、ホールIC(図示せず)等リモコン本体21内部の各種電装品から引き出されたリード線と中央用リモコン側ECU36CのI/O(Input/Output)ポートとを接続する。即ち、中央コネクタ部(図示せず)において、リモコン本体21内部の各種電装品と取付けパネル34に配設された中央用リモコン側ECU36Cとは信号の導通が可能な状態で接続される。
【0041】
図5に示す通り、中央収容部38C及び中央ECUケース46Cと右側収容部38S及び右側ECUケース46Sとは、幅方向大きさL1がリモコン本体21の幅方向大きさと略同一幅であり、取付けパネル34の下側においてリモコン本体21の略真下位置に設置されている。即ち、このリモコン本体21の略真下位置が、取付けパネル34に予め定められた、中央収容部38C及び中央ECUケース46Cと右側収容部38S及び右側ECUケース46Sとが取り付けられる所定の位置となっている。これにより、取付けパネル34の構成によって中央収容部38C、右側収容部38Sのリモコン本体21への設置態様を予め画一的に定めることとなり、中央用リモコン側ECU36C、右舷用リモコン側ECU36Sをリモコン本体21に設置する作業の利便性を向上させ、リモコン装置15の設置スペースをコンパクトに形成できる。
【0042】
中央用リモコン側ECU36Cの一側側には中央ECUケース46Cが配設されている。中央ECUケース46Cは樹脂等の非導電性の部材にて形成された略矩形の板材の四方の周縁部が垂直方向に延長されて断面略凹状に形成され、この延長された周縁部で囲まれた部分が開口している。この中央ECUケース46Cの開口した部分は他側側に向いた状態で中央収容部38Cの開口部分に接合し、中央収容部38Cと中央ECUケース46Cとの内部に中央用リモコン側ECU36Cと中央コネクタ部(図示せず)とが収容された状態となっている。中央収容部38Cと中央ECUケース46Cとはねじ51等複数のねじによって固着されている。
【0043】
右側収容部38Sの他側側には右側ECUケース46Sが配設されている。図4、図5に示す通り、右側ECUケース46Sは中央ECUケース46Cと同様の材質にて中央ECUケース46Cと左右対称の構造に形成されている。右側ECUケース46Sは断面略凹状に形成されており、右側収容部38Sと右側ECUケース46Sとの内部には中央用リモコンECU36Cと同一の構成を有する右舷用リモコン側ECU36S(図4に図示せず)と、中央コネクタ部(図示せず)と同じ構成及び機能を有する右側コネクタ部(図示せず)とが収容されている。
【0044】
中央ECUケース46Cの一側側には、追加板33Pが設けられ、この追加板33Pが左側収容部38Pを形成している。図5に示す通り、左側収容部38Pは、樹脂等の非導電性の部材にて形成された略矩形の板材の四方の周縁部が垂直方向(図4の左方向)に延長された断面略凹状に形成されている。図5に示す通り、左側収容部38Pは、延長された周縁部で囲まれた部分が断面略凹状を呈し一側側に開口した状態で、他側面が中央用ECUケース46Cの他側面に接した状態で配設されている。
【0045】
図5に示す通り、追加板33Pは取付けパネル34の下部にのみ配設されており、リモコン本体21に対し着脱可能となっている。これにより、追加板33Pを着脱することで左側収容部38Pの内部に収容された収容物(後述する通り左舷用リモコン側ECU36P)を追加・除去することが可能になり、リモコン装置15を船外機が2基の船舶にも3基の船舶にも使用できる。また、追加板33Pはリモコン本体と着脱自在に設けられたことにより、左側収容部38Pの収容物である左舷用リモコン側ECU36Pのリモコン本体21への着脱作業を簡易に行うことができる。
【0046】
左側収容部38Pの内部には、右舷用リモコン側ECU36S及び中央用リモコンECU36Cと同一の構成を有する左舷用リモコン側ECU36Pが収容されている。即ち、左舷用リモコン側ECU36Pは中央用リモコン側ECU36Cと板面が対向した状態となっている。
【0047】
左舷用リモコン側ECU36Pには、中央コネクタ部(図示せず)同様の構成を有する2つの左用コネクタ部35P,35Pが設置され、リモコン本体21内部の電装品と左舷用リモコン側ECU36Pとを信号導通が可能な状態に接続する。
【0048】
図4に示す通り、左側収容部38P及び左側ECUケース46Pは、取付けパネル34の下側においてリモコン本体21の略真下位置よりも一側側に膨出して設置されている。即ち、このリモコン本体21の略真下位置よりも一側側に膨出した位置が左側収容部38P及び左側ECUケース46Pが取り付けられる所定の位置となっている。これにより、取付けパネル34の構成によって左側収容部38Pのリモコン本体21への設置態様を予め画一的に定めることとなり、左舷用リモコン側ECU36Pをリモコン本体21に設置する作業の利便性を向上させ、リモコン装置15の設置スペースをコンパクトに形成できる。
【0049】
また、取付けパネル34の、リモコン本体21の一側側に伸延した部分の下面に追加板33Pによる左側収容部38Pが設置されたことにより、2個のリモコン側ECUを用いるリモコン本体21を元に、リモコン側ECUが増加して3個になる場合にも対応するリモコン装置15を形成できる。
【0050】
左舷用リモコン側ECU36Pの上面側(即ち図4における左側)には左側ECUケース46Pが配設されている。左側ECUケース46Pは右側ECUケース46S及び中央ECUケース46Cと同様の非導電性の部材によって同様の断面略コの字状の形状に形成されている。左側収容部38Pの四方の周縁部端部と左側ECUケース46Pの四方の周縁部端部とは接合し、左側収容部38Pと左側ECUケース46Pとの内部に左舷用リモコン側ECU36P、左用コネクタ部35P、35Pが収容された状態となっている。
【0051】
図5に示す通り、左側収容部38Pと左側ECUケース46Pとは2本のねじ44a,44bによって固着されている。また、左側収容部38Pと中央収容部38Cとは3本のねじ39a,39b,39cにより固着されている。
【0052】
各リモコン側ECU36P,36C,36Sを略板状に形成し、それぞれの板面側を対向された状態で各収容部38P,38C,38Sに収容されることにより、各リモコン側ECU36P,36C,36Sは板面を同一方向に向け、かつ板面を垂直に配設した状態で船体10に設置し、各リモコン側ECU36P,36C,36Sの設置スペースをコンパクトに形成できる。
【0053】
取付けパネル34の四方の周縁部は、船体取付部40に形成されている。この船体取付部40の下面は、船体10の上面に安定して載置される形状即ち面一の平面に形成されており、四隅には船体10に接合するためのねじ41a,41b,41c(一本は図3、図5に図示せず)が設けられている。
【0054】
取付けパネル34の周縁部に船体取付部40が形成されたことにより、リモコン装置15と船体10とを各リモコン側ECU36P,36C,36Sの周囲において接続させることができるため、リモコン装置15と船舶10とを接続させる箇所を大きく設ける必要がなくなる。
【0055】
左舷用リモコン側ECU36Pの上方に位置して取付けパネル34の上面、即ち側方に伸延した側の上面には、図3に示す通り、リモコン本体21の背面26側と同様の制御対象切替スイッチ、即ち、左舷側船外機11と右舷側船外機13を制御する場合に対応する左右制御スイッチ42と、中央船外機12を制御する中央制御スイッチ43とが設けられている。
【0056】
左右制御スイッチ42と、中央船外機12を制御する中央制御スイッチ43とを取付けパネル34の側方に伸延した側の上面に設けたことにより、当該伸延した側を船舶操舵者の身体側になるように設置すれば、操船に用いられるエンジンの切替えを操舵者の手元に近い位置で行えるようになる。
【0057】
以上、本実施形態においては、左側シフトレバー23L及び右側シフトレバー23Rが設けられたリモコン本体21と左舷用リモコン側ECU36P、中央用リモコン側ECU36C、右舷用リモコン側ECU36Sを一体化することができる。これにより、船舶の船体10にリモコン本体21と別に各リモコン側ECU36P,36C,36Sを配設するスペースを形成する必要がなくなる。また、リモコン装置15を製造する段階で各リモコン側ECU36P,36C,36Sをリモコン本体21に対応させて調整できるので、各リモコン側ECU36P,36C,36Sを船体10に設置してから調整する必要がなくなる。
【0058】
なお、上記実施形態では、左舷側船外機11、中央船外機12、右舷側船外機13の3基の船外機を取り付けた船舶に本発明に係るリモコン装置15を適用したが、これに限定されず、船体に2基、あるいは4基以上の船外機を取り付けた船舶に本発明に係るリモコン装置15を適用することもできる。この場合、リモコン本体21の取付けパネル34に接続されるリモコン側ECUの数、並びにリモコン装置15の設定及び設置の手順は、船体に設置された船外機の数に対応して変化する。
【0059】
例えば、船体に左舷側船外機11、右舷側船外機13の2基の船外機を取り付けた船舶においては、リモコン装置15は、取付けパネル34に右舷用リモコン側ECU36S、中央用リモコン側ECU36Cのみが接続された状態で船体に設置される。具体的には、上記(手順1)及び(手順2)のみが完了した状態で船舶の船体に設置される。このとき、(手順2)において、右舷用リモコン側ECU36Sは右舷側船外機13の動作制御用として、中央用リモコン側ECU36Cは左舷側船外機11の動作制御用として、それぞれ調整される。また、(手順5)において船体10のフロントパネルに開口される開口部は、中央収容部38C及び中央ECUケース46Cと右側収容部38S及び右側ECUケース46Sの幅方向大きさL1(図5参照)とすることもできる。
【0060】
上記実施形態においては、中央収容部38C,右側収容部38Sは面同士が接触した中央収容板33Cの一側側及び右側収容板33Sの他側側にそれぞれ形成したが、一枚の収容板の一側側に中央収容部、他側側に右側収容部を形成し、構成物品数を少なくしてコストダウンを図ることもできる。
【0061】
上記実施形態は例示であり、本発明が上記実施形態に限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態に係る船舶の斜め後方から見た斜視図である。
【図2】同実施形態に係る船舶のリモコン装置及び船外機等の機能ブロック図である。
【図3】同実施形態に係るリモコン装置の斜視図である。
【図4】同上リモコン装置の正面図である。
【図5】同上リモコン装置の左舷用リモコン側ECUと左側収容部とを取り外した状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
10・・・船体
11・・・左舷側船外機(船舶推進装置)
12・・・中央船外機(船舶推進装置)
13・・・右舷側船外機(船舶推進装置)
15・・・リモコン装置
36P・・・左舷用リモコン側ECU(リモコン側ECU)
36C・・・中央用リモコン側ECU(リモコン側ECU)
36S・・・右舷用リモコン側ECU(リモコン側ECU)
21・・・リモコン本体
23L・・・左側シフトレバー(シフトレバー)
23R・・・右側シフトレバー(シフトレバー)
33P・・・追加板
33C・・・中央収容板(収容板)
33S・・・右側収容板(収容板)
34・・・取付けパネル
35P,35P・・・左用コネクタ部(コネクタ部)
38P,38C,38S・・・収容部
40・・・船体取付部
42・・・左右制御スイッチ(制御対象切替スイッチ)
43・・・中央制御スイッチ(制御対象切替スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進力を発生させるエンジンを備えた複数の船舶推進装置を制御するリモコン装置であって、
リモコン本体には、シフト・スロットル操作を行うシフトレバーが回動自在に設けられると共に、該リモコン本体から下方に向けて収容板が延長されて該収容板には側方から収容物を挿入可能な凹状の収容部が形成され、該収容部には前記シフトレバーに入力された操作命令に基づいて前記船舶推進装置に操作信号を供給するリモコン側ECUが前記収容物として収容されたことを特徴とするリモコン装置。
【請求項2】
前記収容部は前記収容板の両側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリモコン装置。
【請求項3】
前記収容板の側方に追加板が着脱自在に設けられ、前記追加板には側方から収容物を挿入可能な凹状の収容部が形成され、該収容部には前記シフトレバーに入力された操作命令に基づいて前記船舶推進装置に操作信号を供給するリモコン側ECUが前記収容物として収容されたことを特徴とする請求項2に記載のリモコン装置。
【請求項4】
前記収容部には、前記リモコン本体内の電装品と前記リモコン側ECUとを電気的に接続させるコネクタ部が設置されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のリモコン装置。
【請求項5】
前記リモコン本体の下部には取付けパネルが設けられ、該取付けパネルより下方に前記収容部が設けられ、前記取付けパネルの周縁部には該リモコン装置を船体の操船席のパネル上に取付けるための船体取付部が形成されたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載のリモコン装置。
【請求項6】
前記取付けパネルは前記リモコン本体の一側側に伸延し、前記取付けパネルの前記伸延した部分の下面には前記追加板により形成される収容部が設置されると共に前記伸延した部分の上面には前記エンジンを切替えるための制御対象切替スイッチが配設されたことを特徴とする請求項5に記載のリモコン装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一つに記載のリモコン装置が配設されたことを特徴とする船舶。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−12964(P2008−12964A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183581(P2006−183581)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)