リンゴ用並列一括スライサー
【課題】過度なスライス圧力を必要とせず、容易に被加工物を、互いに平行な複数のスライス片に分離することが可能な、並列一括スライサーを提供する。
【解決手段】スライス幅毎に平行に配置された複数の溝を有し、被加工物3を搭載するまな板部1と、ブレード25a,25b,25c,…,25gの刃先をまな板部1の方向に向け、ブレードの刃先が溝にそれぞれ挿入可能なように平行に配置され、一方のブレードの刃先と他方のブレードの峰との間にブレード間ギャップが存在するような関係で、それぞれ配列された複数のブレードを有するカッター部2とを備える。カッター部2をまな板部1の方向に移動することにより、複数のブレードを同時に並進移動し、まな板部1に搭載された被加工物3を、複数の平行なスライス片に分離する。
【解決手段】スライス幅毎に平行に配置された複数の溝を有し、被加工物3を搭載するまな板部1と、ブレード25a,25b,25c,…,25gの刃先をまな板部1の方向に向け、ブレードの刃先が溝にそれぞれ挿入可能なように平行に配置され、一方のブレードの刃先と他方のブレードの峰との間にブレード間ギャップが存在するような関係で、それぞれ配列された複数のブレードを有するカッター部2とを備える。カッター部2をまな板部1の方向に移動することにより、複数のブレードを同時に並進移動し、まな板部1に搭載された被加工物3を、複数の平行なスライス片に分離する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果物や野菜などの被加工物をワンタッチ(一回の加圧移動処理)で、同時に複数枚のスライス片を平行に分離する並列一括スライサーに関する。
【背景技術】
【0002】
リンゴは、食物繊維,カリウム、ポリフェノールを多く含んでいるという栄養的特長が知られているが、リンゴに含まれる有効成分は、皮と実の間に多く含まれるとされる。特にアントシアニンと呼ばれるポリフェノールは、赤い皮の部分に含まれる。したがって、皮を捨ててしまうと、体によい成分も捨てていることになる。個人の好みにもより、リンゴの皮が硬い、口に残る、食味が良くない、リンゴの皮の食感が苦手と感じる人がいる。
【0003】
従来、包丁や果物ナイフを用いず、リンゴを放射状に8分割等の縦割りする果物カッターが知られている(特許文献1及び2参照。)。しかしながら、リンゴを放射状に縦割りするのではなく、1cm程度の厚さに輪切りに平行にスライスして、複数枚の輪切りの形状に分離すれば、リンゴの皮が食べやすくなる。リンゴの芯をくり抜いてもよいが、芯をくり抜かずに芯の部分を持って、食べることも可能である。
【0004】
トマト等の果肉硬度の柔らかい果物や野菜などの被加工物に対しては、刃先を被加工物方向に向けた長尺なスライス刃を、被加工物をスライスする幅に離間して複数枚、平行に重ね、それぞれのスライス刃の両端を、スライス刃を貫通する支柱で固定したカッター部を有するスライス装置が提案されている(特許文献3参照。)。特許文献3に記載されたスライス装置では、複数のスライス刃を有するカッター部に対し、移動具で被加工物をスライス刃の方向に押し付けるように移動させることにより、トマト等の果肉硬度の柔らかい被加工物が、複数枚離間して重ねられたスライス刃とスライス刃との間を通過し、ワンタッチで、被加工物をスライスすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2002−28892号公報
【特許文献2】実開昭62−46597号公報
【特許文献3】特開2003−11091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属や高分子材料等の工業用材料では、硬さや硬度の定義は統一的に用いられているが、農産物にたいしては、統一的な定義が乏しいのが実情である。熟度や品種にも依存するが、みかんよりもグレープフルーツの方が硬く、グレープフルーツよりもリンゴの方が硬い。果実の果肉硬度に関しては、マグネス・テイラー(Magness-Taylor)硬度計及びユニバーサル硬度計による貫入試験による測定がなされている。貫入試験に用いるマグネス・テイラー硬度計のシリンダの径にもよるが、直径7.9mm又は11.1mmのシリンダの貫入試験で、リンゴの北斗、むつの果肉硬度は4〜8kg程度、リンゴの王林、ふじの果肉硬度は3〜7kg程度である。梨の豊水の果肉硬度は1.5〜4kg程度でリンゴよりも柔らかい。ももの場合は、品種の他、熟度の依存性が高いが、一般に果肉硬度は1.5〜4kg程度でリンゴよりも柔らかい。キウイフルーツの果肉硬度は0.5〜2kg程度、トマトの果肉硬度は0.18〜0.3kg程度、イチジクの果肉硬度は0.14〜0.47kg程度であり、リンゴよりも柔らかい。特許文献3に記載されたスライス装置は、キウイフルーツ、トマトやイチジク等の果肉硬度が2kg程度以下の柔らかい果実の切断には適用可能であるが、果肉硬度が2kg程度以上になると、次第に、互いに平行な複数のスライス片(輪切り)に分離するのが困難になる。特に、果肉硬度が4kg程度以上の果実を、特許文献3に記載されたスライス装置で、互いに平行な複数のスライス片(輪切り)に分離するのは現実的でなくなる。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点を除くためになされたものであって、その目的とするところは、マグネス・テイラー硬度計を用いた貫入試験によって得られる硬度が2kg程度以上となるような硬度を有する被加工物であっても、過度なスライス圧力を必要とせず、1回の単純な加圧作業で、容易に被加工物を、互いに平行な複数のスライス片(輪切り)に分離することが可能な、並列一括スライサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の態様は、(a) スライス幅毎に平行に配置された複数の溝を有し、被加工物を搭載するまな板部と、(b)それぞれのブレードの刃先をまな板部の方向に向け、少なくともそれぞれのブレードの刃先が複数の溝にそれぞれ挿入可能なように平行に配置され、且つ、着目した一のブレードの刃先と、この着目したブレードに隣接して下方に位置する他方のブレードの峰との間にブレード間ギャップが存在するような関係で、それぞれ配列された複数のブレード、この複数のブレードを固定するブレード保持手段を有するカッター部とを備える並列一括スライサーであることを要旨とする。この並列一括スライサーにおいては、カッター部をまな板部の方向に移動することにより、複数のブレードを同時に並進移動し、まな板部に搭載された被加工物を、複数の平行なスライス片に分離する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マグネス・テイラー硬度計を用いた貫入試験によって得られる硬度が2kg程度以上となるような硬度を有する被加工物であっても、過度なスライス圧力を必要とせず、1回の単純な加圧作業で、容易に被加工物を、互いに平行な複数のスライス片(輪切り)に分離することが可能な、並列一括スライサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る並列一括スライサーの要部の原理的な概略構造と、その要部の被加工物に対する関係(並列一括スライスの原理)を説明するための模式的な断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る並列一括スライサーの要部をなすカッター部の一部を構成する複数のブレードの相互の位置関係、及びこれらの複数のブレードを固定するブレード固定側板(第1のブレード固定側板)との関係を説明する断面図である。
【図3】図3(a)は、第1の実施形態に係る並列一括スライサーの要部をなすカッター部の正面図で、図3(b)は、図3(a)の右側側面図である。
【図4】図3(a)に例示したカッター部の一部を構成する一枚のブレードに着目した、ブレードの組み立て図である。
【図5】第1の実施形態に係る並列一括スライサーの要部をなすまな板部の構造を説明するための模式的な右側面図である。
【図6】図5の右側面図に対応する正面図である。
【図7】図5の右側面図、図6の正面図に対応する上面図である。
【図8】第1の実施形態に係る並列一括スライサーのまな板部の搭載面に被加工物を搭載し、カッター部の一番下に位置するブレードの刃先が、被加工物に接し、被加工物のスライス作業を開始する直前の状態を模式的に示す図である。
【図9】カッター部を押し下げることにより、被加工物を8枚のスライス片にスライス加工して分離が完了する直前の状態を示す図である。
【図10】被加工物としてのリンゴを、互いに平行なスライス片にスライス加工した状態を模式的に示す鳥瞰図である。
【図11】スライス加工完了後にカッター部が一番下の位置まで押し下げられた状態の第1の実施形態に係る並列一括スライサーの全景を右側面から見た全体図である。
【図12】図11の右側面から見た全体図に対応する、正面から見た全体図である。
【図13】図11の右側面から見た全体図、図12の正面から見た全体図に対応する、上面から見た全体図である。
【図14】本発明の第1の実施形態の変形例に係る並列一括スライサーの正面から見た全体図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る並列一括スライサーの全景を右側面から見た全体図である。
【図16】図15の右側面から見た全体図に対応する、正面から見た全体図である。
【図17】図15の右側面から見た全体図、図16の正面から見た全体図に対応する、上面から見た全体図である。
【図18】本発明のその他の実施形態に係る並列一括スライサーの要部をなすカッター部の一部を構成する複数の片刃のブレードの相互の位置関係、及びこれらの複数の片刃のブレードを固定するブレード固定側板(第1のブレード固定側板)との関係を説明する断面図である。
【図19】本発明に至るまでに、本発明者が検討した第1の比較例(比較例1)に係る並列一括スライサーの構造を説明する模式図である。
【図20】本発明に至るまでに、本発明者が検討した第2の比較例(比較例2)に係る並列一括スライサーの構造を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明に至る経緯)
先ず、本発明の第1及び第2の実施形態に係る並列一括スライサーを説明する前に、本発明に至るまでの、比較例に係る並列一括スライサーの試作検討や研究開発の経緯を説明する。本発明者は、当初、図19に示すように、長い柄52の付いた2本の鎌51を平行に並べ、鎌51の先端を支点支持部53に固定し、受け皿部分54に被加工物3としてのリンゴを載せて、鎌51の部分を被加工物3に押し当てて、被加工物3をスライスする並列一括スライサー(比較例1)を試作した。図19において、受け皿部分54と支点支持部53とは共通の底板55に固定されている。しかし、図19に示す比較例1に係る並列一括スライサーでは、鎌51の刃がマグネス・テイラー硬度計による貫入試験による果肉硬度が2〜8kg程度の被加工物3を最後まで切り抜くことができず、被加工物3に食い込んだままの状態となり、被加工物3をスライスできないという問題点が判明した。図19に示す比較例1に係る並列一括スライサーでは、2本の鎌51を平行して取り付けたことにより、果肉硬度が2〜8kg程度に硬い被加工物3を切りはじめてから、鎌51の刃の厚みにより被加工物3から刃の厚み方向に発生する応力が邪魔をし、被加工物3を直線的に切ることができず、鎌51の刃が斜め方向に進んだことによると問題点が解析された。
【0012】
比較例1に係る並列一括スライサーの問題点の解析から、果肉硬度の硬い被加工物3を一気にスライスするためには、被加工物3を、時間差をつけて順にスライスするような、刃を少しずらして取り付ける工夫をしなければならないことが判明したので、次に、図20に示す並列一括スライサー(比較例2)を試作した。図20(a)に示すように、比較例2に係る並列一括スライサーでは、1本の回転軸66sに、等間隔で7本の包丁51a,51b,51c,…,51gが末広状に溶接されている。回転軸66sは、底板65に固定され、底板65から垂直に延びる2本の支柱63a、63bに両端を転がり軸受け等の回転支持部66a,66bを介して回転可能に固定されている。回転軸66sの一方の端部には、回転支持部66aを介してクランク67が接続され、クランク67の端部にはハンドル部68が接続されている。図20(b)に示すように、底板65には更に受け皿64が固定され、受け皿64には被加工物3が搭載される。図20(b)では見やすくするためには、クランク67、及びクランク67に接続されたハンドル部68の図示を省略しているので、支柱63bの手前側には、回転支持部66bのみが示されている。
【0013】
図20に示す比較例2に係る並列一括スライサーは、ハンドル部68を回転することにより、回転軸66sを回転させ、受け皿64に搭載された果肉硬度の硬い被加工物3を、回転軸66sに末広状に設けられた7本の包丁51a,51b,51c,…,51gで、時間差をつけて逐次、順にスライスせんとする設計であった。しかし、比較例2に係る並列一括スライサーは、比較例1に係る並列一括スライサーよりも、包丁51a,51b,51c,…,51gのそれぞれの刃先に伝わる力が構造上弱くなるため、被加工物3を最後まで切り抜くことができないという問題が判明した。又、比較例2に係る並列一括スライサーでは、包丁51a,51b,51c,…,51gのそれぞれの一端が、回転軸66sに固定された構造であるので、包丁51a,51b,51c,…,51gのそれぞれの刃先に付与される力の方向が、刃先線の方向に対して垂直でないためスライス時の被加工物3からの抵抗が大きく、人力でスムーズに被加工物3を切り抜くことができないという第2の問題も判明した。この第2の問題は、図19に示した比較例1に係る並列一括スライサーでも、2本の鎌51のそれぞれの先端を支点支持部53に固定し、長い柄52の部分を付いた2本の鎌51を、支点支持部53を中心として回転させているので、同様に生じる問題である。
【0014】
以上のような比較例1及び2に係る並列一括スライサーの検討を踏まえて、本発明者は、以下の本発明の第1及び第2の実施形態に係る並列一括スライサーを実現するに至った。次に、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態に係る並列一括スライサーを説明する。第1及び第2の実施形態に係る並列一括スライサーの説明では、特定の被加工物の例として、リンゴに着目して例示的に説明するが、本発明の被加工物としては、リンゴ以外の梨、じゃがいも等であっても、同様に本発明が適用可能であることは勿論である。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。例えば図1及び図9等において、被加工物のリンゴの直径が10cm程度であるがブレードの厚みは0.8mm〜1.2mm程度であるので、図1及び図9におけるブレードの厚みやスライス片間のギャップは、原理が把握しやすいように、現実の値より大きな寸法に誇張されて示されている。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。又、以下に示す第1及び第2の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
《第1の実施形態》
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る並列一括スライサーは、スライス幅毎に平行に配置された複数の溝を有し、被加工物3を搭載するまな板部(俎板部)1と、それぞれのブレードの刃先をまな板部1の搭載面の方向に向け、少なくともそれぞれのブレードの刃先が複数の溝にそれぞれ挿入可能なように平行に配置され、着目した一のブレード(上方に位置するブレード)の刃先と、この着目したブレードに隣接する他の(下方に位置する)ブレードの峰との間に、ブレード間ギャップΔHが存在するような関係で、それぞれ配列された複数のブレード25a,25b,25c,…,25gを有するカッター部2とを備える。図1の断面図は、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの長手方向(刃渡り方向)に垂直な断面を模式的に示しており、「スライス幅」は、この互いに平行に配置された複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの長手方向(刃渡り方向)に垂直な方向に定義される(図1では、紙面の水平方向に「スライス幅」が測られる。)。スライス幅は、被加工物3をスライス片に分離する幅でもあるので、例えば、マグネス・テイラー硬度計による貫入試験による果肉硬度が2〜8kg程度の果実であれば、10〜20mmが望ましい。被加工物3がリンゴの場合、スライス幅が10mm以下の場合、スライス片が薄すぎるので、スライス加工までは対応できるが、スティック状、若しくはダイス状に更に2次加工する際に、柔らかすぎて対応できない虞がある。又、被加工物3がリンゴの場合、スライス幅が20mm以上の場合、食感としてこれまでの放射状の8等分とさほど変わらない。但し、リンゴ以外の被加工物3の場合は、被加工物3の硬度等の性質や、その被加工物3に特有な食感等を考慮して、スライス幅を適宜調整すればよい。
【0016】
図1では、まな板部1は複数枚の台座14a,14b,14c,…,14hで構成され、台座14aと台座14bとの間、台座14bと台座14cとの間、台座14cと台座14dとの間、…(中略)…台座14gと台座14hとの間が、それぞれ、ブレード25a,25b,25c,…,25gの刃先を少なくとも挿入可能な深さを有する溝部を構成している。複数のブレード25a,25b,25c,…,25gは、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gが互いに一定の位置関係を維持しながら、同時に並進移動するように、カッター部2の一部を構成するブレード固定側板(第1のブレード固定側板)22aに固定されている。そして、台座14a,14b,14c,…,14hは、まな板部1の一部を構成する底板11に、それぞれ垂直に固定され、直立している。
【0017】
第1の実施形態に係る並列一括スライサーは、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの刃先が、まな板部1の搭載面に設けられた溝に挿入できるように設計しているので、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの、それぞれの峰から刃先方向に向かう方向(刃幅方向)と、溝部を構成している台座14a,14b,14c,…,14hの直立方向も互いに平行である。まな板部1の形状、大きさ、構造等は、被加工物3が搭載可能で、少なくともそれぞれのブレードの刃先が挿入可能な複数の溝を有していれば、任意の形状、大きさ、構造等が採用可能であり、図1に例示した形状、大きさ、構造等に限定されるものではない。例えば、まな板部1の搭載面にはブレードの刃先が挿入可能な複数の溝があればよいので、複数の溝の幅は、図1に例示したよりも狭く、それぞれのブレードの厚さよりも極くわずか、例えば20μm〜200μm程度のクリアランス分だけ広く余裕をもたせた構造でもよく、この場合は、複数の溝の幅がそれぞれ狭くなった分、台座14a,14b,14c,…,14hの厚さは、図1に例示した厚さよりも厚くなることは当然である。更に、図1に例示した台座14a,14b,14c,…,14hは、それぞれ穴部のない一枚の板状の構造として例示しているが、穴部のない板状であることは必ずしも必要ではない。例えば、台座14a,14b,14c,…,14hの少なくとも一部に開口部が設けられていてもよく、更に、図6に例示したように、棒状(円柱状)のフレームを折り曲げた構造にして内部を中空にする等、他の構造が採用可能である。
【0018】
まな板部1は、被加工物3を搭載するためのものであるので、被加工物3の大きさとスライス幅に合わせてその具体的な構造を任意に設計可能である。図1では、8枚の台座14a,14b,14c,…,14hを例示しているが、被加工物3の大きさや被加工物3をスライスするスライス幅の寸法に合わせて、台座プレートの枚数は8枚より多くすることも、8枚より少なくすることも可能である。台座プレートの枚数に合わせて、カッター部2を構成する複数のブレードの枚数も変化する。即ち、nを1以上の正の整数として、まな板部1を構成する台座プレートの枚数を(2n+1)枚とすれば、カッター部2を構成するブレードの枚数は2n枚になるが、スライス幅は、例えば、マグネス・テイラー硬度計による貫入試験による果肉硬度が2〜8kg程度の果実であれば、10〜20mm程度の値に設定されるので、果実の径が大きくなればnの値は大きくなる。なお、カッター部2を構成するブレードの枚数は偶数枚に限られないので、mを2以上の正の整数として、まな板部1を構成する台座プレートの枚数を2m枚とし、カッター部2を構成するブレードの枚数は(2m−1)枚となる構成でもよい。
【0019】
図1に例示するように、被加工物3の形状が、球状の場合であれば、まな板部1の搭載面に皿状の凹部を設ければ、被加工物3をまな板部1の搭載面に固定するのが容易になり、被加工物3のスライス作業が容易になるので好ましい。まな板部1の搭載面に皿状の凹部を設ける場合は、理想的には、図1に例示した台座14a,14b,14c,…,14hのそれぞれの上部の形状は、皿状の凹部の3次元構造に合わせて順に変化するトポロジーで設計することが好ましいことになる。即ち、まな板部1の被加工物3を搭載する搭載面は、互いに離間して平行に配置された複数の台座14a,14b,14c,…,14hのそれぞれの上端面にそれぞれ接する包絡面により定義される。但し、工業用製品の場合と異なり、リンゴ等の農産物の形状や大きさは、バラツキが大きいので、現実には、まな板部1の搭載面の構造や形状は、想定される被加工物3の最大公約数的な構造や形状に選定される。よって、図1に例示するように、まな板部1の搭載面に設けられた皿状の凹部の形状に、被加工物3の外面が正確に密着する必要はないので、凹部は必ずしも曲面で構成される必要はない。つまり、まな板部1の搭載面は、あくまでも、被加工物3をまな板部1の搭載面に固定するのが容易になる程度の何らかの凹部を有していれば構わないので、現実には種々の構造や形状が採用可能であり、例えば、台座14a,14b,14c,…,14hのそれぞれの上部に逆さ台形状の共通の凹部を有するようなトポロジーでも構わない(図6の台座14aの上部には逆さ台形状の凹部が示されている。)。又、被加工物3の形状によっては、まな板部1の搭載面に凹部を設けることが、まな板部1の搭載面の形状として必須な事項ではないことも勿論である。
【0020】
又、まな板部1の搭載面を切るように設けられる複数の溝は、それぞれブレードの刃先が挿入可能な溝であればよいので、複数の溝は図1に例示したように複数の台座14a,14b,14c,…,14hで分離され、且つ側部(図1において紙面の手前側、及び紙面の奥側)を外部に解放した溝である必要は、必ずしもない。例えば、まな板部1の搭載面を面状に構成し、この面状の搭載面の一部に垂直方向に、ブレードの刃先の寸法に適合したスリット状の複数の溝を掘ってもよい。
【0021】
図2は、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの相互の位置関係、及びこれらのブレード25a,25b,25c,…,25gを固定するブレード固定側板(第1のブレード固定側板)22aとの関係を説明する図である。図2に示すとおり、ブレード固定側板(第1のブレード固定側板)22aは、その上部を除くと、先端部を切り欠いた下向きの2等辺三角形の形状をなしている。ブレード25a,25b,25c,…,25gの材料としては、鍛造SK鋼、ハイカーボン特殊鋼、コバルト合金鋼又はステンレス・モリブデン鋼等が好ましい。強度、切れ味の点では鍛造SK鋼等の炭素鋼系の材料が望ましい。又、並列一括スライサーを常用的に使用する態様であれば、ブレード25a,25b,25c,…,25gの材料としては炭素鋼系の材料が好ましい。一方、一般家庭での使用態様のように、使用頻度があまり多くない場合は錆発生等の可能性もあるので、強度、切れ味の点では若干難があるが、SUS420−J2、440A鋼、440B鋼、440C鋼、154CM鋼、YSSATS−34鋼等のステンレス鋼(SUS)系の材料の方が好ましい。ステンレス鋼の内、家庭用品に使用されるSUS304は、錆びにくいが、通常の熱処理をしても刃物としての焼きが入らないので、ブレード25a,25b,25c,…,25gの材料としては好ましくない。但し、目的や要求される仕様に依存するので、ブレード25a,25b,25c,…,25gの材料としてのSUS304の使用を常に完全に否定する理由はない。
【0022】
複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの厚さは、例えば、マグネス・テイラー硬度計による貫入試験による果肉硬度が2〜8kg程度の果実であれば、0.8mm以上、1.2mm以下が好ましい。果肉硬度が2〜8kg程度の果実の場合、ブレード25a,25b,25c,…,25gの厚さが0.8mm以下の場合、縦方向、横方向、斜め方向のいずれか若しくは複数方向にブレード25a,25b,25c,…,25gがよじれる可能性が高く、垂直に切ることが難しくなる。ブレード25a,25b,25c,…,25gの厚さが1.2mm以上の場合、果肉硬度によるブレードの厚み方向の応力や刃先面に垂直方向の応力が発生するのでスライス加工に過度なスライス圧力が必要となり、現実的ではなくなる。なお、果肉硬度が2kg程度以下の果実であれば、ブレード25a,25b,25c,…,25gの厚さを1.2mm以上にすることも可能であるが、あまり厚いブレードはスライス加工時の被加工物3の加工残渣による損失が増えるので好ましくない。
【0023】
図2において、峰から刃先方向に定義されるブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃幅(身幅)は、15〜25mm程度、例えば20mm程度である。図2に示すとおり、ブレード25aの刃先の高さは、隣接するブレード25bの峰の高さよりもブレード間ギャップΔH1分高い。ブレード25bの刃先の高さは、隣接するブレード25cの峰の高さよりもブレード間ギャップΔH2分高く、ブレード25cの刃先の高さは、隣接するブレード25dの峰の高さよりもブレード間ギャップΔH3分高い。ブレード25dの峰の高さは、隣接するブレード25eの刃先の高さよりもブレード間ギャップΔH3分低い。ブレード25eの峰の高さは、隣接するブレード25fの刃先の高さよりもブレード間ギャップΔH2分低く、ブレード25fの峰の高さは、隣接するブレード25gの刃先の高さよりもブレード間ギャップΔH1分低い。刃幅(身幅)20mm程度において、刃幅方向(図2において上下方向)に定義されるブレード間ギャップΔH1,ΔH2,ΔH3は5〜6mm程度、即ちスライス幅の25%〜50%程度が望ましい。ブレード間ギャップΔH1,ΔH2,ΔH3が5mm以下の場合、又はスライス幅の25%以下の場合、スライス加工時にブレード25a,25b,25c,…,25gの厚みにより、被加工物3からスライス方向に直交する方向に発生する応力の逃げる方向が十分ではなくなるため、ブレード25a,25b,25c,…,25gの破損の原因、若しくは被加工物3をスライスするのに過度なスライス圧力Pが必要になり、スライス加工が困難になり、比較例1の場合と同様な問題が発生する。一方、ブレード間ギャップΔH1,ΔH2,ΔH3が6mm以上の場合、又はスライス幅の50%以上の場合、被加工物3をスライスしている最中に、被加工物3のスライス片が互いにずれてしまい、被加工物3が垂直に切れない虞がある。図2において、ブレード間ギャップΔH1=ΔH2=ΔH3=ΔH(一定)としてもよく、ブレード間ギャップΔH1,ΔH2,ΔH3の値が一部に互いに異なる関係を含んでいてもよく、互いに、すべて異なっていてもよい。
【0024】
実際には、図3(a)の正面図に示すように、第1の実施形態に係る並列一括スライサーを構成する第1のブレード固定側板22aは、第1のブレード固定側板22aと大きさの等しい第2のブレード固定側板22bと対をなしている。よって、第2のブレード固定側板22bは、第1のブレード固定側板22aと相似形であり、その上部を除くと、先端部を切り欠いた下向きの2等辺三角形の形状をなしている。このため、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gは、同時に並進移動するように、それらの両側をそれぞれ第1のブレード固定側板22a及び第2のブレード固定側板22bに固定されるように、第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bとの間に配置されている。第1のブレード固定側板22aの上部の中央には、スライス圧力Pを印加する第1のフック21aが設けられ、第2のブレード固定側板22bの上部の中央には、スライス圧力Pを印加する第2のフック21bが設けられている。
【0025】
第1のフック21aには第1のガイド棒12aを通す貫通穴が設けられ、第2のフック21bには第2のガイド棒12bを通す貫通穴が設けられており、スライス圧力Pを印加することにより、第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bによってそれぞれ導かれて、カッター部2が鉛直方向に押し下げられ、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gが、それぞれの刃先線を水平方向に維持して、同時に鉛直方向に並進移動する。図3(b)は図3(a)の右側面図であるが、図3(b)に示すように、第2のフック21bは第2のガイド棒12bを通す貫通穴が設けられた円柱部分とこの円柱部分の下端部に貫通穴を共通にして設けられた板状の加圧プレートを備える。図3(a)の正面図から理解できるように、第1のフック21aも、第1のガイド棒12aを通す貫通穴が設けられた円柱部分とこの円柱部分の下端部に貫通穴を共通にして設けられた板状の加圧プレートを備える。第1のフック21a及び第2のフック21bでカッター部2の「加圧補助手段」を構成している。
【0026】
図3(a)に示した第1の実施形態に係る並列一括スライサーに用いるブレード25aは、図4(b)に示すようにブレード25aの両側に矩形板状の固定用凸部を有するので、ブレード25aは、全体の形状としては、上部の「峰」及び「平」の部分側が下部の刃先側に比して横方向(刃渡り方向)に長い、横長のT字形状をなしている。図4(b)に示したブレード25aの左側の固定用凸部の横方向の突出長さは、図4(a)に示す第1のブレード固定側板22aの厚さに等しく、図4(b)に示したブレード25aの右側の固定用凸部の横方向の突出長さは、図4(c)に示す第2のブレード固定側板22bの厚さに等しい。ブレード25aの左側の固定用凸部は、図4(a)に示す第1のブレード固定側板22aの固定用貫通溝に挿入されて固定され、図4(b)に示したブレード25aの右側の固定用凸部は、図4(c)に示す第2のブレード固定側板22bの固定用貫通溝に挿入されて固定される。
【0027】
図示を省略しているが、他のブレード25b,25c,25d.…,25gも同様に、それぞれのブレードの両側に矩形板状の固定用凸部を有した横長のT字形状であり、それぞれのブレードの左側の固定用凸部は第1のブレード固定側板22aの固定用貫通溝に挿入されて固定され、それぞれのブレードの右側の固定用凸部は第2のブレード固定側板22bの固定用貫通溝に挿入されて固定される。ブレード25a,25b,25c,25d.…,25gの刃先の研ぎ直し等のメンテナンスを考慮すれば、ブレード25a,25b,25c,25d.…,25gの第1のブレード固定側板22a及び第2のブレード固定側板22bのそれぞれの固定用貫通溝への固定手段は、一定の機械的強度が達成できれば、取り外し可能な方法が好ましい。刃先の研ぎ直しが必要でなく、更に、ブレード25a,25b,25c,25d.…,25gがステンレス鋼(SUS)等の耐食性に優れた金属であれば、溶接による固定用貫通溝への固定でも構わないが、ブレード25a,25b,25c,25d.…,25gが鉄等の耐食性が劣る金属の場合は、錆が発生する可能性があるので、ネジ止め等、取り外し可能な固定手段が好ましい。
【0028】
図5〜図7に示すとおり、第1の実施形態に係る並列一括スライサーの第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bは、まな板部1を構成する底板11に、それぞれ下側の端部を溶接、蝋付け、焼きばめ、若しくはネジ止め等により固定され、底板11に対し垂直方向に直立している一対の棒状の部材である。図5は、図6に示した正面図の右側面図であり、第2のガイド棒12bのみが示されているが、図6の正面図からは、互いに平行な第1のガイド棒12aと第2のガイド棒12bとが、対をなして、それぞれ底板11に垂直方向に設けられていることが理解できる。図1では、板状の台座14a,14b,14c,…,14hを例示したが、台座14a,14b,14c,…,14hは、板状の形状以外に、図6の正面図に示すように、棒状のフレームの上部で被加工物3を支持するようにし、フレームの内部を中空にしてもよい。図5〜図7に示すとおり、対をなす第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bのそれぞれ上側の端部は、懸架梁13により固定され、機械的強度を補強している。第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bを、ボルト及びナットを用いて底板11に固定すれば、まな板部1の分解が容易になる。同様に、懸架梁13の両側の端部にネジ孔を設けて、第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bのそれぞれ上側の端部を懸架梁13に、ボルト及びナットを用いて固定すれば、まな板部1の分解が容易になるので、第1の実施形態に係る並列一括スライサーのメンテナンス性能が向上する。特に、図11〜図13を参照すると分かるように、カッター部2をまな板部1から取り外す場合は、第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bと底板11との接続箇所、又は第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bと懸架梁13との接続箇所の少なくとも1方の接続箇所が、分解可能であることが好ましい。
【0029】
図3を用いて既に説明したとおり、第1の実施形態に係る並列一括スライサーを構成するカッター部2には第1のガイド棒12aを通す貫通穴が設けられた第1のフック21aと、第2のガイド棒12bを通す貫通穴が設けられた第2のフック21bが両側に備えられているので、両側において第1のフック21a及び第2のフック21bにそれぞれスライス圧力Pを同時に印加することにより、第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bによってそれぞれ導かれて、カッター部2がまな板部1の搭載面に向かって鉛直方向に押し下げられ、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gが、それぞれの刃先線を水平方向に維持して、同時に鉛直方向に並進移動して、被加工物3がスライス加工される。なお、懸架梁13は、図6に示すような台形のリブ状(肋骨状)に限定されるものではなく、真っ直ぐな棒状、アーチ状或いはΩ型状の形状等種々の形状が採用可能である。
【0030】
第1の実施形態に係る並列一括スライサーのまな板部1を構成する底板11、台座14a,14b,14c,…,14h、第1のガイド棒12a、第2のガイド棒12b及び懸架梁13の材料としては、鉄等の金属若しくはプラスチック系の材料が使用可能である。強度面では、まな板部1の材料としては、鉄やステンレス鋼(SUS)等の金属が望ましいが、並列一括スライサーを一般家庭などで使用する場合は、並列一括スライサーの収納や持ち運びが想定されることからプラスチック系の材料でも十分対応可能である。特に、並列一括スライサーでリンゴの果実をスライスする目的のためには、まな板部1には酸や水の影響を受けにくい材料が適している。
【0031】
図8は、まな板部1の搭載面に被加工物3を搭載し、カッター部2の複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの内、一番下に位置するブレード25dの刃先が、被加工物3に接し、被加工物3のスライス作業を開始する直前の状態を模式的に示す。一方、図9は、カッター部2をまな板部1の搭載面の方向に向けて押し下げることにより、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gが、それぞれの刃先線を水平方向に維持して、同時に鉛直方向に並進移動し、被加工物3を8枚のスライス片3a,3b,3c,…,3hにスライス加工して、分離が完了する直前状態を示す。図9ではカッター部2の複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの内、一番上に位置するブレード25aとブレード25gの刃先が、被加工物3を貫通し、被加工物3の外周に到達した状態であるが、この状態では、カッター部2がまな板部1の搭載面の方向に押し下げられた結果、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先が、台座14aと台座14bとの間、台座14bと台座14cとの間、台座14cと台座14dとの間、…(中略)…台座14gと台座14hとの間に位置し、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先がまな板部1の搭載面に設けられた溝に挿入又は到達している。
【0032】
図9に示したスライス加工による分離が完了する直前の状態では、一番下に位置するブレード25dは、ブレード25dの刃先だけでなく、ブレード25dの全体が、台座14dと台座14eとの間に挿入されている。カッター部2の複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの内、下から2番目に位置するブレード25c及びブレード25eも、スライス加工が分離が完了する直前の状態では、カッター部2が押し下げられた結果、ブレード25c及びブレード25eのそれぞれの刃先部分だけでなく、ブレード25c及びブレード25eの「平」の部分まで含め、即ち、ブレード25c及びブレード25eの刃先側から半分以上の部分が、台座14cと台座14dの間、及び台座14eと台座14fの間に挿入されている。図9に示すとおり、まな板部1の搭載面に複数の溝が設けられているので、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gが被加工物3を貫通した後も、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先を損傷することなく、スライス加工が完了できる。
【0033】
図9から分かるとおり、第1の実施形態に係る並列一括スライサーでは、ブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先と、それぞれのブレードに隣接する他のブレード(下方に位置するブレード)の峰との間にブレード間ギャップが存在するような関係で、それぞれ配列されているので、ブレード25a,25b,25c,…,25gの厚みによる被加工物3からのブレードの厚み方向の応力及び刃先面に垂直方向の応力を緩和することができる。図9では、一番下に位置するブレード25dの直上の被加工物3のスライス片3dとスライス片3eの間に生じたギャップが、ブレード25dの幅より狭くなっており、スライス方向に垂直に発生する被加工物3からの応力が緩和されていることが分かる。又ブレード25bの直上のスライス片3bとスライス片3cの間に生じたギャップが、上部に行くに従い狭くなっており、スライス方向に垂直に発生する被加工物3からの応力が緩和されていることが分かる。
【0034】
ブレード25a,25b,25c,…,25gのブレード間ギャップΔH1,ΔH2,ΔH3を5〜6mm程度、即ちスライス幅の25%〜50%程度に設計することにより、図9に示したとおり、先行するブレードの刃厚によるスライス方向に垂直方向の応力が働いた後に、隣接する次のブレードの刃先が入っていくようになるので、小さなスライス圧力Pにより、簡単にスライス加工が可能になる。よって、第1の実施形態に係る並列一括スライサーによれば、例えば、マグネス・テイラー硬度計を用いた貫入試験によって得られる硬度が2kg程度以上となるような、リンゴ等の果肉硬度の高い被加工物であっても、カッター部2をまな板部1の搭載面の方向(鉛直方向:図1において下向き方向)に向けて押し下げることにより、過度なスライス圧力を必要とせず、1回の単純な加圧作業で、カッター部2を構成している複数のブレード25a,25b,25c,…,25gによって、被加工物3からの応力を緩和しながら、被加工物3をスライスすることができるので、スライス圧力Pを低減することが可能になる。例えば、直径7.9mmのシリンダを用いたマグネス・テイラー硬度計のシリンダの貫入試験の抵抗力の3〜5倍の押し下げ強度に相当する力で、被加工物3をスライスすることができる。更に、被加工物3からの応力が緩和されるので、ブレード25a,25b,25c,…,25gの曲がり等の損傷も抑制でき、製品寿命を長くすることが可能である。
【0035】
以上において説明したとおり、第1の実施形態に係る並列一括スライサーによれば、カッター部2をまな板部1の搭載面の方向に押し下げるという、1回の単純な加圧作業で、カッター部2を構成している複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの刃先が、それぞれの刃先線を水平方向に維持したまま、同時に並進移動し、被加工物3をそれぞれ貫通し、まな板部1の搭載面に設けられた複数の溝に挿入又は到達し、図10に示すように、被加工物3を互いに平行な面を有するスライス片3a,3b,3c,…,3hにスライス加工できる。仮に、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれのブレード間ギャップΔH1=ΔH2=ΔH3=0mmとした場合においては、ブレード25a,25b,25c,…,25gの厚みによる、スライス方向に垂直に発生する被加工物3からの応力を緩和する逃げ道が十分ではなく、被加工物3のスライス加工に非常に大きなスライス圧力を要するので、比較例1と同様な状況が発生する。又、比較例1及び2とは異なり、第1の実施形態に係る並列一括スライサーにおいては、それぞれの刃先線が水平方向に維持されているので、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先に付与されるスライス圧力Pの方向が、刃先線の方向に対して垂直となるため、より小さなスライス圧力Pで、被加工物3をスライスすることができる。特に、カッター部2を、人間の力が有効に発揮し易い鉛直方向に押し下げればよいので、刃先線を水平方向に維持した複数のブレード25a,25b,25c,…,25gによって、家庭の主婦等が簡単にリンゴ等の被加工物3をスライスできる。
【0036】
図10は、被加工物3としてのリンゴを、互いに平行なスライス片3a,3b,3c,…,3hにスライス加工した状態を模式的に示すが、第1の実施形態に係る並列一括スライサーによれば、マグネス・テイラー硬度計を用いた貫入試験によって得られる硬度が2kg程度以上となるリンゴ等の果肉硬度の高い被加工物3であっても、小さなスライス圧力Pにより、簡単に、互いに平行な複数のスライス片3a,3b,3c,…,3hにスライスできる。従来のように、リンゴを放射状に縦割りするのではなく、図10に示すように、1cm程度の厚さに輪切りに平行にスライスして、複数枚のスライス片3a,3b,3c,…,3hに分離すれば、リンゴの皮が食べやすくなる。よって、リンゴの皮に含まれるアントシアニン等のポリフェノールを有効に人間が摂取可能となる。
【0037】
図11〜図13は、スライス加工完了後にカッター部2が一番下の位置まで押し下げられた状態の第1の実施形態に係る並列一括スライサーの全景の模式図の一例である。図11は、図12に示した正面から見た全体図の右側面から見た全体図であり、第2のガイド棒12b及び第2のガイド棒12bに誘導される第2のブレード固定側板22b側の図のみが示されているが、図12の正面から見た全体図からは、互いに平行な第1のガイド棒12aと第2のガイド棒12bとが、対をなして、それぞれ底板11に垂直方向に設けられ、第1のガイド棒12aを通す貫通穴が設けられた第1のフック21aが第1のブレード固定側板22aの上部に接続され、第2のガイド棒12bを通す貫通穴が設けられた第2のフック21bが第2のブレード固定側板22bの上部に接続されていることが分かる。第1のフック21a及び第2のフック21bのそれぞれに板状に設けられた加圧プレートに、それぞれスライス圧力Pを印加することにより、カッター部2が鉛直方向に押し下げられる。
【0038】
図13の上面から見た全体図から分かるように、カッター部2の一部を構成する第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bのそれぞれの一方の端部(図13において下側の端部)は前板26aの両側の端部に溶接、蝋付け、焼きばめ、若しくはネジ止め等により接続され、第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bのそれぞれの他方の端部(図13において上側の端部)は後板26bの両側の端部に溶接、蝋付け、焼きばめ、若しくはネジ止め等により接続されて、全体として矩形形状をなしている。図11の右側面から見た全体図には、第2のブレード固定側板22bの上部において、第2のブレード固定側板22bの一方の端部の上部(図11において左側の端部の上部)が前板26aに接続され、第2のブレード固定側板22bの他方の端部の上部(図11において上側の端部の上部)が後板26bに接続されている状態を示している。図12の正面から見た全体図には、カッター部2の上部において、前板26aが第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bに挟まれており、前板26aの両端が第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bにそれぞれ固定されている状態が示されている。
【0039】
即ち、第1のブレード固定側板22a、前板26a、第2のブレード固定側板22b及び後板26bで構成される矩形の枠組みによって、カッター部2の上部は機械的強度を維持している。この第1のブレード固定側板22a、前板26a、第2のブレード固定側板22b及び後板26bで構成される矩形の枠組みは、カッター部2の「ブレード保持手段」を構成している。構造的には、第1のフック21a及び第2のフック21bは、カッター部2の上部において、それぞれこの矩形の枠組みに固定されている。よって、第1のフック21a及び第2のフック21bのそれぞれに板状に設けられた加圧プレートに、それぞれ、マグネス・テイラー硬度計を用いた貫入試験によって得られる硬度が2kg程度以上となるリンゴ等の果肉硬度の高い被加工物3をスライス加工するに必要なスライス圧力Pを印加しても、所定の機械的強度を維持できるので、カッター部2を鉛直方向に押し下げることにより、被加工物3を互いに平行な複数のスライス片に分離するように、スライス加工できる。
【0040】
カッター部2を構成する第1のブレード固定側板22a、前板26a、第2のブレード固定側板22b、後板26b、第1のフック21a及び第2のフック21bの材料としては、鉄等の金属若しくはプラスチック系の材料が好ましい。機械的強度面では、カッター部2の材料としては、鉄やステンレス鋼(SUS)等の金属が望ましいが、まな板部1と同様に、一般家庭などで使用する場合は収納のため、持ち運ぶことも想定されることからプラスチック系の材料でも十分対応可能である。特に、リンゴ等の果実をスライスする目的からは、酸や水の影響を受けにくい材料が適している。
【0041】
図9に示したとおり、被加工物3をスライス加工するという機能のみに着目すれば、カッター部2をまな板部1の搭載面の方向に向けて押し下げた状態で、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先が、台座14aと台座14bとの間、台座14bと台座14cとの間、台座14cと台座14dとの間、…(中略)…台座14gと台座14hとの間に位置し、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先がまな板部1の搭載面に設けられた溝に挿入又は到達するように構成しておけば、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gが被加工物3を貫通した後も、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先が損傷することが防止できる。しかしながら、図11〜図13に示すように、カッター部2をスライス加工完了の高さから更に下方に押し下げ、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの全体が、台座14aと台座14bとの間、台座14bと台座14cとの間、台座14cと台座14dとの間、…(中略)…台座14gと台座14hとの間に位置するようにしておけば、第1の実施形態に係る並列一括スライサーの収納時や梱包・運搬時の全体の大きさをコンパクトにできるという有利な効果を奏することが可能になる。
【0042】
《第1の実施形態の変形例》
本発明の第1の実施形態の変形例に係る並列一括スライサーは、スライス幅毎に平行に配置された複数の溝を有し、被加工物を搭載するまな板部(俎板部)1と、それぞれのブレードの刃先をまな板部1の搭載面の方向に向け、少なくともそれぞれのブレードの刃先が複数の溝にそれぞれ挿入可能なように平行に配置され、上方に位置するブレードの刃先と隣接する他の(下方に位置する)ブレードの峰との間にブレード間ギャップΔHが存在するような関係で、それぞれ配列された複数のブレード25a,25b,25c,…,25gを有するカッター部2とを備える点では、基本的に図1〜図13に示した第1の実施形態に係る並列一括スライサーと同様である。しかしながら、図14に示すとおり、カッター部2の一部を構成する第1のフック21aの下端部に第1のガイド棒12aを通す貫通穴が設けられた円筒状の第1の鞘部27aが接続され、カッター部2の他の一部を構成する第2のフック21bの下端部に第2のガイド棒12bを通す貫通穴が設けられた円筒状の第2の鞘部27bが接続されている点で、第1の実施形態に係る並列一括スライサーとは異なる。
【0043】
図14に示すように、第1の実施形態の変形例に係る並列一括スライサーを構成する第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bとが対をなし互いに対向して配置されている点では、第1の実施形態に係る並列一括スライサーと同様である。第1のブレード固定側板22aの上部の中央には、スライス圧力Pを印加する第1のフック21aが設けられ、第2のブレード固定側板22bの上部の中央には、スライス圧力Pを印加する第2のフック21bが設けられ、更に、第1のフック21aの下端部に第1の鞘部27aが接続され、第2のフック21bの下端部に第2の鞘部27bが接続され、第1の鞘部27a及び第2の鞘部27bが、それぞれまな板部1の高さと同程度の長い円筒状をなしているので、第1のフック21aの加圧プレート及び第2のフック21bの加圧プレートにスライス圧力を印加した場合、第1のガイド棒12aの外径と第1の鞘部27aの内径との遊び(クリアランス)、及び第2のガイド棒12bの外径と第2の鞘部27bの内径との遊び(クリアランス)を小さくすることが可能となり、より精度の高いスライス加工が可能になる。他は、既に説明した第1の実施形態に係る並列一括スライサーと実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0044】
以上のとおり、第1の実施形態の変形例に係る並列一括スライサーによれば、第1の実施形態に係る並列一括スライサーと同様に、カッター部2をまな板部1の搭載面の方向に押し下げるという、1回の単純な加圧作業で、カッター部2を構成している複数のブレード25a,25b,25c,25d,…の刃先が、それぞれの刃先線を水平方向に維持したまま、同時に並進移動し、被加工物をそれぞれ貫通し、まな板部1の搭載面に設けられた複数の溝に挿入又は到達し、被加工物を互いに平行な面を有するスライス片にスライス加工できる。更に、カッター部2をスライス加工完了の高さから更に下方に押し下げ、複数のブレード25a,25b,25c,25d,…のそれぞれの全体が、まな板部1の搭載面に設けられた複数の溝の間に収納されるようにしておけば、第1の実施形態の変形例に係る並列一括スライサーの収納時や梱包・運搬時の全体の大きさをコンパクトにできると同時に、運搬時の振動による音の発生を抑制することができるという有利な効果を奏することが可能になる。
【0045】
《第2の実施形態》
本発明の第2の実施形態に係る並列一括スライサーは、スライス幅毎に平行に配置された複数の溝を有し、被加工物3を搭載するまな板部(俎板部)1と、それぞれのブレードの刃先をまな板部1の搭載面の方向に向け、少なくともそれぞれのブレードの刃先が複数の溝にそれぞれ挿入可能なように平行に配置され、上方に位置するブレードの刃先と隣接する他の(下方に位置する)ブレードの峰との間にブレード間ギャップΔHが存在するような関係で、それぞれ配列された複数のブレード25a,25b,25c,…,25gを有するカッター部2とを備える点では、第1の実施形態及びその変形例に係る並列一括スライサーと同様である。しかしながら、図15〜図17に示すとおり、カッター部2を移動させるための加圧補助手段を構成する第1の加圧プレート29a及び第2の加圧プレート29bが、第1のフック21aから第2のフック21bに向かう方向と直交する方向に設けられている点が、第1の実施形態及びその変形例に係る並列一括スライサーとは、異なる。
【0046】
図15〜図17は、スライス加工完了後にカッター部2が一番下の位置まで押し下げられた状態の第2の実施形態に係る並列一括スライサーの全景の模式図の一例である。図15は、図16に示した正面から見た全体図の右側面から見た全体図であり、第2のガイド棒12b及び第2のガイド棒12bに誘導される第2のブレード固定側板22b側の図のみが示されているが、図16の正面から見た全体図からは、互いに平行な第1のガイド棒12aと第2のガイド棒12bとが、対をなして、それぞれ底板11に垂直方向に設けられ、第1のガイド棒12aを通す貫通穴が設けられた第1のフック21aが第1のブレード固定側板22aの上部に接続され、第2のガイド棒12bを通す貫通穴が設けられた第2のフック21bが第2のブレード固定側板22bの上部に接続されていることが分かるが、第1の実施形態及びその変形例に係る並列一括スライサーとは異なり第1のフック21a及び第2のフック21bのそれぞれには、加圧プレートが存在しない。その代わり、スライス圧力Pを印加してカッター部2を鉛直方向に押し下げるための第1の加圧プレート29aが前板26aに溶接、蝋付け、焼きばめ、ネジ止め、若しくは鋳造等による一体成形等により接続され、スライス圧力Pを印加してカッター部2を鉛直方向に押し下げるための第2の加圧プレート29bが後板26bに溶接、蝋付け、焼きばめ、ネジ止め、若しくは鋳造等による一体成形等により接続されている。
【0047】
即ち、図17の上面から見た全体図から分かるように、カッター部2の一部を構成する第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bのそれぞれの一方の端部(図17において下側の端部)は前板26aの両側の端部に溶接、蝋付け、焼きばめ、若しくはネジ止め等により接続されているが、この前板26aの中央部において、矩形の第1の加圧プレート29aが長手方向を前板26aに直交する方向(図17において下方向)に張り出すように接続されている。又、第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bのそれぞれの他方の端部(図17において上側の端部)は後板26bの両側の端部に溶接、蝋付け、焼きばめ、若しくはネジ止め等により接続されているが、この後板26bの中央部において、矩形の第2の加圧プレート29bが長手方向を後板26bに直交する方向(図17において上方向)に張り出すように接続されている。
【0048】
図15の右側面から見た全体図には、第2のブレード固定側板22bの上部において、第2のブレード固定側板22bの一方の端部の上部(図15において左側の端部の上部)が前板26aに接続され、この前板26aの上部において、矩形の第1の加圧プレート29aが長手方向を前板26aに直交する方向(図15において左方向)に張り出すように接続されている。同様に、第2のブレード固定側板22bの他方の端部の上部(図15において上側の端部の上部)が後板26bに接続されているが、この後板26bの上部において、矩形の第2の加圧プレート29bが長手方向を後板26bに直交する方向(図15において右方向)に張り出すように接続されている。図16の正面から見た全体図には、カッター部2の上部において、前板26aが第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bに挟まれており、前板26aの両端が第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bにそれぞれ固定され、この前板26aの中央部に矩形の第1の加圧プレート29aが接続されている状態が示されている。
【0049】
第1の実施形態及びその変形例に係る並列一括スライサーと同様に、第1のブレード固定側板22a、前板26a、第2のブレード固定側板22b及び後板26bで構成される矩形の枠組みによって、カッター部2の上部は機械的強度を維持している。構造的には、第1のフック21a及び第2のフック21bは、カッター部2の上部において、それぞれこの矩形の枠組みに固定され、更に、第1の加圧プレート29a及び第2の加圧プレート29bが、第1のフック21aから第2のフック21bに向かう方向と直交する方向にそって矩形の枠組みに固定されている。第1の加圧プレート29a及び第2の加圧プレート29bに、それぞれ、例えば、マグネス・テイラー硬度計を用いた貫入試験によって得られる硬度が2kg程度以上となるリンゴ等の果肉硬度の高い被加工物3をスライス加工するに必要なスライス圧力Pを印加して、カッター部2を鉛直方向に押し下げることにより、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gが、それぞれの刃先線を水平方向に維持して、同時に鉛直方向に並進移動し、被加工物3を互いに平行な複数のスライス片に分離するように、スライス加工できる。他は、既に説明した第1の実施形態及びその変形例に係る並列一括スライサーと実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0050】
図15〜図17に示すように、カッター部2をスライス加工完了の高さから更に下方に押し下げ、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの全体が、台座14aと台座14bとの間、台座14bと台座14cとの間、台座14cと台座14dとの間、…(中略)…台座14gと台座14hとの間に位置するようにしておけば、第1の加圧プレート29a及び第2の加圧プレート29bが、第1のフック21aから第2のフック21bに向かう方向と直交する方向に設けられたトポロジーであっても、第2の実施形態に係る並列一括スライサーの収納時や梱包・運搬時の全体の大きさをコンパクトにできるという有利な効果を奏することができる。
【0051】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1及び第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、既に述べた第1及び第2の実施形態の説明においては、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先が両刃の構造の場合について例示的に説明したが、本発明の並列一括スライサーのカッター部に用いる複数のブレードのそれぞれの刃先の構造は、第1及び第2の実施形態において例示した構造に限定されるものではなく、図18に示すとおり、片刃の構造等他の断面構造であっても構わない。
【0052】
図18に示すように、本発明のその他の実施形態に係る並列一括スライサーのカッター部を構成する複数の片刃のブレード25as,25bs,25cs,…,25gsのそれぞれの一端は、第1のブレード固定側板22aに固定されている(図示を省略しているが、複数の片刃のブレード25as,25bs,25cs,…,25gsのそれぞれの他端は、図3に示したのと同様に、第1のブレード固定側板22aに対向する第2のブレード固定側板に固定されている。)。図18に示すように、片刃のブレード25asの刃先の高さは、隣接する片刃のブレード25bsの峰の高さよりもブレード間ギャップΔH1分高い。片刃のブレード25bsの刃先の高さは、隣接する片刃のブレード25csの峰の高さよりもブレード間ギャップΔH2分高く、片刃のブレード25csの刃先の高さは、隣接する片刃のブレード25dsの峰の高さよりもブレード間ギャップΔH3分高い。片刃のブレード25dsの峰の高さは、隣接する片刃のブレード25esの刃先の高さよりもブレード間ギャップΔH3分低い。片刃のブレード25esの峰の高さは、隣接する片刃のブレード25fsの刃先の高さよりもブレード間ギャップΔH2分低く、片刃のブレード25fsの峰の高さは、隣接する片刃のブレード25gsの刃先の高さよりもブレード間ギャップΔH1分低い。第1及び第2の実施形態と同様に、図18において、ΔH1=ΔH2=ΔH3=ΔHとしてもよく、ΔH1,ΔH2,ΔH3の値はそれぞれ異なっていてもよい。
【0053】
図18に示すような片刃のブレード25as,25bs,25cs,…,25gsであっても、ブレード間ギャップΔH1,ΔH2,ΔH3を5〜6mm程度、即ちスライス幅の25%〜50%程度に設計することにより、図9に示したのと同様に、先行するブレードの刃厚によるスライス方向に垂直方向の応力が働いた後に、隣接する次のブレードの刃先が入っていくようになるので、小さなスライス圧力Pにより、簡単にスライス加工が可能になる。よって、リンゴ等の果肉硬度の高い被加工物であっても、カッター部2をまな板部1の搭載面の方向に向けて押し下げることにより、過度なスライス圧力を必要とせず、1回の単純な加圧作業で、カッター部2を構成している複数の片刃のブレード25as,25bs,25cs,…,25gsによって、被加工物3からの応力を緩和しながら、被加工物3をスライスすることができるので、スライス圧力Pを低減することが可能になる。被加工物3からの応力が緩和されるので、片刃のブレード25as,25bs,25cs,…,25gsの曲がり等の損傷も抑制でき、製品寿命を長くすることが可能である。
【0054】
又、第1及び第2の実施形態では、第1のブレード固定側板22a、前板26a、第2のブレード固定側板22b及び後板26bでブレード保持手段が構成されることを説明したが、ブレード保持手段は矩形である必要はなく、6角形、8角形、円形等の枠組みでブレード保持手段を構成してもよい。特に、被加工物3がリンゴのような、ほぼ球形の3次元形状であれば、ブレード保持手段を、球の赤道面を切る断面の径よりも大きな直径を有する円形等の枠組みで構成し、それぞれのブレードの長さ(刃渡り)も、枠組みの上面図に合わせて、適宜調整して、異なる長さを有するようにしてもよい。
【0055】
第2の実施形態では、カッター部2を移動させるための加圧補助手段を構成する第1の加圧プレート29a及び第2の加圧プレート29bが、第1の実施形態の加圧補助手段を構成する第1のフック21a及び第2のフック21bの配列の方向と直交する方向に設けられたトポロジーを説明したが、本発明の加圧補助手段は、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせて、十字型のトポロジーにしても構わないし、加圧プレートが1個又は3個等他の個数でも構わない。更に、カッター部2を構成するブレード保持手段の周りをベルト状に囲むリングで構成してもよい。いずれにせよ、カッター部2を構成するブレード保持手段をまな板部1の搭載面の方向に向けスライス圧力の印加方向を規定してブレード保持手段の移動を補助する機能、若しくはこれに均等な機能を持てば、加圧補助手段として、種々の構造やトポロジーが採用可能である。
【0056】
更に、第1及び第2の実施形態では、第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12b
の2本のガイド棒で、加圧補助手段の移動方向を誘導する「移動方向誘導手段」の構造を例示したが、移動方向誘導手段としてのガイド棒は、1本でも、3本でもよく、移動方向誘導手段としては棒状の構造だけに限定されず、アリ溝(蟻溝)を摺動する機構を備えたような構造でもよい。少なくとも、加圧補助手段に対し、その移動方向(押し下げ方向)を一定方法に正確且つ確実に誘導できる機能や機構を有する構造であれば、移動方向誘導手段の構造は、第1及び第2の実施形態で説明したものに限定されるものではない。
【0057】
図2,図3(b),図8,図9,図11,図15,図18等では、複数のブレードを固定するブレード固定側板の下部の形状として、V字型、即ち、先端部を切り欠いた下向きの2等辺三角形の形状を例示したが、ブレード固定側板の下部の形状は例示したV字型の構造に限定されるものではない。被加工物が大根やゴボウ等の長手方向に長い、長尺な形状を有する場合は、ブレード固定側板の下部の形状がV字型を連続したW字型として長手方向のスパンを確保してもよく、更に、V字型を3つ以上連続した三角波の形状にして長手方向のスパンを延長し、ブレード固定側板に固定される複数のブレードのそれぞれが、一方の(上方に位置する)ブレード刃先と、隣接する他方(下方に位置する)のブレードの峰との間に、ブレード間ギャップが存在するような関係で配列されてもよい。
【0058】
上記の第1及び第2の実施形態では、説明の便宜上、複数のブレードが同時に鉛直方向に並進移動する場合で、例示的に説明したが、本発明は、座標軸を90°回転して、並進移動の方向を水平方向に設定すること等の変形例を妨げるものではない。家庭用等、簡易な並列一括スライサーの態様であれば、一般には、第1及び第2の実施形態で説明したような、複数のブレードが同時に鉛直方向に並進移動する態様の方が、装置の構成が簡潔になり、人力の印加も容易になるが、食品工場等、大量に被加工物を連続的にスライスし、スライス片を大量生産する場合は、ブレードを水平方向に並進移動する態様の方が便利な場合もある(この場合は、被加工物を搭載するまな板部の構造も、被加工物の搬送系にあわせて適宜変形する必要があるし、カッター部の駆動に、空気圧や油圧、あるいは電磁力等の人力以外の手段を用いてもよい。)。複数のブレードを同時に水平方向に並進移動するトポロジーでの態様であれば、第1及び第2の実施形態等で説明した「スライス圧力」等は水平方向に定義される圧力を意味し、「押し下げ」は、水平方向の移動を意味することになるのは勿論である。同様に、第1及び第2の実施形態で説明した「刃先の高さ」、「峰の高さ」、或いは「刃幅方向」等も水平方向に定義されることも当然である。このように、本発明の複数のブレードの「並進移動の方向」は、使用の態様に応じて、任意に設定可能であることに留意されたい。同様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0059】
1…まな板部(俎板部)
11…底板
12a…第1のガイド棒
12b…第2のガイド棒
13…懸架梁
14a,14b,14c,…,14h…台座
2…カッター部
21a…第1のフック
21b…第2のフック
22a…第1のブレード固定側板
22b…第2のブレード固定側板
25a〜25g,25as〜25gs…ブレード
26a…前板
26b…後板
27a…第1の鞘部
27b…第2の鞘部
29a…第1の加圧プレート
29b…第2の加圧プレート
3…被加工物
3a,3b,3c,…,3e…スライス片
【技術分野】
【0001】
本発明は、果物や野菜などの被加工物をワンタッチ(一回の加圧移動処理)で、同時に複数枚のスライス片を平行に分離する並列一括スライサーに関する。
【背景技術】
【0002】
リンゴは、食物繊維,カリウム、ポリフェノールを多く含んでいるという栄養的特長が知られているが、リンゴに含まれる有効成分は、皮と実の間に多く含まれるとされる。特にアントシアニンと呼ばれるポリフェノールは、赤い皮の部分に含まれる。したがって、皮を捨ててしまうと、体によい成分も捨てていることになる。個人の好みにもより、リンゴの皮が硬い、口に残る、食味が良くない、リンゴの皮の食感が苦手と感じる人がいる。
【0003】
従来、包丁や果物ナイフを用いず、リンゴを放射状に8分割等の縦割りする果物カッターが知られている(特許文献1及び2参照。)。しかしながら、リンゴを放射状に縦割りするのではなく、1cm程度の厚さに輪切りに平行にスライスして、複数枚の輪切りの形状に分離すれば、リンゴの皮が食べやすくなる。リンゴの芯をくり抜いてもよいが、芯をくり抜かずに芯の部分を持って、食べることも可能である。
【0004】
トマト等の果肉硬度の柔らかい果物や野菜などの被加工物に対しては、刃先を被加工物方向に向けた長尺なスライス刃を、被加工物をスライスする幅に離間して複数枚、平行に重ね、それぞれのスライス刃の両端を、スライス刃を貫通する支柱で固定したカッター部を有するスライス装置が提案されている(特許文献3参照。)。特許文献3に記載されたスライス装置では、複数のスライス刃を有するカッター部に対し、移動具で被加工物をスライス刃の方向に押し付けるように移動させることにより、トマト等の果肉硬度の柔らかい被加工物が、複数枚離間して重ねられたスライス刃とスライス刃との間を通過し、ワンタッチで、被加工物をスライスすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2002−28892号公報
【特許文献2】実開昭62−46597号公報
【特許文献3】特開2003−11091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属や高分子材料等の工業用材料では、硬さや硬度の定義は統一的に用いられているが、農産物にたいしては、統一的な定義が乏しいのが実情である。熟度や品種にも依存するが、みかんよりもグレープフルーツの方が硬く、グレープフルーツよりもリンゴの方が硬い。果実の果肉硬度に関しては、マグネス・テイラー(Magness-Taylor)硬度計及びユニバーサル硬度計による貫入試験による測定がなされている。貫入試験に用いるマグネス・テイラー硬度計のシリンダの径にもよるが、直径7.9mm又は11.1mmのシリンダの貫入試験で、リンゴの北斗、むつの果肉硬度は4〜8kg程度、リンゴの王林、ふじの果肉硬度は3〜7kg程度である。梨の豊水の果肉硬度は1.5〜4kg程度でリンゴよりも柔らかい。ももの場合は、品種の他、熟度の依存性が高いが、一般に果肉硬度は1.5〜4kg程度でリンゴよりも柔らかい。キウイフルーツの果肉硬度は0.5〜2kg程度、トマトの果肉硬度は0.18〜0.3kg程度、イチジクの果肉硬度は0.14〜0.47kg程度であり、リンゴよりも柔らかい。特許文献3に記載されたスライス装置は、キウイフルーツ、トマトやイチジク等の果肉硬度が2kg程度以下の柔らかい果実の切断には適用可能であるが、果肉硬度が2kg程度以上になると、次第に、互いに平行な複数のスライス片(輪切り)に分離するのが困難になる。特に、果肉硬度が4kg程度以上の果実を、特許文献3に記載されたスライス装置で、互いに平行な複数のスライス片(輪切り)に分離するのは現実的でなくなる。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点を除くためになされたものであって、その目的とするところは、マグネス・テイラー硬度計を用いた貫入試験によって得られる硬度が2kg程度以上となるような硬度を有する被加工物であっても、過度なスライス圧力を必要とせず、1回の単純な加圧作業で、容易に被加工物を、互いに平行な複数のスライス片(輪切り)に分離することが可能な、並列一括スライサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の態様は、(a) スライス幅毎に平行に配置された複数の溝を有し、被加工物を搭載するまな板部と、(b)それぞれのブレードの刃先をまな板部の方向に向け、少なくともそれぞれのブレードの刃先が複数の溝にそれぞれ挿入可能なように平行に配置され、且つ、着目した一のブレードの刃先と、この着目したブレードに隣接して下方に位置する他方のブレードの峰との間にブレード間ギャップが存在するような関係で、それぞれ配列された複数のブレード、この複数のブレードを固定するブレード保持手段を有するカッター部とを備える並列一括スライサーであることを要旨とする。この並列一括スライサーにおいては、カッター部をまな板部の方向に移動することにより、複数のブレードを同時に並進移動し、まな板部に搭載された被加工物を、複数の平行なスライス片に分離する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マグネス・テイラー硬度計を用いた貫入試験によって得られる硬度が2kg程度以上となるような硬度を有する被加工物であっても、過度なスライス圧力を必要とせず、1回の単純な加圧作業で、容易に被加工物を、互いに平行な複数のスライス片(輪切り)に分離することが可能な、並列一括スライサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る並列一括スライサーの要部の原理的な概略構造と、その要部の被加工物に対する関係(並列一括スライスの原理)を説明するための模式的な断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る並列一括スライサーの要部をなすカッター部の一部を構成する複数のブレードの相互の位置関係、及びこれらの複数のブレードを固定するブレード固定側板(第1のブレード固定側板)との関係を説明する断面図である。
【図3】図3(a)は、第1の実施形態に係る並列一括スライサーの要部をなすカッター部の正面図で、図3(b)は、図3(a)の右側側面図である。
【図4】図3(a)に例示したカッター部の一部を構成する一枚のブレードに着目した、ブレードの組み立て図である。
【図5】第1の実施形態に係る並列一括スライサーの要部をなすまな板部の構造を説明するための模式的な右側面図である。
【図6】図5の右側面図に対応する正面図である。
【図7】図5の右側面図、図6の正面図に対応する上面図である。
【図8】第1の実施形態に係る並列一括スライサーのまな板部の搭載面に被加工物を搭載し、カッター部の一番下に位置するブレードの刃先が、被加工物に接し、被加工物のスライス作業を開始する直前の状態を模式的に示す図である。
【図9】カッター部を押し下げることにより、被加工物を8枚のスライス片にスライス加工して分離が完了する直前の状態を示す図である。
【図10】被加工物としてのリンゴを、互いに平行なスライス片にスライス加工した状態を模式的に示す鳥瞰図である。
【図11】スライス加工完了後にカッター部が一番下の位置まで押し下げられた状態の第1の実施形態に係る並列一括スライサーの全景を右側面から見た全体図である。
【図12】図11の右側面から見た全体図に対応する、正面から見た全体図である。
【図13】図11の右側面から見た全体図、図12の正面から見た全体図に対応する、上面から見た全体図である。
【図14】本発明の第1の実施形態の変形例に係る並列一括スライサーの正面から見た全体図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る並列一括スライサーの全景を右側面から見た全体図である。
【図16】図15の右側面から見た全体図に対応する、正面から見た全体図である。
【図17】図15の右側面から見た全体図、図16の正面から見た全体図に対応する、上面から見た全体図である。
【図18】本発明のその他の実施形態に係る並列一括スライサーの要部をなすカッター部の一部を構成する複数の片刃のブレードの相互の位置関係、及びこれらの複数の片刃のブレードを固定するブレード固定側板(第1のブレード固定側板)との関係を説明する断面図である。
【図19】本発明に至るまでに、本発明者が検討した第1の比較例(比較例1)に係る並列一括スライサーの構造を説明する模式図である。
【図20】本発明に至るまでに、本発明者が検討した第2の比較例(比較例2)に係る並列一括スライサーの構造を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明に至る経緯)
先ず、本発明の第1及び第2の実施形態に係る並列一括スライサーを説明する前に、本発明に至るまでの、比較例に係る並列一括スライサーの試作検討や研究開発の経緯を説明する。本発明者は、当初、図19に示すように、長い柄52の付いた2本の鎌51を平行に並べ、鎌51の先端を支点支持部53に固定し、受け皿部分54に被加工物3としてのリンゴを載せて、鎌51の部分を被加工物3に押し当てて、被加工物3をスライスする並列一括スライサー(比較例1)を試作した。図19において、受け皿部分54と支点支持部53とは共通の底板55に固定されている。しかし、図19に示す比較例1に係る並列一括スライサーでは、鎌51の刃がマグネス・テイラー硬度計による貫入試験による果肉硬度が2〜8kg程度の被加工物3を最後まで切り抜くことができず、被加工物3に食い込んだままの状態となり、被加工物3をスライスできないという問題点が判明した。図19に示す比較例1に係る並列一括スライサーでは、2本の鎌51を平行して取り付けたことにより、果肉硬度が2〜8kg程度に硬い被加工物3を切りはじめてから、鎌51の刃の厚みにより被加工物3から刃の厚み方向に発生する応力が邪魔をし、被加工物3を直線的に切ることができず、鎌51の刃が斜め方向に進んだことによると問題点が解析された。
【0012】
比較例1に係る並列一括スライサーの問題点の解析から、果肉硬度の硬い被加工物3を一気にスライスするためには、被加工物3を、時間差をつけて順にスライスするような、刃を少しずらして取り付ける工夫をしなければならないことが判明したので、次に、図20に示す並列一括スライサー(比較例2)を試作した。図20(a)に示すように、比較例2に係る並列一括スライサーでは、1本の回転軸66sに、等間隔で7本の包丁51a,51b,51c,…,51gが末広状に溶接されている。回転軸66sは、底板65に固定され、底板65から垂直に延びる2本の支柱63a、63bに両端を転がり軸受け等の回転支持部66a,66bを介して回転可能に固定されている。回転軸66sの一方の端部には、回転支持部66aを介してクランク67が接続され、クランク67の端部にはハンドル部68が接続されている。図20(b)に示すように、底板65には更に受け皿64が固定され、受け皿64には被加工物3が搭載される。図20(b)では見やすくするためには、クランク67、及びクランク67に接続されたハンドル部68の図示を省略しているので、支柱63bの手前側には、回転支持部66bのみが示されている。
【0013】
図20に示す比較例2に係る並列一括スライサーは、ハンドル部68を回転することにより、回転軸66sを回転させ、受け皿64に搭載された果肉硬度の硬い被加工物3を、回転軸66sに末広状に設けられた7本の包丁51a,51b,51c,…,51gで、時間差をつけて逐次、順にスライスせんとする設計であった。しかし、比較例2に係る並列一括スライサーは、比較例1に係る並列一括スライサーよりも、包丁51a,51b,51c,…,51gのそれぞれの刃先に伝わる力が構造上弱くなるため、被加工物3を最後まで切り抜くことができないという問題が判明した。又、比較例2に係る並列一括スライサーでは、包丁51a,51b,51c,…,51gのそれぞれの一端が、回転軸66sに固定された構造であるので、包丁51a,51b,51c,…,51gのそれぞれの刃先に付与される力の方向が、刃先線の方向に対して垂直でないためスライス時の被加工物3からの抵抗が大きく、人力でスムーズに被加工物3を切り抜くことができないという第2の問題も判明した。この第2の問題は、図19に示した比較例1に係る並列一括スライサーでも、2本の鎌51のそれぞれの先端を支点支持部53に固定し、長い柄52の部分を付いた2本の鎌51を、支点支持部53を中心として回転させているので、同様に生じる問題である。
【0014】
以上のような比較例1及び2に係る並列一括スライサーの検討を踏まえて、本発明者は、以下の本発明の第1及び第2の実施形態に係る並列一括スライサーを実現するに至った。次に、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態に係る並列一括スライサーを説明する。第1及び第2の実施形態に係る並列一括スライサーの説明では、特定の被加工物の例として、リンゴに着目して例示的に説明するが、本発明の被加工物としては、リンゴ以外の梨、じゃがいも等であっても、同様に本発明が適用可能であることは勿論である。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。例えば図1及び図9等において、被加工物のリンゴの直径が10cm程度であるがブレードの厚みは0.8mm〜1.2mm程度であるので、図1及び図9におけるブレードの厚みやスライス片間のギャップは、原理が把握しやすいように、現実の値より大きな寸法に誇張されて示されている。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。又、以下に示す第1及び第2の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
《第1の実施形態》
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る並列一括スライサーは、スライス幅毎に平行に配置された複数の溝を有し、被加工物3を搭載するまな板部(俎板部)1と、それぞれのブレードの刃先をまな板部1の搭載面の方向に向け、少なくともそれぞれのブレードの刃先が複数の溝にそれぞれ挿入可能なように平行に配置され、着目した一のブレード(上方に位置するブレード)の刃先と、この着目したブレードに隣接する他の(下方に位置する)ブレードの峰との間に、ブレード間ギャップΔHが存在するような関係で、それぞれ配列された複数のブレード25a,25b,25c,…,25gを有するカッター部2とを備える。図1の断面図は、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの長手方向(刃渡り方向)に垂直な断面を模式的に示しており、「スライス幅」は、この互いに平行に配置された複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの長手方向(刃渡り方向)に垂直な方向に定義される(図1では、紙面の水平方向に「スライス幅」が測られる。)。スライス幅は、被加工物3をスライス片に分離する幅でもあるので、例えば、マグネス・テイラー硬度計による貫入試験による果肉硬度が2〜8kg程度の果実であれば、10〜20mmが望ましい。被加工物3がリンゴの場合、スライス幅が10mm以下の場合、スライス片が薄すぎるので、スライス加工までは対応できるが、スティック状、若しくはダイス状に更に2次加工する際に、柔らかすぎて対応できない虞がある。又、被加工物3がリンゴの場合、スライス幅が20mm以上の場合、食感としてこれまでの放射状の8等分とさほど変わらない。但し、リンゴ以外の被加工物3の場合は、被加工物3の硬度等の性質や、その被加工物3に特有な食感等を考慮して、スライス幅を適宜調整すればよい。
【0016】
図1では、まな板部1は複数枚の台座14a,14b,14c,…,14hで構成され、台座14aと台座14bとの間、台座14bと台座14cとの間、台座14cと台座14dとの間、…(中略)…台座14gと台座14hとの間が、それぞれ、ブレード25a,25b,25c,…,25gの刃先を少なくとも挿入可能な深さを有する溝部を構成している。複数のブレード25a,25b,25c,…,25gは、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gが互いに一定の位置関係を維持しながら、同時に並進移動するように、カッター部2の一部を構成するブレード固定側板(第1のブレード固定側板)22aに固定されている。そして、台座14a,14b,14c,…,14hは、まな板部1の一部を構成する底板11に、それぞれ垂直に固定され、直立している。
【0017】
第1の実施形態に係る並列一括スライサーは、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの刃先が、まな板部1の搭載面に設けられた溝に挿入できるように設計しているので、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの、それぞれの峰から刃先方向に向かう方向(刃幅方向)と、溝部を構成している台座14a,14b,14c,…,14hの直立方向も互いに平行である。まな板部1の形状、大きさ、構造等は、被加工物3が搭載可能で、少なくともそれぞれのブレードの刃先が挿入可能な複数の溝を有していれば、任意の形状、大きさ、構造等が採用可能であり、図1に例示した形状、大きさ、構造等に限定されるものではない。例えば、まな板部1の搭載面にはブレードの刃先が挿入可能な複数の溝があればよいので、複数の溝の幅は、図1に例示したよりも狭く、それぞれのブレードの厚さよりも極くわずか、例えば20μm〜200μm程度のクリアランス分だけ広く余裕をもたせた構造でもよく、この場合は、複数の溝の幅がそれぞれ狭くなった分、台座14a,14b,14c,…,14hの厚さは、図1に例示した厚さよりも厚くなることは当然である。更に、図1に例示した台座14a,14b,14c,…,14hは、それぞれ穴部のない一枚の板状の構造として例示しているが、穴部のない板状であることは必ずしも必要ではない。例えば、台座14a,14b,14c,…,14hの少なくとも一部に開口部が設けられていてもよく、更に、図6に例示したように、棒状(円柱状)のフレームを折り曲げた構造にして内部を中空にする等、他の構造が採用可能である。
【0018】
まな板部1は、被加工物3を搭載するためのものであるので、被加工物3の大きさとスライス幅に合わせてその具体的な構造を任意に設計可能である。図1では、8枚の台座14a,14b,14c,…,14hを例示しているが、被加工物3の大きさや被加工物3をスライスするスライス幅の寸法に合わせて、台座プレートの枚数は8枚より多くすることも、8枚より少なくすることも可能である。台座プレートの枚数に合わせて、カッター部2を構成する複数のブレードの枚数も変化する。即ち、nを1以上の正の整数として、まな板部1を構成する台座プレートの枚数を(2n+1)枚とすれば、カッター部2を構成するブレードの枚数は2n枚になるが、スライス幅は、例えば、マグネス・テイラー硬度計による貫入試験による果肉硬度が2〜8kg程度の果実であれば、10〜20mm程度の値に設定されるので、果実の径が大きくなればnの値は大きくなる。なお、カッター部2を構成するブレードの枚数は偶数枚に限られないので、mを2以上の正の整数として、まな板部1を構成する台座プレートの枚数を2m枚とし、カッター部2を構成するブレードの枚数は(2m−1)枚となる構成でもよい。
【0019】
図1に例示するように、被加工物3の形状が、球状の場合であれば、まな板部1の搭載面に皿状の凹部を設ければ、被加工物3をまな板部1の搭載面に固定するのが容易になり、被加工物3のスライス作業が容易になるので好ましい。まな板部1の搭載面に皿状の凹部を設ける場合は、理想的には、図1に例示した台座14a,14b,14c,…,14hのそれぞれの上部の形状は、皿状の凹部の3次元構造に合わせて順に変化するトポロジーで設計することが好ましいことになる。即ち、まな板部1の被加工物3を搭載する搭載面は、互いに離間して平行に配置された複数の台座14a,14b,14c,…,14hのそれぞれの上端面にそれぞれ接する包絡面により定義される。但し、工業用製品の場合と異なり、リンゴ等の農産物の形状や大きさは、バラツキが大きいので、現実には、まな板部1の搭載面の構造や形状は、想定される被加工物3の最大公約数的な構造や形状に選定される。よって、図1に例示するように、まな板部1の搭載面に設けられた皿状の凹部の形状に、被加工物3の外面が正確に密着する必要はないので、凹部は必ずしも曲面で構成される必要はない。つまり、まな板部1の搭載面は、あくまでも、被加工物3をまな板部1の搭載面に固定するのが容易になる程度の何らかの凹部を有していれば構わないので、現実には種々の構造や形状が採用可能であり、例えば、台座14a,14b,14c,…,14hのそれぞれの上部に逆さ台形状の共通の凹部を有するようなトポロジーでも構わない(図6の台座14aの上部には逆さ台形状の凹部が示されている。)。又、被加工物3の形状によっては、まな板部1の搭載面に凹部を設けることが、まな板部1の搭載面の形状として必須な事項ではないことも勿論である。
【0020】
又、まな板部1の搭載面を切るように設けられる複数の溝は、それぞれブレードの刃先が挿入可能な溝であればよいので、複数の溝は図1に例示したように複数の台座14a,14b,14c,…,14hで分離され、且つ側部(図1において紙面の手前側、及び紙面の奥側)を外部に解放した溝である必要は、必ずしもない。例えば、まな板部1の搭載面を面状に構成し、この面状の搭載面の一部に垂直方向に、ブレードの刃先の寸法に適合したスリット状の複数の溝を掘ってもよい。
【0021】
図2は、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの相互の位置関係、及びこれらのブレード25a,25b,25c,…,25gを固定するブレード固定側板(第1のブレード固定側板)22aとの関係を説明する図である。図2に示すとおり、ブレード固定側板(第1のブレード固定側板)22aは、その上部を除くと、先端部を切り欠いた下向きの2等辺三角形の形状をなしている。ブレード25a,25b,25c,…,25gの材料としては、鍛造SK鋼、ハイカーボン特殊鋼、コバルト合金鋼又はステンレス・モリブデン鋼等が好ましい。強度、切れ味の点では鍛造SK鋼等の炭素鋼系の材料が望ましい。又、並列一括スライサーを常用的に使用する態様であれば、ブレード25a,25b,25c,…,25gの材料としては炭素鋼系の材料が好ましい。一方、一般家庭での使用態様のように、使用頻度があまり多くない場合は錆発生等の可能性もあるので、強度、切れ味の点では若干難があるが、SUS420−J2、440A鋼、440B鋼、440C鋼、154CM鋼、YSSATS−34鋼等のステンレス鋼(SUS)系の材料の方が好ましい。ステンレス鋼の内、家庭用品に使用されるSUS304は、錆びにくいが、通常の熱処理をしても刃物としての焼きが入らないので、ブレード25a,25b,25c,…,25gの材料としては好ましくない。但し、目的や要求される仕様に依存するので、ブレード25a,25b,25c,…,25gの材料としてのSUS304の使用を常に完全に否定する理由はない。
【0022】
複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの厚さは、例えば、マグネス・テイラー硬度計による貫入試験による果肉硬度が2〜8kg程度の果実であれば、0.8mm以上、1.2mm以下が好ましい。果肉硬度が2〜8kg程度の果実の場合、ブレード25a,25b,25c,…,25gの厚さが0.8mm以下の場合、縦方向、横方向、斜め方向のいずれか若しくは複数方向にブレード25a,25b,25c,…,25gがよじれる可能性が高く、垂直に切ることが難しくなる。ブレード25a,25b,25c,…,25gの厚さが1.2mm以上の場合、果肉硬度によるブレードの厚み方向の応力や刃先面に垂直方向の応力が発生するのでスライス加工に過度なスライス圧力が必要となり、現実的ではなくなる。なお、果肉硬度が2kg程度以下の果実であれば、ブレード25a,25b,25c,…,25gの厚さを1.2mm以上にすることも可能であるが、あまり厚いブレードはスライス加工時の被加工物3の加工残渣による損失が増えるので好ましくない。
【0023】
図2において、峰から刃先方向に定義されるブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃幅(身幅)は、15〜25mm程度、例えば20mm程度である。図2に示すとおり、ブレード25aの刃先の高さは、隣接するブレード25bの峰の高さよりもブレード間ギャップΔH1分高い。ブレード25bの刃先の高さは、隣接するブレード25cの峰の高さよりもブレード間ギャップΔH2分高く、ブレード25cの刃先の高さは、隣接するブレード25dの峰の高さよりもブレード間ギャップΔH3分高い。ブレード25dの峰の高さは、隣接するブレード25eの刃先の高さよりもブレード間ギャップΔH3分低い。ブレード25eの峰の高さは、隣接するブレード25fの刃先の高さよりもブレード間ギャップΔH2分低く、ブレード25fの峰の高さは、隣接するブレード25gの刃先の高さよりもブレード間ギャップΔH1分低い。刃幅(身幅)20mm程度において、刃幅方向(図2において上下方向)に定義されるブレード間ギャップΔH1,ΔH2,ΔH3は5〜6mm程度、即ちスライス幅の25%〜50%程度が望ましい。ブレード間ギャップΔH1,ΔH2,ΔH3が5mm以下の場合、又はスライス幅の25%以下の場合、スライス加工時にブレード25a,25b,25c,…,25gの厚みにより、被加工物3からスライス方向に直交する方向に発生する応力の逃げる方向が十分ではなくなるため、ブレード25a,25b,25c,…,25gの破損の原因、若しくは被加工物3をスライスするのに過度なスライス圧力Pが必要になり、スライス加工が困難になり、比較例1の場合と同様な問題が発生する。一方、ブレード間ギャップΔH1,ΔH2,ΔH3が6mm以上の場合、又はスライス幅の50%以上の場合、被加工物3をスライスしている最中に、被加工物3のスライス片が互いにずれてしまい、被加工物3が垂直に切れない虞がある。図2において、ブレード間ギャップΔH1=ΔH2=ΔH3=ΔH(一定)としてもよく、ブレード間ギャップΔH1,ΔH2,ΔH3の値が一部に互いに異なる関係を含んでいてもよく、互いに、すべて異なっていてもよい。
【0024】
実際には、図3(a)の正面図に示すように、第1の実施形態に係る並列一括スライサーを構成する第1のブレード固定側板22aは、第1のブレード固定側板22aと大きさの等しい第2のブレード固定側板22bと対をなしている。よって、第2のブレード固定側板22bは、第1のブレード固定側板22aと相似形であり、その上部を除くと、先端部を切り欠いた下向きの2等辺三角形の形状をなしている。このため、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gは、同時に並進移動するように、それらの両側をそれぞれ第1のブレード固定側板22a及び第2のブレード固定側板22bに固定されるように、第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bとの間に配置されている。第1のブレード固定側板22aの上部の中央には、スライス圧力Pを印加する第1のフック21aが設けられ、第2のブレード固定側板22bの上部の中央には、スライス圧力Pを印加する第2のフック21bが設けられている。
【0025】
第1のフック21aには第1のガイド棒12aを通す貫通穴が設けられ、第2のフック21bには第2のガイド棒12bを通す貫通穴が設けられており、スライス圧力Pを印加することにより、第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bによってそれぞれ導かれて、カッター部2が鉛直方向に押し下げられ、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gが、それぞれの刃先線を水平方向に維持して、同時に鉛直方向に並進移動する。図3(b)は図3(a)の右側面図であるが、図3(b)に示すように、第2のフック21bは第2のガイド棒12bを通す貫通穴が設けられた円柱部分とこの円柱部分の下端部に貫通穴を共通にして設けられた板状の加圧プレートを備える。図3(a)の正面図から理解できるように、第1のフック21aも、第1のガイド棒12aを通す貫通穴が設けられた円柱部分とこの円柱部分の下端部に貫通穴を共通にして設けられた板状の加圧プレートを備える。第1のフック21a及び第2のフック21bでカッター部2の「加圧補助手段」を構成している。
【0026】
図3(a)に示した第1の実施形態に係る並列一括スライサーに用いるブレード25aは、図4(b)に示すようにブレード25aの両側に矩形板状の固定用凸部を有するので、ブレード25aは、全体の形状としては、上部の「峰」及び「平」の部分側が下部の刃先側に比して横方向(刃渡り方向)に長い、横長のT字形状をなしている。図4(b)に示したブレード25aの左側の固定用凸部の横方向の突出長さは、図4(a)に示す第1のブレード固定側板22aの厚さに等しく、図4(b)に示したブレード25aの右側の固定用凸部の横方向の突出長さは、図4(c)に示す第2のブレード固定側板22bの厚さに等しい。ブレード25aの左側の固定用凸部は、図4(a)に示す第1のブレード固定側板22aの固定用貫通溝に挿入されて固定され、図4(b)に示したブレード25aの右側の固定用凸部は、図4(c)に示す第2のブレード固定側板22bの固定用貫通溝に挿入されて固定される。
【0027】
図示を省略しているが、他のブレード25b,25c,25d.…,25gも同様に、それぞれのブレードの両側に矩形板状の固定用凸部を有した横長のT字形状であり、それぞれのブレードの左側の固定用凸部は第1のブレード固定側板22aの固定用貫通溝に挿入されて固定され、それぞれのブレードの右側の固定用凸部は第2のブレード固定側板22bの固定用貫通溝に挿入されて固定される。ブレード25a,25b,25c,25d.…,25gの刃先の研ぎ直し等のメンテナンスを考慮すれば、ブレード25a,25b,25c,25d.…,25gの第1のブレード固定側板22a及び第2のブレード固定側板22bのそれぞれの固定用貫通溝への固定手段は、一定の機械的強度が達成できれば、取り外し可能な方法が好ましい。刃先の研ぎ直しが必要でなく、更に、ブレード25a,25b,25c,25d.…,25gがステンレス鋼(SUS)等の耐食性に優れた金属であれば、溶接による固定用貫通溝への固定でも構わないが、ブレード25a,25b,25c,25d.…,25gが鉄等の耐食性が劣る金属の場合は、錆が発生する可能性があるので、ネジ止め等、取り外し可能な固定手段が好ましい。
【0028】
図5〜図7に示すとおり、第1の実施形態に係る並列一括スライサーの第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bは、まな板部1を構成する底板11に、それぞれ下側の端部を溶接、蝋付け、焼きばめ、若しくはネジ止め等により固定され、底板11に対し垂直方向に直立している一対の棒状の部材である。図5は、図6に示した正面図の右側面図であり、第2のガイド棒12bのみが示されているが、図6の正面図からは、互いに平行な第1のガイド棒12aと第2のガイド棒12bとが、対をなして、それぞれ底板11に垂直方向に設けられていることが理解できる。図1では、板状の台座14a,14b,14c,…,14hを例示したが、台座14a,14b,14c,…,14hは、板状の形状以外に、図6の正面図に示すように、棒状のフレームの上部で被加工物3を支持するようにし、フレームの内部を中空にしてもよい。図5〜図7に示すとおり、対をなす第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bのそれぞれ上側の端部は、懸架梁13により固定され、機械的強度を補強している。第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bを、ボルト及びナットを用いて底板11に固定すれば、まな板部1の分解が容易になる。同様に、懸架梁13の両側の端部にネジ孔を設けて、第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bのそれぞれ上側の端部を懸架梁13に、ボルト及びナットを用いて固定すれば、まな板部1の分解が容易になるので、第1の実施形態に係る並列一括スライサーのメンテナンス性能が向上する。特に、図11〜図13を参照すると分かるように、カッター部2をまな板部1から取り外す場合は、第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bと底板11との接続箇所、又は第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bと懸架梁13との接続箇所の少なくとも1方の接続箇所が、分解可能であることが好ましい。
【0029】
図3を用いて既に説明したとおり、第1の実施形態に係る並列一括スライサーを構成するカッター部2には第1のガイド棒12aを通す貫通穴が設けられた第1のフック21aと、第2のガイド棒12bを通す貫通穴が設けられた第2のフック21bが両側に備えられているので、両側において第1のフック21a及び第2のフック21bにそれぞれスライス圧力Pを同時に印加することにより、第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12bによってそれぞれ導かれて、カッター部2がまな板部1の搭載面に向かって鉛直方向に押し下げられ、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gが、それぞれの刃先線を水平方向に維持して、同時に鉛直方向に並進移動して、被加工物3がスライス加工される。なお、懸架梁13は、図6に示すような台形のリブ状(肋骨状)に限定されるものではなく、真っ直ぐな棒状、アーチ状或いはΩ型状の形状等種々の形状が採用可能である。
【0030】
第1の実施形態に係る並列一括スライサーのまな板部1を構成する底板11、台座14a,14b,14c,…,14h、第1のガイド棒12a、第2のガイド棒12b及び懸架梁13の材料としては、鉄等の金属若しくはプラスチック系の材料が使用可能である。強度面では、まな板部1の材料としては、鉄やステンレス鋼(SUS)等の金属が望ましいが、並列一括スライサーを一般家庭などで使用する場合は、並列一括スライサーの収納や持ち運びが想定されることからプラスチック系の材料でも十分対応可能である。特に、並列一括スライサーでリンゴの果実をスライスする目的のためには、まな板部1には酸や水の影響を受けにくい材料が適している。
【0031】
図8は、まな板部1の搭載面に被加工物3を搭載し、カッター部2の複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの内、一番下に位置するブレード25dの刃先が、被加工物3に接し、被加工物3のスライス作業を開始する直前の状態を模式的に示す。一方、図9は、カッター部2をまな板部1の搭載面の方向に向けて押し下げることにより、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gが、それぞれの刃先線を水平方向に維持して、同時に鉛直方向に並進移動し、被加工物3を8枚のスライス片3a,3b,3c,…,3hにスライス加工して、分離が完了する直前状態を示す。図9ではカッター部2の複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの内、一番上に位置するブレード25aとブレード25gの刃先が、被加工物3を貫通し、被加工物3の外周に到達した状態であるが、この状態では、カッター部2がまな板部1の搭載面の方向に押し下げられた結果、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先が、台座14aと台座14bとの間、台座14bと台座14cとの間、台座14cと台座14dとの間、…(中略)…台座14gと台座14hとの間に位置し、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先がまな板部1の搭載面に設けられた溝に挿入又は到達している。
【0032】
図9に示したスライス加工による分離が完了する直前の状態では、一番下に位置するブレード25dは、ブレード25dの刃先だけでなく、ブレード25dの全体が、台座14dと台座14eとの間に挿入されている。カッター部2の複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの内、下から2番目に位置するブレード25c及びブレード25eも、スライス加工が分離が完了する直前の状態では、カッター部2が押し下げられた結果、ブレード25c及びブレード25eのそれぞれの刃先部分だけでなく、ブレード25c及びブレード25eの「平」の部分まで含め、即ち、ブレード25c及びブレード25eの刃先側から半分以上の部分が、台座14cと台座14dの間、及び台座14eと台座14fの間に挿入されている。図9に示すとおり、まな板部1の搭載面に複数の溝が設けられているので、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gが被加工物3を貫通した後も、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先を損傷することなく、スライス加工が完了できる。
【0033】
図9から分かるとおり、第1の実施形態に係る並列一括スライサーでは、ブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先と、それぞれのブレードに隣接する他のブレード(下方に位置するブレード)の峰との間にブレード間ギャップが存在するような関係で、それぞれ配列されているので、ブレード25a,25b,25c,…,25gの厚みによる被加工物3からのブレードの厚み方向の応力及び刃先面に垂直方向の応力を緩和することができる。図9では、一番下に位置するブレード25dの直上の被加工物3のスライス片3dとスライス片3eの間に生じたギャップが、ブレード25dの幅より狭くなっており、スライス方向に垂直に発生する被加工物3からの応力が緩和されていることが分かる。又ブレード25bの直上のスライス片3bとスライス片3cの間に生じたギャップが、上部に行くに従い狭くなっており、スライス方向に垂直に発生する被加工物3からの応力が緩和されていることが分かる。
【0034】
ブレード25a,25b,25c,…,25gのブレード間ギャップΔH1,ΔH2,ΔH3を5〜6mm程度、即ちスライス幅の25%〜50%程度に設計することにより、図9に示したとおり、先行するブレードの刃厚によるスライス方向に垂直方向の応力が働いた後に、隣接する次のブレードの刃先が入っていくようになるので、小さなスライス圧力Pにより、簡単にスライス加工が可能になる。よって、第1の実施形態に係る並列一括スライサーによれば、例えば、マグネス・テイラー硬度計を用いた貫入試験によって得られる硬度が2kg程度以上となるような、リンゴ等の果肉硬度の高い被加工物であっても、カッター部2をまな板部1の搭載面の方向(鉛直方向:図1において下向き方向)に向けて押し下げることにより、過度なスライス圧力を必要とせず、1回の単純な加圧作業で、カッター部2を構成している複数のブレード25a,25b,25c,…,25gによって、被加工物3からの応力を緩和しながら、被加工物3をスライスすることができるので、スライス圧力Pを低減することが可能になる。例えば、直径7.9mmのシリンダを用いたマグネス・テイラー硬度計のシリンダの貫入試験の抵抗力の3〜5倍の押し下げ強度に相当する力で、被加工物3をスライスすることができる。更に、被加工物3からの応力が緩和されるので、ブレード25a,25b,25c,…,25gの曲がり等の損傷も抑制でき、製品寿命を長くすることが可能である。
【0035】
以上において説明したとおり、第1の実施形態に係る並列一括スライサーによれば、カッター部2をまな板部1の搭載面の方向に押し下げるという、1回の単純な加圧作業で、カッター部2を構成している複数のブレード25a,25b,25c,…,25gの刃先が、それぞれの刃先線を水平方向に維持したまま、同時に並進移動し、被加工物3をそれぞれ貫通し、まな板部1の搭載面に設けられた複数の溝に挿入又は到達し、図10に示すように、被加工物3を互いに平行な面を有するスライス片3a,3b,3c,…,3hにスライス加工できる。仮に、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれのブレード間ギャップΔH1=ΔH2=ΔH3=0mmとした場合においては、ブレード25a,25b,25c,…,25gの厚みによる、スライス方向に垂直に発生する被加工物3からの応力を緩和する逃げ道が十分ではなく、被加工物3のスライス加工に非常に大きなスライス圧力を要するので、比較例1と同様な状況が発生する。又、比較例1及び2とは異なり、第1の実施形態に係る並列一括スライサーにおいては、それぞれの刃先線が水平方向に維持されているので、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先に付与されるスライス圧力Pの方向が、刃先線の方向に対して垂直となるため、より小さなスライス圧力Pで、被加工物3をスライスすることができる。特に、カッター部2を、人間の力が有効に発揮し易い鉛直方向に押し下げればよいので、刃先線を水平方向に維持した複数のブレード25a,25b,25c,…,25gによって、家庭の主婦等が簡単にリンゴ等の被加工物3をスライスできる。
【0036】
図10は、被加工物3としてのリンゴを、互いに平行なスライス片3a,3b,3c,…,3hにスライス加工した状態を模式的に示すが、第1の実施形態に係る並列一括スライサーによれば、マグネス・テイラー硬度計を用いた貫入試験によって得られる硬度が2kg程度以上となるリンゴ等の果肉硬度の高い被加工物3であっても、小さなスライス圧力Pにより、簡単に、互いに平行な複数のスライス片3a,3b,3c,…,3hにスライスできる。従来のように、リンゴを放射状に縦割りするのではなく、図10に示すように、1cm程度の厚さに輪切りに平行にスライスして、複数枚のスライス片3a,3b,3c,…,3hに分離すれば、リンゴの皮が食べやすくなる。よって、リンゴの皮に含まれるアントシアニン等のポリフェノールを有効に人間が摂取可能となる。
【0037】
図11〜図13は、スライス加工完了後にカッター部2が一番下の位置まで押し下げられた状態の第1の実施形態に係る並列一括スライサーの全景の模式図の一例である。図11は、図12に示した正面から見た全体図の右側面から見た全体図であり、第2のガイド棒12b及び第2のガイド棒12bに誘導される第2のブレード固定側板22b側の図のみが示されているが、図12の正面から見た全体図からは、互いに平行な第1のガイド棒12aと第2のガイド棒12bとが、対をなして、それぞれ底板11に垂直方向に設けられ、第1のガイド棒12aを通す貫通穴が設けられた第1のフック21aが第1のブレード固定側板22aの上部に接続され、第2のガイド棒12bを通す貫通穴が設けられた第2のフック21bが第2のブレード固定側板22bの上部に接続されていることが分かる。第1のフック21a及び第2のフック21bのそれぞれに板状に設けられた加圧プレートに、それぞれスライス圧力Pを印加することにより、カッター部2が鉛直方向に押し下げられる。
【0038】
図13の上面から見た全体図から分かるように、カッター部2の一部を構成する第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bのそれぞれの一方の端部(図13において下側の端部)は前板26aの両側の端部に溶接、蝋付け、焼きばめ、若しくはネジ止め等により接続され、第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bのそれぞれの他方の端部(図13において上側の端部)は後板26bの両側の端部に溶接、蝋付け、焼きばめ、若しくはネジ止め等により接続されて、全体として矩形形状をなしている。図11の右側面から見た全体図には、第2のブレード固定側板22bの上部において、第2のブレード固定側板22bの一方の端部の上部(図11において左側の端部の上部)が前板26aに接続され、第2のブレード固定側板22bの他方の端部の上部(図11において上側の端部の上部)が後板26bに接続されている状態を示している。図12の正面から見た全体図には、カッター部2の上部において、前板26aが第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bに挟まれており、前板26aの両端が第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bにそれぞれ固定されている状態が示されている。
【0039】
即ち、第1のブレード固定側板22a、前板26a、第2のブレード固定側板22b及び後板26bで構成される矩形の枠組みによって、カッター部2の上部は機械的強度を維持している。この第1のブレード固定側板22a、前板26a、第2のブレード固定側板22b及び後板26bで構成される矩形の枠組みは、カッター部2の「ブレード保持手段」を構成している。構造的には、第1のフック21a及び第2のフック21bは、カッター部2の上部において、それぞれこの矩形の枠組みに固定されている。よって、第1のフック21a及び第2のフック21bのそれぞれに板状に設けられた加圧プレートに、それぞれ、マグネス・テイラー硬度計を用いた貫入試験によって得られる硬度が2kg程度以上となるリンゴ等の果肉硬度の高い被加工物3をスライス加工するに必要なスライス圧力Pを印加しても、所定の機械的強度を維持できるので、カッター部2を鉛直方向に押し下げることにより、被加工物3を互いに平行な複数のスライス片に分離するように、スライス加工できる。
【0040】
カッター部2を構成する第1のブレード固定側板22a、前板26a、第2のブレード固定側板22b、後板26b、第1のフック21a及び第2のフック21bの材料としては、鉄等の金属若しくはプラスチック系の材料が好ましい。機械的強度面では、カッター部2の材料としては、鉄やステンレス鋼(SUS)等の金属が望ましいが、まな板部1と同様に、一般家庭などで使用する場合は収納のため、持ち運ぶことも想定されることからプラスチック系の材料でも十分対応可能である。特に、リンゴ等の果実をスライスする目的からは、酸や水の影響を受けにくい材料が適している。
【0041】
図9に示したとおり、被加工物3をスライス加工するという機能のみに着目すれば、カッター部2をまな板部1の搭載面の方向に向けて押し下げた状態で、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先が、台座14aと台座14bとの間、台座14bと台座14cとの間、台座14cと台座14dとの間、…(中略)…台座14gと台座14hとの間に位置し、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先がまな板部1の搭載面に設けられた溝に挿入又は到達するように構成しておけば、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gが被加工物3を貫通した後も、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先が損傷することが防止できる。しかしながら、図11〜図13に示すように、カッター部2をスライス加工完了の高さから更に下方に押し下げ、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの全体が、台座14aと台座14bとの間、台座14bと台座14cとの間、台座14cと台座14dとの間、…(中略)…台座14gと台座14hとの間に位置するようにしておけば、第1の実施形態に係る並列一括スライサーの収納時や梱包・運搬時の全体の大きさをコンパクトにできるという有利な効果を奏することが可能になる。
【0042】
《第1の実施形態の変形例》
本発明の第1の実施形態の変形例に係る並列一括スライサーは、スライス幅毎に平行に配置された複数の溝を有し、被加工物を搭載するまな板部(俎板部)1と、それぞれのブレードの刃先をまな板部1の搭載面の方向に向け、少なくともそれぞれのブレードの刃先が複数の溝にそれぞれ挿入可能なように平行に配置され、上方に位置するブレードの刃先と隣接する他の(下方に位置する)ブレードの峰との間にブレード間ギャップΔHが存在するような関係で、それぞれ配列された複数のブレード25a,25b,25c,…,25gを有するカッター部2とを備える点では、基本的に図1〜図13に示した第1の実施形態に係る並列一括スライサーと同様である。しかしながら、図14に示すとおり、カッター部2の一部を構成する第1のフック21aの下端部に第1のガイド棒12aを通す貫通穴が設けられた円筒状の第1の鞘部27aが接続され、カッター部2の他の一部を構成する第2のフック21bの下端部に第2のガイド棒12bを通す貫通穴が設けられた円筒状の第2の鞘部27bが接続されている点で、第1の実施形態に係る並列一括スライサーとは異なる。
【0043】
図14に示すように、第1の実施形態の変形例に係る並列一括スライサーを構成する第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bとが対をなし互いに対向して配置されている点では、第1の実施形態に係る並列一括スライサーと同様である。第1のブレード固定側板22aの上部の中央には、スライス圧力Pを印加する第1のフック21aが設けられ、第2のブレード固定側板22bの上部の中央には、スライス圧力Pを印加する第2のフック21bが設けられ、更に、第1のフック21aの下端部に第1の鞘部27aが接続され、第2のフック21bの下端部に第2の鞘部27bが接続され、第1の鞘部27a及び第2の鞘部27bが、それぞれまな板部1の高さと同程度の長い円筒状をなしているので、第1のフック21aの加圧プレート及び第2のフック21bの加圧プレートにスライス圧力を印加した場合、第1のガイド棒12aの外径と第1の鞘部27aの内径との遊び(クリアランス)、及び第2のガイド棒12bの外径と第2の鞘部27bの内径との遊び(クリアランス)を小さくすることが可能となり、より精度の高いスライス加工が可能になる。他は、既に説明した第1の実施形態に係る並列一括スライサーと実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0044】
以上のとおり、第1の実施形態の変形例に係る並列一括スライサーによれば、第1の実施形態に係る並列一括スライサーと同様に、カッター部2をまな板部1の搭載面の方向に押し下げるという、1回の単純な加圧作業で、カッター部2を構成している複数のブレード25a,25b,25c,25d,…の刃先が、それぞれの刃先線を水平方向に維持したまま、同時に並進移動し、被加工物をそれぞれ貫通し、まな板部1の搭載面に設けられた複数の溝に挿入又は到達し、被加工物を互いに平行な面を有するスライス片にスライス加工できる。更に、カッター部2をスライス加工完了の高さから更に下方に押し下げ、複数のブレード25a,25b,25c,25d,…のそれぞれの全体が、まな板部1の搭載面に設けられた複数の溝の間に収納されるようにしておけば、第1の実施形態の変形例に係る並列一括スライサーの収納時や梱包・運搬時の全体の大きさをコンパクトにできると同時に、運搬時の振動による音の発生を抑制することができるという有利な効果を奏することが可能になる。
【0045】
《第2の実施形態》
本発明の第2の実施形態に係る並列一括スライサーは、スライス幅毎に平行に配置された複数の溝を有し、被加工物3を搭載するまな板部(俎板部)1と、それぞれのブレードの刃先をまな板部1の搭載面の方向に向け、少なくともそれぞれのブレードの刃先が複数の溝にそれぞれ挿入可能なように平行に配置され、上方に位置するブレードの刃先と隣接する他の(下方に位置する)ブレードの峰との間にブレード間ギャップΔHが存在するような関係で、それぞれ配列された複数のブレード25a,25b,25c,…,25gを有するカッター部2とを備える点では、第1の実施形態及びその変形例に係る並列一括スライサーと同様である。しかしながら、図15〜図17に示すとおり、カッター部2を移動させるための加圧補助手段を構成する第1の加圧プレート29a及び第2の加圧プレート29bが、第1のフック21aから第2のフック21bに向かう方向と直交する方向に設けられている点が、第1の実施形態及びその変形例に係る並列一括スライサーとは、異なる。
【0046】
図15〜図17は、スライス加工完了後にカッター部2が一番下の位置まで押し下げられた状態の第2の実施形態に係る並列一括スライサーの全景の模式図の一例である。図15は、図16に示した正面から見た全体図の右側面から見た全体図であり、第2のガイド棒12b及び第2のガイド棒12bに誘導される第2のブレード固定側板22b側の図のみが示されているが、図16の正面から見た全体図からは、互いに平行な第1のガイド棒12aと第2のガイド棒12bとが、対をなして、それぞれ底板11に垂直方向に設けられ、第1のガイド棒12aを通す貫通穴が設けられた第1のフック21aが第1のブレード固定側板22aの上部に接続され、第2のガイド棒12bを通す貫通穴が設けられた第2のフック21bが第2のブレード固定側板22bの上部に接続されていることが分かるが、第1の実施形態及びその変形例に係る並列一括スライサーとは異なり第1のフック21a及び第2のフック21bのそれぞれには、加圧プレートが存在しない。その代わり、スライス圧力Pを印加してカッター部2を鉛直方向に押し下げるための第1の加圧プレート29aが前板26aに溶接、蝋付け、焼きばめ、ネジ止め、若しくは鋳造等による一体成形等により接続され、スライス圧力Pを印加してカッター部2を鉛直方向に押し下げるための第2の加圧プレート29bが後板26bに溶接、蝋付け、焼きばめ、ネジ止め、若しくは鋳造等による一体成形等により接続されている。
【0047】
即ち、図17の上面から見た全体図から分かるように、カッター部2の一部を構成する第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bのそれぞれの一方の端部(図17において下側の端部)は前板26aの両側の端部に溶接、蝋付け、焼きばめ、若しくはネジ止め等により接続されているが、この前板26aの中央部において、矩形の第1の加圧プレート29aが長手方向を前板26aに直交する方向(図17において下方向)に張り出すように接続されている。又、第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bのそれぞれの他方の端部(図17において上側の端部)は後板26bの両側の端部に溶接、蝋付け、焼きばめ、若しくはネジ止め等により接続されているが、この後板26bの中央部において、矩形の第2の加圧プレート29bが長手方向を後板26bに直交する方向(図17において上方向)に張り出すように接続されている。
【0048】
図15の右側面から見た全体図には、第2のブレード固定側板22bの上部において、第2のブレード固定側板22bの一方の端部の上部(図15において左側の端部の上部)が前板26aに接続され、この前板26aの上部において、矩形の第1の加圧プレート29aが長手方向を前板26aに直交する方向(図15において左方向)に張り出すように接続されている。同様に、第2のブレード固定側板22bの他方の端部の上部(図15において上側の端部の上部)が後板26bに接続されているが、この後板26bの上部において、矩形の第2の加圧プレート29bが長手方向を後板26bに直交する方向(図15において右方向)に張り出すように接続されている。図16の正面から見た全体図には、カッター部2の上部において、前板26aが第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bに挟まれており、前板26aの両端が第1のブレード固定側板22aと第2のブレード固定側板22bにそれぞれ固定され、この前板26aの中央部に矩形の第1の加圧プレート29aが接続されている状態が示されている。
【0049】
第1の実施形態及びその変形例に係る並列一括スライサーと同様に、第1のブレード固定側板22a、前板26a、第2のブレード固定側板22b及び後板26bで構成される矩形の枠組みによって、カッター部2の上部は機械的強度を維持している。構造的には、第1のフック21a及び第2のフック21bは、カッター部2の上部において、それぞれこの矩形の枠組みに固定され、更に、第1の加圧プレート29a及び第2の加圧プレート29bが、第1のフック21aから第2のフック21bに向かう方向と直交する方向にそって矩形の枠組みに固定されている。第1の加圧プレート29a及び第2の加圧プレート29bに、それぞれ、例えば、マグネス・テイラー硬度計を用いた貫入試験によって得られる硬度が2kg程度以上となるリンゴ等の果肉硬度の高い被加工物3をスライス加工するに必要なスライス圧力Pを印加して、カッター部2を鉛直方向に押し下げることにより、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gが、それぞれの刃先線を水平方向に維持して、同時に鉛直方向に並進移動し、被加工物3を互いに平行な複数のスライス片に分離するように、スライス加工できる。他は、既に説明した第1の実施形態及びその変形例に係る並列一括スライサーと実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0050】
図15〜図17に示すように、カッター部2をスライス加工完了の高さから更に下方に押し下げ、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの全体が、台座14aと台座14bとの間、台座14bと台座14cとの間、台座14cと台座14dとの間、…(中略)…台座14gと台座14hとの間に位置するようにしておけば、第1の加圧プレート29a及び第2の加圧プレート29bが、第1のフック21aから第2のフック21bに向かう方向と直交する方向に設けられたトポロジーであっても、第2の実施形態に係る並列一括スライサーの収納時や梱包・運搬時の全体の大きさをコンパクトにできるという有利な効果を奏することができる。
【0051】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1及び第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、既に述べた第1及び第2の実施形態の説明においては、複数のブレード25a,25b,25c,…,25gのそれぞれの刃先が両刃の構造の場合について例示的に説明したが、本発明の並列一括スライサーのカッター部に用いる複数のブレードのそれぞれの刃先の構造は、第1及び第2の実施形態において例示した構造に限定されるものではなく、図18に示すとおり、片刃の構造等他の断面構造であっても構わない。
【0052】
図18に示すように、本発明のその他の実施形態に係る並列一括スライサーのカッター部を構成する複数の片刃のブレード25as,25bs,25cs,…,25gsのそれぞれの一端は、第1のブレード固定側板22aに固定されている(図示を省略しているが、複数の片刃のブレード25as,25bs,25cs,…,25gsのそれぞれの他端は、図3に示したのと同様に、第1のブレード固定側板22aに対向する第2のブレード固定側板に固定されている。)。図18に示すように、片刃のブレード25asの刃先の高さは、隣接する片刃のブレード25bsの峰の高さよりもブレード間ギャップΔH1分高い。片刃のブレード25bsの刃先の高さは、隣接する片刃のブレード25csの峰の高さよりもブレード間ギャップΔH2分高く、片刃のブレード25csの刃先の高さは、隣接する片刃のブレード25dsの峰の高さよりもブレード間ギャップΔH3分高い。片刃のブレード25dsの峰の高さは、隣接する片刃のブレード25esの刃先の高さよりもブレード間ギャップΔH3分低い。片刃のブレード25esの峰の高さは、隣接する片刃のブレード25fsの刃先の高さよりもブレード間ギャップΔH2分低く、片刃のブレード25fsの峰の高さは、隣接する片刃のブレード25gsの刃先の高さよりもブレード間ギャップΔH1分低い。第1及び第2の実施形態と同様に、図18において、ΔH1=ΔH2=ΔH3=ΔHとしてもよく、ΔH1,ΔH2,ΔH3の値はそれぞれ異なっていてもよい。
【0053】
図18に示すような片刃のブレード25as,25bs,25cs,…,25gsであっても、ブレード間ギャップΔH1,ΔH2,ΔH3を5〜6mm程度、即ちスライス幅の25%〜50%程度に設計することにより、図9に示したのと同様に、先行するブレードの刃厚によるスライス方向に垂直方向の応力が働いた後に、隣接する次のブレードの刃先が入っていくようになるので、小さなスライス圧力Pにより、簡単にスライス加工が可能になる。よって、リンゴ等の果肉硬度の高い被加工物であっても、カッター部2をまな板部1の搭載面の方向に向けて押し下げることにより、過度なスライス圧力を必要とせず、1回の単純な加圧作業で、カッター部2を構成している複数の片刃のブレード25as,25bs,25cs,…,25gsによって、被加工物3からの応力を緩和しながら、被加工物3をスライスすることができるので、スライス圧力Pを低減することが可能になる。被加工物3からの応力が緩和されるので、片刃のブレード25as,25bs,25cs,…,25gsの曲がり等の損傷も抑制でき、製品寿命を長くすることが可能である。
【0054】
又、第1及び第2の実施形態では、第1のブレード固定側板22a、前板26a、第2のブレード固定側板22b及び後板26bでブレード保持手段が構成されることを説明したが、ブレード保持手段は矩形である必要はなく、6角形、8角形、円形等の枠組みでブレード保持手段を構成してもよい。特に、被加工物3がリンゴのような、ほぼ球形の3次元形状であれば、ブレード保持手段を、球の赤道面を切る断面の径よりも大きな直径を有する円形等の枠組みで構成し、それぞれのブレードの長さ(刃渡り)も、枠組みの上面図に合わせて、適宜調整して、異なる長さを有するようにしてもよい。
【0055】
第2の実施形態では、カッター部2を移動させるための加圧補助手段を構成する第1の加圧プレート29a及び第2の加圧プレート29bが、第1の実施形態の加圧補助手段を構成する第1のフック21a及び第2のフック21bの配列の方向と直交する方向に設けられたトポロジーを説明したが、本発明の加圧補助手段は、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせて、十字型のトポロジーにしても構わないし、加圧プレートが1個又は3個等他の個数でも構わない。更に、カッター部2を構成するブレード保持手段の周りをベルト状に囲むリングで構成してもよい。いずれにせよ、カッター部2を構成するブレード保持手段をまな板部1の搭載面の方向に向けスライス圧力の印加方向を規定してブレード保持手段の移動を補助する機能、若しくはこれに均等な機能を持てば、加圧補助手段として、種々の構造やトポロジーが採用可能である。
【0056】
更に、第1及び第2の実施形態では、第1のガイド棒12a及び第2のガイド棒12b
の2本のガイド棒で、加圧補助手段の移動方向を誘導する「移動方向誘導手段」の構造を例示したが、移動方向誘導手段としてのガイド棒は、1本でも、3本でもよく、移動方向誘導手段としては棒状の構造だけに限定されず、アリ溝(蟻溝)を摺動する機構を備えたような構造でもよい。少なくとも、加圧補助手段に対し、その移動方向(押し下げ方向)を一定方法に正確且つ確実に誘導できる機能や機構を有する構造であれば、移動方向誘導手段の構造は、第1及び第2の実施形態で説明したものに限定されるものではない。
【0057】
図2,図3(b),図8,図9,図11,図15,図18等では、複数のブレードを固定するブレード固定側板の下部の形状として、V字型、即ち、先端部を切り欠いた下向きの2等辺三角形の形状を例示したが、ブレード固定側板の下部の形状は例示したV字型の構造に限定されるものではない。被加工物が大根やゴボウ等の長手方向に長い、長尺な形状を有する場合は、ブレード固定側板の下部の形状がV字型を連続したW字型として長手方向のスパンを確保してもよく、更に、V字型を3つ以上連続した三角波の形状にして長手方向のスパンを延長し、ブレード固定側板に固定される複数のブレードのそれぞれが、一方の(上方に位置する)ブレード刃先と、隣接する他方(下方に位置する)のブレードの峰との間に、ブレード間ギャップが存在するような関係で配列されてもよい。
【0058】
上記の第1及び第2の実施形態では、説明の便宜上、複数のブレードが同時に鉛直方向に並進移動する場合で、例示的に説明したが、本発明は、座標軸を90°回転して、並進移動の方向を水平方向に設定すること等の変形例を妨げるものではない。家庭用等、簡易な並列一括スライサーの態様であれば、一般には、第1及び第2の実施形態で説明したような、複数のブレードが同時に鉛直方向に並進移動する態様の方が、装置の構成が簡潔になり、人力の印加も容易になるが、食品工場等、大量に被加工物を連続的にスライスし、スライス片を大量生産する場合は、ブレードを水平方向に並進移動する態様の方が便利な場合もある(この場合は、被加工物を搭載するまな板部の構造も、被加工物の搬送系にあわせて適宜変形する必要があるし、カッター部の駆動に、空気圧や油圧、あるいは電磁力等の人力以外の手段を用いてもよい。)。複数のブレードを同時に水平方向に並進移動するトポロジーでの態様であれば、第1及び第2の実施形態等で説明した「スライス圧力」等は水平方向に定義される圧力を意味し、「押し下げ」は、水平方向の移動を意味することになるのは勿論である。同様に、第1及び第2の実施形態で説明した「刃先の高さ」、「峰の高さ」、或いは「刃幅方向」等も水平方向に定義されることも当然である。このように、本発明の複数のブレードの「並進移動の方向」は、使用の態様に応じて、任意に設定可能であることに留意されたい。同様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0059】
1…まな板部(俎板部)
11…底板
12a…第1のガイド棒
12b…第2のガイド棒
13…懸架梁
14a,14b,14c,…,14h…台座
2…カッター部
21a…第1のフック
21b…第2のフック
22a…第1のブレード固定側板
22b…第2のブレード固定側板
25a〜25g,25as〜25gs…ブレード
26a…前板
26b…後板
27a…第1の鞘部
27b…第2の鞘部
29a…第1の加圧プレート
29b…第2の加圧プレート
3…被加工物
3a,3b,3c,…,3e…スライス片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライス幅毎に平行に配置された複数の溝を有し、被加工物を搭載するまな板部と、
それぞれのブレードの刃先を前記まな板部の方向に向け、少なくともそれぞれのブレードの刃先が前記複数の溝にそれぞれ挿入可能なように平行に配置され、且つ、刃先と峰との間にブレード間ギャップが存在するような関係で、それぞれ配列された複数のブレード、該複数のブレードを固定するブレード保持手段を有するカッター部
とを備え、該カッター部をまな板部の方向に移動することにより、前記複数のブレードを同時に並進移動し、前記まな板部に搭載された前記被加工物を、複数の平行なスライス片に分離することを特徴とする並列一括スライサー。
【請求項2】
前記ブレード間ギャップが、前記スライス幅の25%〜50%であることを特徴とする請求項1に記載の並列一括スライサー。
【請求項3】
前記まな板部の前記被加工物を搭載する搭載面が、互いに離間して平行に配置された複数の台座のそれぞれの上端面に接する包絡面により定義され、前記複数の溝が、前記搭載面を切るように、前記複数の台座の間に設けられることを特徴とする請求項1に記載の並列一括スライサー。
【請求項1】
スライス幅毎に平行に配置された複数の溝を有し、被加工物を搭載するまな板部と、
それぞれのブレードの刃先を前記まな板部の方向に向け、少なくともそれぞれのブレードの刃先が前記複数の溝にそれぞれ挿入可能なように平行に配置され、且つ、刃先と峰との間にブレード間ギャップが存在するような関係で、それぞれ配列された複数のブレード、該複数のブレードを固定するブレード保持手段を有するカッター部
とを備え、該カッター部をまな板部の方向に移動することにより、前記複数のブレードを同時に並進移動し、前記まな板部に搭載された前記被加工物を、複数の平行なスライス片に分離することを特徴とする並列一括スライサー。
【請求項2】
前記ブレード間ギャップが、前記スライス幅の25%〜50%であることを特徴とする請求項1に記載の並列一括スライサー。
【請求項3】
前記まな板部の前記被加工物を搭載する搭載面が、互いに離間して平行に配置された複数の台座のそれぞれの上端面に接する包絡面により定義され、前記複数の溝が、前記搭載面を切るように、前記複数の台座の間に設けられることを特徴とする請求項1に記載の並列一括スライサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図6】
【公開番号】特開2013−39634(P2013−39634A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177356(P2011−177356)
【出願日】平成23年8月13日(2011.8.13)
【特許番号】特許第5095001号(P5095001)
【特許公報発行日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【出願人】(502087390)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月13日(2011.8.13)
【特許番号】特許第5095001号(P5095001)
【特許公報発行日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【出願人】(502087390)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]