リント清掃用器具
【課題】衣類乾燥機のフィルターに堆積する多量のリントを、簡単に効率良く、且、衛生的に捕集し除去することのできるリント清掃用器具を提供。
【解決手段】ハンドル3の先端に回転自在にローラー2を装着し、粘着剤を塗布してリントを捕集するための有底のリント捕集用袋4を一端からスライドして挿着するための柔軟性を有する挿着部2bをローラー2の外周に設けることを特徴とするリント清掃用器具1。
【解決手段】ハンドル3の先端に回転自在にローラー2を装着し、粘着剤を塗布してリントを捕集するための有底のリント捕集用袋4を一端からスライドして挿着するための柔軟性を有する挿着部2bをローラー2の外周に設けることを特徴とするリント清掃用器具1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綿ゴミ・糸くず等の塵埃、特に衣類乾燥機のフィルターに堆積されるリントを、簡単に効率良く、且、衛生的に捕集し除去するためのリント清掃用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類乾燥機は、運転中に洗濯で発生した綿ゴミ・糸くず等の塵埃、いわゆるリントが熱風に伴われ衣類より離脱し機内に飛散する。このリントを乾燥機外に排出することは衛生上、美観上好ましくないため、乾燥機内にフィルターを設置して捕集している。捕集されたリントはフィルターに堆積され、堆積されるリントの量は数回の運転で厚さ10mmにも及ぶような量となっており、フィルター1m2あたりでは60g以上と、乾燥機外の通常の床面に堆積するリント・ゴミ量と比較し100〜1000倍もの量となっている。フィルターにリントが堆積すると、乾燥機内を循環する乾燥用熱風の流通が妨げられ、乾燥効率が低下するとともに、火災の危険性が増大する。したがってフィルターに堆積したリントの除去は、乾燥機運転に際し重要な点検・保守作業となる。
【0003】
フィルターの清掃は、真空掃除機を使用した吸引による除去が一般的となっている。しかしながら、掃除機は重量があり移動させるのに労力を要すること、又、吸引ノズルの形状やホースの長さ等の制約から清掃作業が効率的でないこと、又、作動音が大きいといった問題を抱えている。更に、清掃作業により掃除機内に蓄積したリントは、手作業で取り出し廃棄する必要があり、この際にリントを再度飛散させてしまい非衛生的であるという問題が存している。
【0004】
リントを自動的に除去する機能を備えた乾燥機が特許文献1に開示されている。回転駆動されるように支持された多孔板製横長円筒形の内胴と、内胴の外周側に内胴と一定の隙間をおいて固設され、内胴の外周から内周へ向う空気通路の空気出口を備えた外胴とからなる乾燥機において、内胴の外面に仕切りブラシを固定し、内胴の回転に合わせ内外胴間に堆積したリントを掻き出し、且、掻き出されたリントをバキュームで吸引することで、内胴内への熱風の吹き込み量を確保しようとするものである。しかしながら、この方法にあっては、機械的なトラブルが発生する可能性がある。又、通常のバキュームでは除去しきれないブラシ自体に蓄積されたリントは手作業で捕集・廃棄する必要があり、この作業には乾燥機の分解が伴うため、稼働率の低下を招くという問題がある。更に、掻き出したリントをリントボックスから回収し廃棄する作業は、最終的には手作業で行うしかなく、煩雑であると共に、リントの再飛散を招き、非衛生的である。
【0005】
床面等の清掃用器具として市販されている、片面に粘着層が形成され連続的に積層巻着された粘着テープクリーナーは、使用済の粘着面を剥がし切断することで新たな粘着面を露出させることができるものであるが、多量のリントを捕集した場合、巻着面から最外層の一枚のみを切断することが実質的に不可能であった。しかも無理に捕集済の粘着面を切断しようとすると、捕集したリントが飛散してしまい、非衛生的であった。又、積層テープにより、重量があるため、作業に労力を要し、更に、フィルター面の凹凸に十分追従せず、リントを完全に捕集できない不都合がある。
【0006】
又、リント捕集用シートを円筒状に形成し、ローラーに外挿した後、剥離紙を除去して粘着面を露出させ、ローラーをリントの上に押し当て回転させてリントを捕集する清掃用器具がある(特許文献2)。この清掃用器具では、リントの捕集後は、捕集用シートをローラーから抜き取り廃棄するために、捕集シート上に捕集したリントは飛散せず廃棄することが可能ではあるが、清掃作業を開始する準備段階において、リント捕集用シートを円筒形状に形成しなければならず、又、除去した剥離紙をゴミとして処理しなければならない不都合があった。
【0007】
【特許文献1】特開平08−240385号公報
【特許文献2】特開2010−68871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、衣類乾燥機のフィルターに堆積する多量のリントを、簡単に効率良く、且、衛生的に捕集し除去することのできるリント清掃用器具及びこれを使用する清掃方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ローラーの挿着部にリント捕集用袋を一端からスライドして挿着した後、リント捕集用袋の胴部に粘着剤を塗布し、ローラーをリント上に押し当て回転させることによってリントを捕集し、清掃後は、リントを捕集したリント捕集用袋を挿着部から抜き取り、廃棄することができるリント清掃用器具を開発するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、ハンドルの先端に回転自在なローラーを装着し、粘着剤を塗布してリントを捕集するための有底のリント捕集用袋を一端からスライドして挿着するための柔軟性を有する挿着部をローラーの外周に設けることを特徴とするリント清掃用器具である。
【0011】
更に、本発明は、前記挿着部が、リント捕集用袋を外挿する方向に沿って起毛した繊維で構成されることを特徴とするリント清掃用器具である。
【0012】
更に、本発明は、前記挿着部が、その直径の85〜100%の直径のリント捕集用袋を挿着できるように起毛した繊維で構成されることを特徴とするリント清掃用器具である。
【0013】
更に、本発明は、前記リント捕集用袋が、封筒であることを特徴とするリント清掃用器具である。
【0014】
更に、本発明は、前記粘着剤が、ポリマー成分を50〜70質量%含有する水系エマルジョンを原液とし、低級アルコールを原液に対して10〜30質量%配合してなることを特徴とするリント清掃用器具である。
【0015】
更に、本発明は、前記粘着剤に含有するポリマー成分が、アクリル系ポリマーであることを特徴とするリント清掃用器具である。
【0016】
又、本発明は、前記のリント清掃用器具と、粘着剤を収容した粘着剤塗布容器とを組み合わせてなるリント清掃用器具セットである。
【0017】
又、本発明は、前記のリント清掃用器具を使用する方法であって、ローラーの挿着部にリント捕集用袋を一端からスライドして挿着した後、リント捕集用袋の胴部に粘着剤を塗布し、ローラーをリント上に押し当て回転させることによってリントを捕集することを特徴とするリントの清掃方法である。
【0018】
又、本発明は、前記のリント清掃用器具セットを使用する方法であって、ローラーの挿着部にリント捕集用袋を一端からスライドして挿着した後、リント捕集用袋の胴部に粘着剤を収容した粘着剤塗布容器を使用して粘着剤を塗布し、ローラーをリント上に押し当て回転させることによってリントを捕集することを特徴とするリントの清掃方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のリント清掃用器具は、ローラーの挿着部にリント捕集用袋を一端からスライドして挿着した後、リント捕集用袋の胴部に粘着剤を塗布し、ローラーをリント上に押し当て回転させることによってリントを捕集し、清掃後は、リントを捕集したリント捕集用袋を挿着部から抜き取り、廃棄用袋に収納するため、フィルターに堆積したリントを簡単に効率良く、且、衛生的に捕集し除去できるという効果を得ることができる。
【0020】
特に、従来の片面に粘着層が形成され連続的に積層巻着された粘着テープクリーナーと比較すると、本発明のリント清掃用器具は、清掃後に粘着テープをミシン目で切り取る必要がなく、リントの飛散がないため衛生的であり、又、積層の粘着テープを使用しないため重量が軽く、作業が容易である。更に、本発明はローラーの挿着部が柔軟性を有するため、フィルター面の凹凸にも十分に追従することができ、確実にリントを捕集することができる。
【0021】
又、本発明のリント清掃用器具は、使用者が使用する機会ごとに、リント捕集用袋を挿着し粘着剤を塗布するため、従来の粘着テープクリーナーのように粘着テープを生産するために必要な、粘着剤を大量に塗布し乾燥するための設備は不要である。
【0022】
更に、ローラーの挿着部をリント捕集用袋を外挿する方向に沿って起毛した繊維で構成することにより、ローラーにリント捕集用袋を挿着しやすくするとともに、挿着したリント捕集用袋が清掃作業中にローラーから脱落することを防止することができる。
【0023】
又、ポリマー成分を含有する水系エマルジョンを低級アルコールで希釈した所定の粘着剤を使用することにより、乾燥時間を短縮し、効率の良い清掃作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】リント清掃用器具のローラーにリント捕集用袋を装着する状態図
【図2】リント捕集用袋の斜視図
【図3】粘着剤塗布用具の斜視図
【図4】リント捕集用袋に粘着剤を塗布する状態図
【図5】リント清掃用器具のローラーにリント捕集用袋を装着した状態図(第1の実施例)
【図6】リント清掃用器具のローラーにリント捕集用袋を装着した状態図(第2の実施例)
【図7】衣類乾燥機のフィルターに堆積したリントを捕集している状態を示す図
【図8】リントを捕集したリント捕集用袋をローラーから外した状態を示す図
【図9】捕集したリントの蓄積状態を示す図
【図10】ローラーの断面図
【図11】挿着部の繊維の起毛による捕集用袋の脱落を防止する効果を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照しつつ、この発明を実施するための形態を説明する。
【0026】
図1はリント清掃用器具(1)のローラー(2)にリント捕集用袋(4)を挿着する状態を示すものである。リント清掃用器具(1)は、ハンドル(3)の先端に回転自在に装着されたローラー(2)を備え、ローラーの外周面にリント捕集用袋(4)を一端からスライドして挿着するための柔軟性を有する挿着部(2b)が設けられている。
【0027】
ローラー(2)は、軸体(2a)の外周面に柔軟性を有する挿着部(2b)を設けた構造であり、例えばポリプロピレンを軸体とし外周面にパイル地を積層した、いわゆるペンキ塗工用のローラー様のものが適するが、これに限定するものではなく、挿着部(2b)には、不織布や軟質多孔材等の材料を用いることができる。又、挿着部(2b)は軸体(2a)に積層して形成しても良いが、軸体と別体に形成し、軸体に挿着しても良い(図10)。
【0028】
ローラー(2)の挿着部(2b)は、柔軟性を有することから、ローラーの外周はクッション性を有し、フィルター面の凹凸にも十分に追従することができるため、リント捕集用袋が確実にリントを捕集することができる。
【0029】
ローラー(2)の挿着部(2b)は、リント捕集用袋を挿入する方向に沿って起毛した繊維で構成することができる(図1、11)。繊維をリント捕集用袋を挿入する方向に沿って起毛することにより、リント捕集用袋の挿着部(2b)への挿着を抵抗を少なくして行うことができると共に、リントを捕集するためにフィルター等にローラーを押し当てながら回転させた際に、リント捕集用袋の脱落を防止することができる。これは、起毛した繊維が押圧された場合、リント捕集用袋を外挿する方向に倒れるため、繊維の倒れ込みにしたがいリント捕集用袋はより確実に挿着部(2b)に挿着され、ローラーからの抜け出しを阻止する作用によるものである(図11)。
【0030】
挿着部(2b)を、リント捕集用袋(4)を外挿する方向に沿って起毛した繊維で構成する場合(図1、11)、繊維の材質や起毛する方法は限定されるものではないが、例えば、起毛加工した織布あるいは不織布やパイル地、合成繊維による起毛地などがある。又、挿着部(2b)は軸体(2a)とは別に形成し、軸体(2a)に取り付けても良いが、軸体(2a)の外表面に加工処理を施し、挿着部(2b)を積層あるいは一体に形成することも可能である。
【0031】
リント捕集用袋(4)が挿着部(2b)から脱落することを防止すると共に、ローラー(2)にクッション性を与え、又、リント捕集用袋の大きさを厳密に限定することなくある程度のバラツキが生じても挿着可能とするために、挿着部(2b)は、その直径の85〜100%の直径のリント捕集用袋を挿着することができるよう柔軟性を有することが好ましい。
【0032】
ローラー(2)の軸体(2a)は、プラスチックや金属等の管材を使用することができる。プラスチックの素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレン等を使用することができ、金属の素材としては、アルミニウム等を使用することができる。
【0033】
ローラー(2)とハンドル(3)の連結には、ベアリング等の軸受を装着することもできる。ハンドル(3)は一般的にこの種のローラー支持に用いられる形状が適し、材質は、ステンレス、アルミニウム、プラスチック等の剛性を有する管材・棒材が好ましい。尚、屈曲点(3a)は、後述のリント捕集を妨げないよう、ローラー(2)の表面から幾分離れた位置に形成するのが好ましい。
【0034】
リント捕集用袋(4)は、リントを捕集除去する現場において簡単に着脱でき、ローラーに挿着した時に、ローラーの形状あわせて円筒形状又は円筒形状に類似する形状となり得る有底の袋であれば良い(図2)。ここで、有底としたのは、リント捕集用袋(4)をローラーの挿着部(2b)に挿着した時、袋の底(閉止側)が挿着部(2b)から耳状に突起し、この耳状突起部を把持することにより、清掃後にリント捕集用袋(封筒)をローラーから容易に抜き取ることができるためである(図5)。又、挿着部(2b)をリント捕集用袋を外挿する方向に起毛した繊維で構成した場合には、リントを捕集するためにローラーをフィルターに押し当てながら回転させた時、挿着部(2b)の繊維は押圧され、リント捕集用袋を挿入する方向に倒れて捕集袋の脱落を防止するが、該袋に底を設けることによって、袋の移動を防ぐことができる(図11)。この場合、袋の底は袋の移動を防ぐためのものであるため、袋の底を完全に塞ぐことまでを必要とするものではない。したがって、例えば、開放面に細帯状物を架け渡してローラーからの抜け出しを防止しても良い(図6)。
【0035】
リント捕集用袋の材質には、紙、不織布、プラスチックシートなど、粘着剤を塗布することができる材質であれば使用することができるが、ポリマーを含有する水系エマルジョンを原液とし、これに低級アルコールを配合して得た粘着剤を塗布する場合には、水分を適度に吸収して粘着剤の乾燥が早く、又粘着剤の密着性が良いことから、紙を使用することが好ましい。
【0036】
リント捕集用袋は、前記のとおり本発明のリント清掃用器具に適した形状及び材質により形成するものであるが、例えば、市販の郵便用封筒(長形3号(120mm×235mm)、長形4号(90mm×205mm)等)をリント捕集用袋として使用することができる。使用済みの封筒を利用すれば、新たにリント捕集用袋を作成する必要がなく作業が効率的であるとともに、廃材を利用することで環境保護にも対応し得る。
【0037】
リント捕集用袋に粘着剤を塗布する方法としては、特に制限はなく、刷毛を使用して塗布する方法、スプレーにより噴霧し塗布する方法、転写等により塗布する方法等があるが、液状の粘着剤を簡便に塗布することができ、又、使用後は残存する粘着剤をそのまま収納し保管することが可能な塗布具付きの容器を使用して塗布することが好ましい(図3)。図3に示す塗布具付き容器(粘着剤塗布容器)は、粘着剤を収容した容器(9)に塗布部(7)を備えた中栓(8)を螺合したものである。粘着剤と塗布する際には、塗布部(7)を下方に向け、粘着剤を塗布部に浸透させ、塗布部を捕集用袋の胴部(4b)上で摺動することにより、リント捕集用袋(4)の胴部全体に均一に粘着剤を塗布する(図4)。塗布部(7)の材質は、滑らかな多孔質ポリウレタンであることが好ましく、又、中栓(8)には、塗布面に容器を押しつけた時に開く状態になる弁機構等を設けることもできる。
【0038】
粘着剤は、粘着剤原液に低級アルコールを配合して得る。低級アルコールを配合することにより、塗布しやすい粘度に調製するとともに、乾燥速度を向上することができる。粘着剤原液としては、アクリル酸エステルの重合体、あるいは酢酸ビニルなどのビニル系モノマーとメタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸との共重合体を主成分としたアクリル系粘着剤、又は、ポリオルガノシロキサンを主成分としたシリコーン系粘着剤、又は、ポリエーテルポリウレタン及び/又はポリエステルポリウレタンを主成分とするウレタン系粘着剤、又は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル重合体等のビニル系重合体に可塑剤を加えたビニル系粘着剤、又は、天然ゴム、ポリイソプレン、ブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴムなどのゴム成分に、粘着付与剤、軟化剤等を配合したゴム系粘着剤等の水系エマルジョンを使用することができるが、粘着力に優れること、ガラス転移点が低く気温差による粘着性の変化が少ないこと、及び臭気が少ないことからアクリル系粘着剤が好ましい。
【0039】
粘着剤原液中のポリマー濃度(固形分)は50〜70質量%が好ましい。市販されている粘着剤原液の濃度は通常、20〜70質量%であるが、50%以下では、ポリマー濃度が低いため(水分が多いため)、乾燥に時間がかかりすぎる。一方、ポリマー濃度が高いほど乾燥時間が短くなるが、原液の粘度が高くなるため塗布しにくく、操作性に劣る。
【0040】
粘着剤原液に対する低級アルコールの配合量は、10〜30質量%が好ましい。配合量が10質量%未満では、粘着剤の粘度が高く(ポリマー濃度が高く)、1回で塗布される粘着剤の量が多く、水、アルコールの乾燥に長時間を要する。一方、30質量%をこえると、ポリマーの粘度が低くなり、1回で塗布される粘着剤の量が少ないため、得られる粘着力が十分ではない。
【0041】
低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を使用することができ、これらを混合して配合したもの、例えば変性アルコールや燃料用アルコール等を使用することもできる。低級アルコールは水との相溶性に優れ、又、沸点が低いため乾燥しやすく、毒性が低いことから、粘着剤への配合成分として好ましい。
【0042】
図7に示すように、捕集具のハンドル(3)を操作し、粘着剤を塗布したリント捕集用袋(4)を衣類乾燥機(10)のフィルター(11)に堆積したリント(12)に押しつけ、ローラー(2)をゆっくりと1/4乃至1/2程度回転させて、リント(12)がリント捕集用袋(4)に移行することを確かめる。移行に問題がなければ、そのままリント(12)の堆積しているフィルター(11)面へ軽く押しつけながらゆっくりと回転を続けることで、図9に示すように、リント捕集用袋(4)上にリント(12)が層状に蓄積されていく。該層状のリント(12)が、ハンドル(3)の屈曲部(3a)に達したら回転を止め、フィルターより捕集具(1)を離脱させる。リント捕集用袋(4)は、図8に示すように廃棄用袋(13)を被せた後、ローラー(2)からリント捕集用袋(4)を抜き取り、廃棄用袋(13)を封止して行う。これによって捕集したリント(12)が飛散してしまうことなく、簡単に効率良く、且、衛生的に廃棄することができる。
【0043】
以下、粘着剤について行った各種試験の結果を実施例として説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。尚、配合量は特に断りのない限り質量%である。
【実施例1】
【0044】
「粘着剤の評価」
各種粘着剤原液に対し、燃料用アルコール(エタノール70質量%、メタノール30質量%)を20質量%配合して得た粘着剤(テスト品1〜6)について粘着性、匂い適性、及び塗布適性を官能により評価した。粘着剤原液には、市販のレヂテック社製のエマルジョン系各種粘着剤を使用した(表1)。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に記載のいずれの粘着剤(テスト品1〜6)も、実用上問題ないレベルであるものの、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EL−105)は、ポリマー特有の臭気が感じられ、ウレタン系(U−830)は、粘着力がやや弱い傾向にあることから、粘着剤に含有されるポリマー成分は、アクリル系高分子化合物(テスト品1〜4)であることが好ましい。
【0047】
つぎに粘着剤原液に対してアルコールを5〜30%配合したテスト品11〜15と水を20〜30%配合したテスト品16,17について、乾燥時間とリントの捕集効果に関する評価した(表2)。乾燥時間は粘着剤をリント捕集用袋(長形4号封筒を使用)に均一に塗布し(約2g)、塗布直後から指で触れても粘着剤が指に移行しない程度に乾燥した状態になるまでに要した時間を測定した。乾燥時間に関する評価基準として、塗布後2分以内で乾燥するものを合格(○)とした。これは、作業の効率性を考慮したものである。又、リントの捕集効果は、リントの塊(10cm四方厚さ1cm程度)を捕集して保持できるか否かを判断基準とした。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示すとおり、粘着剤原液にアルコールを10〜30%配合したテスト品12〜15において乾燥時間、粘着力ともに良好な結果を得ることができた。テスト品1は、粘着力は問題ないものの、乾燥するまでに長時間を要するため不適であった。又、テスト品16,17は粘着剤原液を水で希釈したものであるが、乾燥に長時間を要するとともに粘着力も不足するものであった。
【0050】
「リント捕集試験」
リント清掃用器具、リント捕集用袋、清掃対象となるフィルター等を設定し、実際にリント捕集作業を行い、リントの捕集能力を検証した。
【0051】
清掃対象フィルター:ガス式乾燥剤(処理量27Kg)に設置された、ポリプロピレン平織りで表面積3640cm2であった。
リント堆積状況:シーツ、毛布、タオルケット、タオル、スポーツ着等の被乾燥物を投入し、負荷率85〜100%で4回連続して運転し、リント堆積の厚さは8mm、フィルター網目は全く見えない状態であった。
粘着剤:A−6001L粘着剤原液に燃料アルコール(高杉製薬製)を原液に対して15質量%添加し混合して消炎剤塗布容器(キタノ製作(株)製)に充填した。これを常温・常圧の室内に35日保存した。
粘着面形成:ローラーに使用済み長4封筒を装着、上記粘着剤を消炎剤塗布容器で一様に塗布し、1分間放置して粘着面を形成した。塗布量は約1gであった。
捕集清掃作業:粘着面を有する封筒を装着したローラーをリントの堆積した面に押し当てながら回動させた。1回の回動でフィルター面よりリントが捕集シート側に移行し、フィルターの網目が表れ、残存するリントは確認できない状態であった。リントの付着したローラーを更にリント面に押し当てつつ回動したところ、捕集したリント面に新しいリントが捕集され、リントが層状に蓄積した。フィルターの全面のリントを捕集したところで、蓄積したリントがハンドルの屈曲部に達したため捕集を止め、リント捕集用シートをローラーから抜き取り廃棄した。この時捕集したリントの量は15gであった。
清掃結果:リント捕集シートの表面積は324cm2であり、フィルター面積は3640cm2であるので、約11倍の面積のリントを捕集することができた。フィルター上のリントは目視できなかったが、拡大鏡で観察したところ、フィルターの一つの目に、目開きと同じ長さ以上の糸くずが平均0.3本確認できる程度であった。したがって、フィルターに堆積したリントはほぼ100%捕集され、目詰まりもほぼ100%解消されたものと判定される。尚、捕集作業中のリントの飛散はほとんどなく、フィルター周辺へのこぼれ、脱落もほとんどなかった。
【符号の説明】
【0052】
1 リント清掃用器具
2 ローラー
2a 軸体
2b 挿着部
3 ハンドル
3a 屈曲部
4 リント捕集用袋
4a 底部
4b 胴部
4c 貼り合わせ部
5 粘着剤塗布容器
6 外栓
7 塗布部
8 中栓
9 容器
10 衣類乾燥機
11 フィルター
12 リント
13 廃棄用袋
14 粘着剤
15 細帯状物
16 耳状突起部
【技術分野】
【0001】
本発明は、綿ゴミ・糸くず等の塵埃、特に衣類乾燥機のフィルターに堆積されるリントを、簡単に効率良く、且、衛生的に捕集し除去するためのリント清掃用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類乾燥機は、運転中に洗濯で発生した綿ゴミ・糸くず等の塵埃、いわゆるリントが熱風に伴われ衣類より離脱し機内に飛散する。このリントを乾燥機外に排出することは衛生上、美観上好ましくないため、乾燥機内にフィルターを設置して捕集している。捕集されたリントはフィルターに堆積され、堆積されるリントの量は数回の運転で厚さ10mmにも及ぶような量となっており、フィルター1m2あたりでは60g以上と、乾燥機外の通常の床面に堆積するリント・ゴミ量と比較し100〜1000倍もの量となっている。フィルターにリントが堆積すると、乾燥機内を循環する乾燥用熱風の流通が妨げられ、乾燥効率が低下するとともに、火災の危険性が増大する。したがってフィルターに堆積したリントの除去は、乾燥機運転に際し重要な点検・保守作業となる。
【0003】
フィルターの清掃は、真空掃除機を使用した吸引による除去が一般的となっている。しかしながら、掃除機は重量があり移動させるのに労力を要すること、又、吸引ノズルの形状やホースの長さ等の制約から清掃作業が効率的でないこと、又、作動音が大きいといった問題を抱えている。更に、清掃作業により掃除機内に蓄積したリントは、手作業で取り出し廃棄する必要があり、この際にリントを再度飛散させてしまい非衛生的であるという問題が存している。
【0004】
リントを自動的に除去する機能を備えた乾燥機が特許文献1に開示されている。回転駆動されるように支持された多孔板製横長円筒形の内胴と、内胴の外周側に内胴と一定の隙間をおいて固設され、内胴の外周から内周へ向う空気通路の空気出口を備えた外胴とからなる乾燥機において、内胴の外面に仕切りブラシを固定し、内胴の回転に合わせ内外胴間に堆積したリントを掻き出し、且、掻き出されたリントをバキュームで吸引することで、内胴内への熱風の吹き込み量を確保しようとするものである。しかしながら、この方法にあっては、機械的なトラブルが発生する可能性がある。又、通常のバキュームでは除去しきれないブラシ自体に蓄積されたリントは手作業で捕集・廃棄する必要があり、この作業には乾燥機の分解が伴うため、稼働率の低下を招くという問題がある。更に、掻き出したリントをリントボックスから回収し廃棄する作業は、最終的には手作業で行うしかなく、煩雑であると共に、リントの再飛散を招き、非衛生的である。
【0005】
床面等の清掃用器具として市販されている、片面に粘着層が形成され連続的に積層巻着された粘着テープクリーナーは、使用済の粘着面を剥がし切断することで新たな粘着面を露出させることができるものであるが、多量のリントを捕集した場合、巻着面から最外層の一枚のみを切断することが実質的に不可能であった。しかも無理に捕集済の粘着面を切断しようとすると、捕集したリントが飛散してしまい、非衛生的であった。又、積層テープにより、重量があるため、作業に労力を要し、更に、フィルター面の凹凸に十分追従せず、リントを完全に捕集できない不都合がある。
【0006】
又、リント捕集用シートを円筒状に形成し、ローラーに外挿した後、剥離紙を除去して粘着面を露出させ、ローラーをリントの上に押し当て回転させてリントを捕集する清掃用器具がある(特許文献2)。この清掃用器具では、リントの捕集後は、捕集用シートをローラーから抜き取り廃棄するために、捕集シート上に捕集したリントは飛散せず廃棄することが可能ではあるが、清掃作業を開始する準備段階において、リント捕集用シートを円筒形状に形成しなければならず、又、除去した剥離紙をゴミとして処理しなければならない不都合があった。
【0007】
【特許文献1】特開平08−240385号公報
【特許文献2】特開2010−68871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、衣類乾燥機のフィルターに堆積する多量のリントを、簡単に効率良く、且、衛生的に捕集し除去することのできるリント清掃用器具及びこれを使用する清掃方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ローラーの挿着部にリント捕集用袋を一端からスライドして挿着した後、リント捕集用袋の胴部に粘着剤を塗布し、ローラーをリント上に押し当て回転させることによってリントを捕集し、清掃後は、リントを捕集したリント捕集用袋を挿着部から抜き取り、廃棄することができるリント清掃用器具を開発するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、ハンドルの先端に回転自在なローラーを装着し、粘着剤を塗布してリントを捕集するための有底のリント捕集用袋を一端からスライドして挿着するための柔軟性を有する挿着部をローラーの外周に設けることを特徴とするリント清掃用器具である。
【0011】
更に、本発明は、前記挿着部が、リント捕集用袋を外挿する方向に沿って起毛した繊維で構成されることを特徴とするリント清掃用器具である。
【0012】
更に、本発明は、前記挿着部が、その直径の85〜100%の直径のリント捕集用袋を挿着できるように起毛した繊維で構成されることを特徴とするリント清掃用器具である。
【0013】
更に、本発明は、前記リント捕集用袋が、封筒であることを特徴とするリント清掃用器具である。
【0014】
更に、本発明は、前記粘着剤が、ポリマー成分を50〜70質量%含有する水系エマルジョンを原液とし、低級アルコールを原液に対して10〜30質量%配合してなることを特徴とするリント清掃用器具である。
【0015】
更に、本発明は、前記粘着剤に含有するポリマー成分が、アクリル系ポリマーであることを特徴とするリント清掃用器具である。
【0016】
又、本発明は、前記のリント清掃用器具と、粘着剤を収容した粘着剤塗布容器とを組み合わせてなるリント清掃用器具セットである。
【0017】
又、本発明は、前記のリント清掃用器具を使用する方法であって、ローラーの挿着部にリント捕集用袋を一端からスライドして挿着した後、リント捕集用袋の胴部に粘着剤を塗布し、ローラーをリント上に押し当て回転させることによってリントを捕集することを特徴とするリントの清掃方法である。
【0018】
又、本発明は、前記のリント清掃用器具セットを使用する方法であって、ローラーの挿着部にリント捕集用袋を一端からスライドして挿着した後、リント捕集用袋の胴部に粘着剤を収容した粘着剤塗布容器を使用して粘着剤を塗布し、ローラーをリント上に押し当て回転させることによってリントを捕集することを特徴とするリントの清掃方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のリント清掃用器具は、ローラーの挿着部にリント捕集用袋を一端からスライドして挿着した後、リント捕集用袋の胴部に粘着剤を塗布し、ローラーをリント上に押し当て回転させることによってリントを捕集し、清掃後は、リントを捕集したリント捕集用袋を挿着部から抜き取り、廃棄用袋に収納するため、フィルターに堆積したリントを簡単に効率良く、且、衛生的に捕集し除去できるという効果を得ることができる。
【0020】
特に、従来の片面に粘着層が形成され連続的に積層巻着された粘着テープクリーナーと比較すると、本発明のリント清掃用器具は、清掃後に粘着テープをミシン目で切り取る必要がなく、リントの飛散がないため衛生的であり、又、積層の粘着テープを使用しないため重量が軽く、作業が容易である。更に、本発明はローラーの挿着部が柔軟性を有するため、フィルター面の凹凸にも十分に追従することができ、確実にリントを捕集することができる。
【0021】
又、本発明のリント清掃用器具は、使用者が使用する機会ごとに、リント捕集用袋を挿着し粘着剤を塗布するため、従来の粘着テープクリーナーのように粘着テープを生産するために必要な、粘着剤を大量に塗布し乾燥するための設備は不要である。
【0022】
更に、ローラーの挿着部をリント捕集用袋を外挿する方向に沿って起毛した繊維で構成することにより、ローラーにリント捕集用袋を挿着しやすくするとともに、挿着したリント捕集用袋が清掃作業中にローラーから脱落することを防止することができる。
【0023】
又、ポリマー成分を含有する水系エマルジョンを低級アルコールで希釈した所定の粘着剤を使用することにより、乾燥時間を短縮し、効率の良い清掃作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】リント清掃用器具のローラーにリント捕集用袋を装着する状態図
【図2】リント捕集用袋の斜視図
【図3】粘着剤塗布用具の斜視図
【図4】リント捕集用袋に粘着剤を塗布する状態図
【図5】リント清掃用器具のローラーにリント捕集用袋を装着した状態図(第1の実施例)
【図6】リント清掃用器具のローラーにリント捕集用袋を装着した状態図(第2の実施例)
【図7】衣類乾燥機のフィルターに堆積したリントを捕集している状態を示す図
【図8】リントを捕集したリント捕集用袋をローラーから外した状態を示す図
【図9】捕集したリントの蓄積状態を示す図
【図10】ローラーの断面図
【図11】挿着部の繊維の起毛による捕集用袋の脱落を防止する効果を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照しつつ、この発明を実施するための形態を説明する。
【0026】
図1はリント清掃用器具(1)のローラー(2)にリント捕集用袋(4)を挿着する状態を示すものである。リント清掃用器具(1)は、ハンドル(3)の先端に回転自在に装着されたローラー(2)を備え、ローラーの外周面にリント捕集用袋(4)を一端からスライドして挿着するための柔軟性を有する挿着部(2b)が設けられている。
【0027】
ローラー(2)は、軸体(2a)の外周面に柔軟性を有する挿着部(2b)を設けた構造であり、例えばポリプロピレンを軸体とし外周面にパイル地を積層した、いわゆるペンキ塗工用のローラー様のものが適するが、これに限定するものではなく、挿着部(2b)には、不織布や軟質多孔材等の材料を用いることができる。又、挿着部(2b)は軸体(2a)に積層して形成しても良いが、軸体と別体に形成し、軸体に挿着しても良い(図10)。
【0028】
ローラー(2)の挿着部(2b)は、柔軟性を有することから、ローラーの外周はクッション性を有し、フィルター面の凹凸にも十分に追従することができるため、リント捕集用袋が確実にリントを捕集することができる。
【0029】
ローラー(2)の挿着部(2b)は、リント捕集用袋を挿入する方向に沿って起毛した繊維で構成することができる(図1、11)。繊維をリント捕集用袋を挿入する方向に沿って起毛することにより、リント捕集用袋の挿着部(2b)への挿着を抵抗を少なくして行うことができると共に、リントを捕集するためにフィルター等にローラーを押し当てながら回転させた際に、リント捕集用袋の脱落を防止することができる。これは、起毛した繊維が押圧された場合、リント捕集用袋を外挿する方向に倒れるため、繊維の倒れ込みにしたがいリント捕集用袋はより確実に挿着部(2b)に挿着され、ローラーからの抜け出しを阻止する作用によるものである(図11)。
【0030】
挿着部(2b)を、リント捕集用袋(4)を外挿する方向に沿って起毛した繊維で構成する場合(図1、11)、繊維の材質や起毛する方法は限定されるものではないが、例えば、起毛加工した織布あるいは不織布やパイル地、合成繊維による起毛地などがある。又、挿着部(2b)は軸体(2a)とは別に形成し、軸体(2a)に取り付けても良いが、軸体(2a)の外表面に加工処理を施し、挿着部(2b)を積層あるいは一体に形成することも可能である。
【0031】
リント捕集用袋(4)が挿着部(2b)から脱落することを防止すると共に、ローラー(2)にクッション性を与え、又、リント捕集用袋の大きさを厳密に限定することなくある程度のバラツキが生じても挿着可能とするために、挿着部(2b)は、その直径の85〜100%の直径のリント捕集用袋を挿着することができるよう柔軟性を有することが好ましい。
【0032】
ローラー(2)の軸体(2a)は、プラスチックや金属等の管材を使用することができる。プラスチックの素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレン等を使用することができ、金属の素材としては、アルミニウム等を使用することができる。
【0033】
ローラー(2)とハンドル(3)の連結には、ベアリング等の軸受を装着することもできる。ハンドル(3)は一般的にこの種のローラー支持に用いられる形状が適し、材質は、ステンレス、アルミニウム、プラスチック等の剛性を有する管材・棒材が好ましい。尚、屈曲点(3a)は、後述のリント捕集を妨げないよう、ローラー(2)の表面から幾分離れた位置に形成するのが好ましい。
【0034】
リント捕集用袋(4)は、リントを捕集除去する現場において簡単に着脱でき、ローラーに挿着した時に、ローラーの形状あわせて円筒形状又は円筒形状に類似する形状となり得る有底の袋であれば良い(図2)。ここで、有底としたのは、リント捕集用袋(4)をローラーの挿着部(2b)に挿着した時、袋の底(閉止側)が挿着部(2b)から耳状に突起し、この耳状突起部を把持することにより、清掃後にリント捕集用袋(封筒)をローラーから容易に抜き取ることができるためである(図5)。又、挿着部(2b)をリント捕集用袋を外挿する方向に起毛した繊維で構成した場合には、リントを捕集するためにローラーをフィルターに押し当てながら回転させた時、挿着部(2b)の繊維は押圧され、リント捕集用袋を挿入する方向に倒れて捕集袋の脱落を防止するが、該袋に底を設けることによって、袋の移動を防ぐことができる(図11)。この場合、袋の底は袋の移動を防ぐためのものであるため、袋の底を完全に塞ぐことまでを必要とするものではない。したがって、例えば、開放面に細帯状物を架け渡してローラーからの抜け出しを防止しても良い(図6)。
【0035】
リント捕集用袋の材質には、紙、不織布、プラスチックシートなど、粘着剤を塗布することができる材質であれば使用することができるが、ポリマーを含有する水系エマルジョンを原液とし、これに低級アルコールを配合して得た粘着剤を塗布する場合には、水分を適度に吸収して粘着剤の乾燥が早く、又粘着剤の密着性が良いことから、紙を使用することが好ましい。
【0036】
リント捕集用袋は、前記のとおり本発明のリント清掃用器具に適した形状及び材質により形成するものであるが、例えば、市販の郵便用封筒(長形3号(120mm×235mm)、長形4号(90mm×205mm)等)をリント捕集用袋として使用することができる。使用済みの封筒を利用すれば、新たにリント捕集用袋を作成する必要がなく作業が効率的であるとともに、廃材を利用することで環境保護にも対応し得る。
【0037】
リント捕集用袋に粘着剤を塗布する方法としては、特に制限はなく、刷毛を使用して塗布する方法、スプレーにより噴霧し塗布する方法、転写等により塗布する方法等があるが、液状の粘着剤を簡便に塗布することができ、又、使用後は残存する粘着剤をそのまま収納し保管することが可能な塗布具付きの容器を使用して塗布することが好ましい(図3)。図3に示す塗布具付き容器(粘着剤塗布容器)は、粘着剤を収容した容器(9)に塗布部(7)を備えた中栓(8)を螺合したものである。粘着剤と塗布する際には、塗布部(7)を下方に向け、粘着剤を塗布部に浸透させ、塗布部を捕集用袋の胴部(4b)上で摺動することにより、リント捕集用袋(4)の胴部全体に均一に粘着剤を塗布する(図4)。塗布部(7)の材質は、滑らかな多孔質ポリウレタンであることが好ましく、又、中栓(8)には、塗布面に容器を押しつけた時に開く状態になる弁機構等を設けることもできる。
【0038】
粘着剤は、粘着剤原液に低級アルコールを配合して得る。低級アルコールを配合することにより、塗布しやすい粘度に調製するとともに、乾燥速度を向上することができる。粘着剤原液としては、アクリル酸エステルの重合体、あるいは酢酸ビニルなどのビニル系モノマーとメタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸との共重合体を主成分としたアクリル系粘着剤、又は、ポリオルガノシロキサンを主成分としたシリコーン系粘着剤、又は、ポリエーテルポリウレタン及び/又はポリエステルポリウレタンを主成分とするウレタン系粘着剤、又は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル重合体等のビニル系重合体に可塑剤を加えたビニル系粘着剤、又は、天然ゴム、ポリイソプレン、ブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴムなどのゴム成分に、粘着付与剤、軟化剤等を配合したゴム系粘着剤等の水系エマルジョンを使用することができるが、粘着力に優れること、ガラス転移点が低く気温差による粘着性の変化が少ないこと、及び臭気が少ないことからアクリル系粘着剤が好ましい。
【0039】
粘着剤原液中のポリマー濃度(固形分)は50〜70質量%が好ましい。市販されている粘着剤原液の濃度は通常、20〜70質量%であるが、50%以下では、ポリマー濃度が低いため(水分が多いため)、乾燥に時間がかかりすぎる。一方、ポリマー濃度が高いほど乾燥時間が短くなるが、原液の粘度が高くなるため塗布しにくく、操作性に劣る。
【0040】
粘着剤原液に対する低級アルコールの配合量は、10〜30質量%が好ましい。配合量が10質量%未満では、粘着剤の粘度が高く(ポリマー濃度が高く)、1回で塗布される粘着剤の量が多く、水、アルコールの乾燥に長時間を要する。一方、30質量%をこえると、ポリマーの粘度が低くなり、1回で塗布される粘着剤の量が少ないため、得られる粘着力が十分ではない。
【0041】
低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を使用することができ、これらを混合して配合したもの、例えば変性アルコールや燃料用アルコール等を使用することもできる。低級アルコールは水との相溶性に優れ、又、沸点が低いため乾燥しやすく、毒性が低いことから、粘着剤への配合成分として好ましい。
【0042】
図7に示すように、捕集具のハンドル(3)を操作し、粘着剤を塗布したリント捕集用袋(4)を衣類乾燥機(10)のフィルター(11)に堆積したリント(12)に押しつけ、ローラー(2)をゆっくりと1/4乃至1/2程度回転させて、リント(12)がリント捕集用袋(4)に移行することを確かめる。移行に問題がなければ、そのままリント(12)の堆積しているフィルター(11)面へ軽く押しつけながらゆっくりと回転を続けることで、図9に示すように、リント捕集用袋(4)上にリント(12)が層状に蓄積されていく。該層状のリント(12)が、ハンドル(3)の屈曲部(3a)に達したら回転を止め、フィルターより捕集具(1)を離脱させる。リント捕集用袋(4)は、図8に示すように廃棄用袋(13)を被せた後、ローラー(2)からリント捕集用袋(4)を抜き取り、廃棄用袋(13)を封止して行う。これによって捕集したリント(12)が飛散してしまうことなく、簡単に効率良く、且、衛生的に廃棄することができる。
【0043】
以下、粘着剤について行った各種試験の結果を実施例として説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。尚、配合量は特に断りのない限り質量%である。
【実施例1】
【0044】
「粘着剤の評価」
各種粘着剤原液に対し、燃料用アルコール(エタノール70質量%、メタノール30質量%)を20質量%配合して得た粘着剤(テスト品1〜6)について粘着性、匂い適性、及び塗布適性を官能により評価した。粘着剤原液には、市販のレヂテック社製のエマルジョン系各種粘着剤を使用した(表1)。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に記載のいずれの粘着剤(テスト品1〜6)も、実用上問題ないレベルであるものの、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EL−105)は、ポリマー特有の臭気が感じられ、ウレタン系(U−830)は、粘着力がやや弱い傾向にあることから、粘着剤に含有されるポリマー成分は、アクリル系高分子化合物(テスト品1〜4)であることが好ましい。
【0047】
つぎに粘着剤原液に対してアルコールを5〜30%配合したテスト品11〜15と水を20〜30%配合したテスト品16,17について、乾燥時間とリントの捕集効果に関する評価した(表2)。乾燥時間は粘着剤をリント捕集用袋(長形4号封筒を使用)に均一に塗布し(約2g)、塗布直後から指で触れても粘着剤が指に移行しない程度に乾燥した状態になるまでに要した時間を測定した。乾燥時間に関する評価基準として、塗布後2分以内で乾燥するものを合格(○)とした。これは、作業の効率性を考慮したものである。又、リントの捕集効果は、リントの塊(10cm四方厚さ1cm程度)を捕集して保持できるか否かを判断基準とした。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示すとおり、粘着剤原液にアルコールを10〜30%配合したテスト品12〜15において乾燥時間、粘着力ともに良好な結果を得ることができた。テスト品1は、粘着力は問題ないものの、乾燥するまでに長時間を要するため不適であった。又、テスト品16,17は粘着剤原液を水で希釈したものであるが、乾燥に長時間を要するとともに粘着力も不足するものであった。
【0050】
「リント捕集試験」
リント清掃用器具、リント捕集用袋、清掃対象となるフィルター等を設定し、実際にリント捕集作業を行い、リントの捕集能力を検証した。
【0051】
清掃対象フィルター:ガス式乾燥剤(処理量27Kg)に設置された、ポリプロピレン平織りで表面積3640cm2であった。
リント堆積状況:シーツ、毛布、タオルケット、タオル、スポーツ着等の被乾燥物を投入し、負荷率85〜100%で4回連続して運転し、リント堆積の厚さは8mm、フィルター網目は全く見えない状態であった。
粘着剤:A−6001L粘着剤原液に燃料アルコール(高杉製薬製)を原液に対して15質量%添加し混合して消炎剤塗布容器(キタノ製作(株)製)に充填した。これを常温・常圧の室内に35日保存した。
粘着面形成:ローラーに使用済み長4封筒を装着、上記粘着剤を消炎剤塗布容器で一様に塗布し、1分間放置して粘着面を形成した。塗布量は約1gであった。
捕集清掃作業:粘着面を有する封筒を装着したローラーをリントの堆積した面に押し当てながら回動させた。1回の回動でフィルター面よりリントが捕集シート側に移行し、フィルターの網目が表れ、残存するリントは確認できない状態であった。リントの付着したローラーを更にリント面に押し当てつつ回動したところ、捕集したリント面に新しいリントが捕集され、リントが層状に蓄積した。フィルターの全面のリントを捕集したところで、蓄積したリントがハンドルの屈曲部に達したため捕集を止め、リント捕集用シートをローラーから抜き取り廃棄した。この時捕集したリントの量は15gであった。
清掃結果:リント捕集シートの表面積は324cm2であり、フィルター面積は3640cm2であるので、約11倍の面積のリントを捕集することができた。フィルター上のリントは目視できなかったが、拡大鏡で観察したところ、フィルターの一つの目に、目開きと同じ長さ以上の糸くずが平均0.3本確認できる程度であった。したがって、フィルターに堆積したリントはほぼ100%捕集され、目詰まりもほぼ100%解消されたものと判定される。尚、捕集作業中のリントの飛散はほとんどなく、フィルター周辺へのこぼれ、脱落もほとんどなかった。
【符号の説明】
【0052】
1 リント清掃用器具
2 ローラー
2a 軸体
2b 挿着部
3 ハンドル
3a 屈曲部
4 リント捕集用袋
4a 底部
4b 胴部
4c 貼り合わせ部
5 粘着剤塗布容器
6 外栓
7 塗布部
8 中栓
9 容器
10 衣類乾燥機
11 フィルター
12 リント
13 廃棄用袋
14 粘着剤
15 細帯状物
16 耳状突起部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルの先端に回転自在にローラーを装着し、粘着剤を塗布してリントを捕集するための有底のリント捕集用袋を一端からスライドして挿着するための柔軟性を有する挿着部をローラーの外周に設けることを特徴とするリント清掃用器具。
【請求項2】
挿着部が、リント捕集用袋を外挿する方向に沿って起毛した繊維で構成されることを特徴とする請求項1記載のリント清掃用器具。
【請求項3】
挿着部が、その直径の85〜100%の直径のリント捕集用袋を挿着できるように起毛した繊維で構成されることを特徴とする請求項1又は2記載のリント清掃用器具。
【請求項4】
リント捕集用袋が、封筒であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のリント清掃用器具。
【請求項5】
粘着剤が、ポリマー成分を50〜70質量%含有する水系エマルジョンを原液とし、低級アルコールを原液に対して10〜30質量%配合してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のリント清掃用器具。
【請求項6】
粘着剤に含有するポリマー成分が、アクリル系ポリマーであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のリント清掃用器具。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のリント清掃用器具と、粘着剤を収容した粘着剤塗布容器とを組み合わせてなるリント清掃用器具セット。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載のリント清掃用器具を使用する方法であって、ローラーの挿着部にリント捕集用袋を一端からスライドして挿着した後、リント捕集用袋の胴部に粘着剤を塗布し、ローラーをリント上に押し当て回転させることによってリントを捕集することを特徴とするリントの清掃方法。
【請求項9】
請求項7に記載のリント清掃用器具セットを使用する方法であって、ローラーの挿着部にリント捕集用袋を一端からスライドして挿着した後、リント捕集用袋の胴部に粘着剤を収容した粘着剤塗布容器を使用して粘着剤を塗布し、ローラーをリント上に押し当て回転させることによってリントを捕集することを特徴とするリントの清掃方法。
【請求項1】
ハンドルの先端に回転自在にローラーを装着し、粘着剤を塗布してリントを捕集するための有底のリント捕集用袋を一端からスライドして挿着するための柔軟性を有する挿着部をローラーの外周に設けることを特徴とするリント清掃用器具。
【請求項2】
挿着部が、リント捕集用袋を外挿する方向に沿って起毛した繊維で構成されることを特徴とする請求項1記載のリント清掃用器具。
【請求項3】
挿着部が、その直径の85〜100%の直径のリント捕集用袋を挿着できるように起毛した繊維で構成されることを特徴とする請求項1又は2記載のリント清掃用器具。
【請求項4】
リント捕集用袋が、封筒であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のリント清掃用器具。
【請求項5】
粘着剤が、ポリマー成分を50〜70質量%含有する水系エマルジョンを原液とし、低級アルコールを原液に対して10〜30質量%配合してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のリント清掃用器具。
【請求項6】
粘着剤に含有するポリマー成分が、アクリル系ポリマーであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のリント清掃用器具。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のリント清掃用器具と、粘着剤を収容した粘着剤塗布容器とを組み合わせてなるリント清掃用器具セット。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載のリント清掃用器具を使用する方法であって、ローラーの挿着部にリント捕集用袋を一端からスライドして挿着した後、リント捕集用袋の胴部に粘着剤を塗布し、ローラーをリント上に押し当て回転させることによってリントを捕集することを特徴とするリントの清掃方法。
【請求項9】
請求項7に記載のリント清掃用器具セットを使用する方法であって、ローラーの挿着部にリント捕集用袋を一端からスライドして挿着した後、リント捕集用袋の胴部に粘着剤を収容した粘着剤塗布容器を使用して粘着剤を塗布し、ローラーをリント上に押し当て回転させることによってリントを捕集することを特徴とするリントの清掃方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−50741(P2012−50741A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196948(P2010−196948)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(510063096)株式会社HMProducts (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(510063096)株式会社HMProducts (2)
【Fターム(参考)】
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