説明

リンパ管に埋め込み可能な電極を含む自律神経調整のためのシステム

様々な実施形態は、脊髄、鎖骨下静脈、並びに胸管及び右リンパ本幹を含む胸部リンパ管を有する体内の自律神経活動を調整する。少なくとも1つのプログラムされた治療は、自律神経活動を調整するように埋め込まれた医療装置を使用して実施される。治療を実施する段階は、胸管(204)において第1の電極(209)を使用して、脊髄の第1の領域から分枝している交感神経の交感神経活動を増大させる段階又は低下させる段階を含み、更に、望ましい胸部リンパ管において第2の電極(210)を使用して、望ましい胸部リンパ管に隣接する副交感神経の副交感神経活動又は脊髄の第2の領域から分枝している交感神経の交感神経活動を増大させる段階又は低下させる段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔優先権の主張〕
本明細書において引用により組み込まれる2009年3月9日出願の米国特許仮出願出願番号第61/158,623号明細書に対する優先権の恩典をここに請求する。
【0002】
本出願は、一般的に医療装置に関し、特に、自律神経系を調整するためのシステム、装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
神経刺激は、様々な病態を治療するために適用されている。神経への電気刺激パルスの制御送出は、その神経の活動を発生させ、調整し、又は阻害し、それによってその神経の機能を回復させ、及び/又はその神経によって神経支配された組織又は器官の機能を調整する。神経刺激の1つの特定の例は、自律神経系の一部に対して電気刺激パルスを送出することにより、心機能及び血行動態性能を調整することである。心臓は、交感神経又は副交感神経によって神経支配されている。
【0004】
自律神経調整に基づく治療は、前臨床及び臨床研究の両方において様々な心血管疾患で有効性を示している。自律神経平衡は、副交感神経ターゲットを刺激すること又は交感神経ターゲットを抑制することによってより大きい副交感神経感受性を有するように調整することができ、かつ交感神経ターゲットを刺激すること又は副交感神経ターゲットを抑制することによってより大きい交感神経感受性を有するように調整することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自律神経失調症は、いくつかの心臓及び他の疾患(心不全(HF)、冠動脈疾患(CAD)、炎症、糖尿病、肥満、癲癇、抑鬱症、その他)に関連付けられる。一部の神経刺激システムは、電極を特定の神経上に設置する。脊髄刺激が提案されているが、迷走神経を直接にターゲットにすることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
様々なシステム実施形態は、脊髄、鎖骨下静脈、並びに胸管及び右リンパ本幹を含む胸部リンパ管を有する体内の自律神経活動を調整する。様々な実施形態によると、システムは、プログラマブル神経刺激器及び少なくとも1つの刺激リードを含む。リードは、第1の電極領域及び第2の電極領域を含み、鎖骨下静脈を通して望ましい胸部リンパ管内へ給送されるようになっており、脊髄の第1の領域から分枝している交感神経を刺激するように胸部リンパ管に第1の電極領域を作動的に位置決めし、かつ脊髄の第2の領域から分枝している交感神経を刺激し、又は望ましい胸部リンパ管に解剖学的に隣接する副交感神経を刺激するように望ましい胸部リンパ管に第2の電極領域を作動的に位置決めする。神経刺激器は、神経刺激パルスを第1の電極領域に送出し、脊髄の第1の領域から分枝している交感神経の交感神経活動を調整し、かつ神経刺激パルスを第2の電極領域に送出し、脊髄の第2の領域から分枝している交感神経の交感神経活動を調整し、又は望ましい胸部リンパ管に解剖学的に隣接する副交感神経の副交感神経活動を調整するようにプログラムされる。
【0007】
脊髄、鎖骨下静脈、並びに胸管及び右リンパ本幹を含む胸部リンパ管を有する体内の自律神経活動を調整する方法の様々な実施形態によると、少なくとも1つのプログラムされた治療は、自律神経活動を調整するように埋め込まれた医療装置を使用して実施される。治療を実施する段階は、胸管において第1の電極を使用して脊髄の第1の領域から分枝している交感神経の交感神経活動を増大させる段階又は低下させる段階を含み、更に、望ましい胸部リンパ管において第2の電極を使用して望ましい胸部リンパ管に隣接する副交感神経の副交感神経活動、又は脊髄の第2の領域から分枝している交感神経の交感神経活動を増大させる段階又は低下させる段階を含む。
【0008】
脊髄、鎖骨下静脈、並びに胸管及び右リンパ本幹を含む胸部リンパ管を有する体内の副交感神経及び交感神経活動の両方を調整するためのシステムを埋め込む方法の様々な実施形態によると、少なくとも1つの刺激リードは、鎖骨下静脈を通して胸部リンパ管内へ給送され、脊髄の第1の領域から分枝している交感神経を刺激するように胸管に第1の電極領域を作動的に位置決めし、かつ望ましい胸部リンパ管に隣接する副交感神経を刺激するように胸部リンパ管に第2の電極領域を作動的に位置決めする。プログラマブル神経刺激器が埋め込まれ、交感神経及び副交感神経を刺激するために少なくとも1つのリードに作動的に取り付けられる。交感神経及び副交感神経の捕捉を検証する試験ルーチンが実施される。
【0009】
この「発明の概要」は、本出願の教示の一部の概要であり、本発明の主題の限定的又は網羅的な治療であるように意図していない。本発明の主題に関する更なる詳細は、詳細説明及び添付の特許請求の範囲に見出される。他の態様は、以下の詳細説明を読んで理解し、その一部を形成して各々を限定的な意味に取るべきではない図面を見ると当業者には明らかであろう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって定められる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】神経刺激システムの実施形態及びシステムが使用される環境の一部を示す図である。
【図2】神経刺激システム実施形態を示す図である。
【図3A】胸管に近い生体構造を示す図である。
【図3B】胸管に近い生体構造を示す図である。
【図3C】胸管に近い生体構造を示す図である。
【図4】リードの実施形態を示す図である。
【図5】リードの実施形態を示す図である。
【図6】リードの実施形態を示す図である。
【図7A】リードの実施形態を示す図である。
【図7B】リードの実施形態を示す図である。
【図8】有効刺激治療を確立して維持するように脊髄刺激リードを埋め込む方法の実施形態を示す図である。
【図9】交感神経及び副交感神経の経リンパ刺激を制御するために埋め込み可能装置内にプログラムすることができるアルゴリズムを示す図である。
【図10】交感神経及び副交感神経の経リンパ刺激を制御するために埋め込み可能装置内にプログラムすることができるアルゴリズムを示す図である。
【図11】交感神経及び副交感神経の経リンパ刺激を制御するために埋め込み可能装置内にプログラムすることができるアルゴリズムを示す図である。
【図12】交感神経及び副交感神経の経リンパ刺激を制御するために埋め込み可能装置内にプログラムすることができるアルゴリズムを示す図である。
【図13】交感神経及び副交感神経の経リンパ刺激を制御するために埋め込み可能装置内にプログラムすることができるアルゴリズムを示す図である。
【図14】交感神経及び副交感神経の経リンパ刺激を制御するために埋め込み可能装置内にプログラムすることができるアルゴリズムを示す図である。
【図15】交感神経及び副交感神経の経リンパ刺激を制御するために埋め込み可能装置内にプログラムすることができるアルゴリズムを示す図である。
【図16】交感神経及び副交感神経の経リンパ刺激を制御するために埋め込み可能装置内にプログラムすることができるアルゴリズムを示す図である。
【図17】交感神経及び副交感神経の経リンパ刺激を制御するために埋め込み可能装置内にプログラムすることができるアルゴリズムを示す図である。
【図18】交感神経及び副交感神経の経リンパ刺激を制御するために埋め込み可能装置内にプログラムすることができるアルゴリズムを示す図である。
【図19】様々な実施形態によるマイクロプロセッサベースの埋め込み可能装置の実施形態の系統図である。
【図20】本発明の主題の様々な実施形態による外部装置、埋め込み可能神経刺激(NS)装置、及び埋め込み可能心臓律動管理(CRM)装置を含むシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の主題の以下の詳細説明は、本発明の主題を実施することができる特定の態様及び実施形態を一例として示す添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明の主題を実施することを可能にするために十分詳細に説明される。他の実施形態を利用することができ、本発明の主題の範囲から逸脱することなく構造的、論理的、及び電気的変更を行うことができる。この開示における「an」、「one」、又は「様々な」実施形態の参照は、必ずしも同じ実施形態に対するものではなく、このような参照は、1つよりも多い実施形態を考えている。以下の詳細説明は、従って、限定的な意味に取るべきではなく、その範囲は、このような特許請求の範囲が権利を有する法的な均等物の全範囲と共に特許請求の範囲によってのみ定められる。
【0012】
本発明の主題は、リンパ系の胸管を通じて非常に重要なANS調整のための低侵襲的方法及び器具を提供する。リンパ系の胸管は、脊柱から分枝している迷走神経及び交感神経の近くに位置し、かつこれらの構造を刺激する低侵襲的接近を提供する。本発明の主題の実施形態は、2つの別々の手術部位及び別々のリードなしに交感神経及び副交感神経の両方を刺激する(活動を増大させるか又は低下させる)手段を提供する。
【0013】
交感神経系を調整するための様々な実施形態によると、リードは、同じリード本体(又は伸縮性の外側本体部材)上に収容された第1の組の電極及び第2の組の電極を有し、第1の組の電極を使用して第1の領域の脊髄から分枝している交感神経をターゲットにし、かつ第2の組の電極を使用して第2の領域の脊髄から分枝している交感神経をターゲットにする。様々な実施形態によると、脊髄の第1及び第2の領域は、脊髄の胸部及び/又は頸部領域内にある。人においては、C5−C7の脊髄から全体的に分枝している神経、及びT1−T6領域の脊髄から全体的に分枝している神経は、心臓を神経支配し、心血管性能に影響を与えることができる。一例として及び以下に限定されるものではないが、第1及び第2の電極は、C7/T1領域の脊髄から分枝している神経、及びT4/T5領域の脊髄から分枝している神経を刺激するように位置決めすることができる。脊髄のこれらの異なる領域から分枝している神経は、異なる区域を神経支配し、又は多かれ少なかれ区域を神経支配する。従って、これらの異なる領域における神経の刺激は、異なる区域の交感神経感受性を調整することができ、又は同じ区域の交感神経感受性を異なる程度まで調整することができる。
【0014】
副交感神経及び交感神経系の両方を調整するための様々な実施形態によると、リードは、同じリード本体(又は伸縮性の外側本体部材)上に収容された第1の組の電極及び第2の組の電極を有し、第1の組の電極を使用して第1の領域の脊髄から分枝している交感神経をターゲットにし、かつ頸部及び胸部内入口領域の胸管に解剖学的に隣接している副交感神経(例えば、延髄からの迷走神経)をターゲットにする。
【0015】
当業者には理解されるように、神経ターゲットは、神経の神経活動を増大させるか又は引き出すように1組のパラメータで刺激することができ、かつ神経の神経活動を低下させ、抑制し、又は遮断するように別の組のパラメータで刺激することができる。従って、様々な実施形態は、神経刺激パルスを送出して脊髄から分枝している交感神経の交感神経活動を低下させ、かつ神経刺激パルスを送出して脊髄から分枝している交感神経の交感神経活動を増大させるようにプログラムされたプログラマブル神経刺激器を提供し、様々な実施形態は、神経刺激パルスを送出して胸管に隣接する副交感神経の副交感神経活動を低下させ、かつ神経刺激パルスを送出して胸管に隣接する副交感神経の副交感神経活動を増大させるようにプログラムされたプログラマブル神経刺激器を提供する。
【0016】
実施形態では、プログラマブル神経刺激器は、長期的に神経刺激パルスを送出して長期的に脊髄から分枝している交感神経の交感神経活動を抑制し、かつ間欠的に神経刺激パルスを送出して間欠的に胸管に隣接する副交感神経(例えば、迷走神経)の副交感神経活動を増大させるようにプログラムされる。
【0017】
実施形態では、プログラマブル神経刺激器は、長期的に神経刺激パルスを送出して脊髄から分枝している交感神経の交感神経活動を増大させ、かつ間欠的に又は長期的に神経刺激パルスを送出して胸管に隣接する副交感神経(例えば、迷走神経)の副交感神経活動を増大させるようにプログラムされる。実施形態は、低レベル交感神経活性化を長期的に送出し、迷走神経−交感神経亢進拮抗効果による迷走神経刺激の影響を高める。
【0018】
実施形態では、システムは、呼吸センサを含み、プログラマブル神経刺激器は、神経刺激パルスの送出の時間を設定し、吸気相の間に交感神経活動を低下させ、かつ神経刺激パルスの送出の時間を設定し、呼気相の間に副交感神経活動を増大させるようにプログラムされる。呼吸センサを使用して、神経刺激を案内し、交感神経活動が本質的に高い時に吸気相の間に交感神経活動を遮断することができ、かつ呼気相の間に迷走神経を刺激し、副交感神経活動を高めることができる。
【0019】
実施形態では、システムは、心不整脈を検出するのに使用する不整脈検出器を含み、プログラマブル神経刺激器は、神経刺激パルスを送出することによって抗不整脈治療を実施し、不整脈検出器が心不整脈を検出する場合に脊髄から分枝している交感神経の交感神経活動を低下させ、かつ神経刺激パルスを送出することによって慢性心不全治療を実施し、長期的に胸管に隣接する副交感神経(例えば、迷走神経)の副交感神経活動を増大させるようにプログラムされる。この実施形態は、不整脈を検出して治療する様々な心臓律動管理装置(例えば、埋め込み可能電気的除細動器)と組み合わせることができる。
【0020】
実施形態では、プログラマブル神経刺激器は、神経刺激パルスを送出して脊髄から分枝している交感神経の交感神経活動を増大させ、神経刺激パルスを送出して胸管に隣接する副交感神経(例えば、迷走神経)の副交感神経活動を増大させ、かつ神経刺激パルスのタイミングを制御し、間欠的に交感神経及び副交感神経活動の両方を増大させて、副交感神経活動の増大と共に交感神経活動の増大を辿るようにプログラムされる。例えば、交感神経刺激は、ある期間にわたって送出される。交感神経刺激が終わった後に、内因性副交感神経反射反応があり、この反応は、迷走神経刺激を使用して増強される。
【0021】
様々な実施形態によると、経リンパ刺激は、単一リードを使用して又は複数のリードを使用して送出することができる。本発明の主題の一部の実施形態は、経リンパ刺激に対して2つの異なる神経ターゲットを目標にするように2つの電極セットをリードに提供する。一部の実施形態は、電極又は電極セット間の距離を埋め込み中に変更することができるように伸縮性機能をリードに設ける。適切な神経捕捉は、心拍数又は収縮性又は呼吸又は血圧をモニタすることによって埋め込み処理中に保証され、捕捉を保証する。複数の電極(例えば、3極又は4極設計)を使用して、個々に操向することができる。
【0022】
生理学
以下に提供するのは、本発明の主題を使用して治療することができる一部の病気について及び神経系に関する簡単な説明である。この説明は、開示された主題を理解するのに読者の役に立つと考えられる。
【0023】
疾患
本発明の主題を使用して、自律神経感受性の調整により様々な疾患を予防的に又は治療的に処置することができる。このような疾患又は病状の例は、高血圧症、心臓リモデリング、及び心不全を含む。
【0024】
高血圧症は、心疾患及び他の関連する心臓の合併症の原因である。高血圧症は、血管が収縮すると起こる。その結果、心疾患に寄与する可能性があるより高い血圧で血流を維持するように心臓により負担を掛ける。高血圧症は、一般的に、心血管損傷又は他の悪影響を誘導する可能性が高いレベルまで全身動脈血圧の一時的又は持続的上昇のような高血圧に関連している。高血圧症は、収縮期血圧が140mmHgよりも高く又は拡張期血圧が90mmHgよりも高いとして定められている。高血圧症のコントロール不良の原因は、以下に限定されるわけではないが、網膜血管疾患及び脳卒中、左心室肥大及び左心室不全、心筋梗塞、解離性動脈瘤、及び腎血管疾患を含む。一般母集団の大部分及びペースメーカー又は除細動器を埋め込まれた患者の大部分は、高血圧症を受ける。長期死亡率及び生活の質は、血圧及び高血圧症を低減することができる場合には、この母集団に対して改善することができる。高血圧症を受ける多くの患者は、生活様式の変化及び高血圧症の薬剤に関連する治療のような処置に反応しない。
【0025】
心筋梗塞(MI)又は心拍出量の減少の他の原因に続いて、構造的、生化学的、神経ホルモン的、及び電気生理学的なファクタを含む心室の複合リモデリング過程が起こる。心室リモデリングは、心室の拡張期充填圧を増加させ、結果的にいわゆる前負荷(すなわち、心室が拡張末期における心室の血液量によって延伸される程度)を増加させるいわゆる後方不全により心拍出量を増加させるように作用する生理学的代償機構によって始動される。前負荷の増加により、「フランク−スターリング」原理として公知の現象である拡張期中の1回拍出量の増加を引き起こす。しかし、心室がある期間にわたって前負荷の増加により延伸される時に心室は拡張する。心室容積の拡大は、所定の収縮期圧における心室壁ストレスの増加を引き起こす。心室によって行われる圧容積仕事の増加と共に、これは、心室心筋の肥大に対する刺激として作用する。拡張の欠点は、正常な残りの心筋に課せられる余分な仕事量及び肥大に対して刺激を表す壁の緊張の増加である(ラプラスの法則)。肥大が増加した緊張に適合するほど十分でない場合、更に別の及び進行性の拡張を引き起こす悪循環が結果として起こる。心臓が拡張し始めると、求心性圧力受容器及び心肺受容器信号は、血管移動中枢神経系の制御センターに送られ、制御センターは、ホルモン分泌及び交感神経放電に反応する。それは、最後に心室リモデリングに伴う細胞構造の有害な変化を説明する血行動態、交感神経系及びホルモンの変化(アンギオテンシン変換酵素(ACE)活性の有無のような)の組合せである。肥大を引き起こす持続的ストレスは、心筋細胞のアポトーシス(すなわち、プログラムされた細胞死)及び心機能の更に別の悪化を引き起こす最終的な壁の菲薄化を誘導する。すなわち、心室拡張及び肥大は、最初は補償的であり、心拍出量を増加させる場合があるが、この処理は、最後に収縮及び拡張機能不全(代償不全)の両方をもたらす。心室リモデリングの範囲は、MI後及び心不全患者の死亡率の増加の間に正の相関が認められるように示されている。
【0026】
心不全(HF)は、末梢組織の代謝需要を満たすのに十分なレベルよりも小さい可能性がある正常以下の心拍出量を心機能が引き起こす臨床的症候群を意味する。心不全は、随伴する静脈及び肺鬱血による鬱血性心不全(CHF)として現れる場合がある。心不全は、虚血性心疾患のような様々な病因による可能性がある。心不全患者は、自律神経平衡を低下させ、LV機能不全及び死亡率の増加に関連している。
【0027】
神経系
自律神経系(ANS)は、「不随意」器官を調整するが、随意(骨格)筋の収縮は、体性移動神経によって制御される。不随意器官の例は、呼吸及び消化器官を含み、かつ血管及び心臓を含む。多くの場合、ANSは、例えば、腺を調整し、皮膚、目、胃、腸及び膀胱の筋肉を調整し、心筋及び血管周囲の筋肉を調整するように不随意の反射方式で機能する。
【0028】
ANSは、交感神経系及び副交感神経系を含む。交感神経系は、非常時のストレス及び「闘争又は逃走反応」と密接な関係がある。他の効果としては、「闘争又は逃走反応」は、血圧及び心拍数を増加させ、骨格筋血流を増加させて、消化を低下させ、「闘争又は逃避」のためのエネルギを供給する。副交感神経系は、弛緩及び「休息及び消化反応」と密接な関係があり、他の効果として、血圧及び心拍数を低減し、エネルギを節約するために消化を高める。ANSは、正常な内部機能を維持し、体性神経系によって作用する。求心性神経は、刺激を神経中枢の方向にインパルスを伝えて、遠心性神経は、神経中心から離れてインパルスを伝える。
【0029】
心拍数及び収縮力は、交感神経系が刺激される時に増加し、交感神経系が抑制される時に減少する。心拍数及び力は、副交感神経系が刺激される時に減少し、副交感神経系が抑制される時に増加する。心拍数、収縮性、及び興奮性は、中枢を通じた反射経路によって調整することは公知である。心臓、大血管、及び肺における圧力受容器及び化学受容器は、迷走神経及び交感神経求心性繊維を通して心臓活動を中枢神経系に伝達する。交感神経求心性神経の活動は、反射性交感神経活動、副交感神経抑制、血管収縮、及び頻脈を始動する。反対に、副交感神経活動は、徐脈、血管拡張、及びバソプレシン遊離の抑制をもたらす。多くの他のファクタの中でも、副交感神経又は迷走神経感受性の低下又は交感神経感受性の増大は、心室性頻脈及び心房細動を含む様々な不整脈発生に関連付けられる。交感神経及び副交感神経系に関連付けられた機能は多数あり、複合的に互いに統合することができる。
【0030】
神経刺激を使用して、神経連絡を刺激/増加させるか、又は神経連絡を抑制/低減することができる。神経連絡を刺激する神経刺激の例は、低周波数信号(例えば、20Hzから50Hzの程度の範囲)である。神経連絡を抑制する神経刺激の例は、高周波数信号(例えば、120Hzから150Hzの程度の範囲)である。神経連絡を刺激するため及び抑制するための他の方法が提案されている。
【0031】
自律神経系の調整は、心不全及びMI後患者においてリモデリング及び死を防止するのに潜在的な臨床的利益を有する。電気刺激を使用して、交感神経活動を抑制し、血管抵抗を軽減することによって血圧を低下させることができる。副交感神経感受性を増大させる交感神経抑制は、恐らく、急性虚血性心筋の側副灌流を増加させて心筋損傷を低減することにより、心筋梗塞後の不整脈の脆弱性の低下に関連付けられる。
【0032】
システム
図1は、神経刺激システムの実施形態及びシステムを使用する環境の一部を示している。システムは、埋め込み可能医療装置100、リード101、外部システム102、及び埋め込み可能医療装置100と外部システム102との間で通信するのに使用する遠隔測定リンク103を含む。神経刺激パルスは、患者の体のリンパ系の一部である胸管104に設けられた少なくとも1つの電極を使用して送出される。リンパ系は、リンパ組織、結節、及び血管を含む。間質液は、組織から吸収され、リンパ節を通して濾過され、リンパ管に流れ込む。下半身及び体の左側からのこれらの血管の殆どは、それ自体典型的には、左鎖骨下静脈に流出する胸管に流出する。体の右上腹部は、典型的には、右鎖骨下静脈に流出する右リンパ管に流出する。図1は、胸管104、鎖骨下静脈105、左外頸静脈106、左内頸静脈107、及び上大静脈108の部分を示している。胸管104は、鎖骨下静脈105と左内頸静脈107との接合点にある静脈系に接続される。下半身からの流体(リンパ)は、胸管に逆流し、胸管から鎖骨下静脈に流れ込む。胸管は、心臓及び迷走神経、交感神経、並びに横隔神経の部分を含む神経系の様々な部分に隣接する体の後縦隔区域に位置する。このような神経の電気刺激は、胸管内に設けられた1つ又はそれよりも多くの刺激電極を使用することによって送出される。胸管は、電極刺激を神経系のターゲットまで送出することができる位置まで刺激電極を進めるための導管として使用される。神経刺激のための電極設置の処理に対するこの手法は、多くの状況下で埋め込み手順の侵襲性を低下させる可能性を有する。
【0033】
埋め込み可能医療装置100は、電気パルスである神経刺激パルスを発生させて、リード101を通して神経刺激パルスを送出する。様々な実施形態では、埋め込み可能医療装置はまた、神経活動又は他の生理学的信号を感知し、及び/又は神経刺激に加えて治療も行う。このような付加的な治療の例は、心臓ペーシング治療、電気的除細動/除細動治療、心臓再同期治療(CRT)、心臓リモデリング制御治療(RCT)、薬剤治療、細胞治療、及び遺伝子治療を含む。一部のシステム実施形態は、単一埋め込み可能医療装置においてこれらの機能を提供し、一部のシステム実施形態は、2つ又はそれよりも多くの埋め込み可能医療装置を使用してこれらの機能を提供する。一実施形態では、例えば、システムは、ペーシング及び/又は除細動パルスを心臓に送出するための1つ又はそれよりも多くの心内膜及び/又は心外膜リードを含む。
【0034】
リードの遠位部分は、鎖骨下静脈及び胸管に設置するように構成される。リードの埋め込み中に、遠位端は、切開により鎖骨下静脈に挿入され、胸管の方向に鎖骨下静脈に進められ、鎖骨下静脈から胸管に挿入され、胸管の所定の位置が到達するまで胸管に進められる。一実施形態では、刺激電極の位置は、神経刺激パルスを送出すること、及び誘発神経信号及び/又は他の生理学的反応を検出することによって埋め込み中に調節される。一実施形態では、リードは、胸管の定められた位置で遠位端を安定化するように構成された固定機構を含む。埋め込み可能医療装置は、近位端に接続され、皮下に埋め込まれる。
【0035】
外部システム102は、埋め込み可能医療装置100と通信し、かつ医師又は他の介護者が埋め込み可能医療装置にアクセスすることを可能にする。一実施形態では、外部システムは、プログラマーを含む。別の実施形態では、外部システムは、遠隔測定リンクを通じて埋め込み可能医療装置と通信する外部装置、比較的遠い位置の遠隔装置、及び外部装置及び遠隔装置に連結した遠距離通信網を含む患者管理システムである。患者管理システムは、患者の病状のモニタリング及び治療の調節のような目的のために遠隔位置から埋め込み可能医療装置へのアクセスを可能にする。一実施形態では、遠隔測定リンクは、誘導遠隔測定リンクである。別の実施形態では、遠隔測定リンクは、遠視野無線周波数(RF)遠隔測定リンクである。
【0036】
図2は、神経刺激システムの実施形態を示している。図示の実施形態は、埋め込み可能医療装置200と、鎖骨下静脈205を通じて胸管204内に埋め込まれたリード201とを含む。図示のリードは、第1の電極領域209及び第2の電極領域210を含む。電極領域は、神経ターゲットを刺激するのに使用する少なくとも1つの及び好ましくは複数の電極を含む。より具体的には、図示の実施形態では、第1の電極領域209は、経リンパ刺激で交感神経をターゲットにするのに使用するための複数の電極又は接点を含み、第2の電極領域210は、経リンパ刺激で副交感神経(例えば、迷走神経)をターゲットにするのに使用するための複数の電極又は接点を含む。交感神経は、望ましい効果に応じてC7/T1からT5の範囲においてターゲットにすることができる。副交感神経ターゲットは、胸管に隣接している迷走神経である。一部のリード実施形態は、第1及び第2の電極領域間に伸縮性の特徴を提供し、これらの領域間の距離が埋め込み手順中に変化することを可能にする。
【0037】
図3A−3Cは、胸管に近い生体構造を示している。図3A−3Bを参照すると、右迷走神経311及び左迷走神経312は、脊椎上のT4/T5の近くの胸管を接近して通り過ぎる。左迷走神経はまた、典型的には、頸部C5−C7範囲の胸管の近くにある。様々な実施形態は、リンパ本管内の電極を使用して経リンパ刺激で右迷走神経311及び/又は左迷走神経312をターゲットにする。図3Cは、中でも、人の胸管304及び迷走神経311/312、並びに脊椎313、心臓314及び肋骨の表現を含む断面図である。
【0038】
脊髄は、脳と体の一部との間で神経のメッセージを運ぶ神経組織である。神経根は、分枝して椎骨間の空間を通して両側から脊椎を出る。脊柱は、頸部、胸部及び腰部を含む。椎骨は、脊柱のビルディングブロックを形成して脊髄を保護する。T1−T5は、脊柱の胸部の最上(頭蓋)部分である。T1−T5からの突起部は、心臓を神経支配する。T1−T5からの脊椎突起部は、交感神経である。遠心性交感神経活動の増大により、心拍数及び収縮性を増加させる。心臓組織に対する求心性神経はまた、脊椎セグメントT1−T5全体に及んでいる。様々な実施形態は、心血管疾患の適用に対してT1−T5領域をターゲットにする。他の領域は、他の適用(例えば、高血圧症、糖尿病、肥満、他の治療)に対してターゲットにする場合がある。
【0039】
図4−7Bは、様々なリードの実施形態を示している。図4は、複数の接点を有するリードの実施形態を示している。様々なリードの実施形態によると、集中治療は、複数の接点及び各接点に対する独立電源を使用して行われ、正確に望ましい神経繊維に到達するように電流を調整する。各接点における独立電流制御は、プログラミング中にスイッチの電源を入れたり切ったりする必要性を排除し、滑らかで迅速な刺激プログラミングを行う。一部の実施形態は、緊密に離間した接点の2つの縦列を提供し、3次元で電流を調整する。一部のリードの実施形態は、個々に絶縁された多繊維ケーブルを使用し、ここで各接点は、多重導体を使用してパルス発生器に電気的に接続される。緊密に離間した接点及び独立電流制御を使用して、独特の患者の生体構造及び瘢痕化によって生じたインピーダンスの変化を克服し、時間と共に有効治療を維持することができる。
【0040】
神経刺激試験ルーチンは、埋め込み手順中に実施することができ、又は複数の電極の電極部分集合に対して神経刺激の有効性を評価するために使用中に間欠的に埋め込み、望ましい反応を引き出すために神経刺激治療を行うのに使用するための望ましい電極部分集合を識別することができる。複数の電極の各電極部分集合は、少なくとも1つの電極を含む。電極部分集合は、複数の電極から選択された電極の様々な組合せを含み、複数の電極において電極の全てを含むことができる。
【0041】
いくつかの電極構成を使用することができる。本明細書に含まれる図は、一例として提供され、可能な構成を総記するように考えられているものではない。
【0042】
図5は、様々な実施形態による環状刺激電極520を含む電極領域519を有するテザー又はリード518の実施形態を示している。環状刺激電極のいずれか1つ又はこれらの組合せを使用して、神経刺激を送出することができる。
【0043】
図6は、様々な実施形態による胸管内の電極を使用する経管神経刺激を示している。図は、内腔1138(例えば、胸管604)、内腔の外部の神経621、及び内腔内の可撓性リード618を示している。神経刺激は、内腔壁を過ぎて神経まで延びる電極間に電界622を発生させる。
【0044】
図7A及び図7Bは、刺激電極720を有するリード718の実施形態を示し、ここで示す電極は、リードの周囲を囲まない。従って、図示の電極の部分集合は、方向性刺激を提供するように選択することができる。神経刺激試験ルーチンは、神経刺激を送出するのに使用するために利用することができる電極を循環させ、電極のどの部分集合が神経ターゲットに面しているかを判断することができる。
【0045】
様々な実施形態によると、第1の電極構成の効率が閾値よりも低い場合、システムは、第2の電極構成に切り換えて神経刺激を送出する。一部の実施形態では、第1の電極構成の効率が閾値よりも低い場合、システムは、電極を取り外すことによって第2の電極構成に切り換えて神経刺激を送出する。一部の実施形態では、第1の電極構成の効率が閾値よりも低い場合、システムは、電極を加えることによって第2の電極構成に切り換えて神経刺激を送出する。神経ターゲットを刺激するようになった電極構成の他の実施形態は、本発明の開示の範囲にある。様々な実施形態では、電極構成を切り換えることで、双極から単極に刺激を変える。様々な実施形態では、電極構成を切り換えることで、単極刺激、双極刺激、又は多極刺激間で刺激を変える。様々な実施形態は、電流操向を使用して電流の流れの方向を変える。例えば、電流が第1及び第2の電極の両方から第3の電極に流れる状況において、刺激パラメータは、第1及び第3の電極間、並びに第2及び第3の電極間で刺激強度及び位置を変えるように、電極間で印加した電位を変えることなどによって調節することができる。
【0046】
これらの構造による高度の個々の生体構造の変動が存在する。すなわち、様々な実施形態は、埋め込み技術に最適化手順を与える。最適化手順は、望ましい効果が観察されるまで全体の領域において物理的に電極を移動させる段階又は刺激ベクトルを電子的再位置決めする段階を伴う場合がある。胸管は、電極を鎖骨下静脈に導入して胸管口まで進めることによって測定することができる。リードは、胸管へ逆に進んで典型的にはアーチ部分又は上行胸管に位置決めされる。交感神経刺激電極は、C1−C8及びT1−T6領域の胸管内により深く位置決めすることができる。
【0047】
図8は、脊髄刺激リードを埋め込み、有効な刺激治療を確立して維持する方法の実施形態を示している。821において、リードは胸管に挿入される。822において、電極位置が試験され、電極位置が有効刺激を提供するか否かを判断する。例えば、一部の実施形態は、1つ又はそれよりも多くの生理学的パラメータをモニタし、神経ターゲット(例えば、副交感神経及び交感神経)の捕捉を検証する。本発明の主題は、副交感神経のみを選択的に刺激するか又はターゲットにすることができ、及び/又は交感神経を選択的に刺激することができる。一部の実施形態は、1つ又はそれよりも多くの生理学的パラメータをモニタし、神経刺激に対する潜在的な意図しない反応を低減する。埋め込み処理中に捕捉を検証することができない場合、又は望ましくない副作用が存在する場合、処理は、823において表されるように有効刺激を達成することに対して物理的位置決め及び/又は電子的位置決めを調節する。物理的再位置決めは、リードを物理的に移動させる段階(例えば、押す、引く、回転する段階)を含む。電子的再位置決めは、電気刺激野の方向及び位置を調節するように電極の様々な組合せを選択する段階を含む。電子的再位置決めは、自動処理の一部として実施することができ、ここで装置は、望ましい効率が達成されるまで利用することができる電極組合せ(及び刺激強度)を循環させる。電子的再位置決めは、埋め込み手順中に技術者によって制御することができる。一部の実施形態は、可能な構成及び自動試験ルーチンの技術者制御の組合せを使用する。
【0048】
有効な刺激が検出される時に、物理的リードの設置は、824において設定される。リードの近位端は、埋め込み可能パルス発生器に接続される。825において、治療は、埋め込まれたリード及び埋め込まれたパルス発生器を使用して行われる。826において、埋め込まれたパルス発生器は、有効な刺激に対して間欠的に試験し、捕捉を検証し及び/又は刺激の副作用を軽減する。適切な場合、電子的位置決めは、827において示すように有効な刺激を送出するように調節される。この電子的位置決めは、自動的に実施することができ、プログラマーを使用して技術者によって制御することができ、又はこれらの組合せとすることができる。
【0049】
図9−18は、埋め込み可能装置内にプログラムされ、交感神経及び副交感神経の経リンパ刺激を制御することができる様々なアルゴリズムを示している。
【0050】
図9は、長期的に神経刺激パルスを送出して脊髄から分枝している交感神経の交感神経活動を長期的に抑制し、かつ間欠的に神経刺激パルスを送出して脊髄から分枝している副交感神経の副交感神経活動を間欠的に増大させるようにプログラマブル神経刺激器がプログラムされる実施形態を示している。間欠的迷走神経刺激は、交感神経抑制の効果を高める。
【0051】
図10は、長期的に神経刺激パルスを送出して脊髄から分枝している交感神経の交感神経活動を増大させ、かつ間欠的に又は長期的に神経刺激パルスを送出して脊髄から分枝している副交感神経の副交感神経活動を増大させるようにプログラマブル神経刺激器がプログラムされる実施形態を示している。実施形態は、低レベル交感神経活性化を長期的に送出し、迷走神経−交感神経亢進拮抗効果による迷走神経刺激の影響を高める。
【0052】
実施形態では、システムは、呼吸センサを含み、プログラマブル神経刺激器は、神経刺激パルスの送出の時間を設定し、吸気相の間に交感神経活動を低下させ、かつ神経刺激パルスの送出の時間を設定し、呼気相の間に副交感神経活動を増大させるようにプログラムされる。呼吸センサを使用して、神経刺激を案内し、交感神経活動が本質的に高い時に吸気相の間に交感神経活動を遮断することができ、かつ呼気相の間に迷走神経を刺激し、副交感神経活動を高めることができる。
【0053】
図11は、呼吸サイクル、並びに呼吸サイクル長、吸気期間、呼気期間、非呼吸期間、及び1回換気量を含む呼吸パラメータを示す呼吸信号の図である。吸気期間は、呼吸信号の振幅が吸気閾値を超えると呼吸サイクルの吸気相の発現で始まり、呼吸サイクルの振幅がピークに達すると呼吸サイクルの呼気相の発現で終わる。呼吸期間は、呼気相の発現で始まって、呼吸信号の振幅が呼気閾値よりも小さいと終わる。非呼吸期間は、呼気相の終わりと次の吸気相の始まりの間の時間間隔である。1回換気量は、呼吸信号のピーク・トゥ・ピーク振幅である。
【0054】
図12は、横隔神経活動によって示すような呼吸と交感神経活動及び迷走神経活動の両方との間の関係を示している。図示のように、交感神経活動は、横隔神経活動が活動的である期間中に最も活動的であり、副交感神経活動は、横隔神経活動が非活動的である時の期間中に最も活動的である。
【0055】
一部の実施形態によると、神経刺激パルスを第1の電極領域に送出し、吸気相の間に交感神経活動を低下させ、かつ神経刺激パルスを第2の電極領域に送出し、呼気相の間に副交感神経活動を増大させるようにタイミングを提供する。一部の実施形態に対しては、神経刺激パルスを第1の電極領域に送出し、吸気相の間に交感神経活動を低下させ、かつ神経刺激パルスを第2の電極領域に送出し、吸気相の間に副交感神経活動を増大させるようにタイミングを提供する。一部の実施形態に対しては、神経刺激パルスを第1の電極領域に送出し、長期的に交感神経活動を低下させ、かつ神経刺激パルスを呼気サイクルに対して第2の電極領域に送出し、間欠的に副交感神経活動を増大させるようにタイミングを提供する。様々な実施形態によると、神経刺激パルスは、第2の電極領域に提供され、長期的に副交感神経活動を増大させ、かつ神経刺激パルスを呼吸サイクルに対して第1の電極領域に送出し、間欠的に交感神経活動を低下させるようにタイミングを提供する。
【0056】
呼吸信号は、呼吸活動を示す生理学的信号である。様々な実施形態では、呼吸信号は、呼吸によって調整されるあらゆる生理学的信号を含む。一実施形態では、呼吸信号は、埋め込み可能インピーダンスセンサによって感知された経胸郭インピーダンス信号である。別の実施形態では、呼吸信号は、インピーダンス圧力センサによって感知されて呼吸成分を含む血圧信号から取り出される。別の実施形態では、呼吸信号は、胸部の動き又は肺容量を示す信号を感知する外部センサによって感知される。様々な実施形態によると、呼吸信号のピークは、呼吸基準点として検出される。遅延間隔は、ピークの各々の検出時に始まる。神経刺激パルスのバーストは、遅延間隔が満了すると迷走神経のような神経に送出される。様々な他の実施形態では、吸気相の発現点、呼気相の終点、又は他の閾値交差点は、呼吸基準点として検出される。呼吸制御神経刺激回路は、刺激出力回路と、呼吸信号入力、同期モジュール、及び刺激送出コントローラを含むコントローラとを含む。呼吸信号入力は、呼吸サイクル及び呼吸パラメータを示す呼吸信号を受け取り、同期モジュールは、神経刺激パルスの送出を呼吸サイクルに対して同期させる。呼吸基準点検出器は、呼吸信号において所定のタイプの呼吸基準点を検出し、遅延タイマは、検出された呼吸基準点の各々を開始点として遅延間隔の時間を設定する。刺激送出コントローラは、遅延間隔が満了すると、刺激出力回路が神経刺激パルスのバーストを送出することを可能にする。
【0057】
図13は、不整脈検出器が心不整脈を検出する場合に神経刺激パルスを送出することによって抗不整脈治療を実施し、脊髄から分枝している交感神経の交感神経活動を低下させ、かつ神経刺激パルスを送出することによって慢性心不全治療を実施し、長期的に脊髄から分枝している副交感神経の副交感神経活動を増大させるようにプログラマブル神経刺激器がプログラムされる実施形態を示している。この実施形態は、不整脈を検出して治療する様々な心臓律動管理装置(例えば、埋め込み可能電気的除細動器/除細動器)と組み合わせることができる。
【0058】
実施形態では、プログラマブル神経刺激器は、神経刺激パルスを送出して脊髄から分枝している交感神経の交感神経活動を増大させ、神経刺激パルスを送出して脊髄から分枝している副交感神経の副交感神経活動を増大させ、かつ神経刺激パルスのタイミングを制御し、間欠的に交感神経及び副交感神経活動の両方を増大させて、交感神経活動の増大に副交感神経活動の増大が続くようにプログラムされる。例えば、交感神経刺激は、ある期間にわたって送出される。交感神経刺激が終わった後に、内因性副交感神経反射反応があり、この反応は、迷走神経刺激を使用して増強する。これは、間欠的ストレス治療とも呼ばれるあるタイプのコンディショニング療法と考えることができる。
【0059】
一部の医療装置実施形態は、身体的コンディショニング療法を提供するように交感神経ターゲットを刺激し、一部の医療装置実施形態は、身体的コンディショニング療法を提供するように副交感神経ターゲットを抑制し、かつ一部の医療装置実施形態は、身体的コンディショニング療法のために交感神経刺激及び副交感神経抑制の両方を提供する。様々な実施形態は、間欠的短期間の交感神経刺激及び/又は副交感神経抑制を送出して身体トレーニングの効果を近似するプログラマブルパルス発生器を提供する。例えば、交感神経刺激及び/又は副交感神経抑制によって提供された身体的コンディショニングは、約30分/日にわたって毎日起こすことができる。治療は、比較的短期間のものである。実施形態は、2時間未満の程度で治療を提供する。神経刺激器によって提供された身体的コンディショニング療法は、患者のための適切なエクササイズレジメンと相関するようにプログラムすることができる。例えば、神経刺激の上記識別された30分/日は、30分/日の歩行に対応することができる。別の実施形態では、例示的に、本発明の主題は、1日おきのエクササイズレジメンに対応する身体的コンディショニング療法を提供することができる。一部の実施形態では、患者又はヘルスケア提供者は、治療を開始する時及び終了する時の時間を制御する。安全手段は、過度の持続期間の治療を予防するために提供することができる。生理学的変数の閉ループフィードバックを使用して急性的に治療を調節し、望ましい反応を達成するか(例えば、エクササイズ中にターゲット心拍数ゾーンを達成して維持し、又は心拍数が増減する望ましい心拍数プロフィールを達成するように)、又は生理学的反応が有害であり又はそうでなければ患者が治療に耐えられないことを示す時に急に治療を終了することができる。フィードバックを使用して、交感神経刺激の期間の周波数及び持続時間を適切に調節し、及び/又は刺激パラメータを調節することにより、交感神経刺激及び/又は副交感神経抑制の強度を調節することができる。
【0060】
本発明の主題の実施形態は、身体的コンディショニングを使用して心不全治療を提供する。しかし、交感神経刺激/副交感神経抑制による身体的コンディショニングは、身体的コンディショニングから利益を得ることができるが身体エクササイズに耐えることはできないあらゆる患者に適用される。本発明の主題は、例えば、独立型神経刺激器として埋め込まれ、又は網羅的心不全治療のために既存のCRM装置に統合することができる。
【0061】
身体活動及びフィットネスが健康を改善して死亡率を低下させることは、一般的に認められている。有酸素性トレーニングが心臓自律神経調整を改善し、心拍数を低減して心臓迷走神経流出の増加に関連付けられることを研究は示している。より高い副交感神経活動のベースライン測定は、エアロビックフィットネスの改善に関連付けられる。エクササイズトレーニングは、間欠的にシステムにストレスを加え、ストレスを加えている間に交感神経活動を増大させる。しかし、エクササイズセッションが終了してストレスが取り除かれると、ベースライン副交感神経活動を増大させてベースライン交感神経活動を低下させる方式で、体は回復する。
【0062】
身体トレーニングは、交感神経刺激の結果である心筋細胞のβ1受容体を刺激する。短期間のエクササイズ(例えば、1−2時間未満)は、β1受容体活動の増大をもたらす。他方、2時間よりも長いエクササイズ期間は、β1受容体活動の低下を引き起こす可能性がある。身体的コンディショニングは、長期間にわたって間欠的に起こる継続的な高いレベルのエクササイズであると考えることができる。本発明の主題は、交感神経刺激及び/又は副交感神経抑制による身体的コンディショニングの効果と類似する。
【0063】
図14は、本発明の主題の様々な実施形態による身体的コンディショニングを提供する方法を示している。神経刺激器(神経連絡を刺激し及び/又は神経連絡を抑制する電気刺激を加える装置を含むと理解される)は、1428においてオンにされ又はそうでなければ有効にされる。1429において、装置は、交感神経ターゲットを刺激し、副交感神経ターゲットを抑制し、又は両方であり、交感神経ターゲットを刺激して副交感神経ターゲットを抑制する。1430において、装置は、オフにされ又はそうでなければ神経刺激器が無効にされる。様々な外部装置の実施形態では、例えば、装置は、患者又は他の人(例えば、医師)によって作動させることができるスイッチを含み、外部装置のスイッチを入れたり切ったりする。様々な内部装置の実施形態では、例えば、装置は、無線リンクを通してスイッチを入れたり切ったりする。このような無線リンクの例は、磁場及び誘導、RF又は超音波による通信を含む。様々な実施形態は、ユーザ開始式の身体的コンディショニング療法を提供し、ここでユーザは、プログラムされた時間にわたって続く治療の「スイッチを入れる」。様々な実施形態は、ユーザ終了式の身体的コンディショニング療法を提供し、ここでプログラムされた治療は、ユーザが身体的コンディショニング療法を開始したか否かに関係なくユーザによって早期に終了する。様々な実施形態は、ユーザ調節式の身体的コンディショニング療法を提供し、ここで身体的コンディショニング療法の強度及び/又は持続期間は、ユーザによって増大又は低下させることができる。ユーザは、患者、医師、又は他の人とすることができる。これらのユーザ開始、ユーザ終了、及びユーザ調節式の実施形態は、内部又は外部装置とすることができる。様々な実施形態は、ユーザに対して3つの機能(開始する、終了する、及び調節する)、又はこれらの機能の2つ又はそれよりも多くのあらゆる組合せを実施する機能を提供する。内部装置の実施形態は、内部タイマを使用し、装置のスイッチを入れたり切ったりする。予めプログラムされたスケジュールは、治療のオンタイム及びオフタイムを制御することができる。他のイベントは、プログラムされたオンタイム及びオフタイムを有効にするか又は無効にするかのいずれかに使用することができる。例えば、プログラムされた治療は、心拍数が所定のゾーン内にある場合、収縮期血圧が所定のゾーン内にあり、及び/又は呼吸数が所定のゾーン内にある場合に有効にすることができる。プログラムされた治療は、心拍数が所定の閾値を超え、収縮期血圧が所定の閾値を超え、及び/又は呼吸数が所定の閾値を超える場合に無効にすることができ又は終了することができる。
【0064】
図15は、本発明の主題の様々な実施形態により身体的コンディショニングを提供する方法を示している。1531において、トリガが身体的コンディショニングを始めるために受け取られているか否かを判断する。トリガが検出された時に、1532において、交感神経ターゲットは、刺激され、及び/又は副交感神経ターゲットは、抑制される。1533において、身体的コンディショニングを終了させるトリガが受け取られているか否かを判断する。様々な埋め込み可能装置実施形態は、医師又は患者によって制御された外部信号によって誘発される。装置の実施形態は、タイマを使用し、装置のスイッチを入れたり切ったりする。予めプログラムされたスケジュールは、治療のオンタイム及びオフタイムを制御することができる。他のイベントは、プログラムされたオンタイム及びオフタイムを有効にするか又は無効にするかのいずれかに使用することができる。様々なフィードバックを使用して、治療を有効にすることができ、及び/又は無効にすることができる。例えば、プログラムされた治療は、心拍数が所定のゾーン内にある場合、収縮期血圧が所定のゾーン内にあり、及び/又は呼吸数が所定のゾーン内にある場合に有効にすることができる。プログラムされた治療は、心拍数が所定の閾値を超え、収縮期血圧が所定の閾値を超え、及び/又は呼吸数が所定の閾値を超えている場合に無効にすることができ、又は終了することができる。治療を終了するトリガが受け取られていない場合、1534において、コンディショニング療法に対してターゲット反応を達成するように神経刺激パラメータを調節するか否かを判断する。調節可能な神経刺激パラメータは、以下に限定されるわけではないが、神経刺激信号の刺激持続期間、並びに振幅、周波数、パルス幅、形態、及びバースト周波数を含む。これらのパラメータは、適切に増加又は減少させ、神経刺激/抑制の強度の望ましい変化を得ることができる。ターゲット反応の例は、ある期間にわたるターゲット心拍数範囲又はターゲット血圧範囲又は呼吸数を含む。1534において、パラメータを調節すると判断される場合、処理は、パラメータを調節する1535に進んで1532に戻り、パラメータを調節しないと判断される場合、処理は、1534から1532に戻る。様々な実施形態は、プログラマブルパラメータとしてターゲット範囲を提供し、様々な実施形態は、神経刺激/抑制の強度を自動的に調節し、感知した生理学的パラメータ(例えば、心拍数)をターゲット範囲に維持する。様々な実施形態は、感知された生理学的パラメータに基づいて強度を手動で調節するための手段を提供する。
【0065】
身体的コンディショニング療法は、心不全に対する治療として適用することができる。他の身体的コンディショニング療法の例は、エクササイズすることができない患者に対する治療を含む。例えば、病院において寝たきりの術後患者に対して交感神経刺激/副交感神経抑制を使用する身体的コンディショニングは、患者が再びエクササイズすることができるこのような時まで患者が強さ及び持久力を維持することを可能にすることができる。別の例により、病的肥満患者は、エクササイズすることができない場合があるが、それでも身体的コンディショニング療法から利益を得ることができる。更に、患者がこれらの正常な身体活動をすることを阻止する関節損傷のような損傷を有する患者も、身体的コンディショニング療法から利益を得ることができる。
【0066】
図16は、本発明の主題の様々な実施形態による交感神経刺激及び/又は副交感神経抑制を使用する身体的コンディショニング療法を示し、かつ図17−18は、本発明の主題の様々な実施形態による交感神経刺激及び/又は副交感神経抑制を使用する治療に身体的コンディショニングに関連付けられた交感神経刺激及び/又は副交感神経抑制を組合せた又は統合した治療プロトコルの例を示している。時間線は、1日の時間を示すように使用することができるような24間隔に分けられる。時間線上に示す治療は、例示的として意図されている。他の治療レジメンを実施することができる。図16では、身体的コンディショニング療法が短期間適用されるように示されている。この治療は、間欠的に一部の実施形態において適用される。一部の実施形態は、定期的方式で(例えば、毎日又は1日おきに)身体的コンディショニングを適用する。例えば、一部の実施形態は、エクササイズレジメンと類似するように刺激を加える(例えば、30分間1週間当たり5回歩いて、心拍数をターゲット範囲に維持する)。様々な実施形態は、徐々にその日の総治療(例えば、1日当たり30分)を提供する(例えば、1日当たり6回提供される5分の治療)。身体的コンディショニングは、交感神経刺激、副交感神経抑制、又は副交感神経刺激及び副交感神経抑制の両方を含み、間欠的に患者にストレスを加える。反対に、抗高血圧治療は、例えば、副交感神経刺激、交感神経抑制、又は副交感神経刺激及び交感神経抑制の両方を適用する。抗高血圧治療は、間欠的に又は定期的に適用することができる(例えば、毎時間5分又は毎分5秒)。全体的に図17に示すように、身体的コンディショニングの適用は、抗高血圧治療中に行うように時間を設定する。抗リモデリング治療も、副交感神経刺激、交感神経抑制、又は副交感神経刺激及び交感神経抑制の両方を適用する。抗リモデリング治療は、より継続して提供することができる。全体的に図18に示すように、抗リモデリング治療を中断し、身体的コンディショニング療法を提供する時間の窓を設けることができる。一部の実施形態は、例えば、刺激の周波数又は刺激の極性を変更することによって同じ部位において副交感神経刺激及び抑制をもたらすことができる。一部の実施形態は、例えば、刺激の周波数又は刺激の極性を変更することによって同じ部位において交感神経刺激及び抑制をもたらすことができる。一部の実施形態は、第1の位置において局所副交感神経反応及び別の位置において局所交感神経反応を同時に提供することができる。
【0067】
本発明の主題の様々な実施形態を使用して、心不全治療を行うことができる。心不全のステータスは、いくつかの方法で判断することができる。心不全ステータスは、心不全ステータス及び治療の効果を評価するために臨床医によって使用することができ(長期的に埋め込まれた装置が、心不全ステータスを評価するのに使用するパラメータを測定して保存する)、又は閉ループ治療システムのためのフィードバックとして埋め込まれた装置によって使用することができる。HFステータスを判断するのに使用することができるパラメータの例は、心拍変動(HRV)、心拍擾乱(HRT)、心音、電位図特徴、活動、呼吸、及び肺動脈圧を含む。これらのパラメータを以下に簡単に説明する。
【0068】
呼吸パラメータは、例えば、分時換気信号から導出することができ、流体指数は、経胸郭インピーダンスから導出することができる。例えば、胸郭インピーダンスの減少は、肺内の流体蓄積の増加を反映し、心不全の進行を示している。呼吸は、分時換気を有意に変化させる可能性がある。経胸郭インピーダンスを合計するか又は平均し、流体蓄積を示すことができる。
【0069】
「心拍変動(HRV)」は、自律神経平衡を評価するために提案されている1つの技術である。HRVは、洞房結節、自律神経系の交感神経、及び副交感神経枝による心臓の生来のペースメーカーの調整に関する。HRVの評価は、交感神経及び迷走神経活動の平衡の程度によって定められるように心臓の律動の心拍間隔変動が心臓の健康の間接測定を提供するという仮定に基づいている。内因性の心室性心収縮間の時間間隔は、心拍数及び循環系を通してポンピングされた血液の量の変化に対する体の代謝要求に応答して変化する。例えば、エクササイズ又は他の活動の期間中に、人の内因性心拍数は、一般的に、いくつかの又は多くの心拍動の期間にわたって増加することになる。しかし、心拍間隔ベースで、すなわち、1つの心拍動から次の心拍動まで、及びエクササイズなしでも、内因性心臓収縮間の時間間隔は、正常人においては異なる。内因性心拍数のこれらの心拍間隔変動は、血圧及び心拍出量の自律神経系による適切な調整の結果であり、このような変動がないことで、自律神経系によってもたらされる調整における潜在的な欠陥を示している。HRVを解析するための1つの方法は、あらゆる異所性収縮(正常な洞律動の結果ではない心室収縮)を取り除いた後に、内因性心室収縮を検出する段階、及びR−R間隔と呼ばれるこれらの収縮間の時間間隔を記録する段階を含む。R−R間隔のこの信号は、典型的には、周波数領域に変換され、その結果、そのスペクトル周波数成分は、解析されて低及び高周波波帯に分けることができる。R−R間隔信号のHF帯は、自律神経系の副交感神経/迷走神経成分によってのみ影響を受け取る。R−R間隔信号のLF帯は、自律神経系の交感神経及び副交感神経成分の両方によって影響を受け取る。その結果、LF/HF比は、自律神経系の交感神経及び副交感神経/迷走神経成分間の自律神経平衡の良好な指標と見なされる。LF/HF比の増加は、交感神経成分の優位性の増大を示し、かつLF/HF比の減少は、副交感神経成分の優位性の増大を示している。特定の心拍数に対して、LF/HF比は、患者の健康状態の指標と見なされ、より低いLF/HF比は、より良好な心臓血管健康の状態を示している。R−R間隔信号の周波数成分のスペクトル解析は、時間領域から周波数領域へFFT(又は自己回帰のような他のパラメトリック変換)技術を使用して実施することができる。このような計算は、かなりの量のデータ記憶及び処理機能を必要とする。更に、このような変換計算は、電力消費を増加させ、装置交換を必要とする前の埋め込まれたバッテリ式装置を使用することができる時間を短縮する。
【0070】
心拍数擾乱(HRT)は、短い初期心拍数加速の後の心拍数減速から構成される心室性期外収縮(PVC)に対する洞結節の生理学的反応である。HRTは、HRVと密接に相関する自律神経系機能の指数であることが示されている。HRTは、自律神経圧反射であると考えられる。PVCは、動脈圧の簡単な障害(期外収縮の低振幅、その後の正常収縮の高振幅)を引き起こす。一過性の変化は、自律神経系が健全である場合にHRTの形態の瞬間的反応によって直ちに表れるが、自律神経系が損なわれている場合には、減退するか又は存在しないかのいずれかである。
【0071】
一例として及び以下に限定されるものではないが、「擾乱発現」(TO)及び「擾乱勾配」(TS)を使用してHRTを定量化することが提案されている。TOは、PVC直前と直後の間の心拍数の差を意味し、パーセントで表すことができる。例えば、拍動がPVCの前及び後に評価される場合、TOは、以下のように表される。
【0072】
【数1】

【0073】
RR-2及びRR-1は、PVC前の最初の2つの正常な間隔であり、RR+1及びRR+2は、PVC後の最初の2つの正常な間隔である。様々な実施形態では、TOは、各個々のPVCに対して測定され、次に、全ての個々の測定値の平均値が判断される。しかし、TOは、多くの測定値にわたって平均する必要はなく、1つのPVCのイベントに基づくことができる。正のTO値は、洞律動の減速を示し、負の値は、洞律動の加速を示している。PVCの前後に解析されたR−R間隔の数は、望ましい適用により調節することができる。例えば、TSは、5つのR−R間隔の各シーケンスに対して線形回帰の最急勾配として計算することができる。様々な実施形態では、TS計算は、平均速度曲線に基づいており、RR間隔当たりミリ秒で表される。しかし、TSは、平均することなく判断することができる。TS計算において線形回帰を判断するのに使用するシーケンスのR−R間隔の数も、望ましい用途により調節することができる。
【0074】
自律神経平衡をモニタするのにHRTを使用する恩典は、時間における一瞬間に自律神経平衡を測定する機能を含む。更に、HRVの測定とは異なり、HRT評価は、頻度が高い心房ペーシングの患者で実施することができる。更に、HRT解析は、自律神経平衡の簡単な非プロセッサ集中型測定を提供する。従って、データ処理、データ記憶、及びデータフローは比較的小さく、費用が少なくて電力消費が少ない装置をもたらす。同様に、HRT評価は、HRVよりも速く、遥かに小さなR−Rデータのみを必要とする。HRTは、例えば、数十秒の程度のような典型的な神経刺激のバースト持続期間に対して持続期間が類似の短い記録期間にわたる評価を可能にする。
【0075】
識別可能な心音は、以下の4つの心音を含む。第1の心音(S1)は、心室収縮の発現で開始され、混合し、関係のない、低周波数の一連の振動から構成される。第1の心音(S1)は、心音のうちでも最も音が高くて最も長く、漸減性を有して心臓の心房領域にわたって最も良く聞こえる。三尖弁の音は、胸骨のすぐ左の第5の肋間腔において最も良く聞こえ、僧帽弁の音は、心尖部にある第5の肋間腔において最も良く聞こえる。S1は、心室腔中の血液の発振及び房室壁の振動によって主に引き起こされる。振動は、心房に戻る方向に血液が加速して心室内圧の急上昇、並びに閉鎖A−V弁によって血液が減速してA−V弁及び隣接する構造体の突然の感受性及び跳ね返りによって生じる。心室及び含まれる血液の振動は、周囲の組織を通して伝送されて胸壁に到達し、ここで、振動を聞き又は記録することができる。S1の強度は、主として心室収縮力の関数であるが、心房と心室収縮の間の間隔の関数でもある。A−V弁尖が心室収縮の前に閉鎖しない場合、より速い速度は、A−V弁が上昇する心室内圧によって迅速に閉じられる時間までに心房の方向に移動する血液に与えられ、かつより強い振動は、閉鎖A−V弁によって血液のこの突然の減速から生じる。半月弁の閉鎖で起こる第2の心音(S2)は、より高周波振動で構成され、より短い持続期間及びより低強度のものであり、かつ第1の心音よりも更に「スナップ」性を有する。第2の音は、半月弁の突然の閉鎖によって引き起こされ、この弁は、閉鎖弁の延伸及び跳ね返りによって血液柱及び感受性した血管壁の発振を開始する。肺動脈又は大動脈圧の増加(例えば、肺又は全身性高血圧症)のような半月弁のより迅速な閉鎖をもたらす条件は、第2の心音の強度を増大させることになる。成人において、大動脈弁音は、通常肺動脈弁音よりも音が高いが、肺高血圧症に対しては、多くの場合にその逆も当て嵌まる。薄い胸壁の子供において又は左心室不全により急速充填波の患者において聞かれることが更に多い第3の心音(S3)は、僅かに低強度、低周波の振動から構成される。第3の心音(S3)は、早期拡張で起こり、房室弁の開放で心室に入る血液の突然の加速及び減速によって引き起こされた心室壁の振動によると考えられる。僅かに低周波数の発振から構成される第4の又は心房音(S4)は、時々正常な個体において聞かれる。第4の又は心房音(S4)は、心房収縮によって作り出される血液及び心腔の発振によって引き起こされる。亢進したS3及びS4音は、ある一定の異常な条件を示す場合があり、かつ診断的意義を有する。
【0076】
すなわち、心音は、心不全ステータスを判断するのに使用することができる。例えば、より重症のHFステータスは、より大きなS3振幅を反映する傾向がある。
【0077】
HFステータスのインジケータを提供するように取り出すことができるECGの特徴の例は、左脚ブロックによるQRSコンプレックス持続時間、STセグメント偏差、及び心筋梗塞によるQ波を含む。これらの特徴のいずれか1つ又は組合せを使用して、HFステータスのインジケータを提供することができる。他の特徴は、ECGから取り出すことができる。
【0078】
活動センサを使用して、患者の活動を評価することができる。交感神経活動は、当然活動的な患者で増大して活動性の低い患者で低下する。従って、活動センサは、患者の自律神経平衡及び従って患者のHFステータスを判断するのに使用するために状況的測定を提供することができる。様々な実施形態は、例えば、心拍数及び/又は呼吸数を示し、活動のインジケータを提供するようにセンサの組合せを提供する。
【0079】
呼吸を検出するための2つの方法は、経胸郭インピーダンス及び分時換気を測定する段階を含む。呼吸は、活動のインジケータとすることができ、かつ直接HFステータスに関連していない交感神経感受性の増大の説明を提供することができる。例えば、エクササイズに起因する交感神経活動の増大の検出によりHF治療を変更することが適切ではない場合がある。
【0080】
呼吸測定結果(例えば、経胸郭インピーダンス)はまた、「呼吸性洞性不整脈」(RSA)を測定するのに使用することができる。RSAは、洞房結節への交感神経及び迷走神経刺激の流れに対する呼吸の影響により起こる不整脈の自然のサイクルである。心臓の律動は、主に迷走神経の制御下にあり、迷走神経は、心拍数及び収縮力を抑制する。迷走神経活動が妨げられ、心拍数は、息を吸い込むと増加し始める。息を吐き出すと、迷走神経活動が増加し、心拍数が減少し始める。心拍数の変動の程度はまた、大動脈及び頸動脈の圧力受容器(圧力センサ)から規則正しいインパルスによってかなり制御される。従って、自律神経平衡の測定は、呼吸サイクルに対して心拍数を相関させることによって行うことができる。
【0081】
上記で識別されたように、高い血圧は、心拍数に寄与する可能性がある。慢性高血圧又はより高い傾向がある慢性血圧は、心不全の可能性の増大の指標になる。様々な実施形態は、肺動脈圧を使用し、充填圧に近づける。充填圧は、前負荷のマーカであり、前負荷は、心不全ステータスの指標である。
【0082】
様々な神経刺激治療は、様々な心筋刺激治療と統合することができる。治療の統合は、相乗効果がある可能性がある。治療は、互いに同期することができ、感知したデータを共有することができる。心筋刺激治療は、心筋の電気刺激を使用して心臓治療を提供する。心筋刺激治療の一部の例を以下に示す。
【0083】
ペースメーカーは、時間設定されたペーシングパルスにより、心拍数が遅すぎる徐脈の治療のために最も一般的な心臓を整調する装置である。適切に機能する場合、ペースメーカーは、最小心拍数を適用することによって代謝需要を満たすように適切な律動で心臓の整調する機能の欠如自体を補う。埋め込み可能装置はまた、心内腔が、血液の効率的なポンピングを促進するために心サイクル中に収縮する方式及び程度に影響を与えることが明らかになっている。心臓は、心筋を通して興奮(すなわち、脱分極)の急速伝導を可能にする心房及び心室の両方の特殊な伝導路によって正常に設けられた結果を心室が協働して収縮する時により効率的にポンピングする。これらの経路は、洞房結節から心房心筋に、心房心室結節に、及び従って心室心筋に興奮インパルスを伝導し、両心房及び両心室の協働収縮をもたらす。この両方は、各心室の筋繊維の収縮を同期させて、対側性の心房又は心室と各心房又は心室の収縮を同期させる。正常に機能する特殊な伝導路によって与えられた同期化がないと、心臓のポンピング効率は大幅に減少する。これらの伝導路及び他の心室間又は心室内伝導欠損の病変は、心不全の病因要素である可能性があり、この心不全は、心機能の異常が、心拍出量を末梢組織の代謝需要を満たすのに十分なレベルよりも小さくする臨床的症候群を意味する。これらの問題を処理するために、埋め込み可能心臓装置は、心臓再同期治療(CRT)と呼ばれる心房及び/又は心室収縮の協働を改善しようとして1つ又はそれよりも多くの心内腔に適切に時間設定された電気刺激を提供することが明らかになっている。心室再同期は、心不全の治療に有用であり、その理由は、直接に変力性ではないが、再同期がポンピング効率の改善及び心拍出量の増加によって心室のより協働収縮をもたらすことができるからである。現在、共通の形式CRTが、同時に又は指定された二心室オフセット間隔だけ分離して、かつ内因性心房収縮の検出又は心房ペースの送出に対して指定された心房心室遅延間隔の後に、両心室に刺激パルスを加える。
【0084】
CRTは、MI後及び心不全患者に起こる可能性がある有害な心室リモデリングを低下させる上で有益である可能性がある。恐らく、これは、CRTが加えられる時の心臓のポンピング式サイクル中に心室が受け取る壁ストレスの分布の変化の結果として起こる。心筋繊維が収縮する前に心筋繊維が延伸する程度は、前負荷と呼ばれ、筋繊維を短縮させる最大緊張及び速度は、前負荷の増加と共に増大する。心筋領域が他の領域に対して遅れて収縮すると、これらの相対する領域の収縮は、遅延収縮領域を延伸させて前負荷を増加させる。心筋繊維が収縮する時の心筋繊維に対する緊張又はストレスの程度は、後負荷と呼ばれる。血液が大動脈及び肺動脈内にポンピングされる時に、心室内の圧力は、拡張期から収縮期の値に急速に上昇するので、興奮刺激パルスにより最初に収縮する心室の一部は、後で収縮する心室の一部よりも低い後負荷に対して収縮性が高い。従って、他の領域よりも後で収縮する心筋領域は、前負荷及び後負荷の増大の両方を受ける。この状況は、心不全及びMIによる心室機能不全に関連付けられた心室伝導遅延によってもたらされることが多い。遅い活性化の心筋領域に対する壁ストレスの増大は、心室リモデリングのためのトリガである可能性が最も高い。より協調的収縮を引き起こす可能性があるように梗塞領域の近くの心室の1つ又はそれよりも多くの部位を整調することにより、CRTは、そうでなければ収縮期中に後で活性化されて増大した壁ストレスを受けると考えられる心筋領域の事前興奮をもたらす。他の領域に対するリモデル領域の事前興奮は、領域を機械的ストレスからアンロードし、リモデリングの反転又は防止が起こることを可能にする。
【0085】
QRSコンプレックスと同期して心臓に送出される電気ショックである電気的除細動、及びQRSコンプレックスに同期することなく送出される電気ショックである除細動を使用して、殆どの頻脈性不整脈を終らせることができる。電気ショックは、同時に心筋を脱分極して心筋を難治性にすることによって頻脈性不整脈を終らせる。埋め込み可能除細動器(ICD)として公知のCRM装置の類は、装置が頻脈性不整脈を検出する時にショックパルスを心臓に送出することによってこの種の治療を提供する。頻脈のための別のタイプの電気治療は、抗頻脈ペーシング(ATP)である。心室ATPにおいて、心室は、頻脈を引き起こすリエントラント回路を中断しようとして、1つ又はそれよりも多くのペーシングパルスと競合的に整調される。最新のICDは、典型的には、ATP機能を有し、頻脈性不整脈が検出される時にATP治療又はショックパルスを行う。
【0086】
図19は、様々な実施形態によるマイクロプロセッサベースの埋め込み可能装置の実施形態の系統図である。装置のコントローラは、双方向データバスを通じてメモリ1947と通信するマイクロプロセッサ1946である。コントローラは、状態機械タイプの設計を使用して他のタイプの論理回路(例えば、離散構成要素又はプログラマブル論理アレイ)によって実施することができるが、マイクロプロセッサベースのシステムが好ましい。本明細書で使用される場合、「回路」という用語は、離散論理回路又はマイクロプロセッサのプログラミングのいずれかを意味するように取るべきである。図に示されているのは、リング電極1948A−C及び先端電極1949A−Cを有する双極リード、感知増幅器1950A−C、パルス発生器1951A−C、及びチャンネルインタフェース1952A−Cを含む「A」から「C」で示す感知及びペーシングチャンネルの3つの例である。従って、各チャンネルは、電極に接続されたパルス発生器で構成されたペーシングチャンネルと、電極に接続されたセンス増幅器で構成された感知チャンネルとを含む。チャンネルインタフェース1952A−Cは、マイクロプロセッサ1946と二方向に通信し、各インタフェースは、ペーシングパルスを出力し、ペーシングパルス振幅を変更し、感知増幅器のために利得及び閾値を調節するために、マイクロプロセッサによって書くことができる感知増幅器及びレジスタから感知信号入力装置をデジタル化するためのA/D変換器を含むことができる。ペースメーカーの感知回路は、特定のチャンネルによって発生する電位図信号(すなわち、心臓電気活動を表す電極によって感知された電圧)が、指定された検出閾値を超えると、チャンバセンス、心房センス、又は心室センスのいずれかを検出する。特定のペーシングモードで使用するペーシングアルゴリズムは、このようなセンサを使用してペーシングを始動するか又は抑制する。内因性心房及び/又は心拍数は、それぞれ心房及び心室センサ間の時間間隔を測定することによって測定することができ、かつ心房及び心室頻脈性不整脈を検出するのに使用することができる。
【0087】
各双極リードの電極は、マイクロプロセッサによって制御されたスイッチング回路網1953にリード内の伝導体を通じて接続される。スイッチング回路網を使用して、電極は、内因性心臓活動を検出するためにセンス増幅器の入力装置に及びペーシングパルスを送出するためにパルス発生器の出力装置に切り換えられる。スイッチング回路網はまた、リードのリング及び先端電極の両方を使用する双極モード、又は装置ハウジング(缶)1954を有するリードの電極又は接地電極として機能を果たす別のリード上の電極の1つのみを使用する単極モードのいずれかにおいて、装置が感知するか又は整調することを可能にする。ショックパルス発生器1955はまた、ショック可能な頻脈性不整脈を検出すると、除細動ショックを1対のショック電極1956及び1957を通じて心房又は心室に送出するためのコントローラにインタフェースで接続される。
【0088】
チャンネルD及びEとして識別された神経刺激チャンネルは、副交感神経刺激及び/又は交感神経抑制を行うための装置に埋め込まれ、ここで一方のチャンネルは、第1の電極1958D及び第2の電極1959D、パルス発生器1960D、及びチャンネルインタフェース1961Dを有する双極リードを含み、かつ他方のチャンネルは、第1の電極1958E及び第2の電極1959E、パルス発生器1960E、及びチャンネルインタフェース1961Eを有する双極リードを含む。他の実施形態は、単極リードを使用することができ、その場合には、神経刺激パルスは、缶又は他の電極に関連している。各チャンネルのためのパルス発生器は、振幅、周波数、及び負荷サイクルなどに関してコントローラによって変えることができる一連の神経刺激パルスを出力する。この実施形態では、神経刺激チャンネルの各々は、適切な神経ターゲットの近くの血管内に配置することができるリードを使用する。他のタイプのリード及び/又は電極も使用することができる。神経カフ電極は、神経刺激をするのに血管内に配置された電極の代わりとして使用することができる。一部の実施形態では、神経刺激電極のリードは、無線リンクによって置換することができる。
【0089】
図は、外部装置と通信するのに使用することができるマイクロプロセッサに接続された遠隔測定インタフェース1962を示している。図示のマイクロプロセッサ1946は、神経刺激治療ルーチン及び心筋刺激ルーチンを実施することができる。NS治療ルーチンの例は、心不全治療、抗高血圧治療(AHT)、抗リモデリング治療(ART)、及び抗不整脈治療を含む。心筋治療ルーチンの例は、徐脈ペーシング治療、電気的除細動又は除細動治療のような抗頻脈ショック治療、抗頻脈ペーシング治療(ATP)、及び心臓再同期治療(CRT)を含む。
【0090】
神経刺激及び心臓律動管理機能は、全体的に図19に示すように、同じ装置に統合することができ、又は個別の装置によって実施する機能に分離することができる。図20は、本発明の主題の様々な実施形態による外部装置2063、埋め込み可能神経刺激(NS)装置2064、及び埋め込み可能心臓律動管理(CRM)装置2065を含むシステムを示している。様々な態様は、NS装置とCRM装置又は他の心臓刺激器との間で通信する方法を含む。様々な実施形態では、この通信により、装置2064又は2065の一方は、他方の装置から受け取ったデータに基づいてより適切な治療(すなわち、より適切なNS治療又はCRM治療)を行うことを可能にする。一部の実施形態は、オンデマンドの通信を提供する。様々な実施形態では、この通信は、装置の各々は、他方の装置から受け取ったデータに基づいてより適切な治療(すなわち、より適切なNS治療及びCRM治療)を行うことを可能にする。図示のNS装置及びCRM装置は、互いに無線で通信することができ、かつ外部システムは、NS及びCRM装置の少なくとも一方と無線で通信することができる。例えば、様々な実施形態は、遠隔測定コイルを使用して、互いにデータ及び命令を無線で通信する。他の実施形態では、データ及び/又はエネルギの通信は、超音波手段による。NS及びCRM装置間で無線通信を行う以外に、様々な実施形態は、NS装置とCRM装置の間で通信するのに使用するための静脈内給送式リードのような通信ケーブル又はワイヤを提供する。一部の実施形態では、外部システムは、NS及びCRM装置間の通信ブリッジとして機能する。
【0091】
当業者は、本明細書に図示して説明したモジュール及び他の回路は、ソフトウエア、ハードウエア、並びにソフトウエア及びハードウエアの組合せを使用して実施することができることを理解するであろう。従って、モジュール及び回路という用語は、例えば、ソフトウエア実施、ハードウエア実施、並びにソフトウエア及びハードウエア実施を包含することを意図している。
【0092】
本発明の開示に示す方法は、本発明の主題の範囲にある他の方法を除外するように考えられているものではない。当業者は、本発明の開示を読んで理解すると、本発明の主題の範囲にある他の方法を理解するであろう。上記に特定した実施形態及び図示した実施形態の一部分は、必ずしも相互に排他的ではない。これらの実施形態又はこれらの一部分は、組み合わせることができる。様々な実施形態では、本方法は、1つ又はそれよりも多くのプロセッサによって実施された時にプロセッサがそれぞれの方法を実行することを可能にする一連の命令を表す搬送波又は伝播信号に具現化されたコンピュータデータ信号を使用して実施される。様々な実施形態では、本方法は、プロセッサにそれぞれの方法を実行するように指示することができるコンピュータアクセス可能媒体上に含まれる1組の命令として実施される。様々な実施形態では、媒体は、磁気媒体、電子媒体、又は光媒体である。
【0093】
上記詳細説明は、例示的であって制限的ではないように意図している。他の実施形態は、上記説明を読んで理解すると当業者には明らかであろう。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲に関連してこのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と共に判断すべきである。
【符号の説明】
【0094】
200 埋め込み可能医療装置
201 埋め込まれたリード
204 胸管
205 鎖骨下静脈

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊髄と、鎖骨下静脈と、胸管及び右リンパ本幹を含む胸部リンパ管とを有する体内の自律神経活動を調整するためのシステムであって、
少なくとも第1の電極領域及び第2の電極領域を含む少なくとも1つの刺激リードであって、該少なくとも1つの刺激リードが、鎖骨下静脈を通して望ましい胸部リンパ管内へ給送されて、脊髄の第1の領域から分枝している交感神経を刺激するように胸部リンパ管に該第1の電極領域を作動的に位置決めし、かつ脊髄の第2の領域から分枝している交感神経を刺激するか又は該望ましい胸部リンパ管に解剖学的に隣接する副交感神経を刺激するように該望ましい胸部リンパ管に該第2の電極領域を作動的に位置決めするようになった少なくとも1つの刺激リードと、
神経刺激パルスを前記第1の電極領域に送出して、脊髄の該第1の領域から分枝している交感神経の交感神経活動を調整し、かつ神経刺激パルスを前記第2の電極領域に送出して、脊髄の該第2の領域から分枝している交感神経の交感神経活動を調整するか又は前記望ましい胸部リンパ管に解剖学的に隣接する副交感神経の副交感神経活動を調整するようにプログラムされたプログラマブル神経刺激器と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの刺激リードは、第3の電極領域を含み、該少なくとも1つの刺激リードは、前記望ましい胸部リンパ管内へ給送されて、脊髄の前記第2の領域から分枝している交感神経を刺激するように胸部リンパ管に前記第2の電極領域を作動的に位置決めし、かつ胸部リンパ管に解剖学的に隣接する副交感神経を刺激するように胸部リンパ管に該第3の電極領域を作動的に位置決めするようになっていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
交感神経は、脊髄のC5−T5領域から分枝している交感神経を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
副交感神経は、前記望ましい胸部リンパ管に解剖学的に隣接して位置決めされた迷走神経を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プログラマブル神経刺激器は、神経刺激パルスを前記第1の電極領域に送出して脊髄の該第1の領域から分枝している交感神経の交感神経活動を低下させ、かつ神経刺激パルスを該第1の電極領域に送出して脊髄の該第1の領域から分枝している交感神経の交感神経活動を増大させるようにプログラムされていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プログラマブル神経刺激器は、神経刺激パルスを前記第2の電極領域に送出して副交感神経の副交感神経活動を低下させ、かつ神経刺激パルスを該第2の電極領域に送出して副交感神経の副交感神経活動を増大させるようにプログラムされていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの刺激リードは、前記第1及び第2の電極領域を含む単一リードであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記単一リードは、該リードにおける前記第1の電極領域と前記第2の電極領域の間の距離を調節するようになった伸縮性リードであることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記プログラマブル神経刺激器は、
神経刺激パルスを前記第1の電極領域に長期的に送出して、脊髄の該第1の領域から分枝している交感神経の交感神経活動を長期的に抑制し、かつ
神経刺激パルスを前記第2の電極領域に間欠的に送出して、副交感神経の副交感神経活動を間欠的に増大させる、
ようにプログラムされている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記プログラマブル神経刺激器は、
神経刺激パルスを前記第1の電極領域に長期的に送出し、脊髄の該第1の領域から分枝している交感神経の交感神経活動を増大させ、かつ
神経刺激パルスを前記第2の電極領域に間欠的に又は長期的に送出し、副交感神経の副交感神経活動を増大させる、
ようにプログラムされている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記神経刺激器に作動的に接続され、かつ呼吸サイクルの吸気及び呼気相を検出する使用に適応された呼吸センサを更に含み、
前記プログラマブル神経刺激器は、
前記吸気相の間に交感神経活動を低下させるように前記第1の電極領域への神経刺激パルスの送出の時間を設定し、かつ
前記呼気相の間に副交感神経活動を増大させるように前記第2の電極領域への神経刺激パルスの送出の時間を設定する、
ようにプログラムされている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記神経刺激器に作動的に接続され、かつ呼吸サイクルの吸気及び呼気相を検出する使用に適応された呼吸センサを更に含み、
前記プログラマブル神経刺激器は、
前記吸気相の間に交感神経活動を低下させるように前記第1の電極領域への神経刺激パルスの送出の時間を設定し、かつ
前記吸気相の間に副交感神経活動を増大させるように前記第2の電極領域への神経刺激パルスの送出の時間を設定する、
ようにプログラムされている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記神経刺激器に作動的に接続され、かつ呼吸サイクルの吸気及び呼気相を検出する使用に適応された呼吸センサを更に含み、
前記プログラマブル神経刺激器は、
神経刺激パルスを前記第1の電極領域に送出して長期的に交感神経活動を減少させ、かつ
副交感神経活動を間欠的に増大させるように前記呼吸サイクルに前記第2の電極領域への神経刺激パルスの送出の時間を設定する、
ようにプログラムされている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記神経刺激器に作動的に接続され、かつ呼吸サイクルの吸気及び呼気相を検出する使用に適応された呼吸センサを更に含み、
前記プログラマブル神経刺激器は、
神経刺激パルスを前記第2の電極領域に送出して長期的に副交感神経活動を増大させ、かつ
交感神経活動を間欠的に低下させるように前記呼吸サイクルに前記第1の電極領域への神経刺激パルスの送出の時間を設定する、
ようにプログラムされている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
心不整脈を検出する使用に適応された不整脈検出器を更に含み、
前記プログラマブル神経刺激器は、
前記不整脈検出器が心不整脈を検出する場合に、神経刺激パルスを前記第1の電極領域に送出して交感神経の交感神経活動を低下させることによって抗不整脈治療を実施し、かつ
神経刺激パルスを前記第2の電極領域に送出して副交感神経の副交感神経活動を長期的に増大させることによって慢性心不全治療を実施する、
ようにプログラムされている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記プログラマブル神経刺激器は、
神経刺激パルスを前記第1の電極領域に送出して交感神経の交感神経活動を増大させ、
神経刺激パルスを前記第2の電極領域に送出して副交感神経の副交感神経活動を増大させ、かつ
交感神経及び副交感神経活動の両方を間欠的に増大させ、かつ交感神経活動の増大に副交感神経活動の増大が続くように前記神経刺激パルスのタイミングを制御する、
ようにプログラムされる、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の電極領域は、複数の電極を有し、かつ前記第2の電極領域は、複数の電極を有し、
前記プログラマブル神経刺激器は、望ましい反応を引き出すのに望ましい電極部分集合を識別するために前記第1及び第2の電極領域における電極部分集合に対する神経刺激効率を評価する神経刺激試験ルーチンを実施するようにプログラムされている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記プログラマブル神経刺激器は、
前記神経刺激試験ルーチンを実施して、前記望ましい電極部分集合に利用可能な少なくとも2つの刺激ベクトルに対する神経刺激効率を評価し、又は
前記望ましい電極部分集合に対する少なくとも2つの神経刺激強度レベルに対して神経刺激効率を評価する、
ようにプログラムされている、
ことを特徴とする請求項17に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2012−519574(P2012−519574A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554079(P2011−554079)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/025899
【国際公開番号】WO2010/104700
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】