説明

リンホトキシン(LT)経路のインヒビターを使用する濾胞性リンパ腫の処置

【課題】化学療法に対して抵抗する腫瘍の処置、特に、濾胞性リンパ腫の処置、ならびに現在の治療よりもよりわずかな副作用を有する処置療法を提供すること。
【解決手段】腫瘍の処置、特に、濾胞性リンパ腫を処置するためのリンホトキシン経路のインヒビターの治療的な使用。本発明はまた、濾胞性リンパ腫のような腫瘍の処置のための方法および組成物を提供し、これらは、現在の治療法に存在する特定の問題を克服し、そして伝統的な化学療法に対して耐性を示す腫瘍についての代替の治療法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍、特に、胚中心に由来するリンパ腫(濾胞性リンパ腫)を処置するための組成物、およびリンホトキシン経路のインヒビターの治療的な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
腫瘍ネクローシス因子(TNF)に関連付けられるサイトカインは、宿主の防御および免疫調節のメディエータある。このファミリーのメンバーは膜に固定される形態で存在し、細胞間の接触を通じて局所的に作用するか、あるいは分泌タンパク質としてさらに離れた標的にまで拡散し得る。類似するレセプターのファミリーは、標的組織における細胞死または細胞増殖および細胞分化の開始を誘発するこれらの分子の存在をシグナル伝達する。現在、TNFファミリーのリガンドおよびレセプターは、以下を含む少なくとも11の認識されるレセプター−リガンドペアを有する:TNF:TNF−R;LT−α:TNF−R;LT−α/β:LT−β−R;FasL:Fas;CD40L:CD40;CD30L:CD30;CD27L:CD27;OX40L:OX40および4−1BBL:4−1BB。
【0003】
TNFファミリーのメンバーは、細胞の生存および分化の両方を制御する免疫系におけるマスタースイッチとして、最も良く記載され得る。現在、TNFファミリーの他の主に膜固定されたメンバーと対照的に、TNFおよびLTαのみが分泌されるサイトカインとして認識されている。TNFの膜形態はよく特徴付けされ、特有の生物学的役割を有しているようである。一方、分泌されたTNFは、事象誘発部位からさらに離れた細胞にシグナル伝達する一般的な警告として機能する。従って、TNF分泌は、血管系の裏打ち(lining)および細胞の炎症状態において十分に記載された変化を誘発する事象を増幅し得る。対照的に、膜結合のメンバーのファミリーは、TNF型レセプターを通じて、直接接触する細胞のみにシグナルを伝達する。例えば、T細胞は、同起源のTCR相互作用を介する直接的な接触をもたらすB細胞のみにCD40媒介性の「ヘルプ」を提供する。細胞死を誘導する能力に対する同様の細胞間接触の制限は、十分に研究されたFasシステムに適用する。
【0004】
大多数の膜結合LTα/β複合体(「表面LT」)は、LTα1/β2の化学量論を有する。(Browning.ら,Cell,72,847−56頁(1993);Browning.ら,J.Immunol.,154,33−46頁,(1995))。表面LTリガンドは、TNF−Rと高い親和性で結合せず、そしてTNF−Rシグナル伝達を活性化しない。しかし、LTβレセプター(LTβ−R)は、これらの表面リンホトキシン複合体と高い親和性で結合する(Crowe.ら,Science,264,707−10(1994))。
【0005】
TNF−Rシグナル伝達様のLTβ−Rシグナル伝達は、抗増殖効果を有し、そして腫瘍細胞に対して細胞傷害性であり得る。本出願人の同時係争中の米国出願第08/378,968号において、LTβ−R活性化試薬を使用して、選択的にTNF−Rを刺激するための組成物および方法が開示される。LTβ−R活性化試薬は、TNF−R誘導性の前炎症性(proinflammatory)経路または免疫調節経路を同時に活性化することなく、腫瘍細胞の増殖を阻害するために有用である。
【0006】
最近の遺伝子標的化研究は、二次リンパ器官(secondary lymphoid organ)の発生におけるLTα/βの役割を示唆する。(Banksら,J.Immunol.,155,1685−1693(1995);De Togniら,Science,264,703−706(1994))。事実、LTα欠損マウスはリンパ節(LN)およびパイアー斑(PP)を欠く。さらに、これらの脾臓は構造を崩壊され、そして脾辺縁の細胞上の機能的マーカーの発現は変化する。(Banksら,1995;De Togniら,Science,264,703−706頁(1994),Matsumotoら,Science,271,1289−1291頁(1996))。これらの特徴は、いずれのTNFレセプターノックアウトマウスについても記載されていなかった。(Ericksonら,Nature,372,560−563頁(1994);Pfefferら,Cell,73,457−467頁(1993);Rotheら,Nature,364,798−802頁(1993))。本出願人らは、最近、ヒトIgG1 Fc領域を融合した可溶性形態のマウスLTβ−R(LTβ−R−Ig)を妊娠期間中に注射されたマウスの子孫が、大部分のリンパ節を欠いていたことを示すことによって、二次リンパ器官の発生における膜LTα/β複合体の役割を定義し、そして脾構造が崩壊されていたことを示した。(Rennertら,1996,「Surface Lymphotoxin α/β complex is required for the development of peripheral lymphoid organs.」J.Exp Med,184:1999−2006)。別の研究において、生後3日目から発現される類似のLTβ−R−Ig構築物に対するマウストランスジェニックは、LNを有することが示された。しかし、これらの脾構築は崩壊され、そして脾辺縁層細胞のいくつかのマーカーが発現されていなかった(Ettingerら,「Disrupted splenic architecture,but normal lymph node development in mice expressing a soluble LTβ−R/IgG1 fusion protein」,Proc.Natle.Acad.Sci.U.S.A.93:13102−7)。これらの結果とともに、脾構造に対する効果ではなく、二次リンパ器官の発生に対する効果を媒介する膜LT機能について一時的な要求が存在することを示す。
【0007】
TNFシステムはまた、脾臓の発生において機能し得る。TNF欠損マウスの脾辺縁層細胞は、マクロファージマーカー、すなわちMAdCAM−1を発現しない(Alexopoulouら,第60回 国際TNF会議,Eur.Cytokine Network,228頁(1996);Pasparakisら,第60回 TNF会議,Eur.Cytokine Network,239頁(1996))。TNF−R55欠損マウスはまた、脾辺縁層細胞を染色するMAdCAM−1(MOMA−1ではない)を欠く。(Neumannら,J.Exp.Med.,184,259−264頁(1996);Matsumotoら,Science,271,1289−1291頁(1996))。TNF−R55欠損マウスの脾臓において示されるようなこれらのマーカーの発現は、正常のようである。(Matsumotoら,Science,271,1289−1291頁(1996))。
【0008】
リンパ様の組織は、発生プロセスの一部分として生じるだけではなく、いくつかの病理学的な状況下(例えば、慢性炎症、現在、新リンパ器官形成(neolymphoorganogenesis)と名付けられるプロセス)でも現れる。(PickerおよびButcher,Annu.Rev.Immunol.,10,561−591頁(1992),Kratzら,J.Exp.Med.,183,1461−1471頁(1996))。TNFファミリーのメンバーは、明らかに、このようなプロセスに影響する。ラットインスリンプロモーター(RIP−LT)によって駆動されるLTα遺伝子に対するマウストランスジェニックは、組織されたリンパ組織の特徴を有するLT誘導性の慢性炎症障害を発生した。(Kratzら,J.Exp.Med.,1183,1461−1471頁(1996);Picarella.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.,89,10036−10040頁(1992))。
【0009】
LTα欠損マウスを使用するT細胞依存性の免疫応答の間のLT機能の評価は、GC形成についての、可能性としては組織された濾胞性樹状細胞細胞(FDC)構造を維持することについての、および体液性応答についてのLTの必要性を示した。(Banksら,J.Immunol.,155,1685−1693頁(1995);Matsumotoら,Science,271,1289−1291頁(1996);Matsumotoら,Nature,382,462−466頁(1996))。TNF−R−55欠損マウスはまた、FDCを欠き、GCを発生せず、そしてヒツジ赤血球(SRBC)に対する適切な抗体応答を発生しない。このことは、TNF−R−55が、大多数のこれらの応答に対して、可溶性のLTまたはTNFのシグナルによって誘起され得ることを示唆する(Le Hirら,J.Exp.Med.,183,2367−2372頁(1996),Alexopoulouら,第60回 国際TNF会議,Eur.Cytokine Network,228頁(1996);Pasparakis,第60回 国際TNF会議,Eur.Cytokine Network,239頁,(1996))。
【0010】
TNFファミリーのレセプターのメンバーであるLTβ−レセプターは、特に、表面LTリガンドに結合する。LTβ−Rは、LTヘテロマー複合体(主に、LTα1/β2およびLTα2/β1)に結合するが、TNFまたはLTαに結合しない(Croweら,Science,264,707−10頁(1994))。LTβ−RのmRNAは、ヒトの脾臓、胸腺および免疫系に関連する一般的な器官において見出される。LTβ−R発現についての研究はそれらの初期ステージにおいてであるが、LTβ−R発現パターンは、LTβ−Rが末梢血のT細胞およびB細胞ならびにT細胞株およびB細胞株については欠いていることを除いて、TNF−R55について報告された発現パターンと類似するようである。
【0011】
細胞表面リンホトキシン(LT)複合体は、高レベルのLTを発現するCD4+T細胞ハイブリドーマ細胞(II−23.D7)において特徴付けされている。(Browninigら,J.Immunol.,147,1230−37頁(1991);Androlewiczら,J.Biol.Chem.,267,2542−47頁(1992)、この両方は本明細書中において参考として援用される)。LTβ−R、LTサブユニットおよび表面LT複合体の発現および生物学的な役割は、C.F.Wareら、「The ligands and receptors of the lymphotoxin system」、Pathways for Cytolysis,Current Topics Microbiol;Immunol.Springer−Verlag、175−218頁(1995)によって総説されており、特にこれは本明細書に参考として援用される。
【0012】
LTα発現が誘導され、そして主に、活性化されたTリンパ球およびBリンパ球ならびにナチュラルキラー(NK)細胞によってLTαは、分泌される。特にTヘルパー細胞において、LTαはTh2ではなくTh1によって産生されるようである。LTαはまたメラニン細胞においても検出された。多発硬化症患者の外傷における小グリア細胞およびT細胞はまた、抗LTα抗血清で染色され得る(Selmajら、J.Clin.Invest.,87,949−954頁(1991))。
【0013】
リンホトキシンβ(p33とも呼ばれる)は、ヒトおよびマウスのTリンパ球、T細胞株、B細胞株およびリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞の表面で発現される。LTβは、出願人の同時継続国際出願(WO92/00329として1992年1月9日公開のPCT/US91/04588、およびWO94/13808として1994年6月23日公開のPCT/US93/11669)の主題であり、これらは本明細書中に参考として援用される。
【0014】
表面LT複合体は、主に、活性化T細胞(ヘルパー細胞、Th1細胞,およびキラー細胞)およびBリンパ球ならびにナチュラルキラー(NK)細胞によって発現される。これらの細胞は、FACS分析または抗LT抗体または可溶性LTβ−R−Ig融合タンパク質を使用する免疫組織化学によって規定される。出願人の1995年7月21日に出願された同時継続米国出願第08/505,606号において、Th1細胞によって媒介される免疫学的疾患の処置のための治療として、可溶性LTβレセプターおよび抗LTβレセプターならびにリガンド特異的抗体を使用するための組成物および方法が開示される。表面LTはまた、ヒトの細胞傷害性Tリンパ球(CTL)クローン、活性化末梢単核リンパ球(PML)、IL−2活性化末梢血リンパ球(LAK細胞)ヤマゴボウマイトジェン活性化末梢Bリンパ球もしくは抗CD40活性化末梢Bリンパ球(PBL)ならびにT細胞系統およびB細胞系統の種々のリンパ系腫瘍について記載されている。同種抗原保有標的細胞の連動は、CD8+およびCD4+CTLクローンによる表面LT発現を特に誘導する。出願人は、表面LTについてのいくつかの免疫学的機能を本明細書に記載し、そしてLTα/β結合試薬の、免疫グロブリン応答の産生および性状、二次リンパ組織の細胞の組織化の維持(濾胞性樹状細胞および胚中心形態の分化状態への効果を含む)、ならびに細胞輸送に影響する発現レベルの局在に対する効果を示す。従って、出願人は、表面LTα/βおよびLTαレセプター結合薬剤のための治療的な適用を規定する。
【0015】
研究は、B細胞が、種々の抗原での感作に続いて、リンパ節(LN)および脾臓において活性化されることを示した。LNおよび脾臓のB細胞富化領域を形成する胚中心と呼ばれる分化した構造において、B細胞は成熟し、そして記憶B細胞を形成する1。B細胞は、発生過程のほとんどの時点で腫瘍への形質転換を起こし得る2。B細胞の形質転換は、リンパ腫を引き起こし、そして胚中心におけるB細胞由来の形質転換は、しばしば、濾胞性リンパ腫と呼ばれる。リンパ腫の種々のサブセットの正確な描写は、より多くの表面マーカーがより正確な細胞の起源の指標を可能にすることを見出すため、まだ過渡期にある。濾胞性リンパ腫は、増殖しているB細胞のステージもしくはタイプに基づいて多数のサブグループに分割され得、予後は細胞型に依存して変化する。慣用的な化学療法の処置は、低い程度の細胞型を有する多くの患者における治療に影響し得る。それにもかかわらず、これらの患者の一部は化学療法に対して抵抗し、不幸な予後を有する。
【0016】
従って、腫瘍処置における進歩にもかかわらず、特に濾胞性リンパ腫、代表的には、化学療法に対して抵抗する腫瘍の処置についての必要性、ならびに現在の治療よりもよりわずかな副作用を有する処置療法についての必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
本発明は、濾胞性リンパ腫のような腫瘍の処置のための方法および組成物を提供し、これらは、現在の治療法に存在する特定の問題を克服し、そして伝統的な化学療法に対して耐性を示す腫瘍についての代替の治療法を提供する。
【0018】
特定の実施態様において、請求の範囲に記載されている発明は、濾胞性リンパ腫を有する被験体を処置する方法に関し、この方法は、LT−α/βヘテロマーのそのレセプターとの相互作用をブロックする組成物の有効量を被験体に投与する工程を包含する。種々の実施態様における好ましい組成物は、可溶性リンホトキシンβレセプター、LT−βレセプターに対する抗体、および表面LTリガンドに対する抗体を含むが、これらに限定されない。より好ましいのは、表面LTリガンドに選択的に結合し得るリガンド結合ドメインを有する可溶性リンホトキシンβレセプターである(例えば、ヒト免疫グロブリンFcドメインに融合された可溶性LTβ−R形態)。さらに、好ましい組成物は、LT−βレセプターに対するモノクローナル抗体(ヒト化された抗体、キメラ抗体または他の変化された抗体を含む)を含む。
【0019】
本発明の別の実施態様において、請求の範囲は、濾胞性腫瘍を有する被験体の処置方法を包含し、ここでブロッキング薬剤は、腫瘍増殖の後退または停止が認められるまで投与される。特定の実施態様において、LT経路のブロッキング薬剤は、腫瘍の処置に有用であることが公知の他の薬剤(例えば、化学療法)との組み合わせで投与され得る。さらに、本発明の方法は、特定の実施態様において、被験体を照射または骨髄移植で処置する工程をさらに含み得る。
【0020】
さらに他の実施態様において、請求の範囲に記載されている方法は、TNFファミリーの他のメンバーの経路のブロック薬剤と共に、LT−βRブロック薬剤を投与する工程を包含する。例えば、TNFブロック薬剤は、請求の範囲に記載されている発明のブロック薬剤と共に、同時にまたは付随して投与され得る。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)腫瘍の進行、重症度または効果を停止または軽減するための方法であって、LT−βとそのレセプターとの間の相互作用を阻害する有効量の組成物を被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目2)前記腫瘍が濾胞性リンパ腫である、項目1に記載の方法。
(項目3)前記組成物が、可溶性のLT−βレセプター、抗LT−α抗体、抗LT−β抗体、および抗LT−β−R抗体からなる群から選択される、項目2に記載の方法。
(項目4)前記組成物が可溶性LT−βレセプターである、項目3に記載の方法。
(項目5)前記被験体が哺乳動物である、項目1に記載の方法。
(項目6)前記被験体がヒトである、項目5に記載の方法。
(項目7)前記可溶性リンホトキシン−βレセプターが、表面LTリガンドに選択的に結合し得るリガンド結合ドメインを含む、項目4に記載の方法。
(項目8)前記LT−βレセプターが、ヒト免疫グロブリンFCドメインを含む、項目7に記載の方法。
(項目9)前記組成物が、LT−βレセプターに対するモノクローナル抗体を含む、項目3に記載の方法。
(項目10)前記モノクローナル抗体がヒト化されているかまたはキメラである、項目9に記載の方法。
(項目11)濾胞性リンパ腫を有する被験体の処置のための組成物であって、LT−βとそのレセプターとの相互作用をブロックする、組成物。
(項目12)前記被験体への少なくとも1つの化学療法的な薬剤の投与を包含する、項目1に記載の方法。
(項目13)前記被験体への別のTNF経路のインヒビターの投与を包含する、項目1に記載の方法。
(項目14)CD40/CD40リガンド経路を阻害する組成物の投与を包含する、項目13に記載の方法。
(項目15)抗CD40リガンド抗体の投与を包含する、項目14に記載の方法。
(項目16)前記被験体への放射線処置の投与を包含する、項目1に記載の方法。
(項目17)前記被験体への放射線処置または骨髄移植の投与をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目18)被験体における濾胞性樹状細胞の生存または維持を変化する方法であって、LT−βとそのレセプターとの間の相互作用のインヒビターを投与する工程を包含する、方法。
(項目19)免疫系の器官の構造を変化させるための方法であって、以下(a)LT−βとそのレセプターとの間の相互作用のインヒビター;および(b)TNFファミリーのリガンドおよびレセプターのさらなるメンバーのシグナル伝達経路のインヒビターを投与する工程によって変化させる、方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本発明は、腫瘍(例えば、濾胞性腫瘍)、特に、濾胞性リンパ腫の処置のための方法および組成物を提供する。
【0022】
本明細書で使用される用語「免疫グロブリン応答」または「体液性応答」は、外来抗原に対する動物の免疫学的応答をいい、それによって動物は外来抗原に対する抗体を産生する。Tヘルパー細胞のTh2クラスは、高い親和性の抗体の効率的な産生に重要である。
【0023】
本明細書で使用される用語「胚中心」とは、抗原免疫後に形成する二次(secondary)B細胞小胞をいう。この組織学的部位の出現は、最適な記憶生成、アイソタイプ転換、体細胞超変異、従って、抗体応答の親和性成熟と相関する。
【0024】
用語「辺縁層」または「辺縁の帯型領域」とは、主に、辺縁層マクロファージ(MZM)、好金属性マクロファージ(MM)、辺縁層B細胞および細網細胞、さらにT細胞および樹状細胞から構成される二次リンパ組織の、組織学的に記載される区画をいう。動脈血流動は辺縁洞に通じており、従って、抗原にこれらの細胞への直接的なアクセスを与え、そしてこの部位で抗原に対する細胞応答を促進する。
【0025】
本明細書で使用される用語「Tヘルパー(Th)細胞」とは、細胞傷害性T細胞の産生を補助するT細胞の機能的なサブクラスをいい、そしてこの細胞は、抗体産生を刺激するためにB細胞と協同する。ヘルパーT細胞は、クラスII MHC分子と共同して抗原を認識し、そして接触依存的および接触非依存的(サイトカイン)なシグナルをエフェクター細胞に提供する。
【0026】
用語、抗体の「Fcドメイン」とは、抗原結合部位を欠くが、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含む分子の一部をいう。この用語はまた、IgMまたは他の抗体のアイソタイプの等価領域を含むことを意味する。
【0027】
用語「抗LTβレセプター抗体」とは、LTβレセプターの少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する任意の抗体をいう。
【0028】
用語「抗LT抗体」とは、LTα、LTβまたはLTα/β複合体の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する任意の抗体をいう。
【0029】
用語「LTβ−Rシグナル伝達」とは、LTβ−R経路に関連する分子反応およびその結果から生じる後の分子反応をいう。
【0030】
用語「LTβRブロッキング薬剤」とは、Ltβ−R、細胞表面LTβ−RクラスタリングもしくはLTβ−Rシグナル伝達へのリガンド結合を減少し得る薬剤、または細胞内におけるLTβ−Rシグナルを解釈する方法に影響し得る薬剤をいう。
【0031】
リガンドレセプター結合の工程で作用するLTβ−Rブロッキング薬剤は、LTβ−RへのLTリガンド結合を少なくとも20%まで阻害し得る。LTβ−Rブロッキング薬剤の例としては、可溶性LTβ−R−Fc分子、ならびに抗LTα、抗LTβ、抗LTα/βおよび抗LTβ−R Absが挙げられる。好ましくは、この抗体は、分泌された形態のLTαと交差反応しない。
【0032】
用語「LTβ−Rの生物学的活性」とは、以下をいう:1)可溶性LTβ−R分子もしくは表面LTβ−R分子と結合する可溶性LTリガンドもしくは表面LTリガンドについて競合するLTβ−R分子もしくは誘導体の能力;または2)天然のLT活性、例えば、免疫調節応答もしくは細胞傷害性活性を刺激する能力。
【0033】
用語「LTリガンド」とは、LTβレセプターに特異的に結合し得る、LTα/βヘテロマー複合体またはそれらの誘導体をいう。
【0034】
用語「LTβ−Rリガンド結合ドメイン」とは、LTリガンドの特異的な認識およびLTリガンドとの相互作用に関与するLTβ−Rの部分をいう。
【0035】
用語「表面LT」および「表面LT複合体」とは、LTαおよび膜結合LTβサブユニット(1つ以上のサブユニットの変異体形態、変化した形態およびキメラ形態を含む)を含む複合体をい、これは細胞表面上に提示される。「表面LTリガンド」とは、LTβレセプターに特異的に結合し得る表面LT複合体またはその誘導体をいう。
【0036】
用語「被験体」とは、動物、または動物に由来する1つ以上の細胞をいう。好ましくは、動物は哺乳動物である。細胞は任意の形態であり得、組織に保持される細胞、細胞クラスター、不朽化細胞、トランスフェクト細胞または形質転換細胞、および身体的にもしくは表現型的に変化した動物に由来する細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
上記で議論したように、B細胞の形質転換はリンパ腫を誘起し、そして胚中心由来のB細胞の形質転換(リンパ節および脾臓のB細胞富化領域に見出される特殊構造)は、濾胞性リンパ腫といわれる。胚中心B細胞は、成熟、および増殖するために特定の環境を必要とし、そして濾胞性樹状細胞は、抗原ならびにおそらく成熟、生存および増殖を誘起する胚中心B細胞のための特定のシグナルの両方を提供する。自然発生的に細網細胞肉腫(RCS、これらの型の腫瘍の初期名称)を形成するSJLマウスにおける研究は、RCS(CRCS)の移植可能な細胞株およびインビトロ細胞株も導き、これらは宿主と腫瘍3,4との間の相互作用についてのモデルとして役立つ。これらのRCSは、SLJマウスのLNにおいて頻繁に生じ、そして種々の造血性細胞を含む異質性である。かなりの証拠が、これらのリンパ腫は胚中心に由来し、そして生存および増殖するために、宿主によって提供される種々のシグナルまたは因子を必要とすることを示す5,6。これらの生存シグナルを操作する能力は、これらの腫瘍の増殖を制御する手段を提供する。
【0038】
濾胞性樹状細胞(FDC)と呼ばれる1つの細胞型は、胚中心の形成および機能に最重要であると考えられている。多くの異なる因子が、胚中心B細胞の生存および維持と関連付けられている。特に、サイトカインのTNFファミリーのメンバーは、B細胞側(例えば、CD40)からおよびFDC側(例えば、TNFおよびリンホトキシン(LT)レセプター)への両方に関連する、表面シグナル伝達リガンドである。LT軸またはTNF軸のいずれかを欠くマウスは、FDCにおいて欠陥を有するため、胚中心を欠く7。TNF軸は、おそらく下流の役割が存在するが、FDCの発生に重要であると考えられている。LT軸は、機能的な状態におけるFDCの維持に、より重要であるようである。LTシステムは、種々のリガンド陽性リンパ球からレセプター陽性細胞へのシグナル伝達に関与する。このシグナル伝達は、おそらく非骨髄誘導であり(すなわち、おそらくFDC由来)、完全に機能的な成熟状態にあるFDCを維持する。本出願人らは、例えば、LTリガンドに対する抗体または可溶性レセプター免疫グロブリン融合タンパク質のいずれかでこの経路をブロックすると、成熟FDCの欠損を導くことを見出した(MackayおよびBrowning,1998 Nature,第395号,26−27頁,「Turning Off Follicular Dendritic Cells」)。さらに、LT経路阻害は、胚中心形成の欠損および脾臓のいくらかの組織崩壊を導く8
【0039】
本出願人らは、初めて、LT経路インヒビターが、濾胞性B細胞リンパ腫とその環境(すなわち、FDC)との間の相互作用を崩壊し得、そして腫瘍の緩和された増殖または停止された増殖を導くことを本明細書に記載する。それ故に、このようなインヒビターは、難治性のリンパ腫の管理もしくは初期治療として、または従来の化学療法措置に加えて有用である。詳細には、LT経路の活性化は腫瘍治療に関連付けられ得ることが当該分野において示唆されてきたが、驚くべきことに、本出願人らは、LT経路の一過性のブロックが、腫瘍(例えば、濾胞性リンパ腫を含む)の増殖の緩和または停止を導き得ることを発見した。
【0040】
より広範な実施態様において、本発明は、LT経路を阻害する有効量の組成物の投与することによって、腫瘍またはリンパ腫、特に濾胞性リンパ腫を有する被験体を処置する方法を包含する。特定の阻害組成物は、可溶性LT−βレセプター、LTβ−Rを含む融合タンパク質、LTβ−Rに対する抗体およびLTリガンドに対する抗体を含み得る。このような阻害組成物は、好ましくは、薬学的に受容可能なキャリアを含む。好ましい適用における被験体は、哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
【0041】
本発明の方法は、本発明の組成物をいくつかの腫瘍が後退、または停止するまで被験体に投与する工程を含むことに注意のこと。処置時間は、広範囲に変化し得、そして処置は、数週間から数ヶ月、またはいくつかの場合さらに長い経過にわたって継続し得る。当業者は、腫瘍の後退または停止が生じた時点を決定し得、そして任意の公知の方法が使用され得る。Bリンパ腫を細区分するFACSマーカーの使用は、かなり改善され、そして特定のサブタイプのリンパ腫がこの種類の治療に対して最も扱い易いことを証明することが期待され得る。
【0042】
他のTNFファミリーメンバーのような他の免疫系調節分子は、免疫器官構造の維持に関与し得、それゆえリンパ腫増殖のための好ましい環境の提供に貢献するようでもある。従って、LTと他の経路との阻害の組み合わせは、特定の被験体のための効果的な処置であり得る。例えば、CD40/CD40リガンド経路のブロック剤との組み合わせでLT経路の阻害剤を用い得る。所望の経路をブロックする任意の組成物(例えば、抗体、可溶性リガンドまたはレセプター)を用い得る。LT経路の阻害剤と組み合わせてCD40リガンドに対する抗体を投与することは好ましくあり得る。TNFメンバーの経路の1つより多いブロック剤を投与する場合、組成物は、実質的に同時に投与され得るか、または代替的に、1つのブロック剤を、他に対して逐次的に投与し得る。当業者は、処置されている個々の腫瘍および被験体の状態に基づいて個々の被験体のための最も効果的な処置を容易に決定し得る。
【0043】
通常の化学療法のプロトコルを、本発明の組成物を用いる処置の後の残存する腫瘍の負荷を除去するために用い得るか、またはいくつかの場合において、本発明の組成物での処置と同時にまたは先立って用いられ得る。LT経路阻害剤は、通常の化学療法的療法の着手に先立って、リンパ腫の増殖を阻止するために用いられ得る。増殖/生存促進シグナルの欠損が、リンパ腫を化学療法的薬剤に対してより感受性にし得るようであり、それゆえ伝統的な化学療法薬剤の投与に先立つLT経路阻害剤の投与は好ましい。
【0044】
(実施例1:LT経路インヒビターを用いるSJL RCS腫瘍の処置は、総LN/腫瘍サイズを減少させる)
SJLマウスを腫瘍の移殖の3日前(D−3)、移殖時(D0)、または移殖の3日後(D3)のうちのいずれかに、腹腔内経路を介して0.3〜0.4mgのマウスLTBR−hIgG1融合タンパク質を処置した。腫瘍移植は、基本的に記載されるように行なった9。T細胞を減損させた5×106RCS細胞を、静脈内に注射し、そして器官に播種しかつ増殖を可能にした。5〜7日後、腸間膜の、上腕のおよび腋窩のLNを解剖し、そしてそれらの重量を総体重のパーセントとして計算した。表Iは、LNのサイズが、すべての実験において減少したことを示す。脾臓のサイズはまた、3回のうち1回の実験で減少したが、脾臓重量の減少は、明らかではなかった。LN重量の減少は、1回の処置で約50%から複数回の用量で80〜90%にわたった。
【0045】
【表1】

他の実施態様において、放射性治療の適用と同時に、先立って、または引き続いてのLT経路の阻害剤の投与が所望され得る。好ましい治療は、患者の状態および処置された腫瘍のような個々の変数に基づくことが当業者には明らかである。
【0046】
阻害性の抗LTβ−R Abおよび他のLT−β−Rブロック剤を、当該分野で以前に記載された方法を用いて同定し得る(同時系属中の米国出願シリアル番号08/378,968)。
【0047】
本発明の1つの実施態様において、LTβ−Rブロック剤は可溶性LT−βレセプター分子を含む。ヒトLTβ−Rの細胞外部分の配列は、リガンド結合ドメインをコードしていることが公知である(図1を参照のこと)。図1の配列情報および当該分野で周知である組換えDNA技術を使用して、LTβ−Rリガンド結合ドメインをコードする機能的なフラグメントをベクター中にクローニングし得、そして可溶性LTβ−R分子を産生する適切な宿主において発現し得る。
【0048】
図1に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む可溶性LT−βレセプターは、1つ以上の異種のタンパク質ドメインに結合され得(「融合ドメイン」)、レセプター融合タンパク質のインビボでの安定性を増加させるか、またはその生物学的活性もしくは局在性を調節する。
【0049】
好ましくは、安定な血漿タンパク質(代表的には、循環において20時間より長い半減期を有する)は、レセプター融合タンパク質の構築に用いられる。このような血漿タンパク質は、以下を含むがそれらに限定されない:免疫グロブリン、血清アルブミン、リポタンパク質、アポリポタンパク質、およびトランスフェリン。特定の細胞または組織型に対して可溶性LTβ−R分子を標的化し得る配列をまた、LTβ−Rリガンド結合ドメインに結合させ得、特異的局在化可溶性LTβ−R融合タンパク質を作製する。
【0050】
LTβ−Rのリガンド結合ドメインを含むLTβ−R細胞外領域の全てまたは機能的な部分(図1)は、ヒトIgG1重鎖のFcドメイン様の免疫グロブリン定常領域に融合し得る(Browningら、J.Immunol.、154、33〜46頁(1995))。可溶性レセプター−IgG融合タンパク質は、好ましく、そして一般的な免疫学的薬剤であり、そしてそれらを構築する方法は、当該分野で公知である(例えば、本明細書中に参考として援用される米国特許第5,225,538号を参照のこと)。
【0051】
機能的なLTβ−Rリガンド結合ドメインは、免疫グロブリンのクラスまたはIgG1以外のサブクラス由来の免疫グロブリン(Ig)Fcドメインに融合させ得る。異なるIgのクラスまたはサブクラスに属する抗体のFcドメインは、多様な二次エフェクター機能を活性化し得る。Fcドメインが結合する場合、同種のFcによって、活性化が生じる。二次エフェクター機能は、補体系を活性化する能力、胎盤を通過する能力、および種々の微生物タンパク質に結合する能力を含む。
【0052】
LTリガンドを有する標的細胞の傷害および殺傷が有利である場合、特に活性なFcドメイン(IgG1)を選択し得、LTβ−R−Fc融合タンパク質を作製する。あるいは、補体系を誘発せずに細胞と融合するLTβ−R−Fcを標的化することが所望される場合、不活化IgG4 Fcドメインが選択され得る。
【0053】
Fcレセプターに対する結合を減少または削除するFcドメインにおける変異および補体活性化が記載される(S.Morrison、Annu.Rev.Immunol.、10、239〜65頁(1992))。これらおよび他の変異が、単独または組み合わせて用いられ得、LTβ−R−Fc融合タンパク質を構築するために用いられるFcドメインの活性を最適化する。
【0054】
レセプターIg融合タンパク質の結合点を形成する異なるアミノ酸残基は、可溶性LT−βレセプター融合タンパク質の構造、安定性および最終的な生物学的活性を変化し得る。1つ以上のアミノ酸が、選択されたLTβ−RフラグメントのC末端に添加され得、選択された融合ドメインとの結合部位を改変する。
【0055】
LTβ−R融合タンパク質のN末端はまた、選択されたLTβ−R DNAフラグメントが、組換え発現ベクターへの挿入によりその5’末端が切断される部位を変化させることによって変化され得る。各LTβ−R融合タンパク質の安定性および活性を、通常の実験法を用いて試験および最適化し得、そしてLTβ−Rブロック剤を選択するためのアッセイを明細書中に記載する。
【0056】
図1に示される細胞外ドメイン中にLTβ−Rリガンド結合ドメイン配列を用いて、アミノ酸配列改変体がまた、可溶性LT−βレセプターまたは融合タンパク質のLTリガンドについての親和性を改変するために構築され得る。本発明の可溶性LTβ−R分子は、内在性の細胞表面LT−βレセプターと結合する表面LTリガンドと競合し得る。LTリガンド結合について細胞表面LT−βレセプターと競合し得るLTβ−Rリガンド結合ドメインを含む任意の可溶性分子は、本発明の範囲内にあるLTβ−Rブロック剤であることが予想される。
【0057】
本発明の別の実施態様において、ヒトLT−βレセプター(抗LT−β−R Ab)に対して指向される抗体は、LTβ−Rブロック剤として機能する。本発明の抗LTβ−R Abは、ポリクローナルまたはモノクローナル(mAb)であり得、そしてLTβ−Rシグナル伝達をブロックするそれらの能力、それらのインビボでの生物学的利用能、安定性あるいは他の所望の形質を最適化するよう改変され得る。
【0058】
ヒトLT−βレセプターに対して指向されるポリクローナル抗体血清は、動物(例えば、ヤギ、ウサギ、ラット、ハムスターまたはマウス)にフロイント完全アジュバント中にヒトLT−βレセプターFc融合タンパク質(実施例1)と共に皮下注射することにより、通常の技術を用いて調製される。続いて、フロイント不完全アジュバントの腹腔内注射または皮下注射で追加免疫を行なう。LT−βレセプターに対して指向される所望の抗体を含むポリクローナル抗血清を、通常の免疫学的手順によりスクリーニングする。
【0059】
ヒトLT−βレセプターFc融合タンパク質に対して指向されるマウスモノクローナル抗体(mAb)を、実施例5に記載のように調製する。マウス抗ヒトLT−β−R mAb BDA8を生成するハイブリドーマ細胞株(BD.A8.AB9)を、1995年1月12日にブダペスト条約の条項に従って、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(Rockville、MD)に寄託し、そしてATCC受託番号HB11798を割合てられた。公に利用可能である上記ATCC寄託物の全ての制限を、この出願における特許の認可で確定的に取り去る。
【0060】
抗LTβ−R抗体の種々の形態はまた、標準的な組換えDNA技術を用いて作製され得る(Winter and Milstein、Nature、349、293〜99頁(1991))。例えば、「キメラ」抗体は、動物抗体由来の抗原結合ドメインが、ヒト定常ドメインに連結されるように構築され得る(例えば、Cabillyら、US4,816,567;Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、81、6851−55頁(1984))。キメラ抗体は、ヒトの臨床的処置において使用される場合、動物の抗体により誘発される観察された免疫原性応答を減少させる。
【0061】
さらに、LT−β−Rを認識する組換え「ヒト化抗体」を合成し得る。ヒト化抗体は、特定の抗原結合の原因である領域が挿入されたヒトIgG配列を主に含むキメラである(例えば、WO 94/04679)。動物を所望の抗原で免疫し、対応する抗体を単離し、そして特定の抗原の結合の原因である可変領域配列の部分を取り除く。次いで、動物由来抗原結合領域を、ヒト抗体遺伝子の適切な位置にクローニングし、抗原結合領域を削除した。ヒト化抗体は、ヒト抗体の異種(種間)配列の使用を最小化し、そして処置された被験体における免疫応答をあまり誘発しないようである。
【0062】
異なるクラスの組換え抗LT−β−R抗体の構築はまた、異なるクラスの免疫グロブリンから単離された抗LT−β−R可変ドメインおよびヒト定常ドメイン(CH1、CH2、CH3)を含むキメラまたはヒト化抗体の作製により達成され得る。例えば、抗原結合部位の結合価の増加を有する抗LT−β−R IgM抗体を、ヒトT鎖定常領域を有するベクター中の抗原結合部位にクローニングすることにより組換え的に生成し得る(Arulanandamら、J.Exp.Med.、177、1439−50頁(1993);Laneら、Eur.J.Immunol.、22、2573−78頁(1993);Trauneckerら、Nature、339、68−70頁(1989))。
【0063】
さらに、標準的な組換えDNA技術を、抗原結合部位の近傍におけるアミノ酸残基の変化によりそれらの抗原との組換え抗体の結合親和性を変化させるために用い得る。ヒト化抗体の抗原結合親和性を、分子モデルに基づく変異原性により増加させ得る(Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、86、10029−33頁(1989);WO 94/04679)。
【0064】
標的化された組織型または想定された特定の処置スケジュールに依存するLTβ−Rに対する抗LTβ−R Abの親和性を増加または減少させることが所望され得る。例えば、半予防的な処置のために、LT−β経路を通したシグナル伝達の能力の減少を伴う抗LTβ−R Abの定常レベルを有する患者を処置することは有益で有り得る。同様に、LTβ−Rに対する親和性の減少を有する阻害的抗LTβ−R Abは、短期処置のために有益で有り得る。
【0065】
(LT−β−Rブロック剤としての抗LT−β−R抗体)
LTβ−Rブロック剤として作用する抗LT−β−R抗体は、腫瘍細胞においてLTβ−R誘導細胞毒性を阻害するそれらの能力を試験することにより選択され得る。ヒトLTβレセプターに対して指向される他の抗体の試験により、ヒトにおいてLTβ−Rブロック剤として機能するさらなる抗LT−β−R抗体が、通常の試験および本明細書に記載されるアッセイを用いて同定され得ることが期待される。
【0066】
本発明の他の好ましい実施態様は、LT−β−Rブロック剤として機能するLTリガンドに対して指向される抗体を含む組成物および方法を含む。上記のような、LTβ−Rブロック剤として機能する抗LTβ−R Ab、抗LT−リガンド抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得、そしてそれらの抗原結合特性およびそれらの免疫原性を調節するために通常の手順に従って改変され得る。
【0067】
本発明の抗LT抗体は、2つのうちのいずれか1つのLTサブユニット(可溶性形態、変異体形態、変化させた形態およびキメラ形態のLTサブユニットを含む)に対して個々に産生させ得る。LTサブユニットを抗原として用いる場合、好ましくは、それらは、LT−βサブユニットである。LT−αを抗原として用いる場合、得られる抗LT−α抗体が、LTリガンド表面に結合し、そして分泌LT−αまたは調節TNF−R活性と交叉反応しないことが好ましい。
【0068】
あるいは、1つ以上のLTサブユニットを含むホモマー(LT−β)またはヘテロマー(LT−α/β)複合体に対して指向される抗体が産生され得、そしてLT−β−Rブロック剤としてのその活性についてスクリーニングされ得る。好ましくは、LT−α1/β2複合体を抗原として用いる。上記のように、得られた抗LT−α1/β2抗体が、分泌LT−a’に結合せずにかつTNF−R活性に影響することなくLTリガンド表面に結合することが好ましい。
【0069】
ポリクローナル抗ヒトLT−α抗体の産生は、出願人の同時係属出願中(WO 94/13808)に記載される。モノクローナル抗LT−αおよび抗LT−β抗体もまた、記載されている(Browningら、J.Immunol.、154、33−46頁(1995))。
【0070】
(化合物)
本発明の方法に有用な治療的化合物は、LT−βとのLT−βレセプターの相互作用をブロックし、そしてその結果、LT経路を阻害する任意の化合物を含む。詳細に意図された抗LT化合物は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体(mAb)、ならびに抗体誘導体(例えば、キメラ分子、ヒト化分子、エフェクター機能の低下を有する分子、二重特異性分子および抗体の結合体)を含む。
【0071】
本発明はまた、他の型の抗LT−βおよび抗LT−βレセプター分子(例えば、完全Fabフラグメント、F(ab’)2化合物、VH領域、FV領域、単鎖抗体(例えば、WO 96/23071を参照のこと)、ポリペプチド、ポリペプチドの融合構築物、LT−βレセプターの融合物、および小半ペプチド性化合物または非ペプチド化合物のような小分子化合物)を含み、これらは、全てLT経路を阻害し得る。
【0072】
抗体の種々の形態がまた、標準的な組換えDNA技術を用いて生成させ得る(WinterおよびMilstein、Nature 349:293−99、1991)。例えば、「キメラ」抗体は、動物抗体由来の抗原結合ドメインを、ヒト定常ドメイン(抗体は、最初は非ヒト哺乳動物由来であり、組換えDNA技術を用いて、ヒト免疫グロブリンの軽鎖または重鎖由来の対応する領域で、ヒンジおよび重鎖の定常領域のおよび/または軽鎖の定常領域の全てまたは一部を置換する)に連結するように構築され得る(例えば、Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.81:6851−55、1984を参照のこと)。キメラ抗体は、ヒト臨床処置において使用した場合、動物抗体によって誘発される免疫原性応答を減少する。
【0073】
さらに、組換え「ヒト化」抗体が合成され得る。ヒト化抗体は、最初は非ヒト哺乳動物由来の抗体であり、組換えDNA技術を用いて、ヒト免疫グロブリン軽鎖または重鎖の対応する領域に由来するアミノ酸との抗原の結合を必要としない、いくつかまたは全てのアミノ酸を置換する(キメラは、主にヒトIgG配列を含み、この配列中に特異的抗原結合の原因となる領域を挿入した)(例えば、PCT特許出願WO 94/04679を参照のこと)。動物は、所望の抗原で免疫され、対応する抗体が単離され、そして特異的抗原結合の原因となる可変領域配列の部分を除去する。次いで、動物由来の抗原結合領域を、ヒト抗体遺伝子の適切な部位にクローン化し、ヒト抗体遺伝子の抗原結合領域を削除する。ヒト化抗体は、ヒト抗体の異種(種間)配列の使用を最小化し、そして処置された被験体における免疫応答をあまり誘発しないようである。
【0074】
霊長類のまたは霊長類化した抗体がまた、本発明の方法および組成物において有用である。
【0075】
抗体フラグメントおよび一価抗体はまた、本発明の方法および組成物に用いられ得る。一価抗体は重鎖/軽鎖二量体の第2の重鎖のFc(または幹)領域への結合を含む。Fab領域とは、鎖のこれらの部分をいい、この鎖は、重鎖のY分岐部分を含む配列に対しておよび軽鎖全体に対しておおよそ等価であるかまたは類似している。そしてこの鎖は、集団で(集合体において)抗体活性を表すことを示した。Fabタンパク質は、1つの重鎖および1つの軽鎖(通常Fab’として知られる)の集合体、ならびに抗体Yの2つの分岐セグメントに対応するテトラマー(通常F(ab)2として知られる)を、集合体が特定の抗原または抗原ファミリーと選択的に反応し得る限りは、上記のいずれかが共有結合的または非共有結合的に凝集されるか否かにかかわらず含む。
【0076】
さらに、標準的な組換えDNA技術を用いて、抗原結合部位近傍においてアミノ酸残基を変化することにより、これらの抗原との組換え抗体の結合親和性を変化し得る。
【0077】
(被験体)
本発明の方法が意図される被験体は、濾胞性リンパ腫を有する。
【0078】
(投与経路)
本発明の化合物は、医学的に受容可能な任意の様式で投与され得る。これは、非経口的な経路(例えば、静脈内、脈管内、動脈内、皮下、筋肉内、腫瘍内、腹腔内、心室内、硬膜内など、ならびに経口的、経鼻的、眼的、直腸的または局所的)による注入を含み得る。蓄積注射のような手段による徐放性の投与はまた、本発明に特に含まれる。LTブロック化合物のいくつかの形態が、経口的投与に適し得、そして懸濁液または丸剤として処方され得る。
【0079】
(投薬量および処置頻度)
所定の免疫複合体病のために患者に投与される任意の特定の化合物に対する投薬の量および頻度は、多くの要因に基づいて患者担当医によってなされる判断である。一般的な投薬量が、前臨床試験および臨床試験により確立される。これらの試験は、化合物の異なる投薬量の患者での有益な効果および有害な効果を決定するための広範な実験を含む。このような推奨を作製した後でさえ、医師はしばしば種々の考慮(例えば、患者の年齢、医学的状態、体重、性別および他の医薬と併用した処置)に基づいて異なる患者のためにこれらの用量を変更する。濾胞性リンパ腫の処置に用いるための各LTブロック化合物の最適投薬量の決定は、薬学的および医療的分野の当業者にとって日常的な問題である。
【0080】
一般的に、投薬量の頻度は、主治医によって決定され、そして単回用量、または日々の反復、2〜6日間ごと、1週間ごと、2週間ごとあるいは1月ごとのいずれかであり得る。
【0081】
そのようなリンパ腫に標的化された他の薬剤とともに用いる濾胞性リンパ腫の処置のための本発明に従う組み合わせ治療は、例えば、放射線治療、化学療法または当該分野で公知の他の治療を含む。
【0082】
本発明のLTブロック化合物を、薬学的受容可能なキャリアを含み得る薬学的受容可能な組成物で患者に投与する。このようなキャリアは、ブロック化合物または他の活性な成分の効果的な活性に合致する濃度で、患者に対して相対的に非毒性および無害であるため、キャリアに起因する任意の副作用は、組成物の活性な成分の有益な効果を損なわない。この組成物は、他の適合物質を含み得;本明細書で用いたような適合性は、薬学的組成物の成分が、LTブロック化合物と、および互いに、医薬の治療的有効性を実質的に低下させる相互作用が存在しないような様式で混合させ得る。経口投与に適切な本発明の処方物を、それぞれが増強化合物(例えば、粉剤もしくは顆粒として;リポソームとして;または水溶液あるいは非水溶液(例えば、シロップ、エリキシル、乳濁液またはドラフト(draught))として)の所定量を含む個別の単位(例えば、カプセル、カシェ剤、錠剤、丸剤またはトローチ剤)で示し得る。
【0083】
本発明の組成物は、無菌状態を維持するため、適切な配給および保存の間活性成分の活性を保護するため、そして患者への投与のための組成物の簡便かつ効果的な利用可能性を提供するために適切なコンテナに提供され得る。LTブロック化合物の注射可能な処方物のために、この組成物は、針およびシリンジを用いて内容物を引き出すために適した密栓されたバイアルに提供され得る。このバイアルは、単回使用または複数回使用のいずれかを意図する。この組成物はまた、充填済みのシリンジとして供給され得る。いくつかの例において、内容物は、液体処方物中に提供されるが、他の場合では、標準的な希釈液または供給される希釈液を用いて液体状態への再構成を必要とする乾燥または凍結乾燥状態で提供される。化合物が、静脈内投与のために液体として供給される場合、化合物は静脈内投与ラインまたはカテーテルへの連結に適する滅菌バッグまたはコンテナに提供され得る。例えば、ブロック化合物が、錠剤または丸剤の形態で経口的に投与される場合において、化合物は、取り外し可能なカバーを備えたビン中に提供され得る。コンテナには、化合物の型、製造者または販売業者の名前、効能、推奨投薬量、適切な保存の説明、あるいは投与に対する説明のような情報とともにラベルが貼られ得る。
【0084】
【表2】

[配列表]
【0085】
【表3−1】

【0086】
【表3−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2010−235621(P2010−235621A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142108(P2010−142108)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【分割の表示】特願2000−529257(P2000−529257)の分割
【原出願日】平成11年1月29日(1999.1.29)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【出願人】(500350265)ニューヨーク ユニバーシティ (11)
【Fターム(参考)】