説明

リン酸アルミニウム又はポリリン酸アルニウム粒子の製造

リン酸アルミニウムとアルミン酸ナトリウムとを反応させることによって非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムに基づく顔料の製造方法を提供する。非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、2.50g/cm3未満の骨格密度、及び1より大きいリン対アルミニウムモル比によりさらに特徴づけられる。一実施態様において、本組成物は、二酸化チタンに対する代替物として塗料に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(先行関連出願)
本出願書類は、2006年8月11日に出願された米国仮出願第60/837,397号、及び2007年2月22日に出願された米国仮出願第60/903,237号に対する優先権を主張する。米国特許実務のために、両仮特許出願の内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
(発明の分野)
本明細書において、リン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、又はポリリン酸アルミニウムを含み、中空の粒子を含む組成物の製造方法を提供する。さらに、塗料中の顔料としてそのような粒子の使用を提供する。スラリー形態でのリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム及びポリリン酸アルミニウム組成物も提供する。特定の実施態様において、リン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンなどのイオンをさらに含む。
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
二酸化チタンは、後方散乱可視光に対するその強力な能力に起因する最も一般的な白色顔料であり、これは換言するとその屈折率による。二酸化チタンの代替物が探索されているが、アナターゼ及びこの酸化物のルチル形態の両方の屈折率は、構造的理由に起因して、全ての他の白色粉末の屈折率よりもかなり高い。
二酸化チタン顔料は、それが分散している被覆溶媒に不溶性である。このような二酸化チタン顔料の性能特性は、その物理的及び化学的特性を含み、顔料の粒子サイズ及びその表面の化学組成により決定される。二酸化チタンは2種類の結晶構造で市販されている:アナターゼ及びルチル。ルチル二酸化チタン顔料は、それがアナターゼ顔料よりもより効率的に光を散乱し、より安定で耐久性があるほど好ましい。チタンは、その高い屈折率に起因して光を強力に散乱し、これは、ほとんどの樹脂又は塗料組成物の屈折率とは著しく異なる。二酸化チタンの装飾的及び機能的能力はその散乱力に起因し、これが二酸化チタンを非常に望ましい顔料にしている。しかしながら、二酸化チタンは、製造に費用のかかる顔料であることが知られている。したがって、顔料として二酸化チタン対してより安価な代替物についての必要性が存在する。中空粒子でのリン酸アルミニウムの費用効率の高い製造方法についての必要性も存在する。
【発明の概要】
【0003】
(発明の要旨)
本明細書で提供するのは、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムの製造方法である。特定の実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンなどのイオンをさらに含む。一実施態様において、本製法は、リン酸を水酸化アルミニウムと反応させて、酸性リン酸アルミニウム溶液又は懸濁液を生産することを含む。本製法は、中和の工程をさらに含んでよい。中和工程は、アルミン酸ナトリウムで実行できる。
特定の実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムの製造方法は、リン酸、水酸化アルミニウム及びアルミン酸ナトリウムを反応させることを含む。
一実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムの製造方法は、酸性リン酸アルミニウム溶液をアルミン酸ナトリウムと反応させることを含む。
【0004】
一実施態様において、反応は、2工程である。第1の工程において、リン酸を水酸化アルミニウムと反応させて酸性リン酸アルミニウム溶液を生産する。
一実施態様において、リン酸アルミニウムは、水溶性リン酸アルミニウムとして製造される。特定の実施態様において、水溶性リン酸アルミニウムのpHは、約3.5未満である。特定の実施態様において、pHは、約3、2.5、2、1.5又は1である。特定の実施態様において、リン酸アルミニウムは、より高いpHで微細な固液分散液として製造される。一実施態様において、pHは、約3、4、5又は6である。
第2の工程において、第1の化学的工程からの酸性リン酸アルミニウム水溶液又は分散液をアルミン酸ナトリウムと反応させる。特定の実施態様において、アルミン酸ナトリウムは、約10より大きいpHの水溶液として使用される。一実施態様において、アルミン酸ナトリウム水溶液のpHは、約11、12又は13より大きい。一実施態様において、アルミン酸ナトリウム水溶液のpHは、約12より大きい。一実施態様において、リン酸アルミニウムは、固形沈殿物として生じる。一実施態様において、リン酸ナトリウムアルミニウムは、固形沈殿物として生じる。一実施態様において、固形リン酸アルミニウム-ナトリウムは、モル比 P/Al=0.85及びモル比 Na/Al=0.50を有する。一実施態様において、固体のリン酸アルミニウム-ナトリウムは、モル比 P/Al= 1.0及びモル比 Na/Al=0.76を有する。特定の実施態様において、他の組成比を有する分子を同製法で得ることができる。
【0005】
一実施態様において、第1の化学的工程で、固形の水和した水酸化アルミニウムをリン酸に添加する。別の実施態様において、固形の水和した水酸化アルミニウムを、精製した液体のアルミン酸ナトリウム溶液に添加して、コロイド溶液又は真溶液を形成する。別の実施態様において、第2の反応工程で、固形の水和した水酸化アルミニウムを、水中の固体又は固液懸濁液として直接添加する。特定の実施態様において、反応は、1工程で実行される。
特定の実施態様において、反応の第2の工程、すなわち、第1の化学的工程からの酸性の水性リン酸アルミニウム溶液又は分散液とアルミン酸ナトリウムとの反応を実施する反応器は、該反応物質を混合し、かつ所望の粒子サイズ分布を有する固形沈殿物を生じるための非常に高度な混合及び剪断応力性能を有する。特定の実施態様において、反応器の分散特性は、噴霧乾燥プロセスの必要性に対して調整できる。
【0006】
特定の実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンなどのイオンをさらに含む。一実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、ナトリウムをさらに含む。特定の実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、1.95〜2.50g/cm3の骨格密度で特徴づけられる。特定の実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、0.8又は1.3より大きいリン対アルミニウムモル比を有する。リン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、スラリー形態であり得る。一実施態様において、リン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは粉末形態であり、例えば、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウム粉末の粒子につき1〜4個のボイド(void)を有する。生成物の粉末形態は、10〜40nmの平均個別粒子半径サイズを含み得る。
【0007】
リン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムを塗料中の成分として、及び好ましくは二酸化チタンの(一部又は全部の)代替物として使用できる。生成物を、ニス、印刷用インク、又はプラスチック中の成分として使用することもできる。リン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムを130℃未満の温度、さらには室温で乾燥させ、10〜20水重量%を含む粉末を製造できる。
一実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムの製造方法は、通常、以下の工程を含む:リン酸を水酸化アルミニウムと配合した後、アルミン酸ナトリウムで中和する。特定の実施態様において、本製法は、生成物を、懸濁液からケークへと濾過して洗浄することをさらに含む。洗浄したケークをさらに、溶媒中に分散させてもよい。一実施態様において、本製法は、ケークを乾燥させることを含む。さらなる実施態様において、乾燥生成物を重合化する。別の実施態様において、本製法は、生成物の微粒子化の工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の実施態様の記載)
以下の記載において、用語が「約」又は「およそ」をその関連で使用するかにかかわらず、全ての数は本明細書において概数である。数は、1%、2%、5%、又は時には、10〜20%まで変化し得る。下限RL及び上限RUを有する数的範囲を開示する場合には常に、該範囲内の任意の数が具体的に開示される。特に、該範囲内の以下の数が具体的に開示される:R=RL+k*(RU-RL)(式中、kは1%の増分を有する1%〜100%の範囲にわたる変数であり、すなわち、kは、1%、2%、3%、4%、5%、・・・、50%、51%、52%、・・・、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。)。さらに、先に定義した2つのR数で定義した全ての数的範囲も具体的に開示される。
【0009】
本明細書で提供するのは、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、又はそれらの混合物を含む、リン酸アルミニウム組成物である。本明細書で使用する用語「リン酸アルミニウム」及び「リン酸アルミニウム組成物」は、リン酸アルミニウム、並びにポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、及びそれらの混合物の両方を含むことを意味する。本明細書にいう用語「ボイド」とは一般的に、用語「中空粒子」と同義的であり、本明細書において「閉じたボイド」としても記載される。ボイド(又は閉じたボイド若しくは中空粒子)は、リン酸アルミニウム混合物のコア及びシェル構造の一部である。ボイドは、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡(「TEM」又は「SEM」)のいずれかを使用して観測及び/又は特徴づけできる。TEM又はSEMの使用は、当業者に周知である。一般的には、光学顕微鏡は、光の波長により、百nm、及び通常は数百nmの範囲の解像度に制限される。TEM及びSEMはこの限定を有さず、数nmの範囲で、かなり高解像度を得ることができる。光学顕微鏡は、光波を曲げることによって焦点を合わせるための光学レンズを使用し、電子顕微鏡は、電子ビームを曲げることによって焦点を合わせる電磁性レンズを使用する。電子ビームは、解像度レベルの制御、及び生成し得る像の明瞭度の両方において、光ビームをこえる卓越した利点を提供する。走査型電子顕微鏡は透過型電子顕微鏡を補完し、サンプルの表面の三次元像を得るための手段を提供する。
【0010】
非晶質(すなわち、非結晶性)固体は、同様な組成を有するその結晶性対応物との差異を示し、そのような差異は有益な特性を生じ得る。例えば、そのような差異は、以下の1以上を含み得る:(i)非結晶性固体は、はっきりと明確な角度でX線を回折しないが、代わりに広い散乱ハローを生成し得る;(ii)非結晶性固体は、はっきりと規程される化学量論を有しないが、それゆえ広範囲の化学組成を網羅できる;(iii)化学組成のばらつきは、アルミニウムイオン及びリン酸イオン以外のイオン性構成要素の組み込みの可能性を含む;(iv)非晶質固体は熱力学的に準安定的になるにつれて、自発的な形態的、化学的及び構造的変化をする傾向を示し得る;及び、(v)結晶性粒子表面の化学組成が高度に均一であるのに対し、非晶質粒子の表面の化学組成は、急激に若しくは段階的に、大きな又は小さな差異を示し得る。さらに、結晶性固体の粒子は、周知のオストワルド熟成機構により成長する傾向があるのに対し、非結晶性粒子は、水の吸着及び脱離により膨張又は膨潤及び収縮(脱膨潤)することができ、剪断、圧縮若しくは毛管力を受ける場合に容易に変形するゲル様又はプラスチック材料を形成する。
【0011】
(非晶質リン酸アルミニウムの製造方法)
1つの態様において、 本明細書で提供するのは、独特な特性を有する非結晶性リン酸アルミニウムを生成する合成方法である。本製法は、以下の一般的工程で記載される。当業者は、特定の工程が全体で変更又は省略され得ることを認識するであろう。一実施態様において本製法の工程は:リン酸溶液、固形の水和した水酸化アルミニウム及びアルミン酸ナトリウム溶液などの本製法に使用する主な試薬の調製;スラッシングシステム(sloshing system)を備えた反応器に試薬を添加し、該プロセスの間、混合物の均質性を維持する;反応器内の試薬の添加の間における、混合物の温度及びpH、並びに反応時間の制御;懸濁液の濾過;濾過ケークに存在する不純物の洗い出し;適切な分散剤への洗浄ケークの分散;ターボドライヤー又は噴霧乾燥機での分散パルプの乾燥;該乾燥産物の1.0〜10ミクロンの平均粒度分布への微粒化;及び、焼炉でのリン酸アルミニウムの熱処理による該乾燥産物の重合;を含む。特定の実施態様において、本製法は、反応器への添加前に、リン酸溶液と硫酸アルミニウム溶液とを予め混合する工程を含む。特定の実施態様において、顔料中のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、不揮発性物質の20〜60重量%以上を有するスラリーパルプ(重力作用又は低圧ポンプ下で浮く固体の高含有量の分散)として;約10〜30%、特定の実施態様においては、10、12、15、17、20、25又は30%の湿度を有する乾燥及び微粒化リン酸アルミニウムとして;及び、焼成及び微粒化ポリリン酸アルミニウムの高分子形態で;製造及び使用できる。
【0012】
一実施態様において、非晶質リン酸アルミニウムは、リン酸と水酸化アルミニウムとの間の反応で製造される。該プロセスは、中和工程をさらに含んでよい。中和工程は、アルミン酸ナトリウムで実行できる。
特定の実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムの製造方法は、リン酸、水酸化アルミニウム及びアルミン酸ナトリウムを反応させることを含む。
一実施態様において、非晶質のリン酸ナトリウム又はポリリン酸ナトリウムの製造方法は、リン酸アルミニウムとアルミン酸ナトリウムとを反応させることを含む。
一実施態様において、反応は、2つの工程を含む。第1の工程において、リン酸を水酸化アルミニウムと反応させて、酸性pHのリン酸アルミニウムを生成する。一実施態様において、リン酸アルミニウムは、水溶性リン酸アルミニウムとして製造される。特定の実施態様において、水溶性リン酸アルミニウムのpHは、約3.5未満である。特定の実施態様において、pHは、約3、2.5、2、1.5又は1である。特定の実施態様において、リン酸アルミニウムは、より高いpHで微細な固液分散液として製造される。一実施態様において、pHは、約3、4、5又は6である。
【0013】
第2の工程において、第1の化学的工程からの酸性リン酸アルミニウム水溶液又は分散液をアルミン酸ナトリウムと反応させる。特定の実施態様において、アルミン酸ナトリウムは、約10より大きいpHの水溶液として使用される。一実施態様において、アルミン酸ナトリウム水溶液のpHは、約11、12又は13である。一実施態様において、アルミン酸ナトリウム水溶液のpHは、約12より大きい。リン酸アルミニウムナトリウムは、固形沈殿物として生じる。一実施態様において、リン酸ナトリウムアルミニウムは、固形沈殿物として生じる。一実施態様において、固形リン酸アルミニウム-ナトリウムは、モル比 P/Al=0.85及びモル比 Na/Al=0.50を有する。一実施態様において、固体のリン酸アルミニウム-ナトリウムは、モル比 P/Al=1.0及びモル比 Na/Al=0.76を有する。特定の実施態様において、他の組成比を有する分子を同製法で得ることができる。
一実施態様において、第1の化学的工程で、固形の水和した水酸化アルミニウムをリン酸に添加する。別の実施態様において、固形の水和した水酸化アルミニウムを、精製した液体のアルミン酸ナトリウム溶液に添加して、コロイド溶液を形成する。別の実施態様において、第2の反応工程で、固形の水和した水酸化アルミニウムを、水中の固体又は固液懸濁液として直接添加する。特定の実施態様において、反応は、1工程で実行される。
【0014】
特定の実施態様において、反応の第2の工程、すなわち、第1の化学的工程からの酸性の水性リン酸アルミニウム溶液又は分散液とアルミン酸ナトリウムとの反応を実施する反応器は、該反応物質を混合し、かつ所望の粒子サイズ分布を有する固形沈殿物を生じるための非常に高度な混合及び剪断応力性能を有する。特定の実施態様において、反応器の分散特性は、噴霧乾燥プロセスの必要性に対して調整できる。
特定の実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンなどのイオンをさらに含む。一実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、ナトリウムをさらに含む。特定の実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、1.95〜2.50g/cm3の骨格密度で特徴づけられる。特定の実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、1.95、2.00、2.10、2.20、2.30、2.40又は2.50g/cm3の骨格密度で特徴づけられる。特定の実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、0.8〜1.3より大きいリン対アルミニウムモル比を有する。特定の実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、0.9〜1.3より大きいリン対アルミニウムモル比を有する。特定の実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、約0.8、0.9、1.0、1.1、1.2又は1.3のリン対アルミニウムモル比を有する。特定の実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、約0.6〜1.4のナトリウム対アルミニウムモル比を有する。特定の実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、0.6、0.7、0.76、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2又は1.3のナトリウム対アルミニウムモル比を有する。リン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、スラリー形態であり得る。一実施態様において、スラリーは、約30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量% 又は60重量%の不揮発性物質成分(ASTM D280)を含む。一実施態様において、リン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは粉末形態であり、例えば、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウム粉末の粒子につき1〜4個のボイドを有する。生成物の粉末形態は、10〜40nmの平均個別粒子半径サイズを含み得る。1つの態様において、生成物の粉末形態は、10〜30nm又は10〜20nmの平均個別粒子半径サイズを含み得る。
【0015】
本明細書に提供する製法に使用するためのアルミン酸ナトリウム溶液は、当業者に既知の方法で得ることができる。一実施態様において、アルミン酸ナトリウム溶液は、ボーキサイト鉱石からのアルミナ(Al2O3)抽出におけるバイヤー法の第1工程で生じる標準的化学生成物であり、しばしば「精製ナトリウムプレグナント溶液(sodium pregnant solution)」とよばれる。この液体水性アルミン酸ナトリウム溶液は、室温で飽和し、水酸化ナトリウムNaOHで安定化される。その典型的組成は;58〜65質量%のアルミン酸ナトリウム(25〜28質量%のAl2O3)及び3.5〜5.5質量%の水酸化ナトリウム(2.5〜4質量%の遊離Na2O);である。特定の実施態様において、それは、約1.10〜2.20のモル比 Na/Al、及び低不純物を有する(ボーキサイト源による:Fe=40ppm、重金属=20ppm、並びに少量の陰イオン、Cl-及びSO42-)。特定の実施態様において、アルミン酸ナトリウム水溶液は、約1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.0、2.05、2.10、2.15又は2.2のモル比 Na/Alを有する。溶液の色は、特定の実施態様において、琥珀色である。特定の実施態様において、溶液の粘度はおよそ100cPである。特定の態様において、アルミン酸ナトリウム溶液は、研磨濾過(polishing filtration)で精製される。特定の実施態様において、アルミン酸ナトリウム溶液は、固体水酸化ナトリウム及び水酸化ナトリウムから再生される。
【0016】
固形の水和した水酸化アルミニウムは、当業者に既知の方法で得られる。一実施態様において、水酸化アルミニウムは、バイヤー法で生成された工業化学物質である。固形の水和した水酸化アルミニウムは、溶液を冷却することで達成される沈殿により、「精製アルミン酸ナトリウムプレグナント溶液」から得ることができる。一実施態様において、それゆえ生産されるアルミン酸ナトリウムは、低レベルの不純物、及び可変量の湿度(約70ppmのカチオン、約0.85質量%の塩素酸塩、及び約0.60質量%の硫酸(これらの不純物は、精製レベルの「精製アルミン酸ナトリウムプレグナント溶液」により決まる)並びに合計の水、水和及び湿度、約22.0〜23.5質量%を有する。1つの態様において、両方の原材料は、標準的第一次工業製品であり、ボーキサイト加工からのちょうど第1及び第2の工程であり、ボーキサイト加工業者によって大量に生産される(必需品)。
一実施態様において、化学反応は、リン酸アルミニウムナトリウム (Al(OH)0.7Na0.7(PO4)・1.7H2O)の形成をもたらす。リン酸アルミニウムナトリウムの形成後、6.0%〜10.0%程度の固体を含み、最高およそ45℃の温度、及び1.15〜1.25g/cm3の範囲の密度を有する懸濁液を、従来型のフィルタープレスにポンプで押し出す。フィルタープレスにおいて、液相(時に、「リカー」ともいわれる)は、固相(時に、「ケーク」ともいわれる)から分離される。およそ35〜40%の固体、特定の実施態様において、約35、40又は45%の固体を含有する湿ったケークを、洗浄サイクルの間、フィルターに維持する。
【0017】
一実施態様において、湿ったケークの洗浄はフィルターそれ自身において、2〜3つの製法工程で実施される。第1の洗浄(「置換洗浄」)において、ケークを不純にしている濾過物質の大部分が除去される。洗浄工程は、乾燥ケークの水/トンの6.0 m3の流速で、ケーク上に処理水を使用して実施する。第2の洗浄工程も、処理水で、かつ乾燥ケークの水/トンの8.0 m3の流量で実施し、混入物質を低減できる。そして最後に、水を用いて第3の洗浄工程を実行し、さらに混入物質を低減することができる。最終的に、ケークは、特定の時間、圧縮空気で飛ばすことができる。該湿潤生成物は、35%〜45%の固体を呈するであろう。
次に、この具体的実施態様において、ケーク分散液は、湿っており洗浄したフィルターケークをコンベヤーベルトでプレスフィルターから抽出し、反応器/分散器に移すような方法で加工できる。
特定の実施態様において、ケークの分散液は、ポリリン酸ナトリウム溶液などの分散剤の添加に補助される。
一実施態様において、分散工程後、固体の百分率の30%〜50%の範囲内でのリン酸アルミニウム「スラリー」を乾燥ユニットに送り出す場合、生成物をそれから乾燥させる。別の実施態様において、該材料から除去した水は、熱気流の注入を介する「ターボドライヤー」型、又はサンプルを通す80℃〜140℃の温度での「噴霧乾燥機」などの乾燥装置で実行できる。生成物の最終湿度は、好ましくは水が10%〜20%の範囲に維持されるべきである。
【0018】
特定の実施態様において、本製法の次の工程は、生成物の焼成を含む。この工程において、乾燥リン酸アルミニウムのオルトリン酸イオンは、ポリリン酸イオンへの縮合を受ける(二リン酸、三リン酸、テトラリン酸、n-リン酸であって、「n」は1より大きい任意の整数であり得、特定の実施態様において、nは4以上である。)。一実施態様において、nは10以上である。別の実施態様において、nは20以上である。一実施態様において、nは100未満である。別の実施態様において、nは50未満である。本製法工程は、噴霧乾燥機型焼成器中、500℃〜600℃の温度範囲でリン酸アルミニウムを加熱することにより実行される。重合の後、生成物をすぐに冷却し、微粒化ユニットに送ることができる。この点において、生成物の微粒化工程を実行できる。最後に、乾燥器(又は焼成器)から取り出した結果的生成物を、粉砕及び最終加工ユニットに移し、微粉器/選別器で粉化し、その粒度分布は99.5%の範囲で400メッシュ未満を維持した。
【0019】
熱処理後、リン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムを、家の塗料の組成中の白色顔料として、水に基づき、ラテックス、PVA及びアクリルフィルム中にその自己混濁特性に起因して、塗料乾燥プロセスの間に、高い光散乱能を有する中空構造を有する粒子の形成に起因して、適用できる。
そのような粒子の分散を、室温又は120℃までの空気下で乾燥させる場合、コア及びシェル構造を有するナノサイズの粒子が形成される。ナノサイズ粒子は、不規則な形状を有するミクロンサイズの凝集物への部分的融合(coalescence)を示す。そのような粒子は、分析的電子顕微鏡で観察できる。さらに、これらの粒子は、それらの内部に閉じたポア(pore)として分散する多くのボイドを含む。粒子のコアは、該粒子のそれぞれのシェルよりもより可塑性である。この現象は、加熱するとすぐのボイドの成長により証明されるが、シェルの周囲は原則的に変化しないままである。
【0020】
本明細書に記載するリン酸アルミニウム粒子は、特定の態様における改善された特性を実証する。例えば、リン酸アルミニウム粒子は、該粒子が、例えば室温、又は130℃までで乾燥される場合に、ボイドを呈する。一実施態様において、粒子は、40℃〜130℃で乾燥される。別の実施態様において、粒子は、60℃〜130℃で乾燥される。特定の実施態様において、粒子は、80℃〜120℃で乾燥される。さらに、リン酸アルミニウム粒子は、コア及びシェル構造を有する。換言すると、これらの粒子は、それらのコアとは化学的に異なるシェルを有する。この特性は、いくつかの異なる観測から証明される。第1に、透過型電子顕微鏡により測定されるプラズモン領域(10〜40eV)における粒子のエネルギーフィルター処理非弾性電子像は、ほとんどの粒子を取り囲む明るい線を示す。デジタルパルス力顕微鏡(DPFM)で実施されるナノ押入測定(nanoindentation measurement)は、粒子表面が粒子内部よりも堅いことを示す。
【0021】
特定の実施態様において、顔料中のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、20〜60重量%以上の不揮発性物質を有するスラリーパルプ(重力作用又は低圧ポンプ下で浮く固体の高含有量の分散)として製造及び使用できる。
特定の実施態様において、本明細書で提供するのは、リン酸アルミニウム粒子及び分散剤を含むスラリーである。特定の実施態様において、分散剤は、ポリリン酸ナトリウムなどのポリリン酸塩、ポリエーテル/ポリシロキサンの共重合体、又はこれらの組合せである。特定の実施態様において、スラリーは、ASTM D280に従って測定される、約25重量%〜約70重量%の不揮発性物質を含む。特定の実施態様において、スラリーは、約40重量%〜約60重量%の不揮発性物質を含む。特定の実施態様において、スラリーは、約20、30、40、45、50、55、60重量%以上の不揮発性固体を含む。特定の実施態様において、スラリーは、約50重量%の不揮発性物質を含む。
【0022】
特定の実施態様において、スラリーは、約25重量%〜約70重量%のリン酸アルミニウムを含む。特定の実施態様において、スラリーは、約40重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムを含む。特定の実施態様において、スラリーは、約20、30、40、45、50、55、60重量%以上のリン酸アルミニウムを含む。特定の実施態様において、スラリーは、約50重量%のリン酸アルミニウムを含む。
特定の実施態様において、本明細書で提供するリン酸アルミニウムスラリーは、約50cPs〜約150cPsにわたる粘度を有する。特定の実施態様において、本明細書で提供するリン酸アルミニウムスラリーは、約55cPs〜約120cPsにわたる粘度を有する。特定の実施態様において、本明細書で提供するリン酸アルミニウムスラリーは、約50cPs、70cPs、80cPs、90cPs、100cPs、110cPs又は約120cPsの粘度を有する。
【0023】
特定の実施態様において、リン酸アルミニウム顔料の粒子サイズは、光散乱を最大化するために制御される。特定の実施態様において、粒子サイズの決定は、シラスモデル1064装置(Cilas model 1064 instrument)における静的光散乱によりなされる。特定の実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、約0.1〜約0.5ミクロンの粒子サイズ分布で特徴づけられる。一実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、約0.2〜約0.6ミクロン、約0.6〜約1.0ミクロン、約1.0〜約1.5ミクロン、約1.0〜約3.0ミクロン、又は約1.60〜約3.82ミクロンの粒子サイズ分布で特徴づけられる。特定の実施態様において、本明細書で提供するリン酸アルミニウムは、ハンマーミルで、3ミクロン(d10)及び19ミクロン(d90)以内の粒子サイズに微粒化される。一実施態様において、高度に希釈し、超音波処理したサンプルの粒子サイズは、ダイナミック光散乱装置(Brookhaven ZetaPlus)で、0.1ミクロンである。
【0024】
本明細書に記載する製法に従って製造されるリン酸アルミニウム粒子は、結晶性微粒子状固体の存在下でラテックスに分散されていてもよい。フィルムがこの分散液を使用する注型物である場合、高度に不透明なフィルムが生産される。特定の実施態様において、高度に不透明なフィルムは、粒子の薄い単層の場合に生産できる。フィルムの不透明性についての実験的証明は、二酸化チタン(すなわち、TiO2)の代替物として非晶質リン酸アルミニウムを使用することにより得られる。二酸化チタンは、現在標準的な白色顔料であり、ほぼ全ての製造業者により使用され、ラテックス塗料組成物に含まれる。標準的なスチレン-アクリルラテックス塗料は、二酸化チタンの通常の添加量を使用して製造し、それを、50%の二酸化チタン添加量を非晶質リン酸アルミニウムと置換した塗料と比較した。この組成物は、2つの異なる塗料検定研究所で作成した。2つの塗料を使用して引き出されたフィルムから得られた光学測定は、リン酸アルミニウムが、該フィルムの光学特性を保持したままに、フィルムを製造する二酸化チタンに置換可能であることを実証する。
【0025】
本明細書に記載するリン酸アルミニウムは、相対的に小さい粒子サイズを有する。そのようなより小さな粒子サイズは、該粒子を、フィルム内に広範に分配させること、並びに樹脂、無機充填剤及び該粒子自身と密接に会合することを可能にし、それにより塗料が乾燥した場合に大規模なボイド形成用部位であるクラスターを形成する。本リン酸アルミニウムは、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、又は任意の他の粒子にこれまで観測されなかった範囲にまで、閉じたボイド又は中空粒子を形成する傾向を示す。いくつかの実施態様において、リン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムの粒子は、開いたポアを実質的にもたないが、いくつかの閉じたポアを含む。結果として、そのような実施態様において、マクロポア体積は、実質的に0.1cc/g未満である。
【0026】
いくつかの実施態様において、リン酸アルミニウムを使用する水性塗料フィルムの不透明化には、独自の特徴が関与する。湿潤被覆フィルムは、重合体、リン酸アルミニウム、二酸化チタン、及び充填粒子の粘性分散液である。この分散液をフィルムとして注型し乾燥させる場合、それは、標準的な塗料とは異なる挙動をする(限界顔料体積濃度、CPVCを下回る)。標準的な塗料において、低いガラス転移温度(Tg)樹脂は、室温で可塑性で、かつ融合し、それゆえ樹脂フィルムはポア及びボイドを充填する。しかしながら、リン酸アルミニウムを配合された塗料は、異なる挙動を示し得る。本明細書に記載するように、閉じたポアを形成し、フィルムの隠蔽力に寄与する。
白色顔料として使用するリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、高分子ラテックスエマルジョンなどの水性媒体中の分散剤中の二酸化チタンを置換できる。一実施態様において、リン酸アルミニウムのリン:アルミニウムのモル比0.8〜1.3の範囲である。別の実施態様において、リン酸アルミニウムのリン:アルミニウムのモル比0.8〜1.2の範囲である。一実施態様において、リン酸アルミニウムのリン:アルミニウムのモル比1.0〜1.2の範囲である。
【0027】
本明細書中の様々な実施態様に従って、顔料として、単独で、又は二酸化チタンなどの別の顔料との組合せで製造されるリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムを使用して、様々な塗料を配合できる。塗料は、1以上の顔料、及び結合剤として1以上の重合体(時に「結合重合体」ともいわれる)、並びに任意に様々な添加剤を含む。水性塗料及び非水性塗料がある。一般的には、水性塗料組成物は、4つの基本構成要素:結合剤、水性担体、顔料(群)及び添加剤(群)からなる。結合剤は、水性担体中に分散されてラテックスを形成する不揮発性樹脂材料である。水性担体を蒸発させる場合、結合剤は、水性顔料組成物の顔料粒子及び他の不揮発性成分を共に結合する塗料フィルムを形成する。水性塗料組成物を、本方法、及び米国特許第6,646,058号に開示される成分に従って修飾し、又は修飾せずに配合することができる。そのような特許の開示は、引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。本明細書の様々な実施態様に従って製造されるリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムを使用して、顔料として、単独で、又は二酸化チタンとの組合せで水性塗料を配合できる。
【0028】
一般的な塗料は、結合重合体、隠蔽顔料、並びに任意に増粘剤及び他の添加剤を含むラテックス塗料である。再び、本明細書に記載の様々な実施態様に従って製造されるリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムを使用して、顔料として、単独で、又は二酸化チタンとの組合せでラテックス塗料を配合できる。ラテックス塗料を製造するための他の成分は米国特許第6,881 ,782号及び第4,782,109号に開示され、これらは引用によりそれらの全てが本明細書に組み込まれる。説明の目的で、ラテックス塗料を製造するための適切な成分及び方法を以下に手短に説明する。
いくつかの実施態様において、適切な結合重合体は、乳化共重合化されたエチレン不飽和単量体を含み、ラウリルメタクリレート及び/若しくはステアリルメタクリレートなどの0.8%〜6%の脂肪酸アクリレート又はメタクリレートを含む。共重合化エチレン単量体の重量に基づき、高分子結合剤は、0.8%〜6%の脂肪酸メタクリレート又はアクリレートを含み、ここで好ましい組成物は、10〜22炭素原子を含む脂肪族脂肪酸鎖を有する1%〜5%の共重合化脂肪酸アクリレート又はメタクリレートを含む。一実施態様において、共重合体組成物は、共重合化脂肪酸メタクリレートに基づく。別の実施態様において、ラウリルメタクリレート及び/又はステアリルメタクリレートが使用される。一実施態様において、ラウリルメタクリレートが選択される単量体である。他の有用な脂肪酸メタクリレートには、ミリスチルメタクリレート、デシルメタクリレート、パルミチックメタクリレート、オレイックメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、セチルメタクリレート及びエイコシルメタクリレート、並びに同様の直鎖状脂肪族メタクリレートを含む。脂肪酸メタクリレート又はアクリレートは、典型的には、メタクリル酸又はアクリル酸と共反応して、少量の他の脂肪酸アクリレート又はメタクリレートを伴う主として優勢脂肪酸部分メタクリレート(dominant fatty acid moiety methacrylate)を提供する市販の脂肪油を含む。
【0029】
重合可能なエチレン不飽和単量体は、炭素-炭素不飽和を含み、ビニル単量体、アクリル単量体、アリル単量体、アクリルアミド単量体、並びにモノ-及びジカルボキシル不飽和酸を含む。ビニルエステルには、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニル酢酸イソプロピル、及び同様のビニルエステルを含み;ビニルハロゲン化物には、塩化ビニル、フッ化ビニル及び塩化ビニリデンを含み;ビニル芳香族炭化水素は、スチレン、メチルスチレン、及び同様の低級アルキルスチレン(クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン及びジビニルベンゼン)を含み;ビニル脂肪族炭化水素単量体には、エチレン、プロピレン、イソブチレン及びシクロヘキセンなどのアルファオレフィン、並びに1,3-ブタジエン、メチル-2-ブタジエン、1,3-ピペリレン、2,3ジメチルブタジエン、イソプレン、シクロヘキサン、シクロペンタジエン及びジシクロペンタジエンなどの共役ジエンを含む。ビニルアルキルエーテルには、メチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル及びイソブチルビニルエーテルを含む。アクリル単量体は、1〜12個の炭素原子を含むアルキルエステル部分を有するアクリル酸又はメタクリル酸の低級エステルなどの単量体、並びにアクリル酸及びメタクリル酸の芳香族誘導体を含む。有用なアクリル単量体は、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸、メチルアクリレート及びメタクリレート、エチルアクリレート及びメタクリレート、ブチルアクリレート及びメタクリレート、プロピルアクリレート及びメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート及びメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート及びメタクリレート、デシルアクリレート及びメタクリレート、イソデシルアクリレート及びメタクリレート、ベンジルアクリレート及びメタクリレート、並びにブチルフェニルなどの様々な反応生成物、アクリル酸及びメタクリル酸と反応するクレシルグリシジルエーテル、ヒドロキシエチル及びヒドロキシプロピルアクリレート及びメタクリレートなどのヒドロキシルアルキルアクリレート及びメタクリレート、並びにアミノアクリレート及びメタクリレート;を含む。アクリル単量体は、アクリル酸及びメタクリル酸、エタクリル酸、α-クロロアクリル酸、α-シアノアクリル酸、クロトン酸、β-アクリルオキシプロピオン酸、及びβ-スチリルアクリル酸を含む、極微量のアクリル酸を含むことができる。パイオン酸(pionic acid)及びβ-スチリルアクリル酸。
【0030】
他の実施態様において、ラテックス塗料の成分「結合重合体」として有用な重合体は、スチレン、メチルスチレン、ビニル、又はこれらの組合せから選択される単量体を含むコモノマー混合物の共重合生成物である。一実施態様において、コモノマーは、スチレン、メチルスチレン、又はこれらの組合せから選択される少なくとも40モル%の単量体、並びにアクリレート、メタクリレート、及びアクリロニトリルから選択される少なくとも10モル%の1以上の単量体を含む。別の実施態様において、アクリレート及びメタクリレートは、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート及びメチルメタクリレートなどの4〜16個の炭素原子を含む。単量体は、最終重合体が21℃を上回りかつ95℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するような比率で使用できる。一実施態様において、重合体は、少なくとも100,000の重量-平均分子量を有する。
【0031】
一実施態様において、結合重合体は、2-エチルヘキシルアクリレートに由来する内部重合単位(interpolymerized unit)を含む。別の実施態様において、結合重合体は、スチレン、メチルスチレン又はこれらの組合せに由来する50〜70モル%の単位;2-エチルヘキシルアクリレートに由来する10〜30モル%の単位;及び、メチルアクリレート、アクリロニトリル又はこれらの組合せに由来する10〜30モル%の単位;を含む重合単位を含む。
適切な結合重合体の実例は、内部重合単位が、約49モル%のスチレン、11モル%のα-メチルスチレン、22モル%の2-エチルヘキシルアクリレート、及び18モル%のメチルメタクリレートに由来し、およそ45℃のTgを有する共重合体(ICI Americas社(Bridgewater, N.J.)製Neocryl XA-6037 重合体エマルジョンとして入手可能);内部重合単位が、約51モル%のスチレン、12モル%のα-メチルスチレン、17モル%の2-エチルヘキシルアクリレート、及び19モル%のメチルメタクリレートに由来し、およそ44℃のTgを有する共重合体(S.C. Johnson & Sons社(Racine, Wis.)製Joncryl 537 重合体エマルジョンとして入手可能);及び、内部重合単位が、約54モル%のスチレン、23モル%の2-エチルヘキシルアクリレート、及び23モル%のアクリロニトリルに由来し、およそ44℃のTgである三元重合体(B.F. Goodrich社製 Carboset(商標)XPD-1468 重合体エマルジョンとして入手可能);を含む。一実施態様において、結合重合体はJoncryl(商標)537である。
【0032】
先に記載したように、本明細書に記載する様々な実施態様に従って製造されるリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、顔料として、単独で、又は別の顔料と組合せてラテックス塗料を配合するのに使用できる。
適切な追加的隠蔽顔料は、白色不透明隠蔽顔料、並びに着色有機及び無機顔料を含む。適切な白色不透明隠蔽顔料の代表例は、ルチル及びアナターゼ二酸化チタン、リトポン、硫化亜鉛、チタン酸鉛、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、鉛白、酸化亜鉛、有鉛酸化亜鉛、及びその同類、並びにこれらの混合物を含む。一実施態様において、白色有機隠蔽顔料は、ルチル二酸化チタンである、別の実施態様において、白色有機隠蔽顔料は、約0.2〜0.4ミクロンの平均粒子サイズを有するルチル二酸化チタンである。着色有機顔料の例は、フタロブルー及びハンザイエローである。着色無機顔料の例は、赤色酸化鉄、ブラウンオキシド、オーカー及びアンバーである。
最も知られたラテックス塗料は、塗料のレオロジー的特性を修飾し、よい拡延、取扱い、及び用途特質を保証する増粘剤を含む。適切な増粘剤には、非セルロース性増粘剤、一実施態様においては会合性増粘剤;別の実施態様においてはウレタン会合性増粘剤を含む。
【0033】
例えば、疎水的に修飾されたアルカリ膨潤性アクリル共重合体及び疎水的に修飾されたウレタン共重合体などの会合性増粘剤は、一般的に、例えばセルロース性増粘剤などの従来型増粘剤に比較して、エマルジョン塗料に対してよりニュートンレオロジーを与える。適切な会合性増粘剤の代表例は、ポリアクリル酸(例えば、Rohm & Haas社(Philadelphia, Pa.)製、Acrysol RM-825及びQR-708 Rheology Modifierとして入手可能)及び、活性型アタパルガイト(Attagel 40としてEngelhard社(Iselin, NJ.)から入手可能)を含む。
ラテックス-塗料フィルムは、結合重合体の融合により形成され、周囲の塗料適用温度で結合マトリクスを形成し、硬く不粘着なフィルムを形成する。凝集溶剤(Coalescing solvent)は、フィルム形成温度を低くすることによって、フィルム形成結合剤の融合を補助する。ラテックス塗料は、好ましくは凝集溶剤を含む。適切な凝集溶剤の代表例には、2-フェノキシエタノール、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジブチルフタレート、ジエチレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,1,3-ペンタンジオールモノイソブチラート及びそれらの組合せを含む。一実施態様において、凝集溶剤は、ジエチレングリコールブチルエーテル(ブチルカルビトール)(Sigma-Aldrich社、Milwaukee、Wis.から入手可能)若しくは2,2,4-トリメチル-1,1,3-ペンタンジオールモノイソブチラート(Eastman Chemical社、Kingsport、Tenn.からTexanolとして入手可能)、又はこれらの組合せである。
【0034】
凝集溶剤は、好ましくは、ラテックス塗料1リットルあたり約12〜60g若しくは約40gの凝集溶剤のレベルで、又は塗料中の重合体固体の重量に基づき約20〜30重量%で利用される。
本明細書で提供する様々な実施態様に従って配合される塗料は、塗料中に使用される従来の材料、例えば、可塑剤、消泡剤、色素増量剤、pH調整剤、色味剤(tinting color)、及び生物致死剤などをさらに含み得る。そのような典型的成分は、例えば、C. R. Martensにより編集された「塗料、ニス及びラッカーのテクノロジー(TECHNOLOGY OF PAINTS, VARNISHES AND LACQUERS)」R.E. Kreiger Publishing社, 515頁 (1974)に一覧化されている。
塗料は、通常、被覆率を上げ、費用を減らし、耐久性を獲得し、外観を変化させ、レオロジーを制御し、他の望ましい特性に影響を与える「機能的増量剤」と共に配合される。機能的増量剤の例には、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、粘土、石膏、シリカ及びタルクを含む。
【0035】
内部つや消し塗料用の最も一般的な機能的増量剤は粘度である。粘度は、それを望ましくする多くの特性を有する。安価な焼成粘土は、例えば、制御低剪断粘度において有用であり、「乾燥皮」に寄与する大きな内部表面積を有する。しかし、この表面積は、トラップ染色法も利用できる。
染色を吸収するその傾向のため、焼成粘土は、レオロジー制御に必要とされる少量のみで、例えば典型的には全増量剤顔料の約半分未満で使用するか、又は全く使用しないのが好ましい。本明細書に記載する塗料に使用するための典型的な増量剤は炭酸カルシウムであり;これは特定の実施態様において、例えば、Opacimite(ECC International, Sylacauga, Ala.から入手可能)、Supermite(Imerys, Roswell, Ga.から入手可能)、又はおよそ1.0〜1.2ミクロンの粒子サイズを有する他のものなどの極微粉砕炭酸カルシウムである。極微炭酸カルシウムは、最適に隠蔽用に二酸化チタンに間隔をあけることを助ける(例えば、K. A. Haagensonの文献「内部ラテックスつや消し塗料の隠蔽特性における増量剤粒子サイズの効果(The effect of extender particle size on the hiding properties of an interior latex flat paint)」)、American Paint & Coatings Journal, Apr. 4, 1988, 89-94頁を参照されたい。)。
【0036】
本明細書に記載する様々な実施態様に従って配合されるラテックス塗料は、従来の技術を利用して製造できる。例えば、塗料成分のいくつかは、一般的には、高剪断下で共に混合され、塗料配合物によって一般的に「グラインド(grind)」と称される混合物を形成する。この混合物の稠度は泥程度であり、これは高剪断撹拌機で成分を効率的に分散させるために望ましい。グラインドの製造の間、高い剪断エネルギーを使用して、凝集した顔料粒子をばらばらにする。
グラインドに含まれない成分は、一般的に「レットダウン(letdown)」と称される。レットダウンは、通常、グラインドよりもかなり粘性が低く、かつ、通常、グラインドを希釈して適切な稠度を有する最終塗料を得るために使用される。レットダウンを有するグラインドの最終混合は、典型的には、低剪断混合で実行される。
ほとんどの重合体ラテックスは剪断安定ではなく、それゆえ、グラインドの成分として使用されない。グラインドにおける剪断不安定なラテックスの取り込みは、該ラテックスの凝固をもたらし、フィルム形成能をもたないか又はわずかにフィルム形成能を有する塊の多い塗料を生じ得る。その結果、塗料は、一般的に、レットダウンにラテックス重合体を添加することにより製造される。しかしながら、本明細書に記載する様々な実施態様に従って配合されるいくつかの塗料は、一般的に剪断安定なラテックス重合体を含む。従って、ラテックス塗料は、いくらかの又は全てのラテックス重合体をグラインドへと取り込むことにより製造できる。一実施態様において、少なくともいくらかのラテックス重合体をグラインドに入れる。
【0037】
本製法の可能な形態の実施例を以下に記載する。さらに、当業者は、本明細書に記載する新規製法を実施するのに利用できる変法を認識するであろう。以下の実施例は、本発明の実施態様を例示するために提供する。全ての数値は概数である。数値範囲が与えられる場合、該規定範囲外の実施態様は、やはり本発明の範囲内であり得ることは理解されるべきである。それぞれの実施例に記載する具体的詳細が本発明の必要な特徴と解釈されるべきではない。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
(リン酸アルミニウム粉末の製造)
791gのリン酸(81.9重量%のH3PO4又は59.3重量%のP2O5)を、189gの水和水酸化アルミニウム(85.3重量%のAl(OH)3又は58.1重量%のAl2O3)と、210gの水中、80℃で1時間反応させ(最終モル比P/Al=2.99)、酸性リン酸アルミニウム溶液を得た。第2工程において、1155gの市販の精製アルミン酸ナトリウム溶液(9.7重量%のAl及び11.2重量%のNa又は18.3重量%のAl2O3及び15.7重量%のNa2O、最終Na/Al=1.36)を酸性リン酸アルミニウム溶液と同時に、1500gの水を充填した撹拌容器に室温で添加した。
最終反応pHは7.1であり、反応中の温度を45℃に保った。結果生じた分散液を遠心分離して(30分、2500rpm−相対遠心力:1822g)反応溶液を除いてケークを形成し、これを水で1回洗浄して(1000gの洗浄水)、27.0重量%の不揮発性成分(ASTM D 280後の無水ベースで902g)及びpH7.3を有する白い湿潤したケーク(3300g)を得た。スラリーを噴霧乾燥し、1090gのリン酸アルミニウム粉末(ca 83重量%の不揮発性成分)を生じた。
【0039】
(実施例2)
(リン酸アルミニウムスラリーの製造)
10.0gの水を250mLビーカーに添加した。800RPM(Cowles)で混合する間に、およそ1.34g(1%の不揮発性成分)のポリリン酸ナトリウムを添加した。5分後、150.0gのリン酸アルミニウムスラリー(30%不揮発性)をゆっくりと(25g/分)添加した。さらに5分後、撹拌速度を1800RPMに上げ、109.0gのリン酸アルミニウム粉末(80%不揮発性)をゆっくりと(10g/分)添加した。粉末の添加後、スラリーを1800RPMで20分間、撹拌し続けた。
【0040】
(実施例3)
(リン酸アルミニウムスラリーの製造)
72.0gの水を250mLビーカーに添加した。800RPM(Cowles)で混合する間に、およそ0.96g(1%の不揮発性成分)のポリリン酸ナトリウムを添加した。5分後、撹拌速度を1800RPMに上げ、122.0gのリン酸アルミニウム粉末(80%不揮発性)をゆっくりと(10g/分)添加した。粉末の添加後、スラリーを1800RPMで20分間、撹拌し続けた。
【0041】
(実施例4)
(リン酸アルミニウムスラリーの製造)
72.0gの水を250mLビーカーに添加した。800RPM(Cowles)で混合する間に、およそ0.96g(1%の不揮発性成分)のポリリン酸ナトリウムを添加した。5分後、撹拌速度を1800RPMに上げ、実施例1に従って噴霧乾燥機を使用して製造した122.0gのリン酸アルミニウム粉末(80%不揮発性)をゆっくりと(10g/分)添加した。粉末の添加後、スラリーを1800RPMで20分間、撹拌し続けた。
【0042】
(実施例5)
(リン酸アルミニウムスラリー用の乾燥プロセス)
27%の不揮発性成分、7.5に等しいpH、及び129s-1で114cPの粘度を含むリン酸アルミニウムスラリーを、操作条件を使用する噴霧乾燥機にかけた:
スラリー入流速:1L.h-1
送風流:50mL.min-1
120℃に加熱したカラム;及び
ノズル幅:1mm。
最終乾燥粉末の不揮発性成分は、ca. 83% (ASTM D280)であった。
【0043】
(実施例2〜4の結果)
得られたスラリーの129.1s-1(製造24時間後)での不揮発性成分及び粘度を表1に示す。
【表1】

【0044】
不揮発性成分をASTM D280に従って測定した:サンプルを110℃で2時間乾燥させた。粘度は、Viscometer Contraves Rheothermを用いて、剪断速度129.1s-1で測定した。
50%の不揮発性成分スラリーを、50%のTiO2をリン酸アルミニウムで置換した塗料を配合するために使用した。50%不揮発性成分スラリーを使用して製造した塗料の用途特性を以下に提供する:
【表2】

【0045】
言及したように、塩基性二酸化チタン水性塗料は、適切なラテックス分散液及び顔料粒子からなる。ラテックス粒子は、着色粒子で満たされた融合フィルムを製造するのに関与し、顔料はフィルムの隠蔽力に関与する。樹脂及び顔料の必要性を減少させる無機充填剤;樹脂フィルム形成を強化する融合助剤(coalescing agent);顔料及び充填剤のケーク化を防ぎ、それゆえレオロジー的な塗料特性と共に塗料の保存寿命を改善する分散剤並びにレオロジー修飾剤;などの多くの添加剤も使用される。
典型的な塗料乾燥フィルムにおいて、顔料及び充填剤粒子は、樹脂フィルム内に分散している。隠蔽力は、主に、粒子の屈折率及びサイズにより決まる。言及したように、二酸化チタンは、その大きな屈折率及び可視領域における光吸収がないので、現在における標準的な白色顔料である。いくつかの実施態様において、新規リン酸アルミニウムを配合した塗料の乾燥フィルムは、典型的な塗料乾燥フィルムとはいくつか異なる。第1に、リン酸アルミニウムを用いたフィルムは、単なる樹脂ではない。それはむしろ、メッシュ化された樹脂及びリン酸アルミニウムにより形成される。それゆえそれは、異なる特性を有する2つの相互貫通相(interpenetrating phase)を組合せたナノ複合フィルムであり、フィルムの機械的特性、並びに水及び他の侵襲剤(aggressive agent)への抵抗性について相乗的利益を達成する。第2に、良好なフィルム隠蔽力は、該フィルムが、光を散乱する大量の閉じたポアを含むので、より低い二酸化チタン含有量で得られる。さらに、二酸化チタン粒子がこれらのボイドのうちの1つに隣接する場合、それは、それがより大きな屈折率勾配に起因して、樹脂によって完全に取り込まれる場合よりもさらに多く散乱する。これは、隠蔽力に関する限り、新規リン酸アルミニウム及び二酸化チタンとの間の相乗作用を作り出す。
【0046】
標準的な塗料乾燥フィルムをリン酸アルミニウムと比較する試験において、半つや消しアクリル塗料の標準的な市販の配合物を選択し、二酸化チタンを、本明細書に記載するリン酸アルミニウム製品によって徐々に置換した。水分及び他の塗料成分を、必要に沿って調整した。この実施態様における配合物のいくつかの変更は、増粘剤/レオロジー修飾剤、分散剤、アクリル樹脂及び融合助剤の減少的使用に関連する。
本明細書に記載する製法の好ましい実施態様は、主要原材料からの2つの化学的工程のみを有し、これは1つの化学的工程のみにより実施できるリン酸アルミニウムの最終化学組成物次第である。特定の実施態様において、この化学的経路が少量のプロセス水を使用するので、水の消費は著しく減少するであろう。また、新しい化学的経路は、廃液、又は任意の化学副産物を生じない。
さらに、本明細書に記載する生成物及び製法は、市場に見出されるいくつかのリン酸アルミニウムに関連する腐食の問題がない可能性があり、リン酸鉄への酸化鉄の転換に使用できる。さらに、相対的な非結晶化度(スラリー及び粉末形態の両方)に加えて非化学量論、及び注意深く制御した乾燥粉末の含水量は、容易な膨潤制御を可能にし、これはその能力に有益である。ナノサイズの粒子は容易に分散し、沈降に対して安定であり、これが均一な塗料分散剤を可能にする。また、ナノ粒子は、毛管接着(分散液乾燥段階において)と、それに続くイオンクラスター介在性静電的接着(乾燥フィルムにおいて)の機構により、ラテックス粒子と強力に相溶性であり得、多くの場合に双連続的ネットワーク(bicontinuous network)が形成され得る。最後に、生成物も、配合水性分散剤に見出される様々なケイ酸塩、炭酸塩、及び酸化物などの塗料充填剤として一般的に使用される多くの他の微粒子状固体と強力に相溶性であり、これは塗料乾燥フィルムの接着と強度に寄与し得る。
【0047】
特定の実施態様において、この化学的経路の利点は、原材料の低減、日用品の使用、化学的工程の低減、並びに廃液及び廃棄物の除去、硫酸アルミニウム副産物の除去、排水処理の低減、固液分離の潜在的除去、並びに固体洗浄の撤廃を含む。
さらに、第2の化学的工程及び分散工程(スラリー形成)での反応は、沈殿の間、反応物質の剪断応力を制御することにより、アルミニウム-リン酸の形成の間、反応器中の粒子サイズ分布を調整する可能性を有する、ただ1つの製法単位で実行し、最終的なリン酸アルミニウムスラリーを直接的に得ることができた。
また、噴霧乾燥製法に対する懸濁液の組成物は、反応器から直接的に調節し、特定の粘度、特定のサイズ分布及び早い再溶解粉末を得ることができた。
【0048】
先に実証したように、本明細書に記載する実施態様は、非晶質リン酸アルミニウムの製造方法を提供する。また、約20〜60%の不揮発性物質を含むリン酸アルミニウムスラリーを提供する。本主題は、限られた数の実施態様に関して説明しているが、ある実施態様の具体的特徴が、本発明の他の実施態様の結果であるとされるべきではない。1つの実施態様も、本発明の全ての態様の典型ではない。いくつかの実施態様において、組成物又は方法は、本明細書で言及していない多くの化合物又は工程を含み得る。他の実施態様において、組成物又は方法は、本明細書で列挙していない任意の化合物又は工程を含まないか、あるいは実質的に存在しない。記載した実施態様からの変化及び変更が存在する。樹脂又は顔料の製造方法は、多くの行為又は工程を含むものとして記載されている。これらの工程又は行為は、他に示さなければ、任意の配列又は順序で実施できる。最後に、本明細書に記載する全ての数は、用語「約」又は「およそ」が数の記載に使用されているか否かに関わらず、概数を意味するとみなされるべきである。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲内にある全てのそれらの変更及び変化を網羅することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色顔料の製造方法であって、リン酸、水酸化アルミニウム及びアルミン酸ナトリウムを反応させることを含み、該顔料が、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムを含む、前記製造方法。
【請求項2】
白色顔料の製造方法であって、リン酸アルミニウムとアルミン酸ナトリウムとを反応させることを含み、該顔料が非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムを含む、前記製造方法。
【請求項3】
前記顔料が、1.95〜2.50g/cm3の骨格密度、及びリン対アルミニウムモル比1により特徴づけられる、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記顔料が、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムの粒子あたり1〜4個のボイドを含む、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項5】
前記アルミン酸ナトリウム溶液が、12より大きいpHの水溶液である、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項6】
前記生成物が、ケークの形態で分離される、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項7】
前記ケークの洗浄工程をさらに含む、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記ケークを分散させることをさらに含む、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記ケークを乾燥させることをさらに含む、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
前記乾燥生成物の重合化をさらに含む、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
前記生成物の微粒化をさらに含む、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
前記顔料を、二酸化チタンを含む混合物に添加することをさらに含む、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1又は2記載の製造方法によって製造される非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムを含む白色顔料。
【請求項14】
非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウム及び分散剤を含むスラリー。
【請求項15】
前記分散剤が、ポリリン酸ナトリウム、ポリエーテルとポリシロキサンとの共重合体、又はこれらの組合せから選択される、請求項14記載のスラリー。
【請求項16】
前記非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムが、1.95〜2.50g/cm3の骨格密度、及びリン対アルミニウムモル比1により特徴づけられる、請求項15記載のスラリー。
【請求項17】
前記非晶質のリン酸アルミニウムが、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウム粉末の粒子あたり1〜4個のボイドを含む、請求項14〜16のいずれか1項記載のスラリー。
【請求項18】
前記分散剤がポリリン酸ナトリウムである、請求項14記載のスラリー。
【請求項19】
前記スラリーが、ASTM D280に従って測定される約20〜60重量%の非晶質リン酸アルミニウムを含む、請求項18記載のスラリー。
【請求項20】
前記スラリーが、約50重量%の非晶質リン酸アルミニウムを含む、請求項14記載のスラリー。
【請求項21】
前記非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムが、約0.1〜約5ミクロンの粒子サイズ分布により特徴づけられる、請求項14記載のスラリー。
【請求項22】
約0.1〜約5ミクロンの粒子サイズ分布により特徴づけられる非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムを含む白色顔料。
【請求項23】
前記非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムが、約0.2〜約0.6ミクロンの粒子サイズ分布により特徴づけられる、請求項22記載の顔料。
【請求項24】
前記非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムが、約0.6〜約1.0ミクロンの粒子サイズ分布により特徴づけられる、請求項22記載の顔料。
【請求項25】
前記非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムが、約1.0〜約1.5ミクロンの粒子サイズ分布により特徴づけられる、請求項22記載の顔料。
【請求項26】
前記非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムが、約1.0〜約3.0ミクロンの粒子サイズ分布により特徴づけられる、請求項22記載の顔料。
【請求項27】
前記非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムが、約1.60〜約3.82ミクロンの粒子サイズ分布により特徴づけられる、請求項22記載の顔料。
【請求項28】
前記非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムが、1.95〜2.50g/cm3の骨格密度、及びリン対アルミニウムモル比1によりさらに特徴づけられる、請求項22記載の顔料。
【請求項29】
前記非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムがイオンをさらに含む、請求項1〜2のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項30】
前記イオンが、ナトリウム、カリウム又はリチウムである、請求項29記載の製造方法。
【請求項31】
前記イオンがナトリウムである、請求項30記載の製造方法。
【請求項32】
前記非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムがイオンをさらに含む、請求項14記載のスラリー。
【請求項33】
前記イオンがナトリウムである、請求項32記載のスラリー。
【請求項34】
前記非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムがイオンをさらに含む、請求項22記載の顔料。
【請求項35】
前記イオンがナトリウムである、請求項34記載の顔料。

【公表番号】特表2010−500266(P2010−500266A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523113(P2009−523113)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【国際出願番号】PCT/BR2007/000204
【国際公開番号】WO2008/017135
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(507061982)ブンゲ フェルチリザンテス エス.エー. (3)
【出願人】(503215446)ユニバージデード エスタデュアル デ カンピナス (5)