説明

リークテストに適した容器用キャップ構造

【課題】リークテストを行なうことができる容器用のキャップ装置を提供すること。
【解決手段】キャップ装置1は、容器3に連接する口元部10と、口元部10に螺合可能な外蓋部20とを備えている。外蓋部20には電極間距離短縮手段としての孔25を複数箇所に形成している。外蓋部20を口元部10に締結した状態で、外蓋部20側に配置した第1の電極6、容器3側に配置した第2の電極7に電圧を掛けると、第1の電極6と第2の電極7との間に、孔25を通って電流が流れる。この際、キャップ装置1のシール部にピンホールがあるとスパークが生じて洩れがあることを確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬用液が充填された医療用容器、栄養剤が充填された容器や点滴容器、又は醤油、油、酒、乳類が充填された容器、あるいは飲料用液体が充填されたペットボトル等のリークテストに適した容器用キャップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成樹脂製で形成された容器用キャップ装置は、特許文献1に示すように、内容物を充填する容器と、容器を閉塞する外蓋部とを有して構成されている。この容器用キャップ装置は、容器内の内容物が外部に漏れないようなシール構成を形成する必要があった。このシール構成を形成した容器用キャップ装置では、シール部の良否を検査するためのリークテストが行われている。
【0003】
従来の容器用キャップ装置におけるリークテストは、外蓋部を容器の口元部に係合した状態で、空気やヘリウム等の気体を容器内部に充填することによって行なわれていた。例えば、空気を充填する場合、空気を容器内に充填した後、保持状態で減圧すればピンホールありと判定し、又、ヘリウムを充填する場合には、ヘリウムを容器内に充填した後、一定時間後に部品外部でヘリウムガスを検知すればピンホールありと判定していた。この検査では、1個ごと気体充填後、時間を経て判定することから、極めて生産性が悪く、テスト作業にかなりの時間を費やすことになっていた。
【0004】
これを解決するために、短時間でリークテストを行う方法が要望されていた。例えば、その対策としては、一対の電極を配置して放電することによってリークテストを行うことが考えられる。この検査方法は、配置された一対の電極の2極間に電圧を印加することによって放電が発生する。この放電現象の電流の変化を探知器で捉えてピンホールの有無を探知するものであり、一般にピンホール検査ともいう。
【特許文献1】特開昭63−162465号公報(4〜6頁、図2〜3参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、通常、容器側の口元部に外蓋部を係合して構成する容器用キャップ装置では、図10に示すように、容器用キャップ装置30が一般にネジ結合で構成されていて、容器31の口元部32と外蓋部33とを備えている。外蓋部33に形成された螺旋突条部34が口元部32に形成された螺旋凹部321に係合又は係合解除することによって開栓閉栓可能に構成されている。この際、口元部32と外蓋部33との間にはシール部材37が配置されシール部材37を圧接させることによって内部を密閉状態にしている。
【0006】
そして、このタイプの容器用キャップ装置30で放電によるリークテストを行うとする場合、先ず、外蓋部の外部に一方の電極を配置し、容器31内に他方の電極を配置して、電圧を印加する。一方、容器31と外蓋部33とは絶縁性の材料で形成されているから、電圧が印加される際に、2極間を流れようとする電流は容器31や外蓋部33を通過せずにその間を通ることとなる。つまり、2極間を流れようとする電流の経路は、図10におけるAのように、シール構造部から外蓋部33と口元部32との間、外蓋部33の下辺から外蓋部33の外側を経由しなければならない。従って、従来のような容器用キャップ装置では、電流の通る経路が長くなることからピンホールを検知できず、リークテストの評価対象にならなかった。そのために、電極に高い電圧を印加してリークテストを行なうこともできるが、この場合は、キャップ装置30を破壊する可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、リークテストを短時間で行って生産性を高くするとともに、放電によるリークテストを行うことができる容器用キャップ構造を提供することを目的とする。そのために本発明に係るリークテストに適した容器用キャップ構造は、以下のように構成するものである。すなわち、
請求項1記載の発明では、容器側に形成された口元部と、前記口元部に外装可能な外蓋部と、を備え、前記口元部と前記外蓋部とは前記外蓋部が前記口元部に係合する際に、シール部が形成され、前記シール部のシール状態を検査するためのリークテストに適した容器用キャップ構造であって、
前記外蓋部側に配置される第1の電極と、前記口元部側に配置される第2の電極と、を備えるとともに、前記容器用キャップ装置には、前記第1の電極と前記第2の電極との間に流れる電流の通路を短縮するための電極間距離短縮手段が、配設されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、前記シール部は、前記口元部の先端周縁部と、前記外蓋部の底壁部から立ち上って形成される円環状の内壁部と、が圧接することによって形成されることを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の発明によれば、前記電極間距離短縮手段が、前記外蓋部における前記容器のシール部より外側の位置に前記外蓋部を貫通する孔が形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の発明によれば、前記電極間距離短縮手段が、前記外蓋部の側面側に形成される縦溝であり、前記縦溝が、前記外蓋部の内外を貫通して形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リークテストに適した容器用キャップ構造は、容器内に内容物を充填しない状態において、外蓋部側に第1の電極が配置され、口元部側に第2の電極が配置されている。第1の電極と第2の電極に電圧を印加する。この際、電流は、シール部にピンホールがあると2極間に配設される電極間距離短縮手段を介して2極間に流れることとなり、即座にピンホールを探知することができる。つまり、2極間に電流が流れることによってスパークを発生すると、ピンホールのあることを検知し、スパークが発生しないと、ピンホールがないことを検出する。この検査は、即座に行うことができることから生産性を向上する。また、2極間を接近させることによって、電極に大きな電圧を印加することなく検査できることから、容器又は外蓋部にかかる負担を少なくして損傷を回避することができる。
【0012】
また、このリークテストに適した容器用キャップ構造は、口元部の先端周縁部と外蓋部の内壁部を圧接することによってシール部を形成する。そして外蓋部におけるシール部より外側の位置で、例えば、外蓋部の底壁部あるいは側壁部に外蓋部の肉厚を貫通する孔を形成する。これによって、第1の電極と第2の電極との間を流れる電流は、その孔を通ることとなり、電流の通る通路を短くすることができる。この孔が電極間距離短縮手段を構成することとなって、リークテストの作業を効率化させるとともに一対の電極に大きな電圧を印加させずに済むこととなる。この、電極間距離短縮手段としては、外蓋部の底壁部に形成した孔の代わりに、外蓋部の側壁部に形成された縦溝でもよい。この縦溝は、外蓋部における側壁部の肉厚部を貫通するように形成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明のリークテストに適した容器用キャップ構造の一形態を図面に基づいて説明する。以下に説明する実施形態は、これに限定するものではない。
【0014】
実施形態のリークテストに適した容器用キャップ構造は、容器用キャップ装置(以下、キャップ装置という)に、一対の電極を備えるピンホール探知機を配設して構成されている。
【0015】
実施形態のキャップ装置は、薬用液が充填された医療用容器、栄養剤が充填された容器や点滴容器、又は醤油、油、酒、乳類が充填された容器や飲料用液体が充填されたペットボトル等の合成樹脂製で形成された容器用キャップ装置に好適に使用できるものである。
【0016】
キャップ装置1の一形態は、容器3側に連接する口元部10(図1〜2に示す)と、口元部10に外装して装着する外蓋部20(図3〜4に示す)と、で構成されている。口元部10に外蓋部20を締め付けた状態を、図5に示している。
【0017】
実施形態の口元部10は、硬質製の合成樹脂材、例えば、ポリプロピレンで形成され、容器3に連接する接続部11と接続部11の上方に連接する円環状の側壁部13とを有している。接続部11と側壁部13とは、テーパ状の座部12を間にして連接されている。また、側壁部13には、外周面に螺旋状の突条部131が形成されている。
【0018】
外蓋部20は、口元部131と同様の硬質製の合成樹脂材、例えばポリプロピレンで形成され、その一形態は、図3〜4に示すように、底壁部21と、底壁部21の外周端縁から突出する円環状の側壁部22と、側壁部22の内方で底壁部21から立ち上がって形成する内壁部23と、を備えて構成されている。側壁部22と内壁部23との間に形成される隙間24に、口元部10の側壁部13の先端部が挿入される。側壁部22の内周面には螺旋状の突条部221が形成され、口元部10の側壁部13に形成された突条部131に螺合可能に形成されている。
【0019】
そして、外蓋部20を口元部10に挿入して、それぞれの螺旋状の突条部131、221を係合させることによって、口元部10の先端部の内周面と外蓋部20の内壁部23の外周面とが圧接され、シール部28(図5参照)を構成することとなる。
【0020】
また、底壁部21には、内壁部23より外周側部位に、底壁部21の肉厚を貫通する複数の孔25が周方向に沿って形成されている。この孔25は、キャップ装置1のリークテストを行う際に、外蓋部20の外側に配置する第1の電極(後述に記載する)と容器3側に配置される第2の電極(後述に記載する)との間で電流の通過経路として形成するものであり、電極間距離短縮手段を構成することとなる。この孔25の形状は、断面真円状又は角状、あるいは楕円状でもよく、外蓋部20の底壁部21を貫通するものであればよい。
【0021】
また、電極間距離短縮手段を構成するこの孔25は、容器3と外蓋部20とのリークテストで有効に使用されることから、シール部28を通過するために、外蓋部20におけるシール部28より外周側に形成されていなければならない。例えば、実施形態では、底壁部21側に形成しているが、これに限らず、外蓋部20の側壁部22側に設けてもよい。
【0022】
さらに、外蓋部20の側壁部22に電極間距離短縮手段を形成する場合、側壁部22の肉厚を貫通する断面真円状の孔を設けてもよく、又、図6〜7に示すように、側壁部22に側壁部22の内外を貫通する縦溝222を周方向に沿って複数箇所に形成してもよい。この場合、縦溝221の長さは突条部221の上下両端を越えて形成する。これによって、外蓋部20を側壁部22の外部から見ると、縦溝222内に突条部221の一部底面が見えることとなる。
【0023】
次に、上記のように形成された外蓋部20を口元部10に装着して閉栓する状態を説明する。外蓋部20の突条部221を口元部10の突条部131に係合させて回転すると、図5に示すように、口元部10の側壁部13の先端部が、外蓋部20における側壁部22と内壁部23との間の隙間24内に挿入される。
【0024】
外蓋部20を口元部10に対して最終位置まで回転すると、口元部10における側壁部13の先端部と外蓋部20の内壁部23とは、圧接するように係合することから、その間でシール部28が構成される。従って、内容物が口元部10から容器3内に充填された場合でも、外蓋部20で閉栓することによって内容物が口元部10から外部に洩れることがない。
【0025】
次に、このキャップ装置1のリークテストを行う。リークテストは、実施形態において、「株式会社サンコウ電子研究所」製の「ピンホール探知機」を使用して行う。この探知機は、低周波高電圧パルス放電式であって、探知電圧として5〜23kV(望ましくは20kV)で使用される。また、図8に示すように、キャップ装置1においては、容器3側の袋部を溶着していない口元部10と外蓋部20だけを用い、口元部10に外蓋部20を締結した状態で行われる。
【0026】
キャップ装置1は、外蓋部20を上方にして絶縁製のシート5上に載置されている。外蓋部20の上方に、外蓋部20から間隔(約20mm以内)を開けてプラス側電極(第1の電極)6を配置し、口元部10内にマイナス電極(第2の電極)7を配置する。
【0027】
この状態で、第1の電極6及び第2の電極7に20kV程度の電圧を印加する。シール部28(図5参照)にピンホールがあれば、電流は、孔25を通りさらにそのピンホールを通って第1の電極6と第2の電極7に通じることとなり、ピンホール検知器で補足される。この場合、図9に示すように、スパークSが発生する。
【0028】
ピンホールのあるキャップ装置1は、再点検されるか又は廃棄処分され、ピンホールのないことが確認されたキャップ装置1は、次の工程で、袋部を溶着するとともに内容物を充填する。そして、加熱して殺菌・洗浄・乾燥を行ない製品となる。なお、第2電極から接続された複数の誘電部材を、キャップ装置1の口元部10内に配置させれば、上部電極6を複数のキャップ装置1上に順に近づけることによって、複数のキャップ装置1を瞬時にリークテストすることができる。
【0029】
上述のように、実施形態のキャップ装置1のリークテストは、ピンホール探知器に接続された第1の電極6と第2の電極7とをキャップ装置1を間にして配置するとともに、その状態で電流を流すだけで行うことができる。そのため、キャップ装置1にピンホールがあるかどうかのリークテストを短時間で確実に確認することができる。しかも、2極間に電流を流す際に、キャップ装置1には、外蓋部20におけるシール部28の外側に孔25を形成していることから、電極間距離短縮手段を構成することができ、リークテストを行うことができる。
【0030】
なお、キャップ装置1は、上述の形態に限定するものではない。例えば、キャップ装置1に電極間距離短縮手段が形成されているものであれば、口元部10に形成された螺旋の突条部131に軸方向に沿って縦溝を形成したものであってもよい。この縦溝の一端を、外部に通じるように形成することによって、キャップ装置1の外蓋部20を開栓した場合に、瞬時に、内部の気体を外部排出することができるとともに、口元部又は外蓋部に付着した水滴を即座に乾燥させる役目を有している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の容器用キャップ装置における一形態の口元部を示す正面図である。
【図2】図1における口元部の平面断面図である。
【図3】本発明の容器用キャップ装置における一形態の外蓋部を示す縦断面図である。
【図4】同平面図である。
【図5】本発明の容器用キャップ装置を示す一部断面図である。
【図6】本発明の別の形態の容器用キャップ装置を示す一部断面図である。
【図7】本発明の別の形態のキャップを示す正面図である。
【図8】本発明の容器用キャップ装置を使用してリークテストを行う状態を示す説明図である。
【図9】図8のリークテストにおいてスパークした状態を示す説明図である。
【図10】従来の容器用キャップ装置を示す一部断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1、キャップ装置
3、容器
6、第1の電極
7、第2の電極
10、口元部
13、側壁部
131、突条部
20、外蓋部
22、側壁部
221、突条部
28、シール部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器側に形成された口元部と、前記口元部に外装可能な外蓋部と、を備え、前記口元部と前記外蓋部とは前記外蓋部が前記口元部に係合する際に、シール部が形成され、前記シール部のシール状態を検査するためのリークテストに適した容器用キャップ構造であって、
前記外蓋部側に配置される第1の電極と、前記口元部側に配置される第2の電極と、を備えるとともに、前記容器用キャップ装置には、前記第1の電極と前記第2の電極との間に流れる電流の通路を短縮するための電極間距離短縮手段が、配設されていることを特徴とするリークテストに適した容器用キャップ構造。
【請求項2】
前記シール部は、前記口元部の先端周縁部と、前記外蓋部の底壁部から立ち上って形成される円環状の内壁部と、が圧接することによって形成されることを特徴とする請求項1記載のリークテストに適した容器用キャップ構造。
【請求項3】
前記電極間距離短縮手段が、前記外蓋部における前記容器のシール部より外側の位置に前記外蓋部を貫通する孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のリークテストに適した容器用キャップ構造。
【請求項4】
前記電極間距離短縮手段が、前記外蓋部の側面側に形成される縦溝であり、前記縦溝が、前記外蓋部の内外を貫通して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のリークテストに適した容器用キャップ構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−145409(P2007−145409A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345923(P2005−345923)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(507047908)
【Fターム(参考)】