説明

リーダライタ装置

【課題】リーダライタ装置の受信部において、トランジスタ等の構成部品の特性のバラツキがあってもICカードからの受信信号を正常に復調できるリーダライタ装置の受信回路を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のリーダライタ装置20は、第1の増幅器16aから出力される信号のバイアス電圧を調整する第1のバイアス調整部21a及び第2の増幅器16bから出力される信号の第2のバイアス調整部21bからなるバイアス調整部21と、第1の増幅器16aから出力される信号の直流成分の電圧を検出する第1の直流検出部22a及び第2の増幅器16bから出力される信号の直流成分の電圧を検出する第2の直流検出部22bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードに対し非接触でデータの読み書きを行なうリーダライタ装置に関するものであって、特にその受信回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から自動改札機などにおいて、ICカードとリーダライタ装置からなるICカード通信システムが実用化されている。
【0003】
このようなICカード通信システムにおける通信は、電磁結合により行なわれ、リーダライタ装置の受信部は、図3に示されるように、アンテナ1により受信した変調波を検波する検波器2と、検波器2からの信号のノイズを除去するフィルタ3と、フィルタ3からの信号を増幅する増幅器4とを備え、更に増幅器4の出力を比較器7で比較処理することにより復調する(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、リーダライタ装置の中には、マイコン、メモリなどを備えた制御部や端末とのインターフェース部などを備えており、複雑な回路構成であるため、内部で発生する同相ノイズも除去するような受信部を備えたものもある。
【0005】
図4は、このようなリーダライタ装置の受信部を示すブロック図である。
【0006】
図4において、受信部10は、アンテナ11で受信されたICカードからの受信搬送波を整流する整流部12と、整流部12からの信号を検波する第1の検波部14a及び整流部12からの信号をπラジアン位相シフトし検波する第2の検波部14bとからなる検波部14と、第1の検波部14aから出力された信号を増幅する第1の増幅器16a及び第2の検波部14bから出力された信号を増幅する第2の増幅器16bとからなる増幅部16と、第1の増幅器16aからの信号と第2の増幅器16bからの信号を比較する比較部18とを備えている。
【0007】
また、アンテナ11で受信した受信信号1a、整流部出力2a、2b、第1の検波部14aの出力3a、第2の検波部14bの出力3b、第1の増幅器16aの出力4a、第2の増幅器16bの出力4b、比較部18の出力5aの信号波形は、図5に示すようになる。
【0008】
以上の構成により、外部から進入するノイズは、第1の検波部14a及び第2の検波部14bで除去され、リーダライタ装置の内部で発生する同相ノイズは、πラジアン位相シフトした2つの信号を比較部18を通すことにより除去される。
【特許文献1】特開2001−103101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、第1の増幅器16aと第2の増幅器16bを構成するトランジスタ等の個々の部品の特性のバラツキや周囲温度などの環境の変化により、各増幅器のバイアス電圧に差が生じ、比較部18の出力が図6に示すようにHレベル(又は、Lレベル)になってしまい、正常に復調されないことという課題があることがわかった。
【0010】
本発明は、前記課題に鑑みなされたもので、部品の特性のバラツキがあっても正常に復調することができるリーダライタ装置の受信回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明は、ICカードからの信号を位相差がπラジアンとなるような2系統の信号に検波する検波部と、前記検波部で検波された前記2系統の信号を増幅する増幅部と、前記増幅部で増幅された前記2系統の信号を比較する比較部とを備えたリーダライタ装置であって、
前記増幅部の出力の直流信号レベルを検出する直流検出部と、
前記直流検出部の検出値に基づき、前記増幅部のバイアス電圧を所望の値に調整するバイアス調整部と、を備えている。
【0012】
係る構成によれば、受信回路を構成する部品の特性のバラツキなどによる増幅部の出力信号のずれを調整することができるため、ICカードからの受信信号から正確に受信データを得ることができる。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、ICカードからの信号を位相差がπラジアンとなるような2系統の信号に検波する検波部と、前記検波部で検波された前記2系統の信号を増幅する増幅部と、前記増幅部で増幅された前記2系統の信号を比較する比較部を備えたリーダライタ装置であって、
前記増幅部の出力の直流信号レベルを検出する直流検出部と、
前記直流検出部の検出値に基づき、前記増幅部のバイアス電圧を所望の値に調整するバイアス調整部と、
を備え、前記ICカードにコマンドを送信する前に前記バイアス電圧の調整を行う。
【0014】
係る構成によれば、受信回路を構成する部品の特性のバラツキなどによる増幅部の出力信号のずれをコマンドなどのデータ送受信を行なう前に調整することができ、効率が良い。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明のリーダライタ装置によれば、内部構成部品の特性のバラツキが発生してもICカードからの受信信号を確実に復調することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0017】
なお、図を説明するにあたり、従来と同一構成には、同一符号を付し、説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明のリーダライタ装置の内部構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示されるように、本発明のリーダライタ装置20は、第1の増幅器16aから出力される信号のバイアス電圧を調整する第1のバイアス調整部21a及び第2の増幅器16bから出力される信号の第2のバイアス調整部21bからなるバイアス調整部21と、第1の増幅器16aから出力される信号の直流成分の電圧を検出する第1の直流検出部22a及び第2の増幅器16bから出力される信号の直流成分の電圧を検出する第2の直流検出部22bと、増幅部16からの出力を直流検出部22又は比較部18に切り換えるためのスイッチ27と、マイコン及びメモリ等を備え各部の制御を行なう制御部25とを備えている。
【0020】
ここで、第1の直流検出部22a及び第2の直流検出部22bは、A/D変換により信号の直流電圧を検出し、検出値を制御部25に通知する。
【0021】
以上の構成により、制御部25は、直流検出部22の検出値を基に増幅部16からのバイアス電圧をバイアス調整部21により所望の値になるように制御する。
【0022】
次に、バイアス電圧の調整方法について、図2のフローチャートを基に詳細に説明する。
【0023】
まず、スイッチ27を直流検出部22側に切り換える(ステップS1)。
【0024】
次に、増幅部16の直流成分の電圧を読み出す(ステップS2)。
【0025】
次に、ステップS2で読み出した電圧が予め設定されたバイアス電圧の設定条件範囲内であるかどうかを判定する(ステップS3)。
【0026】
ステップS3の判定の結果、設定条件の範囲外のときは、バイアス調整部21を制御し(ステップS4)、ステップS2に戻る。
【0027】
ステップS3の判定の結果、設定条件の範囲内のときは、第1のバイアス調整部21a及び第2のバイアス調整部21bの設定条件と、第1の増幅器16aの出力及び第2の増幅器16bの出力の読み出し値を記録する(ステップS5)。
【0028】
次に、バイアス設定条件範囲内で更に良い条件に再設定することが可能かどうかを判定するため、第1のバイアス調整部21a及び第2のバイアス調整部21bを制御するとともに、第1の直流検出部22a及び第2の直流検出部22bにより、第1の増幅器16aの出力及び第2の増幅器16bの出力の直流成分の電圧を読み出す(ステップS6)。
【0029】
次に、ステップS6において、読み出された電圧が、バイアス電圧の設定条件の範囲内か判定する(ステップS7)。
【0030】
ステップS7の判定の結果、範囲内で有る場合、更に第1の増幅器16aの出力及び第2の増幅器16bの出力の読み出し値が、設定変更前と比較し、良化しているか判定する(ステップS8)。
【0031】
ステップS8の判定の結果、良化していない場合、ステップS5において記録した設定条件に第1のバイアス調整部21a及び第2のバイアス調整部21bを制御し、スイッチ27を比較部18側に切り換え調整を終了する(ステップS9)。
【0032】
ステップS8の判定の結果、良化している場合、再度ステップS5から処理を行なう。
【0033】
また、ステップS7の判定の結果、範囲外である場合、ステップS5において記録した設定条件に第1のバイアス調整部21a及び第2のバイアス調整部21bを制御し、スイッチ27を比較部18側に切り換え調整を終了する(ステップS9)。
【0034】
以上説明した調整を行なうことにより、図5に示すような、第1の増幅器16aと第2の増幅器16bとのバイアス電圧の差を最適にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、ICカードに対し非接触でデータの読み書きを行なうリーダライタ装置の受信回路に有用な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のリーダライタ装置の内部構成を示すブロック図
【図2】本発明のリーダライタ装置のバイアス調整方法のフローチャート
【図3】従来のリーダライタ装置の受信部のブロック図
【図4】従来のリーダライタ装置の受信部のブロック図
【図5】従来のリーダライタ装置の正常な場合の信号波形を示す図
【図6】従来のリーダライタ装置の異常な場合の信号波形を示す図
【符号の説明】
【0037】
1、11 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードからの信号を整流する整流部と、前記整流部からの信号を位相差がπラジアンとなるような2系統の信号に検波する検波部と、前記検波部で検波された前記2系統の信号を増幅する増幅部と、前記増幅部で増幅された前記2系統の信号を比較する比較部を備えたリーダライタ装置において、
前記増幅部の出力の直流信号レベルを検出する直流検出部と、
前記直流検出部の検出値に基づき、前記増幅部のバイアス電圧を所望の値に調整するバイアス調整部と、
を備えたことを特徴とするリーダライタ装置。
【請求項2】
ICカードからの信号を整流する整流部と、前記整流部からの信号を位相差がπラジアンとなるような2系統の信号に検波する検波部と、前記検波部で検波された前記2系統の信号を増幅する増幅部と、前記増幅部で増幅された前記2系統の信号を比較する比較部を備えたリーダライタ装置において、
前記増幅部の出力の直流信号レベルを検出する直流検出部と、
前記直流検出部の検出値に基づき、前記増幅部のバイアス電圧を所望の値に調整するバイアス調整部と、
を備え、前記バイアス電圧の調整は、前記ICカードにコマンドに送信される前に前記バイアス電圧の調整を行うことを特徴とするリーダライタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−26142(P2007−26142A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208104(P2005−208104)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】