説明

リードフレーム、及びそれを用いた下面電極型固体電解コンデンサの製造方法、並びにそれにより製造された下面電極型固体電解コンデンサ

【課題】陽極及び陰極の間の電流経路距離が短かく、高周波帯域での表皮効果が大きくてコンデンサ全体のESL及びESRを十分に低値にし得る構造のリードフレームを用いて製造された下面電極型固体電解コンデンサを提供すること。
【解決手段】このコンデンサでは、陽極端子形成部21に対向して設けられた陰極端子形成部22について、陰極端子及びコンデンサ素子11を導電性接着剤により接続するための接続範囲がコンデンサ素子11の陽極リード線埋め込み面部分にあっての接続端面を基準面として陰極側部分から基準面側寄り部分に延在する構造のリードフレームを用いることにより、陰極端子が陽極端子側に延在して実装面で露呈されるものとした上、リードフレームに接続したコンデンサ素子11を外装樹脂19でモールド成形した後、陽極側切断面23a,陰極側切断面23bに沿って切断してリードフレームから分離されたチップ体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として基板実装側に直接引き出される電極を有する下面電極型固体電解コンデンサの作製に用いられる端子形成用のリードフレーム、及びそれを用いた下面電極型固体電解コンデンサの製造方法、並びにそれにより製造された下面電極型固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンタルやニオブ等を弁作用金属に用いた固体電解コンデンサは、小型で静電容量が大きく、周波数特性に優れることにより、CPUのデカップリング回路や電源回路等に広く使用されている。又、携帯型電子機器の発展に伴い、特に高周波帯域におけるコンデンサ全体のESR(等価直列抵抗)及びESL(インダクタンス成分)が小さく、基板実装側に直接引き出される電極を有する下面電極型固体電解コンデンサの製品化が進んでいる。
【0003】
このような下面電極型固体電解コンデンサとしては、対向配備された陽極片及び陰極片の下端部を連結片により繋いだケースを設け、両極片間に電気的に接続されるようにコンデンサ素子を配備してから両極片間を合成樹脂で被覆した後、連結片を研磨又は削除して陽極片と陰極片とを電気的に分離すると共に、両極片の回路基板との対向部分を露出させて製造されたもの(特許文献1参照)、陰極端子に対して、外装樹脂から露出している陰極露出部が同一平面に少なくとも2箇所設けられている構造のもの(特許文献2参照)等が挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−133177号公報(要約、図1)
【特許文献2】特開2004−349270号公報(要約、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1及び特許文献2に係る下面電極型固体電解コンデンサの場合、それらの電極端子構造の技術によると、陽極及び陰極の間の電流経路距離やコンデンサ素子から回路基板までの導電経路距離がかなり長くなってしまうため、高周波帯域における表皮効果が小さくなる上、コンデンサ全体のESR(等価直列抵抗)及びESL(インダクタンス成分)が想到に大きくなってしまうことにより、高周波帯域での表皮効果が大きくてコンデンサ全体のESL及びESRを十分に低値にできないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、陽極及び陰極の間の電流経路距離が短かく、高周波帯域での表皮効果が大きくてコンデンサ全体のESL及びESRを十分に低値にし得る構造のリードフレーム、及びそれを用いた下面電極型固体電解コンデンサの製造方法、並びにそれにより製造された下面電極型固体電解コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、基板実装側に直接引き出される電極を有する下面電極型固体電解コンデンサの作製に用いられる端子形成用のリードフレームにおいて、陽極端子を形成するための陽極端子形成部と陰極端子を形成するための陰極端子形成部とが対向して設けられ、陽極端子形成部には一部分を実装面と垂直な方向に変形させて該実装面側では凹部となり、且つ該実装面と逆側では凸部となる凹凸部が形成され、凹部にはめっき処理が施され、凸部には実装面に平行で溶接台となる平坦部と該平坦部に繋がって該平坦部から離れるにつれて該実装面に近付くように傾いた傾斜部とが形成され、陰極端子及びコンデンサ素子を導電性接着剤により接続するための接続範囲が該コンデンサ素子の陽極リード線埋め込み面部分にあっての接続端面を基準面として陰極側部分から該基準面側寄り部分に延在して位置されたリードフレームが得られる。
【0008】
又、本発明によれば、上記リードフレームにおいて、陰極端子は、陰極側部分から基準面側寄り部分に延在する接続範囲に応じて実装面において一部又は全部を露呈するように導電性接着剤により接続されるものであるリードフレームが得られる。
【0009】
更に、本発明によれば、上記何れかのリードフレームにおいて、凹凸部は、絞り加工又はコイニング加工により形成されたリードフレームが得られる。
【0010】
加えて、本発明によれば、上記何れか一つのリードフレームにおいて、凹部にあっての実装面に平行な断面形状は、多角形状又は少なくとも1辺を直線とする形状であるリードフレームが得られる。
【0011】
一方、本発明によれば、上記何れか一つのリードフレームにおいて、凸部にあっての実装面と略垂直な面には、該実装面と平行な方向へ向けられて該実装面から離れた位置にある突起部又は切り欠き部が設けられたリードフレームが得られる。
【0012】
他方、本発明によれば、上記何れか一つのリードフレームにおいて、陽極端子形成部,陰極端子形成部には、それぞれ陽極端子,陰極端子を成すためにAg,Au,Cu,Pd,Snの少なくとも1つを含む膜が形成されたリードフレームが得られる。
【0013】
又、本発明によれば、上記何れか一つのリードフレームにおいて、陽極端子形成部,陰極端子形成部にあってのフレーム厚み方向の表面には、それぞれ陽極端子,陰極端子を成すためにAg,Au,Cu,Pd,Snの少なくとも1つを含む膜が形成されたリードフレームが得られる。
【0014】
更に、本発明によれば、上記何れか一つのリードフレームを用いた下面電極型固体電解コンデンサの製造方法であって、リードフレーム上にコンデンサ素子を接合するコンデンサ接合工程と、コンデンサ素子及びリードフレームを外装樹脂でモールド成形する樹脂モールド工程と、凹部のめっき面の1つに沿って該めっき面の1つを残しながらリードフレーム,コンデンサ素子の持つ陽極リード線,及び外装樹脂を切断して製品の側面となる外表面を形成する外表面形成工程とを含む下面電極型固体電解コンデンサの製造方法が得られる。この下面電極型固体電解コンデンサの製造方法において、コンデンサ接合工程では、陽極端子形成部にコンデンサ素子を接合すると共に、該接合に先立って該陽極端子形成部の一部に絶縁性の樹脂を塗布することが好ましい。
【0015】
加えて、本発明によれば、上記何れかの下面電極型固体電解コンデンサの製造方法により製造された下面電極型固体電解コンデンサであって、コンデンサ素子は、陽極リード線が導出された弁作用金属から成る多孔質の焼結体の表面に誘電体層,電解質層,陰極層を順次形成して成るもので、陽極端子形成部に形成される陽極端子は、陽極リード線に一端が接続されると共に、他端が外部接続端子として供されるもので、陰極端子形成部に形成される陰極端子は、コンデンサ素子にあっての陰極層に一端が接続されると共に、他端が外部接続端子として供されるもので、外装樹脂は、コンデンサ素子を覆うと共に、陽極端子及び陰極端子の基板に対する実装面及び該実装面と略垂直な外側面に露出面を有するように外装されるものである下面電極型固体電解コンデンサが得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のリードフレームの場合、陰極端子及びコンデンサ素子を導電性接着剤により接続するための接続範囲(陰極端子形成部の配置)がコンデンサ素子の陽極リード線埋め込み面部分にあっての接続端面を基準面として陰極側部分から基準面側寄り部分に延在して位置され、陰極端子が陰極側部分から基準面側寄り部分に延在する接続範囲に応じて実装面において一部又は全部を露呈するように導電性接着剤により接続される構造(即ち、陰極端子が陽極端子側に延在して実装面で露呈する構造)としているため、陰極及び陽極間の電流経路が短くなり、高周波帯域での表皮効果が大きくなってコンデンサ全体のESL,ESRを小さくすることができるようになる。又、係るリードフレームでは、高周波帯域での表皮効果によりめっきが電流経路となることを考慮して電気抵抗の低いめっきを選定すると共に、陽極及び陰極間の電流経路の一部である陰極端子と陽極端子との厚み方向については形状を整えるために切断する場合、切断加工後に電極端子形成部の凹部にめっき面が残るように切断してESLを下げられる構造としているため、結果として陽極及び陰極間の電流経路を短くした上で十分に低ESL化が図られるようになる。従って、係るリードフレームを用いた下面電極型固体電解コンデンサの製造方法では、高周波帯域での表皮効果が大きくなってコンデンサ全体のESL,ESRを低値化し得る信頼性に優れた下面電極型固体電解コンデンサを生産性良く提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
最初に、本発明のリードフレーム、及びそれを用いた下面電極型固体電解コンデンサの製造方法、並びにそれにより製造された下面電極型固体電解コンデンサの説明に先立って、本発明の前提的技術に係る下面電極型固体電解コンデンサについて説明する。
【0018】
本出願人は、本発明の前提的技術に関連する下面電極型固体電解コンデンサとして、特願2004−002180号,特願2004−358094号,及び特願2004−358095号等による提案を行っている。
【0019】
図4は、本発明の前提的技術に係る下面電極型固体電解コンデンサの基本構造(特願2004−358095号として提案された構造のもの)を例示したものであり、同図(a)は陽極側からの側面図に関するもの,同図(b)は正面側からの内部を透視した正面図に関するもの,同図(c)は陰極側からの側面図に関するものである。
【0020】
この下面電極型固体電解コンデンサは、リードフレームを適用することにより、陽極リード線72が導出された弁作用金属から成る多孔質の焼結体の表面に誘電体層,電解質層,陰極層を順次形成して成るコンデンサ素子71に対し、陽極リード線72に一端が接続され、他端が外部接続端子として供される下面電極型の陽極端子73を陽極端子形成部に設けると共に、並びにコンデンサ素子71にあっての陰極層に一端が接続され、他端が外部接続端子として供される下面電極型の陰極端子74を陰極端子形成部に設け、更にコンデンサ素子71を覆うように外装樹脂99により陽極端子73及び陰極端子74の基板に対する実装面及びその実装面と略垂直な外側面に露出面を有するように外装したものである。
【0021】
但し、ここでの陽極端子73は予め一部に絶縁樹脂77が塗布された陽極端子形成部に形成されたもので、陰極端子74は導電性接着剤80を用いてコンデンサ素子71と接続できるように陰極端子形成部に形成されたもので、陽極側にはめっき処理されたフィレット面76a、陰極側にはめっき処理されたフィレット面76bが露呈されている。尚、図4(a)には略コ字形の陽極端子切断面79、図4(c)には陰極端子切断面78を示す他、図4(b)には長手方向の一端面,他端面で内面をめっき処理した凹部の一面が陽極側フィレット面76a,陰極側フィレット面76bとなる様子を示している。尚、長手方向の一端面で露呈する陽極側突起部25a、並びに他端面で露呈する陰極側突起部25bは、外装樹脂99内へのアンカー効果を得るための端子として設けられている。
【0022】
図5は、この下面電極型固体電解コンデンサに備えられるリードフレームに対してコンデンサ素子71を接合して外装樹脂99でモールド成形した切断前状態を正面側から内部を透視して示した正面図である。
【0023】
ここでは、係る下面電極型固体電解コンデンサの製造工程として、先ず所定形状の平面状のリードフレームの成形加工を行い、リードフレームにおける陽極端子73を形成するための陽極端子形成部81を設けて陽極端子73と陽極リード線72との接続性確保のための陽極接合部の絞り加工又は潰し加工を経て凹凸部を形成する陽極端子凹凸部の傾斜加工、並びに陰極端子74を形成するための陰極端子形成部82を設けるために陰極接合部の絞り加工又は潰し加工を経て凹凸部を形成する陰極端子凹凸部の加工を含む電極形成用の凹凸加工を行った後、リードフレームのめっき処理、並びにコンデンサ素子71をリードフレームへ接合固定するコンデンサ素子71の接合固定処理を実行し、更に外装樹脂99によるモールド成形を行ってから外装樹脂99とリードフレームとの陽極側切断面83a,陰極側切断面83b(陽極側フィレット面用凹部84a,陰極側フィレット面用凹部84bの外方付近に位置する)に沿った切断処理を要するものである。但し、リードフレームのめっき処理については、リードフレームの成形加工及び電極端子形成用の凹凸加工を経た時点でめっき層が残る場合には、コスト対策としてリードフレームの成形加工の前に予め実施してするようにしても良い。
【0024】
何れにしても、リードフレームにコンデンサ素子71を接合して外装樹脂99でモールド成形した状態では、陽極端子形成部81,陰極端子形成部82が形成され、陽極側フィレット面用凹部84a,陰極側フィレット面用凹部84bが陽極側切断面83a,陰極側切断面83bに沿った切断処理を行ってチップ体を得ることにより、切断後にフィレット面となる。ここでは、陽極端子形成部81,陰極端子形成部82において、めっき処理された凹部を設けるようにすることにより、切断後にめっき処理を行う工程が不要となることを特色としている。
【0025】
しかしながら、図4(b)を参照すれば、この前提的技術に係る構造のように、陰極端子74及びコンデンサ素子71を導電性接着剤80により接続するための接続範囲がコンデンサ素子71の陽極リード線埋め込み面部分にあっての接続端面を基準位置17として陰極側寄り部分の位置のみに存在し、陰極端子74が陰極側寄り部分に存在する接続範囲に応じて実装面において一部が露呈するように導電性接着剤80により接続される構造(換言すれば陰極端子74が基準位置17側寄りには存在せずに基準位置17側寄りの実装面において露呈しない構造)であれば、陽極及び陰極間の電流経路の距離が長くなって高周波帯域でのコンデンサ全体のESL及びESRが大きくなってしまう。即ち、本出願人により提案された前提的技術に係る下面電極型固体電解コンデンサの場合、何れにおいても電極端子構造により、コンデンサ素子71から回路基板までの電流経路が長くなってしまうため、特許文献1や特許文献2の場合と同様に高周波帯域での表皮効果が小さく、コンデンサ全体のESR及びESLが大きくなってしまうという欠点がある。
【0026】
そこで、本発明の最良の形態に係るリードフレームでは、基板実装側に直接引き出される電極を有する下面電極型固体電解コンデンサの作製に用いられる端子形成用の基本構造のものにおいて、陽極端子を形成するための陽極端子形成部と陰極端子を形成するための陰極端子形成部とが対向して設けられ、陽極端子形成部には一部分を実装面と垂直な方向に変形させて実装面側では凹部となり、且つ実装面と逆側では凸部となる凹凸部が形成され、凹部にはめっき処理が施され、凸部には実装面に平行で溶接台となる平坦部と平坦部に繋がって平坦部から離れるにつれて実装面に近付くように傾いた傾斜部とが形成され、陰極端子及びコンデンサ素子を導電性接着剤により接続するための接続範囲(即ち、陰極端子形成部の配置)がコンデンサ素子の陽極リード線埋め込み面部分にあっての接続端面を基準位置として陰極側部分から基準位置側寄り部分に延在して位置された構造としている。但し、このリードフレームでは、陰極端子が陰極側部分から基準位置側寄り部分に延在する接続範囲に応じて実装面において一部又は全部を露呈するように導電性接着剤により接続される構造とすることが好ましい。このようなリードフレームの基本構造によれば、陰極及び陽極間の電流経路が短くなり、高周波帯域での表皮効果が大きくなってコンデンサ全体のESL,ESRが十分に低値になる。
【0027】
その他、凹凸部は、絞り加工又はコイニング加工により形成することができ、傾斜部は潰し加工によっても形成することができる。又、凹部にあっての実装面に平行な断面形状は、多角形状又は少なくとも1辺を直線とする形状であることが好ましい。このような凹部の形状であれば、チップをリードフレームから分離するための切断が容易になる。
【0028】
更に、凸部にあっての実装面と略垂直な面には、実装面と平行な方向へ向けられて実装面から離れた位置にある突起部又は切り欠き部が設けられることが好ましい。このように凸部に突起部又は切り欠き部が設けられると、外装樹脂へのアンカーとなって固着力が高まる。
【0029】
加えて、陽極端子形成部,陰極端子形成部には、それぞれ陽極端子,陰極端子を成すためにAg,Au,Cu,Pd,Snの少なくとも1つを含む膜が形成されたものとすることが好ましく、更に陽極端子形成部,陰極端子形成部にあってのフレーム厚み方向の表面にはそれぞれ陽極端子,陰極端子を成すためにAg,Au,Cu,Pd,Snの少なくとも1つを含む膜が形成されたものとすることも好ましい。このように陽極端子形成部,陰極端子形成部にAg,Au,Cu,Pd,Snの少なくとも1つを含む膜が形成された構造とすると、界面での半田等との接合力が高まる。特に高周波帯域の電流経路は、ρを抵抗率,fを周波数,μを透磁率とした場合、表皮効果の深さδがδ=(ρ/πfμ)1/2なる関係式で得られ、高周波帯域になれば表皮効果により数十μm以下の表面電流経路が影響するため、比抵抗ρの低いAuめっきが施された構造を採用すれば、ESLを下げるために最も良いと言える。又、陽極及び陰極間の電流経路の一部である陰極端子,陽極端子の厚み方向は、形状を整えるために切断される場合、電極端子形成部(陽極端子形成部,陰極端子形成部)の凹部にめっき面が残るように切断すればESLを下げることができる。
【0030】
ところで、これらの何れか一つのリードフレームを用いる本発明の下面電極型固体電解コンデンサの製造方法では、リードフレーム上にコンデンサ素子を接合するコンデンサ接合工程と、コンデンサ素子及びリードフレームを外装樹脂でモールド成形する樹脂モールド工程と、凹部のめっき面の1つに沿ってめっき面の1つを残しながらリードフレーム,コンデンサ素子の持つ陽極リード線,及び外装樹脂を切断して製品の側面となる外表面を形成する外表面形成工程とを含むようにすれば良い。但し、この下面電極型固体電解コンデンサの製造方法において、コンデンサ接合工程では、陽極端子形成部にコンデンサ素子を接合すると共に、接合に先立って陽極端子形成部の一部に絶縁性の樹脂を塗布するようにすることが好ましい。
【0031】
又、このような下面電極型固体電解コンデンサの製造方法により製造された下面電極型固体電解コンデンサでは、上述した前提的技術の構造の場合と同様に、コンデンサ素子については、陽極リード線が導出された弁作用金属から成る多孔質の焼結体の表面に誘電体層,電解質層,陰極層を順次形成して成るものであり、陽極端子形成部に形成される陽極端子については、陽極リード線に一端が接続されると共に、他端が外部接続端子として供されるものであり、陰極端子形成部に形成される陰極端子については、コンデンサ素子にあっての陰極層に一端が接続されると共に、他端が外部接続端子として供されるものであり、外装樹脂については、コンデンサ素子を覆うと共に、陽極端子及び陰極端子の基板に対する実装面及びその実装面と略垂直な外側面に露出面を有するように外装されるものとすれば良い。この下面電極型固体電解コンデンサにおいても、リードフレームの構造が改善されているため、陽極及び陰極間の電流経路が短かく、高周波帯域での表皮効果が大きくなってコンデンサ全体のESL,ESRを低値化し得る信頼性に優れたものとなる。
【0032】
以下、本発明のリードフレーム、及びそれを用いた下面電極型固体電解コンデンサの製造方法、並びにそれにより製造された下面電極型固体電解コンデンサについて、実施例を挙げて具体的に説明する。
【実施例1】
【0033】
図1は、本発明の実施例1に係る下面電極型固体電解コンデンサの基本構造を示したものであり、同図(a)は陽極側からの側面図に関するもの,同図(b)は正面側からの外装樹脂19を一部除去した正面図に関するもの,同図(c)は陰極側からの側面図に関するものである。尚、図1(b)では、ハッチング部分が外装樹脂19の除去面を示している。
【0034】
この下面電極型固体電解コンデンサにおいても、後述するリードフレームを適用することにより、陽極リード線12が導出された弁作用金属から成る多孔質の焼結体の表面に誘電体層,電解質層,陰極層を順次形成して成るコンデンサ素子11に対し、陽極リード線12に一端が接続され、他端が外部接続端子として供される下面電極型の陽極端子13を陽極端子形成部に設けると共に、並びにコンデンサ素子11にあっての陰極層に一端が接続され、他端が外部接続端子として供される下面電極型の陰極端子14を陰極端子形成部に設け、更にコンデンサ素子11を覆うように外装樹脂19により陽極端子13及び陰極端子14の基板に対する実装面及びその実装面と略垂直な外側面に露出面を有するように外装した点は前的的技術の場合と同様な構造であるが、ここでは陰極端子13及びコンデンサ素子11を導電性接着剤20により接続するための接続範囲がコンデンサ素子11の陽極リード線埋め込み面部分にあっての接続端面を基準面17として陰極側部分から基準面17側寄り部分に延在して位置された構造となっている。即ち、この下面電極型固体電解コンデンサでは、改良されたリードフレームを用いることにより、陰極端子14が陰極側部分から基準面17側寄り部分に延在する接続範囲に応じて実装面において全部(或いは一部であっても良い)を露呈するように導電性接着剤20により接続される構造となっている。
【0035】
その他、ここでの陽極端子13は陽極端子形成部に形成されたもの(尚、ここでの陽極端子形成部にも予め一部に絶縁樹脂が塗布されていることが好ましい)で、陰極端子14は導電性接着剤20を用いてコンデンサ素子11と接続できるように陰極端子形成部に形成されたもので、陽極側にはめっき処理されたフィレット面15a、陰極側にはめっき処理されたフィレット面15bが露呈されている。尚、図1(a)には略コ字形の陽極端子切断面16、図1(c)には陰極端子切断面18を示す他、図1(b)には長手方向の一端面,他端面で内面をめっき処理した凹部の一面が陽極側フィレット面15a,陰極側フィレット面15bとなる様子を示している。尚、ここでも長手方向の一端面で露呈する陽極側突起部25a、並びに他端面で露呈する陰極側突起部25bは、外装樹脂19内へのアンカー効果を得るための端子として設けられている。
【0036】
図2は、この下面電極型固体電解コンデンサに備えられるリードフレームに対してコンデンサ素子11を接合して外装樹脂19でモールド成形した切断前状態を正面側から内部を透視して示した正面図である。
【0037】
このリードフレームは、図示されない基板実装側に直接引き出される電極を有する下面電極型固体電解コンデンサの作製に用いられる端子形成用の基本構造を有しており、陽極端子13を形成するための陽極端子形成部21と陰極端子14を形成するための陰極端子形成部22とが対向して設けられており、陰極端子形成部22に形成される陰極端子14が陽極端子形成部21に形成される陽極端子13側に延在して実装面で露呈される構造となっている。このうち、陽極端子形成部21には、一部分を実装面と垂直な方向に変形させて実装面側では凹部となり、且つ実装面と逆側では凸部となる凹凸部が絞り加工やコイニング加工(潰し加工)等により形成されている。ここでの凹部にはめっき処理が施され、凸部には実装面に平行で溶接台となる平坦部と平坦部に繋がって平坦部から離れるにつれて実装面に近付くように傾いた傾斜部26とが形成されている。この傾斜部26は潰し加工によって形成することができる。尚、凹部にあっての実装面に平行な断面形状は、多角形状又は少なくとも1辺を直線とする形状であれば、チップをリードフレームから分離するための切断が容易になる。又、凸部にあっての実装面と略垂直な面には、実装面と平行な方向へ向けられて実装面から離れた位置にある突起部又は切り欠き部が設けられるようにすれば、外装樹脂19へのアンカーとなって固着力が高まる。
【0038】
ところで、陽極端子形成部21,陰極端子形成部22には、それぞれ陽極端子13,陰極端子14を成すためにAg,Au,Cu,Pd,Snの少なくとも1つを含む膜が形成されるようにし、又陽極端子形成部21,陰極端子形成部22にあってのフレーム厚み方向の表面に対しても同様にそれぞれ陽極端子13,陰極端子14を成すためにAg,Au,Cu,Pd,Snの少なくとも1つを含む膜が形成されるようにすれば、界面での半田等との接合力が高まる。
【0039】
図3は、この下面電極型固体電解コンデンサの製造工程を示したフローチャートである。
【0040】
ここでは、この下面電極型固体電解コンデンサの製造工程として、前提的技術で説明した場合と同様な手順により、先ず所定形状の平面状のリードフレームの成形加工(ステップS1)を行い、リードフレームにおける陽極端子13を形成するための陽極端子形成部21を設けて陽極端子13と陽極リード線12との接続性確保のための陽極接合部の絞り加工又は潰し加工を経て凹凸部を形成する陽極端子凹凸部の傾斜加工(ステップS2)、並びに陰極端子14を形成するための陰極端子形成部22を設けるために陰極接合部の絞り加工又は潰し加工を経て凹凸部を形成する陰極端子凹凸部の加工を含む電極形成用の凹凸加工を行った後、リードフレームのめっき処理(ステップS3)、並びにコンデンサ素子11をリードフレームへ接合固定するコンデンサ素子11の接合固定(ステップS4)処理を実行し、更に外装樹脂19によるモールド成形(ステップS5)を行ってから外装樹脂19とリードフレームとの陽極側切断面23a,陰極側切断面23b(陽極側フィレット面用凹部24a,陰極側フィレット面用凹部24bの外方付近に位置する)に沿った切断(ステップS6)処理を要するものである。但し、陽極端子凹凸部の傾斜加工(ステップS2)において、絞り加工を行う場合に限っては、凹部の形成を平面状のリードフレームにめっきを施してからリードフレームの成形加工(ステップS1)及び陽極端子凹凸部の傾斜加工(ステップS2)を含む電極形成用の凹凸加工を行うようにして凹部を加工形成する手順にすることもできる。
【0041】
尚、ここでのコンデンサ素子11の接合固定(ステップS4)処理は、上述した下面電極型固体電解コンデンサの製造方法におけるリードフレーム上にコンデンサ素子11を接合するコンデンサ接合工程に該当し、外装樹脂19によるモールド成形(ステップS5)はコンデンサ素子11及びリードフレームを外装樹脂19でモールド成形する樹脂モールド工程に該当し、切断(ステップS6)処理は凹部のめっき面の1つに沿ってめっき面の1つを残しながらリードフレーム,コンデンサ素子11の持つ陽極リード線12,及び外装樹脂19を切断して製品の側面となる外表面を形成する外表面形成工程に該当する。又、コンデンサ接合工程において、陽極端子形成部21にコンデンサ素子11を接合するに先立ってその一部に絶縁性の樹脂を塗布するようにすることが好ましいのは上述した通りである。
【0042】
何れにしても、リードフレームにコンデンサ素子11を接合して外装樹脂19でモールド成形した状態では、図2に示されるように陽極端子形成部21,陰極端子形成部22が形成され、陽極側フィレット面用凹部24a,陰極側フィレット面用凹部24bが陽極側切断面23a,陰極側切断面23bに沿った切断処理を行ってチップ体を得ることにより、切断後にフィレット面となる。この工程においても、陽極端子形成部21,陰極端子形成部22において、めっき処理された凹部を設けるようにすることにより、切断後にめっき処理を行う工程が不要となることを特色としている。
【0043】
因みに、ここでは平板状のリードフレームを作製後、陽極端子形成部21及び陰極端子形成部22について、それぞれ紙面の下方から凹部を図2に示されるような形状で形成し、リードフレームへのコンデンサ素子11の接合については、陽極側はコンデンサ素子11と陽極リード線12とをレーザー溶接又は抵抗溶接により接続し、陰極側はAgを含む導電性接着剤20により接続し、更に外装樹脂19をトランスファーモールドにより成形した後、ダイシングソーにより製品側面となる陽極側切断面23a,陰極側切断面23bの二面を切断して、実施例1に係る下面電極型固体電解コンデンサを得た。又、コンデンサ素子11の作製については、公知技術を導入できるので、細部を簡略してタンタルを弁作用金属として用いた場合を説明する。コンデンサ素子11を作製する場合、先ずタンタル線の回りにタンタル粉末をプレス機で成型してから高真空・高温度で焼結した後、タンタル金属粉末の表面にTa2O5の酸化被膜を形成してから硝酸マンガンに浸漬し、更に熱分解してMnO2を形成してからグラファイト及びAgによる陰極層を形成してコンデンサ素子11を得る工程を実行すれば良い。但し、陰極層を形成するためのMnO2に換えてポリチオフェンやポリピロール等の導電性高分子を用いることもでき、この場合には1つのコンデンサ素子11として低ESRを得るのが容易になる。又、弁作用金属として、タンタルの他にニオブ,アルミニウム,チタン等を用いることもできる。
【0044】
尚、上述した実施例1に係る下面電極型固体電解コンデンサは、あくまでも一例を開示したものであり、その各部における細部構造については設計変更により各種変形や修正を行うことが可能であるので、本願発明のリードフレーム、及びそれを用いた下面電極型固体電解コンデンサの製造方法、並びにそれにより製造された下面電極型固体電解コンデンサは、実施例1で開示したものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施例1に係る下面電極型固体電解コンデンサの基本構造を示したものであり、(a)は陽極側からの側面図に関するもの,(b)は正面側からの外装樹脂を一部除去した正面図に関するもの,(c)は陰極側からの側面図に関するものである。
【図2】図1に示す下面電極型固体電解コンデンサに備えられるリードフレームに対してコンデンサ素子を接合して外装樹脂でモールド成形した切断前状態を正面側から内部を透視して示した正面図である。
【図3】図1に示す下面電極型固体電解コンデンサの製造工程を示したフローチャートである。
【図4】本発明の前提的技術に係る下面電極型固体電解コンデンサの基本構造を例示したものであり、(a)は陽極側からの側面図に関するもの,(b)は正面側からの内部を透視した正面図に関するもの,(c)は陰極側からの側面図に関するものである。
【図5】図4に示す下面電極型固体電解コンデンサに備えられるリードフレームに対してコンデンサ素子を接合して外装樹脂でモールド成形した切断前状態を正面側から内部を透視して示した正面図である。
【符号の説明】
【0046】
11,71 コンデンサ素子
12,72 陽極リード線
13,73 陽極端子
14,74 陰極端子
15a,76a 陽極側フィレット面
15b,76b 陰極側フィレット面
16,79 陽極端子切断面
17 基準面
18,78 陰極端子切断面
19,99 外装樹脂
20,80 導電性接着剤
21,81 陽極端子形成部
22,82 陰極端子形成部
23a,83a 陽極側切断面
23b,83b 陰極側切断面
24a,84a 陽極側フィレット面用凹部
24b,84b 陰極側フィレット面用凹部
25a 陽極側突起部
25b 陰極側突起部
26 傾斜面
77 絶縁樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板実装側に直接引き出される電極を有する下面電極型固体電解コンデンサの作製に用いられる端子形成用のリードフレームにおいて、陽極端子を形成するための陽極端子形成部と陰極端子を形成するための陰極端子形成部とが対向して設けられ、前記陽極端子形成部には一部分を実装面と垂直な方向に変形させて該実装面側では凹部となり、且つ該実装面と逆側では凸部となる凹凸部が形成され、前記凹部にはめっき処理が施され、前記凸部には前記実装面に平行で溶接台となる平坦部と該平坦部に繋がって該平坦部から離れるにつれて該実装面に近付くように傾いた傾斜部とが形成され、前記陰極端子及びコンデンサ素子を導電性接着剤により接続するための接続範囲が該コンデンサ素子の陽極リード線埋め込み面部分にあっての接続端面を基準面として陰極側部分から該基準面側寄り部分に延在して位置されたことを特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
請求項1記載のリードフレームにおいて、前記陰極端子は、前記陰極側部分から前記基準面側寄り部分に延在する前記接続範囲に応じて前記実装面において一部又は全部を露呈するように前記導電性接着剤により接続されるものであることを特徴とするリードフレーム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のリードフレームにおいて、前記凹凸部は、絞り加工又はコイニング加工により形成されたことを特徴とするリードフレーム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一つに記載のリードフレームにおいて、前記凹部にあっての前記実装面に平行な断面形状は、多角形状又は少なくとも1辺を直線とする形状であることを特徴とするリードフレーム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一つに記載のリードフレームにおいて、前記凸部にあっての前記実装面と略垂直な面には、該実装面と平行な方向へ向けられて該実装面から離れた位置にある突起部又は切り欠き部が設けられたことを特徴とするリードフレーム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一つに記載のリードフレームにおいて、前記陽極端子形成部,前記陰極端子形成部には、それぞれ前記陽極端子,前記陰極端子を成すためにAg,Au,Cu,Pd,Snの少なくとも1つを含む膜が形成されたことを特徴とするリードフレーム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一つに記載のリードフレームにおいて、前記陽極端子形成部,前記陰極端子形成部にあってのフレーム厚み方向の表面には、それぞれ前記陽極端子,前記陰極端子を成すためにAg,Au,Cu,Pd,Snの少なくとも1つを含む膜が形成されたことを特徴とするリードフレーム。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一つに記載のリードフレームを用いた下面電極型固体電解コンデンサの製造方法であって、前記リードフレーム上に前記コンデンサ素子を接合するコンデンサ接合工程と、前記コンデンサ素子及び前記リードフレームを外装樹脂でモールド成形する樹脂モールド工程と、前記凹部のめっき面の1つに沿って該めっき面の1つを残しながら前記リードフレーム,前記コンデンサ素子の持つ陽極リード線,及び前記外装樹脂を切断して製品の側面となる外表面を形成する外表面形成工程とを含むことを特徴とする下面電極型固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の下面電極型固体電解コンデンサの製造方法において、前記コンデンサ接合工程では、前記陽極端子形成部に前記コンデンサ素子を接合すると共に、該接合に先立って該陽極端子形成部の一部に絶縁性の樹脂を塗布することを特徴とする下面電極型固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9記載の下面電極型固体電解コンデンサの製造方法により製造された下面電極型固体電解コンデンサであって、前記コンデンサ素子は、前記陽極リード線が導出された弁作用金属から成る多孔質の焼結体の表面に誘電体層,電解質層,陰極層を順次形成して成るもので、前記陽極端子形成部に形成される前記陽極端子は、前記陽極リード線に一端が接続されると共に、他端が外部接続端子として供されるもので、前記陰極端子形成部に形成される前記陰極端子は、前記コンデンサ素子にあっての前記陰極層に一端が接続されると共に、他端が外部接続端子として供されるもので、前記外装樹脂は、前記コンデンサ素子を覆うと共に、前記陽極端子及び前記陰極端子の基板に対する実装面及び該実装面と略垂直な外側面に露出面を有するように外装されるものであることを特徴とする下面電極型固体電解コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−332403(P2006−332403A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154998(P2005−154998)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【出願人】(302005190)NECトーキン富山株式会社 (23)