説明

リード線付き電子部品の製造方法

【課題】リード線の先端部分の加工と金属線からの被覆剥離を1回の処理工程で行うことができ、かつ電子部品がダメージを受けることもなく、接合強度や電気的接続性の信頼性を確保できるリード線付き電子部品を短時間で効率良く製造できるようにする。
【解決手段】長さの異なる第1及び第2のリード線6a、6bを、加熱手段22を内蔵した台座20上に載置し、加圧ヘッド21で第1及び第2のリード線6a、6bの先端部を加圧・加熱し、先端部の絶縁部材を金属線から剥離させて第1及び第2の金属線露出部10a、10bを形成し、これと同時に前記第1及び第2の金属線露出部10a、10bを平坦状乃至略平坦状に形成する。その後、第1及び第2の金属線露出部10a、10bにはんだを塗布した後、第1及び第2の金属線露出部10a、10bとサーミスタとを加圧・加熱して接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード線付き電子部品の製造方法に関し、より詳しくは、表面実装型サーミスタ等の表面実装型の電子部品にリード線が電気的に接続されたリード線付き電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータや電動自転車等では、比較的大きな二次電池を使用したり、複数個の燃料電池を並設して使用する場合がある。このような場合、例えば、二次電池等の測温したい箇所と、温度センサとしてのサーミスタが実装される制御基板とが離間せざるを得ない場合が生じる。このため長尺のリード線を用いたリード線付きサーミスタが使用される。すなわち、長尺のリード線を有するリード線付き温度センサを使用することにより、リード線をプリント基板等の制御基板上にはんだ付けして固定する一方で、サーミスタの感温部を温度検知したい部品に近付けて配することが可能となり、測温したい箇所の温度を精度良く検知することが可能となる。
【0003】
そして、このようなリード線付き電子部品は、リード線の芯線部分である金属線が絶縁部材で被覆されているため、所要部分の絶縁部材を除去して金属線を表面露出させ、リード線と電子部品とを電気的に接続させる必要がある。
【0004】
一方、被覆電線の被覆を除去する方法としては、例えば、特許文献1に示すような電線の皮剥ぎ方法が提案されている。
【0005】
この特許文献1では、図14に示すように、温度調節付熱板101が、台部102の上方に昇降自在に設けられている。この熱板101は被覆剥離長と概ね同一の長さを有しており、台部102に供給した被覆電線103の軸方向の上端を熱板101で押圧しながら約300℃に加熱し、その部分の被覆を軟化溶融させ、これにより導体104の上半部が被覆電線103の軸方向に所要長露出した皮剥ぎ部105を形成している。そしてその後、クランプ106で被覆電線103を保持すると共に押え板107を下げて被覆電線103の上部を固定し、皮剥ぎ部105の両端から中央に作動する切り込み・皮剥ぎ刃108によって、皮剥ぎ部105の被覆を除去している。
【0006】
このように上記特許文献1では、第1工程で皮剥ぎ部105を形成し、その後の第2工程で皮剥ぎ部105の被覆を除去し、これにより導体104の全周が露出した被覆剥離部109を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−289712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1では、被覆電線103からの被覆除去を第1工程と第2工程の2段階に分けて行っており、しかも被覆除去を行うのに必要な部品点数も多く、装置が大規模になり、処理が煩雑であるという問題点があった。
【0009】
特に、表面実装型の電子部品を使用したリード線付き電子部品の場合、長さの異なる2本のリード線を使用する必要があり、また接合強度や電気的接続性を確保するためには、リード線の先端部分と電子部品の端子電極との接合面積が大きくなるように前記先端部分を形成するのが望ましい。
【0010】
したがって、上記特許文献1の方法をリード線付き電子部品に適用した場合、大規模な装置が必要となって処理が煩雑になる上、工程増を招き、生産性に劣るという問題点があった。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、リード線の先端部分の加工と金属線からの被覆剥離を1回の処理工程で行うことができ、かつ電子部品がダメージを受けることもなく、接合強度や電気的接続性の信頼性を確保できるリード線付き電子部品を短時間で効率良く製造できるリード線付き電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明に係るリード線付き電子部品の製造方法は、金属線が絶縁部材で被覆された第1及び第2のリード線と、部品本体の両端部に端子電極が形成された電子部品とを有し、前記第1のリード線を一方の端子電極に接合し、前記第2のリード線を他方の端子電極に接合するリード線付き電子部品の製造方法において、前記第1のリード線と前記第2のリード線とを平行状に配し、前記第2のリード線が前記第1のリード線よりも所定長さだけ短くなるように前記第2のリード線を切断するリード線切断工程と、前記端子電極と接合すべき前記第1及び第2のリード線の先端部を加圧・加熱し、前記先端部の絶縁部材を金属線から剥離させて第1及び第2の金属線露出部を形成し、これと同時に前記第1及び第2の金属線露出部を平坦状乃至略平坦状に形成する加圧・加熱工程と、前記第1及び第2の金属線露出部をはんだと接触させて該第1及び第2の金属線露出部にはんだを塗布するはんだ塗布工程と、前記はんだが塗布された前記第1及び第2の金属線露出部を均一乃至略均一に加圧・加熱し、前記第1及び第2の金属線露出部と前記電子部品の端子電極とを接合させる接合工程とを含むことを特徴としている。
【0013】
本発明のリード線付き電子部品の製造方法は、前記一方の端子電極の側面折り返し部及び端面部にはんだフィレットを形成することを特徴としている。
【0014】
本発明のリード線付き電子部品の製造方法は、前記第2の金属線露出部を、前記被覆部の先端と前記他方の端子電極の端面部との間に間隙を有するように形成し、前記他方の端子電極の側面折り返し部及び端面部並びに前記間隙にはんだフィレットを形成することを特徴としている。
【0015】
本発明のリード線付き電子部品の製造方法は、前記第1のリード線と前記第2のリード線とが、長手方向に一体的に接合され、一組の平行リード線を形成していることを特徴としている。
【0016】
本発明のリード線付き電子部品の製造方法は、前記電子部品が、表面実装型であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
上記リード線付き電子部品の製造方法によれば、第1のリード線と第2のリード線とを平行状に配し、前記第2のリード線が前記第1のリード線よりも所定長さだけ短くなるように前記第2のリード線を切断するリード線切断工程と、前記端子電極と接合すべき前記第1及び第2のリード線の先端部を加圧・加熱し、前記先端部の絶縁部材を金属線から剥離させて第1及び第2の金属線露出部を形成し、これと同時に前記第1及び第2の金属線露出部を平坦状乃至略平坦状に形成する加圧・加熱工程と、前記第1及び第2の金属線露出部をはんだと接触させて該第1及び第2の金属線露出部にはんだを塗布するはんだ塗布工程と、前記はんだが塗布された前記第1及び第2の金属線露出部を均一乃至略均一に加圧・加熱し、前記第1及び第2の金属線露出部と前記電子部品の端子電極とを接合させる接合工程とを含むので、大規模な装置や煩雑な方法を要することもなく、先端部分の絶縁部材を金属線から容易に剥離させることができ、これと同時に、端子電極と接合すべき第1及び第2の金属線露出部を容易に形成することができる。しかも、接合工程では加圧と同時に加熱を行うので、加圧力を低く抑えることができ、電子部品にクラック等のダメージが生じるのを抑制することが可能となる。また、リフロー炉に比べて短時間ではんだ接合させることができるので、量産性に好適したものとなる。さらに、第1及び第2の金属線露出部に対し、均一乃至略均一に加圧・加熱するので、第1及び第2の金属線露出部には均一な熱エネルギーが付与されることとなり、したがって第1及び第2の金属線露出部の全域に亙って端子電極との接合面を形成できることから、接合面積を大きくすることができ、接合強度や電気的接続の信頼性向上を図ることができる。
【0018】
また、上記製造方法によれば、側面折り返し部のみならず端面部及び被覆部の先端と端子電極の端面部との間の間隙にもはんだフィレットを形成することが可能であるので、電極剥離の発生を効果的に防止することができ、これにより所望の接合強度を確保でき、電気的接続性の良好な高信頼性を有するリード線付き電子部品を低コストで得ることが可能となる。
【0019】
また、第1のリード線と第2のリード線とが、長手方向に一体的に接合され、一組の平行リード線を形成しているので、サーミスタのように電子部品の配置箇所と制御基板とが離間している場合であっても、電気的接続が良好で信頼性の高いリード線付き電子部品を製造することができる。
【0020】
また、電子部品が、表面実装型であるので、端子電極間も比較的大きく、端子電極間が短絡するのを極力回避できる信頼性の優れたリード線付き電子部品を低コストで容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の製造方法を使用して製造されたリード線付き電子部品の一部破断正面図である。
【図2】本発明に係るリード線付き電子部品の製造方法の第1の実施の形態を示す製造工程図である。
【図3】リード線切断工程における第1及び第2のリード線(平行リード線)を示し、(a)は正面断面図、(b)は(a)のX−X矢視断面図である。
【図4】加圧・加熱工程で使用される第1の加圧・加熱装置の概略図である。
【図5】加圧・加熱工程を説明するための図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のY−Y矢視図である。
【図6】加熱・加圧工程後の第1及び第2のリード線の断面図であり、(a)は正面断面図、(b)右側面断面図である。
【図7】はんだ塗布工程を示す図である。
【図8】接合工程を示す正面図である。
【図9】接合工程後の状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)の左側面図である。
【図10】外装形成工程を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)の左側面図である。
【図11】第1の実施の形態で製造されたリード線付き電子部品の正面図である。
【図12】本発明に係るリード線付き電子部品の製造方法の第2の実施の形態を示す製造工程図である。
【図13】第2の実施の形態で製造されたリード線付き電子部品の正面図である。
【図14】特許文献1に記載された製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づき詳説する。
【0023】
図1は本発明の製造方法を使用して製造されたリード線付き電子部品の一部破断正面図であって、この実施の形態では、電子部品として表面実装型サーミスタ(以下、「サーミスタ」という。)が使用されている。
【0024】
サーミスタ1は、略直方体形状に形成されたセラミック材料を主成分とするサーミスタ本体2と、該サーミスタ本体2の両端部に形成された端子電極3a、3bとを備えている。この端子電極3a、3bは、端面部4a、4b及び側面折り返し部5a、5bを有しており、サーミスタ本体2の端面及び四側面を覆うように形成されている。また、この端子電極3a、3bは、Ag等の導電性材料が焼き付け処理された下地電極の表面にNiやSn等のめっき皮膜が形成されている。
【0025】
このような表面実装型のサーミスタ1を使用することにより、板状のサーミスタ本体の両主面に電極層を形成した単板形状のサーミスタに比べ、端子電極3a、3b間の距離を比較的大きくすることができ、マイグレーションが発生し難く、端子電極3a、3b同士の短絡を極力防止することができる。
【0026】
また、表面実装型のサーミスタ1は、本来、外部環境での使用に耐えうるように設計されているため、高い信頼性と耐環境性を有している。したがってリード線の取付加工による影響がなく、さらに取付後のサーミスタ素子の特性調整や特性選別を簡素化できる等の利点がある。
【0027】
このような表面実装型のサーミスタ1としては、外径寸法が、例えば長さ1.0mm、幅0.5mm、厚み0.5mm、或いは長さ0.6mm、幅0.3mm、厚み0.3mmのチップ型サーミスタを使用することができる。
【0028】
そして、第1及び第2のリード線6a、6bは、金属線7a、7bが絶縁部材8a、8bで被覆された被覆部9a、9bと、絶縁部材8a、8bが除去された第1及び第2の金属線露出部10a、10bとを有している。そして、第1のリード線6aと第2のリード線6bとは平行状に配されると共に、第2のリード線6bは、第1のリード線6aよりも短く形成されている。
【0029】
また、このリード線付き電子部品は、第1のリード線6aの第1の金属線露出部10aと、端子電極3aの端面4a及び側面折り返し部5aとがはんだ11aを介して接合され、はんだフィレット11a′が形成されている。さらに、第2のリード線2bの第2の金属線露出部10bと、端子電極3bの端面部4b及び側面折り返し部5bとがはんだ11bを介して接合されている。そして、被覆部9bの先端と端子電極3bの端面部4bとの間に間隙tを有するように、端子電極3bの側面折り返し部5b及び端面部4b並びに間隙tにはんだフィレット11b′が形成されている。
【0030】
すなわち、サーミスタ1は、端子電極3a、3bが、サーミスタ本体2の端面を覆うように形成されているが、端面部4a、4bは、側面折り返し部5a、5bに比べ、サーミスタ本体2に強く固着される。したがって、側面折り返し部5a、5bのみならず端面部4a、4bにもはんだフィレット11a′、11b′を形成することにより、電極剥離をより一層生じ難くすることが可能となる。しかも、はんだフィレット11b′は間隙tにも形成されるため、はんだフィレットの形成領域を増加させることができ、より一層効果的に電極剥離を防止することができる。そして、これにより接合強度はより一層向上し、電気的接続性の信頼性をより一層高いものにすることができる。
【0031】
そして、第1及び第2のリード線9a、9bの先端領域、サーミスタ1、及びはんだ11a、11bが、エポキシ樹脂等の絶縁部材で形成された外装12で被覆されている。また、リード線6a、6bの終端部13a、13bは、絶縁部材8a、8bが除去されてはんだコート処理が施されている。
【0032】
尚、金属線7a、7bとしては、はんだ濡れ性の良好な銅を使用するのが望ましいが、はんだ接合できるものであれば特に限定されるものではなく、鉄、ニッケル、又はこれらの合金類、複合材等を使用することができる。また、絶縁部材8a、8bについても、リフローはんだ処理に耐えうる耐熱性を有するものであれば特に限定されるものではなく、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂等を使用することができる。
【0033】
以下、上述したリード線付き電子部品の製造方法を詳述する。尚、下記の実施の形態では、平行リード線を使用しているが、平行リード線に限定されるものではなく、単線のリード線を2本使用する場合も同様の方法で製造することができる。
【0034】
図2は、本発明に係るリード線付き電子部品の製造方法の第1の実施の形態を示す製造工程図であって、本製造方法は、リード線切断工程14、加圧・加熱工程15、はんだ塗布工程16、接合工程17、外装形成工程18、及び終端処理工程19を有している。
【0035】
(1)リード線切断工程14
このリード線切断工程14では、まず、第1及び第2のリード線6a、6bが一体的に接合された平行リード線を用意する。そして、図3に示すように、第2のリード線6bが第1のリード6aよりも所定長さLだけ短くなるように金型(不図示)を使用して打ち抜く。ここで、所定長さLは、図1において、第1のリード線6aの第1の金属線露出部10aがサーミスタ1の端子電極3aと接合可能であり、かつ第2のリード線6bの第2の金属線露出部10bがサーミスタ1の端子電極3bと接合可能となるような長さに設定される。
【0036】
(2)加圧・加熱工程15
加圧・加熱工程15では、第1の加圧・加熱装置を使用し、第1及び第2のリード線6a、6bに対し加圧・加熱処理を行う。
【0037】
具体的には、第1の加圧・加熱装置は、図4に示すように、第1及び第2のリード線6a、6bが載置される台座20と、該台座20に対向状に配されて矢印A方向に昇降運動する加圧ヘッド21とを備えている。また、加圧ヘッド21にはヒータ等の加熱手段22が内蔵されており、台座20には断熱材が使用されている。台座20を断熱材とすることにより、加圧ヘッド21に内蔵されている加熱手段22からの熱を台座20に逃すことなく第1及び第2のリード線6a、6bの先端部分に効率よく伝えることができる。
【0038】
図5(a)は、第1及び第2のリード線6a、6bの先端部分を加圧・加熱したときの正面図、図5(b)は、図5(a)のY−Y矢視図である。
【0039】
すなわち、加圧・加熱工程15では、この図5に示すように、サーミスタ1の端子電極3a、3bと接合すべき先端部分が加圧ヘッド21の加圧部と対向するように、台座20上に第1及び第2のリード線6a、6bを載置する。そして、加熱手段22を絶縁部材8a、8bの融点以上の温度(例えば、300〜400℃)に加熱すると共に、加圧ヘッド21を矢印Bに示すように降下させ、所定荷重(例えば、第1のリード線6a側を30N、第2のリード線6b側を60N)で第1及び第2のリード線6a、6bの先端部分を加圧し、該先端部分を幅広の平坦状に加工する(つぶし量は、例えば、第1のリード線6a側を0.3mm、第2のリード線6b側を0.6mm)。この際、第1及び第2のリード線6a、6bの加圧ヘッド21と接する先端部分は絶縁部材8a、8bの融点以上の温度に加熱される。そしてその結果、当該部分の絶縁部材8a、8bは軟化溶融し、これにより絶縁部材8a、8bは金属線7a、7bから剥離し、金属線露出部10a、10bが形成される。
【0040】
尚、本実施の形態では、加圧ヘッド21に加熱手段22を内蔵させているが、台座20、又は台座20及び加圧ヘッド21の両方に加熱手段22を内蔵させてもよい。その際、台座20の材質は適宜設定して熱伝導性を持たせるようにする。
【0041】
図6は、加圧・加熱工程15後の第1及び第2のリード線6a、6bを示している。
【0042】
この図6に示すように、加圧・加熱工程15における加圧・加熱処理により、先端部分は平坦状に加工されると共に、該先端部分は絶縁部材8a、8bが金属線7a、7bから剥離し、これにより第1及び第2の金属線露出部10a、10bを形成している。そして、絶縁部材8a、8bが金属線7a、7bから剥離した被覆剥離部8a′、8b′は、絶縁部材7a、7bから切断除去されずに連接されている。
【0043】
このように本実施の形態では、加圧・加熱工程15での加圧・加熱処理という1回の処理工程で、第1及び第2のリード線の先端部分の加工と該先端部分の被覆剥離とが同時に行われることとなる。
【0044】
尚、この加圧・加熱工程15では、端子電極3a、3bと接合可能な金属線露出部10a、10bが形成されればよく、必ずしも被覆剥離部8a′、8b′を切断除去しなくてもよいが、図示の都合上、以下の工程では、被覆剥離部8a′、8bを切断除去している。
【0045】
(3)はんだ塗布工程16
まず、はんだ融点よりも高く、絶縁部材8a、8bの融点より低い所定温度、例えば、例えば、250℃〜310℃に調整されたはんだ槽を用意する。
【0046】
そして、第1及び第2のリード線6a、6bの金属線露出部10a、10bをフラックス槽に浸漬し、引き上げた後、図7に示すように、金属線露出部10a、10bをはんだ槽23に所定時間(例えば、1秒)浸漬して該金属線露出部10a、10bをはんだと接触させ、金属線露出部10a、10bの全面にはんだ11a、11bを塗布する。
【0047】
(4)接合工程17
この接合工程17では、図8に示すように、台座24と加圧ヘッド25とを備えた第2の加圧・加熱装置を用意する。この第2の加圧・加熱装置は、高速昇温・高速冷却が可能な加熱手段としてのパルスヒータ26と、先端部の温度を検知する温度センサ(不図示)とが加圧ヘッド25に内蔵されている。そして、温度センサにより先端部の温度を検知してフィードバック制御することにより、最適な加熱−冷却温度プロファイルを端子電極3a、3bと金属線露出部10a、10bの接合箇所に付与し、これにより最低限の加圧力で接合することが可能となるように構成されている。
【0048】
以下、この接合工程17における処理内容を説明する。
【0049】
まず、サーミスタ1と金属線露出部10a、10bが接合可能となるように、台座24上にサーミスタ1、第1及び第2のリード線6a、6bを載置する。そして、加圧ヘッド25を矢印C方向に降下させて第1及び第2の金属線露出部10a、10bを加圧ヘッド25で均一乃至略均一に加圧・加熱する。そしてその後冷却させることにより、端子電極3a、3bと第1及び第2のリード線6a、6bとは熱圧着され、これによりはんだ接合される。
【0050】
図9は、第1及び第2の金属線露出部10a、10bと端子電極3a、3bとがはんだ接合された状態を示す図である。
【0051】
すなわち、この接合工程17では、第1及び第2の金属線露出部10a、10bに均一乃至略均一に熱エネルギーが付与されるので、端子電極3a、3bの全面に渡って大きな接合面積を形成することができる。そして、第1の金属線露出部10aと端子電極3aの端面部4a及び側面折り返し部5aとがはんだ11aを介して接合され、はんだフィレット11a′が形成される。さらに、第2の金属線露出部10bと、端子電極3bの端面部4b及び側面折り返し部5bとがはんだ11bを介して接合され、被覆部9bの先端と端子電極3bの端面部4bとの間に間隙tにもはんだフィレット11b′が形成される。そしてその結果、強固な接合強度を得ることができ、電気的接続性の信頼性を向上させることが可能となる。
【0052】
また、この接合工程17では、加圧と同時に加熱しているので、加圧力を小さくでき、したがってサーミスタ1へのクラックなどのダメージを軽減できる。しかも、リフロー炉のように時間を要しないので、短時間ではんだ接合が可能になる。
【0053】
(5)外装形成工程18
外装形成工程18では、図10に示すように、サーミスタ1、はんだフィレット11a′、11b′、及び第1及び第2の金属線露出部10a、10bを覆うようにエポキシ樹脂等の絶縁材料を塗布し、所定温度(例えば、150℃)で所定時間(例えば、1時間)硬化処理を行い、外装12を形成する。
【0054】
(6)終端処理工程19
終端処理工程19では、第1及び第2のリード線6a、6bをはんだ槽に浸漬して第1及び第2のリード線6a、6bの終端の絶縁部材8a、8bを除去しつつはんだを塗布し、はんだコートされた終端部13a、13bを形成し、これにより図11に示すようなリード線付き電子部品が製造される。
【0055】
このように本第1の実施の形態によれば、大規模な装置や煩雑な方法を要することなく、先端部分の絶縁部材8a、8bを金属線7a、7bから容易に剥離させることができる。そしてこれと同時に、端子電極3a、3bと接合すべき幅広で平坦状の第1及び第2の金属線露出部10a、10bを容易に形成することができる。しかも、接合工程17では加圧と同時に加熱を行うので、加圧力を低く抑えることができ、サーミスタ1にクラック等のダメージが生じるのを抑制することが可能となる。また、リフロー炉に比べて短時間ではんだ接合させることができるので、量産性に好適したものとなる。さらに、第1及び第2の金属線露出部10a、10bは、均一乃至略均一に加熱されるので、第1及び第2の金属線露出部10a、10bには均一乃至略均一な熱エネルギーが付与されることとなる。そして、これにより強固な接合強度を得ることができ、電気的接続の信頼性向上を図ることができる。
【0056】
また、第1及び第2の金属線露出部側面折り返し部5a、5bのみならず端面部4a及び間隙tにもはんだフィレット11a′、11b′を形成するので、電極剥離の発生が効果的に防止することができ、これにより所望の接合強度を確保でき、電気的接続性の良好な高信頼性を有するリード線付き電子部品を低コストで得ることが可能となる。
【0057】
図12は、本製造方法の第2の実施の形態を示す製造工程図であって、該第2の実施の形態では、外装形成工程18と終端処理工程19との間に終端捩じり工程27が介装されている。
【0058】
この第2の実施の形態でも、第1の実施の形態と同様、リード線切断工程14〜外装形成工程18を実行する。
【0059】
そして、終端捩じり工程27では、平行リード線を構成する第1及び第2のリード線6a、6bの終端から所定位置を数回捩じり、図13に示すように、捩じり部28を形成し、その後、第1の実施の形態と同様、終端処理工程19を実行して終端部29a、29bを形成し、これによりリード線付き電子部品が得られる。
【0060】
この第2の実施の形態では、終端から所定位置を数回捩じっているので、第1及び第2の金属線露出部10a、10bと端子電極3a、3bの接合部に負荷がかかるのを抑制でき、電気的接続性の信頼性をより一層向上させることが可能となる。特に、2本の単線を使用してリード線付き電子部品を製造する場合に、第1及び第2の金属線露出部10a、10bと端子電極3a、3bの接合部に負荷がかかるのをより効果的に抑制することが可能となる。
【0061】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、第1の金属線露出部10aが接合される端子電極3aの側面折り返し部5aと第2の金属線露出部10bが接合される端子電極3bの側面折り返し部5bとが同一平面上に位置するように、第1及び第2のリード線6a、6bを配しているが、前記側面折り返し部5aの面と前記側面折り返し部5bの面とが垂直状となるように、前記第1及び第2のリード線6a、6bを配する場合も同様に本発明方法で容易に製造することができる。また、サーミスタ1を第1及び第2のリード線6a、6bに対し傾斜状に配してもよく、この場合も、同様に本発明方法で容易に製造することができる。
【0062】
また、加圧・加熱工程15における加圧ヘッド21の先端形状も平坦状に限定されるものではなく、所望する金属線露出部10a、10bの形状に応じ、種々の変形が可能である。例えば、金属線露出部10a、10bの中央部に貫通孔が形成されるように、加圧ヘッド21の先端に突起部を形成してもよく、或いは、金属線露出部10a、10bの先端等に溝状の切欠部が形成されるように、適宜加圧ヘッド21の先端に凸状部を設けてもよい。また、金属線露出部10a、10bの周端が鋸歯状となるように、加圧ヘッド21の先端を鋸歯状に形成してもよい。このように金属線露出部10a、10bの表面が平坦状乃至略平坦状に形成することができ、均一乃至略均一に加熱できるのであれば、加圧ヘッド21の先端形状は特に限定されるものではない。
【0063】
また、上記実施の形態では、加圧・加熱工程15で用いる加圧ヘッド21は、第1及び第2の金属線露出部10a、10bの表面が同時に平坦状乃至略平坦状に形成できるように、2本の加圧ヘッドが一体化され、それぞれの加圧ヘッドが第1及び第2のリード線6a、6bを同時に押圧するように構成されているが、1本の加圧ヘッドがまず一方のリード線を押圧して金属線露出部の表面を平坦状乃至略平坦状に加工した後、移動して他方のリード線を押圧加工するようにしてもよい。
【0064】
この加圧ヘッドの形状は接合工程17で用いる加圧ヘッド25についても同様であり、第1及び第2の金属線露出部10a、10bと端子電極3a、3bとを同時にはんだ接合できるように、2本の加圧ヘッドが一体化され、それぞれの加圧ヘッドが各金属線露出部とそれに対応する端子電極との組み合わせを押圧して接合した後、移動して他方の金属線露出部と端子電極との組み合わせを押圧し、接合するようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態では、電子部品としてサーミスタについて記載したが、コンデンサ等、他のチップ型電子部品についても同様に適用できるのはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、表面実装型のサーミスタ等、表面実装型のチップ型電子部品を長尺のリード線で制御基板に接続する場合に有用な製造方法である。
【符号の説明】
【0067】
1 表面実装型サーミスタ(電子部品)
2 サーミスタ本体(部品本体)
3a、3b 端子電極
4a、4b 端面部
5a、5b 側面折り返し部
6a 第1のリード線
6b 第2のリード線
7a、7b 金属線
8a、8b 絶縁部材
9a、9b 被覆部
10a 第1の金属線露出部
10b 第2の金属線露出部
11a、11b はんだ
11a′、11b′ はんだフィレット
14 リード線切断工程
15 加圧・加熱工程
16 はんだ塗布工程
17 接合工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線が絶縁部材で被覆された第1及び第2のリード線と、部品本体の両端部に端子電極が形成された電子部品とを有し、前記第1のリード線を一方の端子電極に接合し、前記第2のリード線を他方の端子電極に接合するリード線付き電子部品の製造方法において、
前記第1のリード線と前記第2のリード線とを平行状に配し、前記第2のリード線が前記第1のリード線よりも所定長さだけ短くなるように前記第2のリード線を切断するリード線切断工程と、
前記端子電極と接合すべき前記第1及び第2のリード線の先端部を加圧・加熱し、前記先端部の絶縁部材を金属線から剥離させて第1及び第2の金属線露出部を形成し、これと同時に前記第1及び第2の金属線露出部を平坦状乃至略平坦状に形成する加圧・加熱工程と、
前記第1及び第2の金属線露出部をはんだと接触させて該第1及び第2の金属線露出部にはんだを塗布するはんだ塗布工程と、
前記はんだが塗布された前記第1及び第2の金属線露出部を均一乃至略均一に加圧・加熱し、前記第1及び第2の金属線露出部と前記電子部品の端子電極とを接合させる接合工程とを含むことを特徴とするリード線付き電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記一方の端子電極の側面折り返し部及び端面部にはんだフィレットを形成することを特徴とする請求項1記載のリード線付き電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記第2の金属線露出部を、前記被覆部の先端と前記他方の端子電極の端面部との間に間隙を有するように形成し、前記他方の端子電極の側面折り返し部及び端面部並びに前記間隙にはんだフィレットを形成することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のリード線付き電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記第1のリード線と前記第2のリード線とは長手方向に一体的に接合され、一組の平行リード線を形成していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のリード線付き電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記電子部品は、表面実装型であることを請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のリード線付き電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−165574(P2010−165574A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7373(P2009−7373)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】